説明

工具ホルダーの誘導加熱による工具の締付けおよび取外しのための装置

【課題】誘導コイルもしくは装置の外部環境における磁界を引き続き低減する。
【解決手段】収容開口部4の中に固定する工具のシャンク5を圧嵌めで保持し、かつ加熱時に解除する、回転工具のシャンク5のための中心収容開口部4を含む工具ホルダー1のスリーブ部2を誘導的に加熱するための装置において、スリーブ部2の加熱のために電流を供給可能の少なくとも1つの誘導コイル6を備える誘導コイル配列と、誘導コイル6の磁束をスリーブ部2の工具側の端部の領域に集結する磁化可能の、電気的に非伝導性または本質的に非伝導性の集束装置本体11とを備えた装置であって、前記集束装置本体11が電気的に伝導性の材料からなる誘導取付体14を担持する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ホルダーのスリーブ部の誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特に高回転数で回転する、たとえばフライスおよびドリルのような工具に対して前記工具のシャンクを工具ホルダーのスリーブ部で収縮することが知られている。前記スリーブ部は、そのためにたとえば前記スリーブ部を囲繞する誘導コイルを利用して加熱され、その結果、工具シャンクは熱の影響下に膨張する、すなわち拡大するスリーブ部の収容開口部の中に差し込むことができる。工具シャンクの外径は収容開口部の呼び径よりも多少大きく、その結果、工具はスリーブ部の冷却後に圧嵌めで回転しないように工具ホルダーの中に保持されている。
【0003】
そのために好適な誘導加熱装置は、たとえばDE10102710A1から知られている。この装置は、工具ホルダーのスリーブ部上に載置可能かつ前記工具ホルダーをその際に半径方向の間隔で環状に囲繞する、交流電流が供給される誘導コイルを有する。誘導コイルの磁界は、電気的に伝導性の、工具ホルダーの磁化可能の材料内でスリーブ部を直接加熱する誘導電流を誘導する。誘導コイルは、軸線方向に少なくとも工具シャンクが収容開口部の中に沈み込む係合長さにわたって延伸し、かつその巻線と共にたとえばスリーブ部の工具側の前端の領域で軸線方向に前記スリーブ部と共に終結する。誘導コイルの内周は半径方向に同一の誘導コイルをスリーブ部の異なる外径を有する工具ホルダーに使用できるようにするために前記スリーブ部と間隔をあけて延伸する。
【0004】
誘導コイルの巻線は、その前面およびその外周で磁化可能の、すなわち強磁性またはフェリ磁性材料からなる集束装置配列によって被覆され、空気を基準にして前記材料の高い磁気伝導性が磁束を本質的に前記外套に集結する。集束装置配列の磁化可能の材料は、集束装置外套も誘導的に加熱されることを阻止するため電気的に非伝導性である。スリーブ部の工具側端部に隣接する集束装置外套の領域は、直接スリーブ部の工具側前面で軸線方向に載る、たいてい環状の集束装置本体として形成されている。このような集束装置本体の意味および目的は、磁界を標定してスリーブ部の中に導入し、そこで効率的に作用させ、かつ同時にスリーブ部から突出する工具シャンクが漂遊磁界成分によって誘導的に加熱されることを阻止することであり、それによって工具シャンクも同様に膨張され、望ましくないものとなる。このような集束装置本体は、たとえばDE10102710A1に記載されているように、好ましくは遮蔽カラーとして形成されている。この遮蔽カラーは、まず外部空間の中に出る磁力線の大部分を捕捉する。前記遮蔽カラーはそれによって効率的な方法で突出する工具シャンクが加熱されることを阻止する。
【0005】
それにもかかわらず、このような配列においても依然として誘導コイルもしくは全装置の外部環境において測定可能の漂遊磁界が存在する。このような漂遊磁界は主たる適用事例数で内部収縮および外部収縮の1次機能も妨害し得る。
【0006】
近年、以前から特別の関心を持っていた範囲のほかにもテーマ「漂遊電界」に対する関心の増大が確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10102710号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、誘導コイルもしくは装置の外部環境における磁界を引き続き低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の要部の特徴によって解決される。集束装置本体は間接的または直接的に電気的に伝導性かつ好ましくは磁気的に非伝導性の材料からなる誘導取付体を担持する。この誘導取付体の中に誘導コイルもしくは装置の外部環境の中で延伸する誘導コイルの磁界が重なり合い、かつこのようにして部分的に減衰する磁界が発生する。この方法により(通常付加的な)能動的な磁界遮蔽が達成される。たとえばフェライトのように電気的に非伝導性かつ磁気的に伝導性であり、かつそのために「受動的遮蔽」とも呼ぶことができる材料からなる極片等によって達成される遮蔽体と比較される。
