説明

希釈水溶液からの高級アルコールの回収

本明細書発明は、発酵ブロスなどの希釈水溶液からC3〜C6アルコール回収方法に関する。このような方法は、発酵のための改善された体積生産性を提供し、アルコールの回収を可能とする。このような方法は、同時発酵によるアルコール生成物の有効濃度の増加、及び乾燥した発酵ブロス量あたり生成及び回収されるアルコール量を増加する回収プロセスに因り、使用された発酵ブロスの生成及び乾燥において低減されたエネルギーの使用を可能とする。従って、本発明により、低い資本及び低減された操作コストでC3〜C6アルコールの生成及び回収が可能となる。
【要約】 図1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、発酵ブロスなどの希釈水溶液からのC3〜C6アルコールの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
バイオ燃料は、20世紀初めまで遡る非常に長い歴史を有する。1900年代初期に、Rudolf Dieselは、フランス・パリの万国博覧会において、エンジンがラッカセイ油で動くことを示した。その後間もなく、Henry Fordは、彼のモデルTがトウモロコシから得られたエタノールで動くことを示した。1930年代及び1940年代に、供給増加及びより低いコストでの効率性から、石油由来の燃料がバイオ燃料に置き換わった。
【0003】
米国での原油生産の減少に加えて、アラブ原油禁輸措置及びイラン革命に起因する1970年代の市場変動により、原油価格は上昇し、バイオ燃料に再び興味が移った。今日、政策立案者、産業立案者、事情に通じた市民、及び金融界を含む多くの利益団体が石油由来の燃料をバイオマス由来のバイオ燃料に置き換えることに関心を持っている。バイオ燃料開発の主な動機付けは、経済性、すなわち、「ピーク・オイル(peak oil)」の恐れであり、この時点では、原油の消費速度が供給速度を上回り、よって燃料コストが著しく増加するその結果、代替燃料に対する要求が高まる。
【0004】
バイオ燃料は、現地農業供給源を用いて比較的小さな多数の設備で生産される傾向にあり、石油に関する地理的な問題と独立して、安定かつ安全な燃料供給として見られている。同時に、バイオ燃料は国民経済の農業部門を促進する。さらに、化石供給源の燃料は再生に数億年かかり、使用すると大気中の二酸化炭素レベルが増加し、気候の変化が懸念されるので、持続性が重要な社会的かつ倫理的な推進力であり、これは自動車からの二酸化炭素発生の抑制、二酸化炭素発生に対する税金、及びバイオ燃料使用に対する税金上の優遇措置などの政府規制及び政策をもたらすことになり始めている。
【0005】
バイオ燃料が受け入れられるかは、主に、石油由来の燃料と比較したバイオ燃料の経済的な競争に依る。石油由来の燃料とコスト競合し得ないバイオ燃料は、特定の用途やニッチな市場に限定されるであろう。今日、バイオ燃料の使用はエタノール及びバイオディーゼルに限られる。現在、エタノールは、米国ではトウモロコシから、ブラジルではサトウキビから、さらに世界中で他の穀物から発酵によって作られている。原油が1バレルあたり50米ドルを上回っている場合、エタノールは、助成費又は税金の利益を除いて、石油由来のガソリンと競争できる。バイオディーゼル(Biodiesel)は、石油をベースとするディーゼルと競合するために、1バレル60米ドル超の原油の損益分岐価格を有する(Nexant Chem Systems, 2006, Final Report, Liquid Biofuels: Substituting for Petroleum, White Plains, New York)。
【0006】
いくつかの要因が、炭水化物をベースとするバイオ燃料源のコアの運転コストに影響を与える。さらに、炭素を含有するプラント生成原料のコストに加えて、エタノール又はブタノールなどの他の可能なアルコールベースとするバイオ燃料の生産物経済コストにおける重要な要因は、水性ストリームからのバイオ燃料の回収及び精製である。水性ベースの発酵培地からアルコールを経済的に除去するための多くの技術的手法が開発されている。今日最も広く用いられている回収技術では、蒸留及びモレキュラーシーブ乾燥を用いてエタノールを生成する。たとえば、クロストリジウム属(Clostridia)に基づくアセトン−ブタノール−エタノール発酵によるブタノール生成も、生成物の回収及び精製には蒸留に頼っている。水溶液からの蒸留は、エネルギー集約的である。エタノールについては、エタノール/水共沸物を破壊するための追加の加工処理設備が必要である。この設備やモレキュラーシーブはまた著しいエネルギー量を用いる。
【0007】
濾過、液体/液体抽出、膜分離(例えば、タンジェンシャルフロー濾過、浸透気化法、及び透過抽出(perstraction))、ガスストリッピング、溶液の「塩析」、及び吸着を含む、発酵で生成されたアルコールを回収及び精製するための多数のユニット操作が研究されている。各手法は、回収される生成物の環境及び生成物の物理的及び化学的特性、及びそれが存在するマトリックスに依存する利点及び欠点を有する。
【0008】
バイオ燃料の生産コストを制御する変動因子は、操作コスト(operating costs)、資本コスト、又は両方に影響を与えるものと特徴づけることができる。典型的には、発酵の経済的効果を制御する重要な変動要因は、所望の生成物に対する炭水化物収率、生成物濃度、及び体積生産性を含む。3つの重要な変動要因子である収率、生成物濃度、及び体積生産性はすべて、資本コスト及び操作コストの両方に影響を及ぼす。
【0009】
発酵した炭水化物に対する生成物収率が増大するに従い、所与のユニットの生成物の生成コストは原材料コストに対して直線的に低下する。炭水化物に対する生成物収率も、設備のサイズ、資本的支出、用役(utilities)消費、及び酵素、ミネラル、栄養分(ビタミン)、及び水などの供給原料調製の材料に影響を与える。たとえば、グルコースからブタノールへの理論値の50%から90%への生成物収率の増大により、直接的操作コストについて44%の低下をもたらす。また、90%の増大した収率は、取り扱い且つ加工処理する原料の量を低下させる。精製及び回収による炭水化物調製からのすべての設備についてサイズが小さくなるので、収率の増大は生成設備に必要な資本投資を直接的に低下させる。収率が50%から90%に増大した場合、設備、導管、及び用役の所要量は、32%低下することができる。生成コストに対する生成物収率の直接的な影響は、バイオ燃料のコスト及び市場存続性に重要な影響を与える。生成物収率を増大するための手法は、遺伝子組み換え微生物(GEM)を用いることであり、これは、生物の代謝経路を操作し、不要な生成物を低減するか無くし、又は所望の代謝物の効率を増大させ、あるいはその両方であるように構築することができる。これにより、低コストの生成物及び不要な生成物の一方又は両方を取り除くことが可能となり、所望の生成物の生成を増大させる。
【0010】
たとえば、米国特許出願公開第20050089979号は、クロストリジウム・ベエイジェリンキー(Clostridium beijerinckii)微生物を利用した発酵プロセスを開示し、該微生物は、5.3g/Lアセトン、11.8g/Lブタノール、及び0.5g/Lエタノールを含む生成物混合物を生成する。適切に改変された遺伝子組み換え微生物では、アセトン及びエタノールの生成が無くなる一方、炭水化物のブタノールへの変換が増大する。エタノール及びアセトンからブタノールへ炭水化物供給原料の方向を変えることにより、ブタノール生成が11.8g/Lから18.9g/Lに増大し、炭水化物消費に対するブタノール生成が60%増大する。エタノール及びアセトンの副生成物を無くすことにより、回収及び精製の実施にはより小さな設備が必要とされるので、資本コストの低下が可能となる。
【0011】
遺伝子工学及び古典的な株の開発を含む生物化学ツールの適用も、最終生成物濃度(g/L)及び生物触媒の発酵体積生産性(g/L−時)に影響を与え得る。最終生成物濃度及び体積生産性は、設備のサイズ、原材料の使用、及び用役コストを含む生成物の経済性のある態様に影響を与える。耐性(tolerable)生成物の濃度は発酵において増大するので、水溶液の回収体積が減り、これにより、資本コストが低下し、生成設備内で加工処理するための材料の体積がより小さくなる。
【0012】
体積生産性は、同じ生成物出力を得るために必要とされる発酵槽の能力に直接に影響を与える。たとえば、慣用的なクロストリジウム・ベエイジェリンキー(Clostridium beijerinckii)によるアセトン−ブタノール−エタノール(ABE)発酵により、ある割合のアセトン、ブタノール、及びエタノールが生成される。遺伝子組み換え微生物により、n−ブタノール、イソブタノール、又は2−ブタノールなどの単一生成物の生成の設計が可能となる(Donaldsonら、米国特許出願第11/586,315号)。ブタノール耐性である宿主は、ブタノール耐性を同定及び促進するための技術を用いて同定することができる(Bramucciら、米国特許出願第11/743,220号)。次いで、これらの2つの技術を合わせ、商業上関係する濃度及び体積生産性でブタノールを生成することができる。
【0013】
生成物の体積生産性及び濃度を増大するためにGEMを利用することは、生成物の経済性に強く影響を与え得る。たとえば、2倍の体積生産性で企図されるブタノール発酵は、大きな産業用バイオ燃料発酵設備に対して発酵槽コストをほぼ50%下げる。発酵槽の資本コスト及びサイズの低減は、設備の目減り及び操作コストを低下させる。同様に、GEMがより高濃度のブタノールに対して耐性である生物となった場合、所定の生成体積に対して操作コスト及び資本コストが低下する。たとえば、野生型株が20g/Lブタノールに耐性であり、対応する遺伝子改良された微生物又は遺伝的に促進された微生物が40グラム/Lのブタノールに耐性である場合、下流の回収及び精製装置で扱う発酵ブロス体積中の水の充填量は半分低下する。この例では、発酵ブロス中の生成物の濃度を倍にすることにより、回収ユニット操作で回収及び加工処理するための水の量がほぼ半分になる。
【0014】
多数の小さなコスト要因も、バイオ燃料生成用の操作コスト及び資本コストに影響を与える。限定するものではないが、化学添加剤、pH調整剤、界面活性剤、及び汚染を含む、発酵に影響を与え得る例示の要因がある要因であるが、多くの追加の要因が発酵生成コストに影響を与え得る。
【発明の概要】
【0015】
(発明の概要)
本発明は、発酵ブロスなどの希釈水溶液からC3〜C6アルコールを回収する方法、並びに関連するシステム及び方法を記載する。
【0016】
一実施態様において、本発明は、微生物、ガス、及びC3〜C6アルコールを含む発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、発酵培地からガスの少なくとも一部を除去する工程;発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を、少なくとも、該一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加する工程、又は発酵培地の一部中の水の活性を、少なくとも、該一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に低減する工程;発酵培地の該一部からC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相を形成する工程;及び水リッチ相からC3〜C6アルコールリッチ相を分離する工程を含む方法を提供する。
【0017】
該方法は、発酵培地中で微生物を培養し、C3〜C6アルコール及びガスを生成する工程;及び水リッチ相の少なくとも一部を発酵培地に誘導する工程をさらに含むことができる。
【0018】
該方法は、多糖類及び少なくとも1つの他の化合物を含む供給原料を加水分解し、発酵可能な加水分解生成物を生成する工程;発酵培地中で発酵可能な加水分解生成物の少なくとも一部を発酵し、C3〜C6アルコール及びガスを生成する工程であって、発酵培地は、少なくとも1つの発酵されていない化合物をさらに含む工程;及び発酵培地、又は水リッチ相、又は両方から少なくとも1つの発酵されていない化合物を分離する工程をさらに含むことができる。
【0019】
他の実施態様において、本発明は、微生物、ガス及びC3〜C6アルコールを含む発酵培地中でC3〜C6アルコール由来の生成物を生成する方法であって、ガスの少なくとも一部を発酵培地から除去する工程;発酵培地から水及びC3〜C6アルコールを含む気相を蒸留する工程;気相中でC3〜C6アルコールを反応させて、生成物を形成する工程を含む方法を提供する。
【0020】
請求項1に記載の方法は、発酵培地中で微生物を培養し、C3〜C6アルコール及びガスを生成する工程;水リッチ液相の少なくともの一部を発酵培地に誘導する工程をさらに含み、C3〜C6アルコールの活性を増加する工程又は水の活性を低減する工程は、発酵培地の一部を蒸留して、水及びC3〜C6アルコールを含む気相及び液相を生成する工程をさらに含む。
【0021】
他の実施態様において、本発明は、第1の量のC3〜C6アルコール及びガスを含む希釈水溶液からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、希釈水溶液からガスの少なくとも一部を除去する工程;希釈水溶液の一部をC3〜C6アルコール及び水を含む気相に蒸留する工程であって、気相は、約1重量%〜約45重量%の希釈水溶液の一部由来の第1の量のC3〜C6アルコールを含む工程;及び気相を濃縮する工程を含む、方法を提供する
【0022】
他の実施態様において、本発明は、C3〜C6アルコールを生成するために予備処理ユニット、複数発酵ユニット、及びビアスティルを含む改装エタノール生成プラントを操作する方法であって、予備処理ユニットで供給原料を予備処理し、発酵可能な糖を形成する工程;第1の発酵ユニットで発酵可能な糖を含む発酵培地中で微生物を培養し、C3〜C6アルコールを生成する工程;発酵培地からガスの少なくとも一部を除去する工程;C3〜C6アルコールを含む発酵培地の一部を処理して、C3〜C6アルコールの一部を除去する工程;処理した発酵培地の一部を第1の発酵ユニットに戻す工程;第1の発酵ユニットからビアスティルに発酵培地を移す工程を含む方法を提供する。
【0023】
ある実施態様において、ガスの1つは二酸化炭素であり、様々な実施態様において、希釈水溶液又は発酵ブロスからガスの少なくとも一部を除去する工程中、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の二酸化炭素を除去する。
【0024】
該方法は、除去工程において、加熱、大気圧以下への減圧、吸着、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される工程をさらに含むことができる
【0025】
該方法は、除去工程において、約1psia〜約10psiaの圧力に減圧し、又は約2psia〜約5psiaの圧力に減圧する工程をさらに含むことができる
【0026】
該方法は、除去された二酸化炭素をpH調整のために発酵ユニットに誘導する工程、それを通気する工程(venting)、又はそれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0027】
該方法は、ガスを処理してC3〜C6アルコールを除去する工程及びガスを通気する工程をさらに含むことができる。
【0028】
該方法は、発酵培地又は希釈水溶液から少なくとも1つの不純物を除去する工程をさらに含むことができる。不純物は、エタノール、酢酸、プロパノール、フェニルエチルアルコール、又はイソペンタノールを含み得る。
【0029】
他の実施態様において、本発明は、水溶液中のC3〜C6アルコール濃度を増加する方法であって、C3〜C6アルコールを含む水溶液の第1ストリームを容器に導入する工程;C3〜C6アルコールを含む水溶液の第1ストリームに減圧を供し、C3〜C6アルコールを含む蒸気(vapor)を形成する工程;C3〜C6アルコールを含む蒸気をC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させて、C3〜C6アルコールの濃縮された蒸気を含む濃縮物を形成する工程であって、濃縮物中のC3〜C6アルコールの濃度は、水溶液の第1ストリーム中のC3〜C6アルコールの濃度より大きい工程を含む方法を提供する。
【0030】
他の実施態様において、本発明は、微生物及びC3〜C6アルコールを含む発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を、少なくとも、一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加して、C3〜C6アルコールを含む蒸気を形成する工程、又は発酵培地の一部中の水の活性を、少なくとも、一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に低減し、C3〜C6アルコールを含む蒸気を形成する工程;C3〜C6アルコールを含む蒸気をC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させることにより、C3〜C6アルコール蒸気を濃縮する工程;濃縮された蒸気からC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相を形成する工程;及び水リッチ相からC3〜C6アルコールリッチ相を分離する工程を含む方法を提供する。
【0031】
該方法は、発酵培地中で微生物を培養し、C3〜C6アルコールを生成する工程;水リッチ相の少なくとも一部を発酵培地に誘導する工程をさらに含むことができる。
【0032】
該方法は、多糖類及び少なくとも1つの他の化合物を含む供給原料を加水分解し、発酵可能な加水分解生成物を生成する工程;発酵培地中で発酵可能な加水分解生成物の少なくともの一部を発酵し、C3〜C6アルコールを生成する工程であって、発酵培地は、少なくとも1つの発酵されていない化合物をさらに含む工程;発酵培地、又は水リッチ相、又は両方から少なくとも1つの発酵されていない化合物を分離する工程をさらに含むことができる。C3〜C6アルコールを生成する方法は、発酵培地中で微生物を培養し、C3〜C6アルコールを生成する工程;発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を増加する工程;発酵培地の一部を蒸留し、水及びC3〜C6アルコールを含む気相(vapor phase)及び液相を形成する工程;気相をC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させることにより気相を濃縮する工程;液相を発酵培地に誘導する工程を含む。
【0033】
他の実施態様において、本発明は、第1の量のC3〜C6アルコールを含む希釈水溶液からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、希釈水溶液の一部を蒸留し、C3〜C6アルコール及び水を含む気相を形成する工程であって、気相は、約1重量%〜約45重量%の希釈水溶液の一部由来の第1の量のC3〜C6アルコールを含む工程;及びC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させることにより、気相を濃縮する工程を含む、方法を提供する。
【0034】
該方法は、C3〜C6アルコールを含む溶液をC3〜C6アルコールを含む蒸気に噴霧する工程をさらに含む。
【0035】
該方法のある実施態様において、C3〜C6アルコールを含む溶液は、C3〜C6アルコールの濃縮物を含む。
【0036】
該方法のある実施態様において、濃縮物は、C3〜C6アルコール蒸気と接触させる前に冷却する。
【0037】
該方法の他の実施態様において、蒸気又は気相を形成する工程及び蒸気又は気相を濃縮する工程は、単一容器で行う。
【0038】
方法の他の実施態様において、容器は、第1及び第2の流体含有部分を画定するウェアー(weir)を含み、第1の流体含有部分は、微生物及びC3〜C6アルコールを含む水溶液又は発酵培地を受容するように適合され、第2の流体含有部分は、濃縮された蒸気を受容するように適合される。ある実施態様において、第1の流体含有部分は、微生物及びC3〜C6アルコールを含む水溶液又は発酵培地を第1の流体含有部分に誘導するための導管、及び微生物及びC3〜C6アルコールを含む水溶液又は発酵培地を第1の流体含有部分の外に誘導するための導管を含み、第1の流体含有部分の外に誘導される水溶液又は発酵培地中のC3〜C6アルコールの含有量は、第1の流体含有部分に誘導される水溶液又は発酵培地中のものより少ない。
【0039】
さらに他の実施態様において、第2の流体含有部分は、濃縮された蒸気を第2の流体含有部分の外に誘導するための導管を含む。
【0040】
