説明

差圧式水電解装置の運転方法

【課題】アノード側とカソード側とに差圧が発生していても、迅速且つ効率的に水電解処理を開始することを可能にする。
【解決手段】差圧式水電解装置10の運転方法では、カソード側電解室の圧力に対応した水電解に必要な電流値を、予め算出する第1の工程と、水電解処理が停止された状態で、前記カソード側電解室の圧力を検出する第2の工程と、前記水電解処理が開始されるか否かを判断する第3の工程と、前記水電解処理が開始されると判断された際、検出された前記カソード側電解室の圧力に対応して予め算出された前記電流値以上の電流により、前記水電解処理を開始する第4の工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、前記給電体間に電解電圧を印加することにより、水を電気分解してアノード側電解室に酸素を発生させるとともに、カソード側電解室に常圧よりも高圧な水素を発生させる差圧式水電解装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、アノード側電極に燃料ガス(主に水素を含有するガス、例えば、水素ガス)が供給される一方、カソード側電極に酸化剤ガス(主に酸素を含有するガス、例えば、空気)が供給されることにより、直流の電気エネルギを得ている。
【0003】
一般的に、燃料ガスである水素ガスを製造するために、水電解装置が採用されている。この水電解装置は、水を分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜(イオン交換膜)を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、給電体を配設してユニットが構成されている。
【0004】
そこで、複数のユニットが積層された状態で、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素イオンと共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってユニットから排出される。
【0005】
この種の水電解装置では、カソード側に高圧(一般的には、1MPa以上)な水素を生成する高圧水素製造装置(差圧式水電解装置)が採用されている。この高圧水素製造装置は、例えば、特許文献1に開示されているように、固体高分子膜と、該固体高分子膜の両側に相対向して設けられたカソード給電体及びアノード給電体と、各給電体に積層されたセパレータと、各セパレータに設けられて各給電体が露出する流体通路とを備えている。
【0006】
そして、アノード側セパレータの流体通路に水を供給するとともに、各給電体に通電することにより、前記アノード側セパレータの流体通路に供給された水を電気分解し、カソード側セパレータの流体通路に高圧の水素ガスを得ている。その際、カソード給電体を固体高分子膜に押圧して密着せしめる押圧手段が設けられている。
【0007】
これにより、カソード側が高圧になったときには、押圧手段がカソード給電体を固体高分子膜に押圧して密着させるため、前記固体高分子膜と前記カソード給電体との間に間隙を生じることがなく、接触抵抗の増大を阻止することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−70322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記の高圧水素製造装置では、固体高分子膜を挟んでカソード側セパレータの流体通路に高圧水素が充填される一方、アノード側セパレータの流体通路には、常圧の水及び酸素が存在している。このため、運転停止(生成水素の供給終了)時には、固体高分子膜を保護するために、前記固体高分子膜の両側の圧力差を除去する必要がある。
【0010】
従って、通常、各給電体への電力の供給をゼロにして水電解処理を停止した後、カソード側の流体通路に充填されている水素の圧力を強制的に脱圧し、前記水素の圧力を常圧付近まで減圧させる処理が行われている。
【0011】
その際、水素圧力の減圧が急激に行われると、固体高分子膜やシールに対して損傷を与えるおそれがあり、減圧は時間をかけて徐々に行う必要がある。これにより、電解処理が停止してから、カソード側の流体通路の水素圧力が常圧になるまでに相当な時間を要してしまい、その間に水電解処理を再開することが困難になってしまう。このため、水素充填作業が迅速に開始されず、消費電力が増加するとともに、無駄に廃棄される水素が削減されず、効率的ではないという問題がある。
【0012】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、アノード側とカソード側とに差圧が発生していても、迅速且つ効率的に水電解処理を開始することが可能な差圧式水電解装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、前記給電体間に電解電圧を印加することにより、水を電気分解してアノード側電解室に酸素を発生させるとともに、カソード側電解室に常圧よりも高圧な水素を発生させる差圧式水電解装置の運転方法に関するものである。
【0014】
この運転方法では、カソード側電解室の圧力に対応した水電解に必要な電流値を、予め算出する第1の工程と、水電解処理が停止された状態で、前記カソード側電解室の圧力を検出する第2の工程と、前記水電解処理が開始されるか否かを判断する第3の工程と、前記水電解処理が開始されると判断された際、検出された前記カソード側電解室の圧力に対応して予め算出された前記電流値以上の電流により、前記水電解処理を開始する第4の工程とを有している。
【0015】
