説明

工作機械用の割出装置

【課題】五軸加工機等の工作機械のスピンドルヘッドに内蔵されるDDモータのステータと工作機械本体側との配線の接続、解除を容易にすることである。
【解決手段】 一端に回転駆動対象部材を留める回転軸と、回転軸の外を囲むハウジングと、ハウジングと回転軸の間の軸受と、回転軸の周りに設けるロータとステータからなる駆動手段を含み、ハウジングにステータを留め、回転軸にロータを留める工作機械用割出装置において、ハウジングは、ステータを留める反対象部材側のケーシング部材と、軸受を収容する対象部材側の固定部材からなり、ケーシング部材を固定部材に連結し、回転軸・軸受・ロータ・固定部材を連結して内蔵ユニット22とし、ケーシング部材とステータを連結し且つステータ用ケーブルを固定部材に対して反対象部材側から引き出して外装ユニット21とし、内蔵ユニットを外装ユニットに抜き差し可能に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械用の割出装置、特に、五軸加工機(同時五軸制御可能な加工機)等の複合加工機に使用されるスピンドルヘッド(本明細書でいう加工用ヘッドに相当する)や、回転テーブル装置等の工作機械用の割出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械用のスピンドルヘッドとしては、ツールを回転駆動するスピンドルユニットを両側で支持しつつA軸周りに回転駆動するフォークと、このフォークをC軸周りで回転駆動する駆動部(以下、C軸駆動部という。)とを備えたものが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】米国特許第5584621号明細書
【0003】
上記C軸駆動部は、フォークに固定された内側スリーブを含む回転軸、回転軸(内側スリーブ)を回転自在に支持するための軸受、回転軸を回転駆動するための駆動モータを含み、これらをハウジング内に収容している。また、上記駆動モータは、回転軸に固定されるロータ(モータロータ)と、ロータを囲繞する配置でハウジングに固定されるステータ(モータステータ)とからなっている。即ち、特許文献1におけるスピンドルヘッドのC軸駆動部は、その回転軸を駆動するために直接駆動型のモータ(俗にDDモータと言われる)を採用している。さらに、この駆動モータを構成するロータ及びステータは、回転軸の一部と共に、その外周及び上下の三方を囲まれた状態でハウジング内に収容されている。そして、C軸駆動部は、駆動モータによって回転軸(フォーク)を所定の角度位置へ向けて回転駆動する割出装置として機能する。
【0004】
ところで、上記のスピンドルヘッドにおけるC軸駆動部や前述の回転テーブル装置等は、割出装置として工作機械に組み付けられて工作機械の一部を構成するものであり、一般には、そのハウジング(フレーム)に相当する部分を工作機械の所定箇所に取り付けることによって工作機械に支持され、使用される。また、特許文献1には記載されていないが、上記のような割出装置は、回転駆動対象部材(上記スピンドルヘッドにおけるフォーク等)の角度位置を割り出した後にその角度位置を保持するためのクランプ機構が一般的に組み込まれている。
【0005】
工作機械の使用によって一定期間経過すると、上述の割出装置内における軸受やクランプ機構等のメンテナンスが必要となる。しかし、割出装置を工作機械に取り付けたままの状態でこのメンテナンス作業を行うことは極めて困難である。そこで、従来では、上記メンテナンス作業を行う際には割出装置の全体を工作機械から取り外すのが一般的であり、例えば、上述したスピンドルヘッドの場合では、C軸駆動部全体を工作機械から取り外すことが行われる。
【0006】
しかし、特許文献1によるスピンドルヘッドでは、C軸駆動部の全体を工作機械から取り外す際、その脱着作業が煩雑であるという問題を有する。具体的には、上述の特許文献1によるスピンドルヘッドにおけるC軸駆動部は、その駆動手段としてDDモータを採用しており、そのモータステータには複数本のケーブル(電流供給線、アース線、検出器用線等)が接続され、そのケーブルをハウジングの外部に引き出して、工作機械の対応する配線とコネクタ等で接続してある。従って、C軸駆動部を工作機械から取り外す際には、ケーブルと工作機械側の配線との接続を解除し、また、メンテナンスが終了してC軸駆動部を再度工作機械へ取り付ける際には、上記のケーブルと配線との接続を再度行なわなければならない。この配線の接続、解除作業は、配線の数だけ必要なので、非常に煩雑で時間と手間を要することになる。