説明

巻上機のブレーキ装置の点検補助装置

【課題】点検・清掃作業時の作業者の負担を軽減させることができるとともに、支点ピン等の点検・清掃に際して支点ピンを抜き取るための準備作業、及び点検・清掃が終了して支点ピンが差し込まれた後の整理作業を短時間で行うことができるようにした。
【解決手段】本発明は、ブレーキ装置のブレーキドラム2の両側方に配置されたレバー4の支点ピン5が挿入される通し穴4bから離れた部分に形成した貫通穴30と、巻上機土台1の支点ピン5が挿入される通し穴9aを有するレバー支持部9から離れた部分に設けられ、支点ピン5を中心に、レバー4をブレーキドラム2から離れる方向に回動させた際に、レバー4に形成した貫通穴30と適合する貫通穴33を有するレバー保持部32と、互いに適合させたレバー保持部32の貫通穴33と、レバー4に形成した貫通穴30とに挿入される点検用ピン31とを備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータに配置される巻上機のブレーキ装置に備えられ、ブレーキドラムの両側方に設けられるレバーを回動可能に巻上機に連結する支点ピン等の点検・清掃に際して用いられる巻上機のブレーキ装置の点検補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のブレーキ装置の点検補助装置として、特許文献1に示されるものがある。図5は、この特許文献1に示される第1従来技術に係る点検補助装置が適用される巻上機のブレーキ装置を示す正面図、図6は第1従来技術を示す縦断面図である。
【0003】
第1従来技術が適用される巻上機のブレーキ装置は、図5に示すように、エレベータの巻上機土台1に連結されたブレーキドラム2と、このブレーキドラム2に摺接可能な一対のブレーキシュー3と、ブレーキドラム2の両側方にそれぞれ配置され、ブレーキシュー3をそれぞれ支持する一対のレバー4とを備えている。また、このブレーキ装置は、巻上機土台1に設けた一対のレバー支持部9にそれぞれ形成した通し穴9a、及びレバー4のそれぞれに形成した図6に示す通し穴4bに挿入され、レバー4をそれぞれ回動可能に支持する一対の支点ピン5を備えている。さらに、このブレーキ装置は、図5に示すように、一対のレバー4間に設けられ、これらのレバー4をそれぞれブレーキドラム3から離隔する方向へ押し開く電磁石装置6と、この電磁石装置6及び一対のレバー4にそれぞれ設けられる穴4aに挿入されるロッド7と、このロッド7の両端部に設けられ、一対のレバー4に対して閉じる方向に弾性力を付勢するばね8とを備えている。なお、支点ピン9のそれぞれ該当するものに摺接するレバー4の通し穴4bの部分には、支点ピン5との間を潤滑する固形潤滑剤が設けられている。
【0004】
このようなブレーキ装置に備えられる第1従来技術に係る点検補助装置は、図6に示すように、一端側が支点ピン5に取り付け可能で、支点ピン5と同じ径寸法に形成されるとともに、他端側に切り欠き部10bを有し、レバー4のスライドを可能にするガイド体10から成っている。ガイド体10は支点ピン5の径方向断面と同等の円形断面を有し、切り欠き部10bは、円形断面から離れるに従って先細状となっている。また、ガイド体10には、支点ピン5に形成された雌ねじに螺合する雄ねじ10aが設けられている。
【0005】
このように構成される第1従来技術を用いて支点ピン5等の点検・清掃を行う場合には、ガイド体10の雄ねじ10aを支点ピン5の雌ねじに螺合させ、ガイド体10の切り欠き部10bとは反対側に位置する部分10cが上側となるように、このガイド体10を配置する。次に同図6に示すように、レバー4をガイド体10に案内させてスライドさせる。これにより、レバー4が装着されていた支点ピン5の部分が露出するので、この支点ピン5の部分を点検・清掃することができる。また、ガイド体10の切り欠き部10bによってレバー4の通し穴4bが露出するので、このレバー4の通し穴4bに設けられている固形潤滑剤を点検・清掃することができる。この場合、必要に応じてガイド体10を中心にレバー4を回動させるようにして、点検・清掃が行われる。