また、この運転方法では、カソード側電解室の減圧処理が行われている間に、第2の工程以降が行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カソード側電解室の圧力とアノード側電解室の圧力とに差圧が発生している際、前記カソード側電解室の圧力に対応した水電解に必要な電流値以上の電流に設定されている。このため、カソード側電解室からアノード側電解室に水素がクロスリークすることを確実に抑制することができる。
【0017】
従って、特に減圧中に差圧式水電解装置を起動される際、クロスリークによる水素の廃棄が良好に削減される。これにより、アノード側とカソード側とに差圧が発生していても、迅速且つ効率的に水電解処理を開始することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る運転方法が適用される差圧式水電解装置の概略構成説明図である。
【図2】前記差圧式水電解装置を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図3】前記運転方法を説明するフローチャートである。
【図4】通常の脱圧、準備及び昇圧工程の説明図である。
【図5】圧力差とクロスリーク量及びクロスリーク抑制用電流値との関係説明図である。
【図6】本実施形態の脱圧途上からの昇圧工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る運転方法が適用される差圧式水電解装置10は、例えば、家庭用小型水素製造装置として利用される。
【0020】
差圧式水電解装置10は、純水を電気分解することによって高圧水素(常圧よりも高圧、例えば、1MPa以上)を製造する水電解機構12と、純水供給機構14を介して市水から生成された純水が供給され、この純水を前記水電解機構12に供給するとともに、前記水電解機構12から排出される余剰の前記水を、前記水電解機構12に循環供給する水循環機構16と、前記水電解機構12から導出される前記高圧水素に含まれる水分を除去する水素側気液分離器18と、前記水素側気液分離器18から供給される水素に含まれる水分を吸着して除去する水素除湿器20と、コントローラ(制御装置)22とを備える。
【0021】
水電解機構12は、複数の単位セル24が積層される。単位セル24の積層方向一端には、ターミナルプレート26a、絶縁プレート28a及びエンドプレート30aが外方に向かって、順次、配設される。単位セル24の積層方向他端には、同様にターミナルプレート26b、絶縁プレート28b及びエンドプレート30bが外方に向かって、順次、配設される。エンドプレート30a、30b間は、一体的に締め付け保持される。
【0022】
ターミナルプレート26a、26bの側部には、端子部34a、34bが外方に突出して設けられる。端子部34a、34bは、配線36a、36bを介して電解用電源(直流電源)38に電気的に接続される。
【0023】
図2に示すように、単位セル24は、円盤状の電解質膜・電極構造体42と、この電解質膜・電極構造体42を挟持するアノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46とを備える。アノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46は、円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材等で構成され、又は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形して、あるいは切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成される。
【0024】
電解質膜・電極構造体42は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜48と、前記固体高分子電解質膜48の両面に設けられるアノード側給電体50及びカソード側給電体52とを備える。
【0025】
固体高分子電解質膜48の両面には、アノード電極触媒層50a及びカソード電極触媒層52aが形成される。アノード電極触媒層50aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層52aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0026】
アノード側給電体50及びカソード側給電体52は、例えば、球状アトマイズチタン粉末の焼結体(多孔質導電体)により構成される。アノード側給電体50及びカソード側給電体52は、研削加工後にエッチング処理される平滑表面部を設けるとともに、空隙率が10%〜50%、より好ましくは、20%〜40%の範囲内に設定される。
【0027】
単位セル24の外周縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、水(純水)を供給するための水供給連通孔56と、反応により生成された酸素及び使用済みの水(混合流体)を排出するための排出連通孔58と、反応により生成された高圧水素を流すための水素連通孔60とが設けられる。
【0028】
アノード側セパレータ44の電解質膜・電極構造体42に向かう面44aには、水供給連通孔56に連通する供給通路62aと、排出連通孔58に連通する排出通路62bとが設けられる。面44aには、供給通路62a及び排出通路62bに連通する第1流路(アノード側電解室)64が設けられる。この第1流路64は、アノード側給電体50の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。
【0029】
カソード側セパレータ46の電解質膜・電極構造体42に向かう面46aには、水素連通孔60に連通する排出通路66が設けられる。面46aには、排出通路66に連通する第2流路(カソード側電解室)68が形成される。この第2流路68は、カソード側給電体52の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。
