説明

布状基礎開口部の耐震補強フレーム

【課題】低層建築物の布状基礎開口部の耐震補強フレームであって、新築及び既存のいずれの建築物にも容易に適用でき、開口部においても連続した地中梁としての耐力を確保できるものを提供する。
【解決手段】布状基礎(11,12)の切り欠き部として形成された方形状の開口部(13,14)に取り付けられる耐震補強フレーム(1,2,3,4)であって、開口部の内側に取り付けられる方形枠部材(1a〜1d)を備えかつ方形枠部材が該開口部を囲む4面に対してそれぞれ当接する取付面(1a2〜1d2)を有する。開口部を囲む4面のうち左右面及び下面が布状基礎により形成される面であり上面が布状基礎の天端に載置される土台により形成される面であるか、または、開口部を囲む4面が布状基礎により形成される面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低層建築物において開口部を有する布状の基礎と構造的に一体となるように取り付けられて、開口部の耐震性を向上させる耐震補強フレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1A(a)は、布基礎工法10Aの一例を示す外観斜視図であり、基礎ベース11a、12aと、これらの基礎ベースからそれぞれ鉛直に立ち上がった立ち上がり部11b、12bとを備えた外周基礎11、内部基礎12から構成されている。なお、底面に設けた防湿土間21は、例えば、ポリエチレンフィルムの上に砂を敷設したものであり、べた基礎と外観は似ているが建築物の耐力に関係する要素ではない。
図1A(b)は、べた基礎工法10Bの一例を示す外観斜視図であり、基礎底面全体を基礎スラブ15とし、外周基礎11及び内部基礎12と一体化されている。べた基礎工法は、地耐力20kN/m以上30kN/m未満の地盤などで採用される。尚、地盤面より上方の構成である外周基礎11及び内部基礎12の部分については、上記の布基礎工法10Aとほぼ同様である。
(なお、図1A(a)の防湿土間21の下、及び図1A(b)の基礎スラブ15の下は、なにもない空間として示されているが、これは図示の便宜上であって、実際には地盤、砂利、捨コンクリート等で充填されている。)
【0003】
図1A(a)(b)に示した布基礎工法10A及びべた基礎工法10Bは、一般的に鉄筋コンクリート(RC)造であり、いずれにも共通する布状の基礎11、12は、連続した布状地中梁としての役割を備えている。そして、図1A(a)(b)に示すように、通常、外周基礎11には、適宜の箇所に換気口13が形成され、内部基礎12には人通口14が形成される。これらの換気口13又は人通口14などの開口部においては、連続した布状地中梁の梁せいが低減した断面欠損部となる。
【0004】
図1B(a)〜(d)に示す布状基礎の立ち上がり部11b又は12bの断面図のように、従来、これらの開口部13又は14においては、その周囲部分における鉄筋コンクリートの鉄筋18(破線で示す)に加えて補強筋19(太線で示す)により補強することで対応していた。しかしながら、このような補強筋19では耐力の著しい低下を免れない。
尚、図1B(a)の人通口14及び図1B(c)の換気口13は、その開口部を囲む4面のうち左右面及び下面が布状基礎により形成され、上面は布状基礎の天端に載置される土台(図示せず)により形成される例である。一方、図1B(b)の人通口14及び図1B(d)の換気口13は、その開口部を囲む4面が布状基礎により形成される例である。これらを現場で施工する場合は、開口部の型枠組、補強鉄筋組など、多大な手間やそれによるコスト増大が生じている。
【0005】
特許文献1では、布基礎の開口部の補強構造として、布基礎の上に載置される木製土台の一部を金属土台とし、その金属土台の部分を開口部の上方に位置させている。
また、特許文献2では、基礎ではないがコンクリート壁の開口部の隅部を補強するアングル状の補強金物を設置している。
【特許文献1】特開平8−199591号公報