【0006】
しかし、このようにして点検・清掃を行う第1従来技術にあっては、レバー4のスライド動作及びガイド体10を中心にレバー4を回動させる動作を、作業者がレバー4を保持しながら行わなくてはならず、作業者の負担が増加する問題がある。
【0007】
このようなことから、従来、特許文献2に示されるものも提案されている。図7は特許文献2に示される第2従来技術に係る点検補助装置が適用される巻上機のブレーキ装置を示す正面図、図8は第2従来技術を示す正面図である。
【0008】
この特許文献2に記載されるブレーキ装置は、図7に示すように、巻上機土台11に設けられ、回転駆動するブレーキドラム12と、このブレーキドラム12に当接してその制動を行う一対のブレーキシュー13と、これらのブレーキシュー13が設けられる一対のブレーキレバー14と、巻上機土台11のレバー支持部11aのそれぞれに形成された通し穴、及びレバー14の上端のそれぞれに形成された通し穴に差し込まれ、ブレーキレバー14を巻上機土台11に対して回動可能に吊り下げる一対の支点ピン15とを備えている。ブレーキレバー14を矢印16方向に回動させることによって、ブレーキドラム12が制動される。
【0009】
このようなブレーキ装置に用いられる第2実施形態に係る点検補助装置は、図8に示すように、ブレーキレバー14の上面に形成したねじ穴に螺合するロッド17と、このロッド17をブレーキレバー14に固定するロック用ナット18と、巻上機土台11のレバー支持部11aに載置される台座19と、この台座19に形成した通し穴に挿入させた前述のロッド17に螺合し、このロッド17をジャッキアップ可能とするジャッキ用ナット20と、台座19をレバー支持部11aに固定するボルト21とを備えている。
【0010】
この第2従来技術は、支点ピン15等の点検・清掃に際して、ブレーキレバー14の上面にロッド17を螺合させて、このロッド17をロック用ナット18で固定する。また、台座14の通し穴にロッド17を挿入させた状態で、台座19をレバー支持部11aにボルト21で固定する。この状態でロッド17にジャッキ用ナット20を螺合させる。このようにしてレバー14を支持させることにより、支点ピン15に掛かるブレーキレバー14の自重による力が除かれ、支点ピン15を簡単に抜き取ることができる。すなわち、作業者がブレーキレバー14を保持する必要がなく、作業者の負担を軽減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−184805号公報
【特許文献2】特開2010−254470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述した特許文献2に示される第2従来技術に係る点検補助装置は、支点ピン15の抜き取りに際してブレーキレバー14をロッド17及び台座19を介して保持させるので、前述したように点検・清掃を行う作業者の負担を軽減させることができる利点がある。しかし、この第2従来技術に係る点検補助装置は、ロッド17、台座19、ロック用ナット18、ジャッキ用ナット20、及びボルト21を含む複雑な構成であるので、支点ピン15等の点検・清掃に際して支点ピン15を抜き取る準備作業である当該点検補助装置の取り付けに時間がかかる。また逆に、支点ピン15等の点検・清掃が終了し、支点ピン15をレバー14とレバー支持部11aの通し穴のそれぞれに差し込んだ後、第2従来技術に係る点検補助装置を取り外す整理作業に際しても、時間がかかる。このために第2従来技術にあっては、支点ピン15等の点検・清掃作業の能率の向上を見込めない問題がある。
