説明

差動信号伝送ケーブル

【課題】対内スキューを小さくし且つサイズを小型化する。
【解決手段】2本並べた信号線(1,2)の一方側にドレイン導体(4)を設けると共に他方側にダミードレイン導体(5)を設ける。
【効果】2本並べた信号線(1,2)の両側にそれぞれ丸外形のドレイン導体(4)を設けた差動信号伝送ケーブルと同様の小さな対内スキューとなる。丸外形のドレイン導体(4)を2本用いるよりもサイズを小さくすることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動信号伝送ケーブルに関し、さらに詳しくは、対内スキューを小さくし且つサイズを小型化できる差動信号伝送ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2本並べた信号線の両側にそれぞれ丸外形のドレイン導体を設けた差動信号伝送ケーブルおよび2本並べた信号線の片側のみに丸外形のドレイン導体を設けた差動信号伝送ケーブルが知られている(例えば特許文献1参照。)。
他方、中心導体の外周を被覆する内環状部と内環状部の外周から外側に向けて放射状に延びる3本以上のリブ部とリブ部の外端を連結する外環状部とを有する中空コア体が知られている(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−93357号公報(図2(b),図5(a))
【特許文献2】特開2007−335393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2本並べた信号線の両側にそれぞれ丸外形のドレイン導体を設けた差動信号伝送ケーブルは、2本並べた信号線の片側のみに丸外形のドレイン導体を設けた差動信号伝送ケーブルと比べると、対内スキューが小さく有利であるが、ドレイン導体の直径分だけサイズが大きくなってしまう問題点がある。
逆に、2本並べた信号線の片側のみに丸外形のドレイン導体を設けた差動信号伝送ケーブルは、2本並べた信号線の両側にそれぞれ丸外形のドレイン導体を設けた差動信号伝送ケーブルと比べると、ドレイン導体の直径分だけサイズが小さくなる利点があるが、対内スキューが大きくなる問題点がある。
そこで、本発明の目的は、対内スキューを小さくし且つサイズを小型化できる差動信号伝送ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、中心導体(1a)の外周に絶縁体(1b)を設けた丸外形の第1信号線(1)と、中心導体(2a)の外周に絶縁体(2b)を設けた丸外形の第2信号線(2)と、前記第1信号線(1)および前記第2信号線(2)を並べて包むように導電テープを螺旋巻または縦添えしてなる外部導体(3)と、前記外部導体(3)の外側に前記第1信号線(1)と並ぶように設置された丸外形のドレイン導体(4)と、前記外部導体(3)の外側に前記第2信号線(2)と並ぶように設置された箔状のダミードレイン導体(5)と、全体を絶縁被覆するジャケット層(7)とを具備したことを特徴とする差動信号伝送ケーブル(10)を提供する。
上記第1の観点による差動信号伝送ケーブルでは、2本並べた信号線の一方側にドレイン導体を設けると共に他方側にダミードレイン導体を設けるため、2本並べた信号線の両側にそれぞれ丸外形のドレイン導体を設けた差動信号伝送ケーブルと同様の小さな対内スキューとなる。さらに、ダミードレイン導体は、箔状の導体とするので、丸外形のドレイン導体を用いるよりもサイズを小さくすることが出来る。
【0006】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による差動信号伝送ケーブル(10)において、前記外部導体(3)および前記ドレイン導体(4)および前記ダミードレイン導体(5)を並べて包むように押え巻きテープを螺旋巻または縦添えして押え巻きテープ層(6)とし、前記押え巻きテープ層(6)の外周に前記ジャケット層(7)を設けたことを特徴とする差動信号伝送ケーブル(10)を提供する。
上記第2の観点による差動信号伝送ケーブルでは、押え巻きテープ層により、ドレイン導体およびダミードレイン導体の位置精度が向上し、端末加工性が安定する。また、押え巻きテープに導電テープを用いた場合には、導電テープによりドレイン導体およびダミードレイン導体をもシールドするため、ノイズ耐性を向上することが出来る。
【0007】
第3の観点では、本発明は、前記第1または第2の観点による差動信号伝送ケーブル(10)において、前記第1信号線(1)および前記第2信号線(2)の絶縁体(1b,2b)が、前記中心導体(1a,2a)の外周を被覆する内環状部と内環状部の外周から外側に向けて放射状に延びる3本以上のリブ部とリブ部の外端を連結する外環状部とを有する中空コア体であることを特徴とする差動信号伝送ケーブル(10)を提供する。
上記第3の観点による差動信号伝送ケーブルでは、中空コア体を誘電体層とするため、高周波特性を向上することが出来る。
【発明の効果】
【0008】
本発明の差動信号伝送ケーブルによれば、2本並べた信号線の両側にそれぞれ丸外形のドレイン導体を設けた差動信号伝送ケーブルと同様の小さな対内スキューとなる。さらに、ダミードレイン導体は箔状の導体なので、丸外形のドレイン導体を2本用いるよりもサイズを小さくすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1に係る差動信号伝送ケーブルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0011】
−実施例1−
図1は、差動信号伝送ケーブル10の横断面図である。
