工作機械用アタッチメント
【課題】工作機械を用いたワークの微細加工を高精度に実現可能な工作機械用アタッチメントの提供。
【解決手段】工作機械に着脱可能に取り付けられる工作機械用アタッチメント6に、微細加工用工具5をワークに対してX,Y,Z方向に微動させる各微動駆動機構61,62,63を設けた。そして、Z微動駆動機構63により、微細加工用工具5を±Z方向へ往復微動させつつワークの微細加工を実施する。このため、微細加工用工具5を±Z方向に往復微動させることでワークを微細加工するので、微細加工用工具5をZ方向に粗動させてワークを微細加工する構成と比べてイナーシャを小さくすることができ、ワークの微細加工を高精度に実現できる。
【解決手段】工作機械に着脱可能に取り付けられる工作機械用アタッチメント6に、微細加工用工具5をワークに対してX,Y,Z方向に微動させる各微動駆動機構61,62,63を設けた。そして、Z微動駆動機構63により、微細加工用工具5を±Z方向へ往復微動させつつワークの微細加工を実施する。このため、微細加工用工具5を±Z方向に往復微動させることでワークを微細加工するので、微細加工用工具5をZ方向に粗動させてワークを微細加工する構成と比べてイナーシャを小さくすることができ、ワークの微細加工を高精度に実現できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを加工する工作機械に取り付けられる工作機械用アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型のワークを加工する機械として、いわゆるマシニングセンタと呼ばれる工作機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のものは、門型のコラムに両端が支持されたクロスレールを備えている。このクロスレールには、その長手方向(Y方向)に沿って移動可能に支持されたサドルを介して、ラムがZ方向に移動可能に設けられている。このラムには、主軸を介して工具が装着される。また、ラムの下方には、ワークが設置されるテーブルがX方向に移動可能に設けられている。
そして、テーブル、サドル、ラムをX,Y,Z方向に適宜移動させつつ、ワークを加工する構成が採られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−1541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような特許文献1のような大型のワークを加工する構成では、取り付けられる主軸や工具が限定されてしまうため、微細な孔あけ加工などを実施するのが困難である。すなわち、微細な加工を実現するために工具をZ方向に移動させる際の速度を最も低く設定しても、イナーシャの影響により微細な加工を高精度に実現できないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、このような実情などに鑑みて、工作機械を用いたワークの微細加工を高精度に実現可能な工作機械用アタッチメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の工作機械用アタッチメントは、ワークを大型加工する大型加工用工具を前記ワークに対して相対的に粗動させる粗動駆動部を備えた工作機械に取り付けられる工作機械用アタッチメントであって、前記ワークを微細加工する微細加工用工具が取り付けられる微細加工用工具取付部と、この微細加工用工具取付部を前記ワークに対して相対的に微動させる微動駆動部と、この微動駆動部に設けられ前記粗動駆動部に着脱可能に取り付けられるアタッチメント側取付部と、を備え、前記微動駆動部は、前記微細加工用工具取付部を前記ワークに対して接離するZ方向へ微動させるZ微動駆動機構と、前記Z方向と直交するY方向へ微動させるY微動駆動機構と、前記Z方向および前記Y方向と直交するX方向へ微動させるX微動駆動機構と、を備え、前記Z微動駆動機構は、前記Z方向へ往復駆動して前記微細加工用工具取付部を微動させることを特徴とする。
【0007】
ここで、微細加工としては、マイクロメートル単位、ナノメール単位での孔あけ加工、切削加工などが例示できる。また、微細加工用工具としては、微細加工用や超音波切削用あるいは測定用のスピンドル、レーザ加工用のレーザヘッド、微粉末を除去するノズルなどが例示できる。
さらに、微動とは、マイクロメートル単位、ナノメール単位、ピコメートル単位で相対移動させることを意味する。そして、粗動とは、ミリメートル単位で相対移動させることを意味する。
また、相対的な粗動の方向としては、X,Y,Z方向のうち少なくともいずれか1つの方向が例示できる。そして、微動の方向と、粗動の方向とは、一致していてもよいし、一致していなくてもよいし、さらには、直交していてもよいし、直交していなくてもよい。
さらに、微細加工用工具で微細加工されるワークは、一般的に微細加工の対象として認識されている半導体や精密機械などの大きくても数ミリメートルのワークや、車両用、建築用、大型装置用などの小さくてもセンチメートル単位のワークなどが例示できる。
【0008】
この発明によれば、Z微動駆動機構により、微細加工用工具をZ方向に微動させかつ往復(以下、往復微動と称す)させることでワークを微細加工するので、微細加工用工具をZ方向に粗動させてワークを微細加工する構成と比べてイナーシャが小さくなり、ワークの微細加工を高精度に実現できる。
さらに、工作機械に、大型加工用工具または工作機械用アタッチメントを選択的に取り付けることができるので、加工形状に応じてワークを高精度に加工できる。そして、従来ある工作機械に工作機械用アタッチメントを取り付けることができ、工作機械用アタッチメントの利用拡大を容易に図ることができる。
【0009】
本発明の工作機械用アタッチメントでは、前記Z微動駆動機構は、前記Z方向へ往復可能なZ移動子と、このZ移動子に固定された磁性体と、前記Z移動子および前記磁性体を覆い、通電により前記Z移動子および前記磁性体を前記Z方向へ往復させる力を発生させるコイルと、を備えた構成が好ましい。
この発明によれば、コイルへの通電状態によりZ移動子が微動する単位を調節することができ、目的に応じた高精度な微細加工を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下に、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
〔工作機械の構成〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る工作機械の概略構成を示す斜視図、図2は、工作機械用アタッチメントの概略構成を示す側面図、図3は、工作機械用アタッチメントの概略構成を示す斜視図、図4は、コントローラの概略構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、工作機械1は、いわゆる門型のマシニングセンタであり、半導体や精密機械などの大きくても数ミリメートルのワークWや、車両用、建築用、大型装置用などの小さくてもセンチメートル単位の複数のワークWを微細加工することで、微細加工物を製造する。また、ワークWを大型加工する。
この工作機械1は、ワークWを大型加工する大型加工用工具2と、この大型加工用工具2をワークWに対して相対的に粗動させる粗動駆動部3と、この粗動駆動部3に着脱可能に取り付けられる主軸4と、ワークWを微細加工する微細加工用工具5と、この微細加工用工具5が取り付けられるとともに主軸4に着脱可能に取り付けられる工作機械用アタッチメント6と、粗動駆動部3で着脱可能に保持される主軸4、この主軸4で着脱可能に保持される大型加工用工具2および工作機械用アタッチメント6とを交換する保持交換部7と、工作機械1全体を制御するコントローラ8(図4参照)と、を備えている。
【0013】
大型加工用工具2は、例えばミリメートル単位での孔あけ加工を実施するスピンドルであり、粗動駆動部3により着脱可能に保持される。この大型加工用工具2には、粗動駆動部3で保持されるための構成である、例えば略円錐台形状のテーパシャンク部21と、このテーパシャンク部21の先端に設けられた略棒状のプルスタッド22と、テーパシャンク部21の基端に設けられた大型工具位置決め突部(不図示)と、が設けられている。また、大型加工用工具2には、この大型加工用工具2を駆動する大型加工駆動機構24(図4参照)が設けられている。この大型加工駆動機構24は、大型加工用工具2が粗動駆動部3で保持された際に、図4の二点鎖線で示すようにコントローラ8に電気的に接続され、このコントローラ8の制御により駆動する。
【0014】
粗動駆動部3は、水平面内の一方向であるX方向に沿ったX駆動軸を有するX粗動駆動機構31と、水平面内でX方向に直交する方向であるY方向に沿ったY駆動軸を有するY粗動駆動機構32と、X方向およびY方向に直交するZ方向に沿ったZ駆動軸を有するZ粗動駆動機構33と、を備えている。
【0015】
なお、このように各粗動駆動機構31,32,33の駆動軸方向によって規定される座標系をマシン座標系とする。以後の説明では、必要に応じて、このマシン座標系に従って方向を説明する。
【0016】
X粗動駆動機構31は、X方向に沿ったX駆動ガイド軸311と、このX駆動ガイド軸311によってX方向へスライド移動可能にガイドされるとともにワークWが載置されるワーク載置部としてのテーブル面313を上面に有するXスライダ312と、を備えている。
【0017】
Y粗動駆動機構32は、X粗動駆動機構31を間にしてY方向に沿った両側から立設された二本のコラム321と、Xスライダ312から所定の高さをもつとともにY方向に沿ってコラム321に架設されたY駆動ガイド軸322と、Y駆動ガイド軸322に沿ってスライド移動可能にガイドされたYスライダ323と、を備えている。
【0018】
Z粗動駆動機構33は、筒軸をZ方向に有する筒状に形成されたYスライダ323の内周においてZ方向に沿って設けられたZ駆動ガイド軸331と、Yスライダ323からXスライダ312に載置されたワークWに向けてZ駆動ガイド軸331に沿ってスライド可能にガイドされたZスライダ332と、を備えている。
【0019】
各粗動駆動機構31,32,33は、それぞれ独立して動力源(不図示)および動力源の動力をスライダに伝達する動力伝達機構(不図示)を備えている。この駆動源は、コントローラ8により制御される。そして、動力伝達機構によって駆動源の動力が各スライダ312,323,332に向けて伝達されて、各スライダ312,323,332が移動する。なお、動力源としてはリニアモータや回転子を有するモータなどの種々のモータを利用することができる。また、動力伝達機構としては、リニアモータの摺動子をスライダ312,323,332に取り付けた構成や、回転子に接続されたボールねじにスライダ312,323,332を螺合させた構成が例として挙げられる。
【0020】
主軸4は、Zスライダ332の下端側に着脱可能な首振り主軸41および普通主軸42から構成されている。
首振り主軸41は、主軸基端部411と、主軸先端部412と、主軸先端部412を主軸基端部411に対してYZ平面上で揺動可能に支持する首振り軸413と、を備えている。また、普通主軸42は、主軸本体421を備えている。
