説明

工具用バッテリ

【課題】本発明は、セル端面の電極の部分に水が付着しないようにして、セルの漏電や腐食を防止することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る工具用バッテリは、端面を揃えて複数本のセルCを並べ、それらのセルCの両端部をホルダ30で拘束した状態で、バッテリハウジング内に収納する構成の工具用バッテリであって、ホルダ30には個々のセルCの端部がそれぞれ嵌合する複数の凹部33が形成されており、さらに、ホルダ30にはセルCの端面に形成された電極P,Nに電気的に接続されるリード板が凹部33の底の位置で露出するように、そのホルダ30に埋め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端面を揃えて複数本のセルを並べ、それらのセルの両端部をホルダで拘束した状態で、バッテリハウジング内に収納する構成の工具用バッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する工具用バッテリが特許文献1に記載されている。
この工具用バッテリでは、図10に示すように、複数本(図では10本)の円柱形の蓄電池C(以下、セルCという)の電極P,Nがリード板101により互いに接続された状態で、内部ケース(図示省略)に収納され、基板等と共にバッテリハウジング(図示省略)内に収納されている。
ここで、リード板101とセルCの電極P,Nとはスポット溶接により接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−124306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、バッテリハウジング内で、例えば、結露等により発生した水滴が内部ケース内に浸入すると、その水がセルCの外周面を伝って電極P,Nの位置まで到達することがある。特に水がセルCのプラス電極Pとその周囲(マイナス部分)に付着すると漏電が発生したり、腐食が早く進行するようになる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、セル端面の電極の部分に水が付着しないようにして、セルの漏電や腐食を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、端面を揃えて複数本のセルを並べ、それらのセルの両端部をホルダで拘束した状態で、バッテリハウジング内に収納する構成の工具用バッテリであって、前記ホルダには個々のセルの端部がそれぞれ嵌合する複数の凹部が形成されており、さらに、前記ホルダには前記セルの端面に形成された電極に電気的に接続されるリード板が前記凹部の底の位置で露出するように、そのホルダに埋め込まれていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、複数本のセルの端部がそれぞれホルダの凹部に嵌合する構成のため、前記セルの端部に設けられた電極はホルダ及びリード板によって覆われるようになる。このため、バッテリハウジング内の結露等でセルに水が付着し、その水がセルの外周面を伝っても、電極部分までは到達しなくなる。
これにより、セルの漏電や電極部分の腐食を回避することができる。
【0008】
請求項2の発明によると、ホルダが弾性部材で構成されていることを特徴とする。このため、セルの端部がホルダの凹部に嵌合した状態で、そのセルの端部をホルダによりシールできるようになる。
【0009】
請求項3の発明によると、ホルダには、凹部が形成されている面と反対側の面にリード板を露出させるための開孔が前記凹部と嵌合しているセルの電極と同軸位置に設けられていることを特徴とする。
このため、セルの端部がホルダの凹部に嵌合した状態で、開孔を利用してリード板とセルの電極とを溶接できるようになる。
【0010】
請求項4の発明によると、開孔の径寸法は、セルのプラス電極の径寸法とほぼ等しい値に設定されていることを特徴とする。
即ち、開孔の径寸法を溶接に必要とされる最小寸法に設定できる。
【0011】
請求項5の発明によると、リード板がホルダの開孔の位置でセルの電極に溶接された状態で、前記開孔が樹脂によって埋められることを特徴とする。
このため、リード板の溶接部分に水が付着することがなく、この部分の腐食を防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、セル端面の電極部分に水が付着することがなく、セルの漏電やセルの電極部分の腐食を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る工具用バッテリの全体斜視図である。
【図2】前記工具用バッテリの分解斜視図である。
【図3】前記工具用バッテリのセルとホルダとを表す分解斜視図である。
【図4】複数本のセル(セル集合体)を両側からホルダで拘束した状態を表す斜視図である。
【図5】ホルダの斜視図である。
【図6】ホルダにリード板を埋め込んだ状態を表す斜視図である。
【図7】ホルダとリード板との分解斜視図である。
【図8】図4のVIII-VIII矢視断面図である。
【図9】図8のIX部拡大図(A図)、リード板の変形例を表す断面図(B図)である。
【図10】従来のセルとリード板とを表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、図1から図9に基づいて本発明の実施形態1に係る工具用バッテリについて説明する。
