説明

工具用クランプ機器を有するハンドヘルド電動工具

【課題】 スパナ等のような補助工具を使用する必要無く、単純で信頼できるやり方で工具を作業スピンドルに締結する。
【解決手段】 ハンドヘルド電動工具(10)が説明されている。工具(68)を駆動するための作業スピンドル(12)を有する。この工具(68)が締結要素(38)と作業スピンドル(12)の工具端部の保持部分(36)の間で締結可能である。締結要素(38)が作業スピンドル(12)から取り外され得る開放位置と、締結要素(38)がバネ要素(48)により保持部分(36)にクランプされるクランプ位置の間で、変移機器(24)が締結要素(38)を摺動する。締結要素(38)のクランプシャフト(42)が、作業スピンドル(12)内に挿入可能であり、クランプ位置で作業スピンドル(12)の内側の止めアセンブリ(54)により保持されていて、開放位置とのきに取り除かれ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を駆動するための作業スピンドルを有し、この工具が締結要素と作業スピンドルの工具端部の保持部分の間で締結可能であり、締結要素が作業スピンドルから取り外され得る開放位置と、締結要素がバネ要素により保持部分に対してクランプされるクランプ位置の間で、変移機器が締結要素を摺動するハンドヘルド電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
手動で工具をクランプするクランプ機器を有するハンドヘルド電動工具は、EP 0 152 564 B1から公知である。
【0003】
この公知のハンドヘルド工具は、アングルグラインダとして構成されていて、これは中空の駆動シャフトとそこに変移可能に載置されるスピンドルを含んでいる。このスピンドルは、クランプ位置と開放位置の間でクランプ機器により変移され得る。クランプ位置において、研削ディスク等の工具が、ナットにより締結部分にクランプ可能であり、クランプ機器が移動された後、クランプ位置においてバネの力で保持されることが可能である。開放位置における変移機器は、スピンドルをバネの力に反して移動させるため、ナットは、開放位置のときに工具を交換する目的で、付属品無しでねじることで外され得る。
【0004】
この種のクランプ機器は、基本的にハンドヘルド工具の駆動シャフト上に付属の工具の必要なく工具がクランプされることを可能にしているが、このようなクランプ機器は回転駆動されるクランプ工具のためだけに好適である。もし工具が作業スピンドルの長手軸心の周りで行き来して振動するような振動駆動手段により駆動されるなら、これは大きな運動力で回転の両方向で大きく急なトルクとなり、その結果、公知のクランプ機器で工具が十分にしっかりとクランプされることを確実にするのは可能でない。
【0005】
もう一つのハンドヘルド電動工具がDE 198 24 387 A1から公知であり、これは振動駆動される工具駆動用の作業スピンドルを有している。この工具は、作業スピンドルの保持部分とクランプボルトに堅固に接続された締結フランジの間で作業スピンドルに締結され得る。クランプボルトは、コレット状のクランプ効果、保持リング又はOリングにより、磁力により又はバネが複数のローラ部材を止めるのに影響を与える止め機構により、作業スピンドルに保持され得る。
【0006】
この文献から公知の種々の解決手段は、工具を作業スピンドル上に付属品を使用することなくクランプするのに本質的に適しているが、ここで達成され得るクランプ力は多くの場合同様に不十分であることが分かっている。
【特許文献1】EP 0 152 564 B1
【特許文献2】DE 198 24 387 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、それゆえ、スパナ等のような補助工具を使用する必要無く、単純で信頼できるやり方で工具が作業スピンドルに締結されることを可能にするハンドヘルド電動工具を提供することである。その目的は、例えば振動駆動部により駆動される機械で生じるような重い荷重の下でも、信頼できてしっかりとした工具のクランプを確実にするのに十分な強いクランプ力を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、最初に説明された種類のハンドヘルド電動工具により達成され、そこでは締結要素のクランプシャフトが、作業スピンドルに挿入可能であり、クランプ位置で作業スピンドルの内側の止めアセンブリにより保持されていて、開放位置のときに取り除かれ得る。
【0009】