また、駆動モータの数が増えれば、配線の接続、解除作業は一段と煩雑となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情を考慮して開発されたもので、その解決課題は、上述の割出装置に対するメンテナンス作業に付随する作業を容易化するための割出装置の構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一端に回転駆動対象部材が固定される回転軸と、前記回転軸を支持するために回転軸の外周を少なくとも囲むハウジングと、前記ハウジングと前記回転軸との間に設けられる軸受と、前記ハウジングと前記回転軸の間に設けられると共に前記回転軸を回転させるために回転軸の周りに同心円状に配置されたモータロータ及びモータステータからなる駆動モータを備える駆動手段とを含み、前記ハウジングには前記モータステータを固定し、前記回転軸には前記モータロータを固定する工作機械用の割出装置を前提とする。
【0009】
そして、請求項1の発明は、前記ハウジングは、前記モータステータを固定する反回転駆動対象部材側のケーシング部材と、前記軸受を前記回転軸との間に介在する回転駆動対象部材側の固定部材とから構成し、前記ケーシング部材を前記固定部材に着脱可能に連結したもので、前記回転軸、前記軸受、前記モータロータ及び前記固定部材を組み付けて内蔵ユニットを構成すると共に、前記ケーシング部材と前記モータステータとを組み付け且つ前記モータステータに接続するケーブルを前記固定部材に対して反回転駆動対象部材側から引き出すことによって外装ユニットを構成し、前記内蔵ユニットを前記外装ユニットに対して回転駆動対象部材側から抜き差し可能に連結してあることを特徴とする。
【0010】
駆動手段は、駆動モータの個数を問わない。複数の前記駆動モータを前記回転軸の軸線方向に沿って直列的に設けた場合に外装ユニットに対して内蔵ユニットを抜き差し可能にするには、請求項2の発明のようにする。
即ち、前記ケーシング部材は、少なくとも反回転駆動対象部材側における前記駆動モータのモータステータを固定するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、工作機械に用いられるスピンドルヘッドや回転テーブル装置等の割出装置において、回転軸の軸線方向に沿ってハウジングをケーシング部材と固定部材とに分け、モータステータに接続するケーブルを含む外装ユニットに対して内蔵ユニットを回転駆動対象部材側から抜き差し可能に設けてあるので、モータステータを含む外装ユニットを工作機械側へ残したまま、内蔵ユニットを引き抜くことで取り外すことができる。その結果、ケーブルの接続を解除する作業を行なうことなく内蔵ユニットや外装ユニットに含まれる軸受、クランプ機構等の各部材のメンテナンスが可能となる。これにより、上記割出装置のメンテナンス作業の容易化及び時間短縮を図ることができる。
【0012】
請求項2の発明は、上記割出装置において、複数の駆動モータを回転軸の軸線方向に沿って直列的に設けた駆動手段を用い、反回転駆動対象部材側における駆動モータのモータステータを固定するケーシング部材を用いるので、複数の駆動モータのうち少なくとも反回転駆動対象部材側の駆動モータのモータステータについてはケーブルの接続を解除しなくとも、内蔵ユニットを抜き差しできるので、その分だけメンテナンス作業の容易化及び時間短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明が適用される工作機械1の一例として、図9に示すように、門型工作機械(マシニングセンタ)を五軸加工機や多面加工機などの複合化加工機として用いるものを挙げる。図示の工作機械1は、同時五軸制御可能な加工機であって、ベッド2の両側から起立する左右のコラム3,3と、両コラム3,3の間に跨って両コラム3の前後面の片面上を上下方向(Z軸方向)に移動するクロスレール4と、クロスレール4の前面上(コラム3に対してクロスレール4を設けた面と同一面上)を水平に左右方向(Y軸方向)に移動するサドル5と、サドル5の前面上をZ軸方向に移動するラム6と、ベッド2の上面を前後方向に移動するテーブル7とを工作機械本体として備えるものである。さらに、工作機械本体のラム6には加工用ヘッド8(前述のスピンドルヘッドに相当)を着脱可能に取り付け、工具が取り付けられるスピンドル9を備えたスピンドルユニット10を、加工用ヘッド8の一部品として備えている。
【0014】