【特許文献2】特開2002−339487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の低層建築物の布状基礎の開口部の耐震補強手段には、以下のような問題点がある。
布状基礎開口部の周囲部分の鉄筋コンクリートの鉄筋を補強しても、連続した布状地中梁の耐力と同等とならず、妥協しているのが現状である。
特許文献1のように木製土台の一部を金属土台にして開口部上方に位置させる方法では、既存の建築物の布状基礎開口部に容易に適用することはできない。また、開口部の上面は補強されるが、開口部の左右面及び下面については補強されない。
特許文献2のアングル状の補強金物も、その一部が周囲のコンクリートに埋設され一体化されるので、既存の建築物の開口部に容易に適用することはできない。また、隅部のひび割れ防止が目的であり、開口部全体の補強は考慮されていない。
【0007】
以上の現状により、本発明は、低層建築物の布状基礎開口部の耐震補強フレームであって、新築及び既存のいずれの建築物にも容易に適用でき、開口部においても連続した地中梁としての耐力を確保できるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を実現するべく、本発明は以下の構成を提供する。括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付したものである。
本発明による耐震補強フレームは、布状基礎(11,12)の切り欠き部として形成された方形状の開口部(13,14)に取り付けられる耐震補強フレーム(1,2,3,4)であって、前記開口部の内側に取り付けられる方形枠部材(1a〜1d)を備えかつ該方形枠部材が該開口部を囲む4面に対してそれぞれ当接する取付面(1a2〜1d2)を有する。
【0009】
上記の耐震補強フレームを取り付ける開口部(13,14)には、2通りの形態があり、1つは、開口部を囲む4面のうち左右面及び下面が前記布状基礎(11,12)により形成される面であり上面が該布状基礎の天端に載置される土台により形成される面である場合である。もう1つは、前記開口部を囲む4面が前記布状基礎(11,12)により形成される面である場合である。
【0010】
さらに上記において、前記方形枠部材における前記開口部(13,14)の上面に位置する部分が、前記土台(17)又は前記布状基礎(11,12)の一部をその両側面から挟み込むことが可能な断面形状を備えることを特徴とする。
あるいは、上記において、前記方形枠部材における前記開口部(13,14)の左面、右面又は下面に位置する部分が、前記布状基礎(11,12)の一部をその両側面から挟み込むことが可能な断面形状を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、布状基礎における方形状の開口部の内側に、方形枠部材を備えた耐震補強フレームを布状基礎と構造的に一体となるように取り付けることにより、従来設計時に柱や耐力壁直下に設けることを避けていた布状基礎開口部において、建築物の荷重に対する鉛直方向の耐力並びに地震力による水平方向の荷重に対する耐力を、布状基礎と一体となって向上させることができる。これにより、開口部の位置を自由に設けることができ、特に、内部立ち上がり部の入り隅部の空気停滞を防ぎ、床下の通風性が図れる。さらに、軟弱地盤における地盤改良や杭を打設した基礎に生じる曲げモーメントによる大きな応力がかかる開口部を補強することができる。この結果、開口部の存在する部分における基礎の耐力を、開口部のない部分と同等以上に確保できる。すなわち、開口部の有無に関わらず、連続した布状地中梁としての一定の強度及び剛性を維持できる。方形枠部材が、開口部を囲む4面に対してそれぞれ当接する取付面を有することで、耐震補強フレームと開口部との一体性が強化され、開口部を剛性をもった耐力で支持することができる。
【0012】
さらに、方形枠部材が、土台又は布状基礎を両側から挟み込む断面形状を備えることにより、耐震補強フレームを開口部に対して強固に取り付けることができる上、さらに補強効果を向上させることができる。例えば、構造用鋼材である溝形鋼、H型鋼又はI型鋼で方形枠部材を形成した場合、土台又は布状基礎を両側から挟み込むことが可能な断面形状を具備するので好適である。