本発明の課題はこのようにして十分に解決される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によれば、変移機器が、バネ要素によりクランプ力を与えるの間と作業スピンドルの移動の間の完全な分離を可能にする。クランプ位置において、クランプ力を与えるバネ要素が作業スピンドルと協調して移動し、バネ要素を適切に寸法決めすることにより強いクランプ力が与えられ得るようになっている。作業スピンドル内に挿入可能なクランプシャフトの固定のための止めアセンブリは、それ自身作業スピンドルの内側に収容されるため、これは更に変移機器が作業スピンドルから完全に分離されることを可能にし、クランプ位置にあるときに作業スピンドルと変移機器の間にいかなる接触も存在しないようになっている。摩擦力がこうして回避され、重く、急激に、かつ振動する負荷の下でも、クランプ力のいかなる緩みも防止される。
【0011】
本発明の有利な発展において、複数の形状止め要素が、締結要素のクランプシャフトと、クランプ位置におけるクランプシャフトの形状止め固定のための止めアセンブリに設けられている。
【0012】
複数の形状止め要素を使用することは、重い負荷の下でクランプ張力が緩むことに対するより高い安全性を確実にする。
【0013】
本発明の更なる発展によれば、止めアセンブリが、放射方向に移動可能な複数のクランプ部材を有する。
【0014】
このようにして強力なクランプが達成され得る。
【0015】
この態様の1つの発展によれば、止めアセンブリが、カラーを有し、これに対して複数のクランプ部材が放射方向に変移可能に保持される。
【0016】
これらの複数のクランプ部材は、好ましくはバネ要素により放射方向で中心に向けてバイアスされている。
【0017】
複数のクランプ部材は、好ましくはその3つ以上が互いに等角度間隔で設けられ、好ましくはカラーの複数の凹所に保持されている。
【0018】
この態様の有利な発展において、複数のクランプ部材が、工具を向いた複数の側にカラーの複数の傾斜表面と協働する複数の傾斜表面を有し、複数のクランプ部材の複数の傾斜表面でのカラーのいかなる移動も、複数のクランプ部材に影響を与えて中心に向かわせるようになっている。
【0019】
これらの手段は、バネ要素により軸心方向に与えられるクランプ力が、放射方向のクランプ力に、複数の単純な手段で信頼できるように多く変換されて、締結要素のクランプシャフトを確保することを可能にする。
【0020】
この場合、バネ要素によりカラーを閉鎖位置に軸心方向にバイアスするのが好都合である。
【0021】
本発明のもう一つの有利な構成によれば、エジェクタが、作業スピンドルに堅固に取り付けられたスリーブの形状で作業スピンドルに設けられていて、このエジェクタが、複数のクランプ部材の軸心方向へのいかなる移動も工具側で制限している。
【0022】
この手段は、工具を交換する目的で締結要素が作業スピンドルから開放位置に引き出されるべきときに、複数のクランプ部材が安全に操作され得ることを確実にする。
【0023】
本発明の適当な発展において、複数のクランプ部材が中心に向けてカラーから抜けることが複数の突起により防止されている。
【0024】
本発明のもう1つの構成によれば、作業スピンドルが、スピンドルチューブとベアリングジャーナルを有し、これらが、互いに固定的に結合されて好ましくは互いに捩じ込まれることが可能であり、かつ、キャビティを画定し、その内側に止めアセンブリと好ましくはバネ要素が収容される。
【0025】
これは不都合な外部の影響に対して保護されるコンパクトな構造を確実にする。
【0026】
本発明のもう1つの構成によれば、ベアリングジャーナルが、スラスト部材により軸心方向に通過されていて、これにより止めアセンブリがバネ要素の力に反して軸心方向に変移され得る。
【0027】
この場合、変移機器が、好ましくはコックレバーにより操作され得る偏心部を有していて、これがスラスト部材の軸心方向端部に作用する。
【0028】
これらの複数の手段は、クランプ位置と開放位置の間の軸心方向変移を、単純かつ信頼できるやり方で可能にする。
【0029】
本発明のもう1つの態様によれば、偏心部が、開放位置からクランプ位置へのコックレバーの独立したいかなる移動も防止されるような自己止め式で構成されている。
【0030】
この手段により、変移機器がバネ要素の力の下で開放位置からクランプ位置へ不意に移動されないことが確実にされ得る。こうして、バネ要素の力の下で開放位置からクランプ位置への迅速な移動により引き起こされるいかなる危険も排除される。
【0031】
本発明の好ましい発展において、スラスト部材が、クランプ位置のときにベアリングジャーナルにより端部位置に制限されていて、そこで変移機器がスラスト部材からの軸心方向距離を維持している。
【0032】
このようにして、操作の間の摩擦力が回避され、クランプ力の緩みにつながり得る不都合な要因が除去される。
【0033】
スラスト部材は、好ましくはカラーと一緒にネジ止めされ得る。
【0034】
複数のクランプ部材のカラーへの単純な載置が、このようにして達成され得る。