なお、図中に記載された前後左右及び上下は、工具用バッテリの前後左右及び上下に対応している。
【0015】
<工具用バッテリ10の概要について>
工具用バッテリ10は、図1、図2に示すように、複数本(図2では10本)の円柱形の蓄電池C(以下、セルCという)を収納する上部開放型のハウジング本体部12と、そのハウジング本体部12の上部開口12h(図2参照)を塞ぐ蓋部14とを備えている。ハウジング本体部12と蓋部14とは平面略角形に形成されており、そのハウジング本体部12に対して蓋部14が周囲8箇所でネジ止め可能に構成されている。即ち、ハウジング本体部12と蓋部14とが本発明のバッテリハウジングに相当する。
10本のセルCは、図2等に示すように、セル集合体20としてハウジング本体部12内に収納される。セル集合体20は、セルCの軸心を工具用バッテリ10の左右方向に一致させた状態で、前後方向に並べた5本のセルCを二段重ねにしたものであり、各々のセルCの左端部と右端部とがそれぞれホルダ30によって拘束されている。
前記セル集合体20の上には、絶縁板部41を介して基板40が載せられており、その基板40に工具用バッテリ10の正電極43、負電極44及びコネクタ45等が設けられている。
【0016】
また、ハウジング本体部12の上部開口12hを塞ぐ蓋部14には、図1、図2に示すように、その左右両側位置に電動工具本体(図示省略)との連結に使用されるスライドレール15が前後方向に延びるように形成されている。さらに、蓋部14の上面中央部には、左右のスライドレール15の間に、電動工具本体の板状のターミナル(図示省略)がそれぞれ前方から挿入可能に構成された左右一対の案内スリット16が同じく前後方向に延びるように形成されている。そして、右側の案内スリット16の内側(蓋部14の内側)に工具用バッテリ10の正電極43、左側の案内スリット16の内側に同じく負電極44が配置されている。さらに、蓋部14の左右の案内スリット16間にはコネクタ用開口17が形成されており、そのコネクタ用開口17から、図1に示すように、基板40に設けられたコネクタ45が前方を指向した状態で突出している。
さらに、蓋部14の上面後部には、図2に示すように、左右の案内スリット16の後方にスライドロック用のフック47のロック爪47f(図1参照)が突出可能に構成された平面略コ字形の爪用開口18が形成されている。フック47は、ロック爪47fが爪用開口18から上方に突出するようなバネ力を受けた状態で、ハウジング本体部12と蓋部14(バッテリハウジング)の後端部分に収納されている。
【0017】
<セル集合体20のホルダ30について>
セル集合体20の左右のホルダ30は、10本のセルCを二段積みの集合状態に保持するとともに、それらのセルCを2本づつ並列接続し、さらに並列接続された5組のセルCを直列接続できるように構成されている。ホルダ30は、ホルダ本体32と、そのホルダ本体32に埋め込まれてセルCのプラス電極P、マイナス電極Nに接続される端部リード板36、及び中間リード板37とから構成されている。
ホルダ本体32は、略角形に形成された弾性部材、例えば、ゴム製の厚板であり、図5に示すように、そのホルダ本体32の内側面にセルCの端部が嵌合可能な円形凹部33が等間隔で形成されている。即ち、円形凹部33の内径寸法は、セルCの外径寸法とほぼ等しく設定されている。さらに、円形凹部33の深さ寸法は、セルCの端部(電極P,Nの部分)を完全に覆える寸法に設定されている。
また、ホルダ本体32の外側面には、図3、図4等に示すように、セルCのプラス電極Pの外径寸法にほぼ等しい内径寸法の開孔34が円形凹部33と同軸に設けられている。開孔34は、図5等に示すように、円形凹部33の底33bの位置でホルダ本体32を貫通するように形成されている。
【0018】
ホルダ本体32には、図6等に示すように、二枚の中間リード板37と一枚の端部リード板36とがそのホルダ本体32の外側面、内側面に平行に埋め込まれている。中間リード板37は、上段二本のセルCと下段二本のセルCの電極P,Nがその中間リード板37の四隅の位置に接続可能なように幅広の角板状に構成されている。端部リード板36は、上段一本のセルCと下段一本のセルCの電極P,Nがその端部リード板36の上部と下部に接続可能なように幅狭の帯板状に構成されている。そして、中間リード板37の端子部37tと端部リード板36の端子部36tとがホルダ本体32の上端面から上方に突出している。中間リード板37及び端部リード板36は、図8、図9(A)に示すように、ホルダ本体32の開孔34を横断する位置に位置決めされている。これにより、中間リード板37と端部リード板36とは、円形凹部33の底33bの位置で露出するとともに、ホルダ本体32の外側面において開孔34の位置で露出するようになる。このため、図9(A)等に示すように、ホルダ本体32の円形凹部33に各々のセルCの端部を嵌合させた状態で、ホルダ本体32の外側からホルダ本体32の開孔34を利用して、中間リード板37、端部リード板36とセルCの電極P,Nとをスポット溶接することが可能になる。
ここで、図9(B)に示すように、中間リード板37と端部リード板36とのスポット溶接部位36z,37zをセルCの電極P,N側にハット形に突出させることも可能である。これにより、溶接時における中間リード板37と端部リード板36との撓みを抑制できる。
【0019】