かかる工作機械1は、ワークの加工時において、予め設定されたプログラムに基づく数値制御により、テーブル7、クロスレール4、サドル5及びラム6を移動させると共に、加工用ヘッド8がスピンドルユニット10の角度位置(回転位置)の割出しを行なう。これにより、門型工作機械では、ワークの各加工面に対して工具を最適な角度で当てて加工を行なうことができ、複雑な形状のワークの切削加工等を可能としている。
【0015】
加工用ヘッド8は、図7に示すように、工具が取り付けられるスピンドル9を有するスピンドルユニット10と、スピンドルユニット10を角度調節を可能な状態で回転可能に支持する第一の支持ヘッド11と、スピンドルユニット10とは反対側で第一の支持ヘッド11を回転可能に支持する第二の支持ヘッド(前述のC軸駆動部に相当)20を含むものである。そして、第一の支持ヘッド11(第一の支持ヘッド11の基部12)が本願発明の回転駆動対象部材に相当し、第二の支持ヘッド20が割出装置に相当する。
【0016】
スピンドルユニット10は、モータ内蔵型のスピンドルヘッドであって、そのケース13内に回転可能に支持されたスピンドル9を、内蔵された図示しないモータで高速回転駆動するものである。
【0017】
第一の支持ヘッド11は、スピンドルユニット10を、その鉛直方向の軸線方向(以下「C軸方向」という)と直交する軸線(以下、「A軸」という)を中心にして回転可能に支持すると共に、内蔵するモータでスピンドルユニット10をA軸を中心に回転させてその角度位置を割出すものである。C軸は、工作機械1のZ軸と平行である。
【0018】
第一の支持ヘッド11は、基部12(第二の支持ヘッド20側の部分)に対し一対の脚部14,14が離間して(間隔をあけて)取り付けられたフォーク形に構成されており、一対の脚部14,14の間でスピンドルユニット10を支持する。詳しくは、スピンドルユニット10の両側面には、各脚部14の内部で回転可能に支持されると共に回転軸線をA軸に一致させて配置された一対の支持軸(図示せず)が取付けられ、この支持軸によって一対の脚部14,14間で回転可能に支持される。そして、支持軸が脚部14に内蔵されたモータによって回転駆動されることにより、スピンドルユニット10がA軸を中心に回転されてその角度位置が割り出される。
【0019】
第二の支持ヘッド20は、第一の支持ヘッド11をC軸を中心に回転可能に支持し、内蔵する駆動手段で第一の支持ヘッド11を回転させてその角度位置を割出すことにより、延てはスピンドルユニット10の角度位置を割出すものである。第二の支持ヘッド20は、工作機械1のラム6に取り付けられ、その一端側に第一の支持ヘッド11が取り付けてある。なお、以後の説明において、第二の支持ヘッド20を構成する各パーツは、基本的にC軸を軸線とする筒状やリング状に形成されているものとする。また、連結とは、ネジ、ボルト等のネジ部材によって締結固定することをいうものとする。
【0020】
第二の支持ヘッド20は、図1又は図2に示すように、外装ユニット21に対して、その内部に収容する内蔵ユニット22をC軸方向に沿って回転駆動対象部材側から抜き差し可能に連結すると共に、外装ユニット21に対して内蔵ユニット22をC軸を中心にして回転可能に支持するものである。なお、図示の例では、外装ユニット21に対し内蔵ユニット22を抜き差し可能とするために、外装ユニット21の内周面の各部における直径寸法を、それよりも反回転駆動対象部材側の内蔵ユニット22の直径寸法(外径寸法)よりも大きくしてある。
【0021】
第二の支持ヘッド20は、ハウジング30と、ハウジング30の内部で回転可能に支持される回転軸40と、ハウジング30と回転軸40との間に介装される軸受B1と、同じくハウジング30と回転軸40との間に介装される駆動手段Mと、同じくハウジング30と回転軸40との間に介在するクランプ機構50(回転軸40を回転不能に保持するもの)とから構成される。
【0022】
駆動手段Mは、工作機械1に固定されるハウジング30に対して回転軸40を回転駆動するものであって、図示の例では、C軸方向に間隔をあけて直列的に配置した2個の駆動モータM1、M2が採用されている。各駆動モータM1、M2は、ギヤ等の減速器を使わずに直接負荷に繋いで運転するタイプのもの(俗に、直接駆動型モータ/DDモータと言われる。)である。そして、各駆動モータM1、M2は、固定鉄心にコイルを捲回して構成されたモータステータM1b、M2bと、モータステータM1b、M2bの内周面に近設して対向する複数のマグネットを周方向に亘って配置したモータロータM1a、M2aと、モータステータM1b、M2bを保持するステータスリーブM1c、M2cとを同心円状に配置した構成(俗に、インナーロータ形DDモータと言われる)となっている。