【0035】
複数のクランプ部材は、好ましくは複数の外部表面で囲まれていて、好ましくはOリング等の形状のクランプ要素により中心に向けてバイアスされている。
【0036】
これは、締結要素が作業スピンドル内に挿入される際に、締結要素のクランプシャフトと複数のクランプ部材の間のラチェット接続が既に達成され得ることを確実にする。
【0037】
先に既に述べられたように、作業スピンドルは、好ましくは振動駆動部に連結されていて、作業スピンドルをその長手軸心の周りで振動するように駆動する。
【0038】
この目的のために、作業スピンドルは、偏心部と協働して作業スピンドルを振動するように駆動する振動フォークに接続され得る。
【0039】
バネ要素は、好ましくは全ての利用において十分強いクランプ力が生じるように、寸法決めされるべきである。この目的のため、バネ要素は、ねじりバネ、ディスクバネ又は例えばラバーバネのような他の種類のバネとして具体化され得る。
【0040】
クランプ位置において締結要素の形状止め固定を得るために、複数のクランプ部材の複数の整合歯と協働する歯部分が、締結要素のクランプシャフトに設けられている。
【0041】
この歯部分は、好ましくは周方向に延在する複数の歯頂部を有し、これらの複数の歯頂部が、三角形の横断面で90°より大きい頂角を有する。
【0042】
これは、作業スピンドルから締結要素を引き出す目的で、開放位置における複数のクランプ部材と締結要素の間の形状止め接続が容易に終えられ得ることを確実にする。
【0043】
本発明のもう1つの態様によれば、各クランプ部材が、スラスト部材に支えられたバネにより工具に向けてバイアスされている。
【0044】
これは、複数のクランプ部材が正確に位置決めされることを確実にする。
【0045】
本発明の代替的な態様において、クランプシャフトが、複数のクランプ部材の複数の整合ネジ部分と協働するネジ部分を備えることが可能である。
【0046】
本発明のもう1つの変形によれば、クランプシャフトが、複数の整合クランプ部材と形状止め式で係合する円錐部分を有する。
【0047】
上記された及び以下に説明される本発明の特徴は、各場合で説明された組み合わせだけでなく、他の組み合わせ又は単独で、本発明の範囲から逸脱することなく適用され得るのは明らかである。
【0048】
本発明の追加の特徴及び利点は、以下の好ましい態様の説明から得られ、そこで図面が参照されている。
【実施例】
【0049】
図1は、本発明によるハンドヘルド電動工具のギアヘッド領域を示し、この電動工具はその全体が参照符号10で示されている。ハンドヘルド工具10は、振動駆動部を有していて、工具を小さなピボット角度及び高周波数で作業スピンドル12の長手軸心32の周りに駆動させる。このような振動駆動部は、振動駆動された刃を用いた自動車用窓ガラスの切断、振動駆動された鋸刃での切断、研磨、及び他の多くの種類の作業を含む多くの特殊な作業を行うのに使用される。
【0050】
作業スピンドルを回転させるときとは異なり、作業スピンドルが振動駆動されるときは、回転の両方向に大きな運動力で大きく急なトルクが生じる。工具が作業スピンドルに保持されることを確実にするため、(比較的小さい構造スペースでの)非常に強いクランプ力と強いバックラッシュの無い機構が、全ての操作条件下で必要である。
【0051】
これらの要件は、本発明によるハンドヘルド工具において特殊なクランプシステムを用いて満たされていて、そこでは、補助として使用されなければならない補助工具無しで、工具の迅速なクランプ及び開放が更に可能にされている。
【0052】
図1及び2に示された作業スピンドル12は、その長手軸心32の周りで振動フォーク34により駆動される。この目的のため、図5に示されるように、偏心部88が設けられている。この偏心部は、振動フォークの2つの摺動表面84、86の間に収納され、回転駆動された駆動シャフト90により駆動される。回転駆動動作は、こうして、約0.5°及び7°の間のピボット角度で、毎分約10000−25000振動に設定され得る振動数で、作業スピンドル12の長手軸心32の周りの振動動作に変換される。
【0053】
作業スピンドル12は、2つの部分で構成されていて、ネジ部分18によりベアリングジャーナル16と互いに捩じ込まれ得る実質的にポット形状のスピンドルチューブ14を含む。作業スピンドル12は、ベアリング20にベアリングジャーナル16を介して、及びベアリング22にスピンドルチューブ14を介して載置される。スピンドルチューブ14の外部端部にある保持部分36は、これに対して締結要素38がフランジ部分40を用いてクランプされることが可能であり、工具68を締結するのに役立つ(図2)。締結要素38は、クランプシャフト42を含んでおり、これは保持部分36の中心開口を通って作業スピンドル12内に挿入可能であり、全体として参照符号54で示された止めアセンブリにより形状止め式で締結され得る。クランプ力は、ねじりバネの形状のバネ要素48により与えられ、このバネ要素は、スピンドルチューブ14の内側で保持部分36と止めアセンブリ54の間でクランプされていて、止めアセンブリ54を保持部分36から離すように軸心方向にバイアスし、工具68がスピンドルチューブ14の保持部分36と締結要素38のフランジ部分40の間でしっかりとクランプされるようになっている。