【0013】
本発明による耐震補強フレームは、開口部の周囲の4面に取り付けられる方形枠部材であるので、開口部の中央部分はその開口として機能を維持できる。すなわち、換気口としての通気性や、人通口としての大きさを損なわない。さらに、床下換気口の機能を組み込んだ耐震補強フレームも可能である。
【0014】
本発明による耐震補強フレームは、既存の建築物であっても、布状基礎や土台に加工を施すことなく容易に適用できる。また、人通口が設けられていないときでも、構造的な不安無く設けることができ、基礎耐力を維持できる。新築の建築物の場合は、耐震補強フレームを開口部の型枠として利用することもでき、その場合、耐震補強フレームと布状基礎との一体性が特に良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施例を示した図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
本発明による耐震補強フレームは、低層建築物、特に低層木造建築物の布状基礎における開口部に好適である。布状基礎は、連続的な布状地中梁であって地表に露出した立ち上がり部は、水平方向に連続した鉛直壁状の形態をとる。本発明における「布状基礎」には、いわゆる布基礎工法における布基礎だけでなく、べた基礎工法における基礎スラブ上の連続した鉛直壁部分も含むものとする。また、本発明は、布状基礎の地下部分の深さである凍結深度とは関係なく適用可能である。
【0016】
図2は、図1Aに示した内部布状基礎12の開口部14に対して本発明の耐震補強フレーム1を適用した実施例であり、(a)は側面図、(b)はA断面図、(c)はB断面図である。
人通口である開口部14は、布状基礎12の天端から下方に向かう方形状の切り欠き部として形成されており、左右面及び下面の3つの面は、鉄筋コンクリート製の布状基礎12の面である。この実施例では、布状基礎12の天端には土台17が載置されるので、開口部14の上面は土台17の下面で形成される。耐震補強フレーム1は、1つの方形枠部材を形成する4つの辺部材1a、1b、1c、1dを備えている。辺部材1a〜1dの各々は、開口部14を囲む各面に対してそれぞれ当接する取付面を有している。各辺部材として、ここでは、溝形鋼を用いている。溝形鋼は、構造用鋼材の1つであって断面形状がコ字状であり、中央板と、その両端部から一方向に直角に延在する互いに平行な一対の側板とを具備する。
【0017】
辺部材1aは、溝形鋼における中央板の内側の面が取付面として土台17の下面と当接するとともに、溝形鋼の一対の側板が土台17を両側から挟み込んでいる。図2(b)に示すように、辺部材1aの溝形鋼の内側に土台17がちょうど嵌合している。
辺部材1b及び1cは、溝形鋼における中央板の内側の面が取付面として開口部14の左右面である布状基礎12の面にそれぞれ当接するとともに、溝形鋼の一対の側板が布状基礎12を両側から挟み込んでいる。また、図2(b)(c)に示すように、本実施例では、辺部材1b及び1cの幅w1が布状基礎12の幅w2より広い。本実施例は、既存の布状基礎12に適用した場合の一例であり、既存の布状基礎12に加工を施すことなく耐震補強フレーム1を設置することができる。
辺部材1dは、溝形鋼における中央板の外側が取付面として開口部14の下面である布状基礎12の面に当接するとともに、全長が辺部材1bと1cの間に亘っている。辺部材1dの高さの分だけ開口部14の縦寸法が小さくなるので、開口部14の機能を損なわないように辺部材1dの高さを設定することが好ましい。
【0018】
図示の例では、耐震補強フレーム1の方形枠部材を構成する4つの辺部材1a〜1dは、方形枠の四隅で剛接合されている。具体的な接合手段については、図示しないが、溶接やハイテンションボルト締、あるいは炭素繊維等、高引張耐力の化学繊維などによる接着剤を用いた接着接合とする。補助的な接合金具(L型等のアングル)を用いてもよい。耐震補強フレーム1の材料は、線状形態をもつ形鋼や構造用鋼材が好適である。鋼材は、強度のある建築部材として広く利用されており、安価で加工も容易である。あるいは、厚手の鋼板又は合金板を加工したものでもよい。別の実施例として、方形枠部材は、他の金属材料であってもよい。さらに別の実施例として、硬質人工木材、プレキャストコンクリート、炭素繊維等の化学繊維をプリプレグ化した素材から、方形枠部材を形成してもよい。