【0021】
首振り主軸41における主軸基端部411の上端および普通主軸42における主軸本体421の上端と、Zスライダ332の下端とには、これらを着脱可能にする着脱機構(不図示)が設けられている。この着脱機構としては、クランプ機構、ドローバなどを適用できる。
また、首振り主軸41の主軸先端部412の下端には、図2に示すように、大型加工用工具2や工作機械用アタッチメント6を着脱可能に保持する工具取付部415が設けられている。この工具取付部415は、いわゆるクランプ機構により構成され、主軸先端部412の上端に向かうにしたがって縮径する略円錐状に形成されたテーパ孔415Aと、このテーパ孔415Aの上端側に設けられ大型加工用工具2や工作機械用アタッチメント6を着脱可能に把持するコレクトチャック415Bと、主軸先端部412の下端面におけるテーパ孔415Aの一縁に設けられた位置決め溝部415Cと、を備えている。この工具取付部415は、普通主軸42の主軸本体421の下端にも設けられている。
なお、工具取付部415で大型加工用工具2や工作機械用アタッチメント6を保持する動作については、後述する。
【0022】
微細加工用工具5は、例えばナノメートル単位での孔あけ加工を実施するスピンドルであり、工作機械用アタッチメント6により着脱可能に保持される。この微細加工用工具5には、図2に示すように、工作機械用アタッチメント6で保持されるための構成である、テーパシャンク部51と、プルスタッド52と、位置決め突部(不図示)と、が設けられている。また、微細加工用工具5には、この微細加工用工具5を駆動する微細加工駆動機構54(図4参照)が設けられている。この微細加工駆動機構54は、工作機械用アタッチメント6が主軸4で保持された際に、図4の実線で示すようにコントローラ8に電気的に接続され、このコントローラ8の制御により駆動する。
【0023】
工作機械用アタッチメント6は、主軸4で保持された際に、図4の実線で示すように電気的にコントローラ8に接続される。この工作機械用アタッチメント6は、図2および図3に示すように、X微動駆動機構61と、Y微動駆動機構62と、Z微動駆動機構63と、X微動原点センサ64(図4参照)と、Y微動原点センサ(図4参照)と、Z微動原点センサ66(図4参照)と、を備えている。なお、各微動駆動機構61,62,63は、本発明の微動駆動部を構成している。
【0024】
X微動駆動機構61は、微細加工用工具5をX方向に例えばナノメートル単位で微動させる。このX微動駆動機構61は、主軸4の工具取付部415により保持される連結テーブル611と、この連結テーブル611と対向する状態で設けられるXテーブル612と、連結テーブル611におけるXテーブル612と対向する面に設けられた一対のXガイドレール613と、これら一対のXガイドレール613に摺動可能に設けられるとともにXテーブル612に固定されたX摺接保持部614と、Xテーブル612を連結テーブル611に対してX方向に移動させるXリニアモータ615と、を備えている。
【0025】
連結テーブル611は、工具取付部415で保持されるための構成として、大型加工用工具2と同一のものを備えている。すなわち、連結テーブル611は、テーパシャンク部611Aと、プルスタッド611Bと、アタッチメント位置決め突部611Cと、を有するアタッチメント側取付部611Dを備えている。
【0026】
Xガイドレール613は、断面略T字状に形成されている。また、X摺接保持部614は、Xガイドレール613に対応する断面略T字状の溝部を有し、直列状に設けられた2個ずつの部材により構成されている。
Xリニアモータ615は、連結テーブル611における一対のXガイドレール613の間にX方向に沿って設けられたX固定子615Aと、このX固定子615Aに対して隙間を隔ててXテーブル612に設けられたX可動子615Bと、を備えている。
【0027】
Y微動駆動機構62は、微細加工用工具5をY方向に例えばナノメートル単位で微動させる。このY微動駆動機構62は、Xテーブル612と対向する状態で設けられるYテーブル621と、このXテーブル612におけるYテーブル621と対向する面に設けられた一対のYガイドレール622と、これら一対のYガイドレール622に摺動可能に設けられるとともにYテーブル621に固定されたY摺接保持部623と、Yテーブル621をXテーブル612に対してY方向に移動させるYリニアモータ624と、を備えている。
【0028】
Yガイドレール622およびY摺接保持部623は、Xガイドレール613およびX摺接保持部614と同様の構成を有している。
Yリニアモータ624は、Xテーブル612における一対のYガイドレール622の間にY方向に沿って設けられたY固定子624Aと、このY固定子624Aに対して隙間を隔ててYテーブル621に設けられたY可動子(不図示)と、を備えている。
【0029】
Z微動駆動機構63は、微細加工用工具5をZ方向に例えばナノメートル単位で往復微動させる。このZ微動駆動機構63は、略四角筒状に形成され、軸方向一端がYテーブル621の下面に取り付けられるヨーク631を備えている。このヨーク631の内周面における軸方向(上下方向)略中央には、互いに略対向する位置から径方向中央側へ延びる延出部632が設けられている。また、ヨーク631の軸方向一端(上端)には、略四角板状の板ばねで構成された上ストッパばね633が設けられている。さらに、ヨーク631の軸方向他端(下端)には、略中央に工具連通孔634Aを有する四角板状の板ばねで構成された下ストッパばね634が設けられている。
また、ヨーク631における延出部632の上端側および下端側の内周面には、それぞれ上コイル635および下コイル636が設けられている。この上コイル635および下コイル636には、コントローラ8の制御により電流が供給される。
【0030】
さらに、上コイル635および下コイル636の内側には、2個の磁性体としての磁石637が設けられている。この磁石637は、例えば円弧状に形成され、その周方向の端部にS極およびN極が設定されている。そして、磁石637は、S極が上コイル635に対向し、N極が下コイル636に対向する状態で設けられている。
また、2個の磁石637は、これらの間に設けられた四角柱状のZ移動子638に固定されている。このZ移動子638は、ヨーク631よりも小さい高さ寸法を有し、ヨーク631内で上下方向(±Z方向)に往復移動可能に設けられている。そして、Z移動子638および磁石637は、ヨーク631の上下方向中央に位置したときに、上ストッパばね633および下ストッパばね634との間、S極側およびN極側のそれぞれの端部と延出部632との間に隙間Pが形成される形状を有している。さらに、Z移動子638の下端側には、微細加工用工具5を着脱可能に保持するための構成として、微細加工用工具取付部639が設けられている。
【0031】
この微細加工用工具取付部639は、工具取付部415と同様の構成を有し、略円錐状のテーパ孔639Aと、コレクトチャック639Bと、位置決め溝部(不図示)と、を備えている。
そして、微細加工用工具取付部639は、微細加工用工具5のテーパシャンク部51をテーパ孔639Aに嵌合させるとともに位置決め突部を位置決め溝部に嵌合させることで、微細加工用工具5をYテーブル621に対して位置決めし、プルスタッド52をコレクトチャック639Bで把持することで、微細加工用工具5を着脱可能に保持する。なお、図2では、構成を理解しやすいように、テーパシャンク部51と、テーパ孔639Aと、を離して示しているが、実際には密接している。
【0032】
各微動原点センサ64,65,66は、例えばリニアセンサであり、連結テーブル611と、Xテーブル612と、Z移動子638と、にそれぞれ設けられている。この各微動原点センサ64,65,66は、X,Yテーブル612,621、Z移動子638の位置を検出し、この検出した位置に関する信号をコントローラ8へ出力する。
【0033】
そして、工作機械用アタッチメント6は、連結テーブル611のテーパシャンク部611Aがテーパ孔415Aに嵌合されるとともに、位置決め突部611Cが位置決め溝部415Cに嵌合することで主軸4に対して位置決めされ、プルスタッド611Bがコレクトチャック415Bで把持されることで、工具取付部415で着脱可能に保持される。なお、図2では、構成を理解しやすいように、テーパシャンク部611Aと、テーパ孔415Aと、を離して示しているが、実際には密接している。また、大型加工用工具2も工作機械用アタッチメント6と同様の機構により、工具取付部415で保持される。
【0034】
保持交換部7は、図1に示すように、X駆動ガイド軸311とコラム321で構成される隅部に設けられている。この保持交換部7は、略四角箱状の交換本体71と、この交換本体71の上面711上に設けられた4個のパレット72A〜72Dと、保持交換部7を駆動する交換駆動機構74(図4参照)と、を備えている。
【0035】
交換本体71の上面711におけるX駆動ガイド軸311に隣接する側縁側の領域は、パレット72A〜72DがX方向に往復移動可能なパレット移動領域711Aとされている。また、このパレット移動領域711Aに対してX駆動ガイド軸311と反対側の領域は、パレット72A〜72Dが待機するパレット待機領域711Bとされている。さらに、パレット移動領域711Aにおけるコラム321近傍の領域は、パレット交換領域711Cとされている。
パレット72Aには首振り主軸41が、パレット72Bには普通主軸42が、パレット72Cには大型加工用工具2が、パレット72Dには工作機械用アタッチメント6が着脱可能に保持される。
交換駆動機構74は、Zスライダ332で保持された主軸4や、主軸4で保持された大型加工用工具2や工作機械用アタッチメント6を交換する際に、パレット72A〜72Dをパレット待機領域711B、パレット移動領域711A、パレット交換領域711Cとの間で往復移動させる。
【0036】
コントローラ8は、図4に示すように、粗動駆動部3および交換駆動機構74に電気的に接続されている。また、主軸4で工作機械用アタッチメント6が保持された場合に工作機械用アタッチメント6および微細加工駆動機構54と、大型加工用工具2が保持された場合に大型加工用工具2と、電気的に接続される。そして、コントローラ8は、粗動制御部81と、微動制御部82と、全体制御部83と、を備えている。
【0037】
粗動制御部81は、全体制御部83の制御に基づき、粗動駆動部3の各粗動駆動機構31,32,33の駆動量を例えばミリメートル単位で制御する。例えば、粗動制御部81は、電流を各粗動駆動機構31,32,33に流して、各粗動駆動機構31,32,33の駆動量を制御する。
微動制御部82は、全体制御部83の制御に基づき、工作機械用アタッチメント6の各微動駆動機構61,62,63に所定の電流を流して、各微動駆動機構61,62,63の駆動量を例えばナノメートル単位で制御する。
【0038】
ここで、Z微動駆動機構63の動作について、詳細に説明する。
例えば上コイル635のみに一方向への電流が供給されると、この電流と磁石637のS極の磁場とにより上方向(+Z方向)への力が発生して、磁石637に固定されたZ移動子638とともに微細加工用工具5がナノメートル単位で+Z方向へ移動する。また、下コイル636のみに一方向への電流が供給されると下方向(−Z方向)への力が発生して、微細加工用工具5がナノメートル単位で−Z方向へ移動する。