【0023】
ハウジング30は、回転軸40を支持するためのものであって、駆動モータM1,M2のモータステータM1b,M2bが固定される反回転駆動対象部材側のケーシング部材30aと、軸受B1を回転軸40との間に介在させる回転駆動対象部材側の固定部材30bとから構成され、ケーシング部材30aに固定部材30bを着脱可能に連結したものである。
【0024】
図示の例では、ケーシング部材30aは、各モータステータM1b,M2bの外周を少なくとも囲むものであって、縦長の筒型に連結された2個のハウジング部材31,32であってC軸方向に分割可能に連結されたハウジング部材31,32と、連結したハウジング部材31,32の反回転駆動対象部材側に連結して開口を塞ぐ蓋状の部材(蓋部材)33とを主として構成される。以下では、このハウジング部材31,32について、図面上側のハウジング部材31を第一のハウジング部材、下側のハウジング部材32を第二のハウジング部材とする。そして、ケーシング部材30aは、第一ハウジング部材31、第二ハウジング部材32及び蓋部材33を連結することにより、回転駆動対象部材側に向かって開口する空間を内側に形成し、この空間内の外側の部分にモータステータM1b,M2b及びクランプ機構50を収容し、内側の部分に内蔵ユニット22の大半を収容する。
【0025】
第一ハウジング部材31は、その本体31aをその下端部が内向きに屈曲する片側断面L字状に形成し、その本体31aの上端部に、半径方向内側に突出する第一ハウジングスリーブ31bを連結し、全体としての片側断面を内向きに開口するコ字状に形成してある。
【0026】
第二ハウジング部材32は、その本体32aの上端部に半径方向内向きに突出する第二ハウジングスリーブ32bを連結して構成してある。そして、第二ハウジング部材32は、第二ハウジングスリーブ32bを第一ハウジング部材31の下部に連結することにより第一ハウジング部材31に対し固定される。
【0027】
固定部材30bは、軸受B1の外周を囲みつつ第二ハウジング部材32の本体32aの下端(ケーシング部材30a)に着脱可能に連結される係止スリーブであって、複数の部品を連結して片側断面が内向きに開くコ字状に形成され、その内側に軸受B1の外周部(外輪)を収容する空間を形成している。固定部材30bの上端面とケーシング部材30aの下端面とは、凹凸の嵌め合いによる位置決めをし、円周方向の複数個所において外周側から半径方向内側に向かって螺挿されるネジ部材によって連結されている。
【0028】
回転軸40は、その軸心を中心とする貫通孔が形成された複数の軸部材41、42を主として構成され、第一ハウジング部材31と第二ハウジング部材32の分割箇所に対応する箇所でC軸方向に分割可能に設けてある。以下では、第一ハウジング部材31の内周側の空間に配置する軸部材41を第一軸部材、第二ハウジング部材32の内周側の空間に配置する軸部材42を第二軸部材とする。
【0029】
第一軸部材41は、その本体41aの下部を、第一ハウジング部材31の下部に対向して半径方向外向きに突出すると共に、本体41aの上部外側に、半径方向外向きに突出する第一外スリーブ41bを連結し、本体41aの上部内側に、半径方向内向きに突出する第一内スリーブ41cの外周部を連結して構成してある。そして、第一軸部材41と第一ハウジング部材31との間の筒形の空間に駆動モータM1を配置し、第一内スリーブ41cの内周部と本体41aの下部を第二軸部材42に連結してある。
【0030】
上側の駆動モータM1は、第一ハウジング部材31の内周側にステータスリーブM1cを介してモータステータM1bを固定し、第一軸部材41の外周側にモータロータM1aを固定したものである。より詳しく言えば、モータステータM1bをステータスリーブM1cの内周面に同心円状に嵌め込んで固定し、ステータスリーブM1cを第一ハウジングスリーブ31bの下側に連結して第一ハウジング部材31に対しモータステータM1bを固定している。また、第一軸部材41の外周面にモータロータM1aを嵌め込み、第一外スリーブ41bの下面にモータロータM1aを連結して第一軸部材41に対しモータロータM1aを固定している。
【0031】
また、上側の駆動モータM1には、コネクタc1を介してケーブルc11を接続してある。ケーブルc11は、例えば、モータステータM1bに内蔵されるコイルに電流を供給するためのU、V、W相用の電流供給ケーブル、アース線、駆動モータM1の異常を検出するための検出線等である。コネクタc1を配置するために、第一ハウジングスリーブ31bの下面の一部に局部的に窪んだ空間を形成し、その窪んだ空間にコネクタc1を配置している。また、ケーブルc11を通すために、第一ハウジングスリーブ31b及び蓋部材33には上下に貫通するケーブル用配線孔H1を連通して設けてある。