他の実施態様において、本発明は、水溶液中のC3〜C6アルコールの濃度を増加するためのフラッシュタンク/直接接触濃縮器システムであって、容器;C3〜C6アルコールを含む水溶液のストリームを容器に導入するための手段;C3〜C6アルコールを含む水溶液のストリームに減圧を供し、C3〜C6アルコールを含む蒸気を形成するための手段;及びC3〜C6アルコールを含む蒸気をC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させて、C3〜C6アルコールの濃縮された蒸気を含む濃縮物を形成する手段を含み、濃縮物中のC3〜C6アルコールの濃度が水溶液中の第1ストリーム中のC3〜C6アルコールの濃度より大きい、フラッシュタンク/直接接触濃縮器システムを提供する。
【0041】
ある実施態様において、容器はウェアーによって分離される区画又は部分を含む2つの液体を含み、ウェアーは区画又は部分を容器底部で分ける。
【0042】
ある実施態様において、C3〜C6アルコールを含む水溶液のストリームに減圧を供するための手段は、真空を生じさせるための手段を含む。
【0043】
ある実施態様において、C3〜C6アルコールを含む蒸気をC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させて濃縮物を形成するための手段は、スプレーノズルを含む。
【0044】
他の実施態様において、本発明は、微生物及びC3〜C6アルコールを含む発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、ガスを発酵培地中に導入し、C3〜C6アルコールの一部をガスに移す工程;ガスを発酵培地から回収ユニットに誘導する工程;及びガスからC3〜C6アルコールを回収する工程を含む方法を提供する。
【0045】
ある実施態様において、該方法は、発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を、少なくとも、該一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加する工程、又は発酵培地の一部中の水の活性を、少なくとも、該一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に低減する工程;発酵培地の一部からC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相を形成する工程;水リッチ相からC3〜C6アルコールリッチ相を分離する工程をさらに含む。
【0046】
ある実施態様において、該方法は、発酵培地中で微生物を培養し、C3〜C6アルコールを生成する工程;及び水リッチ相を発酵培地に誘導する工程をさらに含む。
【0047】
他の実施態様において、該方法は、多糖類及び少なくとも1つの他の化合物を含む供給原料を加水分解し、発酵可能な加水分解生成物を生成する工程;発酵培地中で発酵可能な加水分解生成物の少なくともの一部を発酵し、C3〜C6アルコールを生成する工程であって、発酵培地は、少なくとも1つの発酵されていない化合物をさらに含む工程;及び少なくとも1つの発酵されていない化合物を発酵培地、水リッチ相、又は両方から分離する工程をさらに含む。
【0048】
ある実施態様において、該方法は、水及びC3〜C6アルコールを含むを気相を蒸留する工程;及び気相中のC3〜C6アルコールを反応させて、生成物を形成する工程をさらに含む。
【0049】
他の実施態様において、該方法は、発酵培地中で微生物を培養し、C3〜C6アルコールを生成する工程;発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を増加する工程;発酵培地の該一部を蒸留し、水及びC3〜C6アルコールを含む気相及び液相を生成する工程;及び液相を発酵培地に誘導する工程をさらに含む。
【0050】
さらに他の実施態様において、該方法は、希釈水溶液の一部をC3〜C6アルコール及び水を含む気相に蒸留する工程であって、気相が約1重量%〜約45重量%の希釈水溶液の一部由来の第1の量のC3〜C6アルコールを含む工程;及び気相を濃縮する工程をさらに含む。
【0051】
C3〜C6アルコールを生成するために予備処理ユニット、複数発酵ユニット、及びビアスティル(beer still)を含む改装エタノール生成プラントを操作する方法であって、予備処理ユニットで、供給原料を予備処理し、発酵可能な糖を形成する工程;発酵ユニットで、発酵可能な糖を含む発酵培地中で微生物を培養して、C3〜C6アルコールを生成する工程;発酵培地中にガスを導入し、C3〜C6アルコールの一部がガスに移る工程;ガスを発酵培地から回収ユニットに誘導する工程;ガスからC3〜C6アルコールを回収し;C3〜C6アルコールを含む発酵培地の一部を処理して、C3〜C6アルコールの一部を除去する工程;処理した発酵培地の一部を発酵ユニットに戻す工程;及び発酵ユニットからビアスティルに発酵培地を移す工程を含む方法を提供する。
【0052】
ある実施態様において、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%のC3〜C6アルコールをガスから回収することができる。
【0053】
一実施態様において、本発明は、C3〜C6アルコールを生成する方法であって、発酵培地中で微生物を培養し、微生物を成長させる工程;発酵培地中で微生物を培養し、C3〜C6アルコールを生成する工程;培養工程中に発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する工程;C3〜C6アルコールを生成する工程中に、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約20モル未満の酸素の酸素移動速度(OTR)で発酵培地中に導入する工程を含む方法を提供する。
【0054】
ある実施態様において、導入工程は、生成工程中に、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約10モル未満の酸素のOTRで発酵培地中に導入する工程を含み、他の実施態様において、導入工程は、酸素を含むガスをC3〜C6アルコールの生成に必要なレベルより大きいOTR、たとえば、1時間あたり発酵培地1リットルあたり約0.5〜約5モルの酸素で、発酵培地中に導入する工程をさらに含む。
【0055】
ある実施態様において、発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する工程は、発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を、少なくとも、該一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加する工程、又は発酵培地の一部中の水の活性を、少なくとも、該一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に低減する工程;発酵培地の一部からC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相を形成する工程;及びC3〜C6アルコールリッチ相を水リッチ相から分離する工程を含む。
【0056】
ある実施態様において、該方法は、水リッチ相を発酵培地に誘導する工程をさらに含む。
【0057】
ある実施態様において、方法は、発酵培地から水及びC3〜C6アルコールを含む気相を蒸留する工程;及び気相中のC3〜C6アルコールを反応させて、生成物を形成する工程をさらに含む。
【0058】
他の実施態様において、本発明は、C3〜C6アルコールを生成する方法であって、発酵培地中で微生物を培養し、C3〜C6アルコールを生成する工程;生成工程中に、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約20モル未満の酸素の酸素移動速度(OTR)で発酵培地中に導入する工程;発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を増加する工程;発酵培地の一部を蒸留し、水及びC3〜C6アルコールを含む気相及び液相を生成する工程;及び液相を発酵培地に誘導する工程を含む方法を提供する。
【0059】
他の実施態様において、本発明は、C3〜C6アルコールを生成するために予備処理ユニット、複数発酵ユニット、及びビアスティルを含む改装エタノール生成プラントを操作する方法であって、予備処理ユニットで、供給原料を予備処理して、発酵可能な糖を形成する工程;第1の発酵ユニットで、発酵可能な糖を含む発酵培地で微生物を培養し、微生物を成長させる工程;第1の発酵ユニットで、発酵可能な糖を含む発酵培地で微生物を培養し、C3〜C6アルコールを生成する工程;生成工程中に、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約20モル未満の酸素の酸素移動速度(OTR)で発酵培地中に導入する工程;C3〜C6アルコールを含む発酵培地の一部を処理して、C3〜C6アルコールの一部を除去する工程;処理した発酵培地の一部を発酵ユニットに戻す工程;及び発酵培地を発酵ユニットからビアスティルに移す工程を含む方法を提供する。
【0060】
方法のある実施態様において、C3〜C6アルコールを生成する工程は嫌気性である。
【0061】
他の実施態様において、本発明は、大気圧未満の圧力で操作される複数ユニット操作を含むC3〜C6アルコールの生成及び回収する方法を操作する方法であって、第1のユニット操作で、第1の排出装置に蒸気(steam)を導入し、大気圧未満の圧力を生じさせる工程;第2のユニット操作で、第1の排出装置から第2の排出装置に蒸気を誘導し、大気圧未満の圧力を生じさせる工程を含む方法を提供する。
【0062】
ある実施態様において、複数ユニット操作は、水再利用、第1の効用蒸発器(effect evaporator)、第2の効用蒸発器、ビアスティル(beer still)、サイドストリッパー(side stripper)、及び精留塔(rectifier)からなる群から選択されるユニット操作を含む。
【0063】
ある実施態様において、第1及び第2のユニット操作は同じであり、他の実施態様において、第1及び第2のユニット操作は異なる。
【0064】
他の実施態様において、本発明は、C3〜C6アルコールを生成する微生物を高細胞密度に培養する方法であって、発酵培地中で微生物を成長させる工程、及び成長工程中に発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する工程を含み、微生物は、1リットルあたり約5g〜1リットルあたり約150gの乾燥重量の範囲の細胞密度に達する方法を提供する。
【0065】
他の実施態様において、本発明は、C3〜C6アルコールを生成する方法であって、発酵培地中でC3〜C6アルコールを生成する微生物を培養し、C3〜C6アルコールを生成する工程、及び発酵培地から及びC3〜C6アルコールを回収する工程であって、C3〜C6アルコールの生成が1時間あたり1リットルあたり少なくとも約1gの速度である工程を含む、方法を提供する。
【0066】
ある実施態様において、C3〜C6アルコールの生成が1時間あたり1リットルあたり少なくとも約2gの速度である。
【0067】
ある実施態様において、C3〜C6アルコールはブタノールであり、他の実施態様において、C3〜C6アルコールはイソブタノールである。
【0068】
本発明は、さななる実施態様において、第1の温度(Tl)で希釈水溶液からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、希釈水溶液から水及びC3〜C6アルコールを含む気相を蒸留する工程;第2の温度(T2)で水性冷却液とともに気相を濃縮する工程;及び気相の温度が第3の温度(T3)となるように、蒸留工程の圧力、Tl、及びC3〜C6アルコールの力価を制御する工程であって、T3及びT2の間の差が少なくとも約1℃である工程を含む、方法を提供する。
【0069】
ある実施態様において、T3及びT2の間の差は少なくとも約5℃であり、他の実施態様において、T3及びT2の間の差は少なくとも約10℃である。
【0070】
ある実施態様において、T2は約30℃未満である。
【0071】
他の実施態様において、第2の温度(T2)での水性冷却液は、蒸発冷却によって生成される。
【0072】
他の実施態様において、濃縮された気相の一部は、水性冷却液として用いられる。
【0073】
ある実施態様において、該方法は、濃縮された気相からC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相形成する工程をさらに含む。
【0074】
ある実施態様において、該方法は、C3〜C6アルコールリッチ相及び水リッチ相を分離する工程をさらに含む。
【0075】
他の実施態様において、気相は、約2重量%〜約40重量%の希釈水溶液由来のC3〜C6アルコールを含む。
【0076】
ある実施態様において、蒸留工程は断熱性であり、他の実施態様において、蒸留工程は等温性である。
【0077】
ある実施態様において、希釈水溶液は、微生物を含む発酵培地を含み、該方法は、発酵培地中で微生物を培養し、C3〜C6アルコールを生成する工程、及び水リッチ相を発酵培地に誘導する工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】イソブタノールの生成及び回収のための本発明の実施態様を表す。
【図2】予備処理したトウモロコシの同時糖化及び発酵プロセスにおいて発酵ブロスからブタノールを生成及び回収するための本発明の実施態様を表す。
【図3】ガススカルパーを用いて発酵ブロスからC3〜C6アルコールを生成及び回収するための本発明の実施態様を表す。
【図4】フラッシュタンク/直接接触濃縮器ユニットの実施態様を表す。
【図5】フラッシュタンク/直接接触濃縮器ユニットを用いて発酵ブロスからC3〜C6アルコールを生成及び回収するための本発明の実施態様を表す。
【図6】ガスストリッパーを用いて発酵ブロスからC3〜C6アルコールを生成及び回収するための本発明の実施態様を表す。
【図7】エアレーション(aeration)を用いて発酵ブロスからC3〜C6アルコールを生成及び回収するための本発明の実施態様を表す。
【図8】エフラッシュタンク/直接接触濃縮器ユニット及びガススカルパー(gas scalper)を用いて発酵ブロスからC3〜C6アルコールを生成及び回収するための本発明の実施態様を表す。
【図9】ブフラッシュタンク/直接接触濃縮器ユニット及びガスストリッパーを用いて発酵ブロスからC3〜C6アルコールを生成及び回収するための本発明の実施態様を表す。
【図10】発酵槽中のイソブタノールブロスの力価(黒塗りマーカー)とフラッシュタンク後のブロス中の残留イソブタノールの力価(空白マーカー)の比較を提供する
【図11】10,000リットル生成発酵槽中のイソブタノールの有効力価及び体積生産性(g/L及びガロンで表される)を示す。イソイソブタノールは、90%理論収率で消費されたグルコース量から計算した。
【図12】2つのカラム系を用いた蒸発によるイソブタノール精製のプロセスの流れを表す。
【図13】フラッシュタンク/直接接触濃縮器ユニット、ガススカルパー、及び3つのポンプループを用いて発酵ブロスからC3〜C6アルコールを生成及び回収するための本発明の実施態様を表す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
(発明の詳細な説明)
本発明は、発酵ブロスなどの希釈水溶液からC3〜C6アルコールの回収方法、関連するシステム、及び方法を記載する。関連する方法は、たとえば、希釈水溶液中でC3〜C6アルコール由来の生成物を生成する方法を含む。本明細書で用いるC3〜C6アルコールとの用語は、3個、4個、5個、又は6個の炭素原子を含むアルコールをいい、それらの異性体すべて及び任意の前述のものの混合物を含む。従って、C3〜C6アルコールは、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、及びヘキサノールから選択することができる。より具体的には、C3アルコールは、1−プロパノール又は2−プロパノールであってもよく;C4アルコールは、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール(2−メチル−2−プロパノール)、又はイソブタノール(2−メチル−1−プロパノール)であってもよく;C5アルコールは、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、又は2,2−ジメチル−l−プロパノールであってもよく;C6アルコールは、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−l−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−l−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、3、3−ジメチル−l−ブタノール、2,2−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、又は2エチル1−ブタノールであってもよい。好ましい実施態様において、C3〜C6アルコールは、イソブタノール(2−メチル−1−プロパノール)である。ある実施態様において、希釈水溶液中のC3〜C6アルコールと水との比は、約10/90(w/w)未満、約9/91(w/w)未満、約8/92(w/w)未満、約7/93(w/w)未満、約6/94(w/w)未満、約5/95(w/w)未満、約4/96(w/w)未満、約3/94(w/w)未満、約2.5/97.5(w/w)未満、約2/98(w/w)未満、約1.5/98.5(w/w)未満、約1/99(w/w)、又は約0.5/99.5(w/w)未満である。本明細書で用いる「希釈」水溶液は、溶液中でのC3〜C6アルコールの溶解限度を下回る濃度でC3〜C6アルコールを含む溶液を意味することができる。濃度は、重量又は体積パーセント、モル濃度、重量モル濃度、又はアルコール/水の重量分率((w/w)、体積分率(v/v)など、様々な異なる単位で表すことができる。しかしながら、別に指定しない限り、本明細書では、濃度は重量パーセントとして一般に表わす。少なくとも1つの追加の化合物(例えば、溶質、溶媒、吸着剤など)を含むストリームの場合、本明細書で用いるアルコール重量濃度は、そのストリーム中の100倍のアルコール重量をそのストリーム中のアルコール及び水の合計重量で除することによって計算される。
【0080】
ある実施態様において、本発明の方法は、C3〜C6アルコールを回収する前又はC3〜C6アルコール由来の生成物を生成する前に、発酵ブロス又は希釈水溶液からのガススカルピング(gas scalping)(又はガス除去)の工程を含む。ガススカルピングを用いて、CO及び他のガスを除去する。発酵ブロス又は希釈水溶液に存在するガスは、空気に存在する又は発酵中に生成される任意のガスを含み得る。そのようなガスの例は、限定するものではないが、二酸化炭素、酸素、及び窒素ガスを含む。ガス除去は、任意の既知のプロセスを用いることによって行うことができる。たとえば、ガスは、加熱する、減圧して部分真空を引く、好適な吸着剤を添加してガスを吸着する、又はこれらのプロセスの組み合わせによって除去することができる。好ましい実施態様において、ガススカルピングは、C3〜C6アルコールを含むストリーム中で行い、以下で詳述する、ストリームをフラッシュタンクに導入する工程、蒸留操作、又はアルコールの揮発を伴う任意のその後の処理前に行う。
【0081】
そのような後処理の前に行うガススカルピングは、多くの利点を与える。フラッシュタンク、蒸留操作、又は他の同様の処理の使用によってアルコールをストリームから回収するときに、ストリームが二酸化炭素などのガスも含む場合、ストリーム中の任意のガスも同様に揮発し、蒸気の一部となるであろう。アルコールとともにガスが揮発することは、アルコールを含む蒸気の体積を増加するという深刻な欠点を有する。より大きい体積を取り扱う設備及びプロセス必要性及び関連するエネルギーコストは、そのような操作のコストを著しく増大させる。対照的に、アルコールを揮発する前にガスを選択的に除去することにより、アルコールを含む蒸気の体積はより少なく、より効率的に扱うすることができる。たとえば、以下で議論するように、一連の蒸気排出装置(steam eductor)を使用することによって高(deep)真空をフラッシュタンク上に引く実施態様において、排出装置を介して排出されるフラッシュタンク中の濃縮可能ではない種の体積は、ガススカルピング前に大幅に低下する。ガススカルピングは、以下の実施態様などの本発明で企図される様々な実施態様に用いることができる。
【0082】