【0019】
なお、本発明における「4つの辺部材」とは、耐震補強フレーム1の方形枠部材の形状を意味しており、その作製工程を意味するものではない。つまり、必ずしも、先ず4本の辺部材を作製してそれらの両端部同士を接合して方形枠を形成する工程によらずともよい。例えば、4つのL字形部材を接合しても方形枠とすることができる。また、2つのコ字形部材を向き合わせて接合し、寸法のアジャスト機能を持たせて方形枠とすることができる。
【0020】
但し、既存の開口部14に図示したような耐震補強フレーム1を取り付ける場合は、方形枠部材を完成してから開口部に取り付けることはできない。その場合は、耐震補強フレーム1を構成する各部材を順次取り付けた後、互いに接合することで方形枠部材を完成する。例えば、接合されていない4本の辺部材1a〜1dを用いる場合、先ず、辺部材1aを土台17に嵌め込んで取り付け、次に、辺部材1b、1cを左右の布状基礎12に嵌め込んで取り付け、最後に辺部材1dを布状基礎12に取り付ける。
別の方法として、既存の開口部の正面より、完成した方形枠部材としての耐震補強フレームを挿入し、その耐震補強フレーム側面を取り付け面として取り付けることも可能とする。
新築の場合は、耐震補強フレーム1を布状基礎12の開口部14のコンクリート打設型枠として利用することができる。その場合は、予め方形枠を完成してから(あるいは、少なくとも左右と下の3辺を完成してから)型枠として設置する。
耐震補強フレーム1を布状基礎12及び土台17に取り付ける具体的手段については、後述する図9において説明する。
【0021】
図3は、図1Aに示した外周布状基礎11の開口部13に対して本発明の耐震補強フレーム2を適用した実施例であり、(a)は側面図、(b)はC断面図、(c)はD断面図である。
換気口である開口部13には、溝形鋼を用いた耐震補強フレーム2が取り付けられている。図3の実施例は、上述の図2の実施例とは開口部13の大きさが異なるのみであり、他の点では図2の実施例と同様である。
【0022】
図4は、図1Aに示した内部布状基礎12の開口部14に対して本発明の耐震補強フレーム1を適用した別の実施例であり、(a)は側面図、(b)はE断面図、(c)はF断面図である。
人通口である開口部14には、溝形鋼を用いた耐震補強フレーム1が取り付けられている。図4の実施例が、上述の図2の実施例と異なる点は、辺部材1b、1cの幅w1が布状基礎12の通常部分の幅w2と同じ点である。従って、開口部14の左右面の近傍においては、辺部材1b、1cの厚さの分だけ布状基礎12の幅(w2’で示す)を狭くする必要がある。既存の布状基礎12の幅を切削する加工は困難であるので、本実施例は、新築の場合に好適である。耐震補強フレーム1を布状基礎12の開口部14の型枠として利用すれば容易に施工できる。他の点では、図2の実施例と同様である。
【0023】
図5は、図1Aに示した外周布状基礎11の開口部13に対して本発明の耐震補強フレーム2を適用した別の実施例であり、(a)は側面図、(b)はG断面図、(c)はH断面図である。
換気口である開口部13には、溝形鋼を用いた耐震補強フレーム2が取り付けられている。図5の実施例は、上述の図4の実施例とは開口部13の大きさが異なるのみであり、他の点では、図4の実施例と同様である。
【0024】
図6は、図1Aに示した内部布状基礎12の開口部14に対して本発明の耐震補強フレーム3を適用した実施例であり、(a)は側面図、(b)はI断面図、(c)はJ断面図である。