微動制御部82は、上コイル635および下コイル636のみに同じ方向への電流を交互に流すことにより、Z移動子638とともに微細加工用工具5を±Z方向へ微動させる。そして、Z移動子638は、ヨーク631の上端および下端に到達すると、上ストッパばね633および下ストッパばね634に当接して、これらを弾性変形させる。この弾性変形によりZ移動子638と上ストッパばね633などとの当接の衝撃が吸収され、Z移動子638の破損が防止される。
【0039】
全体制御部83は、いわゆるGコードやMコードを用いたプログラムにより構成され、交換制御部831と、加工制御部832と、を備えている。
【0040】
交換制御部831は、Zスライダ332で保持された首振り主軸41および普通主軸42を交換したり、主軸4で保持された大型加工用工具2および工作機械用アタッチメント6を交換する。
具体的には、交換制御部831は、例えば図1に示すように、首振り主軸41で保持された工作機械用アタッチメント6を保持交換部7で保持された大型加工用工具2に交換する場合、交換駆動機構74を制御して、矢印F1に示すようにパレット待機領域711Bのパレット72Dをパレット交換領域711Cまで移動させる。さらに、Yスライダ323を、Zスライダ332がパレット交換領域711Cの上方に位置する(2点鎖線で示す位置)まで移動させ、Zスライダ323を−Z方向(下方)へ移動させることで、パレット72Dに工作機械用アタッチメント6を保持させる。さらに、Zスライダ332を+Z方向(上方)へ移動させ、工具取付部415のコレクトチャック415Bを開かせてプルスタッド611Bの把持を解除させることで、工具取付部415による工作機械用アタッチメント6の保持を解除する。
【0041】
また、交換制御部831は、パレット72Dをパレット待機領域711Bまで戻した後に、パレット72Cをパレット交換領域711Cまで移動させる。そして、Zスライダ332を−Z方向へ移動させることで、大型加工用工具2のテーパシャンク部21を工具取付部415のテーパ孔415Aに嵌合させる。そして、さらにZスライダ332を−Z方向へ移動させ、プルスタッド22をコレクトチャック415Bにより把持させつつ、位置決め突部を位置決め溝部415Cに嵌合させることで、工具取付部415で大型加工用工具2を保持させる。また、大型加工用工具2が保持されたら、Zスライダ332を+Z方向へ移動させる。
以上により、交換処理が終了する。
【0042】
加工制御部832は、例えば作業者によりワークWの加工条件が設定されると、この加工条件に基づいて粗動制御部81、大型加工駆動機構24、微動制御部82、および、微細加工駆動機構54を制御する。
【0043】
具体的には、加工制御部832は、大型加工用工具2を用いて大型加工をする旨の条件が設定された場合、粗動制御部81および大型加工駆動機構24を制御して、大型加工用工具2をミリメートル単位で適宜移動させつつワークWを大型加工する。
【0044】
また、加工制御部832は、微細加工用工具5を用いて、例えば図1に示すようなワークWを微細加工する旨の条件が設定された場合、微動制御部82を介して各微動駆動機構61,62を制御して、微細加工用工具5をナノメートル単位でX,Y方向に微動させる。さらには、必要に応じて、Z微動駆動機構63を制御して、微細加工用工具5をナノメートル単位でZ方向に往復微動させる。また、必要に応じて、粗動制御部81を介して各粗動駆動機構31,32,33を制御して、微細加工用工具5をミリメートル単位でX,Y,Z方向に粗動させる。
【0045】
〔工作機械の動作〕
次に、工作機械1の動作として、微細加工物の製造動作を説明する。
図5は、微細加工物の製造動作を示すフローチャートである。なお、以下の動作の説明において、微細加工用工具5を工具5と、工作機械用アタッチメント6をアタッチメント6と省略して説明する。
【0046】
まず、コントローラ8の加工制御部832は、図5に示すように、アタッチメント6へ交換されたことを認識すると(ステップS1)、アタッチメント6とコントローラ8とを制御可能に接続(サーボオン)して(ステップS2)、両者の接続が解除されている旨の設定をオフ(サーボデリートオフ)にする(ステップS3)。
次に、加工制御部832は、工具取付部415を基準位置へ移動させ、X,Yテーブル612,621の原点(リニア原点)を確立する(ステップS4)。具体的には、各微動原点センサ64,65,66からX,Yテーブル612,621、Z移動子638の位置に関する信号を取得する。そして、この信号に基づいて、各微動駆動機構61,62,63を制御して、X,Yテーブル612,621、Z移動子638を±X,Y,Z方向へ移動させることで、工具取付部415を基準位置に位置させる。
【0047】
次に、加工制御部832は、各粗動駆動機構31,32,33と、各微動駆動機構61,62,63との座標を関連付けて(第2座標系を設定して)(ステップS5)、工具5を最初に加工するワークWの最初の加工位置の上方(ワーク原点)へ移動させる(ステップS6)。そして、工具5を例えば回転駆動させる(ステップS7)。
そして、加工制御部832は、例えば工具5を粗動させて加工位置まで移動させ(ステップS8)、±X,Y方向へ微動、あるいは±Z方向へ往復微動させることで加工位置を微細加工する(ステップS9)。
以上の工程により、微細加工物が製造される。
【0048】
〔第1実施形態の作用効果〕
以上の第1実施形態の工作機械1によれば、以下の作用効果が期待できる。
【0049】
(1)工作機械1に着脱可能に取り付けられる工作機械用アタッチメント6に、微細加工用工具5をワークWに対してX,Y,Z方向に微動させる各微動駆動機構61,62,63を設けている。そして、Z微動駆動機構63により、微細加工用工具5を±Z方向へ往復微動させつつワークWの微細加工を実施する。
このため、微細加工用工具5を±Z方向に往復微動させることでワークWを微細加工するので、微細加工用工具5をZ方向に粗動させてワークWを微細加工する構成と比べてイナーシャを小さくすることができ、ワークWの微細加工を高精度に実現できる。また、工作機械1に、大型加工用工具2または工作機械用アタッチメント6を選択的に取り付けることができるので、加工形状に応じてワークWを高精度に加工できる。そして、従来ある工作機械1に工作機械用アタッチメント6を取り付けることができ、工作機械用アタッチメント6の利用拡大を容易に図ることができる。
【0050】
(2)Z微動駆動機構63を、Z方向へ往復可能なZ移動子638と、このZ移動子638に固定された磁石637と、Z移動子638および磁石637を覆い、通電によりZ移動子638および磁石637をZ方向へ往復させる力を発生させる上,下コイル635,636と、で構成している。
このため、上,下コイル635,636への通電状態によりZ移動子638が微動する単位を調節することができ、目的に応じた高精度な微細加工を実現できる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、図1の工作機械1に着脱可能に設けられる工作機械用アタッチメントについて説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一符号を付し説明を省略あるいは簡略化する。
図6は、第2実施形態に係る工作機械用アタッチメントの概略構成を示す側面図、図7は、図6に示す工作機械用アタッチメントから非回転部材を取り外したところを示す部分拡大図、図8は、図7のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【0052】
〔工作機械用アタッチメントの構成〕
図6に示すように、工作機械用アタッチメント6Aは、Z微動駆動機構1000のみが第1実施形態の工作機械用アタッチメント6と異なる構成を有している。
【0053】
Z微動駆動機構1000は、刃具1050を±Z方向に例えばナノメートル単位で往復微動させる。このZ微動駆動機構1000は、図6〜図8に示すように、回転駆動部1010と、回転部材1020と、非回転部材1030と、保持部材1040を備えている。非回転部材1030は、回転部材1020の微細加工用工具としての刃具1050側の一部と、保持部材1040の回転駆動部1010側の一部を覆っている。
【0054】
回転駆動部1010は、回転部材1020を保持するとともに、矢印R1の向きに回転させる。
回転部材1020の刃具1050側の端部には、後述する第1冠歯車1060が装着されている。また、回転部材1020には、中心部に管路1021が形成されている。この管路1021に連通するように、管路1021の内径よりも拡径された接続孔1022が形成されている。管路1021には、図示しないエア源から供給される圧縮空気CAが供給される。さらに、回転部材1020は、中空円筒状の非回転部材1030の内周面に軸受1023を介して回転自在に保持されている。
第1冠歯車1060は、基準ピッチ円すい角が90°のかさ歯車であり、そのピッチ面は平面である。第1冠歯車1060は、歯が形成されている端部を刃具1050側にして、回転部材1020に固定されている。また、第1冠歯車1060の回転軸部分には、上記の接続孔1022と連通する空孔が形成されている。
【0055】
非回転部材1030は、円筒状の部材からなり、内部に収容孔1031を備えている。また、非回転部材1030には、Yテーブル621側の側面に当該Yテーブル621側に向かって突出するように固定された回り止めピン1032を備えている。この回り止めピン1032は、回転部材1020が回転駆動部1010に回転可能に装着されることにより、Yテーブル621のテーブル嵌合穴621Aに挿入される。この回り止めピン1032がテーブル嵌合穴621Aに挿入されることにより、非回転部材1030は回転部材1020の回転に関わらず回転が規制される。
保持部材1040も円筒状の部材からなり、内部に収容孔1041を備えている。この収容孔1041に、エアモータ1070が挿入されている。エアモータ1070は、保持部材1040に固定されている。保持部材1040の外周には、ばね受け部材1080が内周面を保持部材1040の外周面に嵌合して固定されている。このばね受け部材1080に、第2冠歯車1090がさらに嵌合している。
第2冠歯車1090は、第1冠歯車1060と同様の基準ピッチ円すい角が90°のかさ歯車である。第2冠歯車1090のピッチ面も、第1冠歯車1060の場合と同じく平面である。第2冠歯車1090は、歯が形成されている端部を回転駆動部1010側にして、反対側の端部をばね受け部材1080に固着させて、ばね受け部材1080と一体化している。
第2冠歯車1090とばね受け部材1080は、非回転部材1030の収容孔1031に収容される。ばね受け部材1080は、収容孔1031に収容された時に、当該ばね受け部材1080と非回転部材1030のフランジ1033との間に配置されるコイルスプリング1100の付勢力を受け止める。
【0056】