たとえば、一実施態様において、本発明は、微生物、ガス、及びC3〜C6アルコールを含む発酵ブロスなどのC3〜C6アルコールの希釈水溶液からC3〜C6アルコールを回収する方法を含む。該この方法は、ガスの少なくとも一部を水溶液から除去する工程、及び水溶液の一部中のC3〜C6アルコールの活性を、少なくとも、一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加する工程、或いは同様に、発酵培地の一部中の水の活性を少なくとも、一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に低減する工程を含む。該方法は、水溶液の一部からC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相を形成する工程、、及び水リッチ相からC3〜C6アルコールリッチ相を分離する工程をさらに含む。この実施態様は、発酵培地中で微生物を培養して、C3〜C6アルコール及びガスを生成する工程、水リッチ相の少なくとも一部を発酵培地に誘導する工程、及び任意選択により、発酵培地の一部を蒸留し、水及びC3〜C6アルコールを含む気相及び液相を生成する工程を含むことができる。水リッチ相の少なくとも一部を発酵培地に誘導する工程とは、水リッチ相自体を発酵培地に誘導するか、或いは、よりしばしば、水リッチ相を処理し、たとえば、そこからより多くのアルコールを回収し、次いで、水リッチ相のある残留した一部を発酵培地に誘導することを意味し得ると理解しなければならない。たとえば、発酵培地よりも水リッチ相がより高濃度のアルコールを有する場合、それを発酵培地に導入することが有益ではないと思われる。典型的にはこのような場合、水リッチ分画をビアスティルなどでさらに加工処理し、水リッチ相の一部を発酵培地に誘導する前に、より多くのアルコールを回収する。あるいは、この実施態様は、多糖類及び少なくとも1つの他の化合物を含む供給原料を加水分解し、発酵可能な加水分解生成物を生成する工程、発酵培地中で発酵可能な加水分解生成物の少なくとも一部を発酵し、C3〜C6アルコール及びガスを生成する工程であって、該発酵培地は、少なくとも1つの発酵されていない化合物をさらに含む工程、及び発酵培地、又は水リッチ相、又は両方から発酵されていない化合物を分離する工程を含むことができる。
【0083】
他の実施態様において、本発明は、微生物、ガス、及びC3〜C6アルコールを含む発酵培地中でC3〜C6アルコール由来の生成物を生成する方法を提供する。該方法は、発酵培地からガスの少なくとも一部を除去する工程;発酵培地から水及びC3〜C6アルコールを含む気相を蒸留し;気相中のC3〜C6アルコールを反応させて、生成物を形成する工程を含む。
【0084】
さらに他の実施態様において、本発明は、第1の量のC3〜C6アルコール及びガスを含む希釈水溶液からC3〜C6アルコールを回収する方法を提供する。該方法は、希釈水溶液からガスの少なくとも一部を除去する工程;及び希釈水溶液の一部をC3〜C6アルコール及び水を含む気相に蒸留する工程であって、該気相は、約1重量%〜約45重量%の希釈水溶液の一部由来の第1の量のC3〜C6アルコールを含む工程;及び気相を濃縮する工程を含む。様々な代替実施態様において、気相は、約2重量%〜約40重量%、約3重量%〜約35重量%のC3〜C6アルコール、及び約4重量%〜約30重量%C3〜C6のアルコール、約5重量%〜約25重量%の希釈水溶液の該部分に存在するC3〜C6アルコールを含むことができる。国際公開第2009/086391 A2号(その全体について参照により本明細書に援用する)などで議論されるように、気相に蒸留される溶中のアルコールの量を制御又は制限することによって、多くの重要な利益が得られる。
【0085】
ガススカルピングを用いるさらなる実施態様は、C3〜C6アルコールを生成するために予備処理ユニット、複数発酵ユニット、及びビアスティルを含む改装エタノール生成プラントを操作する方法である。該方法は、予備処理ユニットで、供給原料を予備処理し、発酵可能な糖を形成する工程、第1の発酵ユニットで、発酵可能な糖及びガスを含む発酵培地中で微生物を培養し、C3〜C6アルコールを生成する工程を含む。該方法は、発酵培地からガスの少なくとも一部を除去する工程、C3〜C6アルコールを含む発酵培地の一部を処理して、C3〜C6アルコールの一部を除去する工程、処理した発酵培地の一部を第1の発酵ユニットに戻する工程、及び発酵培地を第1の発酵ユニットからビアスティルに移す工程をさらに含む。
【0086】
ガススカルピングを用いる本発明の実施態様において、上記の通り、他のガスが存在し得る一方、二酸化炭素がまず念頭に置くものであるが、それは、二酸化炭素が典型的には発酵ブロスに溶解したガスのうちの最も多い成分であるからである。したがって、様々な実施態様において、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の二酸化炭素を希釈水溶液又は発酵ブロスからガスの少なくとも一部を除去する工程中で除去する。
【0087】
上記のとおり、ガス除去(又はスカルピング)は、水性ストリームを加熱してガスを揮発させる工程、ストリーム上で大気圧未満の圧力に減圧してガスを揮発させる工程、水性ストリームからガスを吸着する工程、及びそれらの組み合わせなどの任意の好適な方法によって行うことができる。除去工程が水性ストリームを加熱してガスを揮発させる工程を含む実施態様において、好適な揮発温度は、ストリーム上の圧力、除去される特定のガス、及びアルコールが揮発せずに溶液中に残留する温度に依存する。より具体的には、好適な温度は、約20℃〜約95℃、約25℃〜約55℃、又は約30℃〜約50℃であることができる。除去工程が減圧してガスを揮発させることを含む実施態様において、約1psia〜約10psia、約1psia〜及び約8psia、約3psia〜約10psia、又は約2psia〜約5psiaに減圧することができる。
【0088】
除去したら、スカルピングしたガス(二酸化炭素又は他のガスを含む)を全プロセスに通気するか或いは導入することができる。たとえば、ガスが二酸化炭素である或いは二酸化炭素を含む例では、二酸化炭素をpH制御のために発酵ユニットに誘導することができる。あるいは、二酸化炭を圧縮して、ドライアイスを作製することができる。さらに、C3〜C6アルコールの大部分は水性ストリーム中に残留することが企図されるが、除去されたガスは該ガスと一緒に揮発されるある量のC3〜C6アルコールを含んでもよい。そのような例において、除去されたガスは、該ガスからC3〜C6アルコールを除去するように処理することができる。たとえば、水洗浄機の使用、加圧及び濃縮、又は吸着(例えば炭素により)によって、C3〜C6アルコールを回収することができる。
【0089】
発酵ブロス又は希釈水溶液は、C3〜C6アルコール及び1つ又は複数のガスを含むことに加えて、他の不純物も含み得る。従って、ある実施態様において、該方法は、発酵培地又は希釈水溶液から少なくとも1つの不純物を除去する工程をさらに含む。「不純物」との用語は、精製される水及びアルコール以外の任意の化合物を意味する。不純物との用語は、発酵プロセスの任意の副生成物又は副産物、すなわち、アルコール以外のアルコールに関連する生成物を任意の量又は所望でない量で含む。ある実施態様において、不純物は、エタノール、酢酸、プロパノール、フェニルエチルアルコール、イソペンタノール、又はこれらの不純物の組み合わせから選択され得る。不純物の除去は、任意の水性ストリームを加熱して不純物を揮発させること、ストリーム上で大気圧未満の圧力に減圧して不純物を揮発させること、又はそれらの組み合わせなどの好適な方法によって誘導することができる。上記除去工程が水性ストリームを加熱して不純物を揮発させることを含む実施態様において、好適な揮発温度は、ストリーム上の圧力、除去される特定の不純物、及びアルコールが揮発せずに溶液中に残留する温度に依存する。より具体的には、好適な温度は、約20℃〜約95℃、約25℃〜約55℃、又は約30℃〜約50℃であることができる。上記除去工程が減圧してガスを揮発させることを含む実施態様において、約1psia〜約10psia、約1psia〜約8psia、約3psia〜約10psia、又は約2psia〜約5psiaに減圧することができる。本明細書において精製又は不純物の除去とは、水以外の他の化合物に対する生成物の比を増加することを意味する。
【0090】
不純物の除去は、アルコール活性を増加し、水の活性を低減し、又は蒸留してアルコール回収する工程の前に行うことが有利である。不純物の除去は、ガス除去と同じ操作中に行ってもよいし、又はそのような操作後に行ってもよい。高温、減圧、又は組み合わせを用いる例では、典型的には、二酸化炭素及び窒素などのガスを最初に除去する。不純物及びアルコール生成物の相対揮発性に依存して、次に、すなわち、ガスが抜け出た後であるがC3〜C6アルコールの任意の大幅な除去を行う前に不純物を除去する。相対揮発性は、活性係数、分子濃度、及び蒸気圧飽和の関数である。この工程では、C3〜C6アルコールの幾らかは不純物とともに損なわれる可能性がある。しかし、このストリームからC3〜C6アルコールを回収することができる。
【0091】
アルコール生成物の回収の後処理を行う前に不純物を除去することは、多くの利点を有する。アルコールをフラッシュタンク、蒸留操作、又は他の同様の処理の使用によってストリームから回収する際、ストリームがアルコールとともに蒸発した酢酸などの揮発不純物も含む場合には、ストリーム中の任意のこのような不純物も揮発し、蒸気の一部となる。アルコールとともに不純物を揮発することは、アルコールを含む蒸気の体積を増加する深刻な欠点を有する。より大きい容積及び関連するエネルギーコストに対処する設備及びプロセス要件は、このような操作コストを著しく増加する。対照的に、アルコール揮発前に不純物を選択的に除去することにより、アルコールを含む蒸気の体積はより小さくなり、より効率的に対処することができる。
【0092】
図3を参照すると、スカルピングの使用を例示した本発明の実施態様が示されている。発酵は、発酵槽60で行う。発酵槽60中の発酵ブロスは、C3〜C6アルコール生成物及び発酵培地の他の成分を含む。発酵過程中に、微生物を含み得る発酵ブロスのストリームを62を介して発酵槽60からスカルプタンク70に誘導する。スカルパーは、約1〜約10psiaの圧力で操作することができる。これらの条件下、発酵ブロスから除去されるのは主に溶解ガスである一方、C3〜C6アルコールはブロス中に残留する。フラッシュ前に溶解ガスを除去するので、該溶解ガスはフラッシュ蒸気輸送の一部を形成せず、したがって、C3〜C6アルコール回収システムにより加工処理されない。スカルプタンクからのガスの除去は、真空ポンプ72によって68を介してベントストリーム80に一部の真空を吸い込むことによって行う。増殖用タンク(propagation tank)74は、初期培養物を64を介して発酵槽60に誘導する。スカルプタンクがガスを発酵ブロスから除去した後、ブロスを66を介して蒸留用のフラッシュタンク78にさらに誘導する。発酵熱は、フラッシュシステムでの蒸発に必要な熱を一部に供給することができる。フラッシュタンク78への脱気した発酵ブロスの導入の際に発酵ブロスの一部が蒸発するように、フラッシュタンク78は大気圧未満の圧力で維持される。蒸発した発酵ブロスの一部は、水蒸気とともに、発酵ブロス中のアルコールの一部分のみを含む。フラッシュタンク78での蒸留後、蒸留されない発酵ブロスの残留部分を94及びポンプ96を介して発酵槽60に戻す。発酵槽に戻ったこの発酵ブロスは、この時点で、アルコールを一部枯渇する。フラッシュタンク78で蒸発された発酵ブロス部分は、蒸気として、82を介して蒸気濃縮器84に誘導される。アルコール及び水蒸気の混合物を濃縮した際に、濃縮された溶液は86を介して液体−液体分離器88に誘導される。次いで、濃縮されない残留蒸気は、90及び92を介して排気口にさらに誘導される。
【0093】
ある実施態様において、本発明の方法は、水溶液中のC3〜C6アルコールの濃度を増加する工程、発酵培地又は希釈水溶液からC3〜C6アルコールを回収する工程、又はC3〜C6アルコールを含む気相を形成し、該蒸気をC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させて気相を濃縮する工程を含む、C3〜C6アルコールの生成を指向する。このような方法の重要な利点は、蒸気を濃縮した溶液に直接接触させることにより(シェル(shell)及び管濃縮器(tube condenser)中での間接的な接触と比較して)、蒸気と濃縮溶液との間の温度差が比較的小さく、蒸気をさらに効率的に濃縮することができることである。従って、濃縮溶液の冷却に必要なエネルギーはより低く、エネルギー効率がより良好な方法となる。このような方法のさらに重要な利点は、特に濃縮溶液のC3〜C6アルコール含有量が濃縮されたときの蒸気のものとほぼ同じであるとき、濃縮溶液及び濃縮された蒸気を、いずれか一方のアルコール含有物を大きく希釈することなく混ぜ合わせることができることである。これらの実施態様において、水溶液を減圧及び/又は高温に曝し、アルコール揮発させて蒸気を形成してもよい。たとえば、水溶液は、フラッシュタンクに誘導する前に、たとえば熱交換器を用いることによって加熱してもよいし、又はたとえば加熱コイルを用いることによってフラッシュタンク内部で加熱してもよい。
【0094】
たとえば、一実施態様において、本発明は、水溶液中のC3〜C6アルコールの濃度を増加する方法を提供する。この方法は、C3〜C6アルコールを含む水溶液の第1ストリームを容器に導入する工程;第1ストリームを減圧して、C3〜C6アルコールを含む蒸気を形成する工程;蒸気をC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させて濃縮物を形成する工程であって、該濃縮物中のC3〜C6アルコールの濃度が水溶液の第1ストリーム中のC3〜C6アルコールの濃度より大きい工程を含む。
【0095】
他の実施態様において、本発明は、微生物及びC3〜C6アルコールを含む発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する方法を提供する。この方法は、発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を少なくとも、該一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加して、C3〜C6アルコールを含む蒸気を形成する工程、又は発酵培地の一部中の水の活性を、少なくとも、該一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に低減して、C3〜C6アルコールを含む蒸気を形成する工程を含む。C3〜C6アルコール蒸気は、C3〜C6アルコールを含む蒸気をC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させることにより濃縮される。濃縮物は、C3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相を濃縮された蒸気から形成し、該方法は、水リッチ相からC3〜C6アルコールリッチ相を分離する工程をさらに含む。この方法は、発酵培地中で微生物を培養して、C3〜C6アルコールを生成する工程;及び水リッチ相の少なくとも一部を発酵培地に誘導する工程をさらに含むことができる。本明細書中で他で記載したように、多糖類を含む供給原料を加水分解する工程をさらに含む実施態様などの発酵プロセスに関する他の実施態様が企図される。
【0096】
さらに他の実施態様において、本発明は、発酵培地中で微生物を培養してC3〜C6アルコールを生成することによる、C3〜C6アルコールの生成方法を提供する。この方法は、発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を増加する工程、及び発酵培地の該一部を蒸留して、水及びC3〜C6アルコールを含む気相及び液相を形成する工程をさらに含む。気相は、それをC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させ、液相を発酵培地に誘導することにより濃縮される。
【0097】
蒸気をC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させて気相を濃縮する工程を伴うさらなる実施態様は、第1の量のC3〜C6アルコールを含む希釈水溶液からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、該希釈水溶液の一部を蒸留して、C3〜C6アルコール及び水を含む気相を形成することによって回収する方法であり、該気相は、約1重量%〜約45重量%の希釈水溶液の一部由来の第1の量のC3〜C6アルコール含む。この方法は、C3〜C6アルコールを含む溶液と接触させることにより気相を濃縮することをさらに含む。
【0098】
C3〜C6アルコールを含む気相を形成し、蒸気をC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させる工程を含む本発明の実施態様において、該接触工程は、C3〜C6アルコールを含む溶液をC3〜C6アルコールを含む蒸気に噴霧することを含むことができる。他の実施態様において、C3〜C6アルコールを含む溶液は、気相からのC3〜C6アルコールの濃縮物であるか又はこれを含むことができる。すなわち、蒸気が濃縮されて溶液が形成されるので、その溶液の一部をC3〜C6アルコールを含む溶液として用いて、さらに蒸気を濃縮することができる。このように、溶液中及び濃縮された蒸気中のC3〜C6アルコールの濃度は同じでない場合は類似したものであり、約C3〜C6アルコールの濃度を希釈することの懸念事項はない。
【0099】
気相由来のC3〜C6アルコール濃縮物を含む、C3〜C6アルコールを含む溶液と蒸気を接触させる実施態様において、C3〜C6アルコール蒸気と接触する前に溶液を冷却することができる。濃縮物は、任意の慣用的な冷却プロセスを用いて、たとえば熱交換器を用いて冷却してもよい。そのような熱交換器で用いる任意の冷却液体は、冷却(chilling)又は以下で論じるように蒸発冷却(evaporative cooling)などのプロセスを用いて冷却することができる。
【0100】
蒸気又は気相を形成する工程、及び蒸気又は気相を濃縮する工程は、単一容器中で行うことができる。このような容器は、容器の第1の及び第2の流体含有部分を画定するウェアー(容器の底部で区画また部分を分ける部分的な仕切り(barrier))を含むことができる。2つの液体含有区画又は部分は、容器の頂上で開口し、互いに連通し、液体の分離を維持するが蒸気の移動を可能としている。この実施態様において、第1の流体含有部分は、微生物及びC3〜C6アルコールを含む水溶液又は発酵培地を受容し、第2の流体含有部分は、濃縮された蒸気を受容するであろう。
【0101】
ある実施態様において、第1の流体含有部分は、微生物及びC3〜C6アルコールを含む水溶液又は発酵培地を第1の流体含有部分に誘導するための導管、及び微生物及びC3〜C6アルコールを含む水溶液又は発酵培地を第1の流体含有部分の外に誘導するための導管を含む。第1の流体含有部分の外に誘導される水溶液又は発酵培地中のC3〜C6アルコール含有量は、第1の流体含有部分に誘導される水溶液又は発酵培地中のC3〜C6アルコール含有量より少ない。他の実施態様において、第2の流体含有部分は、第2の流体含有部分の外に濃縮された蒸気を誘導するための導管を含む。
【0102】
C3〜C6アルコールを含む気相を形成し、蒸気をC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させて気相を濃縮する工程を含むさらなる本発明の実施態様は、第1の温度(Tl)で希釈水溶液からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、該方法は、希釈水溶液から水及びC3〜C6アルコールを含む気相を蒸留する工程を含む。該方法は、第2の温度(T2)で気相を水性液体冷却とともに濃縮する工程、及び気相の温度が第3の温度(T3)となるように、蒸留工程の圧力、Tl、及びC3〜C6アルコール力価を制御する工程であって、T3及びT2の間の差は少なくとも約1℃である工程をさらに含む。この方法のある実施態様において、T3及びT2の間の差は、少なくとも約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約H℃、約12℃、約13℃、約4℃、又は約15℃である。他の実施態様において、T2は、約30℃、約29℃、約28℃、約27℃、約26℃、約25℃、約24℃、約23℃、約22℃、約21℃、約20℃未満である。
【0103】
この方法の他の実施態様において、第2の温度(T2)での水性冷却液は蒸発冷却によって生じる。本明細書において、蒸発冷却によって生じるとは、当該液体の温度が蒸発冷却プロセスによって変更され又は影響を受けることを意味する。たとえば、この実施態様において、水性冷却液が蒸発冷却によって生ずるとは、水性冷却液を冷却する液体がそれ自体、蒸発冷却によって冷却される熱交換器などによって液体を冷却することができることをいうことができる。蒸発冷却とは、液体の一部の蒸発潜熱を利用することにより液体の温度を下げることをいう。本方法での重要な利点は、蒸発冷却によって生じた水性冷却液の使用によって得られる。より具体的には、蒸発冷却の使用では、たとえば圧縮器を用いる冷却器により冷却することとは対照的に、蒸発冷却はエネルギー効率が顕著に良好になる。蒸留工程の圧力、Tl、及びC3〜C6アルコール力価を制御して、気相の温度を該気相がT2で水性冷却液とともに濃縮され得る温度にすることによって、当該方法では、水性冷却液がよりエネルギーが大きい方法によって生じる場合よりもエネルギー効率が良好である。