【0054】
補助工具無しで迅速な工具交換を達成する目的で、止めアセンブリ54は、図1に示されたような開放位置と図2に示されたようなクランプ位置の間で、変移機器24により軸心方向に変移され得る。この目的のため、止めアセンブリ54は、スラスト部材50とバネ要素48の間に保持されていて、バネの力により影響を受ける。クランプ位置において、スラスト部材50は、ベアリングジャーナル16の整合凹所に形状止め式で当接し、ベアリングジャーナル16の中心穴を通ってそのシリンダ状のシャフトで外向きに突出する。変移機器24は、偏心部26を含み、これはコックレバー28を用いて偏心軸心30の周りでピボット旋回されることが可能であり、これは図1において破線でのみ示されている。図2に示されたようなクランプ位置において、スラスト部材50の外部前面66と偏心部26の対向押圧表面27の間にギャップがある。クランプ位置において、それゆえ、スラスト部材50と従って作業スピンドル12の全体が変移機器24から分離され、操作の間にいかなる摩擦力も作業スピンドル12に移行され得ないようになっている。もし、対照的に、コックレバー28が図2に示されたクランプ位置から図1に示されたような開放位置へ前方ピボット旋回される場合、偏心部26の押圧表面27がスラスト部材の前面66と接触してバネ要素48の力に反してスラスト部材50を工具68に向けて変移させ、その結果として、以下により詳細に説明されるように、止めアセンブリ54は外向きに押されて締結要素38を開放する。
【0055】
止め54は、カラー56を含み、その形状は図4により詳細に見ることができる。このカラーは、3つのクランプ部材62と協働し、その1つのみが複数の図面に示されている。複数のクランプ部材62が、カラー56の整合凹所76、78、80に保持される。複数のクランプ部材62は、それぞれ工具68を向いた側に傾斜表面70を有し、これは同じ傾斜の傾斜表面72に沿ってカラー56を摺動可能である。中心を向いた側で、複数のクランプ部材62は、それぞれ複数の歯63を備えていて、これらは締結要素38のクランプシャフト42の整合歯部分44と係合する。締結要素38が引き出されたときに複数のクランプ部材62がカラー56からその中心に向けて抜けるのを防止する目的で、複数のクランプ部材62は、カラー56の複数の整合凹所82と係合する複数の横方向突起74を有する。各クランプ部材62は、そのスラスト部材50を向いた側に軸心方向穴65を有し、その穴の内側にバネ64が収容されていて、これは、ヘリカルバネの形状とすることができ、かつ、工具68に向けてクランプ部材62に圧力をかけるのに役立つ。カラー56は、3つのネジによりスラスト部材50に捩じ込まれていて、その1つが図1及び2に見ることができ、そこでそれは参照符号58で示されている。複数のネジ58は、スラスト部材50の複数の整合穴を通って、カラーの整合タップされた複数の盲穴60内に捩じ込まれる。この2部分構造は、複数のクランプ部材62をカラー56の複数の整合開口76、78、80に載置するのに役立つ。
【0056】
ハンドヘルド工具10が操作されて工具68をクランプ又は開放するやり方が、以下に説明される。
【0057】
図1に示されるような開放位置において、コックレバー28が前方に(反時計回りに)その端部位置まで傾けられ、その結果偏心部26の表面27を押圧することにより、スラスト部材50は所定量軸方向に変移される。この位置において、保持部分36と締結要素38のフランジ部分40の間の工具のクランプが終わる。この位置において、複数のクランプ部材62は、締結要素38と協調して工具68に向けて軸方向に変移され、エジェクタ46により画定された端部位置に保持される。エジェクタ46は、シリンダ状のスリーブとして構成されていて、これはスピンドルチューブ14の端部における中心開口内に圧力嵌め合いにより挿入されるか又は接着されている。図1に示されるように、複数のクランプ部材がそれらの複数の外部端部にエジェクタ46の前面を接触させるとき、エジェクタ46は、スラスト部材50が変移する際の軸心方向における複数のクランプ部材62の軸心方向移動を制限する。偏心部26が更に図1に示された端部位置まで移動するとき、複数のクランプ部材62及びカラー56の複数の傾斜表面70及び72の間の結果としてギャップが生じる。更に締結要素38が引き出されると、複数のクランプ部材62はそれゆえ放射方向外向きに動き、こうしてクランプシャフト42の歯部分44を開放する。この状況は、図3の拡大断面図により詳細に見ることができる。複数のクランプ部材62は、それらの工具側端部によりエジェクタ46の前面にそれぞれ保持されていて、締結要素38が引き出されるときにそれらの歯とともに外向きに逃げることが可能である。図3における拡大図は、Oリングの形状のクランプ要素67(図1及び2には示されていない)を示しており、これは複数のクランプ部材62をそれらの複数の外部表面で収納し、こうしてそれらを中心に向けて小さなバイアス力で保持する。