【0032】
第二軸部材42は、段差付きの形状であって、第一軸部材41の内周に嵌まり込む小径部分と、第一軸部材41の下端面に突き合わさる大径部分とをC軸方向に連結した構成である。言い換えれば、C軸方向に延在する本体42aと、本体42aの上部外側に連結されて半径方向外向きに突出する第二外スリーブ42bと、本体42aの上部内側(中央)に連結されて第一軸部材41の内周に向かって突出する第二内スリーブ42cとを主として構成する。本体42aの上端面の中央部に凹部42d形成し、第一軸部材41の本体41aの下部、及び第二内スリーブ42cの下部を凹部42dに配置する。また、第二軸部材42は、第二内スリーブ42cをその上の第一内スリーブ41cの内周部に連結し、第二外スリーブ42bをその上の第一軸部材41の本体41aに連結してある。
【0033】
また、第二軸部材42は、その本体42aの下側に配置されたフランジ部材42e、及びフランジ部材42eを挟むようにして配置された連結部材42fを有し、フランジ部材42eと共に連結部材42fを第二軸部材42の下面に連結して構成してある。なお、連結部材42fの下端面と第一の支持ヘッド11の基部12の上端面とは、凹凸の嵌め合いによる位置決めをしてある。
【0034】
第二軸部材42と第二ハウジング部材32は、その適宜箇所を内向き又は外向きに突出することによって、両部材42,32の間に環状の二つの空間を上下に間隔をあけて形成し、その二つの空間に、駆動モータM2、クランプ機構50を分けて配置してある。また、第二軸部材42と固定部材30bは、その間に形成する空間に軸受B1を配置してある。
【0035】
下側の駆動モータM2は、二つの空間のうちの上側の空間に配置され、上側の駆動モータM1と同様にモータロータM2a、モータステータM2b、ステータスリーブM2cとから構成され、各々を同様に、第二ハウジングスリーブ32bを介して第二ハウジング部材32に固定し、第二外スリーブ42bを介して第二軸部材42に固定してある。
【0036】
また、下側の駆動モータM2にもコネクタc2を介して複数のケーブルc21を接続してある。コネクタc2を配置するために、第二ハウジングスリーブ32bの下面に局部的に窪んだ空間を形成してある。また、ケーブルc21を通すためにケーブル用配線孔H2を、第二ハウジングスリーブ32b、第一ハウジング部材31、第一ハウジングスリーブ31b、蓋部材33の各内部に軸線方向に沿って連通して形成してある。さらに、第一ハウジング部材31は、その下端部の外周に、ケーブルc21に通じる外向窓31cを設けている。外向窓31cは、第一ハウジング部材31と第二ハウジングスリーブ32bとを連結後にケーブルc21をケーブル用配線孔H2に通す際に使用される。
【0037】
クランプ機構50は、二つの空間のうちの下側の空間に配置され、回転軸40を相対的に締め付けて回転軸40を相対回転不能とするクランプスリーブ51と、クランプスリーブ51を変形させる作動流体を導く受圧部材52とから構成され、第二ハウジング部材32の内周側に受圧部材52、クランプスリーブ51を順次同心円状に配置して連結してある。クランプスリーブ51は、その外周に溝を有し、その溝により上下の厚肉部51a,51aの間に変形可能な薄肉部51bが形成される。また、その溝と受圧部材52とにより、薄肉部51bの外側と受圧部材52との間に圧力室53を形成してある。そして、クランプスリーブ51は、薄肉部51bを第二軸部材42に近接させて配置される。更に、受圧部材52には、その内部に圧力室53に通じる流体通路54が形成してあり、その流体通路54の出口部54aが圧力室53に開口している。流体通路54は、ハウジング部材31,32及び蓋部材33に形成した流体流路であって、接合部材33から外部の流体流路(図示せず)に通じている。そして、流体通路54に流体を供給することにより、薄肉部51bを小径方向に変形させて第二軸部材42を締め付けて回転軸40を回転不能な状態に保持する。
【0038】