【0104】
この方法のさらなる他の実施態様において、濃縮された気相の一部を水性冷却液として用いることができる。さらに、この方法は、さらなる回収工程を含むことができる。特に、C3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相は濃縮された気相から形成することができる。次いで、C3〜C6アルコールリッチ相と水リッチ相とを分離することができる。さらに、蒸留工程は、断熱性であってもよいし、又は等温性であってもよい。さらに、ある種の実施態様において、気相は、特に断熱性の蒸留の場合、約2重量%〜約40重量%の希釈水溶液由来のC3〜C6アルコールを含んでもよい。さらに、他の実施態様において、気相は、特に等温蒸留の場合、約2重量%〜約90重量%の希釈水溶液由来のC3〜C6アルコールを含む。希釈水溶液は微生物を含む発酵培地であることができ、該方法は、発酵培地中で微生物を培養してC3〜C6アルコールを生成する工程;及び水リッチ相を発酵培地に誘導することを含むことができる。
【0105】
本発明のさらなる実施態様は、水溶液中のC3〜C6アルコールの濃度を増大するように機能するフラッシュタンク及び蒸気の直接接触濃縮器としての二重機能を有するシステムを含む。該システムは、容器を含む。これらの機能の組み合わせにより、資本コスト及び操作コストを低減する一方で、C3〜C6アルコールを含むストリームをフラッシュしてアルコールを回収するのに十分な高真空の形成が可能となる。分離したフラッシュタンク及び直接接触濃縮器を用いて同様の圧力低下を確保するためには比較的に大きない結合用配管が必要となるであろうが、これは大きな出費を伴う。従って、大きな結合インフラの必要性が回避されるので、資本コストが低下する。特に、水溶液中のC3〜C6アルコールの濃度を増加するためのフラッシュタンク/直接接触濃縮器システムの一実施態様は、容器;C3〜C6アルコールを含むストリームの水溶液を容器に導入するための導管又は他の運搬体(conveyance);C3〜C6アルコールを含むストリームの水溶液を減圧させてC3〜C6アルコールを含む蒸気を形成するための導管又は他の運搬体;C3〜C6アルコールを含む蒸気をC3〜C6アルコールを含む溶液と接触させて、濃縮物中のC3〜C6アルコールの濃度が水溶液の第1ストリーム中のC3〜C6アルコールの濃度より大きくなるように、C3〜C6アルコールの濃縮された蒸気を含む濃縮物を形成するための導管又は他の運搬体を含む。
【0106】
フラッシュタンク真空蒸発操作は真空下での圧力低下に関する工学的な懸念事項が少ないが、それは、フラッシュタンクが、システム上の圧力低下に影響を及ぼすフラッシュタンク上の液体の段階がなく一段階の分離として働くためであり、フラッシュタンク操作において差圧を非常に低いものとすることができる。フラッシュタンク中での蒸気発生についての設計計算及び配管システムのサイズは、圧力低下が低くなるように適当に選択することができる。フラッシュタンク中でのC3〜C6アルコールの蒸留は蒸留カラムの場合よりも低い真空が必要とされ、従って、フラッシュタンクは、設備のサイズがより小さく構成がより簡易となるので、操作及び資本コストがより低い。
【0107】
C3〜C6アルコールを含む溶液をフラッシュする工程を伴う本発明の任意の実施態様において、フラッシュは、断熱又は等温で行うことができる。上記のとおり、フラッシュ操作由来の気相は、特に断熱性の蒸留の場合、約2重量%〜約40重量%の希釈水溶液由来のC3〜C6アルコールを含むことができる。さらに、他の実施態様において、該気相は、特に等温蒸留の場合、約2重量%〜約90重量%の希釈水溶液由来のC3〜C6アルコールを含み得る。断熱フラッシュを使用すると、このようなプロセスを行うための設備が簡易であるので、資本コストが比較的に低くなるとの利点を有する。しかし、これらの条件下でを除去することができるC3〜C6アルコールの量は、等温プロセスを使用した場合と比較して実際には制限される。結果的に、発酵槽からのアルコールの除去の要件を満たすために、断熱的に操作されるフラッシュタンクへの/フラッシュタンクからのフロー速度(flow rate)(したがって、1/時(1/hr)として表される発酵槽の回転速度(turnover rate))は、等温で操作されるフラッシュタンクよりも顕著に大きくなり得る。従って、フラッシュタンクの等温操作は、フラッシュタンク及び発酵槽の間のフロー速度をより低くすることが可能であり、その結果、より小さくより標準的な装置を使用することができるとの重要な利点を有する。
【0108】
フラッシュ操作を伴う本発明の実施態様において、回転速度は、約0.033/hr〜約1/hr、又は約0.125/hr〜約0.25/hrであることができる。フラッシュ操作、特に等温のフラッシュを用いる本発明の実施態様において、回転速度は、約0.033/hr〜約0.33/hr、又は約0.04/hr〜約0.25/hrであることができる。フラッシュ操作、特に断熱性のフラッシュを用いる本発明の実施態様において、回転速度は、約0.25/hr〜約1/hr、又は約0.25/hr〜約0.5/hrであることができる。これらの回転速度によって表されるフラッシュタンクへの/フラッシュタンクからのフロー速度は発酵槽の容積に依存すると理解されるであろう。
【0109】
等温フラッシュのさらなる利点は、該フラッシュが一定の温度で操作されるので、蒸気中のアルコールの量が、フラッシュ中に温度が低下する断熱性の操作よりも大きいことである。したがって、蒸気を濃縮した際、該濃縮物にはアルコールがより豊富にあり、アルコールが回収されるに従って取り扱う水がより少なくなる。
【0110】
フラッシュタンク/直接接触濃縮器ユニットの一実施態様を図4に示す。示すとおり、該ユニットは容器100を含み、該容器は、2つの液体含有区画106、108又は区画106、108を分けるウェアー又は部分仕切り若しくは容器100の底部での部分を含む。従って、2つの液体含有区画106、108又は部分は、容器100の上面で開口し、互いに連通し、液体の分離を維持するが蒸気の移動を可能にする。フラッシュタンク/直接接触濃縮器ユニットは、C3〜C6アルコールを揮発できるように、機械式真空装置又は排出式真空装置などにより真空を生じさせるように適合される。左部分又は第1の流体含有部分106は、104及びポンプ102を介してC3〜C6アルコールを含む希釈水溶液を受容するように適合させる。このような溶液は、微生物及びC3〜C6アルコールを含む発酵ブロスであってもよい。したがって、この部分は、2つの導管、すなわち、一方は、希釈水溶液のストリームを104及びポンプ102を介してこの部分106に導入するための導管又はパイプなどの導管であり、他方は、C3〜C6アルコールをフラッシュし及び揮発した後に110及びポンプ112を介してこの部分の外に溶液(アルコーを一部枯渇する)を誘導するための導管を含むことができる。右部分又は第2の流体含有部分108は、C3〜C6アルコールを含む蒸気を濃縮するための溶液118を受容するように適合させる。この溶液は、水又は任意のC3〜C6アルコールを含んでもよいが、好ましい実施態様において、生成される及び/又は回収される同じC3〜C6アルコールを含む。第2の部分108も、2つの導管、すなわち、一方は、C3〜C6アルコールを含む溶液をこの部分116に導入するための導管であり、他方は、濃縮された蒸気をこの部分114の外に、たとえば液体−液体分離器111に誘導するための導管を含む。溶液は、スプレーノズル、スプレーボール、又はをC3〜C6アルコールを含む蒸気を濃縮するのに好適な他の機械装置など、噴霧機械装置109を用いることによって導入してもよい。
【0111】
フラッシュタンク/直接接触濃縮器ユニット100の特定の一実施態様を図5に示す。この実施態様において、微生物及びC3〜C6アルコールを含む発酵槽からの発酵ブロスのストリームは、104及びポンプ102を介してフラッシュタンク/直接接触濃縮器ユニットの左部分又は第1の部分106に導入される。発酵ブロスの一部は該ブロスに低圧を適用することによってフラッシュされ、C3〜C6アルコールを含む蒸気が形成される。低い圧力は、蒸気排出装置109によって作り出される。排出装置136によって吸引されたストリーム133は、さらなる加工処理及びアルコール有用物の回収のためにビアスティル又は蒸発器138に送付することができる。残留したブロスは110及びポンプ112を介して発酵槽に戻され、戻されたブロス中のC3〜C6アルコール含有量はブロスの最初のストリーム中のものより小さい。C3〜C6アルコールを含む蒸気は、ユニットの右部分又は第2の部分108で溶液と接触させて、蒸気を濃縮し、C3〜C6アルコールを含む溶液(濃縮物)を形成する。濃縮物中のC3〜C6アルコールの含有量は、ブロスの最初のストリーム中のものより大きい。濃縮物は、さらなる回収及び加工処理のために、114を介して液体−液体分離器111に誘導することができる。濃縮物の一部は、120を介してポンプ122により冷却器128に運搬され、冷却することができる。冷却された濃縮物は、C3〜C6アルコールを含む蒸気を濃縮するために、さらに第2の流体含有部分108に運搬されて噴霧される。
【0112】
ある実施態様において、本発明の方法は、発酵ブロスなどの溶液からC3〜C6アルコールを回収する方法を指向し、該方法では、C3〜C6アルコールをガスに移し、その後、ガスからC3〜C6アルコールを回収するために、ガスを発酵ブロスに導入する。たとえば、一実施態様において、本発明は、微生物及びC3〜C6アルコールを含む発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、C3〜C6アルコールの一部をガスに移すために、発酵培地中にガスを導入する工程;ガスを発酵培地から回収ユニットに誘導する工程;及びガスからC3〜C6アルコールを回収する工程を含む方法を提供する。この実施態様において、ガスは、空気、二酸化炭素、又は窒素を含む、C3〜C6アルコールを回収するのに任意の好適なガスであることができる。
【0113】
図6を参照して、発酵ブロスからC3〜C6アルコールを回収するためにガスストリッピング(又はスカルピング)を適用するための手段を含む本発明の実施態様を例示する。ガスストリッピングは、フラッシュ回収と合わせて用いる場合、C3〜C6アルコールの回収を促進することができる。発酵は発酵槽130で行う。発酵槽130中の発酵ブロスは、C3〜C6アルコール生成物、及び発酵培地の他の成分を含む。増殖用タンク144は、134を介して発酵槽130に初期培養物を誘導する。ガスストリッピングは、発酵槽130中又はフラッシュタンク中で148で行うことができる。したがって、図6に示すように、ある実施態様において、ガスは、微生物及びC3〜C6アルコールを含む発酵ブロスを通して、132及び圧縮器139を介して発酵槽130に散布される。ある実施態様において、ガスは空気であってもよい。ある実施態様において、ガスは、窒素又は二酸化炭素などのC3〜C6アルコールと反応しない非反応性ガスであってもよい。発酵ブロス中のC3〜C6アルコールは散布されたガス泡沫に拡散し、140を介して排気ガスの一部として発酵槽から出て、140を介して蒸気濃縮器154に運搬される。
【0114】
発酵過程の際、微生物を含み得る発酵ブロスのストリームは、発酵槽130からフラッシュタンク148に誘導される。フラッシュタンク蒸気中に含まれるC3〜C6アルコールは濃縮器154中で散布されたガス泡沫と合わさり、フラッシュ蒸気輸送と一緒になる。次いで、C3〜C6アルコールをフラッシュ蒸気から回収することができる。蒸発した発酵ブロスの一部は、水蒸気及び散布されたガスとともに、発酵ブロス中のアルコールの一部のみを含む。フラッシュタンク148で蒸発した発酵ブロスの一部は、蒸気として、152を介して蒸気濃縮器154に誘導される。アルコール及び蒸気の混合物を濃縮する際、濃縮された溶液は156を介して液体−液体分離器158に誘導される。次いで、濃縮されない残留蒸気は、さらに160及びポンプ162を介して排気口に誘導される。フラッシュタンク148中での蒸留後、蒸留されない発酵ブロスの残留部分は164及びポンプ166を介して発酵槽130に戻される。発酵槽に戻されたこの発酵ブロスは、この時点でアルコールを一部枯渇している。
【0115】
図7は、酸素を含む無菌の空気が発酵槽発酵に導入される本発明の実施態様を例示している。発酵は発酵槽130中で行う。発酵槽130中の発酵ブロスは、C3〜C6アルコール生成物及び発酵培地の他の成分を含む。増殖用タンク144は、134を介して発酵槽130に最初の培養物を誘導する。無菌の空気は、微生物及びC3〜C6アルコールを含む発酵ブロスを通して、132及び圧縮器139を介して発酵槽130中で散布される。発酵ブロス中のC3〜C6アルコールは、散布された空気泡沫に拡散し、140を介して排気ガスの一部として発酵槽から出る。C3〜C6アルコールは、それをフラッシュタンク148由来の蒸気と濃縮器154中で合わせることにより、あるいは洗浄機中でC3〜C6アルコールを捕らえることなどによって、オフガスから回収することができる。
【0116】
発酵過程中に、微生物を含み得る発酵ブロスのストリームは発酵槽130からフラッシュタンク148に誘導される。次いで、C3〜C6アルコールをフラッシュ蒸気から回収することができる。蒸発させる発酵ブロスの一部は、水蒸気とともに、発酵ブロス中のアルコールの一部のみを含む。フラッシュタンク148で蒸発した発酵ブロスの一部は、蒸気として、152を介して蒸気濃縮器154に誘導される。アルコール及び蒸気の混合物を濃縮する際、濃縮された溶液は156を介して液体−液体分離器158に誘導される。次いで、濃縮されない残留蒸気は160及びポンプ162を介してさらに排気口に誘導される。フラッシュタンク148で蒸留した後、蒸留されない発酵ブロスの残留部分は、164及びポンプ166を介して発酵槽130に戻される。発酵槽に戻されたこの発酵ブロスは、この時点でアルコールが一部枯渇している。
【0117】
本明細書に記載した発酵方法の別の態様は、単独で又は組み合わせて、以下の任意のものなどの本実施態様と有利に組み合わせることができる:
発酵培地中で微生物を培養して、C3〜C6アルコールを生成する工程;及び水リッチ相を発酵培地に誘導する工程;
多糖類及び少なくとも1つの他の化合物を含む供給原料を加水分解し、発酵可能な加水分解生成物を生成する工程、及び本明細書に記載したその後の工程;
水及びC3〜C6アルコールを含む気相を蒸留する工程;及び気相中のC3〜C6アルコールを反応させて、生成物を形成する工程;
発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を増加する工程;
希釈水溶液の一部をC3〜C6アルコール及び水を含む気相に蒸留する工程であって、該気相は、約1重量%〜約45重量%の希釈水溶液の一部由来の第1の量のC3〜C6アルコールを含む工程;及び気相を濃縮する工程。
【0118】
他の本発明の実施態様は、C3〜C6アルコールを生成するために予備処理ユニット、複数発酵ユニット、及びビアスティルを含む改装エタノール生成プラントを操作する方法であって、ガスを発酵ブロスに導入して、ガスにC3〜C6アルコールを移した後、ガスからC3〜C6アルコールを回収する工程を含む方法である。
【0119】
ガスを発酵ブロスに導入して、C3〜C6アルコールをガスに移した後、ガスからC3〜C6アルコールを回収するための工程を含むこれらの実施態様において、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%のC3〜C6アルコールをガスから回収することができる。
【0120】
ある実施態様において、本発明は、発酵ブロス中で微生物を培養し、微生物を高細胞密度に成長させる(成長相又は増殖相ともいう)工程、及びさらに微生物を培養してC3〜C6アルコールを生成する(生成相という)工程を含む。発酵ブロス中のC3〜C6アルコールの濃度が増加するに従って、微生物の成長、及びさらにC3〜C6アルコールの生成は、発酵ブロス中のC3〜C6アルコール蓄積によって阻害され得る。本発明の方法は、さらなる回収及び加工処理のために、培養工程中に発酵ブロスからC3〜C6アルコールを除去する工程をさらに含む。成長相又は増殖相中に発酵ブロスからC3〜C6アルコールを除去することにより、高濃度のC3〜C6アルコールに起因した微生物の成長阻害が低下し、細胞がより高細胞密度に成長することが可能となる。生成相中に発酵ブロスからC3〜C6アルコールを除去することにより、微生物によるC3〜C6アルコール生成阻害が低下し、生成されるアルコールのより高いバッチ濃度が可能となる。
【0121】
本発明は、発酵ブロスなどの溶液からC3〜C6アルコールを生成する方法であって、成長相及び生成相の2つの相で培養を行う方法も提供し、該生成相は嫌気性条件を含む低酸素条件下で行われる。したがって、一実施態様において、本発明は、発酵培地中で微生物を培養して微生物を成長させる工程、発酵培地中で微生物を培養してC3〜C6アルコールを生成する工程、及び培養工程中に発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する工程を含む、C3〜C6アルコールを生成する方法を提供する。該方法は、微生物の成長工程中に、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約5〜約150モルの酸素の酸素移動速度(OTR)で発酵培地に導入する特徴を有し得る。該方法は、C3〜C6アルコールの生成工程中に、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約20モル未満の酸素の酸素移動速度(OTR)で発酵培地に導入する特徴を有し得る。OTRの制限は、微生物の成長能力を制限することによりアルコールの生成を促進する。他の実施態様において、C3〜C6アルコール生成工程中に、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約10モル未満の酸素又は1時間あたり発酵培地1リットルあたり約5モル未満の酸素のOTRで発酵培地中に移される。
【0122】
この実施態様において、生成相のある時点で、生産性が低下するに従ってOTRを増加することにより生産性の低下を回復することができることが意外にも見出された。理論に拘束されることはなく、この工程は細胞成長及び/又はC3〜C6アルコールの生成を回復又は促進すると考えられる。従って、本発明のこの実施態様は、発酵の生成相中に、すなわち、OTRが成長相中のOTRから低下した後の適当な時点でOTRを増加する工程を含む。より具体的には、この実施態様において、C3〜C6アルコールの生成中に、酸素を含むガスをC3〜C6アルコール生成に必要なOTRを超えるOTRで発酵培地中に導入する工程を含むことができる。C3〜C6アルコール用の様々な生成微生物は、アルコールの生成について様々なOTR要件を有するであろう。たとえば、ある微生物は、嫌気性条件下でアルコール生成するが、あるものは少量の酸素を必要とし得る。より具体的には、OTRは、1時間あたり発酵培地1リットルあたり約0.5〜約5モルの酸素、1時間あたり発酵培地1リットルあたり約0.5〜約4モルの酸素、1時間あたり発酵培地1リットルあたり約0.5〜約3モルの酸素、1時間あたり発酵培地1リットルあたり約0.5〜約2モルの酸素、又は1時間あたり発酵培地1リットルあたり約0.5〜約1モルの酸素であることができる。
【0123】