【0013】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、点検・清掃作業時の作業者の負担を軽減させることができるとともに、支点ピン等の点検・清掃に際して支点ピンを抜き取るための準備作業、及び点検・清掃が終了して支点ピンが差し込まれた後の整理作業を短時間で行うことができる巻上機のブレーキ装置の点検補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明に係る巻上機のブレーキ装置の点検補助装置は、エレベータの巻上機に連結されたブレーキドラムと、このブレーキドラムに摺接可能な一対のブレーキシューと、前記ブレーキドラムの両側方にそれぞれ配置されるとともに、前記ブレーキシューをそれぞれ支持する一対のレバーと、前記巻上機のレバー支持部に形成した通し穴、及び前記レバーに形成した通し穴に挿入され、前記レバーをそれぞれ回動可能に支持する一対の支点ピンとを備えたブレーキ装置にあって、前記支点ピン、この支点ピンが挿入される前記レバー支持部の前記通し穴、及び前記支点ピンが挿入される前記レバーの前記通し穴の点検・清掃に際して用いられる巻上機のブレーキ装置の点検補助装置において、前記レバーに形成した前記通し穴から離れた前記レバーの部分に形成した貫通穴と、前記巻上機の前記レバー支持部から離れた前記巻上機の部分に設けられ、前記支点ピンを中心に、前記レバーを前記ブレーキドラムから離れる方向に回動させた際に、前記レバーに形成した前記貫通穴と適合する貫通穴を有するレバー保持部と、互いに適合させた前記レバー保持部の前記貫通穴と、前記レバーに形成した前記貫通穴とに挿入される点検用ピンとを備えたことを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明を用いて行われるレバーを回動可能に支持する支点ピン等の点検・清掃に際しては、支点ピンを中心にレバーをブレーキドラムから離れる方向に回動させ、レバーに形成した貫通穴と巻上機に設けたレバー支持部に形成した貫通穴とを適合させる。この状態で、レバーの貫通穴とレバー保持部の貫通穴に点検用ピンを挿入する。これにより、レバーを主に点検用ピンを介して巻上機に支持させることができる。この状態において支点ピンを抜き取る。これにより、支点ピン、及び支点ピンが挿入されるレバー支持部の通し穴、及び支点ピンが挿入されるレバーの通し穴のそれぞれの点検・清掃を行うことができる。
【0016】
支点ピン等の点検・清掃が終了した後には、レバーの通し穴と巻上機のレバー支持部の通し穴を適合させて、これらの通し穴に支点ピンを挿入する。この状態で、レバーの貫通穴とレバー支持部の貫通穴に挿入されている点検用ピンを抜き取る。次に、レバーを支点ピンを中心にブレーキドラムに近づく方向に所定位置まで回動させる。これにより、点検・清掃前の状態に復帰させることができる。
【0017】
このように本発明は、支点ピンの抜き取り時に作業者がレバーを保持することなく支点ピンを抜き取ることができ、この点検・清掃作業時の作業者の負担を軽減させることができる。また、支点ピンを抜き取るための準備作業は、レバー保持部の貫通穴とレバーの貫通穴とが適合するようにレバーをブレーキドラムから離れる方向に回動させる動作と、互いに適合させたレバー保持部の貫通穴とレバーの貫通穴に支点ピンを挿入する動作であり、支点ピンを抜き取るための準備作業を短時間で行うことができる。また逆に、点検・清掃が終了して支点ピンがレバーの通し穴とレバー支持部の通し穴に挿入され、点検用ピンが抜き取られ、レバーの所定位置までの回動が行われた後に、点検用ピンを保管する整理作業を行えばよい。したがって、この整理作業も短時間で行うことができる。
【0018】
また本発明は、前記発明において、互いに適合させた前記レバー保持部の前記貫通穴と、前記レバーに形成した前記貫通穴とに前記点検用ピンを挿入した状態で、前記支点ピンが前記巻上機の前記レバー支持部の前記通し穴、及び前記レバーに形成した前記通し穴から抜き取られた際に、前記点検用ピンを中心に回動させた前記レバーを所定の回動位置に係止させる係止部材を備えたことを特徴としている。
【0019】