軸受B1は、アキシアル方向及びラジアル方向の荷重を支持可能な複列形式のころ軸受を採用してある。具体的には三列ローラベアリング(三列円筒ころ軸受/アキシアル・ラジアルローラベアリングとも言う)を採用してある。詳しく言えば、図8に示すように、軸受B1(三列ローラベアリング)は、内輪B1aと、外輪B1bと、内輪B1aと外輪B1bの間に介在する複数の円筒ころB1cによって構成される。内輪B1aを複数のパーツの組み付けによって片側断面コ字状に外向きに開口して形成し、その開口する溝部の高さ中間部に外輪B1bの内周部を配置し、内輪B1aを回転軸40に、外輪B1bを固定部材30bにそれぞれ連結し、外輪B1bの上、下、内側に円筒ころB1cをそれぞれ配置し、上下の円筒ころB1c、B1cでアキシアル方向の荷重を支持し、内側の円筒ころB1cでラジアル方向の荷重を支持してある。内側の円筒ころB1cは、図示しない保持部材によって保持される。
【0039】
なお、回転軸40の回転量、即ち第一の支持ヘッド11の角度位置を検出するための回転検出器は、図示しないが、ハウジング30と回転軸40の双方に亘って固定してある。回転検出器の検出信号は、工作機械1の制御装置に送られ、第一の支持ヘッド11の回転制御に用いられる。
【0040】
以上の第二の支持ヘッド20において、本発明で言う外装ユニット21は、ハウジング30のうちの反回転駆動対象部材側(回転駆動対象部材の反対側)に位置するケーシング部材30aと、駆動手段Mを構成する2個の駆動モータM1,M2の各モータステータM1b,M2bと、クランプ機構50とを連結して一体化したものに相当し、各モータステータM1b,M2bに接続されたケーブルc11,c21が反回転駆動対象部材側から引き出されるように構成されている。
【0041】
一方、内蔵ユニット22は、残りの部分、即ち、ハウジング30のうちの回転駆動対象部材側に位置する固定部材30bと、回転軸40と、各駆動モータM1,M2のモータロータM1a,M2aと、軸受B1とを連結して一体化したものに相当する。
【0042】
そして、以上の構成による第二の支持ヘッド20によれば、前述のように外装ユニット21に対し内蔵ユニット22が抜き差し可能となっている。言い換えれば、内蔵ユニット22が挿入される外装ユニット21の内部空間の各部の直径寸法(例えば、駆動モータM1,M2が存在する部分においてはモータステータM1b,M2bの内周面の直径寸法)を、それよりも反回転駆動対象部材側に位置する内蔵ユニット22の各部の外形寸法よりも大きくしてあるため、内蔵ユニット22のみを工作機械1から取り外すことが可能となり、モータステータM1b,M2bが固定されているケーシング部材30aを工作機械1から取り外すことなく、軸受B1やクランプ機構50等の第二の支持ヘッド20内の各部材のメンテナンスを可能な状態とすることができる。
【0043】
より詳しくは、メンテナンス作業の際にモータステータM1b,M2bを工作機械1から取り外す必要が無いため、前述のモータステータM1b,M2bに接続されたケーブルと工作機械側の配線との接続解除及び再接続作業が不要となる。その結果、メンテナンス作業の容易化及び時間短縮を図ることができる。なお、内蔵ユニット22に含まれる軸受B1等の部材については、工作機械1から取り外されるため、外部において容易にメンテナンス作業を行うことができる。また、外装ユニット21に含まれるクランプスリーブ51等の部材については、内蔵ユニット22が取り外されることによって外装ユニット21の内部空間に露出した状態となるため、これらについてもメンテナンスが可能な状態となる。
【0044】
次に、図3〜図5に基づいて第二の支持ヘッド20の変形例を説明する。図3に示す第二の支持ヘッド20は、ハウジング30を構成する2つのハウジング部材31,32のうちの反回転駆動対象部材側のもの(第一ハウジング部材31)と蓋部材33とでケーシング部材30aを構成し、回転駆動対象部材側のもの(第二ハウジング部材32)と、係止スリーブ30c(先例の固定部材)とで固定部材30bを構成した例である。そして、駆動手段Mを構成する全ての駆動モータM1,M2のモータステータM1b,M2bを第一ハウジング部材31に固定して外装ユニット21を構成し、駆動モータM1,M2のモータロータM1a,M2aを回転軸40に固定すると共に、複数の軸受B1,B2を回転軸40と第二ハウジング部材32との間に介在させて内蔵ユニット22を構成してある。なお、殆ど距離をおかずに複数の駆動モータM1,M2をC軸方向に沿って直列的に配置し、各軸受B1,B2にはクロスローラベアリングを用いている。
【0045】
