説明

巻取装置

【課題】電池素子の品質向上を図ることのできる巻取装置を提供する。
【解決手段】負極シート6を搬送する電極シート搬送機構は、負極シート6を切断するカッタ機構81と、シート切断に際し負極シート6を把持しかつ切断後に当該負極シート6を把持したまま自身の移動により巻回機構65へ送り出すシート供給機構82と、負極シート6上の活物質塗布部51と活物質未塗布部52との境界部位Dを検出可能な検出センサ91とを備えている。そして、カッタ機構81が、シート供給機構82との間隔を一定の間隔Lに保持した状態で当該シート供給機構82と一体に移動することにより、境界部位Dを基準とした負極シート6上の所定位置M1をシート供給機構82による把持位置として位置決めし、かつ、負極シート6上の所定位置M2をカッタ機構81による切断位置として位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池等に内蔵される電池素子を得るための巻取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、リチウムイオン電池等の二次電池として用いられる電池素子は、正極活物質が塗布された正極シートと、負極活物質が塗布された負極シートとが、絶縁素材からなるセパレータシートを介して重ね合わされた状態で巻回されて製造される。
【0003】
当該電池素子を製造する巻取装置において、上記各シートはそれぞれ別個の搬送路に沿って搬送され、最終的には各搬送路に設けられた供給機構によって随時、巻回機構へと送り出される。そして、当該巻回機構によって電池素子1つ分の巻回がほぼ完了したところで、巻回機構の回転が一旦停止され、前記各供給機構の把持手段により各シートを把持した上で、各搬送路に設けられたカッタ機構により各シートが切断される。その後、各シートの巻き残りの部分が完全に巻き取られることで、電池素子の巻回が完了する。続いて、次回の巻回を開始するにあたり、各供給機構は、各シートを把持したまま移動し、切断された各シートの先端部を巻回機構へと送り出す。
【0004】
しかしながら、一般に正負両電極シート上の活物質の塗布間隔にはバラツキが生じる。このため、従来では、巻回機構を一旦停止させて正極シートを所定位置で切断した後、再度、巻回機構を所定量回転させて負極シートを位置合わせし切断するといったように、正極シートを所定位置で切断するための停止と、負極シートを所定位置で切断するための停止の計2回、巻回機構を停止する必要があり、生産性が低下するおそれがあった。
【0005】
これに対し、カッタ機構自体を移動可能とすることで、1回の停止中に正負両電極シートの切断を行うことも可能となる。例えば、各電極シート上における活物質塗布部と未塗布部の境界部位を検出するセンサ、及び、各電極シートの搬送量を検出するエンコーダを備え、上記センサやエンコーダの検出結果を基に、巻回機構を停止させて正極シートを所定位置で切断した後、停止した状態のまま、負極シート用のカッタ機構を所定位置まで移動させ、負極シートを切断するといった構成も知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−97056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特開平11−97056号公報に記載された、カッタ機構のみを移動させて電極シートを切断する構成では、電極シート上の活物質の塗布間隔のバラツキに起因して、供給機構の把持手段により電極シートが把持される位置と、カッタ機構により電極シートが切断される位置との間隔が毎回変わってきてしまう。その結果、次の巻回作業を開始するにあたり、供給機構が移動し電極シートを巻回機構へ送り出す際に、巻回機構の巻芯と電極シートの先端部との位置関係が毎回ずれてしまい、電池素子を安定した品質で製造することが困難となるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電池素子の品質向上を図ることのできる巻取装置を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.活物質が所定間隔で塗布された帯状の正負両電極シートを、絶縁素材からなる帯状のセパレータシートを介して重ね合わせた状態で巻回する巻回手段を備えた巻取装置であって、
前記正負両電極シートをそれぞれ搬送する2つの搬送機構のうちの少なくとも一方において、
前記電極シートを切断する切断手段と、
前記切断手段による切断に際し前記電極シートを把持しかつ切断後に当該電極シートを把持したまま自身の移動により前記巻回手段へ送り出すシート供給手段と、
前記電極シート上の活物質塗布部と活物質未塗布部との境界部位を検出可能な検出手段とを備えるとともに、