ここで、右側のホルダ30では、図6、図7に示すように、前側に中間リード板37が二枚配置されており、後端位置に端部リード板36が配置されている。また、左側のホルダ30では、図3、図4に示すように、前端位置に端部リード板36が配置されており、後側に中間リード板37が二枚配置されている。これにより、10本のセルCを2本づつ並列に接続した状態で、並列に接続された5組のセルCを直列に接続することが可能になる。
このように構成されたセル集合体20の各々の端部リード板36の端子部36t、及び各々の中間リード板37の端子部37tは、リード線(図示省略)等により基板40の端子に接続される。
【0020】
ホルダ本体32は、成形型(図示省略)内にゴムを射出することにより、所定形状に成形される。このとき、端部リード板36及び中間リード板37を成形型内の所定位置にセットすることで、前記ホルダ本体32を成形する際にホルダ本体32内に端部リード板36、中間リード板37を埋め込むことが可能になる。
また、ホルダ本体32の開孔34は、中間リード板37、端部リード板36とセルCの電極P,Nとがスポット溶接された後、樹脂系の接着剤により塞がれる。これにより、ホルダ30の防水性が確保される。
【0021】
<本実施形態に係る工具用バッテリ10の長所について>
本実施形態に係る工具用バッテリ10によると、複数本(10本)のセルCの端部がそれぞれホルダ30(ホルダ本体32)の円形凹部33に嵌合する構成のため、セルCの端部に設けられた電極P,Nはホルダ本体32及びリード板36,37によって覆われるようになる。このため、バッテリハウジング内の結露等でセルCに水が付着し、その水がセルCの外周面を伝っても、電極部分までは到達しなくなる。
これにより、セルCの漏電や電極部分の腐食を回避することができる。
また、ホルダ本体32がゴム製であるため、セルCの端部がホルダ本体32の円形凹部33に嵌合した状態で、そのセルCの端部をホルダ本体32によりシールできるようになる。
また、ホルダ本体32には、円形凹部33が形成されている面と反対側の面(外側面)にリード板36,37を露出させるための開孔34が設けられているため、セルCの端部が円形凹部33に嵌合した状態でその開孔34を利用してリード板36,37とセルCの電極P,Nとを溶接できるようになる。
さらに、開孔34の径寸法は、セルCのプラス電極Pの径寸法と等しい値に設定されているため、開孔34の径寸法を溶接に必要とされる最小寸法に設定できる。
また、リード板36,37がホルダ本体32の開孔34の位置でセルCの電極P,Nに溶接された後、前記開孔34が樹脂系の接着剤で塞がれるため、リード板36,37の溶接部分に水が付着することがなく、この部分の腐食を防止できる。
【0022】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、ホルダ本体32をゴム製の厚板により構成する例を示したが、例えば、樹脂板によりホルダ本体32を構成し、そのホルダ本体32の円形凹部33の内側にリング状にシール部材等を設ける構成でも可能である。
また、リード板36,37をセルCの電極P,Nに溶接した後、ホルダ本体32の開孔34を樹脂系の接着剤で塞ぐ例を示したが、ホルダ本体32の開孔34を防水テープ等で塞ぐことも可能である。
【符号の説明】
【0023】
12・・・・ハウジング本体部(バッテリハウジング)
14・・・・蓋部(バッテリハウジング)
30・・・・ホルダ
32・・・・ホルダ本体
33・・・・円形凹部(凹部)
33b・・・底
34・・・・開孔
36・・・・端部リード板(リード板)
37・・・・中間リード板(リード板)
C・・・・・セル
P・・・・・プラス電極
N・・・・・マイナス電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面を揃えて複数本のセルを並べ、それらのセルの両端部をホルダで拘束した状態で、バッテリハウジング内に収納する構成の工具用バッテリであって、
前記ホルダには個々のセルの端部がそれぞれ嵌合する複数の凹部が形成されており、
さらに、前記ホルダには前記セルの端面に形成された電極に電気的に接続されるリード板が前記凹部の底の位置で露出するように、そのホルダに埋め込まれていることを特徴とする工具用バッテリ。
【請求項2】
請求項1に記載された工具用バッテリであって、
前記ホルダが弾性部材で構成されていることを特徴とする工具用バッテリ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された工具用バッテリであって、
前記ホルダには、前記凹部が形成されている面と反対側の面に前記リード板を露出させるための開孔が前記凹部と嵌合している前記セルの電極と同軸位置に設けられていることを特徴とする工具用バッテリ。
【請求項4】
請求項3に記載された工具用バッテリであって、
前記開孔の径寸法は、前記セルのプラス電極の径寸法とほぼ等しい値に設定されていることを特徴とする工具用バッテリ。
【請求項5】
請求項3又は請求項4のいずれかに記載された工具用バッテリであって、
前記リード板が前記ホルダの開孔の位置で前記セルの電極に溶接された状態で、前記開孔が樹脂によって埋められることを特徴とする工具用バッテリ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−54138(P2012−54138A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196553(P2010−196553)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】