人通口である開口部14には、H形鋼を用いた耐震補強フレーム3が取り付けられている。耐震補強フレーム3は、方形枠を形成する4つの辺部材3a、3b、3c、3dを備えている。これらの辺部材3a〜3dの各々は、開口部14を囲む各面に対してそれぞれ当接する取付面を有している。各辺部材として、ここでは、H形鋼を用いている。H形鋼は、構造用鋼材の1つであって断面形状がH字状であり、中央板と、その両端部から二方向に直角に延在する互いに平行な一対の側板とを具備する。
【0025】
辺部材3aは、H形鋼の中央板の上側が取付面として土台17の下面と当接するとともに、H形鋼の一対の側板の上半分が土台17を両側から挟み込んでいる。図6(b)に示すように、辺部材3aのH形鋼の内側に土台17がちょうど嵌合している。
辺部材3b及び3cは、H形鋼の一対の側板のうち一方の外側が取付面として開口部14の左右面である布状基礎12の面にそれぞれ当接している。
辺部材3dは、H形鋼の中央板の下側が取付面として開口部14の下面である布状基礎12の面に当接するとともに、H形鋼の一対の側板の下半分が布状基礎12を両側から挟み込んでいる。この挟み込み部分において、布状基礎12は、その通常部分の幅w2より狭い幅w2’となっている。H形鋼の幅w1は、布状基礎12の通常部分の幅w2と同じである。既存の布状基礎12の幅を切削する加工は困難であるので、本実施例は、新築の場合に好適である。耐震補強フレーム3を布状基礎12の開口部14の型枠として利用すれば容易に施工できる。
なお、本実施例では、辺部材3a〜3dの幅が開口部14の縦横寸法を狭めるので、開口部14の機能を損なわないように辺部材3a〜3dの幅を設定することが好ましい。他の点では、図2の実施例と同様である。
【0026】
図7は、図1Aに示した外周布状基礎11の開口部13に対して本発明の耐震補強フレーム4を適用した別の実施例であり、(a)は側面図、(b)はK断面図、(c)はL断面図である。
換気口である開口部13には、H形鋼を用いた耐震補強フレーム4が取り付けられている。図7の実施例は、上述の図6の実施例とは開口部13の大きさが異なるのみであり、他の点では、図6の実施例を同様である。
【0027】
図8(a)は、図4に示した耐震補強フレーム1の外観斜視図である。辺部材1a〜1dは、溝形鋼であり、中央板1a2とその両側の一対の側板1a1を具備する。溝形鋼1a〜1dのそれぞれの中央板1a2、1b2、1c2、1d2で形成される方形の外周面が、開口部の内周面に当接する取付面となる。
【0028】
図8(b)は、図6に示した耐震補強フレーム3の外観斜視図である。辺部材1a〜1dは、H形鋼であり、中央板3a2とその両側の一対の側板3a1を具備する。H形鋼3a、3dの中央板3a2、3d2と、H形鋼3b、3cの一方の側板3b1、3c1で形成される方形の外周面が、開口部の内周面に当接する取付面となる。
【0029】
図9は、本発明の耐震補強フレームを布状基礎12及び土台17に強固に取り付ける手段の一例を示す側面図である。図2及び図4に示した耐震補強フレーム1を例として説明するが、他の実施例でも同様である。
耐震補強フレーム1と布状基礎12との接合にアンカーボルトを用いる場合は、次の通りである。
新築の場合は、布状基礎12のコンクリートを打設する前にアンカーボルト31を設置してアンカーボルト31の基部を埋設し、頭部を露出させておく。
既存の布状基礎12に対しては、雌ネジインサート用の孔を布状基礎12に穿設し、その孔に雌ネジインサートを打ち込み、雌ネジインサートにアンカーボルト31の基部を螺着する。耐震補強フレーム1にアンカーボルトの頭部を挿通させ、ナットで締結する。または、ケミカルアンカーを用いてもよい。
【0030】
耐震補強フレーム1と土台17との接合にボルト32とナットを用いる場合は、耐震補強フレーム1と土台17の双方に、ボルト孔を穿設し、ボルト32を挿通させ、ナットで締結する。または、高耐力ビスを用いて側面から耐震補強フレーム1と土台17を締め付けてもよい。
【0031】
図示しないが、耐震補強フレーム1の左右枠についても、アンカーボルト等で布状基礎12に固定することは当然である。
【0032】