前記切断手段が、前記シート供給手段との間隔を一定に保持した状態で当該シート供給手段と一体に移動することにより、
前記境界部位を基準とした前記電極シート上の第1位置を前記シート供給手段による把持位置として位置決めし、かつ、前記境界部位を基準とした前記電極シート上の第2位置を前記切断手段による切断位置として位置決め可能としたことを特徴とする巻取装置。
【0011】
上記手段1によれば、切断手段が、シート供給手段との間隔を一定に保持した状態で当該シート供給手段と一体に移動する構成となっている。これにより、電極シート上の活物質の塗布間隔のバラツキに影響を受けることなく、活物質塗布部と活物質未塗布部との境界部位を基準として、シート供給手段により電極シートが把持される位置と、切断手段により電極シートが切断される位置との間隔を毎回一定にすることができる。結果として、次の巻回作業を開始するにあたり、シート供給手段が移動し電極シートを巻回手段へ送り出す際に、巻回手段の巻芯と電極シートの先端部との位置関係を毎回安定させることができ、ひいては電池素子の品質向上を図ることができる。
【0012】
シート供給手段が電極シートを把持したまま自身の移動により巻回手段へ送り出す構成においては、シート供給手段により把持された位置からシート先端までの長さが一定となることで、特段の複雑な制御を行うことなく、単にシート供給手段を所定位置まで移動させるだけで、シート先端位置を毎回同じ位置に送り出すことができる。従って、本手段によれば、シート切断及びシート供給に係る制御の複雑化を抑制することができる。
【0013】
また、仮に切断手段とシート供給手段を一体に設けた場合等においては、切断手段を移動させるためのサーボモータ等の駆動機構を別途設ける必要もない。結果として、生産コストの増加抑制を図ることができる。
【0014】
なお、正負両電極シートをそれぞれ搬送する2つの搬送機構のうちの少なくとも一方において、本手段の構成を採用することにより、巻回手段の1回の停止中に正負両電極シートとも適切な位置で切断を行うことができる。このため、巻回手段を一旦停止させて正極シートを所定位置で切断した後、再度、巻回手段を所定量回転させて負極シートを位置合わせし切断するといった手間もなく、生産性の向上を図ることができる。
【0015】
手段2.前記切断手段は、前記シート供給手段に対し相対変位可能かつ従動可能に構成されていることを特徴とする手段1に記載の巻取装置。
【0016】
なお、ここでいう「従動」とは、サーボモータ等の駆動機構から直接、動力伝達を受けることなく、シート供給手段からの作用を受けることにより、又は当該シート供給手段から作用を受けた部材を介して作用を受けることにより動作することを意味している。
【0017】
仮に切断手段及びシート供給手段を一体に設けた場合、シート切断前に両者が一定間隔を保持した状態で移動可能となる点においては好ましいが、シート切断後にシート供給手段が電極シートを把持したまま自身の移動により巻回手段へ送り出す際には、切断手段が邪魔となり、電極シートをスムーズに巻回手段へ受け渡すことができないおそれがある。
【0018】
この点、本手段のように、切断手段とシート供給手段とが相対変位可能、つまり別体で構成されていることにより、例えばシート切断前の位置決め時には両者が一定間隔を保持した状態で移動し、シート供給時には切断手段が邪魔にならないようにシート供給手段のみが移動するような構成とすることも可能となる。
【0019】
また、切断手段がシート供給手段に従動する構成とすることにより、切断手段を移動させるためのサーボモータ等の駆動機構を別途設ける必要もなく、駆動機構の単一化を図り、生産コストの増加抑制を図ることができる。
【0020】
手段3.前記電極シートの搬送路に沿って、前記巻回手段の上流側に前記切断手段が配設され、当該切断手段の上流側に前記シート供給手段が配設されるとともに、
前記切断手段及び前記シート供給手段がそれぞれ前記搬送路に沿って進退可能に構成され、
前記シート供給手段を移動させるための駆動手段と、
少なくとも前記シート供給手段が前記巻回手段から離間する方向へ移動する際に、前記切断手段及び前記シート供給手段を係合させるための係合手段と、
前記切断手段を前記巻回手段へ接近する方向に付勢する付勢手段とを備えることにより、
前記シート供給手段が前記巻回手段から離間する方向へ移動する際に、前記付勢手段の付勢力に抗して、前記切断手段を前記巻回手段から離間する方向へ従動させることを特徴とする手段1に記載の巻取装置。
【0021】
上記手段3によれば、例えばシート供給手段に同期させて切断手段を移動させるといった複雑な機構や制御を必要とせず、上記手段2の構成及び作用効果を比較的簡単な構成により実現することができる。