ばね受け部材1080の外周面には、少なくとも一のキー溝1081が軸方向に沿って形成されている。また、非回転部材1030の収容孔1031の内周面には、すべり摩擦を低減するための玉を備えたキー1034が、軸方向に沿って固定されている。このキー1034がキー溝1081に嵌合すると、保持部材1040は、キー1034に備えられた玉により点接触状態で非回転部材1030に保持される。これにより、保持部材1040は、回転部材1020に対して図6および図8に示す回転軸方向A1およびA2に移動自在となり、かつ、非回転部材1030に対して回転が規制される。したがって、回転部材1020が回転しても、保持部材1040は非回転部材1030に嵌合したままであり、回転することはない。
保持部材1040の刃具1050側の端部には、収容孔1041と連通するように支持孔1042が形成されている。この支持孔1042は、保持部材1040の刃具1050側端部で開口している。支持孔1042の内周には、軸受1043を介してエアモータ1070の駆動軸1071が回転自在に支持されている。エアモータ1070は、回転駆動部1010側に接続管1072を備え、この接続管1072は、第1冠歯車1060の空孔を貫通して回転部材1020の接続孔1022に嵌合しており、接続管1072が接続孔1022内を軸方向に移動可能となっている。また、接続管1072と接続孔1022との間には、Oリング1073が設けられており、このOリング1073は接続管1072と接続孔1022との間をシールしている。
エアモータ1070は、管路1021を通じて供給される圧縮空気CAの圧力に応じた回転数で駆動軸1071を駆動する。駆動軸1071の先端には、チャッキング部材1110が設けられており、このチャッキング部材1110にドリル等の刃具1050が着脱される。
【0057】
楕円歯車1120は、環状のキャリア1130の外周面に所定枚数、回転軸1121によって回転自在に支持されている。キャリア1130は、非回転部材1030の収容孔1031内において、保持部材1040の回転駆動部1010側先端部で、回転駆動部1010の回転軸まわりに回転自在、かつ、回転軸方向A3およびA4の向きに移動自在に設置されている。楕円歯車1120は、非回転部材1030の内周面とキャリア1130の外周面との間に配置され、第1冠歯車1060と第2冠歯車1090に噛合する。
前述のように、ばね受け部材1080と非回転部材1030のフランジ1033との間には、コイルスプリング1100が配置されており、ばね受け部材1080と非回転部材1030を互いに離隔する方向に付勢力が作用している。コイルスプリング1100の付勢力により、ばね受け部材1080と一体化された保持部材1040および第2冠歯車1090は回転駆動部1010方向に押し付けられる。これにより楕円歯車1120を第1冠歯車1060と第2冠歯車1090で挟み込んだ歯車機構が構成され、回転部材1020が回転することにより保持部材1040が往復運動する。非回転部材1030は、ワーク加工時に発生する切り粉等の異物がこのギヤ機構部に侵入することを防ぐカバーの機能も果たしている。楕円歯車1120の形状や第1冠歯車1060および第2冠歯車1090の歯数等は実施例に応じて適宜定めればよいが、本実施形態では、回転部材1020の一回転毎に保持部材1040が回転軸方向A1およびA2に2往復するようになっている。
【0058】
〔工作機械用アタッチメントの動作〕
次に、工作機械用アタッチメント6Aの動作の一例について説明する。なお、X,Y方向への微動については第1実施形態と同様の動作なので、ここでは、Z方向への往復微動のみについて説明する。
図9は、楕円歯車と第2冠歯車との関係が保持部材を回転部材に対して最上点に位置させる関係に変化した状態を示す図、図10は、図9のX−X線に沿った断面図、図11は、保持部材の最下点から最上点への位置の変化の際の楕円歯車、第1冠歯車および第2冠歯車の動作をさらに詳細に説明するための図である。
【0059】
まず、図8に示すように、刃具1050をZ方向に往復微動させる際には、エア源から所望の圧力に調整された圧縮空気CAを回転部材1020の管路1021に供給する。管路1021を通じて、エアモータ1070には圧縮空気CAが供給され、駆動軸1071が回転する。これによって、刃具1050は、図6〜図8に示す矢印R2の向きに、たとえば、数万min−1で回転する。
一方、図6および図7に示すように、回転駆動部1010の駆動により回転部材1020を矢印R1の向きに回転させる。回転部材1020の回転は、第1冠歯車1060を介して楕円歯車1120の回転に変換される。楕円歯車1120は、ばね受け部材1080を楕円歯車1120に押し付けるコイルスプリング1100の付勢力により、第1冠歯車1060および第2冠歯車1090と噛合したまま、回転軸1121まわりに回転しつつ、キャリア1130の回転軸を中心にした円周方向の遊星運動も行う。その際に、楕円歯車1120は、その長軸と短軸の長さの違いにより、図8に示す回転軸方向A3およびA4の向きにも往復運動する。それゆえ、楕円歯車1120と噛合している第2冠歯車1090とともに、保持部材1040および刃具1050も回転軸方向A1およびA2の向きに往復運動する。ただし、保持部材1040は非回転部材1030に対して回転が規制されているので、回転軸方向にのみ往復運動する。
【0060】
たとえば、図7に示す状態において、楕円歯車1120と第2冠歯車1090との関係が、保持部材1040を回転部材1020に対して最下点に位置させる関係にあるとする。
図9に示すように、刃具1050が最下点から数ナノメートルのストロークST1だけ上昇すると、Z微動駆動機構1000の内部では、図10に示すように保持部材1040およびエアモータ1070も回転部材1020に向かって移動する。このとき、楕円歯車1120は、第1冠歯車1060の矢印R1への回転により、図11(A)に示されている位置から図11(B)に示されている位置へ移動している。その際、第1冠歯車1060は回転軸方向へは移動せず、一方、第2冠歯車1090は回転軸方向へは移動自在であるが、回転軸まわりには回転しない。また、コイルスプリング1100の付勢力SPにより、楕円歯車1120と第1冠歯車1060および第2冠歯車1090との噛合は常に保たれる。さらに、前述のように、楕円歯車1120を支持しているキャリア1130は、回転軸方向に移動自在である。したがって、第1冠歯車1060の矢印R1への回転にともなって、楕円歯車1120は、回転軸1121まわりに回転しつつ第2冠歯車1090の円周方向への遊星運動を行なって、図11(A)の位置から図11(B)の位置へ移動する。また、第1冠歯車1060の回転軸方向へも、数ナノメートルのストロークST2分だけ移動する。
回転部材1020が連続的に回転すると、刃具1050はストロークST1の往復運動を繰り返す。楕円歯車1120、第1冠歯車1060、第2冠歯車1090の形状や歯数等は、ストロークST1の往復運動が回転部材1020の1回転あたり2回発生するように形成されているため、たとえば、回転部材1020の回転数が1000min−1である場合には、刃具1050は1分間あたり2000往復する。
【0061】
〔第2実施形態の作用効果〕
以上の第2実施形態の工作機械用アタッチメント6Aによれば、第1実施形態の(1)と同様の作用効果が期待できる。
【0062】
[変形例]
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0063】
すなわち、図12に示すような工作機械用アタッチメント6Bとしてもよい。この工作機械用アタッチメント6Bは、第1実施形態の工作機械用アタッチメント6のYテーブル621とZ微動駆動機構63との間に回転駆動部67を設けたものである。この回転駆動部67は、Z微動駆動機構63を矢印R1の向きに回転させる。そして、コントローラ8は、微細加工用工具5をZ微動駆動機構63により往復微動させるとともに回転駆動部67により回転させて、ワークWを微細加工する。
【0064】
また、工具取付部415として、いわゆるドローバを適用してもよい。
さらに、第1実施形態において、例えば上コイル635のみを設け、この上コイル635に流れる電流の方向を切り替えることでZ移動子638を往復微動させてもよい。
そして、工作機械用アタッチメント6の構成として、主軸4側からX,Y,Z微動駆動機構61,62,63の順序で配置したものを適用したが、異なる順序で配置してもよい。
さらに、本発明の工作機械用アタッチメントを例えば特開2004−34168号公報に記載の5軸制御機械に適用してもよい。
【0065】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、ワークを加工する工作機械に取り付けられる工作機械用アタッチメントに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態に係る工作機械の概略構成を示す斜視図。
【図2】工作機械用アタッチメントの概略構成を示す側面図。
【図3】工作機械用アタッチメントの概略構成を示す斜視図。
【図4】コントローラの概略構成を示すブロック図。
【図5】微細加工物の製造動作を示すフローチャート。
【図6】本発明の第2実施形態に係る工作機械用アタッチメントの概略構成を示す側面図。
【図7】図6に示す工作機械用アタッチメントから非回転部材を取り外したところを示す部分拡大図。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿った断面図。
【図9】楕円歯車と第2冠歯車との関係が保持部材を回転部材に対して最上点に位置させる関係に変化した状態を示す図。
【図10】図9のX−X線に沿った断面図。
【図11】保持部材の最下点から最上点への位置の変化の際の楕円歯車、第1冠歯車および第2冠歯車の動作をさらに詳細に説明するための図。
【図12】本発明の変形例に係る工作機械用アタッチメントの概略構成を示す側面図。
【符号の説明】
【0068】
1…工作機械
2…大型加工用工具
3…粗動駆動部
5…微細加工用工具
6,6A,6B…工作機械用アタッチメント
7…保持交換部
61…微動駆動部を構成するX微動駆動機構
62…微動駆動部を構成するY微動駆動機構
63,1000…微動駆動部を構成するZ微動駆動機構
611D…アタッチメント側取付部
635,636…上,下コイル
637…磁性体としての磁石
638…Z移動子
639…微細加工用工具取付部
1050…微細加工用工具としての刃具
W…ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを加工する工作機械に取り付けられる工作機械用アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型のワークを加工する機械として、いわゆるマシニングセンタと呼ばれる工作機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のものは、門型のコラムに両端が支持されたクロスレールを備えている。このクロスレールには、その長手方向(Y方向)に沿って移動可能に支持されたサドルを介して、ラムがZ方向に移動可能に設けられている。このラムには、主軸を介して工具が装着される。また、ラムの下方には、ワークが設置されるテーブルがX方向に移動可能に設けられている。