このように構成した本発明は、支点ピンが抜き取られた後、レバーを点検用ピンを中心に係止部材で係止される所定の回動位置まで回動させることにより、巻上機のレバー支持部の通し穴とレバーの通し穴とを互いに離隔した状態とすることができる。これによって、巻上機のレバー支持部の通し穴の点検・清掃、及びレバーの通し穴の点検・清掃を容易に行うことができる。
【0020】
また本発明は、前記発明において、前記係止部材は、前記巻上機に固定され、前記支点ピンを中心に前記レバーを前記ブレーキドラムから離れる方向に回動させた際に、前記レバーに形成した前記貫通穴と前記レバー保持部の前記貫通穴とが適合するように前記レバーを載置させる平坦部と、この平坦部に連設され、前記点検用ピンを中心にして回動した前記レバーを前記所定の回動位置に係止させる傾斜部とを有するスペーサから成ることを特徴としている。
【0021】
このように構成した本発明は、スペーサの平坦部によって、レバーに形成した貫通穴とレバー保持部の貫通穴とを容易に適合させることができる。また本発明は、点検用ピンを中心にレバーをスペーサの傾斜部に係止されるまで回動させることにより、レバー支持部の通し穴とレバーの通し穴との離隔距離を一定に保つようにレバーをスペーサの傾斜部に支持させることができる。これによって、巻上機のレバー支持部の通し穴の点検・清掃、及びレバーの通し穴の点検・清掃を高い精度で実施することができる。
【0022】
また本発明は、前記発明において、前記点検・清掃が実施されないときに、前記点検用ピンを、前記レバーの前記貫通穴または前記レバー保持部の前記貫通穴に挿入させるようにしたことを特徴としている。
【0023】
このように構成した本発明は、支点ピン等の点検・清掃が行われるまで、点検用ピンの紛失を生じさせることなく、この点検用ピンを点検・清掃を容易にさせるレバー位置に、あるいはレバーの近傍位置に保管させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、ブレーキドラムの両側方に配置されるレバーに形成した通し穴から離れたレバーの部分に形成した貫通穴と、ブレーキドラムが連結される巻上機のレバー支持部から離れた部分に設けられ、レバーを回動可能に支持する支点ピンを中心に、レバーをブレーキドラムから離れる方向に回動させた際に、レバーに形成した貫通穴と適合する貫通穴を有するレバー保持部と、互いに適合させたレバー保持部の貫通穴と、レバーに形成した貫通穴とに挿入される点検用ピンとを備えた構成にしてある。この構成に伴って本発明は、支点ピン等の点検・清掃作業時の作業者の負担を軽減させることができるとともに、点検・清掃に際して支点ピンを抜き取るための準備作業、及び点検・清掃が終了して支点ピンが差し込まれた後の整理作業を短時間で行うことができる。これにより本発明は、従来技術に比べて、支点ピン等の点検・清掃作業の能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る巻上機のブレーキ装置の点検補助装置の一実施形態に備えられる要部構成を示す正面図である。
【図2】点検・清掃時の本実施形態の動作を示す正面図である。
【図3】点検・清掃時の本実施形態の動作を示す図で、図2の動作に続けて行われる動作を示す正面図である。
【図4】図1のA方向から見たときの本実施形態に備えられるレバー保持部及びスペーサ部分を示す拡大平面図である。
【図5】第1従来技術に係る点検補助装置が適用される巻上機のブレーキ装置を示す正面図である。
【図6】第1従来技術を示す縦断面図である。
【図7】第2従来技術に係る点検補助装置が適用される巻上機のブレーキ装置を示す正面図である。
【図8】第2従来技術を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る巻上機のブレーキ装置の点検補助装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0027】