図10(a)〜(e)は、本発明の耐震補強フレームを構成する辺部材の断面形状のその他の実施例を示した図である。(a)は、例えばI形鋼であり、上述のH形鋼と同様に用いる。(b)は、例えば、CT形鋼であり、広い面を取付面として用いる。(c)及び(d)のように平坦面を備えた角形鋼管も利用できる。また、角形の平坦面を備えた硬質人工木材、プレキャストコンクリート、炭素繊維等の化学繊維をプリプレグ化した素材も利用できる。(e)のように左右対称形状ではないが、平坦面を備えたL形鋼も利用できる。
【0033】
図11は、本発明の耐震補強フレームの別の実施例を示す側面図である。上述の耐震補強フレームをさらに補強する構成として、方形枠部材の四隅に方杖6を設ける。あるいは、図示しないが、L型アングルを用いて側面三角形の鋼板を溶接したものや、鋼板をL型に曲げ加工して側面三角形となる補強金具を四隅に取り付ける。これにより、方形枠部材自体の断面積を低減することが可能となる。
【0034】
以上の図2〜図7及び図9に示した各実施例は、開口部13、14を囲む4面のうち左右面及び下面の3面が布状基礎11、12による面であり、上面が土台17による面である場合に適用したものである。本発明を適用する開口部の構成はこれに限定されず、図1B(d)(e)に示したように、開口部13、14を囲む4面全てが布状基礎11、12による面である場合も含まれる。すなわち、本発明における「布状基礎の切り欠き部として形成された開口部」には、3面を布状基礎により1面を土台により囲まれた方形状の開口部だけでなく、4面を布状基礎により囲まれた方形状の開口部も含む。
例えば、図2の耐震補強フレーム1を図1B(e)の開口部14に適用した場合、上面に位置する辺部材1aが、開口部14の上面を形成する布状基礎12の一部を両側面から挟み込むことになる。あるいは、辺部材1aの高さによっては、布状基礎12bの一部と土台17の一部の双方を両側面から挟み込むことになる。さらに、図示していないが、基礎の高さが高い場合の出入口や、明かり取り窓の開口部にも適用可能であることは当然である。
【0035】
図12(a)(b)は、それぞれ本発明の効果を模式的に示す基礎応力図であり、布状基礎11に開口部14を設けた場合について例示している。布状基礎11における方形状の開口部14の内側に、方形枠部材を備えた耐震補強フレーム1を布状基礎と構造的に一体となるように取り付けることにより、従来の構造設計時に柱や耐力壁直下に設けることを避けていた布状基礎開口部において、建築物の荷重Pに対する鉛直方向の耐力(曲げモーメントM、せん断力Q)を、連続した布状基礎と同等以上の耐力とさせることができる(図12(a)を参照)。これにより、所定の大きさの開口部を自由な位置に設けることができ、床下の通風性や人通口、配管スペースとして自由に設計できる。一方、軟弱地盤における地盤改良柱状杭やPC杭を打設した補強基礎に生じるたわみや曲げモーメントMによる大きな応力がかかる開口部を補強することができる(図12(b)を参照)。この結果、開口部の存在する部分における基礎の耐力を、開口部のない部分と同等以上に確保できる。すなわち、開口部の有無に関わらず、連続した布状の地中梁としての一定の剛性をもった耐力を維持できる。これにより、図12(a)(b)に示す連続した布状の地中梁の場合の応力図と同じ応力図が得られる。方形枠部材が、開口部を囲む4面に対してそれぞれ当接する取付面を有することで、耐震補強フレームと開口部との一体性が強化され、開口部を剛性をもった耐力で構造的に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】(a)は、布状基礎工法10Aの一例を示す外観斜視図であり、(b)は、べた基礎工法10Bの一例を示す外観斜視図である。
【図1B】(a)〜(e)は、補強筋により補強された従来の布状基礎の開口部13、14の例である。
【図2】図1Aに示した内部布状基礎12の開口部14に対して本発明の耐震補強フレーム1を適用した実施例であり、(a)は側面図、(b)はA断面図、(c)はB断面図である。
【図3】図1Aに示した外周布状基礎11の開口部13に対して本発明の耐震補強フレーム2を適用した実施例であり、(a)は側面図、(b)はC断面図、(c)はD断面図である。
