説明

巻上機のブレーキ保持トルク調整装置及びそのブレーキ保持トルク調整方法

【課題】保守員無しに自動的、簡便にブレーキトルク上昇運転を実施する。
【解決手段】巻上機のブレーキ装置のブレーキ保持力が低下したとき、監視センタからブレーキ保持トルク調整指示信号を受けて、エレベータ制御盤2がブレーキ保持トルクの調整を行う巻上機のブレーキ保持トルク調整装置において、前記エレベータ制御盤2は、所望のブレーキ保持トルクしきい値2b1を記憶する手段2bと、前記乗りかごを最下階の所定位置に移動・停止させるかご初期位置設定手段2Aと、前記乗りかごが所定位置に停止後、点検モードに切替える点検モード切替手段2Bと、ブレーキのすり合わせによるブレーキ保持力上昇運転を行って巻上機へのトルク値がブレーキ保持トルクしきい値を超えたかを判断するブレーキすり合わせ処理手段2Cとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、巻上機のブレーキ保持トルク調整装置及びそのブレーキ保持トルク調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、巻上機のモータの慣性による回転を自動的に制止するためにブレーキ装置が設けられている。
【0003】
このブレーキ装置としては、例えばモータの出力軸に固定されたブレーキ車に接触し、その摩擦による抵抗を付与するブレーキパッドを含む構造のものが知られており、また、近年ではディスクブレーキを用いたブレーキ装置が使用されている。
【0004】
これらブレーキ装置から発生させるブレーキトルクは、エレベータの乗りかごを停止させるために十分なものであると同時に、急停止によるショックが発生しないように、ある適切な範囲に調整されている必要がある。
【0005】
そこで、従来、保守員が定期点検毎にエレベータを動かし、機械室内でブレーキの動きを見るか、あるいはエレベータを自動的に停止させて、階乗場の敷居と乗りかごの敷居の段差からブレーキスリップ量を測定することが行われている。
【0006】
しかし、保守員が定期点検毎に現地に出向いてブレーキ確認作業をしない限り、ブレーキの動作状態を確認することが難しい。
【0007】
そこで、近年、エレベータの監視センタや保守センタなどでは、ブレーキ診断運転用プログラムに従ってブレーキ診断処理手順に関するデータを遠隔地の各個所に設置されるエレベータに送信する。エレベータ側の制御盤は、ブレーキ診断処理手順に関するデータを受信後、かご内の荷重負荷の確認、停止状態(釈放状態)でUP方向への所定値(例えば0〜50%)以内又は例えば50%以上のトルク印加、この何れのトルク印加によってかごが所定距離動くか否かに応じて異常・正常を判断、所定時間ごとに再度複数回実施し、最終的にブレーキの正常・異常を診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−108983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、以上のようなブレーキ診断運転結果からブレーキの保持トルクが低下していると診断した場合、保守員が現地に出向き、エレベータ設備機器に異常がないか点検し、機器に異常が無いと判断されたとき、巻上機のレーキ装置への電力供給を遮断して制動動作を行う,いわゆるブレーキスリップを実施し、ブレーキの保持トルクを上昇させている。
【0010】
その理由は、ブレーキ装置の保持トルク低下は温度や湿度などの影響を受けて発生しているものと考えられ、ブレーキスリップなどで保持トルクが改善されることが多い為である。
【0011】
しかし、以上のような保持トルク上昇作業は、ブレーキスリップによるブレーキへのすり合わせを行う必要があるが、そのためには保守員が監視センタ等から遠隔地のエレベータ設置現場に出向くとか、客先不在の場合には再び現場に出向く必要があり、ブレーキの保持トルクを改善するために労力及び時間を要する問題がある。
【0012】