【0022】
手段4.前記検出手段を前記切断手段と一体に設けたことを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の巻取装置。
【0023】
上記手段4によれば、切断手段と検出手段と間隔が常に一定となるため、電極シート上の活物質の塗布間隔のバラツキに影響を受けることなく、活物質塗布部と活物質未塗布部との境界部位を基準としたより正確な切断位置の位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態における電池素子の構成を示すための断面模式図である。
【図2】巻回機構を示す正面模式図である。
【図3】巻取装置の概略構成を示す模式図である。
【図4】回転部等を示す斜視図である。
【図5】(a)は、電極シートの構成を示す平面模式図であり、(b)は、電極シートの構成を示す側面模式図である。
【図6】シート供給機構及びカッタ機構等の概略構成を示す模式図である。
【図7】シート切断時におけるシート供給機構及びカッタ機構等の状態を示す模式図である。
【図8】シート供給時におけるシート供給機構及びカッタ機構等の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、本実施形態の巻取装置によって得られるリチウムイオン電池素子の構成について説明する。
【0026】
図1に示すように、リチウムイオン電池素子(以下、単に「電池素子」という)1は、筒状の巻芯コア2に対して、2枚のセパレータシート3,4と、正極シート5及び負極シート6の2枚の電極シートによって構成される帯状体7が巻回されることで構成されている。尚、図1においては、説明の便宜上、セパレータシート3,4、正極シート5、及び、負極シート6の相互の間隔をあけて示している箇所がある。
【0027】
本実施形態において、巻芯コア2は、十分な剛性を有する材料(例えば、アルミニウム等の金属素材やポリプロピレン(PP)等の樹脂素材)により形成されている。また、当該巻芯コア2は、断面非円形状(本実施形態では、断面正方形状)の挿通孔8を有している。
【0028】
セパレータシート3,4は、巻芯コア2の長手方向に沿った長さと同一の幅を有するものであり、極性の異なる電極シート5,6同士が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止すべく絶縁体、特に本実施形態ではPPにより構成されている。
【0029】
電極シート5,6もまた、セパレータシート3,4と同様、巻芯コア2の長手方向に沿った長さとほぼ同一の幅を有するものである。図5(a),(b)に示すように、電極シート5,6は、薄板状の金属シート50よりなり、その表裏両面には一定の間隔で活物質51が塗布されている。具体的には、正極シート5には例えばアルミニウム箔シートが用いられ、その表裏両面に一定の間隔で正極活物質が塗布されている。負極シート6には例えば銅箔シートが用いられ、その表裏両面に一定の間隔で負極活物質が塗布されている。また、活物質未塗布部52にはリード(図示略)が溶接される。
【0030】
リチウムイオン電池を得るに際しては、電池素子1が金属製で筒状をなす電池容器(図示せず)内に配設されるとともに、正極側のリード及び負極側のリードがそれぞれまとめられる。そして、まとめられた正極側のリードを正極端子部品(図示せず)に接続するとともに、同じくまとめられた負極側のリードを負極端子部品(図示せず)に接続し、両端子部品を前記電気容器の両端開口に設けることで、リチウムイオン電池を得ることができる。
【0031】
次に、電池素子1を製造するための巻取装置について説明する。
【0032】
図3に示すように、巻取装置60は、正極シート5を搬送する電極シート搬送機構61、負極シート6を搬送する電極シート搬送機構62、及び、セパレータシート3,4を搬送するセパレータシート搬送機構63,64を備えている。各シート搬送機構61〜64によって搬送された各シートは、巻回手段としての巻回機構65において各シートが重なるように巻取られる。
【0033】
図2に示すように、巻回機構65は、回転可能に設けられたターレット12を備えている。該ターレット12は、2枚の円盤状のテーブル14,15が相対向するようにして構成されており、両テーブル14,15間に跨って、回転部20が、テーブル14,15の中心を対称中心として2つ設けられている。尚、両テーブル14,15(ターレット12)は時計回りに回転可能に構成されているとともに、両テーブル14,15が同期回転するように設定されている。これにより、各回転部20が着脱ポジションP1及び巻取ポジションP2間を移動することができるようになっている。尚、両テーブル14,15は、180°ずつ反転可能となっていてもよい。