【0010】
請求項2に従って、これは誘導取付体が誘導取付体自体の中で電流が誘導されるように区間ごとに集束装置本体の外部に延伸する磁界の一部によって貫流されることである。つまり簡略に言えば、減衰される磁界はコイルの外部環境中で自動的に、誘導取付体から出発して減衰しながら作用する逆磁界が発生することを生ぜしめる。
【0011】
好ましくは誘導取付体は、通常円周方向に、自体閉じているリングとして構成されている。このリングは前記方法により高周波磁界の磁力線がそこで実際に完全に捕らえられ、かつ本発明に係る誘導取付体の作用を妨害する可能性が見出されないので、好適な遮蔽を保証する。
【0012】
銅製の誘導取付体の態様が特に好ましい。その限りにおいて、まさに本発明に係る適用において一瞥して等価と思われるその他のあらゆる材料(たとえばアルミニウム)に明らかに優れた作用を発揮することが判明した。
【0013】
誘導取付体は、好ましくは前記誘導取付体が折り返したリングの断面を有するように形成されている。誘導取付体は、それによって集束装置本体から半径方向に集束装置を介して外側の方向へ出て延在し、かつその水平の整列下に集束装置本体の規定どおりの取り付け時に前記集束装置本体から僅かな傾斜(好ましくは10度および20度の間)で水平方向と相対的に上方へ延伸する。この方法により前記誘導取付体は、さもないとまず集束装置本体を迂回する傾向を有する磁力線の本質的な部分に対して前記磁力線によって実効的に貫流される一種の妨害体を形成する。つまり前記磁力線は渦電流と共に相当する逆磁界を誘導取付体の中に生成するために非常に効率的に利用される。
【0014】
好ましくは、集束装置本体がその半径方向の外側で保持リングの中に差し込むことが考慮されている。これは磁気コイル配列に対する集束装置本体の位置決めに利用される。保持リングはその際に同時にある位置で、好ましくは集束装置本体および誘導取付体が互いに平坦に直接接触している位置で集束装置本体に対し誘導取付体も保持する。それによって特記するべき規模で熱がすばやく誘導取付体から集束装置本体へ流れ出ることができる。このような構成によって特に、集束装置本体およびそれに適合する誘導取付体が常に互いに固定して接続されており、かつ必要に応じて一緒に別法の集束装置本体と別法のそれに適合する誘導取付体からなる対応するユニットと交換できるのでハンドリングも簡単になり、利用者がどの誘導取付体をどの集束装置本体に割り当てるかについて思い巡らす必要がない。特に集束装置本体および誘導取付体が互いに平坦に直接接触しているとき、集束装置本体と誘導取付体との間に非常に効率的な磁気的共働、すなわち完全に強化された遮蔽領域が保証されている。
【0015】
有利な発展的形成の枠組の中で、保持リングをプラスチックリングとして構成することを考慮している。プラスチックリングを利用して最も簡単に、集束装置本体と誘導取付体との間に熱膨張によって制約された相対的運動を生じる事実を考慮に入れることができる。これは誘導取付体が集束装置本体と異なり直接前記誘導取付体の中で発生する渦電流によって加熱されるので殆ど避けられない。
【0016】
この保持リングはもちろん原理上セラミックリングとして構成されていてもよい。すなわち、これはセラミックリングが誘導取付体または集束装置本体の熱膨張によって破裂されないように、前記セラミックリングが集束装置本体および誘導取付体を多少の遊びで取り囲む場合である。しかし、これを考慮してもセラミック製の保持リングは明らかに好ましいプラスチック製の保持リングよりもむしろ明白に製造および公差問題をもたらす。
【0017】
保持リングがプラスチックリングである場合、誘導取付体、集束装置本体およびプラスチックリングからなる全ユニットは、理想的に集束装置本体および誘導取付体が一緒に対応するプラスチック射出成形機の中に装入され、かつその硬化後に保持リングを形成するプラスチックで射出成形されることによって製造される。
【0018】