そこで、本巻上機のブレーキ保持トルク調整装置及びそのブレーキ保持トルク調整方法は、ブレーキの保持トルクを自動的、かつ簡易な処理手順によって上昇させる調整動作を実施し、ひいては保守員の労力の低減及び安全面を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、発明の実施形態によれば、乗りかごを昇降する巻上機のブレーキ装置のブレーキ保持力が低下したとき、外部装置からブレーキ保持トルク調整指示信号を受けて、エレベータ制御盤がブレーキ保持トルクの調整を行う巻上機のブレーキ保持トルク調整装置において、前記エレベータ制御盤は、所望のブレーキ保持トルクしきい値を記憶する手段と、乗りかご内に乗客が乗っていないとき、当該乗りかごを最下階の所定位置に移動・停止させるかご初期位置設定手段と、前記乗りかごが所定位置に停止後、乗場表示部に「自動保守運転中」を表示し、かつ点検モードに切替える点検モード切替手段と、前記巻上機に低速上昇運転させる所定の電力を供給し、また前記ブレーキ装置に電圧を印加せずに釈放状態に設定し、ブレーキ保持力上昇運転を行って前記巻上機へのトルク値が前記ブレーキ保持トルクしきい値を超えたかを判断するブレーキすり合わせ処理手段とを備えた巻上機のブレーキ保持トルク調整装置である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る巻上機のブレーキ保持トルク値調整装置を説明する構成図。
【図2】巻上機の上面を概略的に表す図。
【図3】実施形態に係る巻上機のブレーキ保持トルク値調整装置の要部を説明する構成図。
【図4】実施形態に係る巻上機のブレーキ保持トルク値調整装置の動作及びブレーキ保持トルク値調整方法を説明する一連の処理手順を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は一実施形態に係る巻上機のブレーキ保持トルク調整装置を説明する概略構成図である。
【0016】
巻上機のブレーキ保持トルク調整装置は、昇降路上部の機械室または昇降路内頂部などに設置される巻上機1と、乗場呼びやかご呼びに基づく呼び登録階に応じた速度指令に従って巻上機1の回転速度を制御する記憶部2a,2bを備えたエレベータ制御盤2とを含む構成である。
【0017】
このエレベータ制御盤2には例えばLAN,WAN等の通信ネットワーク3を介して監視センタ4が接続される。
【0018】
監視センタ4は、従来周知のブレーキ診断運転用プログラムを用いて、巻上機1のブレーキ保持トルクの確認運転を行う他、ブレーキ保持トルクの低下時にブレーキ保持トルク調整指令信号をエレベータ制御盤2に送信する機能を有する。なお、監視センタ4は、特に名称に限定されるものではなく、例えば保守センタや中央センタなども含むものである。
【0019】
巻上機1の巻上シーブ11にはメインロープ12が巻き掛けられている。メインロープ12の一端側は、乗りかご13上部のかごシーブ(滑車)14を経由し、そのロープ端部が例えば機械室床15に取り付けられたかご側ヒッチスプリングなどのかご側弾性体16に支持される。また、メインロープ12の他端側は、カウンタ17上部のカウンタシーブ(滑車)18を経由し、そのロープ端部が例えば機械室床15に取り付けられたカウンタ側ヒッチスプリングなどの弾性体19に支持される。
【0020】
一方、巻上機1の例えば巻上シーブ11とは反対側の回転軸側にはブレーキ装置21及び速度検出器22が設けられている。
【0021】
図2は巻上機1の上面側を見たときの外観を概略的に示した図であって、巻上機1の図示右側の速度検出器カバー22a内には巻上機1の回転速度を検出する速度検出器22が設けられている。
【0022】
ブレーキ装置21は、エレベータ制御盤2からの停止指令のもとに巻上機1の回転軸系に接触などして制動動作を行い、乗りかご13を各階の定位置に停止させる機能を有する。
【0023】
速度検出器22は、巻上機1の実回転速度を検出し、エレベータ制御盤2に送出する。
【0024】
エレベータ制御盤2には、図3に示すように、少なくとも運行制御用ブログラムデータ2a1及び保持トルク調整用プログラムデータ2a2を格納するROMなどのプログラムデータ記憶部2aと、エレベータの各個所に設置される各種センサから送られてくる各種のデータ及び運行制御に関係するデータの他、少なくともブレーキ保持トルクしきい値2b1や各階表示用自動保守運転データ2b2等を記憶するRAMなどのデータ記憶部2bが設けられている。
【0025】
なお、プログラムデータ記憶部2aには、監視センタ4に代えて、従来周知のブレーキ診断運転用プログラムデータを格納してもよい。
【0026】
エレベータ制御盤2は、速度検出器22からの実回転速度と乗場呼びやかご呼びに基づく呼び登録階に応じた基準速度とを比較し、実回転速度が基準速度に合致するような運行制御信号を算出し、巻上機側信号配線23を通して巻上機1を運行制御する機能を有する他、図3に示す各種の機能を備えている。
【0027】
すなわち、エレベータ制御盤2は、かご初期位置設定手段2A、点検モード切替手段2B、ブレーキすり合わせ処理手段2C及びブレーキ保持力確認手段2Dを備えている。
【0028】
かご初期位置設定手段2Aは、乗客の乗っていないノーロードの乗りかご13を最下階の所定位置に移動し停止させる機能を有する。
