説明

工業製品の梱包材

【課題】梱包状態の工業製品の開梱時における揮発性の有機化合物の発散を大幅に抑制し、例えば該開梱時における異臭の発生を大幅に抑制することのできる工業製品の梱包材を提供する。
【解決手段】 工業製品を物流過程で梱包する工業製品の梱包材は、該梱包材を構成する梱包部材(30A、30B)が揮発性有機化合物を吸着する吸着性を有する構成とする。梱包材は、工業製品全体を覆う外部梱包材(21)、外部梱包材と工業製品との間に配置され物流工程時に工業製品にかかる衝撃を吸収する緩衝材(22)、或いは工業製品内部の部品を固定する保持部材(23、24)であってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業製品が物流過程で破損することのないように保護する工業製品の梱包材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新築住宅等で頭痛やめまいを引き起こす所謂シックハウス症候群が問題となり、その原因物質としてホルムアルデヒド等の化学物質が挙げられている。これらの化学物質は建材や塗料等から発生する揮発性の有機化合物であるため、厚生労働省から、ホルムアルデヒド、トルエン、スチレン等の化合物毎における揮発性有機化合物(以下、VOCと記す)の室内濃度の指針値や、これらVOCを統計した総揮発性有機化合物(以下、TVOCと記す)の室内濃度の指針値がガイドラインとして提出されている。
【0003】
そこで、住宅関連分野では、揮発性有機化合物が発生しない建材や塗料等を使用したり、又発生しても揮発性有機化合物を吸着するような内装を施したりして、VOCやTVOCの室内濃度の低減を行なっている。
【0004】
一方、工業製品の一例として、オフィス等で使用される電子写真式プリンターや複写機等の画像形成装置では、感光ドラムの表面の帯電工程、及び記録材への転写工程における気中放電によってオゾンが発生したり、記録材への定着工程におけるトナーの加熱によってスチレン等の有機化合物が発生したりする。このため、これらの有機化合物がそのまま画像形成装置外に排出されないように、機内風路内にエアフィルター設けて積極的に有機化合物を吸着させている機種や、帯電工程や転写工程の改良、及びトナーの改良によって有機化物自体の発生量を低減している機種がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、画像形成装置には上記のような画像形成プロセスによって発生する有機化合物以外に、画像形成装置を構成する部品、例えば外装、電気基板、各種ローラ等から、画像形成装置が静止状態でも揮発性の有機化合物が発生することがある。特に、購入直後で梱包状態の画像形成装置は、略密封状態で長期間、様々な環境で保管及び輸送されているため、画像形成装置内には種々の揮発性の有機化合物が充満することがあり、開梱時には異臭を感じることもある。
【0006】
この開梱時の異臭は、画像形成装置を通電する前の状態のため、上記のエアフィルターによる効果は期待できない。又、開梱直後すぐに画像形成装置に通電させてファンを起動し、エアフィルターによる有機化合物を吸着させる方法も考えられるが、画像形成装置内に充満した揮発性の有機化合物をエアフィルターで洩れなく除去するためには、単位時間あたりの除去能力の高いフィルターを用いなければならない。そのため、製品として大きくなり、又高コストになることが懸念される。もちろん、エアフィルターの設置されていない機種の場合は、拡散による自然減少を待つしかない。
【0007】
上述では、工業製品として画像形成装置を例に挙げ説明したが、同様の問題は、例えば、家電やパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)においてもある。
【特許文献1】特開平6−19263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、梱包状態の工業製品の開梱時における揮発性の有機化合物の発散を大幅に抑制し、例えば該開梱時における異臭の発生を大幅に抑制することのできる工業製品の梱包材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る工業製品の梱包材にて達成される。要約すれば、本発明は、工業製品を物流過程で梱包する工業製品の梱包材において、該梱包材を構成する梱包部材が揮発性有機化合物を吸着する吸着性を有することを特徴とする工業製品の梱包材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、梱包状態の工業製品の開梱時における揮発性の有機化合物の発散を大幅に抑制し、例えば該開梱時における異臭の発生を大幅に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る工業製品の梱包材を図面に則して更に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