【0034】
図4に示すように、回転部20は、軸線C方向に延び、軸線C方向一端側のテーブル14から他端側のテーブル15に向けて突出する回転軸としての巻芯21と、前記軸線C方向に延び、軸線C方向他端側のテーブル15から一端側のテーブル14に向けて突出する巻芯受け31とから構成されている。
【0035】
前記巻芯21は、全体として棒状をなしており、軸線C方向他端側に延びる基部22と、当該基部22から軸線C方向他端側に延びる装着部23と、前記基部22及び装着部23間に形成されたテーパ段差部24とから構成されている。また、基部22、装着部23、及び、テーパ段差部24の中心軸はそれぞれ前記軸線Cと一致している。
【0036】
前記基部22は、円柱状をなし、図示しない駆動手段によって、前記テーブル14に対し軸線C方向に沿って相対移動可能(出没可能)に構成されている。これにより、前記巻芯受け31に対して巻芯21が接離可能となっている。加えて、基部22は、図示しない回転駆動手段(例えば、モータ)によって、軸線Cを回転軸としてテーブル14に対して相対回転可能となっており、ひいては巻芯21全体が軸線Cを回転軸として相対回転可能となっている。すなわち、回転駆動手段は帯状体7を巻取る際の巻取動力として機能する。
【0037】
前記装着部23は、電池素子1の製造時において、前記巻芯コア2がその外周部分に装着されるものである。当該装着部23は、棒状をなすとともに、前記巻芯コア2の挿通孔8の断面形状に対応すべく断面非円形状(本実施形態では、断面正方形状)に形成されている。さらに、装着部23は、前記基部22よりも細化されており、また、装着部23の先端側面部には、軸線C方向へと延びる一対の先割れ部25が形成されている。加えて、当該先割れ部25の内周部分には、後述する受けピン33を嵌合可能な図示しない嵌合凹部が形成されている。
【0038】
一方、前記巻芯受け31は、円柱状をなす支持部32と、当該支持部32に一体形成され、軸線C方向一端側に向けて突出する受けピン33と、当該受けピン33の外周側に設けられ、先端筒状の受け部34とを備えている。尚、支持部32、受けピン33、及び、受け部34のそれぞれの中心軸は、前記軸線Cと一致している。
【0039】
前記支持部32は、前記テーブル15に対して軸線Cを回転軸として相対回転(本実施形態では、自由回転)可能、かつ、軸線C方向に相対移動不能に支持されている。
【0040】
前記受けピン33は、円柱状をなすとともに、その外周面の大部分が軸線Cと略平行となるように構成されている。当該受けピン33は、前記受け部34の内側に配設されており、また、その外径は、前記嵌合凹部の内径と同径或いは若干大径となるように構成されている。尚、受けピン33は、前記嵌合凹部への嵌合をより容易なものとすべく、その先端部分が先細り形状となっている。
【0041】
前記受け部34は、前記巻芯コア2の外径と略等しい外径を有しており、その先端面が前記巻芯コア2の一端面と当接可能な被当接面35となっている。また、受け部34と受けピン33との間の環状空間は、装着部23の先端部を収容可能な収容凹部36となっており、前記受けピン33が、前記嵌合凹部に嵌合された際には、装着部23の先端部が前記収容凹部36に収容されるようになっている。
【0042】
上記のように構成されている回転部20にあっては、後記する着脱装置13によって、装着部23に巻芯コア2が取付けられる。そして、基部22を軸線C方向に沿って他端側(テーブル15側)へと相対移動させることで、受けピン33が前記嵌合凹部に嵌合されるとともに、受け部34の収容凹部36に対して装着部23の先端部が挿入される。このとき、装着部23の先端部が受けピン33によって外周側へ広げられることとなり、ひいては巻芯コア2の他端部が前記装着部23によって内周側から保持されることとなる。併せて、巻芯コア2の一端部が、前記テーパ段差部24に当接・保持されることとなる。さらに、巻芯コア2の他端の当接面が、受け部34の被当接面35に当接する。このようにして巻芯コア2が、回転部20に装着される。
【0043】
ここで、図2に示す巻回機構65の説明に戻る。前記2つの回転部20が、前記ターレット12の回動により、着脱ポジションP1(図の左側位置)と、巻取ポジションP2(図の右側位置)との間を移動可能である点については上述したが、本実施形態では、着脱ポジションP1に対応して、後述する巻芯コア2の取付及び電池素子1の取外を行うための着脱装置13が設けられている。
【0044】
また、巻取ポジションP2は、前記巻芯コア2に対し帯状体7を巻回するポジションであって、当該巻取ポジションP2に位置する回転部20に対し、上記各シート搬送機構61〜64から各シートが供給される。
【0045】