【0029】
点検モード切替手段2B、ブレーキ保持トルクを上昇させるに先立ち、乗客に保守運転中であることを知らせ、点検運転モードに設定する処理を行う。
【0030】
ブレーキすり合わせ処理手段2Cは、乗りかご13を低速で上昇運転を行いながら、巻上機1に対するブレーキ装置21への電力供給を遮断して制動動作を行う,いわゆるブレーキスリップを実施し、所定時間にわたってブレーキのすり合わせを行うことでブレーキの保持トルクを上昇させる機能を有する。
【0031】
ブレーキ保持力確認手段2Dは、従来周知のブレーキの診断運転を実施しブレーキ保持力を確認する機能を有する。
【0032】
さらに、エレベータ制御盤2と乗りかご13との間には電力を含む各種の信号をやり取りするテールコード24が結ばれている。
【0033】
先ず、エレベータシステムの一般的な動作を説明した後、エレベータ制御盤2によるブレーキ保持トルクの調整処理について説明する。
【0034】
(A) エレベータの一般的な制御動作について。
【0035】
利用客が乗りかご13に乗り込んで行先階ボタンを操作すると、テールコード24を通してエレベータ制御盤2に送られ、行先階ボタンの操作に応答してかご呼び登録が行われる。
【0036】
エレベータ制御盤2は、かご呼び登録された行先階に応じた所定の速度基準(速度パターン)と速度検出器22で検出される実速度信号との偏差を零とする速度制御信号に相当するトルク指令を送出し、巻上機1に供給する。
【0037】
ここで、巻上機1の回転駆動に伴ってメインシーブ11が回転し、当該メインシーブ11に巻き掛けられたメインロープ12が所望方向に送り出され、前記乗りかご13が上昇方向または下降方向に走行する。このとき、走行中の振動などは、かご側ヒッチスプリング16やカウンタ側ヒッチスプリング19が吸収するとともに、行先階(目的階)への着床後は、エレベータ制御盤2からのブレーキ動作指令に受けてブレーキ装置21が巻上機1の回転軸系に押し付けるなどの接触により制動動作をかけ、乗りかご13を行先階の定位置に停止させる。
【0038】
そこで、監視センタ4は、従来から使用されているブレーキ診断運転用プログラムを用いて、遠隔地の各個所に設置されるエレベータのブレーキ診断運転を実施し、ブレーキの保持トルクを測定している。ここで、ブレーキ装置21のブレーキ保持力が低下した場合、乗りかご13の各階停止時に各階床面との間に位置ずれ(段差)が生じ、乗客の乗降の際に思わぬトラブルに巻き込まれることが考えられる。
【0039】
そこで、ブレーキ装置21のブレーキ保持力を高める調整が必要となる。本実施の形態では、エレベータ制御盤2が監視センタ4からブレーキ保持トルク調整指示を受けたとき、所定の保持トルク調整用プログラムに従ってブレーキ保持力を上昇させる調整運転が行われる。
【0040】
(B) このエレベータ制御盤2によるブレーキ保持力の調整処理について(図4参照)。
【0041】
監視センタ4は、適宜な時間帯にエレベータ制御盤2にアクセスし、従来一般に使用されるブレーキ診断運転用プログラムを用いて、巻上機1に対するブレーキ装置21のブレーキ診断運転を実施し、エレベータ制御盤2からブレーキ保持力確認用のデータを取得し、ブレーキ保持力の低下有無を判断する。ここで、監視センタ4は、ブレーキ保持力の低下と判断したとき、適宜な時間にブレーキ保持トルク調整指示信号を該当するエレベータ制御盤2に送信する。
【0042】
(1) エレベータ制御盤2は、ブレーキ保持トルク調整指示信号を受信すると、プログラムデータ記憶部2aから保持トルク調整用プログラムデータ2a2を読み出し、ワークメモリとしてのデータ記憶部2bに書き込み、図4に示す一連のブレーキ保持トルク調整処理を実行する。
【0043】
すなわち、エレベータ制御盤2は、ブレーキ保持トルク調整指示信号を受信すると(S1)、かご初期位置設定手段2Aを実行する。
【0044】
かご初期位置設定手段2Aは、乗りかご13に設置される荷重計(図示せず)からかご内荷重信号を取り出し(S2)、乗りかご13内に乗客が乗っているか否かを判断する(S3)。乗りかご13内に乗客が乗っている場合にはステップS2に戻り、同様の処理を繰り返し実行する。
【0045】
かご初期位置設定手段2Aは、ステップS3にて乗りかご13内が乗客無しでNL(ノーロード)と判断したとき、乗りかご13を最下階に移動させる(S4)。乗りかご13が最下階へ移動後、最下階の定位置(初期位置)に停止したか否かを判断し(S5)、定位置停止と判断したとき、点検モード切替手段2Bを実行する。これらステップS1〜S5はかご初期位置設定ステップに相当する。