実施例1
本実施例では、工業製品としての画像形成装置の梱包材に本発明を適用する。
【0013】
(1)画像形成装置
画像形成装置の一例として、電子写真方式を利用したレーザビームプリンタ(以下、「画像形成装置」という。)の概略構成を図1に示す。
【0014】
画像形成装置1は、シート(記録材)Sを収納する記録材収納部としての給紙カセット2、給紙ローラ3、分離・搬送ローラ4a、4b、レジストローラ6を有する。給紙カセット2の上部には、装置略中央に位置して、円筒型の電子写真感光体(以下、「感光体ドラム」という。)7aを含むカートリッジ化された画像形成プロセスユニット(以下、「プロセスカートリッジ」という。)が配置される。感光体ドラム7aの下方の、感光ドラム7aに対向する位置には転写ローラ8が配置され、又感光体ドラム7a上部にはレーザスキャナ10が配置されている。更に、画像形成装置1は、定着器9、排紙ローラ11a、11b、排紙トレイ12を有する。シートSは、搬送経路5を介して搬送される。
【0015】
次に、上記構成の画像形成装置1の動作について説明する。
【0016】
給紙カセット2に収納されたシートSは、給紙ローラ3および分離・搬送ローラ4a、4bによって一枚ずつ分離給送され、レジストローラ6に搬送される。レジストローラ6はシートSの斜行を矯正し、所定タイミングで給送を再開する。
【0017】
画像形成手段であるプロセスカートリッジ7の感光体ドラム7aは、帯電手段(図示せず)によって一様に帯電された後、露光手段であるレーザスキャナ10からのレーザ光により露光され、これにより感光体ドラム7aに潜像が形成される。次いで、現像手段(図示せず)により潜像にトナーを付着させることによって、感光体ドラム7a上にトナー像が形成される。形成されたトナー像は、転写手段である転写ローラ8によってシートSに転写される。
【0018】
プロセスカートリッジ7でトナー画像が転写されたシートSは、感光体ドラム7aと転写ローラ8の搬送力によって定着手段である定着器9へと搬送される。シートSは、定着器9の定着ローラ及び加圧ローラによって熱と圧力を印加される。これにより、シートSにトナー像が定着される。定着器9を通過したシートSは、排紙ローラ11a、11bを経て排紙トレイ12に順次排紙(出力)されて積載される。又、シートSにトナー像を転写した後の感光体ドラム7aをクリーニングするクリーニング手段(図示せず)が設けられていてよい。
【0019】
尚、本実施例では、感光体ドラム7a、帯電手段、現像手段、クリーニング手段が一体的にプロセスカートリッジ7として画像形成装置本体Aに着脱可能な画像形成プロセスユニットとされているが、これに限定されるものではなく、例えば感光体ドラム7a、帯電手段、現像手段、クリーニング手段の少なくとも1つがカートリッジ化されて画像形成装置本体Aに対し着脱可能な画像形成プロセスユニットとされていてもよい。
【0020】
(2)画像形成装置の梱包材
図2に、画像形成装置1の梱包材の概略構成を示す。図2に示すように、画像形成装置1は、物流時における落下等の衝撃が加わった場合でも装置が破損しないように緩衝材22で画像形成装置1の上面、下面のそれぞれの4つ角部を保護した状態で化粧箱21に梱包される。つまり、本実施例では、画像形成装置1の外側に配置され物流過程で画像形成装置1が破損することのないように画像形成装置1を保護する梱包材として、物流過程で画像形成装置1の最も外部を覆う外部梱包材たる化粧箱21と、この化粧箱21と画像形成装置1との間に配置され物流過程での画像形成装置1にかかる衝撃を吸収する緩衝材22とを有する。
【0021】
緩衝材22は、梱包部材として発泡スチロール、ダンボール、パルプモールド等の緩衝性のある部材で形成することができる。本実施においては、衝撃材22は発泡スチロールで構成される。
【0022】