保持リングは、好ましくは温度120℃以上でも、理想的には150℃までその保持機能が保証された状態にとどまる範囲で形状安定性がある耐熱性プラスチックからなる。耐熱性プラスチックからなる保持リングの製造は、複数の内部収縮および外部収縮が休止なしに順々に実行できることを可能にする。しかも誘導取付体、少なくとも誘導取付体が保持リングのプラスチックを熱的に損傷するまで前記誘導取付体が加熱されることによって集束装置本体および保持リングからなるユニットが機能故障することがない。前記使用目的に対して考慮されるプラスチックとして、特にPIまたはPTFEプラスチックが挙げられる。
【0019】
特に好ましい一実施形態の枠組の中で、保持リングのプラスチックは誘導取付体を全部または一部、しかも特に利用者が誘導取付体、集束装置本体および保持リングからなるユニットを装置から取り出したいとき、利用者が何気なく手を触れるその外周領域にも含まれる。この方法により、利用者が誘導取付体の優れた熱伝導性の表面に直接触らないために、利用者は突然加熱された誘導取付体で火傷する危険が低減される。
【0020】
誘導取付体は、理想的には少なくとも部分的に断続的なプラスチック製の接触保護体で具備もしくは被覆されている。この断続的な接触保護体は、一般に狭い間隔で多数の貫通部を具備した、つまり「断続」している好ましくは耐熱性のプラスチックからなる部品である(たとえば上述のようなプラスチックまたはナイロン)。前記貫通部を介して冷却(吹付けまたは対流で流動)する空気もしくは冷却剤は直接誘導取付体の金属表面への流入を要求され、それによって誘導取付体は接触保護体にもかかわらず効率的に冷却することができる。狭く離間しているが、各貫通部は前記貫通部の間にあるウェブと比べて小さいため、利用者の皮膚が約80℃に加熱された誘導取付体に触れる場合でも本質的に前記貫通部を通して誘導取付体の金属表面と直接接触して前記表面の高い熱伝導率のために火傷することはない。個々の事例に依存しているので、個々の事例で前記貫通部をどれだけ大きくかつどれだけ狭く離間させる必要があるかの具体的な表示は不可能である。しかしながら当業者はこれを幾つかの少ない実験によって具体的な個々の事例について算出することができる、誘導取付体の金属表面への空気、もしくは冷却剤流入が一般に可能な限り少なく阻止されるべきであり、その結果、前記金属表面は安全のために十分な接触保護体が必要である限りでのみカバーされる条件を考慮する。前記接触保護体は、保持リングの集積部品または独立の部材として構成することができる。断続的な接触保護体は、理想的に少なくとも部分的に閉じられた一種のケージとして形成されている。すなわち、せいぜい局所的に誘導取付体の表面と接触し、かつその「格子部分」が本質的に誘導取付体の表面から離間しているケージとして構成されている。それに代わり、接触保護体は直接、たとえば網または格子の形式により誘導取付体の表面に当接してもよい。
【0021】
誘導取付体は、理想的には工具ホルダーに組み込まれる工具を使用しかつ再び取り出すことができるまで、それぞれ1つの冷たい工具ホルダーが加熱される誘導リングの最終温度が直接互いに連続して実施される複数の収縮サイクルの後でも100℃以下もしくはより良くは80℃以下であるような大きい熱容量もしくは質量を前記誘導取付体が有するように誘導取付体が形成されている。これは、誘導取付体の中でそこで誘導された電流によって短時間のうちに不完全に周囲の外気に引き渡すことができる少なからぬ熱が生成されるため決定的である。それにもかかわらず、誘導体は任意に加熱されてはならない。これには前記方法が一助となる。
【0022】
以下、本発明は、本発明の作用および長所のその他の詳細が明らかになる図面を利用してより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】工具ホルダーの工具側端部に円板状の極片を備える工具ホルダーを誘導加熱するための本発明に係る装置の軸線方向縦断面図である。
【図2】集束装置本体、誘導取付体および保持リングからなるユニットの軸線方向縦断面図である。
【図3】別法の第2の実施例の半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
個別的に本発明に係る誘導取付体を詳述する前に、初めに全く一般的に図1に示した装置の機能を説明する。
【0025】
少なくとも電気的に伝導性の、しかしこの場合は、たとえば鋼のような磁気的に伝導性の材料からなる工具ホルダー1が識別される。前記工具ホルダーはその他端部にスリーブ部2を有する。スリーブ部2は工具ホルダーの回転軸3に対して同心的にそのシャンク5と共に収容開口部4の中に挿入可能の、詳しく図示しない回転工具、たとえばドリル、フライスまたは摩擦工具のための収容開口部4も含む。
【0026】