図4に示す第二の支持ヘッド20は、これまでの例と同様に駆動手段Mを軸線方向に直列的に配置した複数の駆動モータM1,M2で構成したものであるが、反回転駆動対象部材側の駆動モータM1のモータステータM1bのみをケーシング部材30aの一部を形成する第一ハウジング部材31に固定して外装ユニット21を構成した例である。従って、図4に示す第二の支持ヘッド20では、先例と異なり、回転駆動対象部材側の駆動モータM2は、固定部材30bの一部を形成する第二ハウジング部材32と回転軸40との間に設けられたものとなっている。この場合、内蔵ユニット22を取り外す際には、回転駆動対象部材側のモータステータM2bからのケーブル(図示省略)の接続を解除する作業を要する。しかし、従来のように全ての駆動モータ(モータステータ)について上記作業を行うものと比べ、その作業の容易化及び時間短縮を図ることができる。
【0046】
図5に示す第二の支持ヘッド20は、駆動手段Mに相当する駆動モータM1として、モータロータM1aがモータステータM1bの外周を囲繞するように設けられた、所謂アウターロータ形のDDモータを採用した例である。図示の例では、回転軸40は、反回転駆動対象部材側を小径とし、その小径部41eを囲むようにして筒状部材41fを回転軸40に取り付け、回転軸40の先端部側に筒状空間41dを同心円状に形成している。そして、駆動モータM1のモータロータM1aを筒状空間41dの外周側、即ち、筒状部材41fの内周面に固定し、固定部材30bと共に内蔵ユニット22を構成している。
【0047】
一方、外装ユニット21を構成するためのケーシング部材30aは、内筒30dと外筒30eからなる二重管構造とし、同心円状に配置された外筒30eと内筒30dとが反回転駆動対象部材側において接合部33で繋がれた構造となっている。そして、内筒30dの外周面にモータステータM1bを固定して外装ユニット21を構成している。
【0048】
この図5に示す第二の支持ヘッド20のように、本発明では、駆動手段Mに用いられる駆動モータは、インナーロータ形のDDモータに限らず、アウターロータ形のDDモータであっても良い。
【0049】
そして、図5に示す第二の支持ヘッド20においても、内蔵ユニット22は、外装ユニット21に対し抜き差し可能となっている。より詳しくは、外装ユニット21の主体となるケーシング部材30aのC軸方向に延在する内周面、即ち、内筒30dの内周面及び外筒30eの内周面は、その内周面によって形成される内部空間に挿入される内蔵ユニット22の部分に対し、その各部の直径寸法が、それよりも反回転駆動対象部材側に位置する内蔵ユニット21における上記部分の外径寸法よりも大きく形成されている。具体的には、内筒30dの内周面については、その内部に挿入される回転軸40の小径部41eに対し、その各部の直径寸法が、それよりも反回転駆動対象部材側に位置する小径部41eの各部の外径寸法よりも大きく形成されている。また、外筒30eの内周面については、その内部に挿入される回転軸40(大径部)及び筒状部材41fに対し、その各部の直径寸法が、それよりも反回転駆動対象部材側に位置する回転軸40又は筒状部材41fの各部の外径寸法よりも大きく形成されている。
【0050】
以上から、本発明では、外装ユニット21は、その内部においてC軸方向で内蔵ユニット22と対向する面を有していないとも言える。また、図5に示す例では、ケーシング部材30aと固定部材30bとを連結するためにフランジ接合を用いており、ネジ部材をC軸方向に平行に捩じ込んで両者を連結している。即ち、本発明においては、ケーシング部材30aと固定部材30bとの連結方法は特に限定しないものである。
【0051】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。例えば、ラム6と加工用ヘッド8(第二の支持ヘッド20)との連結構造について、図6に示すように、ラム6のヘッド取付部分6aをケーシング部材30aとして利用しても良い。詳しく言えば、内部に横断面円形の空間を有するヘッド取付部分6aをケーシング部材30aとして使用すると共に、その内周面に駆動モータのモータステータやクランプ機構等を固定して外装ユニット21を形成し、先例の第二の支持ヘッド20におけるハウジング部材31,32及び蓋部材33を省略したものとしても良い。そして、先例の係止スリーブ30cを固定部材30bとして使用してヘッド取付部分6aに連結するようにすれば良い。
【0052】
また、駆動手段を構成する駆動モータの個数は問わず、三個以上でも良い。また、図5の例では、ラム6に対し加工用ヘッド8を連結するために設けられたフランジを利用してケーシング部材30aと固定部材30bを接合するものであったが、加工用ヘッド8をラム6に接合するフランジとは別に専用のフランジをケーシング部材30aと固定部材30bに設けてフランジ接合するものであっても良い。
【0053】