(3)外部梱包材(化粧箱)
本実施例では、化粧箱21は、基本的には、安価でかつ部品等を傷付けない緩衝性もある梱包部材であるダンボールから構成されている。そして、本実施例では、この化粧箱21を構成するダンボールは、揮発性有機化合物の吸着性を有している。
【0023】
本実施例では、図3に示すように、ダンボール31の表面に揮発性有機化合物の吸着性を有する材料(吸着剤)を含有する吸着層32を設けることで、揮発性有機化合物の吸着性を化粧箱21に付与する。即ち、本実施例では、化粧箱21は、吸着剤を含有する吸着層32をダンボール31に形成してなる吸着層付き梱包部材30Aで構成される。吸着剤層32は、少なくとも化粧箱21の内面、即ち、被梱包体である画像形成装置1に面する側の表面に設けられている。
【0024】
このように、画像形成装置1の外部全体を覆う化粧箱21の内面に吸着層32を設けることにより、物流時に発生する揮発性有機化合物を広範囲で吸着することができ、開梱時における揮発性有機化合物の発散を効果的に抑制し、例えば開梱時に操作者が感じる異臭を効果的に除去することができる。吸着剤を内包した袋等を単体で装置内、或いは化粧箱21内に放置しておくよりも、はるかに大きな効果を得ることができる。
【0025】
又、吸着剤は一定量の揮発性有機化合物を吸着すると、吸着性能が落ちるだけでなく、周囲の温度上昇や揮発性有機化合物の濃度上昇等により、一度吸着した揮発性有機化合物が離脱し易くなる。このことからも、画像形成装置1内、或いは化粧箱21内に袋等で吸着剤を放置する場合とは異なり、本実施例のように画像形成装置1の外部全体を覆う化粧箱21に吸着性を付与する構成とすれば、画像形成装置1の開梱、設置時における吸着剤の取り忘れが無く、吸着物の離脱といった問題も予防できる。
【0026】
図4は、化粧箱21に揮発性有機化合物の吸着性を付与する別の方法を示す。図4に示す例では、化粧箱21を構成するダンボール31は、揮発性有機化合物の吸着性を有する吸着剤を含有する吸着材33が内部に埋め込まれた構造になっている。又、ダンボール31の少なくとも被梱包体である画像形成装置1に面する側の表面には、空気孔34が設けられている。これにより、ダンボール31が面する空気と、ダンボール31が内包する吸着材33とが接触し得るように構成されている。即ち、図4に示す本実施例の別法では、化粧箱21は、吸着剤を含有する吸着材33を内包した吸着材入り梱包部材30Bで構成される。
【0027】
このような構成とすることにより、ダンボール31が面する雰囲気内に含有する揮発性有機化合物はダンボール31に内包された吸着材33により吸着され、図3に示す吸着層付き梱包部材30Aで化粧箱21を構成する場合と同様の効果を得ることができる。
【0028】
尚、化粧箱21に揮発性有機化合物の吸着性を付与する方法は、上述した2つの方法に限定されるものではない。例えば、吸着剤をダンボールの素材に分散させて成形する方法など、被梱包体を梱包した状態で被梱包体に面する側からの揮発性有機化合物の吸着性を有する構成であれば採用することができる。又、本実施例では、一例としてダンボール製の化粧箱について説明したが、化粧箱21の材質はこれに限定されるものではない。例えば上述のように吸着剤を含有する吸着層、或いは吸着材を設けるなどして揮発性有機化合物の吸着性を有していれば、適宜任意の材質を採用することができる。
【0029】
(4)揮発性有機化合物の吸着剤
揮発性有機化合物の吸着剤としては、被梱包体である工業製品からの発生が懸念される揮発性有機化合物を所望程度吸着することのできる如何なる材料であってもよい。一般的に市販されている消臭材(吸着材)を適宜利用することができる。
【0030】
このような揮発性有機化合物の吸着剤としては、多孔質物質である活性炭、シリカゲル、アルミナ、セピオライト、ゼオライト等の物質を好適に用いることができる。又、吸着剤は、吸着性を有する粒状、繊維状のいずれの物質であってもよい。
【0031】
又、揮発性有機化合物の吸着材は、上記の活性炭、シリカゲル、アルミナ、セピオライト、ゼオライトを含む多孔質物質の中から、被梱包体から発生する揮発性有機化合物に適した物質を1種類を選択して使用しても良いが、被梱包体から発生する揮発性有機化合物が複数種類ある場合などに、各々の物質の適性に合わせて複数の種類(2種類以上)を組み合わせて併用しても構わない。本実施例では、揮発性有機化合物の吸着剤として、多孔質物質である活性炭を使用した。