そして、テーブル、サドル、ラムをX,Y,Z方向に適宜移動させつつ、ワークを加工する構成が採られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−1541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような特許文献1のような大型のワークを加工する構成では、取り付けられる主軸や工具が限定されてしまうため、微細な孔あけ加工などを実施するのが困難である。すなわち、微細な加工を実現するために工具をZ方向に移動させる際の速度を最も低く設定しても、イナーシャの影響により微細な加工を高精度に実現できないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、このような実情などに鑑みて、工作機械を用いたワークの微細加工を高精度に実現可能な工作機械用アタッチメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の工作機械用アタッチメントは、ワークを大型加工する大型加工用工具を前記ワークに対して相対的に粗動させる粗動駆動部を備えた工作機械に取り付けられる工作機械用アタッチメントであって、前記ワークを微細加工する微細加工用工具が取り付けられる微細加工用工具取付部と、この微細加工用工具取付部を前記ワークに対して相対的に微動させる微動駆動部と、この微動駆動部に設けられ前記粗動駆動部に着脱可能に取り付けられるアタッチメント側取付部と、を備え、前記微動駆動部は、前記微細加工用工具取付部を前記ワークに対して接離するZ方向へ微動させるZ微動駆動機構と、前記Z方向と直交するY方向へ微動させるY微動駆動機構と、前記Z方向および前記Y方向と直交するX方向へ微動させるX微動駆動機構と、を備え、前記Z微動駆動機構は、前記Z方向へ往復駆動して前記微細加工用工具取付部を微動させることを特徴とする。
【0007】
ここで、微細加工としては、マイクロメートル単位、ナノメール単位での孔あけ加工、切削加工などが例示できる。また、微細加工用工具としては、微細加工用や超音波切削用あるいは測定用のスピンドル、レーザ加工用のレーザヘッド、微粉末を除去するノズルなどが例示できる。
さらに、微動とは、マイクロメートル単位、ナノメール単位、ピコメートル単位で相対移動させることを意味する。そして、粗動とは、ミリメートル単位で相対移動させることを意味する。
また、相対的な粗動の方向としては、X,Y,Z方向のうち少なくともいずれか1つの方向が例示できる。そして、微動の方向と、粗動の方向とは、一致していてもよいし、一致していなくてもよいし、さらには、直交していてもよいし、直交していなくてもよい。
さらに、微細加工用工具で微細加工されるワークは、一般的に微細加工の対象として認識されている半導体や精密機械などの大きくても数ミリメートルのワークや、車両用、建築用、大型装置用などの小さくてもセンチメートル単位のワークなどが例示できる。
【0008】
この発明によれば、Z微動駆動機構により、微細加工用工具をZ方向に微動させかつ往復(以下、往復微動と称す)させることでワークを微細加工するので、微細加工用工具をZ方向に粗動させてワークを微細加工する構成と比べてイナーシャが小さくなり、ワークの微細加工を高精度に実現できる。
さらに、工作機械に、大型加工用工具または工作機械用アタッチメントを選択的に取り付けることができるので、加工形状に応じてワークを高精度に加工できる。そして、従来ある工作機械に工作機械用アタッチメントを取り付けることができ、工作機械用アタッチメントの利用拡大を容易に図ることができる。
【0009】
本発明の工作機械用アタッチメントでは、前記Z微動駆動機構は、前記Z方向へ往復可能なZ移動子と、このZ移動子に固定された磁性体と、前記Z移動子および前記磁性体を覆い、通電により前記Z移動子および前記磁性体を前記Z方向へ往復させる力を発生させるコイルと、を備えた構成が好ましい。
この発明によれば、コイルへの通電状態によりZ移動子が微動する単位を調節することができ、目的に応じた高精度な微細加工を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下に、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
〔工作機械の構成〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る工作機械の概略構成を示す斜視図、図2は、工作機械用アタッチメントの概略構成を示す側面図、図3は、工作機械用アタッチメントの概略構成を示す斜視図、図4は、コントローラの概略構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、工作機械1は、いわゆる門型のマシニングセンタであり、半導体や精密機械などの大きくても数ミリメートルのワークWや、車両用、建築用、大型装置用などの小さくてもセンチメートル単位の複数のワークWを微細加工することで、微細加工物を製造する。また、ワークWを大型加工する。
この工作機械1は、ワークWを大型加工する大型加工用工具2と、この大型加工用工具2をワークWに対して相対的に粗動させる粗動駆動部3と、この粗動駆動部3に着脱可能に取り付けられる主軸4と、ワークWを微細加工する微細加工用工具5と、この微細加工用工具5が取り付けられるとともに主軸4に着脱可能に取り付けられる工作機械用アタッチメント6と、粗動駆動部3で着脱可能に保持される主軸4、この主軸4で着脱可能に保持される大型加工用工具2および工作機械用アタッチメント6とを交換する保持交換部7と、工作機械1全体を制御するコントローラ8(図4参照)と、を備えている。
【0013】
大型加工用工具2は、例えばミリメートル単位での孔あけ加工を実施するスピンドルであり、粗動駆動部3により着脱可能に保持される。この大型加工用工具2には、粗動駆動部3で保持されるための構成である、例えば略円錐台形状のテーパシャンク部21と、このテーパシャンク部21の先端に設けられた略棒状のプルスタッド22と、テーパシャンク部21の基端に設けられた大型工具位置決め突部(不図示)と、が設けられている。また、大型加工用工具2には、この大型加工用工具2を駆動する大型加工駆動機構24(図4参照)が設けられている。この大型加工駆動機構24は、大型加工用工具2が粗動駆動部3で保持された際に、図4の二点鎖線で示すようにコントローラ8に電気的に接続され、このコントローラ8の制御により駆動する。
【0014】
粗動駆動部3は、水平面内の一方向であるX方向に沿ったX駆動軸を有するX粗動駆動機構31と、水平面内でX方向に直交する方向であるY方向に沿ったY駆動軸を有するY粗動駆動機構32と、X方向およびY方向に直交するZ方向に沿ったZ駆動軸を有するZ粗動駆動機構33と、を備えている。
【0015】
なお、このように各粗動駆動機構31,32,33の駆動軸方向によって規定される座標系をマシン座標系とする。以後の説明では、必要に応じて、このマシン座標系に従って方向を説明する。
【0016】
X粗動駆動機構31は、X方向に沿ったX駆動ガイド軸311と、このX駆動ガイド軸311によってX方向へスライド移動可能にガイドされるとともにワークWが載置されるワーク載置部としてのテーブル面313を上面に有するXスライダ312と、を備えている。
【0017】
Y粗動駆動機構32は、X粗動駆動機構31を間にしてY方向に沿った両側から立設された二本のコラム321と、Xスライダ312から所定の高さをもつとともにY方向に沿ってコラム321に架設されたY駆動ガイド軸322と、Y駆動ガイド軸322に沿ってスライド移動可能にガイドされたYスライダ323と、を備えている。
【0018】
Z粗動駆動機構33は、筒軸をZ方向に有する筒状に形成されたYスライダ323の内周においてZ方向に沿って設けられたZ駆動ガイド軸331と、Yスライダ323からXスライダ312に載置されたワークWに向けてZ駆動ガイド軸331に沿ってスライド可能にガイドされたZスライダ332と、を備えている。
【0019】
各粗動駆動機構31,32,33は、それぞれ独立して動力源(不図示)および動力源の動力をスライダに伝達する動力伝達機構(不図示)を備えている。この駆動源は、コントローラ8により制御される。そして、動力伝達機構によって駆動源の動力が各スライダ312,323,332に向けて伝達されて、各スライダ312,323,332が移動する。なお、動力源としてはリニアモータや回転子を有するモータなどの種々のモータを利用することができる。また、動力伝達機構としては、リニアモータの摺動子をスライダ312,323,332に取り付けた構成や、回転子に接続されたボールねじにスライダ312,323,332を螺合させた構成が例として挙げられる。
【0020】
主軸4は、Zスライダ332の下端側に着脱可能な首振り主軸41および普通主軸42から構成されている。
首振り主軸41は、主軸基端部411と、主軸先端部412と、主軸先端部412を主軸基端部411に対してYZ平面上で揺動可能に支持する首振り軸413と、を備えている。また、普通主軸42は、主軸本体421を備えている。
【0021】
首振り主軸41における主軸基端部411の上端および普通主軸42における主軸本体421の上端と、Zスライダ332の下端とには、これらを着脱可能にする着脱機構(不図示)が設けられている。この着脱機構としては、クランプ機構、ドローバなどを適用できる。
また、首振り主軸41の主軸先端部412の下端には、図2に示すように、大型加工用工具2や工作機械用アタッチメント6を着脱可能に保持する工具取付部415が設けられている。この工具取付部415は、いわゆるクランプ機構により構成され、主軸先端部412の上端に向かうにしたがって縮径する略円錐状に形成されたテーパ孔415Aと、このテーパ孔415Aの上端側に設けられ大型加工用工具2や工作機械用アタッチメント6を着脱可能に把持するコレクトチャック415Bと、主軸先端部412の下端面におけるテーパ孔415Aの一縁に設けられた位置決め溝部415Cと、を備えている。この工具取付部415は、普通主軸42の主軸本体421の下端にも設けられている。
なお、工具取付部415で大型加工用工具2や工作機械用アタッチメント6を保持する動作については、後述する。
【0022】
微細加工用工具5は、例えばナノメートル単位での孔あけ加工を実施するスピンドルであり、工作機械用アタッチメント6により着脱可能に保持される。この微細加工用工具5には、図2に示すように、工作機械用アタッチメント6で保持されるための構成である、テーパシャンク部51と、プルスタッド52と、位置決め突部(不図示)と、が設けられている。また、微細加工用工具5には、この微細加工用工具5を駆動する微細加工駆動機構54(図4参照)が設けられている。この微細加工駆動機構54は、工作機械用アタッチメント6が主軸4で保持された際に、図4の実線で示すようにコントローラ8に電気的に接続され、このコントローラ8の制御により駆動する。
【0023】
工作機械用アタッチメント6は、主軸4で保持された際に、図4の実線で示すように電気的にコントローラ8に接続される。この工作機械用アタッチメント6は、図2および図3に示すように、X微動駆動機構61と、Y微動駆動機構62と、Z微動駆動機構63と、X微動原点センサ64(図4参照)と、Y微動原点センサ(図4参照)と、Z微動原点センサ66(図4参照)と、を備えている。なお、各微動駆動機構61,62,63は、本発明の微動駆動部を構成している。