本実施形態では、前記巻取ポジションP2に対応して、図示しないセパレータ固着手段が設けられている。セパレータ固着手段は、巻回の初期段階において、例えば、熱溶着により、セパレータシート3,4の先端部分を巻芯コア2の表面に対し取着可能に構成されている。勿論、単に接着テープ等を用いてセパレータシート3,4の先端部分を巻芯コア2の表面に対し貼付ける構成であっても差し支えない。
【0046】
各シート搬送機構61〜64においては、ロール状に巻回された原反から各シートを引き出して、回転部20の方へ供給することができるよう構成されているが、本実施形態では、特に負極シート6を搬送する電極シート搬送機構62に特徴を有するため、当該電極シート搬送機構62について詳しく説明する。
【0047】
電極シート搬送機構62の最上流側においては、負極シート6がロール状に巻回された原反70が回転可能に支持されている。原反70から巻回機構65(回転部20)にかけての負極シート6の搬送路の途中には、張力付与手段72が設けられている。当該張力付与手段72は、一対のローラ73,74と、両ローラ73,74間に設けられた段差ローラ75とを具備している。
【0048】
また、負極シート6の搬送路に沿って、巻回機構65の上流側には、切断手段としてのカッタ機構81が設けられ、さらにその上流側には、シート供給手段としてのシート供給機構82が設けられている。
【0049】
図6に示すように、シート供給機構82は、把持部として上下一対のチャック83a,83bを具備している。シート供給機構82は、図示しないチャック用アクチュエータ(例えばモータやシリンダ)を備え、これによりチャック83a,83bが開閉動作可能となっている。
【0050】
また、シート供給機構82は、負極シート6の搬送路に沿って進退可能に構成されている。より詳しくは、シート供給機構82は、駆動手段としてのサーボモータ84の駆動により、巻回機構65から相当距離離間した退避位置と、巻回機構65に最も接近した最接近位置(図8参照)との間をガイドレール85に沿って移動可能に構成されている。当該最接近位置は、チャック83a,83bにより把持された負極シート6の先端部を、回転部20の回転に基づき巻取開始可能な程度に十分に近い位置である。
【0051】
一方、カッタ機構81は、負極シート6を切断するカッタ90と、検出手段としての検出センサ91とを備えている。
【0052】
カッタ90は、負極シート6の上側に位置する上刃90aと、負極シート6の下側に位置する下刃90bとから構成されている。
【0053】
検出センサ91は、カッタ90よりも上流側に設けられており、負極シート6上における活物質塗布部51と活物質未塗布部52との境界部位Dを検出するものである。
【0054】
また、カッタ機構81は、シート供給機構82と同様、負極シート6の搬送路(ガイドレール92)に沿って進退可能に構成されている。但し、カッタ機構81自身はサーボモータ等の駆動源を有さず、シート供給機構82に従動する構成とっている。
【0055】
より詳しくは、カッタ機構81の下流側には、当該カッタ機構81の本体部の下流側への動きを規制するストッパ93が設けられるとともに、当該カッタ機構81をストッパ93へ付勢する付勢手段としてのバネ機構94が設けられている。
【0056】
また、カッタ機構81の上流側には、当該カッタ機構81の本体部から上流側方向へ延出しかつ先端が鉤状に屈曲したフック部96が設けられている。これに対応して、シート供給機構82には、フック部96が係合可能なフック受部97が設けられている。そして、シート供給機構82が退避位置方向(巻回機構65から離間する方向)へ移動する際、フック部96がフック受部97に引っ掛かることで、カッタ機構81がシート供給機構82に引っ張られるようにして、バネ機構94の付勢力に抗して、巻回機構65から離間する方向へ移動することとなる。フック部96及びフック受部97により本実施形態における係合手段が構成される。
【0057】
尚、図示は省略するが、電極シート搬送機構62以外のシート搬送機構61,63,64においても、勿論、シート供給機構やカッタ機構などは設けられている。但し、カッタ機構に関してはシート搬送方向に沿って移動しないものである。
【0058】
また、巻回機構65や、カッタ機構81、シート供給機構82など、巻取装置60内の各機構は、図示しない制御装置により動作制御される構成となっている。
【0059】
次に、電池素子1を製造する手順について、特に負極シート6の切断及び供給に着目しつつ説明する。
【0060】
まず、ターレット12を時計回りに半回転させることで、一方の回転部20を着脱ポジションP1へと移動させる。このとき、他方の回転部20は巻取ポジションP2に位置することとなる。例えば、それまで巻取ポジションP2に位置しており帯状体7の巻回がほぼ完了した回転部20が、着脱ポジションP1へと移動させられる。一方、それまで着脱ポジションP1に位置しており新たな巻芯コア2の装着された回転部20が巻取ポジションP2へと移動させられる。