【0032】
尚、化粧箱21の形成する吸着層付き梱包部材30Aに吸着剤(本実施例では、活性炭)を含有する吸着層32を形成する方法としては、繊維状の吸着剤を用いて表面に保持させる方法、塗料に粒状の吸着剤を分散させて表面に塗膜する方法などがある。但し、吸着剤としての揮発性有機化合物の吸着性能を著しく低下させることがなければ、その梱包部材への付与方法は特に限定されるものではない。
【0033】
又、吸着剤の使用量は、被梱包体である工業製品の構成・サイズ、揮発性有機化合物の所望の除去レベル等に応じて適宜選定可能である。
(5)比較実験
本実施例のように、揮発性有機化合物を吸着可能な梱包材を装着に梱包された画像形成装置と、従来例のように、特に揮発性有機化合物を吸着しない梱包材で梱包された画像形成装置と、について、物流試験として梱包された状態で温度23℃/湿度50%RHと温度50℃/湿度95%RHの環境下に10日間放置する放置試験を実施した。そして、放置試験後の画像形成装置を開梱し、設置を行なった際に、異臭がするかどうかの官能試験の比較評価を行なった。尚、ここでは化粧箱21は、組み立てた状態で画像形成装置に面する側の表面の略全面に吸着層32が配置されるように作成した。
【0034】
これらの結果を表1に示す。なお、表中の○は異臭を感じないレベル、△は異臭を僅かに感じたが気にならないレベル、×は異臭により不快を感じたレベルを示す。
【0035】
【表1】

【0036】
この比較評価より、本実施例のように、梱包材に揮発性有機化合物の吸着性を付与させることで、物流時のような略密封状態で、例えば高温環境に長期間放置された場合にも、画像形成装置から発生することのある揮発性有機化合物を吸着し、消臭できることが確認できた。
【0037】
以上説明したように、本実施例によれば、内面に吸着層32を設けた吸着層付き梱包部材30A、或いは吸着材33を内包した吸着材入り梱包部材30Bで化粧箱21を構成し、この化粧箱21で画像形成装置1の全体を覆い梱包することにより、物流工程中に発生する揮発性有機化合物を吸着することができる。このため、梱包箱(化粧箱)内の揮発性有機化合物を減少させ、開梱時における揮発性有機化合物の発散を効果的に抑制し、例えば開梱時に感じる異臭を防止することができる。又、画像形成装置1を覆う化粧箱21に揮発性有機化合物を吸着する吸着性を付与することにより、画像形成装置1そのものを大型化せずに、物流工程中に発生した揮発性有機化合物を広範囲で吸着することができ、例えば開梱時の揮発性有機化合物による悪臭の発生を大幅に抑制することができる。
【0038】
実施例2
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例では、実施例1と同様に、工業製品としての画像形成装置の梱包材に本発明を適用する。画像形成装置1の構成は実施例1と同じであり、又画像形成装置1の梱包形態は実質的に実施例1におけるものと同じである。従って、実施例1におけるものと実質的に同一若しくは相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0039】
本実施例では、実施例1で説明した化粧箱21に加えて若しくは代えて、画像形成装置1の上面、下面のそれぞれの4つ角部を保護する緩衝材22に揮発性有機化合物の吸着性を付与する。これにより、梱包箱(化粧箱)内に発生する揮発性有機化合物を吸着する。
【0040】
更に説明すると、本実施例では、図5に示すように、緩衝材22は、基本的には梱包部材であるダンボールを重ねて張り合わせることにより構成される。緩衝材22は、対応する画像形成装置1の角部の形状に合う嵌合部22aを有する。図5には、画像形成装置1の1つの角部に適合する1つの緩衝材22のみ示すが、他の緩衝材22についても実質的に同一の構成である。
【0041】
そして、本実施例では、この緩衝材22を構成するダンボール31は、実施例1にて説明した図3に示す吸着剤層付き梱包部材30A、或いは図4に示す吸着材入り梱包部材30Bと同様に、表面に吸着層32が形成されているか、或いは吸着材33を内包している。ダンボール31の表面に吸着層32を設ける場合、吸着層32はダンボール31の両面、片面のいずれに設けてもよいが、少なくとも緩衝材22を形成したときに外側に面する面に設けられていることが好ましい。勿論、実施例1と同様に、その他の方法でダンボール31に揮発性有機化合物の吸着性を付与してもよい。