シャンク5の外径は収容開口部4の自由呼び径よりも多少大きく、その結果、シャンク5は圧嵌めでスリーブ部2の中に保持されており、それによって必要なトルクは回転工具に伝達することができる。工具シャンク5を工具ホルダー1の中に挿入しまたは前記工具ホルダーから取り出すことができるようにするため、スリーブ部2は加熱によって拡径される。この加熱は、スリーブ部2に載置されかつその側面を利用して半径方向の間隔で同心的に囲繞する誘導コイル6を利用して行われる。これは周波数がたとえば5〜20kHzの交流電流またはパルス直流電流で供給される。近似的に円筒形の巻線7によって発生された磁束はスリーブ部2の中で渦電流を誘導する。これはスリーブ部2を比較的短い時間で加熱し、かつそれによって工具シャンクを挿入または引出すことができるようにするために収容開口部4を十分に拡大する。
【0027】
誘導コイル6は、内部に置かれて多層巻線7が取り付けられている耐熱性のプラスチックまたはセラミックからなるコイル体8を有する。外周および軸線方向に工具から離間する巻線7の前面は、磁束を巻線7の円周領域でヨーク配列9上へ束ねかつ集結する磁気的に伝導性かつ電気的に非伝導性の材料からなる単体または多体ヨーク配列9で覆われている。
【0028】
ヨーク配列9を具備した巻線7は、本質的に工具シャンク5の収容のために指定された収容開口部4もしくはスリーブ部2の全長にわたって延在する。
【0029】
磁束を前記側で巻線7を介して多少軸線方向に突出するヨーク配列9から好適にスリーブ部2の前面10へ向け、かつ同時に前記スリーブ部2を介して突出する工具シャンク5の部分を遮蔽し、かつ誘導加熱から保護するために、コイルの前面SFにヨーク配列9から出る磁界に影響を及ぼす集束装置本体11が組み込まれている。この集束装置本体11は、図1に示したように、好ましくは遮蔽カラーの形態で形成されている。この集束装置本体は磁束を集結する磁気的に伝導性の材料からなるが、本質的にこの材料は電気的に伝導性ではなく、そのため磁界の影響下に特記するほど加熱されない。
【0030】
このように形成された集束装置本体11は、全面的にヨーク配列9から間隔をあけて延伸する。ヨーク配列9は図示した実施例において巻線7の工具側の前面にわたって延在せず、単に多少前記前面上へ突出するが、必要に応じてコイルを覆うこともできる。集束装置本体は、スリーブ部2に軸線方向に対向して軸法線へ延伸する、前記集束装置本体がここでリング状のスリーブ部2の前面で平面的に載る平坦な載置面12を有する。
【0031】
集束装置本体11は、より高い温度に対しても耐性のある磁気的に非伝導性および電気的に非伝導性の材料、特にプラスチックからなる保持リング13を具備している。この保持リング13を用いて集束装置本体11は誘導コイル6と相対的に固定されている。但し、前記集束装置本体が必要に応じて多少別様に寸法指定された集束装置本体(図示せず)から選択した1つと交換できるように固定されている。集束装置本体11は、この方法により誘導コイル6と相対的にそれぞれ使用する(工具ホルダーの)スリーブ部2の具体的な軸線方向の位置決めを生ぜしめる。さらに前記集束装置本体は適合するために同一の誘導コイル6を工具ホルダーで様々なスリーブ部2と交換することもできる。
【0032】
ヨーク配列9とここで遮蔽カラーの形態で構成された集束装置本体11との間に残る環状ギャップは、誘導コイル6の磁気回路内の抵抗を増大する。集束装置本体11は、それにもかかわらずその遮蔽カラーとしての態様のために工具シャンク5の領域で高い割合で漂遊磁界のないスリーブ部2への磁束の集結を許容する。この方法によりスリーブ部2は誘導加熱することができ、工具シャンク5の過度の加熱を生じない。
【0033】
集束装置本体11は、ここで本発明によりその誘導コイル6から離間する外側に誘導取付体14を支持する。集束装置本体と異なり、この誘導取付体は電気的に良好な伝導性であるが磁気的に非伝導性の材料からなる。
【0034】
誘導取付体14は集束装置本体11と直接大面積で接触する。誘導取付体および集束装置本体はここで本質的に集束装置本体の全上側平面に沿って接触する。誘導取付体14は、この方法により必要な場合は非常に早く前記誘導取付体内で発生した熱エネルギーの一部を集束装置本体に引き渡すことができ、それによって生じ得る誘導取付体の過熱が予防される。
【0035】