【0058】
図1及び図3に示されるような開放位置において、バネ48がその最大に圧縮された状態で示されている。もっとも、偏心部26は自己止め式に構成されているため、コックレバー28はこの位置からクランプ位置へ独立して戻ることができない。
【0059】
この位置において、締結要素38が引かれ、工具68が入れ換えられ、締結要素38が更に作業スピンドル12に再挿入され得る。締結要素と複数のクランプ部材が相互に噛み合うため、ラチェット作用が端部位置に生じる。これが生じるとき、複数のクランプ部材62が締結要素38の歯部分44を形状止め式でしっかりと各ラチェット位置に保持し、それにバイアス力を与える。締結要素38が挿入されるときにこのラチェット機能を段階的な動きで確実にするのに必要なバイアスは、ここでは図3に示されるようなクランプ要素67により達成され、これは例えばOリングの形状である。この歯の係合は、頂角が90°よりも大きくなるように構成され、これは小さな操作力が必要とされて自己止めが生じないという結果となる。作業スピンドル12内への挿入のときに、締結要素38はそれゆえOリング67のバイアス力の形の小さな抵抗力を克服でき、その結果複数のクランプ部材62は、締結要素38の歯部分44との接触を無くすことなく放射方向に動き、それらは各ラチェット位置に再びしっかりと保持される。
【0060】
コックレバーとそれに取り付けられた偏心部26を時計回りに回転させることにより、スラスト部材50は、バネ要素48のバネ力の結果として、止めアセンブリ54と協調して上向きに移動することができる。この止めアセンブリ54の移動は、複数のクランプ部材62の複数の傾斜表面70とカラー56の複数の整合傾斜表面72の間のギャップを閉鎖する。こうして、複数のクランプ部材62はカラー56により内向きに歯部分44に押圧されて後者と形状止め式で係合する。複数のクランプ部材62は、締結要素38を収納し、それを放射方向に強い力でクランプし、これにより締結要素38はスラスト部材50に向けて内向きに同時に引張られ、工具68は、図2に示されるように、スピンドルチューブ14の保持部分36にしっかりと押圧される。
【0061】
変移機器24がクランプ位置に位置するとき、ギャップは、既に述べられたように、偏心部26の押圧表面27とスラスト部材50の前面66の間に存在する。結果として、スラスト部材50は変移機器24から機械的に分離される。止めアセンブリ54が負荷のもとで開口されることは、その幾何学的状況のために可能でない。もちろん、与えられなければならない力よりも小さい、工具68が保持部分36にクランプされる力で、締結要素38が外向きに引き出されることが理論的に可能である。もっとも、これは適切な強度のバネ48により防止される。短時間の過負荷の場合でも全く問題とならない。なぜなら、止めアセンブリ54ではなく工具68へのクランプ力のみが弱められるからである。
【0062】
偏心部26が図2に示されたクランプ位置にあるとき、締結要素38が作業スピンドル12内に挿入されているか否かに関係なく、偏心部26の押圧表面27とスラスト部材50の前面66の間にギャップが確保される。閉鎖クランプシステムにおけるこの「分離」は、それゆえ締結要素38が挿入されているか否かとは無関係である。
【0063】
クランプシャフト42の歯部分44と、複数のクランプ部材62の複数の整合歯63は、同一のピッチを有する溝付プロファイルとして構成され得る。もちろん、可変のピッチと可変の頂角を有する歯付プロファイルを選択することも可能である。加えて、歯部分44は、ネジ部分として具体化されることも可能であり、複数のクランプ部材62の複数の整合歯63が対応して構成され得る。
【0064】
更に、歯部分44を有するクランプシャフト42の替わりに、滑らかな表面を有するクランプシャフト42のみを使用することも可能であり、もし必要なら、複数のクランプ部材上の硬質金属又はダイヤモンド被覆されたクランプ表面と組み合わせて、摩擦係合を増加させ、又は微小噛み合いをさせることも可能である。
【0065】