【0042】
尚、本実施例では、一例としてダンボール製の緩衝材22について説明したが、例えば上述のように吸着剤を含有する吸着層、或いは吸着材を設けるなどして揮発性有機化合物の吸着性を有していれば、例えば発泡スチロール、パルプモールド等の、他の材質の梱包部材により緩衝材22を構成してもよい。
【0043】
緩衝材22にのみ揮発性有機化合物の吸着性を持たせた場合について実施例1と同様の比較試験を行ったところ、実施例1と同様に、従来の梱包材を用いた場合よりも異臭を感じるレベルは格段に低減された。揮発性有機化合物の吸着性を持たせた化粧箱21と組み合わせて用いることにより、開梱時に異臭を感じるレベルをより効果的に低減することができた。尚、緩衝材22は、実施例1の比較試験で用いたものと同じ吸着層付き梱包部材30Aにより、外側に吸着層32が露出するように作成した。
【0044】
以上説明したように、本実施例によれば、化粧箱21に揮発性有機化合物の吸着性を付与する構成に加えて若しくは代えて、画像形成装置1と化粧箱21との間に配置される緩衝材22に揮発性有機化合物の吸着性を付与することにより、梱包箱(化粧箱)内に発生する揮発性有機化合物を減少させ、開梱時における揮発性有機化合物の発散を効果的に抑制し、例えば開梱時に感じる異臭を防止することができる。特に、化粧箱21に加えて緩衝材22にも揮発性有機化合物の吸着性を付与することにより、揮発性有機化合物の吸着性を更に高めることができる。又、画像形成装置1と化粧箱21との間に設置され物流時の衝撃を吸収する緩衝材に揮発性有機化合物を吸着させる吸着性を付与することにより、工業製品そのものを大型化せずに、物流工程中に発生した揮発性有機化合物を広範囲で吸着することができ、例えば開梱時の揮発性有機化合物による悪臭の発生を大幅に抑制することができる。
【0045】
尚、緩衝材の構成は、画像形成装置と化粧箱との間に配置され、物流時の衝撃吸収用部材としての機能を有していれば、本実施例のものに限定するものではない。例えば、緩衝材は、被梱包体の角部に嵌合されるものに限らず、例えば被梱包体の上面及び/又は下面の全体に嵌合されるようなものであってもよい。又、実施例1と同様に、緩衝材の材料、吸着性の付与方法、吸着剤の材質は何ら限定されるものではない。
【0046】
実施例3
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例では、実施例1及び2と同様に、工業製品として画像形成装置の梱包材に本発明を適用する。画像形成装置1の構成は実施例1及び2と同じである。従って、実施例1におけるものと実質的に同一若しくは相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0047】
本実施例では、実施例1で説明した化粧箱21及び/又は実施例2で説明した緩衝材22に加えて若しくは代えて、物流過程で画像形成装置1が破損しないように装置内部の部品を固定する保持部材に揮発性有機化合物の吸着性を付与する。これにより、梱包箱(化粧箱)内に発生する揮発性有機化合物を吸着する。
【0048】
更に説明すると、物流時における落下や振動、そして悪環境下における長期放置により、画像形成装置本体Aとプロセスカートリッジ7との間で、その係合部の部品破損や、感光ドラム7aの劣化の可能性があるため、本実施例では、画像形成装置1は画像形成装置本体Aにプロセスカートリッジ7が未装着の状態で梱包される。
【0049】
しかし、画像形成装置本体Aにプロセスカートリッジ7が未装着の状態で梱包した場合、通常プロセスカートリッジ7で保持されている転写ローラ8やシートSの搬送ガイド(図示せず)は固定できないため、物流時の落下や振動等によって外れたり破損したりする可能性がある。そのため、梱包される画像形成装置本体A内には、図6に示すように、梱包材として、転写ローラ8やシートSの搬送ガイド(図示せず)を保持固定する保持部材23が装着される。
【0050】
本実施例では、保持部材23は、基本的には、安価でかつ部品等を傷付けないように緩衝性もある梱包部材であるダンボール31から構成されている。そして、本実施例では、保持部材23を構成するダンボール31は、揮発性有機化合物の吸着性を有している。
【0051】