図1は本発明に係る巻上機のブレーキ装置の点検補助装置の一実施形態に備えられる要部構成を示す正面図、図2は点検・清掃時の本実施形態の動作を示す正面図、図3は点検・清掃時の本実施形態の動作を示す図で、図2の動作に続けて行われる動作を示す正面図、図4は図1のA方向から見たときの本実施形態に備えられるレバー保持部及びスペーサ部分を示す拡大平面図である。
【0028】
本実施形態に係る点検補助装置が適用される巻上機のブレーキ装置の基本構成は、例えば前述した図5,6に示したブレーキ装置と同等である。すなわち、本実施形態が適用されるブレーキ装置も、エレベータの巻上機土台1に連結されたブレーキドラム2と、このブレーキドラム2に摺接可能な一対のブレーキシュー3と、ブレーキドラム2の両側方に配置され、ブレーキシュー3をそれぞれ支持する一対のレバー4とを備えている。また、このブレーキ装置は、巻上機土台1に設けた一対のレバー支持部9にそれぞれ形成した通し穴9a、及びレバー4のそれぞれに形成した通し穴4bに挿入され、レバー4をそれぞれ回動可能に支持する一対の支点ピン5を備えている。
【0029】
なお、図1〜3は、説明を簡単にするために、ブレーキ装置の要部の片側のみを描いてある。また、図1〜4では図示を省略するが、本実施形態が適用されるブレーキ装置も図5に示したのと同様に、一対のレバー4間に設けられ、これらのレバー4をそれぞれブレーキドラム3から離隔する方向へ押し開く電磁石装置6と、この電磁石装置6及び一対のレバー4にそれぞれ設けられる穴に挿入されるロッドと、このロッドの両端部に設けられ、一対のレバー4に対して閉じる方向に弾性力を付勢するばねとを備えている。
【0030】
前述のブレーキ装置に適用される本実施形態は、図1〜3に示すように、レバー4に形成した通し穴4bから離れたレバー4の部分に形成した貫通穴30と、巻上機土台1の部分に設けられ、支点ピン5を中心に、レバー4をブレーキドラム2から離れる方向に回動させた際に、レバー4に形成した貫通穴30と適合する貫通穴33を有するレバー保持部32と、互いに適合させたレバー保持部32の貫通穴33と、レバー4に形成した貫通穴30とに挿入される点検用ピン31とを備えている。
【0031】
また本実施形態は、互いに適合させたレバー保持部32の貫通穴33と、レバー4に形成した貫通穴30とに点検用ピン31を挿入した状態で、支点ピン5が巻上機土台1のレバー支持部9の通し穴9a、及びレバー4に形成した通し穴4bから抜き取られた際に、点検用ピン31を中心に回動させたレバー4を所定の回動位置に係止させる係止部材を備えている。
【0032】
この係止部材は、巻上機土台1にビス35によって固定され、支点ピン5を中心にレバー4をブレーキドラム2から離れる方向に回動させた際に、図2に示すようにレバー4を載置させる平坦部34aと、この平坦部34aに連設され、図3,4に示すように、点検用ピン31を中心に回動したレバー4を所定の回動位置に係止させる傾斜部34bとを有するスペーサ34から成っている。
【0033】
なお点検用ピン31は、点検・清掃が実施されないときには、例えばレバー4の貫通穴30に挿入されるようになっている。また、レバー4の貫通穴30に挿入された点検用ピン31は、例えば図示しないスナップリングによってレバー4の貫通穴30から抜け出ないように保たれる。また、互いに適合させたレバー保持部32の貫通穴33と、レバー4に形成した貫通穴30とに点検用ピン31を挿入した際にも、点検用ピン31は、例えば図示しないスナップリングによって、貫通穴30,33のそれぞれから抜け出ないように保たれる。
【0034】