OTRを用いて、単位時間あたり発酵体積あたりの酸素消費を決定することができる。この情報は、正確な発酵槽システムの設計及び操作に重要である。OTRは、嫌気性、微好気性、及び完全に好気性の条件を確立するように制御することができる。OTRのこれらの様々なレジームを用いて、生物の成長又はアルコールなどの所望の代謝物の収率の間のバランス制御を確立することができる。発酵システムで得られるOTRは、発酵槽の設計(バッフル、高さと幅との比、攪拌システム)、ガス注入システム、圧力、温度、溶媒の粘性、及び組成物を含むが限定するものではない、いくつかの変動要因に依存する。OTRは、ガス相由来の酸素から個々の細胞まで特徴づける基本のプロセスデータ及び計算から決定することができる。所定の発酵システムのOTRの特徴が判る場合、エアレーションレジームを制御するように特定の制御を行うことができる。OTR制御によく用いられるプロセス変動因子は、ガス供給速度、発酵槽の圧力、及びを混合強度である。さらに、使用される注入ガスは空気を含むように選択することができ、あるいは該注入ガスは1種以上の精製ガスの混合物であることができる。精製ガスの例は、酸素、窒素、及び二酸化炭素を含む。発酵システム用にOTRを測定し且つ特徴付けを行うための手法がいくつか開発されている。ある測定方法は、発酵槽中に活発な(active)培養物を用いずにOTRを決定する。他の手法は、活発な培養システムを用いてシステムのOTRを測定する。本作業で利用したOTR手法は、活発な発酵中での酸素バランス技術(Oxgen Balance Technique)である。酸素消費は、発酵槽に供給される酸素の速度(mMol O/hr)を測定し、発酵槽を出る酸素の速度(mMol O/hr)を差し引くことによって決定される。この酸素移動速度を発酵体積(リットル)で割って、OTR(mMol O/L−hr)を得る。酸素フロー速度及び吸気口及び排気口ガスストリームの組成物は、様々な手法で測定することができる。ガスフロー速度及び組成物を測定するための確立された方法には、ガスフローメーター及び質量分析計を使用することが含まれる。システムに入りシステムから出るガスフロー速度は、典型的には単位時間あたりの体積速度で測定され、理想気体の法則を用いて単位時間あたりのモルフロー速度(mMol/hr)に変換する。質量分析計は供給ガス及び排出口ガスの組成物を測定し、これを用いて全ガスフロー速度(mMol/hr)から酸素モルフロー速度(mMol O/hr)を計算することができる。発酵槽の体積は、差圧レベルト伝送器、校正体積サイトグラス(calibrated volume sightg lass)、及びレーダー式レベル計、又は他の手段を含む多くの手段の1つによって測定される。
【0124】
C3〜C6アルコールを生成する方法のこの実施態様において、回収工程は、発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を、少なくとも、該一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加し、又は発酵培地の一部中の水の活性を、少なくとも、該一部中の飽和C3〜C6アルコールの活性に低減する工程;発酵培地の該一部からC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相を形成する工程;及び水リッチ相からC3〜C6アルコールリッチ相を分離する工程を含むことができる。この実施態様は、水リッチ相を発酵培地に誘導する工程を含むこともできる。これらの実施態様において、発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を、少なくとも、該一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加する工程は、発酵培地から水及びC3〜C6アルコールを含む気相を蒸留する工程、及び気相中でC3〜C6アルコールを反応させて生成物を形成する工程を含むことができる。
【0125】
本発明は、C3〜C6アルコールの生成工程中に、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約20モル未満の酸素酸素移動速度(OTR)で発酵培地に導入する工程に特徴づけられる他の実施態様を含む。特に、本発明は、発酵培地中で微生物を培養して、C3〜C6アルコールを生成する工程、培養工程中に、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約20モル未満の酸素のOTRで発酵培地中に導入する工程、発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を増加する工程、発酵培地の一部を蒸留して水及びC3〜C6アルコールを含む気相及び液相を生成する工程、及び液相を発酵培地に誘導する工程を含む、C3〜C6アルコールを生成する方法を含む。さらなるこのような方法は、C3〜C6アルコールを生成するために予備処理ユニット、複数発酵ユニット、及びビアスティルを含む改装エタノール生成プラントを操作する方法である。該方法は、予備処理ユニットで供給原料を予備処理して発酵可能な糖を形成する工程、第1の発酵ユニットで発酵可能な糖を含む発酵培地中で微生物を培養し、微生物を成長させる工程を含む。該方法は、第1の発酵ユニットで発酵可能な糖を含む発酵培地中で微生物を培養して、C3〜C6アルコールを生成する工程を含む一方、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約20モル未満の酸素のOTRで発酵培地中に導入する工程をさらに含む。C3〜C6アルコールは、C3〜C6アルコールを含む発酵培地の一部を処理してC3〜C6アルコールの一部を除去し、該処理した発酵培地の一部を発酵ユニットに戻すことによって回収される。該方法は、発酵ユニットからビアスティルに発酵培地を移す工程も含む。
【0126】
これらの実施態様の任意において、C3〜C6アルコールを生成する工程は嫌気性であることができる。発酵槽は、空気又は任意の他の酸素を含むガスの導入を停止することによって嫌気性にすることができ、培地中の任意の残留酸素が微生物によって用いられた後に培地は嫌気性になる。あるいは、発酵培地を窒素、二酸化炭素、又は他の不活性ガスでフラッシュして嫌気性培地を得ることができる。
【0127】
他の本発明の実施態様は、エネルギー効率が良い方法でC3〜C6アルコールを生成及び回収する方法を含む。ある実施態様において、本発明は、全プラントエネルギー消費を低下させて大幅なコスト軽減を付与する熱統合用の排出装置の使用を含む。これらのプロセスで用いられる排出装置は蒸気で動くベンチュリ装置であり、これを用いて真空を生じさせる。高圧下の蒸気を排出装置を通過させて1つの操作で真空を生じさせ、該蒸気を用いて他の操作を駆動してもよい。したがって、一実施態様において、本発明は、大気圧未満の圧力で操作される複数のユニット操作を含む、C3〜C6アルコールの生成及び回収する方法を操作する方法を含む。該方法は、第1のユニット操作において、蒸気を第1の排出装置に導入して大気圧未満の圧力を生じさせる工程;及び第2のユニット操作において、第1の排出装置から第2の排出装置に蒸気を誘導して、大気圧未満の圧力を生じさせる工程を含む。第1及び第2のユニット操作は、同じであっても又は異なってもよい。関連する実施態様において、本発明は、連続してより低い圧力で操作される複数のユニット操作を含む、C3〜C6アルコールの生成及び回収する方法を操作する方法を提供する。該方法は、第1のユニット操作において、P1圧力下で蒸気を第1の排出装置に導入し、大気圧未満の圧力を生じさせる工程;及び蒸気及び他のガス(例えば蒸発したブタノール及び二酸化炭素)を圧力P2(ここで、P2>P1である)で第1の排出装置から第2の排出装置に誘導し、より大きい真空を生じさせる工程を含む。複数のユニット操作は、限定するものではないが、水再利用、第1の効用蒸発器、第2の効用蒸発器、ビアスティル、サイドストリッパー、及び/又は精留塔を含む、C3〜C6アルコールの生成及び回収する方法で用いる任意のユニット操作を含んでもよい。
【0128】
図5に示す他の実施態様において、高圧下での蒸気は133を介して排出装置136を通過し、フラッシュタンク−直接接触濃縮器ユニット100で真空を生じさせる。フラッシュタンク−直接接触濃縮器ユニットからの過剰な蒸気に含まれる熱、蒸気濃縮物、及び濃縮されていない生成物蒸気は、排出装置を介してビアスティル又は蒸発器138に運ばれる。熱は、ビアスティル又は蒸発器におけるその後のプロセス工程に移すことによって生成及び回収プロセスで統合される。
【0129】
本発明は、高細胞密度培養方法を用いる、発酵ブロスなどの溶液からC3〜C6アルコールを回収する方法を提供する。たとえば、一実施態様において、本発明は、発酵培地中で微生物を成長させる工程、及び該成長工程中に発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する工程を含む、C3〜C6アルコールを生成する微生物を高細胞密度に培養する方法を提供する。この方法において、微生物は、1リットルあたり約5g〜1リットルあたり約150gの乾燥重量の範囲の細胞密度に達する。代替の実施態様において、微生物は、約5g/lの乾燥重量〜約150g/lの乾燥重量の範囲で変動する細胞密度に達することができる。特に、範囲の下限は、約5g/l、約15g/l、約25g/l、約50g/l、約75g/l、及び約100g/lの微生物乾燥重量から選択することができ、範囲の上限は、約150g/l、約125g/l、約100g/l、約75g/l、約50g/l、及び約25g/lの微生物乾燥重量から選択することができる。これらの実施態様は、下限の任意の1つと上限の任意の1つを含んでもよい。
【0130】
本発明の他の実施態様は、発酵培地中でC3〜C6アルコールを生成する微生物を培養してC3〜C6アルコールを生成する工程、及び発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する工程であって、C3〜C6アルコールの生成が1時間あたり1リットルあたり少なくとも約1gの速度である工程を含む、C3〜C6アルコールを生成する方法を提供する。代替の実施態様において、C3〜C6アルコールの生成は1リットルあたり1時間あたり少なくとも約2gの速度である。好ましい実施態様において、C3〜C6アルコールはブタノール又は特にイソブタノールであってもよい。
【0131】
上記で論じた様々な実施態様は、互いに組み合わせることができる。たとえば、図8及び9に示すように、アルコール回収において効率をより大きくするために、ガススカルピング又はガスストリッピングをフラッシュタンク−直接接触濃縮器ユニットと組み合わせて行ってもよい。図8は、フラッシュタンク/直接接触濃縮器ユニット100及びガススカルパーを用いた、発酵ブロスからのC3〜C6アルコールを生成及び回収するための本発明の実施態様を表す。増殖用発酵槽170は、172を介して生成発酵槽174に最初の培養を誘導する。排気ガスが178介して発酵槽から洗浄機182に出る。発酵過程中に、微生物を含み得る発酵ブロスのストリームは、発酵槽174から熱交換器190に誘導され、次いで、188を介してスカルパー194に誘導される。スカルパーからのガスの除去は、198を介して機械式真空ポンプ206、次いで洗浄機210によって行われる。
【0132】
微生物を含み得る発酵ブロスのストリームは、188を介してシステム100に誘導される。より具体的には、ブロスは、蒸留のためにフラッシュタンク部分106にさらに誘導される。システム106のフラッシュタンク部分で生成される蒸気はシステム108の直接接触濃縮器部分に運搬され、濃縮速度を増加するためにアルコール生成物を含み得る濃縮液体109の細かい噴霧に暴露される。システム108の直接接触濃縮器部分からの高圧下の蒸気を132を介して排出装置136を通過させ、フラッシュタンク−直接接触濃縮器ユニット100中で真空を生じさせる。フラッシュタンク−直接接触濃縮器ユニット由来の過剰な蒸気中に含まれる熱、蒸気濃縮物、及び濃縮されない生成物の蒸気は、排出装置を介してビアスティル又は蒸発器138に運ばれる。濃縮液体109として用いられない濃縮物の残留物は、114を介して液体−液体分離器111に送られる。フラッシュタンク部分106で蒸留した後、蒸留されない発酵ブロスの残留部分(アルコールを一部枯渇している)を110及びポンプ112を介して発酵槽に戻すことができる。
【0133】
図9は、フラッシュタンク/直接接触濃縮器ユニット及びガスストリッパーを用いて発酵ブロスからC3〜C6アルコールを生成及び回収するための本発明の実施態様を表す。ガスは、微生物及びC3〜C6アルコールを含む発酵ブロスを通して、132及び圧縮器139を介して発酵槽174に散布される。ある実施態様において、ガスは空気であってもよい。ある実施態様において、ガスは、窒素などのC3〜C6アルコールと反応しない非反応性のガスあってもよい。発酵ブロス中のC3〜C6アルコールは散布されたガス泡沫に拡散する。
【0134】
微生物を含み得る発酵ブロスのストリームは、104及びポンプ102を介してシステム100に誘導される。より特定的には、ブロスは、蒸留のためにフラッシュタンク部分106にさらに誘導される。ガスは、218及び圧縮器214を介してフラッシュタンク部分106に散布される。システム106のフラッシュタンク部分で生成される蒸気は、システム108の直接接触濃縮器部分に運搬され、濃縮速度を増加するためにアルコール生成物を含み得る濃縮液体109の細かい噴霧に暴露される。システム108の直接接触濃縮器部分からの高圧下での蒸気は133を介して排出装置136を通過し、フラッシュタンク−直接接触濃縮器ユニット100で真空が生ずる。フラッシュタンク−直接接触濃縮器ユニット由来の過剰な蒸気中に含まれる熱、蒸気濃縮物、及び濃縮されない生成物の蒸気は、排出装置を通ってビアスティル又は蒸発器138に運ばれる。濃縮液体109として用いられない濃縮物の残留物は、114を介して液体−液体分離器111に送られる。フラッシュタンク106部分で蒸留した後、蒸留されない発酵ブロスの残留部分(アルコールを一部枯渇している)は110及びポンプ112を介して発酵槽に戻される。
【0135】
図13を参照して、フラッシュタンク/直接接触濃縮器ユニット100、ガススカルパー、及び3つのポンプループを用いて、発酵ブロスからC3〜C6アルコールを生成及び回収するためのさらなる本発明の実施態様を示す。増殖用発酵槽170は、最初の培養物を172を介して生成発酵槽174に移す。ガスは、微生物及びC3〜C6アルコールを含む発酵ブロスを通して、132及び圧縮器139を介して発酵槽174に散布される。ある実施態様において、ガスは空気であってもよい。ある実施態様において、ガスは、窒素などのC3〜C6アルコールと反応しない非反応性のガスあってもよい。発酵ブロス中のC3〜C6アルコールは散布されたガス泡沫に拡散する。排気ガスは、178を介して発酵槽から洗浄機182に出る。
【0136】
発酵過程中、微生物を含み得る発酵ブロスのストリームは発酵槽174からポンプ186を介して熱交換器190に誘導され、次いで188を介してスカルパー194に誘導される。スカルパーからのガスの除去は、機械式真空ポンプ206によって198を介して洗浄機210へと行われる。微生物を含み得る発酵ブロスストリームは、ポンプ220を介し、さらに202を介してシステム100に誘導される。
【0137】
発酵ブロスの一部をフラッシュタンク中/直接接触濃縮器ユニット100中で蒸発し、蒸気を222を介して真空下で除去し、ビアスティル又は蒸発器138に送る。濃縮された蒸気の幾らかは、114を介して液体−液体分離器111に送る。フラッシュタンク部分106で蒸留した後、蒸留されない発酵ブロスの残留部分(アルコールが一部枯渇している)を110及びポンプ112介して発酵槽に戻すことができる。
【0138】
前述の本発明の実施態様の技術背景及びコンテクストとして、イソブタノールの回収のための連続的な真空フラッシングプロセスの概念図を図1に示す。発酵は発酵槽10中で行われる。発酵槽10中の発酵ブロスは、ブタノールなどのC3〜C6アルコール生成物及び発酵培地の他の成分を含む。発酵過程中に、微生物を含み得る発酵ブロスのストリームは、12を介して発酵槽10から熱交換器20に誘導される。熱交換器20を用いて、発酵ブロスの温度をその後の蒸留に好適な温度に上昇させる。
発酵ブロスの温度を適当な温度に上昇させた後、ブロスは蒸留のために22を介してさらにフラッシュタンク30に誘導される。発酵熱は、フラッシュシステムでの蒸発に必要な熱を一部供給することができる。加熱された発酵ブロスがフラッシュタンク30に導入された際に発酵ブロスの一部が蒸発するように、フラッシュタンク30は大気圧未満の圧力で維持される。蒸発した発酵ブロス部分は、水蒸気とともに、発酵ブロス中のブタノール部分のみを含む。フラッシュタンク30中で蒸留した後、蒸留されていない発酵ブロスの残留部分は134を介して発酵槽10に戻される。発酵槽に戻されるこの発酵ブロスは、この時点でメタノールを一部枯渇している。フラッシュタンク30中で蒸発させる発酵ブロスの一部は、蒸気として、32を介して蒸気濃縮器40に誘導され、42を介して冷却水などによって冷却することができる。ブタノール及び水蒸気の混合物を濃縮したら、濃縮された溶液は44を介して相分離器50に誘導される。次いで、濃縮されない残留した蒸気はさらに48を介して排気口に誘導される。相分離器中の濃縮された溶液は、重い液相及び軽い液相に分離することができる。重い液相は、主に、水及び水に可溶なある量のブタノールからなる。軽い液相は、主に、ブタノール及びある量の可溶な水からなる。相分離器により、ブタノールを含む軽相は重相から分離することにより回収され、さらに精製のために処理することができる。主に水からなる重相は、システムにおける他の用途又は使用のために誘導することができる。13、35は液体ポンプであり、47は真空ポンプである。
【0139】
図2を参照して、且つ前述の本発明の実施態様の技術背景及びコンテクストとして、予備処理したトウモロコシの同時糖化及び発酵によるブタノール生方法の特定の実施態様において、ブタノールのサイドストリームの共沸蒸留を例示する。乾燥トウモロコは粉砕されて粉末にされる。粉砕したトウモロコシ1、薄い蒸留廃液(thin stillage)3、CIP発酵槽クリーンアウト(cleanout)31、リサイクルされた水43、及び蒸気2がトウモロコシデンプン予備処理システム32に添加され、ここで、混合物はスラリー化され、約99℃に加熱される(CIP(定置洗浄(Clean in Place))発酵槽クリーンアウトは、バッチ間で発酵槽を清浄し消毒するために用いられる苛性水溶液である。NaOHがよく用いられるが、他の強塩基及び他の消毒用化学物質も用いることができる。不要なCIP溶液は、(壁にくっ付いている)発酵槽由来の固体、栄養分、炭水化物などを含み、これはトウモロコシ予備処理の前部に再導入することができる)。α−アミラーゼ50をトウモロコシデンプン予備処理システム32に添加し、保持時間を約1/時間未満とすることができる。溶液を約50℃〜約65℃の範囲の温度に冷却した後に、グルコアミラーゼ酵素4を添加する。約5〜6時間の短い糖化時間後に、スラリーを約32℃に冷却する。この時点で、可溶である及び可溶である固体を含むスラリー固体濃度は約361g/kgであることができる。約32時間で糖化を完了するのに十分な酵素4をトウモロコシマッシュ混合物にも添加し、これを発酵槽5に移す。発酵を、同時糖化及び発酵(SSF)モード下、32℃で実施する。約4重量%のブタノールを含むサイドストリーム6を発酵槽5から継続的に除去し、フラッシュタンク熱交換器33を用いて、フラッシュタンク供給7の温度を約34℃で制御する。約50mmHgの真空をフラッシュタンク34上で吸引し、共沸蒸気組成物11が形成される。ブタノール水蒸気共沸物11の組成は約54重量%のブタノール及び約46重量%の水であることができる。共沸物の蒸気11は真空ポンプ35によってポンプ吸引され、化学変換プロセス13又は濃縮器12のいずれかに供給される。濃縮された気相36は液体/液体分離器37に誘導され、ここで相分離される。濃縮された気相は、ブタノールリッチ相37a及び水リッチ相37bに分離される。ブタノールリッチ相37aは、約680g/Lブタノールのブタノール濃度を有する。水リッチ相37bは、約86g/Lのブタノール濃度を有する。上層37aと下層37bとの生じた体積比は3対1である。
【0140】
細胞、水、栄養分、炭水化物、及び約2重量%の未蒸発ブタノールを含むフラッシュタンク34中の未蒸発成分9は、発酵槽5に戻される。未蒸発成分9はブタノールを枯渇しており、発酵槽5に戻ったときにブタノールが継続して生成され、上記のようにサイドストリーム6の処理によって回収することができる。
【0141】
液体/液体分離器37からの水リッチ重相37bは、15を介してビアスティル38に誘導され蒸留される。ブタノール−水共沸組成物18がビアスティル38で生じ、濃縮器39に誘導され濃縮される。
濃縮された蒸気19は液体/液体分離器40に誘導され、水リッチ重相40bとブタノールリッチ軽相40aとに分離される。約86g/Lのブタノールを含む水リッチ重相40bは20を介してリサイクルされ、ビアスティル38に戻される。ブタノールリッチ相40aは、約680g/Lブタノールのブタノール濃度を有する。
【0142】
液体/液体分離器40中のブタノールリッチ軽相40aは、21を介して蒸留システム41に誘導される。液体/液体分離器37中のブタノールリッチ軽相37も16を介して蒸留システム41に誘導され、ブタノールリッチ軽相40aと合わせることができる。蒸留システム41は大気圧で操作され、精製ブタノールは約99重量%ブタノールの濃度で高沸点生成物22として生成される(他の実施態様において、蒸留システムは、大気圧未満の圧力、大気圧、又は大気圧超の圧力で操作することができる)ブタノール水共沸物蒸気23が生成され、濃縮器45に送られ、濃縮される。濃縮された蒸気46は液体/液体分離器47に誘導され、水リッチ重相47b及びブタノールリッチ軽相47aに分離される。水リッチ重相47bは、48を介してビアスティル38にリサイクルされる。ブタノールリッチ軽相47aは51を介して蒸留システム41に誘導され、他の投入物16、21と合わせることができる。