誘導取付体14は半径方向に外方へ集束装置本体から突出する。前記誘導取付体は、その際に好ましくは上方へ傾斜して(たとえば水平方向に対して10〜20度の角度αで)延伸し、これは図1および2に示されている。従って誘導取付体14はその外周と共に上方へ折り返した円リングとして限定することができる。前記誘導取付体は、この方法で外方へ集束装置本体上に突出するカラーを形成する。このカラーは、さもないとまず集束装置本体を迂回し、かつようやく軸3の1つより高い領域から集束装置本体の中へ入る傾向を有する磁力線の本質的な一部によって強制的に貫流される一種の妨害体を形成する。
【0036】
それに基づき、誘導取付体14の中に必然的に前記誘導取付体側で磁界、一種の逆磁界を形成する渦電流が発生される。つまり、それによってコイル9の外部環境において減衰する磁界は自動的に、誘導取付体14から出発して減衰しながら作用する逆磁界が発生することを生ぜしめる。
【0037】
誘導取付体は、ここで円周方向に閉じた銅リングとして構成されている。原則的に、たとえばアルミニウムリングとしての態様も可能である。しかしながら、銅リングとしての態様がこの場合の本適用事例に対する誘導取付体に本質的により効率的な作用を付与し、もしくは本質的に誘導取付体のより少ない加熱をもたらすことが判明した。
【0038】
集束装置本体および誘導取付体は、すでに上記で簡単に述べた共通の保持リング13の中に差し込まれる。この保持リング13は、高度に耐熱性の、集束装置本体11および誘導取付体14に射出成形されたプラスチックからなる。保持リングのプラスチックは、その最大外径の領域にも誘導取付体を含み、かつ利用者がこの位置で直接露出する熱いおよび必然的に良好に熱伝達する誘導取付体14の表面と接触することを阻止する。
【0039】
図3は、本発明のもう1つの実施例の半断面図を示す。
【0040】
この実施例は、ここで集束装置本体11自体が誘導取付体を具備せず、直接コイル配列9もしくはコイルハウジング(特にスリーブ部の端部に対向するコイル6の前面の領域)にここで同様にカラー状に構成された誘導体14aが設けられたことによって、前記の図1および2を利用して説明した実施例から区別される。つまり上記態様は、ここで上記誘導取付体の図3に該当しない立体的特徴が言及されていない限りにおいて、字義どおりに当てはまる。
【0041】
この誘導体14aの機能原理も上述の誘導取付体14の形態での誘導体について説明したものと同一である。誘導体14aはコイル6の磁界によって貫流され、それによって前記誘導体の中に電流が誘導される。この電流は主磁界を部分的に減衰もしくは偏向する逆磁界を発生し、その結果、この場合も能動的遮蔽と言うこともできる。
【0042】
さらに、誘導体14aのカラー側の主部Hを保持する脚部Fが好ましくはカラー側の主部Hと同じ電気的に伝導性かつ磁気的に非伝導性の材料からならず、好ましくはプラスチック材料からなることを注記しておく。それによって、誘導体の熱負荷は、脚部Fが電気的に伝導性の材料から製造される場合に比べて本質的に低減される。
【0043】
集束装置本体から独立した誘導体の固定もしくは保持は、特に収縮に対してシステムを改造するために種々のスリーブ直径を変える必要がない調整可能のコイルおよび/または調整可能の集束装置本体を備えるシステムにとり実質的に非常に大きい意義がある。
【0044】
さらに、同等に作用する能動的な遮蔽要素が、たとえばコイルの操作ボタンを遮蔽するために、たとえばコイルの円周に取り付けることもできることを堅持する。
【0045】
最後に、さらにここに記載した形式の誘導取付体がもちろん非排他的に遮蔽カラーとして形成された集束装置本体と共働してその作用を発揮することを確認する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明は、工具ホルダーのスリーブの誘導加熱装置として有利に利用され得る。
【符号の説明】
【0047】
1 工具ホルダー、2 スリーブ部、3 工具ホルダーの回転軸、4 収容開口部、5 工具シャンク、6 誘導コイル、7 誘導コイルの巻線、8 コイル体、9 ヨーク配列、10 スリーブ部の前面、11 集束装置本体、12 載置面、13 保持リング、14 誘導取付体、14a 誘導体、SF=コイルの前面、F=脚部、α=傾斜角度。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容開口部(4)の中に固定する工具のシャンク(5)を圧嵌めで保持し、かつ加熱時に解除する、回転工具のシャンク(5)のための中心収容開口部(4)を含む工具ホルダー(1)のスリーブ部(2)が誘導的に加熱される工具シャンクを有する工具の締付けおよび取外しのための装置において、スリーブ部(2)の加熱のために電流を供給可能の少なくとも1つの誘導コイル(6)を備える誘導コイル配列と、誘導コイル(6)の磁束をスリーブ部(2)の工具側の端部の領域に集結する磁気的に伝導性かつ電気的に非伝導性または本質的に非伝導性の集束装置本体(11)とを備える装置であって、