最後に、僅かに円錐形状のクランプシャフト42が使用可能であり、もし複数のクランプ部材62の複数のクランプ表面が対応して形作られるなら、これは一種の無限可変及び相互止め接続という結果となる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明によるハンドヘルド工具の断面図を示し、これはギアヘッドの領域に振動駆動手段を有し、開放位置で締結要素を有している。
【図2】図1のハンドヘルド工具をクランプ位置で示す。
【図3】図1の拡大部分をクランプ部分の領域で示す。
【図4】カラーの拡大分解図と整合クランプ部分を示す。
【図5】振動駆動手段の振動フォークの拡大図を、関連する偏心部及び駆動シャフトとともに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具(68)を駆動するための作業スピンドル(12)を有し、この工具(68)が締結要素(38)と作業スピンドル(12)の工具端部の保持部分(36)の間で締結可能であり、締結要素(38)が作業スピンドル(12)から取り外され得る開放位置と、締結要素(38)がバネ要素(48)により保持部分(36)にクランプされるクランプ位置の間で、変移機器(24)が締結要素(38)を摺動するハンドヘルド電動工具であって、締結要素(38)のクランプシャフト(42)が、作業スピンドル(12)内に挿入可能であり、クランプ位置で作業スピンドル(12)の内側の止めアセンブリ(54)により保持されていて、開放位置のときに取り除かれ得ることを特徴とする、ハンドヘルド電動工具(10)。
【請求項2】
複数の形状止め要素(44、63)が、締結要素(38)のクランプシャフト(42)と、クランプ位置におけるクランプシャフト(42)の形状止め固定のための止めアセンブリ(54)に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項3】
止めアセンブリ(54)が、放射方向に移動可能な複数のクランプ部材(62)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項4】
止めアセンブリ(54)が、カラー(56)を有し、これに対して複数のクランプ部材(62)が放射方向に変移可能に保持されることを特徴とする、請求項3に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項5】
複数のクランプ部材(62)が、バネ要素(48)により放射方向で中心に向けてバイアスされていることを特徴とする、請求項3又は4に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項6】
複数のクランプ部材(62)が、カラー(56)の複数の凹所(76、78、80)に保持されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項7】
複数のクランプ部材(62)が、工具(68)を向いた側にカラー(56)の複数の傾斜表面(72)と協働する複数の傾斜表面(70)を有し、複数のクランプ部材(62)の複数の傾斜表面(70)でのカラー(56)のいかなる移動も、複数のクランプ部材(62)に影響を与えて中心に向かわせるようになっていることを特徴とする、請求項4、5又は6に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項8】
カラー(56)が、バネ要素(48)により閉鎖位置に向けて軸心方向にバイアスされていることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項9】
エジェクタ(46)が、作業スピンドル(12)に堅固に取り付けられたスリーブの形状で作業スピンドル(12)に設けられていて、このエジェクタが、複数のクランプ部材(62)の軸心方向へのいかなる移動も工具側で制限していることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか1項に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項10】
複数のクランプ部材(62)が中心に向けてカラー(56)から抜けることが、複数の突起(74)により防止されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項11】
作業スピンドル(12)が、スピンドルチューブ(14)とベアリングジャーナル(16)を有し、これらが、互いに固定的に結合されて好ましくは互いに捩じ込まれることが可能であり、かつ、キャビティを画定し、その内側に止めアセンブリ(54)と好ましくはバネ要素(48)が収容されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項12】
ベアリングジャーナル(16)が、スラスト部材(50)により軸心方向に通過されていて、これにより止めアセンブリ(54)がバネ要素(48)の力に反して軸心方向に変移され得ることを特徴とする、請求項11に記載のハンドヘルド工具。