【0143】
発酵槽5でのSSF発酵は52時間で行われる。真空フラッシュタンク34によって除去されない約2%ブタノールを含む発酵ブロスは、8を介してビアスティルに38に誘導される。ブロス中のブタノールは、ブタノール−水共沸物18として塔頂で蒸留される。ビアスティル38から、水、変換されていない炭水化物、栄養分、細胞、繊維、トウモロコシ胚芽、酵素、及び他の発酵成分が底部生成物17として取り出され、約0.05重量%のブタノールを含む。ビアスティル底部のストリーム17は、蒸留乾燥穀物乾燥器27及びパージストリーム28に分けられる。薄い蒸留廃液3はパージストリーム28によって生成される。乾燥した蒸留穀物29は、乾燥器27によって生成される。乾燥器27は水蒸気30も生成し、これは濃縮器42によって濃縮され、43を介してトウモロコシデンプン予備処理システム32にリサイクルされる。
【0144】
発酵槽5、濃縮器12(フラッシュタンク34からのフローを有する)、濃縮器39(ビアスティル38からのフローを有する)、及び濃縮器45(蒸留システム41からのフローを有する)は、ブタノール、水、CO、及び他の不活性ガスを含むベント(vent)ストリーム10、25、24、49を有する。これらのストリームをベント収集システム44で合わせ、下流の設備26で加工処理し、ブタノール及びCOを回収し精製する。
【0145】
前述の本発明の実施態様は、トウモロコシデンプン予備処理システム、発酵槽、ビアスティル、蒸留システム、及び乾燥器を含む主な操作がエタノール生成のために従前に用いられた操作である、改装トウモロコシエタノール生成プラントで行うことができる。このようなシステムは、サイクルで操作される複数の発酵槽(典型的には5〜7個)を有し、各発酵槽はビアスティルに移す前に約52時間の発酵を行う。発酵槽の蒸留操作(例えばトウモロコシデンプン予備処理システム)は、第1の発酵槽用に本質的に継続的な供給原料の調製を操作し、次いで第2の発酵槽用の供給原料の調製を操作するなどである。発酵槽の下流の操作(例えば、ビアスティル、蒸留システム、及び乾燥器)は、各発酵槽から発酵ブロスを本質的に継続的に取り出すことを操作することであり、それは、各発酵槽が、エタノールを回収し、DDGS、パージストリーム、及び薄い蒸留廃液を生成するための発酵サイクルを終了するからである。
【0146】
このようなエタノール生成プラントは、本明細書に記載した様々な生成及び回収方法を導入することによりブタノールを生成するように改装することができる。
【0147】
典型的には、エタノールを生成する微生物は、発酵ブロス中の高濃度のエタノールに耐性である。しかし、発酵ブロス中の高濃度のC3〜C6アルコールは微生物に毒性であり得る。したがって、エタノールの代わりにC3〜C6アルコールを生成するためのエタノールプラントを操作するために、生成された状態のアルコールを同時に除去するコストの低い方法が必要とされている。
【0148】
ブタノール生成生物が活動停止する前にエタノール濃度の高さと同程度のブタノール濃度を生ずることができないので、本明細書に記載した生成及び回収方法は、ブタノールの効率的な生成を可能にするためのエタノールプラントへの導入に有用である。ブタノール回収プロセス(ここでは、微生物を含み得る発酵ブロスの一部が、該発酵ブロス部分からブタノールの一部を回収するためのフラッシュタンクなどの回収操作に利用され、ブタノール枯渇ストリームが発酵槽に戻される)を導入することにより、有効なブタノール濃度の発酵を顕著に増大することができ、その結果、ブタノール生成プロセスをエタノール生成プラントに誘導することができる。
【0149】
プラントを改装する方法は、上記のように、サイドストリーム6、フラッシュタンク供給7、及び未蒸発成分のストリーム9を生成するための設備をプラントに導入する工程を含むことができる。さらに、分離器37、40などの液体/液体分離を行うための設備を導入して、ブタノールの効率的な回収を提供することができる。
【0150】
したがって、ある実施態様において、本発明は、関連する実施態様で記載した方法工程を用いる改装エタノール生成プラントを操作する方法を提供する。たとえば、一実施態様において、本発明はC3〜C6アルコールを生成するために改装エタノール生成プラントを操作する方法を含む。この実施態様において、改装エタノール生成プラントは、C3〜C6アルコールを生成するために予備処理ユニット、複数発酵ユニット、及びビアスティルを含む。該方法は、予備処理ユニットで、供給原料を予備処理して発酵可能な糖を形成する工程;発酵培地中で第1の発酵ユニットで、C3〜C6アルコールを生成する微生物で発酵可能な糖を発酵する工程;発酵培地の一部を処理して、C3〜C6アルコールを除去する工程;第1の発酵ユニットで処理した部分を戻す工程;任意選択で、発酵培地から第1の発酵ユニットにガスを除去する工程;及び発酵培地を第1の発酵ユニットからビアスティルに移す工程を含む。
【0151】
本発明のある方法は、供給原料を予備処理して、予備処理ユニットで発酵可能な糖を形成する工程を含む。予備処理ユニットは、予備処理用の供給原料を継続的に受容する。予備処理との用語は、粉砕、ミリング、タンパク質などの他の成分からの炭素供給源の分離、脱結晶化(decrystallization)、ゼラチン化(gelatinization)、液化、糖化、及び化学手段及び/又は酵素触媒によって触媒される加水分解などの処理をいう。たとえば、供給原料は、乾燥トウモロコシであってもよく、これは、予備処理ユニット中で粉砕され、水と混合され、加熱され、アミラーゼと反応されて、微生物による発酵基質として好適な発酵可能な糖を含むマッシュ又はスラリーを生成する。
【0152】
本発明のある方法は、第1の発酵ユニットで、発酵培地中でC3〜C6アルコールを生成する微生物を用いて発酵可能な糖を発酵する工程をさらに含む。発酵ユニットは、培養すると発酵可能な糖をC3〜C6アルコールに変換することができる微生物を含む発酵培地を含む。このような微生物は、上記で詳述している。改装プラントは、複数発酵ユニットを含む。予備処理ユニットからの発酵可能な糖を含む予備処理した供給原料のストリームは第1の発酵ユニットに導入され、ここで、微生物を含む発酵培地と合わせられる。微生物は存在する発酵可能な糖を発酵し、C3〜C6アルコールを生成する。
【0153】
本発明のある方法は、発酵培地の一部を処理してC3〜C6アルコールを除去する工程をさらに含むことができる。発酵培地は、C3〜C6アルコール、水、及び微生物を含む。第1の発酵ユニットからの発酵培地の一部(例えば、サイドストリーム)を用いて、ここに含まれるC3〜C6アルコールを除去する。該処理は、本明細書に記載した希釈水溶液からC3〜C6アルコールを精製及び回収するための任意の1つ又は複数の方法、特に、水及びC3〜C6アルコールを含む気相の蒸留、親水性溶質の添加、水可溶性の炭素供給源の添加、逆浸透、透析、及びそれらの組み合わせの工程(これらの工程はすべて本明細書に上記で詳述される)を含むことができる。好ましい実施態様において、この工程は、サイドストリームを、第1の発酵ユニットから、蒸留工程が大気圧未満の圧力で行われるフラッシュタンクに誘導する工程を含む。フラッシュタンクの設計は上記で詳述されている。
【0154】
本発明のある方法は、第1の発酵ユニットで処理した部分を戻す工程をさらに含む。該処理部分はC3〜C6アルコールを枯渇し、水を含み、且つ微生物を含み得、その両方が発酵培地に戻される。発酵培地からC3〜C6アルコールの一部を除去し、培地を発酵槽に戻すことにより、発酵ブロス中のC3〜C6アルコールの濃度はC3〜C6アルコールのさらなる生成に有害である濃度を下回って維持される。
【0155】
本発明のある方法は、発酵ユニットから発酵ビアスティルに培地を移す工程をさらに含む。この工程は、所望する場合、発酵が完了するように行うことができる。全ての発酵可能な炭水化物が消費されたとき、あるいは炭水化物の変換速度が低下して発酵を停止することが望ましいときに、発酵の完了が起こる。
【0156】
本発明の方法のある実施態様において予備処理する速度は、エタノールをそれが生成するときのプラントの場合と同じであり、及び/又は慣用的なエタノールプランと同じである。本明細書で用いる速度が「同じ」とは、全く同じである速度を含むが、(プラス又はマイナス)約25%以内の速度、約15%以内の速度、約10%以内の速度、約9%以内の速度、約8%以内の速度、約7%以内の速度、約6%以内の速度、約5%以内の速度、約4%以内の速度、約3%以内の速度、約2%以内の速度、約1%以内の速度を含む。従って、改装エタノールプラントの予備処理速度が1時間あたり約115メートルトンである場合、その速度の約25%以内の予備処理速度は1時間あたり約7.5トン〜1時間あたり約12.5トンの速度を含むであろう。予備処理速度とは、予備処理した供給原料が発酵ユニットに誘導される速度をいう。
【0157】
これらの方法のある他の実施態様において、発酵ユニットのサイクル時間は、エタノールを生成するときのプラントのものと同じであり、及び/又は慣用的なエタノールプラントのものと同じである。サイクル時間とは、接種材料を導入した時間乃至発酵槽からビアスティルに移すまでの時間をいう。たとえば、発酵槽の典型的なサイクル時間は約52時間である。
【0158】
ある実施態様において、改装プラントからのC3〜C6アルコール出力は、改装前のプラントのエタノール最大出力のC3〜C6アルコール当量(equivalent)の少なくとも約80%である。他の実施態様において、改装プラントのC3〜C6アルコール出力は、改装前のプラントのエタノール最大出力のC3〜C6アルコール当量の少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%である。
【0159】
アルコールプラントの最大出力はそのプラントによって生成されるアルコールの量の尺度であり、年間あたりに生成されるアルコールのガロンとして表現してもよいし、又は期間あたりの体積又は重量を測る他の単位で表現してもよい。プラントの出力は、特定のプラントのサイズ及び設計に依存する。「改装前のプラントのエタノール最大出力」とは、C3〜C6アルコールを生成するために改装する前のプラントで生成された又はプラントを技術設計したエタノール最大量をいう。
【0160】
上記の通り、エタノールの生成に用いる微生物は発酵ブロス中の高濃度のエタノールに対して耐性であるが、C3〜C6アルコールの生成に用いる微生物は一般に高濃度のC3〜C6アルコールに耐性ではない。有利なことには、本発明の方法を用いて、その特定のアルコールの理論的変換効率によってのみ制限されるエタノールの出力レベルに相当する出力レベルでC3〜C6アルコールを生成するようにエタノールプラントを改装することができる。グルコースのエタノールへの理論的変換効率は、重量ベースで、51%又は0.51である(しかし、実際には、いくらかのグルコースは細胞集団及びアルコール以外の代謝生成物の生成用に微生物によって用いられるので、実際の変換効率は理論的最大値より低い)。微生物によって用いられる発酵経路に依り、グルコースからプロパノールへの理論的変換効率は0.33〜0.44の範囲であることができ、ブタノールの当該当該理論的変換効率は0.27〜0.41の範囲であることができ、ペンタノールの当該理論的変換効率は0.33〜0.39の範囲であることができ、ヘキサノールの当該理論的変換効率は0.28〜0.38.の範囲であることができる。「C3〜C6アルコール当量」とは特定のC3〜C6アルコールの理論的変換効率とエタノールの理論的変換効率との比をいい、用いる特定の発酵経路に特異的である。従って、本明細書で用いる「エタノールのイソブタノール当量」(グルコース1分子がイソブタノール1分子、ATP2分子、及びCO2分子に破壊される経路について)は、0.401÷0.51=0.806である。たとえば、約100百万ガロン/年である改装前のプラントのエタノール最大出力を有するエタノールプラントを考慮する。本発明の方法を用いて、プラントを改装し操作して、年間あたり約80.6百万ガロン理論最大出力でブタノールを生成することが可能となる。しかし、エタノールの密度が0.7894であり、イソブタノールの密度が0.8106であることを考慮すると、イソブタノールの実際の理論的最大出力は年間約78百万ガロンである。年間あたりの正確なガロン数のは、密度の情報、理論収率及び/又は達成された実際の収率を用いて計算することができる。
【0161】
様々な実施態様において、エタノールプラントは、密度差の原因となる任意の所定のC3〜C6アルコールの理論最大出力の少なくとも約80%の出力で改装及び操作することができる。他の実施態様において、改装プラントのC3〜C6アルコール出力は、密度差の原因となる理論最大出力の少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%であり得る。
【0162】
様々な本発明の実施態様は、発酵培地中で微生物を培養する工程、及び発酵ブロスから回収する工程を含む。「発酵」又は「発酵プロセス」又は「微生物を培養する」とは、生物触媒が供給原料及び栄養分などの原料を含む培地中で培養され、該生物触媒が供給原料などの原料を生成物に変換するプロセスと定義される。本発明に好適な生物触媒及び関連する発酵プロセスは、2010年6月22日に出願された「Yeast Organism Producing Isobutanol at a High Yield」(非公開)とのタイトルの米国特許出願第12/820,505号;2009年11月22日に出願された「Engineered Microorganisms Capable of Producing Target Compounds under Anaerobic Conditions」とのタイトルの米国特許出願第12/610,784号(米国第2010/0143997号として公開);2009年12月23日に出願された「Engineered Yeast Microorganisms for the Production of One or More Target Compounds」(非公開)とのタイトルのPCT/US09/69390号;2010年6月1日に出願された「Methods and Compositions for Increasing Dihydroxyacid Dehydratase Activity and Isobutanol Production」とのタイトルの米国特許出願第61/350,209号;2010年2月12日に出願された「Increased Isobutanol Yield in Yeast Biocatalysts by Elimination of the Fermentation By-Product Isobutyrate」とのタイトルの米国特許出願第61/304,069号;2010年2月26日に出願された「Decreased Production of the By-Product Isobutyrate During Isobutanol Fermentation Through Use of Improved Alcohol Dehydrogenase」とのタイトルの米国特許出願第61/308,568号;2010年6月7日に出願された「Reduction of 2,3-Dihydroxy-2-Methylbutanoic Acid (DH2MB) Production in Isobutanol Producing Yeast」とのタイトルの米国特許出願第61/352,133号;2009年2月13日に出願された「Engineered Microorganisms for Producing Propano」とのタイトルの米国特許出願第12/371,557号(米国第2009/0246842号として公開);2010年1月6日に出願された「Fermentative Process for Production of Isopropanol at High Yield」とのタイトルの米国特許出願第61/292,522号;2007年12月21日に出願された「Butanol Production by Metabolically Engineered Yeast」とのタイトルの米国特許出願第11/963,542号(米国第2010/0062505号として公開);2007年12月3日に出願された「Engineered Microorganisms for Producing N-Butanol and Related Methods」とのタイトルの米国特許出願第11/949,724号(米国第2009/0155869として公開)に詳細に記載され、これらはその全体について参照により本明細書に援用する。生物触媒は、選択した供給原料を所望のC3〜C6アルコールに変換することができる任意の微生物であってもよい。生物触媒のさらなる態様は以下に論ずる。発酵可能な炭素供給源を含む任意の供給原料が本発明に好適である。
【0163】
発酵ブロス及び発酵培地とは、同義語である。明示しない限り、発酵ブロスは、微生物を含む発酵ブロス及び微生物を含まない発酵ブロスの両方を含むように解釈しなければならない。同様に、発酵ブロスは、ガスを含む発酵ブロス及びガスを含まない発酵ブロスの両方を含む。発酵培地中のガスは、以下に詳細に論じるように、発酵ブロス中で微生物によって生成されてもよいし、或いは発酵培地に導入されてもよい。ある実施態様において、ガス及びガスの少なくとも一部を含む発酵ブロスを発酵ブロスから除去する。ガス除去は、上記で詳細に論じている。
【0164】
発酵可能な炭素供給源を含む任意の供給原料は、微生物を培養する工程を含む本発明の実施態様に好適である。具体例には、デンプン、セルロース、及びヘミセルロースなどの多糖類を含む供給原料、スクロース、サトウキビジュース、及びスクロースを含有する糖蜜などの二糖を含む供給原料、及びグルコース及びフルクトースなどの単糖が含まれる。好適な供給原料には、デンプン農作物、例えば、トウモロコシ及びコムギ、サトウキビ及び甜菜、糖蜜及びリグノセルロース材料が含まれる。好適な供給原料には、藻類及び微小藻類も含まれる。所望する場合、供給原料に、粉砕、ミリング、タンパク質などの他の成分からの炭素供給源の分離、脱結晶化、ゼラチン化、タンパク質、糖化、及び化学及び/又は酵素触媒によって触媒される加水分解などの処理を行ってもよい。このような処理は、例えば同時の糖化及び発酵において発酵前に又は発酵と同時に行うことができる。
【0165】
本発明の発酵ブロスは、典型的には単一の液相を有するが、発酵されない不溶性の固体を懸濁した形態などで含み得るので均質である必要はない。発酵供給原料は、水溶解性が限定された化合物、及び任意選択で発酵性が限定された化合物又は発酵性ではない化合物を含み得る。たとえば、本発明の実施態様によれば、発酵供給原料は粉砕したトウモロコシであり、炭素供給源はそれに含有されるデンプンである。
【0166】
可能性として、デンプンはゼラチン化、液化、及び/又は糖化されるが、不溶性成分はデンプンであっても又は他のもの(例えば発酵されないタンパク質)であっても発酵液体中に存在し得る。他の実施態様によれば、発酵供給原料はリグノセルロース材料であり、炭素供給源は加水分解されたセルロース及び/又はヘミセルロースである。ここで再び、供給原料成分の幾らかは水溶解性が限定されるものである。これらの場合及び他の場合において、発酵液は、これに懸濁された固体とともに、アルコール水溶液から構成されてもよい。さらに、本発明の重要な態様によれば、それらのすべての場合において、単一の液相のみが発酵ブロスに存在する。
【0167】
発酵を含む本発明の様々な実施態様において、発酵工程は、本明細書に開示された様々な回収方法などの他のプロセス工程と同時に行うことができ、該プロセス工程は、C3〜C6アルコールの活性を増加する工程、及び供給原料を加水分解して発酵基質を調製する工程を含む。
【0168】
この方法では、加水分解工程は高分子炭水化物を発酵可能な生成物に破壊することができる任意の方法を含むことができる。従って、加水分解工程は、化学的又は酵素的に触媒される加水分解又は自動加水分解、及び糖化であってもよい。この方法では、加水分解及び発酵工程は、該方法の少なくともの一部の時間で同時に行うことができ、該方法のすべての時間で同時に行うことができ、或いは異なる時間で行うことができる。
【0169】
本発明のプロセスで使用される好適な微生物は、天然の微生物、遺伝子組み換え微生物、古典的技術によって開発された微生物、又はそれらの組み合わせから選択することができる。このような微生物は、限定するものではないが、微生物及び真菌(酵母を含む)を含むことができる。たとえば、好適な微生物は、クロストリジウム(Clostridium)種の微生物など、アルコールの生成することができる微生物を含むことができる。これらの具体例は、限定するものではないが、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・サッカロペルブチルアセトニカム(Clostridiumsaccharoperbutylacetonicum)、クロストリジウム・サッカロブチリカム(Clostridium saccharobutylicum)、及びクロストリジウム・ベイジェリンキ(Clostridium beijerickii)を含む。