【0024】
X微動駆動機構61は、微細加工用工具5をX方向に例えばナノメートル単位で微動させる。このX微動駆動機構61は、主軸4の工具取付部415により保持される連結テーブル611と、この連結テーブル611と対向する状態で設けられるXテーブル612と、連結テーブル611におけるXテーブル612と対向する面に設けられた一対のXガイドレール613と、これら一対のXガイドレール613に摺動可能に設けられるとともにXテーブル612に固定されたX摺接保持部614と、Xテーブル612を連結テーブル611に対してX方向に移動させるXリニアモータ615と、を備えている。
【0025】
連結テーブル611は、工具取付部415で保持されるための構成として、大型加工用工具2と同一のものを備えている。すなわち、連結テーブル611は、テーパシャンク部611Aと、プルスタッド611Bと、アタッチメント位置決め突部611Cと、を有するアタッチメント側取付部611Dを備えている。
【0026】
Xガイドレール613は、断面略T字状に形成されている。また、X摺接保持部614は、Xガイドレール613に対応する断面略T字状の溝部を有し、直列状に設けられた2個ずつの部材により構成されている。
Xリニアモータ615は、連結テーブル611における一対のXガイドレール613の間にX方向に沿って設けられたX固定子615Aと、このX固定子615Aに対して隙間を隔ててXテーブル612に設けられたX可動子615Bと、を備えている。
【0027】
Y微動駆動機構62は、微細加工用工具5をY方向に例えばナノメートル単位で微動させる。このY微動駆動機構62は、Xテーブル612と対向する状態で設けられるYテーブル621と、このXテーブル612におけるYテーブル621と対向する面に設けられた一対のYガイドレール622と、これら一対のYガイドレール622に摺動可能に設けられるとともにYテーブル621に固定されたY摺接保持部623と、Yテーブル621をXテーブル612に対してY方向に移動させるYリニアモータ624と、を備えている。
【0028】
Yガイドレール622およびY摺接保持部623は、Xガイドレール613およびX摺接保持部614と同様の構成を有している。
Yリニアモータ624は、Xテーブル612における一対のYガイドレール622の間にY方向に沿って設けられたY固定子624Aと、このY固定子624Aに対して隙間を隔ててYテーブル621に設けられたY可動子(不図示)と、を備えている。
【0029】
Z微動駆動機構63は、微細加工用工具5をZ方向に例えばナノメートル単位で往復微動させる。このZ微動駆動機構63は、略四角筒状に形成され、軸方向一端がYテーブル621の下面に取り付けられるヨーク631を備えている。このヨーク631の内周面における軸方向(上下方向)略中央には、互いに略対向する位置から径方向中央側へ延びる延出部632が設けられている。また、ヨーク631の軸方向一端(上端)には、略四角板状の板ばねで構成された上ストッパばね633が設けられている。さらに、ヨーク631の軸方向他端(下端)には、略中央に工具連通孔634Aを有する四角板状の板ばねで構成された下ストッパばね634が設けられている。
また、ヨーク631における延出部632の上端側および下端側の内周面には、それぞれ上コイル635および下コイル636が設けられている。この上コイル635および下コイル636には、コントローラ8の制御により電流が供給される。
【0030】
さらに、上コイル635および下コイル636の内側には、2個の磁性体としての磁石637が設けられている。この磁石637は、例えば円弧状に形成され、その周方向の端部にS極およびN極が設定されている。そして、磁石637は、S極が上コイル635に対向し、N極が下コイル636に対向する状態で設けられている。
また、2個の磁石637は、これらの間に設けられた四角柱状のZ移動子638に固定されている。このZ移動子638は、ヨーク631よりも小さい高さ寸法を有し、ヨーク631内で上下方向(±Z方向)に往復移動可能に設けられている。そして、Z移動子638および磁石637は、ヨーク631の上下方向中央に位置したときに、上ストッパばね633および下ストッパばね634との間、S極側およびN極側のそれぞれの端部と延出部632との間に隙間Pが形成される形状を有している。さらに、Z移動子638の下端側には、微細加工用工具5を着脱可能に保持するための構成として、微細加工用工具取付部639が設けられている。
【0031】
この微細加工用工具取付部639は、工具取付部415と同様の構成を有し、略円錐状のテーパ孔639Aと、コレクトチャック639Bと、位置決め溝部(不図示)と、を備えている。
そして、微細加工用工具取付部639は、微細加工用工具5のテーパシャンク部51をテーパ孔639Aに嵌合させるとともに位置決め突部を位置決め溝部に嵌合させることで、微細加工用工具5をYテーブル621に対して位置決めし、プルスタッド52をコレクトチャック639Bで把持することで、微細加工用工具5を着脱可能に保持する。なお、図2では、構成を理解しやすいように、テーパシャンク部51と、テーパ孔639Aと、を離して示しているが、実際には密接している。
【0032】
各微動原点センサ64,65,66は、例えばリニアセンサであり、連結テーブル611と、Xテーブル612と、Z移動子638と、にそれぞれ設けられている。この各微動原点センサ64,65,66は、X,Yテーブル612,621、Z移動子638の位置を検出し、この検出した位置に関する信号をコントローラ8へ出力する。
【0033】
そして、工作機械用アタッチメント6は、連結テーブル611のテーパシャンク部611Aがテーパ孔415Aに嵌合されるとともに、位置決め突部611Cが位置決め溝部415Cに嵌合することで主軸4に対して位置決めされ、プルスタッド611Bがコレクトチャック415Bで把持されることで、工具取付部415で着脱可能に保持される。なお、図2では、構成を理解しやすいように、テーパシャンク部611Aと、テーパ孔415Aと、を離して示しているが、実際には密接している。また、大型加工用工具2も工作機械用アタッチメント6と同様の機構により、工具取付部415で保持される。
【0034】
保持交換部7は、図1に示すように、X駆動ガイド軸311とコラム321で構成される隅部に設けられている。この保持交換部7は、略四角箱状の交換本体71と、この交換本体71の上面711上に設けられた4個のパレット72A〜72Dと、保持交換部7を駆動する交換駆動機構74(図4参照)と、を備えている。
【0035】
交換本体71の上面711におけるX駆動ガイド軸311に隣接する側縁側の領域は、パレット72A〜72DがX方向に往復移動可能なパレット移動領域711Aとされている。また、このパレット移動領域711Aに対してX駆動ガイド軸311と反対側の領域は、パレット72A〜72Dが待機するパレット待機領域711Bとされている。さらに、パレット移動領域711Aにおけるコラム321近傍の領域は、パレット交換領域711Cとされている。
パレット72Aには首振り主軸41が、パレット72Bには普通主軸42が、パレット72Cには大型加工用工具2が、パレット72Dには工作機械用アタッチメント6が着脱可能に保持される。
交換駆動機構74は、Zスライダ332で保持された主軸4や、主軸4で保持された大型加工用工具2や工作機械用アタッチメント6を交換する際に、パレット72A〜72Dをパレット待機領域711B、パレット移動領域711A、パレット交換領域711Cとの間で往復移動させる。
【0036】
コントローラ8は、図4に示すように、粗動駆動部3および交換駆動機構74に電気的に接続されている。また、主軸4で工作機械用アタッチメント6が保持された場合に工作機械用アタッチメント6および微細加工駆動機構54と、大型加工用工具2が保持された場合に大型加工用工具2と、電気的に接続される。そして、コントローラ8は、粗動制御部81と、微動制御部82と、全体制御部83と、を備えている。
【0037】
粗動制御部81は、全体制御部83の制御に基づき、粗動駆動部3の各粗動駆動機構31,32,33の駆動量を例えばミリメートル単位で制御する。例えば、粗動制御部81は、電流を各粗動駆動機構31,32,33に流して、各粗動駆動機構31,32,33の駆動量を制御する。
微動制御部82は、全体制御部83の制御に基づき、工作機械用アタッチメント6の各微動駆動機構61,62,63に所定の電流を流して、各微動駆動機構61,62,63の駆動量を例えばナノメートル単位で制御する。
【0038】
ここで、Z微動駆動機構63の動作について、詳細に説明する。
例えば上コイル635のみに一方向への電流が供給されると、この電流と磁石637のS極の磁場とにより上方向(+Z方向)への力が発生して、磁石637に固定されたZ移動子638とともに微細加工用工具5がナノメートル単位で+Z方向へ移動する。また、下コイル636のみに一方向への電流が供給されると下方向(−Z方向)への力が発生して、微細加工用工具5がナノメートル単位で−Z方向へ移動する。
微動制御部82は、上コイル635および下コイル636のみに同じ方向への電流を交互に流すことにより、Z移動子638とともに微細加工用工具5を±Z方向へ微動させる。そして、Z移動子638は、ヨーク631の上端および下端に到達すると、上ストッパばね633および下ストッパばね634に当接して、これらを弾性変形させる。この弾性変形によりZ移動子638と上ストッパばね633などとの当接の衝撃が吸収され、Z移動子638の破損が防止される。
【0039】
全体制御部83は、いわゆるGコードやMコードを用いたプログラムにより構成され、交換制御部831と、加工制御部832と、を備えている。
【0040】
交換制御部831は、Zスライダ332で保持された首振り主軸41および普通主軸42を交換したり、主軸4で保持された大型加工用工具2および工作機械用アタッチメント6を交換する。
具体的には、交換制御部831は、例えば図1に示すように、首振り主軸41で保持された工作機械用アタッチメント6を保持交換部7で保持された大型加工用工具2に交換する場合、交換駆動機構74を制御して、矢印F1に示すようにパレット待機領域711Bのパレット72Dをパレット交換領域711Cまで移動させる。さらに、Yスライダ323を、Zスライダ332がパレット交換領域711Cの上方に位置する(2点鎖線で示す位置)まで移動させ、Zスライダ323を−Z方向(下方)へ移動させることで、パレット72Dに工作機械用アタッチメント6を保持させる。さらに、Zスライダ332を+Z方向(上方)へ移動させ、工具取付部415のコレクトチャック415Bを開かせてプルスタッド611Bの把持を解除させることで、工具取付部415による工作機械用アタッチメント6の保持を解除する。
【0041】
また、交換制御部831は、パレット72Dをパレット待機領域711Bまで戻した後に、パレット72Cをパレット交換領域711Cまで移動させる。そして、Zスライダ332を−Z方向へ移動させることで、大型加工用工具2のテーパシャンク部21を工具取付部415のテーパ孔415Aに嵌合させる。そして、さらにZスライダ332を−Z方向へ移動させ、プルスタッド22をコレクトチャック415Bにより把持させつつ、位置決め突部を位置決め溝部415Cに嵌合させることで、工具取付部415で大型加工用工具2を保持させる。また、大型加工用工具2が保持されたら、Zスライダ332を+Z方向へ移動させる。