【0061】
かかる巻取ポジションP2に位置する回転部20においては、巻芯コア2が装着されているのであるが、当初、当該巻芯コア2には何も巻き付けられていない。この状態において、先ず上述したセパレータ固着手段により、セパレータシート3,4の先端部分が巻芯コア2の表面に対し取着固定される。
【0062】
続いて、当該巻取ポジションP2においては、回転部20(巻芯21)の回転が行われる。そして、所定タイミングが到来したならば、各電極シート搬送機構61,62のシート供給機構82等が作動し、各電極シート5,6が巻芯コア2の方に向けて供給される。
【0063】
より詳しくは、各電極シート5,6がチャック83a,83b等によって把持された状態で、シート供給機構82等が回転部20の方へ移動することにより、各電極シート5,6が巻芯コア2の方に向けて送り出される(図8参照)。
【0064】
これにより、各電極シート5,6の先端がセパレータシート3,4で挟み込まれることとなり、当該電極シート5,6がそれぞれセパレータシート3,4を介して互いに絶縁状態で巻回され始めることとなる。
【0065】
そして、電極シート5,6の巻回が開始されたならば、チャック83a,83b等が開かれる。これにより、電極シート5,6は、張力付与手段42等にて所定の張力を付与されながら、セパレータシート3,4とともに巻回されることとなる。
【0066】
尚、チャック83a,83b等の開放とともに、シート供給機構82等は幾分上流側(例えば前記退避位置と前記最接近位置との略中央付近)まで移動し、巻回中においては、当該位置において待機する(図6参照)。
【0067】
そして、帯状体7の巻回がほぼ完了したならば、回転部20の回転が一旦停止される。当該停止されるタイミングは、正極シート5を搬送する電極シート搬送機構61に設けられた検出センサ(図示略)の検出結果、すなわち正極シート5上における活物質塗布部51と活物質未塗布部52との境界部位Dの検出結果に基づいて決定される。これにより、電極シート搬送機構61において、正極シート5の所定切断位置がカッタ機構の位置に位置決めされるタイミングで、回転部20の回転が停止されることとなる。
【0068】
回転部20の回転が一旦停止されると、電極シート搬送機構61においては、シート供給機構の把持部により正極シート5を把持した上で、当該正極シート5がカッタ機構により切断される。
【0069】
同時に、負極シート6を搬送する電極シート搬送機構62においては、回転部20の回転が一旦停止されると、シート供給機構82が回転部20から離間する方向へ移動を開始する。この際、フック部96がフック受部97に引っ掛かることで、カッタ機構81も併せてシート供給機構82に引っ張られるように、バネ機構94の付勢力に抗して、巻回機構65から離間する方向へ移動を開始する。これにより、カッタ機構81(カッタ90)及びシート供給機構82(チャック83a,83b)は、一定の間隔L(図7参照)を保持した状態で一体に移動することとなる。
【0070】
そして、負極シート6上における活物質塗布部51と活物質未塗布部52との境界部位Dの真上に検出センサ91が到達し、当該境界部位Dが当該検出センサ91により検出されると、シート供給機構82が停止し、併せてカッタ機構81も停止する(図7参照)。この際、カッタ機構81及びシート供給機構82の間隔は、バネ機構94の付勢力によって一定間隔Lに保持されている。
【0071】
これにより、境界部位Dから上流側へ所定長K1離れた負極シート6上の所定位置(第1位置)M1がチャック83a,83bにより把持される把持位置として位置決めされるとともに、境界部位Dから下流側へ所定長K2離れた負極シート6上の所定位置(第2位置)M2がカッタ90により切断される切断位置として位置決めされることとなる。
【0072】
続いて、図7に示すように、チャック83a,83bにより負極シート6が把持された上で、カッタ90(上刃90a及び下刃90b)により負極シート6が切断される。
【0073】
その後、回転部20を幾らか回転させた後、セパレータシート3,4についても切断する。そして、切断された残りの帯状体7(各シート3〜6)が完全に巻き取られ、外周側のセパレータシート3,4に関しテープ止めが施されることで巻回が完了する。
【0074】
その後、回転部20等を着脱ポジションP1へと移動させた上で、巻芯21を巻芯受け31から離間する方向へと相対移動させ、前記受けピン33を嵌合凹部から抜き外すことで、装着部23による巻芯コア2の保持力が解除されることとなる。その上で、帯状体7の巻回された巻芯コア2を、巻芯コア2ごと装着部23から取り外すことで電池素子1が得られる。