集束装置本体(11)が電気的に伝導性の材料からなる誘導取付体(14)を担持することを特徴とする装置。
【請求項2】
集束装置本体(11)の外部に延伸する磁界の一部によって前記誘導取付体(14)の中で電流が誘導されるように誘導取付体(14)が貫流されるように集束装置本体に前記誘導取付体が配設されており、コイル(6)の磁界が全体的に装置の外部環境を貫流するコイル(6)の磁界の少なくとも局所的な減少を生じるように前記磁界を重ね合わせる逆磁界が誘導取付体の中で誘導された電流によって発生されるように誘導取付体(14)が位置決めされ、かつ空間的に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
誘導取付体(14)が円周方向に電気的に自体閉じたリングとして構成されていることを特徴とする、上記請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
誘導取付体(14)が銅から形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
誘導取付体(14)が折り返したリングの断面を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
リングの断面が水平方向と相対的に上方へ、好ましくは10度〜20度の角度(α)で傾斜していることを特徴とする、請求項3または請求項5に記載の装置。
【請求項7】
集束装置本体(11)がその半径方向外側で磁気コイル配列に位置決めするために、同時に誘導取付体(14)も集束装置本体(11)に対してある位置に保持し、好ましくは集束装置本体(11)および誘導取付体(14)が互いに平坦に直接接触する位置に保持する保持リング(13)の中に差し込まれることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
保持リング(13)が集束装置本体および誘導取付体の共通の少なくとも部分射出成形によって形成されたプラスチックリングであることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
保持リング(13)のプラスチックが誘導取付体(14)を全部または一部包摂しており、その結果、利用者が加熱された誘導取付体で火傷する危険を前記プラスチックが低減することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
工具ホルダーに組み込まれる工具を使用しまたは取り出すことができるようになるまで、それぞれ1つの冷たい工具ホルダーが加熱される誘導取付体(14)の最終温度が直接互いに連続して実施される6回のサイクル後でも平均して80℃以下であるような大きい熱容量もしくは質量を誘導取付体(14)が有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
磁化可能の、電気的に非伝導性または本質的に非伝導性の材料からなるヨーク配列(9)において、前記ヨーク配列(9)が必要であればコイル(6)の前面の領域に配置された集束装置本体(11)を含めてスリーブ部(2)と一緒に少なくとも部分的に閉鎖された磁気回路を誘導コイルの周囲に形成し、かつ前記磁気回路に電気的に伝導性の材料からなる誘導体(14b)が組み込まれているヨーク配列を特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
誘導体(14b)がスリーブ部(2)の端部に対向するコイルの前面の領域に配置されていることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
誘導体(14b)が全体的に装置の外部環境を貫流するコイルの磁界の少なくとも局所的な減少を生じるようにコイル(6)の磁界を重ね合わせる逆磁界が誘導体の中で誘導された電流によって発生されるように、前記誘導体が位置決めされ、かつ空間的に構成されていることを特徴とする、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
誘導体(14、14b)が磁気的に非伝導性の材料から形成されていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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