また、本発明が対象とする工作機械用の割出装置は、上記した加工用ヘッド(スピンドルヘッド)に限らず、たとえばワークが載置される円テーブルを回転駆動してその角度位置を割出す回転テーブル装置に適用しても良い。この場合、円テーブルが本発明でいう回転駆動対象部材となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の工作機械用の割出装置の断面図である。
【図2】(イ)(ロ)図は、図1の組立て状態、分解状態を示す説明図である。
【図3】(イ)(ロ)図は、第二の支持ヘッドの第一変形例における組立て状態、分解状態を示す説明図である。
【図4】(イ)(ロ)図は、第二の支持ヘッドの第二変形例における組立て状態、分解状態を示す説明図である。
【図5】(イ)(ロ)図は、第二の支持ヘッドの第三変形例における組立て状態、分解状態を示す説明図である。
【図6】ラムと加工用ヘッドとの連結構造の第一変形例を示す片側断面図である。
【図7】ラムと加工用ヘッドの組立て状態を示す説明図である。
【図8】軸受の構造を示す断面図である。
【図9】工作機械の全体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1工作機械、2ベッド、3コラム、4クロスレール、5サドル、6ラム、
6aヘッド取付部分、7テーブル、8加工用ヘッド、9スピンドル、
10スピンドルユニット、11第一の支持ヘッド、12基部、13ケース、14脚部、
20第二の支持ヘッド、21外装ユニット、22内蔵ユニット、
30ハウジング、30aケーシング部材、30b固定部材、30c係止スリーブ、30d内筒、
30e外筒
31第一ハウジング部材、31a本体、31b第一ハウジングスリーブ、31c外向窓、
32第二ハウジング部材、32a本体、32b第二ハウジングスリーブ、33接合部材
c1コネクタ、c11ケーブル、H1ケーブル用配線孔、
c2コネクタ、c21ケーブル、H2ケーブル用配線孔、
40回転軸、
41第一軸部材、41a本体、41b第一外スリーブ、41c第一内スリーブ、41d筒状空間、
41e小径部、41f筒状部材、
42第二軸部材、42a本体、42b第二外スリーブ、42c第二内スリーブ、42d凹部、
42eフランジ部材、42f連結部材、
50クランプ機構、51クランプスリーブ、51a厚肉部、51b薄肉部、52受圧部材、
53圧力室、54流体通路、54a出口部、
B1軸受、B2軸受、B1a内輪、B1b外輪、B1c円筒ころ、
M駆動手段、
M1駆動モータ、M1aモータロータ、M1bモータステータ、M1cステータスリーブ、
M2駆動モータ、M2aモータロータ、M2bモータステータ、M2cステータスリーブ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に回転駆動対象部材が固定される回転軸(40)と、前記回転軸を支持するために回転軸の外周を少なくとも囲むハウジング(30)と、前記ハウジングと前記回転軸との間に設けられる軸受(B1、B2)と、前記ハウジングと前記回転軸の間に設けられると共に回転軸を回転させるために回転軸の周りに同心円状に配置されたモータロータ(M1a)及びモータステータ(M1b)からなる駆動モータ(M1)を備える駆動手段(M)とを含み、前記ハウジングには前記モータステータを固定し、前記回転軸には前記モータロータを固定する工作機械用の割出装置において、
前記ハウジングは、前記モータステータを固定する反回転駆動対象部材側のケーシング部材(30a)と、前記軸受を前記回転軸との間に介在する回転駆動対象部材側の固定部材(30b)とから構成し、前記ケーシング部材を前記固定部材に着脱可能に連結したもので、
前記回転軸、前記軸受、前記モータロータ及び前記固定部材を組み付けて内蔵ユニット(22)を構成すると共に、前記ケーシング部材と前記モータステータとを組み付け且つモータステータに接続するケーブル(c11)を前記固定部材に対して反回転駆動対象部材側から引き出すことによって外装ユニット(21)を構成し、
前記内蔵ユニットを前記外装ユニットに対して回転駆動対象部材側から抜き差し可能に連結してあることを特徴とする工作機械用の割出装置。
【請求項2】
前記駆動手段は複数の前記駆動モータを回転軸の軸線方向に沿って直列的に設けたもので、
前記ケーシング部材は、少なくとも反回転駆動対象部材側における前記駆動モータのモータステータを固定するものであることを特徴とする請求項1記載の工作機械用の割出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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