この差動信号伝送ケーブル10は、中心導体1aの外周に絶縁体1bを設けた丸外形の第1信号線1と、中心導体2aの外周に絶縁体2bを設けた丸外形の第2信号線2と、第1信号線1および第2信号線2を並べて包むように導電テープを螺旋巻または縦添えしてなる外部導体3と、外部導体3の外側に第1信号線1と並ぶように設置され第1信号線1より小径の丸外形のドレイン導体4と、外部導体3の外側に第2信号線2と並ぶように設置された箔状のダミードレイン導体5と、外部導体3およびドレイン導体4およびダミードレイン導体5を並べて包むようにテープを螺旋巻または縦添えしてなる押え巻きテープ層6と、押え巻きテープ層6の外周を絶縁被覆するジャケット層7とを具備してなる。
【0012】
中心導体1a,2aは、例えば直径0.51mmの丸銅線である。
【0013】
第1信号線1の絶縁体1bは、中心導体1aの外周を被覆する内環状部とその内環状部の外周から外側に向けて放射状に延びる3本以上のリブ部とそのリブ部の外端を連結する外環状部とを有する中空コア体である。外径は、例えば1.25mmである。
第2信号線2の絶縁体2bも、第1信号線1の絶縁体1bと同様の構成である。
【0014】
外部導体3の導電テープは、金属ラミネートテープ,金属蒸着テープ,金属テープなどである。具体例を挙げると、厚さ9μmの銅箔と厚さ6μmのPETを積層した銅PETテープである。
導体面が片面だけの場合は、導体面が外側に向くように配置する。
【0015】
ドレイン導体4は、例えば直径0.25mmの丸銅線である。
【0016】
ダミードレイン導体5は、平角線,リボン線,金属箔,金属ラミネートテープ,金属蒸着テープ,金属テープ,平たく並べた複数本の極細金属線(ドレイン導体4の直径の1/2以下の直径とする。)などである。具体例を挙げると、厚さ35μm,幅0.3mmの平角線である。
導体面が片面だけの場合は、導体面が外部導体3に接するように配置する。
【0017】
押え巻きテープ層6のテープは、合成樹脂テープ,金属ラミネートテープ,金属蒸着テープ,金属テープなどである。具体例を挙げると、厚さ9μmの銅箔と厚さ6μmのPETを積層した銅PETテープである。
導体面が片面だけの場合は、導体面が内側に向くように配置する。
【0018】
ジャケット層7は、例えば厚さ0.06mmのフッ素系樹脂である。
【0019】
上記差動信号伝送ケーブル10の対内スキュー値は1.5ps/m(max)、仕上り外径は短径×長径=1.5mm×3.0mmであった。
【0020】
−比較例1−
ダミードレイン導体5の代わりに、例えば直径0.25mmの丸銅線を用いた場合、対内スキュー値は1.5ps/m(max)、仕上り外径は短径×長径=1.5mm×3.3mmであった。
【0021】
−比較例2−
ダミードレイン導体5を省略した場合、対内スキュー値は9.9ps/m(max)、仕上り外径は短径×長径=1.5mm×3.0mmであった。
【0022】
実施例1に係る差動信号伝送ケーブル10によれば、2本並べた信号線の両側にそれぞれ丸外形のドレイン導体を設けた差動信号伝送ケーブルと同様の小さな対内スキューとなる。さらに、丸外形のドレイン導体を2本用いるよりもサイズを小さくすることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の差動信号伝送ケーブルは、長距離大容量データ伝送ケーブルなどとして有用である。
【符号の説明】
【0024】
1 第1信号線
1a 中心導体
1b 絶縁体
2 第2信号線
2a 中心導体
2b 絶縁体
3 外部導体
4 ドレイン導体
5 ダミードレイン導体
6 押え巻きテープ層
7 ジャケット層
10 差動信号伝送ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体の外周に絶縁体を設けた丸外形の第1信号線と、中心導体の外周に絶縁体を設けた丸外形の第2信号線と、前記第1信号線および前記第2信号線を並べて包むように導電テープを螺旋巻または縦添えしてなる外部導体と、前記外部導体の外側に前記第1信号線と並ぶように設置された丸外形のドレイン導体と、前記外部導体の外側に前記第2信号線と並ぶように設置された箔状のダミードレイン導体と、全体を絶縁被覆するジャケット層とを具備したことを特徴とする差動信号伝送ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の差動信号伝送ケーブルにおいて、前記外部導体および前記ドレイン導体および前記ダミードレイン導体を並べて包むように押え巻きテープを螺旋巻または縦添えして押え巻きテープ層とし、前記押え巻きテープ層の外周に前記ジャケット層を設けたことを特徴とする差動信号伝送ケーブル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の差動信号伝送ケーブルにおいて、前記第1信号線および前記第2信号線の絶縁体が、前記中心導体の外周を被覆する内環状部と内環状部の外周から外側に向けて放射状に延びる3本以上のリブ部とリブ部の外端を連結する外環状部とを有する中空コア体であることを特徴とする差動信号伝送ケーブル。

【図1】
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【公開番号】特開2010−277967(P2010−277967A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132219(P2009−132219)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】