以上により、交換処理が終了する。
【0042】
加工制御部832は、例えば作業者によりワークWの加工条件が設定されると、この加工条件に基づいて粗動制御部81、大型加工駆動機構24、微動制御部82、および、微細加工駆動機構54を制御する。
【0043】
具体的には、加工制御部832は、大型加工用工具2を用いて大型加工をする旨の条件が設定された場合、粗動制御部81および大型加工駆動機構24を制御して、大型加工用工具2をミリメートル単位で適宜移動させつつワークWを大型加工する。
【0044】
また、加工制御部832は、微細加工用工具5を用いて、例えば図1に示すようなワークWを微細加工する旨の条件が設定された場合、微動制御部82を介して各微動駆動機構61,62を制御して、微細加工用工具5をナノメートル単位でX,Y方向に微動させる。さらには、必要に応じて、Z微動駆動機構63を制御して、微細加工用工具5をナノメートル単位でZ方向に往復微動させる。また、必要に応じて、粗動制御部81を介して各粗動駆動機構31,32,33を制御して、微細加工用工具5をミリメートル単位でX,Y,Z方向に粗動させる。
【0045】
〔工作機械の動作〕
次に、工作機械1の動作として、微細加工物の製造動作を説明する。
図5は、微細加工物の製造動作を示すフローチャートである。なお、以下の動作の説明において、微細加工用工具5を工具5と、工作機械用アタッチメント6をアタッチメント6と省略して説明する。
【0046】
まず、コントローラ8の加工制御部832は、図5に示すように、アタッチメント6へ交換されたことを認識すると(ステップS1)、アタッチメント6とコントローラ8とを制御可能に接続(サーボオン)して(ステップS2)、両者の接続が解除されている旨の設定をオフ(サーボデリートオフ)にする(ステップS3)。
次に、加工制御部832は、工具取付部415を基準位置へ移動させ、X,Yテーブル612,621の原点(リニア原点)を確立する(ステップS4)。具体的には、各微動原点センサ64,65,66からX,Yテーブル612,621、Z移動子638の位置に関する信号を取得する。そして、この信号に基づいて、各微動駆動機構61,62,63を制御して、X,Yテーブル612,621、Z移動子638を±X,Y,Z方向へ移動させることで、工具取付部415を基準位置に位置させる。
【0047】
次に、加工制御部832は、各粗動駆動機構31,32,33と、各微動駆動機構61,62,63との座標を関連付けて(第2座標系を設定して)(ステップS5)、工具5を最初に加工するワークWの最初の加工位置の上方(ワーク原点)へ移動させる(ステップS6)。そして、工具5を例えば回転駆動させる(ステップS7)。
そして、加工制御部832は、例えば工具5を粗動させて加工位置まで移動させ(ステップS8)、±X,Y方向へ微動、あるいは±Z方向へ往復微動させることで加工位置を微細加工する(ステップS9)。
以上の工程により、微細加工物が製造される。
【0048】
〔第1実施形態の作用効果〕
以上の第1実施形態の工作機械1によれば、以下の作用効果が期待できる。
【0049】
(1)工作機械1に着脱可能に取り付けられる工作機械用アタッチメント6に、微細加工用工具5をワークWに対してX,Y,Z方向に微動させる各微動駆動機構61,62,63を設けている。そして、Z微動駆動機構63により、微細加工用工具5を±Z方向へ往復微動させつつワークWの微細加工を実施する。
このため、微細加工用工具5を±Z方向に往復微動させることでワークWを微細加工するので、微細加工用工具5をZ方向に粗動させてワークWを微細加工する構成と比べてイナーシャを小さくすることができ、ワークWの微細加工を高精度に実現できる。また、工作機械1に、大型加工用工具2または工作機械用アタッチメント6を選択的に取り付けることができるので、加工形状に応じてワークWを高精度に加工できる。そして、従来ある工作機械1に工作機械用アタッチメント6を取り付けることができ、工作機械用アタッチメント6の利用拡大を容易に図ることができる。
【0050】
(2)Z微動駆動機構63を、Z方向へ往復可能なZ移動子638と、このZ移動子638に固定された磁石637と、Z移動子638および磁石637を覆い、通電によりZ移動子638および磁石637をZ方向へ往復させる力を発生させる上,下コイル635,636と、で構成している。
このため、上,下コイル635,636への通電状態によりZ移動子638が微動する単位を調節することができ、目的に応じた高精度な微細加工を実現できる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、図1の工作機械1に着脱可能に設けられる工作機械用アタッチメントについて説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一符号を付し説明を省略あるいは簡略化する。
図6は、第2実施形態に係る工作機械用アタッチメントの概略構成を示す側面図、図7は、図6に示す工作機械用アタッチメントから非回転部材を取り外したところを示す部分拡大図、図8は、図7のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【0052】
〔工作機械用アタッチメントの構成〕
図6に示すように、工作機械用アタッチメント6Aは、Z微動駆動機構1000のみが第1実施形態の工作機械用アタッチメント6と異なる構成を有している。
【0053】
Z微動駆動機構1000は、刃具1050を±Z方向に例えばナノメートル単位で往復微動させる。このZ微動駆動機構1000は、図6〜図8に示すように、回転駆動部1010と、回転部材1020と、非回転部材1030と、保持部材1040を備えている。非回転部材1030は、回転部材1020の微細加工用工具としての刃具1050側の一部と、保持部材1040の回転駆動部1010側の一部を覆っている。
【0054】
回転駆動部1010は、回転部材1020を保持するとともに、矢印R1の向きに回転させる。
回転部材1020の刃具1050側の端部には、後述する第1冠歯車1060が装着されている。また、回転部材1020には、中心部に管路1021が形成されている。この管路1021に連通するように、管路1021の内径よりも拡径された接続孔1022が形成されている。管路1021には、図示しないエア源から供給される圧縮空気CAが供給される。さらに、回転部材1020は、中空円筒状の非回転部材1030の内周面に軸受1023を介して回転自在に保持されている。
第1冠歯車1060は、基準ピッチ円すい角が90°のかさ歯車であり、そのピッチ面は平面である。第1冠歯車1060は、歯が形成されている端部を刃具1050側にして、回転部材1020に固定されている。また、第1冠歯車1060の回転軸部分には、上記の接続孔1022と連通する空孔が形成されている。
【0055】
非回転部材1030は、円筒状の部材からなり、内部に収容孔1031を備えている。また、非回転部材1030には、Yテーブル621側の側面に当該Yテーブル621側に向かって突出するように固定された回り止めピン1032を備えている。この回り止めピン1032は、回転部材1020が回転駆動部1010に回転可能に装着されることにより、Yテーブル621のテーブル嵌合穴621Aに挿入される。この回り止めピン1032がテーブル嵌合穴621Aに挿入されることにより、非回転部材1030は回転部材1020の回転に関わらず回転が規制される。
保持部材1040も円筒状の部材からなり、内部に収容孔1041を備えている。この収容孔1041に、エアモータ1070が挿入されている。エアモータ1070は、保持部材1040に固定されている。保持部材1040の外周には、ばね受け部材1080が内周面を保持部材1040の外周面に嵌合して固定されている。このばね受け部材1080に、第2冠歯車1090がさらに嵌合している。
第2冠歯車1090は、第1冠歯車1060と同様の基準ピッチ円すい角が90°のかさ歯車である。第2冠歯車1090のピッチ面も、第1冠歯車1060の場合と同じく平面である。第2冠歯車1090は、歯が形成されている端部を回転駆動部1010側にして、反対側の端部をばね受け部材1080に固着させて、ばね受け部材1080と一体化している。
第2冠歯車1090とばね受け部材1080は、非回転部材1030の収容孔1031に収容される。ばね受け部材1080は、収容孔1031に収容された時に、当該ばね受け部材1080と非回転部材1030のフランジ1033との間に配置されるコイルスプリング1100の付勢力を受け止める。
【0056】
ばね受け部材1080の外周面には、少なくとも一のキー溝1081が軸方向に沿って形成されている。また、非回転部材1030の収容孔1031の内周面には、すべり摩擦を低減するための玉を備えたキー1034が、軸方向に沿って固定されている。このキー1034がキー溝1081に嵌合すると、保持部材1040は、キー1034に備えられた玉により点接触状態で非回転部材1030に保持される。これにより、保持部材1040は、回転部材1020に対して図6および図8に示す回転軸方向A1およびA2に移動自在となり、かつ、非回転部材1030に対して回転が規制される。したがって、回転部材1020が回転しても、保持部材1040は非回転部材1030に嵌合したままであり、回転することはない。
保持部材1040の刃具1050側の端部には、収容孔1041と連通するように支持孔1042が形成されている。この支持孔1042は、保持部材1040の刃具1050側端部で開口している。支持孔1042の内周には、軸受1043を介してエアモータ1070の駆動軸1071が回転自在に支持されている。エアモータ1070は、回転駆動部1010側に接続管1072を備え、この接続管1072は、第1冠歯車1060の空孔を貫通して回転部材1020の接続孔1022に嵌合しており、接続管1072が接続孔1022内を軸方向に移動可能となっている。また、接続管1072と接続孔1022との間には、Oリング1073が設けられており、このOリング1073は接続管1072と接続孔1022との間をシールしている。
エアモータ1070は、管路1021を通じて供給される圧縮空気CAの圧力に応じた回転数で駆動軸1071を駆動する。駆動軸1071の先端には、チャッキング部材1110が設けられており、このチャッキング部材1110にドリル等の刃具1050が着脱される。
【0057】
楕円歯車1120は、環状のキャリア1130の外周面に所定枚数、回転軸1121によって回転自在に支持されている。キャリア1130は、非回転部材1030の収容孔1031内において、保持部材1040の回転駆動部1010側先端部で、回転駆動部1010の回転軸まわりに回転自在、かつ、回転軸方向A3およびA4の向きに移動自在に設置されている。楕円歯車1120は、非回転部材1030の内周面とキャリア1130の外周面との間に配置され、第1冠歯車1060と第2冠歯車1090に噛合する。
