説明

工場内スポット空調設備

【課題】吸排熱能力の低い比較的小型の室外機を設置しても工場内の各作業領域を支障なく冷暖房でき、設備コスト及びランニングコストを軽減し、効果的な冷暖房ができるようにする。
【解決手段】熱交換器と送風ファンとからなる複数の室内機2a〜2dと、各室内機の吹出口5a〜5dの付近にそれぞれ設けた人感センサー7a〜7dと、各室内機に冷媒を循環させる1台の室外機8と、室内機および室外機の運転を制御する制御盤12とを具備し、室内機2a〜2dを工場内の各作業領域A〜Dに設置し、制御盤12は人感センサー7a〜7dにより人の存在が検知されるとその検知順に作業領域A〜Dの室内機2a〜2dを人の存在が検知されなくなるまで運転させると共に、同時に複数の室内機が運転されることにより室外機8の吸排熱能力が不足するおそれがあるときには人感センサー7a〜7dが人を検知しても室内機2a〜2dを停止状態に留めるよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内の複数の作業領域に限定的に冷気または暖気を吹き出すことにより、工場内をスポット的に冷暖房する空調設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5に従来から工場に設置されている空調設備を示す。図中、aは工作機械等の設備機器、bはその作業者を示す。このように天井が高く広いスペースを有する工場では、天井に室内機cを吊下し、該室内機にフレキシブルホースからなる吹出口dを下向きに設け、該吹出口から冷暖気を吹き出して冷暖房するスポット空調方式が従来から採られている。
また、一般に空調設備の室外機は、室内機の冷暖房能力に見合うようにその吸排熱能力を設定するのが普通であった。
【0003】
なお、下記特許文献1には、人のいる上部にエアカーテン吹出口を設けて冷暖気を下向きに吹き出すことにより、ゴルフ練習場のような広い場所に少数の人が点々と存在する場合に適した局所冷暖方法が記載されている。
【特許文献1】特開平9−170796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記空調設備では、作業者bの頭上からだけ冷暖気が当たるものであったので、効率的に冷暖ができないという問題があるほか、下向きに吹き出す冷暖気によって工場内の空気が攪拌され冷暖気が拡散し易いので冷暖房効果が得られ難いこと、および、天井部に室内機c等の機器があるため視界が妨げられること等の問題があった。
また、一般に工場では限られた人数の作業者があちこちの作業領域に移動して作業することが多いが、従来の空調設備は常にそれらの作業領域に冷暖気を吹き出すものであったので、人のいない領域までも空調しているという無駄があった。
例えば、作業者が常時は3人しか居ないにもかかわらず作業領域が4つある場合はその4つの作業領域を同時に冷暖する能力のある空調設備(室内機および室外機)が設置され、運転されていたのでその設備コストおよび消費電力等のエネルギーの無駄が顕著であった。
本発明はこのような課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る工場内スポット空調設備は、熱交換器と送風ファンとからなる複数の室内機と、該各室内機の吹出口の付近にそれぞれ設けた人感センサーと、該各室内機の熱交換器に冷媒を循環させる1台の室外機と、前記室内機および室外機の運転を制御する制御盤とを具備し、前記室内機を工場内の各作業領域に設置し、前記室外機は各作業領域に設置された室内機の全部の冷暖房能力を合わせた値に見合う吸排熱能力よりも低い吸排熱能力のものとし、前記制御盤は前記人感センサーにより人の存在が検知されるとその検知順に該作業領域の室内機を人の存在が検知されなくなるまで運転させると共に、同時に複数の室内機が運転されることにより前記室外機の吸排熱能力が不足するおそれがあるときには前記人感センサーが人を検知しても当該室内機を停止状態に留めるよう制御することを特徴とする。
このため、室外機の吸排熱能力が十分でないにもかかわらず、該室外機の過負荷が防止されると共に、運転中の室内機の冷暖能力の低下が防止される。
また、本発明は上記工場内スポット空調設備において、室外機と室内機とを結ぶ冷媒配管を工場の床部に配設すると共に、各作業領域に室内機を適宜高さに支持するスタンドを設け、該室内機から略水平方向に冷暖気が吹き出されるようにしたことを特徴とする。