このように構成した本実施形態を用いて行われるレバー4を回動可能に支持する支点ピン5等の点検・清掃に際しては、図1に示す状態から図示しないスナップリングを取り外して点検用ピン31を抜き取り、図2に示すように、支点ピン5を中心にレバー4をブレーキドラム2から離れる方向に回動させ、スペーサ34の平坦部34aに載置させる。これによりレバー4に形成した貫通穴30と巻上機土台1のレバー支持部32に形成した貫通穴33とが適合する。この状態で、レバー4の貫通穴30とレバー保持部32の貫通穴33に点検用ピン31を差し込む。このとき点検用ピン31は、図示しないスナップリングによって抜け止めされる。これにより、レバー4を主に点検用ピン31を介して巻上機土台1のレバー保持部32によって支持させることができる。この状態において支点ピン5を抜き取る。さらに、図3に示すように、レバー4を点検用ピン31を中心にスペーサ34の傾斜部34bに係止されるまで回動させる。これにより、巻上機土台1のレバー支持部9の通し穴9aとレバー4の通し穴4bとを互いに離隔した状態とすることができる。したがって、支点ピン5、この支点ピン5が挿入されるレバー支持部9の通し穴9a、及び支点ピン5が挿入されるレバー4の通し穴4bのそれぞれの点検・清掃、及び注油を行うことができる。
【0035】
支点ピン5等の点検・清掃が終了した後には、図2に示すように、レバー4の通し穴4bと巻上機土台1のレバー支持部9の通し穴9aを適合させて、これらの通し穴4b,9aに支点ピン5を差し込む。この状態で、点検用ピン31を抜け止めしていた図示しないスナップリングを取り外して、点検用ピン31を貫通穴30,33から抜き取る。次に、レバー4を支点ピン5を中心にブレーキドラム2に近づく方向に所定位置まで回動させる。これにより、点検・清掃前の状態に復帰させることができる。なお、点検用ピン31は、例えばレバー4の貫通穴30に挿入され、図示しないスナップリングによって抜け止めされる。
【0036】
以上のように構成した本実施形態は、支点ピン5の抜き取り時に作業者がレバー4を保持することなく支点ピン5を抜き取ることができ、この点検・清掃作業の作業者の負担を軽減させることができる。また、支点ピン5を抜き取るための準備作業は、レバー保持部32の貫通穴33とレバー4の貫通穴30とが適合するようにレバー4をブレーキドラム2から離れる方向に回動させる動作と、互いに適合させたレバー保持部32の貫通穴33とレバー4の貫通穴30に支点ピン31を挿入する動作であり、支点ピン5を抜き取るための準備作業を短時間で行うことができる。また逆に、点検・清掃が終了して支点ピン5がレバー4の通し穴4bとレバー支持部9の通し穴9aに挿入され、点検用ピン31が抜き取られ、レバー4を所定位置まで回動させる動作が行われた後に、点検用ピン31をレバー4の貫通穴30に挿入して保管する整理作業を行なえばよい。したがって、この整理作業も短時間で行うことができる。
【0037】
このように本実施形態は、支点ピン5等の点検・清掃作業時の作業者の負担を軽減させることができるとともに、点検・清掃に際して支点ピン5を抜き取るための準備作業、及び点検・清掃が終了して支点ピン5が差し込まれた後の整理作業を短時間で行うことができる。これにより、支点ピン5等の点検・清掃作業の能率を向上させることができる。
【0038】
また本実施形態は、支点ピン5等の点検・清掃に際してレバー4をブレーキドラム2から離れる方向に回動させた際に、スペーサ34の平坦部34aによって、レバー4に形成した貫通穴30と、レバー保持部32の貫通穴33とを容易に適合させることができる。また、点検用ピン31を中心にレバー4をスペーサ34の傾斜部34bに係止されるまで回動させることにより、レバー支持部9の通し穴9aとレバー4の通し穴4bとの離隔距離を一定に保つようにレバー4をスペーサ34の傾斜部34bに支持させることができる。これによって、巻上機土台1のレバー支持部9の通し穴9aの点検・清掃、及びレバー4の通し穴4bの点検・清掃を容易に、高い精度で実施することができる。
【0039】
また本実施形態は、支点ピン5等の点検・清掃が実施されない状態では、点検用ピン31がレバー4の貫通穴30に挿入されることから、点検用ピン31の紛失を生じさせることなく、この点検用ピン31を点検・清掃を容易にさせるレバー4位置に保管させることができる。
【0040】