前述のように、ばね受け部材1080と非回転部材1030のフランジ1033との間には、コイルスプリング1100が配置されており、ばね受け部材1080と非回転部材1030を互いに離隔する方向に付勢力が作用している。コイルスプリング1100の付勢力により、ばね受け部材1080と一体化された保持部材1040および第2冠歯車1090は回転駆動部1010方向に押し付けられる。これにより楕円歯車1120を第1冠歯車1060と第2冠歯車1090で挟み込んだ歯車機構が構成され、回転部材1020が回転することにより保持部材1040が往復運動する。非回転部材1030は、ワーク加工時に発生する切り粉等の異物がこのギヤ機構部に侵入することを防ぐカバーの機能も果たしている。楕円歯車1120の形状や第1冠歯車1060および第2冠歯車1090の歯数等は実施例に応じて適宜定めればよいが、本実施形態では、回転部材1020の一回転毎に保持部材1040が回転軸方向A1およびA2に2往復するようになっている。
【0058】
〔工作機械用アタッチメントの動作〕
次に、工作機械用アタッチメント6Aの動作の一例について説明する。なお、X,Y方向への微動については第1実施形態と同様の動作なので、ここでは、Z方向への往復微動のみについて説明する。
図9は、楕円歯車と第2冠歯車との関係が保持部材を回転部材に対して最上点に位置させる関係に変化した状態を示す図、図10は、図9のX−X線に沿った断面図、図11は、保持部材の最下点から最上点への位置の変化の際の楕円歯車、第1冠歯車および第2冠歯車の動作をさらに詳細に説明するための図である。
【0059】
まず、図8に示すように、刃具1050をZ方向に往復微動させる際には、エア源から所望の圧力に調整された圧縮空気CAを回転部材1020の管路1021に供給する。管路1021を通じて、エアモータ1070には圧縮空気CAが供給され、駆動軸1071が回転する。これによって、刃具1050は、図6〜図8に示す矢印R2の向きに、たとえば、数万min−1で回転する。
一方、図6および図7に示すように、回転駆動部1010の駆動により回転部材1020を矢印R1の向きに回転させる。回転部材1020の回転は、第1冠歯車1060を介して楕円歯車1120の回転に変換される。楕円歯車1120は、ばね受け部材1080を楕円歯車1120に押し付けるコイルスプリング1100の付勢力により、第1冠歯車1060および第2冠歯車1090と噛合したまま、回転軸1121まわりに回転しつつ、キャリア1130の回転軸を中心にした円周方向の遊星運動も行う。その際に、楕円歯車1120は、その長軸と短軸の長さの違いにより、図8に示す回転軸方向A3およびA4の向きにも往復運動する。それゆえ、楕円歯車1120と噛合している第2冠歯車1090とともに、保持部材1040および刃具1050も回転軸方向A1およびA2の向きに往復運動する。ただし、保持部材1040は非回転部材1030に対して回転が規制されているので、回転軸方向にのみ往復運動する。
【0060】
たとえば、図7に示す状態において、楕円歯車1120と第2冠歯車1090との関係が、保持部材1040を回転部材1020に対して最下点に位置させる関係にあるとする。
図9に示すように、刃具1050が最下点から数ナノメートルのストロークST1だけ上昇すると、Z微動駆動機構1000の内部では、図10に示すように保持部材1040およびエアモータ1070も回転部材1020に向かって移動する。このとき、楕円歯車1120は、第1冠歯車1060の矢印R1への回転により、図11(A)に示されている位置から図11(B)に示されている位置へ移動している。その際、第1冠歯車1060は回転軸方向へは移動せず、一方、第2冠歯車1090は回転軸方向へは移動自在であるが、回転軸まわりには回転しない。また、コイルスプリング1100の付勢力SPにより、楕円歯車1120と第1冠歯車1060および第2冠歯車1090との噛合は常に保たれる。さらに、前述のように、楕円歯車1120を支持しているキャリア1130は、回転軸方向に移動自在である。したがって、第1冠歯車1060の矢印R1への回転にともなって、楕円歯車1120は、回転軸1121まわりに回転しつつ第2冠歯車1090の円周方向への遊星運動を行なって、図11(A)の位置から図11(B)の位置へ移動する。また、第1冠歯車1060の回転軸方向へも、数ナノメートルのストロークST2分だけ移動する。
回転部材1020が連続的に回転すると、刃具1050はストロークST1の往復運動を繰り返す。楕円歯車1120、第1冠歯車1060、第2冠歯車1090の形状や歯数等は、ストロークST1の往復運動が回転部材1020の1回転あたり2回発生するように形成されているため、たとえば、回転部材1020の回転数が1000min−1である場合には、刃具1050は1分間あたり2000往復する。
【0061】
〔第2実施形態の作用効果〕
以上の第2実施形態の工作機械用アタッチメント6Aによれば、第1実施形態の(1)と同様の作用効果が期待できる。
【0062】
[変形例]
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0063】
すなわち、図12に示すような工作機械用アタッチメント6Bとしてもよい。この工作機械用アタッチメント6Bは、第1実施形態の工作機械用アタッチメント6のYテーブル621とZ微動駆動機構63との間に回転駆動部67を設けたものである。この回転駆動部67は、Z微動駆動機構63を矢印R1の向きに回転させる。そして、コントローラ8は、微細加工用工具5をZ微動駆動機構63により往復微動させるとともに回転駆動部67により回転させて、ワークWを微細加工する。
【0064】
また、工具取付部415として、いわゆるドローバを適用してもよい。
さらに、第1実施形態において、例えば上コイル635のみを設け、この上コイル635に流れる電流の方向を切り替えることでZ移動子638を往復微動させてもよい。
そして、工作機械用アタッチメント6の構成として、主軸4側からX,Y,Z微動駆動機構61,62,63の順序で配置したものを適用したが、異なる順序で配置してもよい。
さらに、本発明の工作機械用アタッチメントを例えば特開2004−34168号公報に記載の5軸制御機械に適用してもよい。
【0065】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、ワークを加工する工作機械に取り付けられる工作機械用アタッチメントに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態に係る工作機械の概略構成を示す斜視図。
【図2】工作機械用アタッチメントの概略構成を示す側面図。
【図3】工作機械用アタッチメントの概略構成を示す斜視図。
【図4】コントローラの概略構成を示すブロック図。
【図5】微細加工物の製造動作を示すフローチャート。
【図6】本発明の第2実施形態に係る工作機械用アタッチメントの概略構成を示す側面図。
【図7】図6に示す工作機械用アタッチメントから非回転部材を取り外したところを示す部分拡大図。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿った断面図。
【図9】楕円歯車と第2冠歯車との関係が保持部材を回転部材に対して最上点に位置させる関係に変化した状態を示す図。
【図10】図9のX−X線に沿った断面図。
【図11】保持部材の最下点から最上点への位置の変化の際の楕円歯車、第1冠歯車および第2冠歯車の動作をさらに詳細に説明するための図。
【図12】本発明の変形例に係る工作機械用アタッチメントの概略構成を示す側面図。
【符号の説明】
【0068】
1…工作機械
2…大型加工用工具
3…粗動駆動部
5…微細加工用工具
6,6A,6B…工作機械用アタッチメント
7…保持交換部
61…微動駆動部を構成するX微動駆動機構
62…微動駆動部を構成するY微動駆動機構
63,1000…微動駆動部を構成するZ微動駆動機構
611D…アタッチメント側取付部
635,636…上,下コイル
637…磁性体としての磁石
638…Z移動子
639…微細加工用工具取付部
1050…微細加工用工具としての刃具
W…ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを大型加工する大型加工用工具を前記ワークに対して相対的に粗動させる粗動駆動部を備えた工作機械に取り付けられる工作機械用アタッチメントであって、
前記ワークを微細加工する微細加工用工具が取り付けられる微細加工用工具取付部と、
この微細加工用工具取付部を前記ワークに対して相対的に微動させる微動駆動部と、
この微動駆動部に設けられ前記粗動駆動部に着脱可能に取り付けられるアタッチメント側取付部と、を備え、
前記微動駆動部は、前記微細加工用工具取付部を前記ワークに対して接離するZ方向へ微動させるZ微動駆動機構と、前記Z方向と直交するY方向へ微動させるY微動駆動機構と、前記Z方向および前記Y方向と直交するX方向へ微動させるX微動駆動機構と、を備え、
前記Z微動駆動機構は、前記Z方向へ往復駆動して前記微細加工用工具取付部を微動させることを特徴とする工作機械用アタッチメント。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械用アタッチメントにおいて、
前記Z微動駆動機構は、
前記Z方向へ往復可能なZ移動子と、
このZ移動子に固定された磁性体と、
前記Z移動子および前記磁性体を覆い、通電により前記Z移動子および前記磁性体を前記Z方向へ往復させる力を発生させるコイルと、を備えたことを特徴とする工作機械用アタッチメント。
【請求項1】
ワークを大型加工する大型加工用工具を前記ワークに対して相対的に粗動させる粗動駆動部を備えた工作機械に取り付けられる工作機械用アタッチメントであって、
前記ワークを微細加工する微細加工用工具が取り付けられる微細加工用工具取付部と、
この微細加工用工具取付部を前記ワークに対して相対的に微動させる微動駆動部と、
この微動駆動部に設けられ前記粗動駆動部に着脱可能に取り付けられるアタッチメント側取付部と、を備え、
前記微動駆動部は、前記微細加工用工具取付部を前記ワークに対して接離するZ方向へ微動させるZ微動駆動機構と、前記Z方向と直交するY方向へ微動させるY微動駆動機構と、前記Z方向および前記Y方向と直交するX方向へ微動させるX微動駆動機構と、を備え、
前記Z微動駆動機構は、前記Z方向へ往復駆動して前記微細加工用工具取付部を微動させることを特徴とする工作機械用アタッチメント。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械用アタッチメントにおいて、
前記Z微動駆動機構は、
前記Z方向へ往復可能なZ移動子と、
このZ移動子に固定された磁性体と、
前記Z移動子および前記磁性体を覆い、通電により前記Z移動子および前記磁性体を前記Z方向へ往復させる力を発生させるコイルと、を備えたことを特徴とする工作機械用アタッチメント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−166204(P2009−166204A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9246(P2008−9246)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
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