このため、工場の天井部の視界を妨げることもなく、作業者の全身に側方から冷暖気が当てられるようになる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吸排熱能力の低い比較的小型の室外機を設置しても工場内の各作業領域を支障なく冷暖房することができ、設備コストが軽減されると共に、エネルギーの無駄な消費をなくし、低コストで効果的な冷暖房をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に本発明の実施形態を常時3人の作業者が工場内の4つの作業領域を移動して作業する場合について説明する。図1は本発明に係る空調設備が設けられた工場の縦断面図、図2はその空調設備の室内機の斜視図、図3はその配管系統図である。図1に示したように、この工場の場合、4つの第1作業領域A〜第4作業領域Dにそれぞれ工作機械等の設備機器1a〜1dが設置され、第1作業領域Aに第1室内機2a、第2作業領域Bに第2室内機2b、第3作業領域Cに第3室内機2c、第4作業領域Dに第4室内機2dがそれぞれ設けられる。該各室内機2a〜2dは、熱交換器3a〜3dおよび送風ファン4a〜4dを内蔵しており、前面に吹出口5a〜5dが設けられている。そして、該各室内機2a〜2dを該各作業量域A〜Dに樹立されたスタンド6a〜6dにより適宜高さに支持することにより、吹出口5a〜5dから略水平方向に冷暖気が吹き出て作業者に対し側方から冷暖気が吹き付けられるようにしている。また、該吹出口5a〜5dの付近にそれぞれ赤外線センサーまたは超音波センサー等からなる第1人感センサー7a〜第4人感センサー7dを設けている。
【0008】
8は工場屋根上に設けられた室外機で、該室外機と各室内機2a〜2dとは冷媒配管9a,9bによって並列に連結される。なお、該冷媒配管9a,9bは、図2に示したように、電線10と共に纏めて工場の床部に配設され、保護カバー11によって覆うことにより通行の妨げとならないように配設される。12は室内機2a〜2dおよび室外機8の運転を制御する制御盤である。なお、室外機8の吸排熱能力は、この場合3つの室内機を賄う程度の低い吸排熱能力のものであり、4つの室内機2a〜2dの冷暖房能力を合わせた値に見合う吸排熱能力は有していない。このため、室外機8の設備コストは4台分のものに比べて大幅に軽減される。
【0009】
次に、図4のフローチャートに従い本発明に係る空調設備の作動を説明する。この空調設備においては、ステップ(e1)にて第1人感センサー7aにより人が検知されると、ステップ(f1)にて運転中の室内機が3台以下であるかどうかが確認され、3台以下であった場合はステップ(g1)にて制御盤12より第1室内機2aに運転指令が出され、第1室内機2aはその指令に従い熱交換器3aに設けられた電磁弁(図示せず)を開作動させ冷媒を該熱交換器3a中に循環させると共に、送風ファン4aを回転させ、吹出口5aより冷暖気を吹き出させる。また、ステップ(e1)にて人が検知されなくなった場合はステップ(h1)にて制御盤12より第1室内機2aに停止指令が出されて該第1室内機2aの運転が直ちに停止される。なお、ステップ(f1)においてすでに3台の室内機が運転中であった場合は、運転指令が出されることなく、たとえ第1人感センサー7aが人を検知したとしても第1室内機2aは停止状態のままに留められる。
【0010】
また、ステップ(e2)にて第2人感センサー7bにより人が検知されると、ステップ(f2)にて運転中の室内機が3台以下であるかどうかが確認され、3台以下であった場合はステップ(g2)にて制御盤12より第2室内機2bに運転指令が出され、該室内機はその指令に従い電磁弁を開作動させ冷媒を該熱交換器中に循環させると共に、送風ファンを回転させ、吹出口5bより冷暖気を吹き出させる。また、ステップ(e2)にて人が検知されなくなった場合はステップ(h2)にて第2室内機2bに停止指令が出されその運転が停止される。なお、ステップ(f2)においてすでに3台の室内機が運転中であった場合は、運転指令が出されることなく、たとえ第2人感センサー7bが人を検知したとしても第2室内機2bは停止状態のままに留められる。
【0011】