なお、前記実施形態にあっては、レバー4の貫通穴30に挿入した点検用ピン31を図示しないスナップリングで抜け止めし、また、互いに適合させたレバー保持部32の貫通穴33と、レバー4の貫通穴30に挿入した点検用ピン31をスナップリングで抜け止めした構成にしてあるが、本発明は、点検用ピン31の抜け止め手段がスナップリングから成ることには限られない。例えば、点検用ピン31の端部を、抜け止めを阻止することのできる折り曲げ可能となるように構成してもよい。
【0041】
また、前記実施形態にあっては、支点ピン5等の点検・清掃が行われないときに、レバー4の貫通穴30に点検用ピン31を挿入して保管するようにしたが、この点検用ピン31を巻上機土台1のレバー保持部32の貫通穴33に挿入して保管するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1巻上機土台
2ブレーキドラム
3ブレーキシュー
4レバー
4b通し穴
5支点ピン
9レバー支持部
9a通し穴
30貫通穴
31点検用ピン
32レバー保持部
33貫通穴
34スペーサ(係止部材)
34a平坦部
34b傾斜部
35ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの巻上機に連結されたブレーキドラムと、このブレーキドラムに摺接可能な一対のブレーキシューと、前記ブレーキドラムの両側方にそれぞれ配置されるとともに、前記ブレーキシューをそれぞれ支持する一対のレバーと、前記巻上機のレバー支持部に形成した通し穴、及び前記レバーに形成した通し穴に挿入され、前記レバーをそれぞれ回動可能に支持する一対の支点ピンとを備えたブレーキ装置にあって、
前記支点ピン、この支点ピンが挿入される前記レバー支持部の前記通し穴、及び前記支点ピンが挿入される前記レバーの前記通し穴の点検・清掃に際して用いられる巻上機のブレーキ装置の点検補助装置において、
前記レバーに形成した前記通し穴から離れた前記レバーの部分に形成した貫通穴と、
前記巻上機の前記レバー支持部から離れた前記巻上機の部分に設けられ、前記支点ピンを中心に、前記レバーを前記ブレーキドラムから離れる方向に回動させた際に、前記レバーに形成した前記貫通穴と適合する貫通穴を有するレバー保持部と、
互いに適合させた前記レバー保持部の前記貫通穴と、前記レバーに形成した前記貫通穴とに挿入される点検用ピンとを備えたことを特徴とする巻上機のブレーキ装置の点検補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の巻上機のブレーキ装置の点検補助装置において、
互いに適合させた前記レバー保持部の前記貫通穴と、前記レバーに形成した前記貫通穴とに前記点検用ピンを挿入した状態で、前記支点ピンが前記巻上機の前記レバー支持部の前記通し穴、及び前記レバーに形成した前記通し穴から抜き取られた際に、前記点検用ピンを中心に回動させた前記レバーを所定の回動位置に係止させる係止部材を備えたことを特徴とする巻上機のブレーキ装置の点検補助装置。
【請求項3】
請求項2に記載の巻上機のブレーキ装置の点検補助装置において、
前記係止部材は、前記巻上機に固定され、前記支点ピンを中心に前記レバーを前記ブレーキドラムから離れる方向に回動させた際に、前記レバーに形成した前記貫通穴と前記レバー保持部の前記貫通穴とが適合するように前記レバーを載置させる平坦部と、この平坦部に連設され、前記点検用ピンを中心にして回動した前記レバーを前記所定の回動位置に係止させる傾斜部とを有するスペーサから成ることを特徴とする巻上機のブレーキ装置の点検補助装置。
【請求項4】
請求項3に記載の巻上機のブレーキ装置の点検補助装置において、
前記点検・清掃が実施されないときに、前記点検用ピンを、前記レバーの前記貫通穴または前記レバー保持部の前記貫通穴に挿入させるようにしたことを特徴とする巻上機のブレーキ装置の点検補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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