【0030】
アノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46の外周端部を周回して、シール部材70a、70bが一体化される。このシール部材70a、70bには、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
【0031】
図1に示すように、水循環機構16は、水電解機構12の水供給連通孔56に連通する循環配管72を備え、この循環配管72には、循環ポンプ74、イオン交換器76及び酸素側気液分離器78が配設される。
【0032】
酸素側気液分離器78の上部には、戻り配管80の一端部が連通するとともに、前記戻り配管80の他端は、水電解機構12の排出連通孔58に連通する。酸素側気液分離器78には、純水供給機構14に接続された純水供給配管82と、前記酸素側気液分離器78で純水から分離された酸素を排出するための酸素排気配管84とが連結される。
【0033】
水電解機構12の水素連通孔60には、高圧水素配管88の一端が接続され、この高圧水素配管88の他端が水素側気液分離器18に接続される。高圧水素配管88から脱圧配管88aが分岐するとともに、前記脱圧配管88aには、脱圧用バルブ89が設けられる。
【0034】
水素側気液分離器18で水分が除去された高圧水素は、水素除湿器20によって除湿され、ドライ水素配管90にドライ水素が供給される。ドライ水素配管90には、背圧弁91及び逆止弁92が配設されており、水素連通孔60に生成される水素圧力は、酸素側よりも高圧に維持される。ドライ水素配管90には、燃料電池電気自動車(図示せず)に着脱自在な充填ノズル94が設けられる。充填ノズル94には、図示しないが、燃料電池電気自動車に装着されているか否かを検出するセンサが設けられている。
【0035】
水素側気液分離器18の下部には、ドレン配管96が接続される。このドレン配管96には、排水用バルブ98が配設される。高圧水素配管88には、水素連通孔60に近接してカソード側電解室である第2流路68の圧力(スタック圧力)を検出する第1圧力センサ100が配設される。ドライ水素配管90には、逆止弁92の下流に近接して燃料電池電気自動車内の燃料タンクに充填されるドライ水素の充填圧力を検出する第2圧力センサ102が配設される。
【0036】
コントローラ22には、ユーザ用制御盤104が電気的に接続される。このユーザ用制御盤104では、ユーザによる水素充填終了の操作、水電解運転の起動操作、脱圧処理中の水素再充填の操作等が行われ、その信号がコントローラ22に送られる。
【0037】
このように構成される差圧式水電解装置10の運転方法について、図3に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0038】
先ず、システムメインスイッチがオンされて差圧式水電解装置10が始動される時には、アイドリング運転が行われる(ステップS1)。このアイドリング運転時には、ファン等が駆動されている。そして、差圧式水電解装置10が起動されると(ステップS2中、YES)、ステップS3に進んで、準備工程に移行する。ステップS3では、純水供給機構14を介して市水から純水が生成されており、この純水が、水循環機構16を構成する酸素側気液分離器78に供給されている。
【0039】
次いで、ステップS4に進んで、昇圧工程、すなわち、水電解処理が開始される。具体的には、水循環機構16では、循環ポンプ74の作用下に、循環配管72を介して純水が水電解機構12の水供給連通孔56に供給される。一方、ターミナルプレート26a、26bの端子部34a、34bには、電気的に接続されている電解用電源38を介して電解電圧が付与される。
【0040】
このため、図2に示すように、各単位セル24では、水供給連通孔56からアノード側セパレータ44の第1流路64に水が供給され、この水がアノード側給電体50内に沿って移動する。
【0041】
従って、水は、アノード電極触媒層50aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜48を透過してカソード電極触媒層52a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0042】
これにより、カソード側セパレータ46とカソード側給電体52との間に形成される第2流路68に沿って水素が流動する。この水素は、水供給連通孔56よりも高圧に維持されており、水素連通孔60を流れて水電解機構12の外部に取り出し可能となる。
【0043】
一方、第1流路64には、反応により生成した酸素と、使用済みの水とが流動しており、これらの混合流体が排出連通孔58に沿って水循環機構16の戻り配管80に排出される(図1参照)。この使用済みの水及び酸素は、酸素側気液分離器78に導入されて分離された後、水は、循環ポンプ74を介して循環配管72からイオン交換器76を通って水供給連通孔56に導入される。水から分離された酸素は、酸素排気配管84から外部に排出される。
【0044】
水電解機構12内に生成された水素は、高圧水素配管88を介して水素側気液分離器18に送られる。この水素側気液分離器18では、水素に含まれる水蒸気が、この水素から分離される。一方、水素は、水素除湿器20を介して除湿された後、背圧弁91の設定圧力に至るまで昇圧される。
【0045】
充填ノズル94が燃料電池電気自動車に装着されると、ドライ水素がドライ水素配管90を通って前記燃料電池電気自動車内の燃料タンクに充填される(ステップS5)。燃料タンク内の充填状態(充填圧力)は、第2圧力センサ102を介して検出され、所望の充填状態に至った際(ステップS6中、YES)、充填が終了されて脱圧工程に移行する(ステップS7)。