【0046】
点検モード切替手段2Bは、最下階の定位置停止後、データ記憶部2bから各階表示用自動保守運転データ2b2を読み出し、各階または基準階乗場表示部(図示せず)に「自動保守運転中」を表示し(S6)、乗客に対して保守運転中であることを知らせる。
【0047】
また、点検モード切替手段2Bは、「自動保守運転中」を表示するとともに、自動的に点検モード(低速運転モード)に切替える(S7)。これらステップS6,S7は点検モード切替ステップに相当する。
【0048】
引き続き、エレベータ制御盤2は、ブレーキすり合わせ処理(ブレーキ保持力上昇運転)手段2Cを実行する。ブレーキすり合わせ処理手段2Cは、カウンタメモリ(図示せず)にi=1をセットした後(S8)、乗りかご13の積載荷重をNL(ノーロード)とした状態で低速上昇運転用の電力を巻上機側信号配線23を通して巻上機1に供給し、乗りかご13を低速上昇運転するとともに、ブレーキ装置21には電圧を印加させずに釈放状態に設定する(S9)。すなわち、巻上機のブレーキ装置21への電力供給を遮断し制動動作を行う,いわゆるブレーキスリップを実施し、ブレーキのすり合わせを行うことでブレーキの保持トルクを上昇させるようにする。このブレーキのすり合わせ処理は1回につき最大10秒までとする。
【0049】
このとき、ブレーキすり合わせ処理手段2Cは、巻上機1へ流している電流値,つまりトルク値とデータ記憶部2bに記憶される予め得たいとするブレーキ保持トルクしきい値2b1とを比較し、トルク値がブレーキ保持トルクしきい値2b1を超えないとき、所定回数(例えば3回まで)にわたって低速上昇運転・ブレーキ釈放状態を繰り返す(S9〜S12)。このステップS9〜S12による繰り返しの段階で、トルク値がブレーキ保持トルクしきい値2b1を超えたとき、乗りかご13の低速上昇運転を終了する。これらステップS8〜S12はブレーキすり合わせ処理ステップに相当する。
【0050】
なお、1回目の低速上昇運転でブレーキ保持トルクしきい値を超えなかった場合、2回目の低速上昇運転を実施するが、1回目と2回目の間は多少時間を開ける。
【0051】
さらに、エレベータ制御盤2はブレーキ保持力確認手段2Dを実行する。このブレーキ保持力確認手段2Dは、乗りかご13の低速上昇運転を終了した後、乗りかご13を最上階へ移動させつつ、従来から使用されているブレーキ診断運転を実施する(S13)。
【0052】
そして、ブレーキ保持トルクが上昇し、所要とするブレーキ保持トルクしきい値2b1を超えていれば(S14)、通常運転に戻す。
【0053】
一方、ステップS11において、所定回数による保持トルク上昇運転にもかかわらず、トルク値(電流値)がブレーキ保持トルクしきい値2b1以下のとき、及びステップS14において、ブレーキ保持トルクがブレーキ保持トルクしきい値2b1以下であれば、監視センタ4にトルク上昇不可とするエラー信号を発報する(S15)。
【0054】
なお、保持トルク上昇運転による繰り返し回数、運転日時などは、保守員が後日データ記憶部2bから確認できるようにするとともに、当該繰り返し回数を変更することもできる。
【0055】
従って、本実施の形態によれば、監視センタ4が適宜な時期にエレベータ制御盤2にアクセスし、従来周知のブレーキ診断運転用プログラムを用いて、巻上機1のブレーキ診断運転を実施し、ブレーキ装置21のブレーキ保持力が低下していると判断したとき、該当するエレベータ制御盤2にブレーキ保持トルク調整指示信号を送信する。
【0056】
エレベータ制御盤2は、ブレーキ保持トルク調整指示信号を受信すると、予め記憶される保持トルク調整用プログラムデータ2a2に基づき、乗りかご13を所定位置に停止させた後、「自動保守運転中」を表示するとともに、点検モード(低速運転モード)に切替え、低速上昇運転のもとにブレーキ保持力の上昇運転を実施しながら、トルク値がブレーキ保持トルクしきい値2b1を超えたか否かを判断し、超えたときにトルク調整処理終了とするので、トルク保持力の低下を自動的、かつ簡易な処理手順に従ってブレーキ保持力の上昇運転によって改善することが可能であり、保守員による現地でのトルク調整作業の負担がなくなり、同時に安全面を確保することができる。
【0057】
(その他の実施形態)