同様にステップ(e3),(e4)にてもそれぞれ人感センサー7c,7dにより人が検知されると、ステップ(f3),(f4)にて運転中の室内機が3台以下であるかどうかが確認され、3台以下であった場合はそれぞれステップ(g3),(g4)にて制御盤12より第3室内機2c,第4室内機2dに運転指令が出され、該各室内機はその指令に従い電磁弁を開作動させ冷媒を該熱交換器中に循環させると共に、送風ファンを回転させ、吹出口5c,5dより冷暖気を吹き出させる。また、ステップ(e3),(e4)にて人が検知されなくなった場合はそれぞれステップ(h3),(h4)にて第3室内機2c,第4室内機2dに停止指令が出されその運転が停止される。なお、ステップ(f3),(f4)においてすでに3台の室内機が運転中であった場合は、運転指令が出されることなく、たとえ人感センサー7c,7dが人を検知したとしても第3室内機2c,第4室内機2dは停止状態のままに留められる。
【0012】
このように、この空調装置では人感センサーにより人の存在が検知されるとその検知順にその作業領域の室内機を作動させて冷暖気を吹き出すと共に人が検知されなくなるとその作業領域の室内機を停止させるので、エネルギーの無駄な消費をなくし、電力等のエネルギーコストを大幅に軽減させる。また、同時に複数の室内機が運転されることにより該室外機8の吸排熱能力が不足するおそれがあるときには人感センサーが人を検知しても当該室内機を停止状態に留めるよう制御することにより、室外機の過負荷が防止されると共に、運転中の室外機の冷暖能力の低下が防止される。従って、作業者数が予め決められることにより、室外機8を全部の室内機2a〜2dの冷暖房能力を合わせた値に見合う吸排熱能力よりも低い作業者数に応じた吸排熱能力のものにでき、このために室外機の設備コストを大幅に軽減することができると共に、常に効率的な冷暖房をすることができる。
【0013】
また、この空調装置では、室内機を適宜高さに支持するスタンドを設け、該室内機から略水平方向に冷暖気が吹き出されるようにしたので、作業者の頭部だけでなく全身に冷暖気が吹き付けられ、所期の冷暖房効果を得ることができると共に、従来のように工場の天井部に室内機を設けた場合のような視界を妨げるおそれもない。
なお、この実施形態は4つの室内機を有した空調設備について説明したが、室内機の数は必要に応じて増減できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る空調設備が設けられた工場の縦断面図。
【図2】本発明に係る空調設備の室内機の斜視図。
【図3】本発明に係る空調設備の配管系統図。
【図4】本発明に係る空調設備のフローチャート。
【図5】従来の空調設備が設けられた工場の縦断面図。
【符号の説明】
【0015】
A〜D 作業領域
1a〜1d 設備機器
2a〜2d 室内機
3a〜3d 熱交換器
4a〜4d 送風ファン
5a〜5d 吹出口
6a〜6d スタンド
7a〜7d 人感センサー
8 室外機
9a,9b 冷媒配管
12 制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と送風ファンとからなる複数の室内機と、該各室内機の吹出口の付近にそれぞれ設けた人感センサーと、該各室内機の熱交換器に冷媒を循環させる1台の室外機と、前記室内機および室外機の運転を制御する制御盤とを具備し、前記室内機を工場内の各作業領域に設置し、前記室外機は各作業領域に設置された室内機の全部の冷暖房能力を合わせた値に見合う吸排熱能力よりも低い吸排熱能力のものとし、前記制御盤は前記人感センサーにより人の存在が検知されるとその検知順に該作業領域の室内機を人の存在が検知されなくなるまで運転させると共に、同時に複数の室内機が運転されることにより前記室外機の吸排熱能力が不足するおそれがあるときには前記人感センサーが人を検知しても当該室内機を停止状態に留めるよう制御することを特徴とした工場内スポット空調設備。
【請求項2】
室外機と室内機とを結ぶ冷媒配管を工場の床部に配設すると共に、各作業領域に室内機を適宜高さに支持するスタンドを設け、該室内機から略水平方向に冷暖気が吹き出されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の工場内スポット空調設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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