保持部材23を構成するダンボール31は、実施例1にて説明した図3に示す吸着剤付き梱包部材30A、或いは図4に示す吸着材入り梱包部材30Bと同様に、表面に吸着層32が形成されているか、或いは吸着材33を内包している。吸着層32はダンボール31の両側の面に設けた方が好ましいが、少なくとも保持部材23として組立てた時に、外側に面する面のみに設けていれば良い。勿論、実施例1と同様に、その他の方法でダンボール31に揮発性有機化合物の吸着性を付与してもよい。
【0052】
このように保持部材23に揮発性有機化合物の吸着性を付与することで、物流時のような略密閉状態で、例えば高温環境に長期放置された場合に画像形成装置1内に発生する、外層や電気基板、各種ローラ等からの揮発性有機化合物を積極的に吸着し、消臭することができる。
【0053】
ここで、梱包される画像形成装置本体A内のプロセスカートリッジ7の挿入部に装着し、転写ローラ8やシートSの搬送ガイド(図示せず)を保持固定する保持部材23として、図7に示すように、プロセスカートリッジ7と略同一形状とした保持部材23を使用することで、画像形成装置本体A内のプロセスカートリッジ7の挿入部のほぼ全域に揮発性有機化合物の吸着性のある保持部材23を配置することができるため、その吸着性をより一層向上させることができる。
【0054】
又、装置内部の部品を固定する保持部材は、上記プロセスカートリッジ7の挿入部に装着されるものに何ら限定されるものではない。例えば、シートSを収納する給紙カセット2には、図8に示すように、シートSの大きさを規制する規制板が縦方向2a及び横方向2bに、そしてシートSを給紙するためにシートSを給紙ローラ3付近まで上昇させる中板2cが設けられている。梱包時の給紙カセット2内にはシートSは収納されていない。通常、規制板2a、2bや中板2cは、シートSの状態に合わせて任意或いは自動的に動くようになっているため、物流時の落下や振動等によってこれらが外れたり破損したりする可能性がある。そのため、梱包される画像形成装置本体A内の給紙カセット2内には、図9に示すように、規制板2a、2bと中板2cを保持固定する保持部材24が装着される。この給紙カセット2内に装着する保持部材24にも、前述したプロセスカートリッジ7の挿入部に装着する保持部材23と同様に、揮発性有機化合物の吸着性を付与させることができる。これによって、物流時の略密封状態で、例えば高温環境に長期間放置された場合に主に給紙カセット2内で発生する、外装やグリス等からの揮発性有機化合物を積極的に吸着し、消臭することができる。
【0055】
尚、本実施例では、一例としてダンボール製の保持部材23、24について説明をしたが、例えば上述のように吸着剤を含有する吸着層、或いは吸着剤を設けるなどして揮発性有機化合物の吸着性を有していれば、例えば発泡スチロール、パルプモールド等の、他の材質の梱包部材により保持部材23、24を構成してもよい。
【0056】
保持部材23及び/又は24にのみ揮発性有機化合物の吸着性を持たせた場合について実施例1と同様の比較試験を行ったところ、実施例1と同様に、従来の梱包材を用いた場合よりも異臭を感じるレベルは格段に低減された。揮発性有機化合物の吸着性を持たせた化粧箱21、更には揮発性有機化合物の吸着性を持たせた緩衝材22と組み合わせて用いることにより、開梱時に異臭を感じるレベルをより効果的に低減することができた。尚、保持部材23、24は、実施例1の比較試験で用いたものと同じ吸着層付き梱包部材30Aにより、外側に吸着層32が露出するように作成した。
【0057】
以上説明したように、本実施例によれば、化粧箱21及び/又は緩衝材22に揮発性有機化合物の吸着性を付与する構成に加えて若しくは代えて、装置内部の部品を固定する保持部材23、24に揮発性有機化合物の吸着性を付与することにより、梱包箱(化粧箱)内に発生する揮発性有機化合物を減少させ、開梱時における揮発性有機化合物の発散を効果的に抑制し、例えば開梱時に感じる異臭を防止することができる。特に、化粧箱21及び/又は緩衝材22に加えて保持部材23、24にも揮発性有機化合物の吸着性を付与することにより、揮発性有機化合物の吸着性を更に高めることができる。
【0058】