【0046】
脱圧工程では、電解用電源38により、上記の電解電圧よりも低圧な電圧が印加される。この印加電圧は、0.2V〜0.8V、より好適には、0.2V〜0.5Vの範囲に設定される。従って、コントローラ22は、水電解機構12を構成する各単位セル24が、常に、設定電圧である、例えば、0.5V以下になるように、電解用電源38の制御を行う。この状態で、カソード側の高圧水素の減圧が開始される。
【0047】
具体的には、脱圧用バルブ89が開放されて、脱圧配管88aが水素連通孔60に連通する。このため、カソード側電解室である第2流路68に充填されている高圧水素は、脱圧用バルブ89の開度調整によって徐々に減圧処理される(図4参照)。
【0048】
そして、第2流路68内の水素圧力が、第1流路64内の圧力(常圧)と同圧になった際、電解用電源38による電圧印加が停止される。これにより、差圧式水電解装置10の運転が停止されて脱圧工程が終了する(ステップS8中、YES)。さらに、システムが停止され(ステップS9中、YES)、システムメインスイッチがオフされることにより、制御が終了する。なお、システムが停止されない際には(ステップS9中、NO)、ステップS1に戻る。
【0049】
一方、脱圧中に(ステップS8中、NO)、充填ノズル94が燃料電池電気自動(又は別の燃料電池電気自動車)に装着されていると判断されると(ステップS10中、YES)、ステップS11に進む。このステップS11では、ユーザにより水素の再充填の開始スイッチが操作されると(ステップS11中、YES)、ステップS12に進んで、電流値の設定が行われる。
【0050】
本実施形態では、カソード側電解室である第2流路68の圧力に対応した水電解に必要な電流値が、予め算出されている。具体的には、図5に示すように、第2流路68と第1流路64(常圧)との圧力差が大きくなる程、カソード側電解室からアノード側電解室にクロスリークする水素量が増加する。
【0051】
従って、カソード側電解室からアノード側電解室へのクロスリークを抑制することができる電流値は、圧力差が大きくなる程、大きくなり、前記圧力差に対応する良好な電流値が予め算出される。
【0052】
このように、コントローラ22では、第2流路68の圧力に対応した水電解に必要な電流値を、予め算出し(第1の工程)、水電解処理が停止された状態で、前記第2流路68の圧力が第1圧力センサ100を介して検出される(第2の工程)。そして、ユーザにより水素の再充填の開始スイッチが操作されると(第3の工程)、検出された第2流路68の圧力(すなわち、圧力差)に対応し、予め算出された電流値以上の電流が設定される。
【0053】
これにより、ステップS12からステップS4に戻されて昇圧工程が開始される際(第4の工程)、上記のように電流値が設定されるため、第2流路(カソード側電解室)68から第1流路(アノード側電解室)64に水素がクロスリークすることを確実に抑制することができる。
【0054】
従って、特に減圧中に差圧式水電解装置10を起動される際、クロスリークによる水素の廃棄が良好に削減される。これにより、アノード側とカソード側とに差圧が発生していても、迅速且つ効率的に水電解処理を開始することが可能になるという効果が得られる。
【0055】
さらに、本実施形態では、図6に示すように、脱圧工程の途上で、脱圧を停止して昇圧している。このため、一般的な脱圧、準備及び昇圧工程を行う場合の充填までの時間(図4中、T1)に比べ、充填までの時間(図6中、T2)が大幅に削減される(T1>T2)。従って、充填までの大幅な時間削減が可能になり、ユーザによる操作性が向上するとともに、機器類の消費電力の削減が容易に図られるという利点がある。
【符号の説明】
【0056】
10…差圧式水電解装置 12…水電解機構
14…純水供給機構 16…水循環機構
18…水素側気液分離器 20…水素除湿器
22…コントローラ 24…単位セル
38…電解用電源 42…電解質膜・電極構造体
44…アノード側セパレータ 46…カソード側セパレータ
48…固体高分子電解質膜 50…アノード側給電体
52…カソード側給電体 56…水供給連通孔
58…排出連通孔 60…水素連通孔
64、68…流路 72…循環配管
78…酸素側気液分離器 80…戻り配管
88…高圧水素配管 90…ドライ水素配管
94…充填ノズル 100、102…圧力センサ
104…ユーザ用制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に給電体が設けられ、前記給電体間に電解電圧を印加することにより、水を電気分解してアノード側電解室に酸素を発生させるとともに、カソード側電解室に常圧よりも高圧な水素を発生させる差圧式水電解装置の運転方法であって、
前記カソード側電解室の圧力に対応した水電解に必要な電流値を、予め算出する第1の工程と、
水電解処理が停止された状態で、前記カソード側電解室の圧力を検出する第2の工程と、
前記水電解処理が開始されるか否かを判断する第3の工程と、
前記水電解処理が開始されると判断された際、検出された前記カソード側電解室の圧力に対応して予め算出された前記電流値以上の電流により、前記水電解処理を開始する第4の工程と、
を有することを特徴とする差圧式水電解装置の運転方法。
【請求項2】
請求項1記載の運転方法において、前記カソード側電解室の減圧処理が行われている間に、前記第2の工程以降が行われることを特徴とする差圧式水電解装置の運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−167331(P2012−167331A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29502(P2011−29502)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】