(1) 上記実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1…巻上機、2…エレベータ制御盤、2a…プログラムデータ記憶部、2b…RAMなどのデータ記憶部、2A…かご初期位置設定手段、2B…点検モード切替手段、2C…ブレーキすり合わせ処理手段、2D…ブレーキ保持力確認手段、3…通信ネットワーク、4…監視センタ、11…巻上シーブ、12…メインロープ、13…乗りかご、17…カウンタ、21…ブレーキ装置、22…速度検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごを昇降する巻上機のブレーキ装置のブレーキ保持力が低下したとき、監視センタからブレーキ保持トルク調整指示信号を受けて、エレベータ制御盤がブレーキ保持トルクの調整を行う巻上機のブレーキ保持トルク調整装置において、
前記エレベータ制御盤は、
所望のブレーキ保持トルクしきい値を記憶する手段と、
前記乗りかご内に乗客が乗っていないとき、当該乗りかごを最下階の所定位置に移動・停止させるかご初期位置設定手段と、
前記乗りかごが所定位置に停止後、乗場表示部に「自動保守運転中」を表示し、かつ点検モードに切替える点検モード切替手段と、
前記巻上機に対して低速上昇運転させる所定の電力を供給し、また前記ブレーキ装置に電圧を印加せずに釈放状態に設定し、ブレーキすり合わせによるブレーキ保持力上昇運転を行って前記巻上機へのトルク値が前記ブレーキ保持トルクしきい値を超えたかを判断するブレーキすり合わせ処理手段と
を備えたことを特徴とする巻上機のブレーキ保持トルク調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の巻上機のブレーキ保持トルク調整装置において、
前記ブレーキすり合わせ処理手段によってトルク値が前記ブレーキ保持トルクしきい値を超えたとき、ブレーキすり合わせ処理を終了し、前記巻上機に対するブレーキ装置の診断運転を実施し、前記トルク値が前記ブレーキ保持トルクしきい値以下であるとき、外部装置にトルク上昇不可とするエラー信号を送信し、前記トルク値が前記ブレーキ保持トルクしきい値を超えているときに正常運転に戻すブレーキ保持力確認手段をさらに設けたことを特徴とする巻上機のブレーキ保持トルク調整装置。
【請求項3】
前記監視センタは、前記巻上機の設置場所から離れた遠隔地に設けられ、前記巻上機に対するブレーキ装置のブレーキ診断運転を実施し、ブレーキ保持力が低下していると判断したとき、ブレーキ保持トルク調整指示信号を前記エレベータ制御盤に送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻上機のブレーキ保持トルク調整装置。
【請求項4】
前記かご初期位置設定手段は、前記乗りかごに設置される荷重計で検出されるかご内荷重信号から当該乗りかご内に乗客が乗っていないことを判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻上機のブレーキ保持トルク調整装置。
【請求項5】
前記ブレーキすり合わせ処理手段は、前記巻上機へのトルク値が前記ブレーキ保持トルクしきい値を超えるまで所定回数にわたってブレーキすり合わせ処理を行い、前記ブレーキ装置のブレーキ保持トルクを上昇させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻上機のブレーキ保持トルク調整装置。
【請求項6】
巻上機のブレーキ装置のブレーキ保持力が低下したとき、前記エレベータ制御盤が予め定めるブレーキ保持トルクしきい値のもとブレーキ保持トルクの調整を行う巻上機のブレーキ保持トルク調整方法において、
前記乗りかごに設置される荷重検出手段の出力から当該乗りかご内に乗客が乗っていないと判断したとき、当該乗りかごを最下階へ移動させて所定位置に停止させるかご初期位置設定ステップと、
前記乗りかごを所定位置に停止させた後、各階乗場表示部に「自動保守運転中」を表示し、かつ点検モードに切替える点検モード切替ステップと、
前記巻上機に対して低速上昇運転させる所定の電力を供給し、また前記ブレーキ装置に電圧を印加せずに釈放状態に設定し、ブレーキすり合わせによるブレーキ保持力上昇運転を行って前記巻上機へのトルク値が前記ブレーキ保持トルクしきい値を超えたか判断するブレーキすり合わせ処理ステップと、
前記トルク値が前記ブレーキ保持トルクしきい値を超えたときに前記ブレーキすり合わせ処理を終了し、前記ブレーキ診断運転を実施し、前記トルク値が前記ブレーキ保持トルクしきい値以下となったときトルク上昇不可とするエラー信号を出力するブレーキ保持力確認ステップとを有することを特徴とする巻上機のブレーキ保持トルク調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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