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例の態様に限定されるものではない。例えば、上記各実施例では、工業製品として画像形成装置の梱包材に本発明を適用する場合を例にして説明したが、これに限定されるものではなく、製品全体を梱包材で覆い(包み)、製品の運搬を行なう物流形態をとる他の工業製品(例えば、家電やPC)においても適応可能である。このように、本発明は、画像形成装置に限らず、他の工業製品に関しても、物流過程で発生した揮発性有機化合物を吸着するのに大変有効である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る梱包材の被梱包体である工業製品の一例としての画像形成装置の主断面図である。
【図2】本発明に係る梱包材の一実施例を説明するための説明図である。
【図3】本発明に係る梱包材を構成する梱包部材の一実施例の断面図である。
【図4】本発明に係る梱包材を構成する梱包部材の他の実施例の(a)断面図、(b)外観図である。
【図5】本発明に係る梱包材の他の実施例の概略構成図である。
【図6】本発明に係る梱包材の他の実施例を説明するための説明図である。
【図7】本発明に係る梱包材の他の実施例を説明するための説明図である。
【図8】本発明に係る梱包材の被梱包体としての画像形成装置の給紙カセットの概略構成図である。
【図9】本発明に係る梱包材の他の実施例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 画像形成装置
2 給紙カセット
7 画像形成プロセスユニット、プロセスカートリッジ
21 化粧箱(外部梱包材、梱包材)
22 緩衝材(梱包材)
23 保持部材(梱包材)
24 保持部材(梱包材)
30A、30B 梱包部材
31 ダンボール
32 吸着層
33 吸着材
34 空気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業製品を物流過程で梱包する工業製品の梱包材において、
該梱包材を構成する梱包部材が揮発性有機化合物を吸着する吸着性を有することを特徴とする工業製品の梱包材。
【請求項2】
前記吸着性は、前記梱包部材の表面に吸着剤を含有する吸着層を設けることで付与されることを特徴とする請求項1の工業製品の梱包材。
【請求項3】
前記吸着性は、前記梱包部材に吸着材を内包させることで付与されることを特徴とする請求項1の工業製品の梱包材。
【請求項4】
前記吸着剤は、活性炭、シリカゲル、アルミナ、セピオライト、ゼオライトを含む多孔質物質から選択される1種類若しくは2種類以上の組み合わせであることを特徴とする請求項2又は3の工業製品の梱包材。
【請求項5】
前記工業製品の外側に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の工業製品の梱包材。
【請求項6】
物流過程で前記工業製品の最も外部を覆う外部梱包材であることを特徴とする請求項5の工業製品の梱包材。
【請求項7】
物流過程で前記工業製品の最も外部を覆う外部梱包材と前記工業製品との間に配置される緩衝材であることを特徴とする請求項5の工業製品の梱包材。
【請求項8】
物流過程で前記工業製品の最も外部を覆う外部梱包材、及び該外部梱包材と前記工業製品との間に配置される緩衝材であることを特徴とする請求項5の工業製品の梱包材。
【請求項9】
前記工業製品の内部に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の工業製品の梱包材。
【請求項10】
該梱包材は、前記工業製品内部の部品を固定する保持部材であることを特徴とする請求項9の工業製品の梱包材。
【請求項11】
前記工業製品は、記録材に画像を形成して出力する画像形成装置であること特徴とする請求項1〜10のいずれかの項に記載の工業製品の梱包材。
【請求項12】
前記工業製品は、記録材に画像を形成して出力する画像形成装置であり、前記保持部材は、該画像形成装置に対して着脱可能な画像形成プロセスユニットの挿入部に装着されることを特徴とする請求項10の工業製品の梱包材。
【請求項13】
前記工業製品は記録材に画像を形成して出力する画像形成装置であり、前記保持部材は、前記記録材を収納する記録材収納部内に装着されることを特徴とする請求項10の工業製品の梱包材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−137471(P2006−137471A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329868(P2004−329868)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】