【図4】図1Aに示した内部布状基礎12の開口部14に対して本発明の耐震補強フレーム1を適用した別の実施例であり、(a)は側面図、(b)はE断面図、(c)はF断面図である。
【図5】図1Aに示した外周布状基礎11の開口部13に対して本発明の耐震補強フレーム2を適用した別の実施例であり、(a)は側面図、(b)はG断面図、(c)はH断面図である。
【図6】図1Aに示した内部布状基礎12の開口部14に対して本発明の耐震補強フレーム3を適用した実施例であり、(a)は側面図、(b)はI断面図、(c)はJ断面図である。
【図7】図1Aに示した外周布状基礎11の開口部13に対して本発明の耐震補強フレーム4を適用した別の実施例であり、(a)は側面図、(b)はK断面図、(c)はL断面図である。
【図8】(a)は、図4に示した耐震補強フレーム1の外観斜視図であり、(b)は、図6に示した耐震補強フレーム3の外観斜視図である。
【図9】本発明の耐震補強フレームを布状基礎及び土台に取り付ける手段の一例を示す側面図である。
【図10】(a)〜(e)は、本発明の耐震補強フレームを構成する辺部材の断面形状のその他の実施例を示した図である。
【図11】本発明の耐震補強フレームの別の実施例を示す側面図である。
【図12】本発明の効果を模式的に示す基礎応力図である。
【符号の説明】
【0037】
1、2、3、4 耐震開口フレーム
1a〜1d、2a〜2d、3a〜3d、4a〜4d 方形枠部材の辺部材
6 方杖
10A 布基礎工法
10B べた基礎工法
11 外周基礎
11a ベース部
11b 立ち上がり部
12 内部基礎
12a ベース部(地中梁)
12b 立ち上がり部
13 換気口
14 人通口
15 基礎スラブ
16 砕石
17 土台
21 防湿土間
31 アンカーボルト
32 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布状基礎(11,12)の切り欠き部として形成された方形状の開口部(13,14)に取り付けられる耐震補強フレーム(1,2,3,4)であって、前記開口部の内側に取り付けられる方形枠部材(1a〜1d)を備えかつ該方形枠部材が該開口部を囲む4面に対してそれぞれ当接する取付面(1a2〜1d2)を有することを特徴とする布状基礎開口部の耐震補強フレーム。
【請求項2】
前記開口部(13,14)を囲む4面のうち左右面及び下面が前記布状基礎(11,12)により形成される面であり、上面が該布状基礎の天端に載置される土台により形成される面であることを特徴とする請求項1に記載の布状基礎開口部の耐震補強フレーム。
【請求項3】
前記開口部(13,14)を囲む4面が前記布状基礎(11,12)により形成される面であることを特徴とする請求項1に記載の布状基礎開口部の耐震補強フレーム。
【請求項4】
前記方形枠部材(1a〜1d)における前記開口部(13,14)の上面に位置する部分が、前記土台(17)又は前記布状基礎(11,12)の一部をその両側面から挟み込むことが可能な断面形状を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の布状基礎開口部の耐震補強フレーム。
【請求項5】
前記方形枠部材における前記開口部の左面、右面又は下面に位置する部分が、前記布状基礎(11,12)の一部をその両側面から挟み込むことが可能な断面形状を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の布状基礎開口部の耐震補強フレーム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−91778(P2009−91778A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262329(P2007−262329)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(593053977)ジェイ建築システム株式会社 (13)
【出願人】(507331829)
【Fターム(参考)】