【請求項13】
変移機器(24)が、コックレバー(28)により操作され得る偏心部(26)を有していて、この偏心部がスラスト部材(50)の軸心方向端部(66)に作用することを特徴とする、請求項12に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項14】
偏心部(26)が、開放位置からクランプ位置へのコックレバー(28)の独立したいかなる移動も防止されるような自己止め式で構成されていることを特徴とする、請求項13に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項15】
スラスト部材(50)が、クランプ位置のときにベアリングジャーナル(16)により端部位置に制限されていて、そこで変移機器(24)がスラスト部材(50)からの軸心方向距離を維持していることを特徴とする、請求項13、14又は15に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項16】
スラスト部材(50)が、カラー(56)と一緒にネジ止めされ得ることを特徴とする、請求項12〜15のいずれか1項に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項17】
複数のクランプ部材(62)が、それらの複数の外部表面で囲まれていて、好ましくはOリング等の形状で構成されたクランプ要素(67)により中心に向けてバイアスされていることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項18】
作業スピンドル(12)が、振動駆動手段(34、88)に連結されていて、作業スピンドルをその長手軸心(32)の周りで振動するように駆動することを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項19】
作業スピンドル(12)が、偏心部(88)と協働して作業スピンドル(12)を振動するように駆動する振動フォーク(34)に接続されていることを特徴とする、請求項18に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項20】
バネ要素(48)が、ねじりバネ、ディスクバネ又はラバーバネとして具体化されていることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項21】
歯部分(44)が、締結要素(38)のクランプシャフト(42)に設けられていて、この部分が複数のクランプ部材(62)の複数の整合歯(63)と協働することを特徴とする、請求項2〜20のいずれか1項に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項22】
歯部分(44)が、周方向に延在する複数の歯頂部を有し、これらの複数の歯頂部が、三角形の横断面で90°より大きい頂角を有することを特徴とする、請求項21に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項23】
各クランプ部材(62)が、スラスト部材に支えられたバネ(64)により工具に向けてバイアスされていることを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項24】
クランプシャフト(42)が、複数のクランプ部材(62)の複数の整合歯部分と協働するネジ部分を備えていることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項に記載のハンドヘルド工具(10)。
【請求項25】
クランプシャフト(42)が、複数の整合クランプ部材(62)と形状止め式で係合する円錐部分を有することを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項に記載のハンドヘルド工具(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−533472(P2007−533472A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508772(P2007−508772)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003794
【国際公開番号】WO2005/102605
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(594106092)ツェー ウント イー フェイン ゲーエムベーハー (11)
【Fターム(参考)】