【0170】
好適な微生物及び真菌は、炭水化物を加水分解することができるものを含み、アルコールを生成するように遺伝子組み換えを行うことができる。好適な微生物は、天然の微生物、遺伝子組み換え微生物、及び古典的技術によって開発された微生物又はそれらの組み合わせから選択することができ、上記で論じている。
【0171】
具体例には、限定するものではないが、クロストリジウム目(Clostridiales)(例えば、ブチリビブリオ・フィブリソルベンス(Butyrovibrio fibrisolvens))、バシラス目(Bacilliales)(例えば、バシラス・サーキュランス目(Bacillus circulans))、放線菌目(Actinomycetales)(例えば、ストレプトマイセス・セルロリティカス(Streptomyces cellulolyticus))、フィブロバクター目(Fibrobacterales)(例えば、フィブロバクター・サクシノゲネス(Fibrobacter succinogenes))、キサントモナス目(Xanthomonadales)(キサントモナス種)、及びシュードモナス目(Pseudomonadales)(例えば、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina))、並びにモノスカビ(Rhizopus)、サッカロミコプシス(Saccharomycopsis)、アスペルギルス(Aspergillus)、シュワンニオミセス(Schwanniomyces)、及びポリスポラス(Polysporus)などの真菌の微生物が含まれる。真菌は、好気性又は嫌気性で変換を行い得る。。嫌気性真菌の例は、限定するものではないが、ピロミセス(Piromyces)種(例えば、E2株)、オルピノミセス(Orpinomyces)種(例えば、オルピノミセス・ボビス(Orpinomyces bovis))、ネオカリマスティクス(Neocallimastix)種(ネオカリマスティクス・フロンテリス(N.frontalis))、Caecomyce種、アナエロミセス(Anaeromyces)種、及びルミノミセス(Ruminomyces)種が含まれる。上記のとおり、天然であろうと人工であろうとアルコールを生成することができる任意の微生物を用いることができ、本発明の方法は本明細書に列記した具体例に限定されるものではない。ある実施態様において、微生物は約20℃〜約95℃の温度で生存可能である。所定の温度又は温度範囲で生存可能である微生物とは、そのような温度への暴露に耐え、続いて同じ又は異なる条件で代謝生成物を成長させる及び/又は生成することができる微生物をいう。他の実施態様において、微生物は、温度耐性微生物である。「耐性耐性」とは、発酵ブロス中の高濃度の阻害剤下で低い阻害率を有する生物触媒の特性と定義する。「より耐性である」とは、同じ阻害剤に対するより高い阻害率を有する他の生物触媒より該阻害剤に対してより低い阻害率を有する生物触媒について記述する。たとえば、両方が阻害剤であるバイオ燃料前駆体に対して2%の耐性を有し、及び1時間あたりgCDWあたり1gの生成物の特定の生産性を有する2つの生物触媒A及びBは、A及びBについてそれぞれ、3%のバイオ燃料前駆体において1時間あたりgCDWあたり0.5gの生成物及び1時間あたりgCDWあたり0.75gの生成物の特定の生産性を発揮する。生物触媒Bは、Aより耐性である。「温度耐性である」とは、同じ温度でより高い阻害率を有する他の生物触媒よりも該所定の温度でより低い阻害率を有する生物触媒について記述する。
【0172】
「耐性(tolerance)」との用語は、所定の阻害剤濃度でその特定の生産性を維持する生物触媒の能力と定義する。「耐性である(tolerant)」とは、所定の阻害剤濃度でその特定の生産性維持する生物触媒について記述する。たとえば、2%の阻害剤の存在下で、生物触媒は、0〜2%で有するように生物触媒が特定の生産性を維持するならば、2%の阻害剤に対して耐性であるか、あるいは2%の阻害剤に対して耐性を有する。「温度に対する耐性」とは、所定の温度でその特定の生産性を維持する生物触媒の能力と定義する。
【0173】
ある実施態様において、微生物は、バッチ発酵サイクルの寿命(lifetime)にわたり、総計で、1時間あたり少なくとも約0.5g/LのC3〜C6アルコールの生産性を有する。ある実施態様において、生産性は、バッチ発酵サイクルの寿命にわたり、総計で、1時間あたり少なくとも約1、少なくとも約1.5、少なくとも約2.0、少なくとも約2.5、少なくとも約3、少なくとも約3.5、少なくとも約4.0、少なくとも約4.5、及び少なくとも約5.0g/LのC3〜C6アルコール生産性を有する。ある実施態様において、生産性は、バッチ発酵サイクルの寿命にわたり、1時間あたり約0.5g/L〜1時間あたり約5g/LのC3〜C6アルコールの範囲である。
【0174】
他の実施態様において、好ましい微生物は、共生成物又は副生成物を生じないか最小限として所望のアルコールを生成するものである。簡易かつ低コストの発酵培地を用いる微生物も好ましい。
【0175】
本発明のある方法は、水溶液の一部中のC3〜C6アルコールの活性を、少なくとも、該一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加する工程を含む。この工程は、あるC3〜C6アルコールが水溶液中で可溶ではなく、且つC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相の形成を可能とする条件を促進する。C3〜C6アルコールの活性を、少なくとも、水溶液中でのC3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加する工程とは、水溶液に関するC3〜C6アルコールの有効濃度が出発部分中のものより大きい、C3〜C6アルコールを含む組成物を形成するように水溶液の一部を加工処理することをいう。このような加工処理は、限定されるものではないが、親水性溶質の添加、水及びC3〜C6アルコールを含む気相の蒸留、逆浸透、透析、選択的な吸着、及び溶媒抽出を含む、様々なプロセス工程を含むことができる。このような工程は以下に詳述される。C3〜C6アルコールの活性とは、水溶液中でのC3〜C6アルコールの有効濃度をいう。水溶液中のC3〜C6アルコールの飽和とは、その水溶液の条件(例えば温度及び圧力)下でのC3〜C6アルコールの最大濃度をいう。本明細書で用いる発酵ブロスなどの物の「一部(portion)」とは、物全体(例えば発酵ブロス全体)又は物全体より小さい物全体のある部分(例えば、発酵ブロスのサイドストリーム)の両方を含む。溶液又は発酵ブロスの一部は、それが気相に変換される場合、該溶液又は発酵ブロスも含む。C3〜C6アルコールの活性は、温度、圧力、及び組成物に依存するであろう。発酵培地などの非理想溶液中の分子は互いに相互作用し、且つ異なるタイプの分子と区別して相互作用するので、種の活性は変化又は変更し得る。
【0176】
アルコール活性を増加する具体例は、蒸留、抽出、及び吸着などにより、水と比較してアルコールが選択的に除去されて、それぞれガス相、溶媒相、及び固体吸着剤相である別の相を形成する場合である。ガス相を濃縮し、溶媒から分離し、又は吸着剤から分離すると、活性アルコールが出発溶液よりも高い第2の液相が形成される。水活性を低減する例は、選択的な吸着、抽出、及び水の均一な冷凍などにより、アルコールと比較して水が選択的に除去され、別の相が形成される場合である。出発溶液中の水の活性を低減する結果となる。あるプロセスは両方を行い、アルコールの活性を増加し、且つ水の活性を低下する。たとえば、親水性の溶質が水溶液に添加された場合、それは水活性の低減及びアルコール活性の増加の両方をもたらす。
【0177】
本発明の実施態様によれば、C3〜C6アルコールの活性を増加する工程は、親水性の溶質を水溶液に添加する工程を含んでもよい。ある実施態様において、親水性の溶質は、水可溶性の炭素供給源であってもよい。たとえば、親水性の溶質を水性イソブタノール溶液に導入すると、親水性の溶質はイソブタノールよりも大きい親和性で溶液中の水と相互作用することができる。それにより、溶液中のイソブタノールの活性が増加する。水溶液中の化合物の活性係数は、その化合物の濃度が溶液と平衡状態にある気相中でどれ程であるかを示す指標であり、水中の化合物濃度の関数である。溶液中の化合物の活性は、化合物濃度及びその活性係数の産物である。たとえば、イソブタノール−水混合物中では、イソブタノールの活性係数は水より高い。したがって、水溶液と平衡状態にある気相中のイソブタノール濃度は溶液中よりも高い。
【0178】
水溶液が発酵ブロスであある実施態様において、親水性の溶質は、ブロス中の微生物とともにあるいはその除去後に、発酵槽中の発酵ブロス全体又は発酵槽から得られるストリームの一部に添加してもよい。親水性の溶質を添加するとは、溶液の一部中にすでに存在する親水性溶質の濃度を増加するか、あるいは溶液中にそれまでなかった親水性溶質を添加することをいう。このような濃度の増加は、外部添加によって行ってもよいし、あるいは又はさらに、濃度の増加は、溶液中にすでに存在している溶質を加水分解することによるなど、例えば、タンパク質を加水分解してアミノ酸を溶液に添加することにより、デンプン又はセルロースを加水分解してグルコースを溶液に添加することにより、及び/又はヘミセルロースを加水分解してペントースを溶液に添加することにより、溶液のin situ処理で行ってもよい。他の好ましい実施態様によれば、親水性溶質は、蒸留乾燥穀物及び可溶物(DDGS)など、栄養価値を有し且つ任意選択で発酵共生成物ストリーム中に最終的にあるものであってもよい。さらに又はあるいは、親水性溶質は発酵可能であることができ、水リッチ液相とともに発酵槽に移すことができる。
【0179】
親水性溶質の添加単独又は他のプロセス工程との組み合わせにより、十分な親水性溶質を添加して、第2の液相を形成することができる。必要な量は、アルコールの化学特性に依存し、典型的にはアルコール中の炭素原子数が増加するに従って少なくなり、第2級又は第3級アルコール及び分枝状のものと比較してノルマルアルコール及び直鎖状のものに対してより少なくなる。必要な量は、発酵液体中のアルコール濃度が増加するに従ってさらに少なくなり、おそらく、そこでの他の溶質の濃度が増加するに従ってさらに少なくなる。各場合で必要な量は、本発明に照らして実験により決定することができる。
【0180】
好ましい親水性溶質は、水溶液の部分水蒸気圧の低下に強い効果を有するものである。添加される親水性溶質は、塩、アミノ酸、水可溶性溶媒、糖、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0181】
好ましい水可溶性の炭素供給源は、水溶液の部分水蒸気圧の低減に強い効果を有するもの及び良好に発酵されるものである。添加した水可溶性の炭素供給源は、単糖、ニ糖、又はオリゴ糖などの炭水化物及びそれらの組み合わせであってもよい。このような糖は、ヘキソース、例えばグルコース及びフルクトース及びペントース(例えばキシロース又はアラビノース)及びそれらの組み合わせを含んでもよい。デンプン、セルロース、ヘミセルロース、及びスクロース又はそれらの組み合わせなど、このような炭水化物の前駆体も好適である。
【0182】
関連する実施態様において、親水性溶質は回収することができる。たとえば、希釈水溶液が発酵ブロスであり、発酵ブロス中のC3〜C6アルコールの活性を増加するために添加される親水性の溶質がCaClであるとき、アルコールリッチ及び水リッチ液相形成後に、CaClが水リッチ液相中に主に見出され、そこから回収することができる。他の例として、if希釈水溶液が発酵ブロスの一部であり、発酵ブロス中のC3〜C6アルコールの活性を増加するために添加される水可溶性の炭素供給源がグルコースである場合、グルコースが水リッチ液相中に主に見出され、これを発酵ブロスに戻して発酵のための炭素を提供することができる。
【0183】
ある実施態様において、該方法は、C3〜C6アルコール及び水が蒸発されてアルコールが枯渇した液相及びアルコールリッチな気相が形成されるような蒸留工程を含む。蒸留工程は、水溶液の温度を増加し、水溶液上の大気圧を低下し、又はそれらの組み合わせにより行うことができる。ある実施態様において、水溶液の一部がブロスの発酵の一部である場合、蒸留工程は発酵容器で行うことができる。
【0184】
これらの実施態様において、気相中のC3〜C6アルコール濃度は水溶液中より大きい。好ましい実施態様によれば、気相中のC3〜C6アルコール濃度は水溶液中の濃度より少なくとも約5倍、好ましくは約10倍、好ましくは約15倍、好ましくは約20倍、好ましくは約25倍、及び好ましくは約30倍大きい。気相は、不混和性のアルコールリッチ及び水リッチ(すなわちアルコールに貧しい)溶液を形成するように選択される条件などにおいて濃縮縮することができる。
【0185】
蒸留は、大気圧未満の圧力で、約大気圧で、又は大気圧超の圧力で行うことができる。本明細書において大気圧とは海抜ゼロでの大気圧をいい、別に明示しない限り、本明細書に示される圧力はすべて絶対圧である。好適な大気圧未満の圧力は、約.025bar〜約1.01bar、約0.075bar〜約1.01bar、及び約15bar〜約1.01barの圧力を含む。好適な大気圧超の圧力は、約1.01bar〜約10bar、約1.01bar〜約6bar、及び約1.01bar〜約3barの圧力を含む。
【0186】
大気圧未満の圧力で蒸留する実施態様において、温度は約20℃〜約95℃、約25℃〜約95℃、約30℃〜約95℃、又は約35℃〜約95℃であることができる。
【0187】
水溶液が発酵ブロスの一部であり、微生物を含む実施態様及び蒸留工程が蒸留容器で行われるさらなる実施態様において、発酵ブロスの一部は、蒸留容器への導入前では、約20℃〜約95℃、約25℃〜約95℃、約30℃C〜約95℃、又は約35℃〜約95℃の温度である。
【0188】
他の実施態様において、発酵ブロスの一部の温度を蒸留容器への導入後に所望の値にする。生存可能である微生物を用いることが好ましく、生存可能であり且つこれらの温度で生産力のある微生物を用いることがさらにより好ましい。
【0189】
任意選択により、蒸留工程後に、アルコールが枯渇した発酵ブロスの残留部分を蒸留容器から発酵容器に誘導することができる。任意選択により、アルコールが枯渇した発酵ブロスの残留部分を水、供給原料、及び/又は可能性として他の栄養分と混合して、さらなる発酵のための培地を形成することができる
【0190】
C3〜C6アルコールの活性を増加する工程が水及びC3〜C6アルコールを含む気相を蒸留し、且つ気相を濃縮することを含む場合、該方法は、希釈水溶液の一部を処理して水活性を低減する工程も含むことができる。様々な実施態様において、水活性を低減する工程は、蒸留工程前に又は蒸留工程と同時に水除去することを含む。処理工程は、水の選択的な除去、水の選択的な結合(binding)、又は水の選択的な注入を含むことができる。様々な実施態様によれば、処理工程は、親水性溶質の添加、炭素供給源の添加、逆浸透、透析、選択的吸着剤でのアルコール吸着、選択的な抽出溶媒(extractant)へのアルコール抽出、選択的な吸着剤での水の吸着、又は選択的な抽出溶媒への水の抽出を含むことができる。
【0191】
好ましい実施態様において、蒸留工程は、発酵容器に操作可能に連結することができるフラッシュタンク中で行われ、該プロセスは、培地を発酵容器からフラッシュタンクに循環させる工程及びフラッシュタンクから発酵容器に培地を循環する工程をさらに含むことができる。フラッシュは一段式蒸留であり、該蒸留では、フラッシュシステムから出る蒸気及び液体が互いに平衡状態にあり、各相の温度及び及び圧力はほぼ同一である。一方、蒸留は、順次一緒に並べられた一連のフラッシュ段階を含む。蒸留中に、すなわち蒸留カラムなどの多段階フラッシュシステムにおいて、上部から出る蒸気及び底部から出る液体はフラッシュ中よりも異なる温度で出る。
【0192】
他の実施態様によれば、該プロセスは、発酵容器中の圧力と比較して蒸留容器中で圧力を低下する工程を含む。断熱蒸発と組み合わせるこのような減圧により、蒸留容器内の発酵容器で生じた水溶液の発酵ブロス部分からの熱の除去が可能となる。あるいは又はさらに、該プロセスは、発酵容器中の蒸留容器からの水溶液上の圧力を増加する工程を含むことができる。このような圧力の増加は熱を生み出し、これは様々な時点でシステムを予備加熱するのに用いることができる。たとえば、熱は、フラッシュタンク、ビアスティル及び/又は蒸留カラム中で供給物を予備加熱するのに用いることができ、薄い蒸留廃液を濃縮してシロップにするために用いられる蒸発器中で用いることもできる。
これらの成分は、以下に詳細に論じる。
【0193】
好ましい実施態様において、C3〜C6アルコールの活性を増加する工程が水及びC3〜C6アルコールを含む気相を蒸留する工程を含む場合、混合蒸気は共沸組成物を含む。分子力が2つ以上の分子種を新しい蒸気又は/液体種として挙動させるときに、共沸物が形成される。共沸組成物の「ピンチポイント(pinch point)」は混合物の純粋な成分への蒸留を妨げるので、共沸物は一般に化学加工処理産業による制限とみられる。蒸留プロセスから純粋な成分を生成することに代えて、共沸物はそれ自体、蒸留カラム上部の共沸組成物として、最小沸点の共沸物として、又は蒸留カラムの底部から最大沸点の共沸物として現れる。
【0194】
発酵生成物が水とともに最大沸点の共沸物を形成する場合、非共沸物結合水のすべてが塔頂で蒸発され、蒸留されなければならない。発酵ブロス内の生成物は、典型的には希釈物である。結果として、最大沸点の共沸物が形成される場合、過剰の非結合水を沸騰して除去するのに必要なエネルギー量は大きな熱充填量となり、蒸発及び蒸留濃縮プロセスをしばしば非経済的にする。さらに、最大沸点の共沸物は純粋な種の沸点を上回る温度で発生し、蒸留システムの底部の温度を上昇させる。結果として、最大沸点での底部生成物は純粋な種よりも高い熱履歴を有する。この高い温度熱履歴は、発酵の主生成物及び共生成物の価値を下げ得る。典型的には供給成分として用いられる蒸発乾燥穀物及び可溶物(DDGS)は、高熱へ暴露により価値が低下し、且つ栄養価値を損い得るそのような共生成物の一例である。
【0195】
最小沸点共沸物は、該共沸物の活性係数が1超であるのでポシティブな共沸物として既知である。最大の沸点共沸物は、活性係数が1未満であるのでネガティブな共沸物ともいう。活性係数の大きさは、共沸部分の非理想の活性の程度を示す。この非理想及び共沸物の分離の困難性を研究した。活性係数は一定ではないが、水中の化合物濃度の関数である。結果として、共沸物組成物の溶液沸点は、成分濃度が変化するに従って変化する。結果として、多段式蒸留カラムで圧力の低下が増すことは、同じ塔頂真空レベルにおいてより高温のプロフィールとなる。
【0196】
好ましい実施態様によれば、C3〜C6アルコールの水溶液は最小沸点共沸物を形成する。関連する好ましい実施態様によれば、混合蒸気中のC3〜C6アルコール濃度は、蒸留用に選択された圧力において最小沸点共沸物中のアルコール濃度に実質的に等しい。特に好ましいある実施態様では、水溶液が部分水蒸気圧に影響を及ぼすアルコールに加えて他の溶質を含むような場合において、混合蒸気中のC3〜C6アルコールの濃度は、最小沸点共沸物中のアルコール濃度より大きい。
【0197】
ある共沸物は広範な操作圧力下で安定的であることが知られている一方、他の共沸物系は低圧及び高圧によって「破壊され(broken)」得る。たとえば、エタノール−水共沸物は70torr未満の圧力で破壊される。真空下で破壊され得る共沸物について、真空源で吸引するためにより高い真空が必要となるほどに蒸留カラム中での圧力低下が十分に大きいことを真空蒸留カラムが必要とすることに起因して、蒸留カラムの使用が限定されることがある。
【0198】
たとえば真空蒸留カラム供給圧力を150mmHgに維持しようとするには、真空ポンプが適切な真空レベルを維持することを確保するようにカラム中の圧力低下が非常に小さいことが必要となる。複数トレイ内の真空カラム中の圧力低下を低くするために、蒸留トレイ上において小さな液体高さが必要となる。カラム中の低い圧力低下及び低い液体高さは、カラム直径を増加することによりカラムの資本コストを一般に増大させる。
【0199】
ある実施態様において、C3〜C6アルコールの活性を増加する工程は透析を含む。透析は、溶質の拡散及び半透過性膜を介する液体の限外濾過の原理で機能する。水溶液から水を選択的に除去する任意の膜分離系が本発明の方法に好適である。好ましい実施態様によれば、透析は2つ以上の区画を含む系で行う。アルコール水溶液を一方に導入し、この溶液由来の水を膜を介して選択的に他方に移す。好ましい実施態様によれば、水移送は浸透圧によって生じる。水受容区画は、CaCl又は炭水化物などの親水性の化合物又はこのような化合物の濃縮溶液を含む。濃縮溶液は水受容区画で形成される。その溶液は、溶質又はその濃縮溶液を再生するように又は他の用途のために様々な実施態様により処理される。再生は、水蒸留などの既知の手段によって行うことができる。溶質が炭水化物又は発酵可能な炭素の他の供給源である場合、該溶液を用いて、発酵可能物を発酵工程に提供することができる。