【0075】
このような手順を繰り返し行うことにより、電子素子1が順次製造されていくこととなる。なお、巻回終了後、次回の巻回作業を開始するにあたり、例えば電極シート搬送機構62においては、図8に示すように、負極シート6をチャック83a,83bで把持した状態のまま、シート供給機構82が前記最接近位置まで移動することで、負極シート6の先端部を回転部20(巻芯コア2)の近くまで送り出すこととなる。この際、シート供給機構82(チャック83a,83b)から負極シート6の先端部までの間隔が毎回一定の間隔Lとなる。そして、このシート供給機構82の動作に併せて、カッタ機構81もバネ機構94によって元の位置に戻る。勿論、電極シート搬送機構62以外のシート搬送機構61,63,64においても、カッタ機構の位置が不変なことから、シート供給機構の把持部からシート先端までの間隔は毎回一定となる。
【0076】
以上詳述したように、本実施形態によれば、巻回機構65の1回の停止中に正負両電極シート5,6とも適切な位置で切断を行うことができる。このため、巻回機構65を一旦停止させて正極シート5を所定位置で切断した後、再度、巻回機構65を所定量回転させて負極シート6を位置合わせし切断するといった手間もなく、生産性の向上を図ることができる。
【0077】
また、負極シート6を搬送する電極シート搬送機構62においては、カッタ機構81が、シート供給機構82との間隔を一定の間隔Lに保持した状態で当該シート供給機構82と一体に移動する構成となっている。これにより、負極シート6上の活物質51の塗布間隔のバラツキに影響を受けることなく、活物質塗布部51と活物質未塗布部52との境界部位Dを基準として、シート供給機構82により負極シート6が把持される位置と、カッタ機構81により負極シート6が切断される位置との間隔を毎回一定の間隔Lとすることができる。結果として、次の巻回作業を開始するにあたり、シート供給機構82が移動し負極シート6を回転部20へ送り出す際に、回転部20と負極シート6の先端部との位置関係を毎回安定させることができ、ひいては電池素子1の品質向上を図ることができる。
【0078】
さらに本実施形態のように、シート供給機構82が負極シート6を把持したまま自身の移動により回転部20へ送り出す構成においては、シート供給機構82により把持された位置からシート先端までの長さが一定となることで、特段の複雑な制御を行うことなく、単にシート供給機構82を所定位置(最接近位置)まで移動させるだけで、シート先端位置を毎回同じ位置に送り出すことができる。従って、本実施形態によれば、シート切断及びシート供給に係る制御の複雑化を抑制することができる。
【0079】
また、カッタ機構81がシート供給機構82に従動する構成となっているため、カッタ機構81を移動させるためのサーボモータ等の駆動機構を別途設ける必要もない。結果として、生産コストの増加抑制を図ることができる。
【0080】
さらにまた、本実施形態では、シート切断前の位置決め時にはカッタ機構81及びシート供給機構82が一定間隔Lを保持した状態で移動し、シート供給時にはカッタ機構81及びシート供給機構82の間隔が縮まる構成となっている。これにより、シート供給時において、カッタ機構81が邪魔とならず、負極シート6をスムーズに回転部20へ受け渡すことができる。
【0081】
尚、上述した実施形態の記載内容に限定されることなく、例えば次のように実施してもよい。
【0082】
(a)上記実施形態では、負極シート6を搬送する電極シート搬送機構62においてのみ、カッタ機構81が、シート供給機構82との間隔を一定の間隔Lに保持した状態で当該シート供給機構82と一体に移動する構成となっている。これに代えて又は加えて、正極シート5を搬送する電極シート搬送機構61において、同様の構成を採用してもよい。
【0083】
(b)上記実施形態では、カッタ機構81及びシート供給機構82が一定の間隔Lを保持した状態で一体に移動するよう、カッタ機構81がシート供給機構82に従動する構成となっているが、これに限らず、両者を一体に設けた構成としてもよいし、両者が同期して移動する機構を備えた構成としてしてもよい。
【0084】
また、カッタ機構81がシート供給機構82に従動する構成や、カッタ機構81(カッタ90)及びシート供給機構82(チャック83a,83b)の間隔を一定の間隔Lに保持する構成に関しても、上記実施形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
【0085】
(c)上記実施形態では、検出センサ91が、カッタ90とともにカッタ機構81に一体に設けられている。これに限らず、検出センサ91がカッタ機構81(カッタ90)と別体で設けられた構成としてもよい。例えば、検出センサ91をシート供給機構82に一体に設けた構成としてもよい。
【0086】
(d)上記実施形態における電極シート搬送機構62においては、回転部20の回転が一旦停止された後、シート供給機構82及びカッタ機構81が回転部20から離間する方向へ移動を開始し、一定の間隔Lを保持する構成となっている。これに限らず、回転部20の回転中(シート搬送中)に、シート供給機構82及びカッタ機構81が移動を開始する構成としてもよい。また、カッタ機構81及びシート供給機構82が一定の間隔Lを保持した状態で待機する構成としてもよい。かかる場合、例えば、活物質塗布部51と活物質未塗布部52との境界部位Dが検出センサ91により検出されてから、回転部20を所定量回転させることにより、検出センサ91の検出結果を基に負極シート6を位置決め停止させる構成としてもよい。
【0087】
(e)上記実施形態では、電池素子1が、巻芯コア2を具備する場合について具体化されているが、当該巻芯コア2を有しないタイプの電池素子を得る場合について具体化することとしてもよい。
【0088】
また、巻芯コア2の外周形状が例えば扁平な断面非円形状のものであってもよい。かかる構成においては、シート供給機構82が負極シート6を回転部20へ送り出す際の、巻芯コア2と負極シート6の先端部との位置ズレが電池素子1の品質に与える影響が大きいため、本発明の作用効果がより奏効することとなる。
【符号の説明】
【0089】
1…電池素子、3,4…セパレータシート、5…正極シート、6…負極シート、20…回転部、51…活物質塗布部(活物質)、52…活物質未塗布部、60…巻取装置、61,62…電極シート搬送機構、65…巻回機構、81…カッタ機構、82…シート供給機構、83a,83b…チャック、84…サーボモータ、90…カッタ、91…検出センサ、93…ストッパ、94…バネ機構、96…フック部、97…フック受部、D…境界部位、L…カッタ機構(カッタ)とシート供給機構(チャック)との間隔、M1…把持位置、M2…切断位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質が所定間隔で塗布された帯状の正負両電極シートを、絶縁素材からなる帯状のセパレータシートを介して重ね合わせた状態で巻回する巻回手段を備えた巻取装置であって、
前記正負両電極シートをそれぞれ搬送する2つの搬送機構のうちの少なくとも一方において、
前記電極シートを切断する切断手段と、
前記切断手段による切断に際し前記電極シートを把持しかつ切断後に当該電極シートを把持したまま自身の移動により前記巻回手段へ送り出すシート供給手段と、
前記電極シート上の活物質塗布部と活物質未塗布部との境界部位を検出可能な検出手段とを備えるとともに、
前記切断手段が、前記シート供給手段との間隔を一定に保持した状態で当該シート供給手段と一体に移動することにより、
前記境界部位を基準とした前記電極シート上の第1位置を前記シート供給手段による把持位置として位置決めし、かつ、前記境界部位を基準とした前記電極シート上の第2位置を前記切断手段による切断位置として位置決め可能としたことを特徴とする巻取装置。
【請求項2】
前記切断手段は、前記シート供給手段に対し相対変位可能かつ従動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の巻取装置。
【請求項3】
前記電極シートの搬送路に沿って、前記巻回手段の上流側に前記切断手段が配設され、当該切断手段の上流側に前記シート供給手段が配設されるとともに、
前記切断手段及び前記シート供給手段がそれぞれ前記搬送路に沿って進退可能に構成され、
前記シート供給手段を移動させるための駆動手段と、
少なくとも前記シート供給手段が前記巻回手段から離間する方向へ移動する際に、前記切断手段及び前記シート供給手段を係合させるための係合手段と、
前記切断手段を前記巻回手段へ接近する方向に付勢する付勢手段とを備えることにより、
前記シート供給手段が前記巻回手段から離間する方向へ移動する際に、前記付勢手段の付勢力に抗して、前記切断手段を前記巻回手段から離間する方向へ従動させることを特徴とする請求項1に記載の巻取装置。
【請求項4】
前記検出手段を前記切断手段と一体に設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−219205(P2011−219205A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88235(P2010−88235)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】