【0200】
ある実施態様において、C3〜C6アルコールの活性を増加する工程は逆浸透を含む。
逆浸透では、水溶液を第1の区画で圧力下で逆浸透膜と接触させることにより、水は膜を介して第2の区画に選択的に移送する一方、アルコールは第1の区画に残留する。
第2の区画への選択的な水移送の結果として、第1の区画中の液体中のアルコール濃度(及び活性)は増加し、好ましくは飽和に達し、これにより第2の相が第1の区画中で形成される。この実施態様によれば、該区画は、一方はアルコールが飽和した水性相であり、他方は水が飽和したアルコール溶液である、2つの液相を含む。
【0201】
ある実施態様において、C3〜C6アルコールの活性を増加する工程は、溶媒抽出を含む。溶媒抽出において、水溶液を他の液相(溶媒又は抽出溶媒)と接触させ、ここで、水及びアルコールの少なくとも1つは完全に混和性ではない。2つの相を混合し、次いで沈降分離する(settle)ことを可能にする。一実施態様によれば、C3〜C6アルコールの活性を増加する工程は、アルコール選択的な抽出溶媒へのC3〜C6アルコールの抽出を含む。「アルコール選択的な抽出溶媒」とは、水よりもアルコールを好み、抽出溶媒中のアルコール/水の比が残留水溶液中よりも大きくなる抽出溶媒を意味する。従って、アルコール選択的な抽出溶媒又は溶媒は、アルコールに対して選択的であり(同様に又はアルコールよりも疎水性であり)、アルコールは優先的に抽出溶媒又は溶媒に移送され、アルコールを含む抽出溶媒又は溶媒(抽出剤ともいう)を形成する。ある好ましい実施態様において、アルコール選択的な溶媒は、酢酸ブチル、リン酸トリブチル、デカノール、2−ヘパノン、又はオクタンであってもよい。他の実施態様において、C3〜C6アルコールの活性を増加する工程は、水選択的な抽出溶媒への水の抽出を含む。「水選択的な抽出溶媒」とは、アルコールより水を好み、抽出溶媒中のアルコール/水の比が残留水溶液中よりも低くなる抽出溶媒を意味する。従って、水選択的な抽出溶媒又は溶媒は水に選択的であり(アルコールより親水性である)、その結果、水は水選択的な抽出溶媒又は溶媒に優先的に移送される。
【0202】
好ましい実施態様において、アルコール選択的な溶媒は、酸性のアミンをベースとする抽出溶媒であることができる。このよう抽出溶媒は、アミンを希釈剤と混合し混合物を酸と接触させることによって調製することができる。抽出溶媒を形成するのに好適なアミンは、第1級、第2級、第3級、及び第4級アミンを含み、好ましくは、第1級、第2級、第3級アミンを含む。好適なアミンはまた、遊離形態及び塩形態の両方において(すなわち酸がそれらに結合したときに)水可溶性である。好ましくはアミン上の炭素原子の総計/合計数は、少なくとも20個である。脂肪族及び芳香族アミンの両方が好適であり、脂肪族アミンが好ましい。希釈剤は、少なくとも約60℃、好ましくは少なくとも約80℃の沸点を有する炭化水素又は他の非反応性の有機溶媒であることができる。酸は、3以下のpKa(−log解離定数)を有するもの等の強酸であってもよく、鉱酸又は有機酸であり得る。一例では、アミンはトリオクチルアミンであってもよく、酸は硫酸であってもよく、希釈剤はデカンであってもよい。酸は抽出されて(アミンに結合して)、抽出溶媒を形成する。
【0203】
ある実施態様において、C3〜C6アルコールの活性を増加する工程は、選択的な吸着剤上でのC3〜C6アルコール又は水の吸着を含む。吸着では、水溶液をアルコール又は水のいずれかに対してより大きい選択性を有する選択的な吸着剤と接触させる。一実施態様において、C3〜C6アルコールの活性を増加する工程は、アルコール選択的な吸着剤上でのC3〜C6アルコールの吸着を含む。「アルコール選択的な吸着剤」とは、水よりもアルコールを好み、吸着剤上のアルコール/水の比が残留水溶液よりも大きくなる吸着剤を意味する。他の実施態様において、C3〜C6アルコールの活性を増加する工程は、C3〜C6アルコールの活性を増加する工程は水選択的な吸着剤上での水の吸着を含む。「水選択的な吸着剤」とは、アルコールよりも水を好み、吸着剤上のアルコール/水の比が残留水溶液より低くなる吸着剤を意味する。従って、水性相を水選択的な吸着剤と接触させて、水を保持する吸着剤を形成され、水溶液はC3〜C6アルコールリッチに富む。様々な実施態様によれば、水吸着剤は、親水性であり、水素結合を形成することができる表面機能を有し、及び/又は水分子のサイズに好適な孔を有する。ある実施態様において、吸着剤は固体であってもよい。好ましい実施態様によれば、粉砕したトウモロコシなどの発酵供給原料が吸着剤であってもよい。たとえば、供給原料を水溶液に接触させて、そこから選択的に水を吸着してもよい。ある実施態様において、吸着剤はモレキュラーシーブであってもよい。
【0204】
ある方法は、C3〜C6アルコールの活性を増加するために処理した水溶液部分からC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相を形成する工程をさらに含む。本明細書で用いる「アルコールリッチ液相」とは、水に対するアルコールの比が水溶液部分中での比より大きい液相を意味する。「水リッチ液相」とは、水アルコールに対する水の比がアルコールリッチ液相中での比より大きい液相を意味する。水リッチ相は、以下でアルコールに乏しい層ともいう。2つの相を形成する工程は活性(active)であってもよい。たとえば、ある実施態様において、形成工程は、濃縮後に2つの相を形成する蒸留された気相を濃縮する工程を含んでもよい。あるいは又はさらに、水溶液の処理部分を冷やす又は冷却することにより、2つの相を形成することができる。2つの相を活発に形成する他の工程は、相分離を促進するための形状とされた設備を用いる工程を含むことができる。相分離は、液体−液体分離器を含む様々なユニット操作で行うことができ、液体/液体分離器が相及び水ブーツの間の特定の重力差、遠心分離器でのG力分離、又は液体−液体遠心分離器を利用することを含む。溶媒抽出プロセスに用いられるミキサー−セトラーユニットなどのセトラー(settler)も好適である。ある実施態様において、形成工程は受動的(passive)であってもよく、単にC3〜C6アルコールの活性を少なくとも飽和の該活性に増加する前工程の自然な結果であってもよい。
【0205】
アルコールリッチ液では、水に対するC3〜C6アルコールの濃度の比が出発部分でのものより効果的に大きい。水リッチ相では、水に対するC3〜C6アルコールの濃度の比がアルコールリッチ液相でのものより効果的に小さい。水リッチ相は、アルコールが貧しい相といってもよい。
【0206】
ある実施態様において、C3〜C6アルコールはプロパノールであり、アルコールリッチ相中の水に対するプロパノールの重量比は約0.2より大きく、約0.5より大きく、又は約1より大きい。ある実施態様においてC3〜C6アルコールはブタノールであり、アルコールリッチ相中の水に対するプロパノールの重量比は約1より大きく、約2より大きく、又は約8より大きい。ある実施態様において、C3〜C6アルコールはペンタノールであり、アルコールリッチ相中の水に対するプロパノールの重量比は約4より大きく、約6より大きく、又は約10より大きい。
【0207】
所定の相に対する濃度因子(concentration factor)又は富化因子(enrichment factor)は、その相中での水に対するアルコールの比を希釈水溶液中の水に対するアルコールの比で割ったものとして表することができる。従って、たとえば、アルコールリッチ相の濃度又は富化因子は、アルコールリッチ相中のアルコールの/水の比を水性希釈溶液中の比で割ったものとして表わすことができる。
【0208】
ある実施態様において、C3〜C6アルコールリッチ相中の水に対するC3〜C6アルコールの比は、発酵ブロス中の水に対するC3〜C6アルコールの比より、少なくとも約5倍、少なくとも約25倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、又は少なくとも約300倍大きい。
【0209】
該方法は、C3〜C6アルコールリッチ相を水リッチ相から分離する工程をさらに含む。2つの相を分離するとは、2つの相の物理的分離をいい、除去、スキミング(skimming)、ポアアウト(pouring out)、デキャンティング(decanting)、又は一方の相を他方から移すの他の手段を含むことができ、液相分離について当業界で知られている任意の手段によって行ってもよい。
【0210】
ある実施態様において、該方法は、C3〜C6アルコールリッチ相を冷却して、アルコールリッチ相中の水に対するC3〜C6アルコールの比を増加する工程をさらに含む。
【0211】
ある実施態様において、該方法は、アルコールリッチ相からC3〜C6アルコールを回収することをさらに含む。回収とは、アルコールリッチ相からC3〜C6アルコールを単離することをいう。回収は、アルコールリッチ相中のC3〜C6アルコールの濃度を富化又は増加することを含む。様々な実施態様において、この工程は、C3〜C6アルコール及び水を含む第1相及びC3〜C6アルコールを含む第2相(該第2相中のC3〜C6アルコールに対する水の比は第1相中のものより小さい)を生成するため、蒸留、透析、水吸着(例えばモレキュラーシーブの使用など)、溶媒抽出、水に不混和性の炭化水素液体との接触、及び親水性化合物との接触からなる群から選択されるプロセスを含んでもよい。好ましい実施態様において、第2の相は少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99重量%のC3〜C6アルコールを含む。本明細書で用いる水に不混和性の液体とは、約1重量%未満の水に混和性を有することをいう。
【0212】
蒸留及び透析の方法はC3〜C6アルコールの活性を増加する工程に関して上記で論じ、同様のプロセスを用いてC3〜C6アルコールリッチ相からC3〜C6アルコールを回収することができる。C3〜C6アルコールリッチ相からC3〜C6アルコールを回収するために水吸着の使用に関して、アルコールリッチ相から選択的に水を吸着する吸着剤とアルコールリッチ相とを接触させる。水保持吸着剤が形成され、アルコールリッチ相はさらにC3〜C6アルコールに富む。様々な実施態様によれば、水吸着剤は親水性であり、水素結合を形成することができる表面機能を有し、及び/又は水分子のサイズに対して好適な孔を有する。ある実施態様において、吸着剤は固体あってもよい。好ましい実施態様によれば、粉砕したトウモロコシなどの発酵供給原料が吸着剤であってもよい。たとえば、供給原料をC3〜C6アルコールリッチ相と接触させ、そこから水を選択的に吸着してもよい。ある実施態様において、吸着剤はモレキュラーシーブシーブであってもよい。
【0213】
溶媒抽出を用いて、C3〜C6アルコールリッチ相からC3〜C6アルコールを回収することもできる。溶媒抽出では、アルコールリッチ相を他の液相(溶媒)と接触させるが、水及びアルコールの少なくとも1つは完全に混和性ではなない。2つの相を混合し、次いで沈降分離することができる。一実施態様によれば、溶媒は水に選択的であり(アルコールより親水性であり)、水は優先的に溶媒相に移り、他方の相中の水に対するアルコールの比は増加する。他の実施態様によれば、溶媒はアルコールに選択的である(同様に又はアルコールより疎水性である)。ある好ましい実施態様において、アルコール選択的な溶媒は、酢酸ブチル、リン酸トリブチル、デカノール、2−ヘパノン、又はオクタンであってもよい。アルコールは、優先的に溶媒に移る。以下の工程では、アルコールはアルコールリッチ相のものと比較して水に対するアルコールの比がより高い形態で溶媒から分離される。
【0214】
水に不混和性の炭化水素液体との接触を用いて、C3〜C6アルコールリッチ相からC3〜C6アルコールを回収することもできる。このような液体は疎水性溶媒であり、疎水性溶媒に関して上述したように作用し、すなわちアルコールリッチ相からアルコールを抽出する。このような炭化水素の例は、ガソリン、原油、フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)材料、及びバイオ燃料を含む液体である。
【0215】
親水性の化合物との接触を用いて、C3〜C6アルコールリッチ相からC3〜C6アルコールを回収することもできる。この回収方法は、水活性を増加又は低下するために親水性の化合物の使用について上述したものと同様である。
【0216】
さらに本発明の実施態様において、該方法は、活性を増加する工程後に、発酵ブロスなどの希釈水溶液の残留部分を発酵容器に誘導する工程(又は輸送する工程)を含むことができる。この実施態様において、希釈水溶液の残留部分は不純物を含むことができ、残留部分を発酵容器に誘導する前にプロセスは残留部分の少なくともの一部から不純物の少なくとも一部を除去する工程をさらに含む。このような不純物は、たとえば、エタノール、酢酸塩、アルデヒドなどのブチルアルデヒド、及び短鎖脂肪酸であることができる。ある実施態様において、希釈水溶液は不純物を含むことができ、C3〜C6アルコールリッチ液相中のC3〜C6アルコールに対する不純物の比は水リッチ相中の比より大きい。ある実施態様において、C3〜C6水リッチ液相中のC3〜C6アルコールに対する不純物の比はアルコールリッチ相中の比より大きい。
【0217】
さらに本発明の実施態様において、C3〜C6アルコールリッチ相をさらに加工処理して相の価値又は有用性を増大させる。さらなる加工処理の他の実施態様は、米国特許出願公開第20090299109号に開示され、その全体について参照により援用する。
たとえば、C3〜C6アルコールリッチ相は、(i)C3〜C6アルコールリッチ相から実質的に純粋なC3〜C6アルコールを蒸留することによって、(ii)C3〜C6アルコールリッチ相からC3〜C6アルコールの共沸物を蒸留することによって、(iii)C3〜C6アルコールリッチ相をC3〜C6アルコール選択的な吸着剤と接触させることによって;又は(v)C3〜C6アルコールリッチ相を水に不混和性の炭化水素液体と合わせることによって、さらに加工処理することができる。C3〜C6アルコールリッチ相から実質的に純粋なC3〜C6アルコールを蒸留する場合、実質的に純粋なC3〜C6アルコールは低い割合の不純物を有する(C3〜C6アルコールに対する不純物の比が低いことによって反映される)。たとえば、実質的に純粋なC3〜C6アルコール中のC3〜C6アルコールに対する不純物の比は、約5/95未満、約2/98未満、又は約1/99未満であることができる。あるいは、実質的に純粋なC3〜C6アルコールの水含有量は、約5重量%未満、約1重量%未満、又は約0.5重量%未満であることができる。
【0218】
C3〜C6アルコールリッチ相を水に不混和性の炭化水素液体と合わせる場合、合わせた結果、単一の均一な相を形成することができる。あるいは、C3〜C6アルコールリッチ相を水に不混和性の炭化水素液体と合わせる場合、合わせた結果、軽相及び重相を形成することができ、軽相中の水に対するC3〜C6アルコールの比は重相中のものより大きい。該方法の一実施態様によれば、炭化水素液体はガソリンなどの燃料である。関連する実施態様によれば、C3〜C6アルコールに富む燃料は、燃料をC3〜C6アルコールリッチ相と合わせることによって形成され、水をさらに含む。C3〜C6アルコールを合わせた結果として、選択的に燃料相に移り、蒸気燃料が形成されるが、アルコールリッチ相分離に最初に含まれる水の大部分は水リッチ重相として分離し、これは燃料から分離される。
【0219】
C3〜C6アルコールを生成するこれらの方法の代替の実施態様において、発酵培地中で微生物を培養し、C3〜C6アルコールを生成する工程を含む。培養工程は、上記で詳細に記載している。該方法は、発酵培地の一部中のC3〜C6アルコールの活性を増加する工程、及び発酵培地の一部を蒸留して水及びC3〜C6アルコールを含むを気相及び液相を生成する工程をさらに含む。活性を増加し蒸留する工程は、他の本発明の実施態様に関して上記で論じている
【0220】
該方法は、蒸留工程から得られる液相(枯渇した液相)を発酵培地に誘導する工程をさらに含む。好ましい実施態様において、C3〜C6アルコールの活性が増加した発酵培地の一部は、枯渇した液相中に残留する微生物を含み、微生物によるC3〜C6アルコールのさらなる生成のために発酵培地に戻される。ある実施態様において、液相は不純物を含み、該方法は、液相を発酵培地に誘導する前に液相の少なくともの一部から不純物の少なくとも一部を除去することををさらに含む。この方法の実施態様において、発酵培地の一部中の水に対するC3〜C6アルコールの比は、約10/90(w/w)未満、約7.5/92.5(w/w)未満、約5.0/95(w/w)未満、約2.5/97.5(w/w)未満、約2/98(w/w)未満、約1.5/98.5(w/w)未満、約1/99(w/w)未満、又は約0.5/99.5(w/w)未満である。
【0221】
蒸留工程は、断熱性又は等温性であってもよい。断熱蒸留では、大きくない熱移送が蒸留システム及び周囲の間で起こり、システムの圧力が一定に保持される。等温蒸留では、熱移送が蒸留システム及び周囲の間で可能となり、システムの温度が一定に保持される。
【0222】
この方法の様々な実施態様において、希釈水溶液からの蒸気へのアルコールの富化は、少なくとも約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、又は約15倍である。「富化」との用語は、濃縮された蒸気中のアルコールの/水の比を水性希釈溶液中のアルコールの/水の比で割ったものをいう。
【0223】
他の本発明の実施態様は、水溶液を酸性のアミンをベースとする抽出溶媒と接触させる工程を含む、水溶液からのC3〜C6アルコールの抽出方法である。酸性のアミンをベースとする抽出溶媒は、上記のとおり、有機アミン溶液を酸性化することによって形成することができる。水溶液を抽出溶媒と接触させる際、酸性のアミンをベースとする抽出溶媒を水溶液と混合することによって抽出を行う。C3〜C6アルコールは、接触後に形成する抽出溶媒相から回収することができる。
【0224】
本発明の様々な態様は、以下に示す実施例に詳細に記載される。しかし、これらの実施例は例示のために提供され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に引用した各公開公報及び参照文献は、その全体について本明細書に援用する。本発明の様々な実施態様は詳細に記載する一方で。それらの実施態様の変更及び適合は当業者が行うであろうことは明らかである。しかし、このような変更及び適合は、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内にあると理解する。
【実施例】
【0225】
実施例1
この実施例は、実験スケール乃至1MM GPY(年間あたりのガロン)実証スケールまでの本発明によるイソブタノール生成プロセスのスケールアップを例示している。イソブタノールを生成するために国際公開第2008/098227号(Gevo2525)の教示に従って代謝的に工学操作された大腸菌(E.coli)を10,00OLの生成発酵槽を接種するための3つの発酵槽のシードトレイン(seed train)により増殖させた。イソブタノールを真空蒸発により培地から除去し、直接接触濃縮及び液体−液体分離により回収した。
【0226】
Gevo2525を3段階のシードトレインを介して増殖させ、各段階は3℃及びpH=7で制御した。第1段階では、3つの3L振盪フラスコ中で培養物を6.5の平均最適密度(OD6oonm)に成長させた。第2の段階では、1つの50L発酵装中で、培養物をOD600nm=7.1に成長させた。最終段階では、1つの500L発酵槽中で、OD600nmは28(1リットルあたり約8.1gの細胞乾燥重量)に達した。全体積500Lの発酵槽を用いて、10,000Lの生成発酵槽に接種した。Gevo2525では、1OD600nmは1リットルあたり約0.45gの細胞乾燥重量に相当する。
【0227】
生成発酵槽での培養は、最初は気性条件で成長させた。接種後1時間して、OD600nm=2でIPTGを添加して0.1mMの濃度とし、微生物に工学操作して導入した酵素の生成を化学的に誘導した。約8時間後、OD600nm=12(1リットルあたり約5.4gの細胞乾燥重量の細胞密度)の細胞濃度及び6.2g/Lのイソブタノール濃度で、発酵槽にアルゴンを散布し、嫌気性条件を確保した。ガス散布により、アルコール生成物を含む発酵ブロス由来の揮発化合物もストリッピングされた。オフガス中のアルコール生成物は、それをオフガスから濃縮することにより回収することができる。
【0228】
生成相中に発酵槽のイソブタノール濃度を阻害レベル以下に維持するために、発酵ブロス又は培地を加熱し、少なくとも幾らかのガスを除去するためのスカルパーを介して発酵ブロスからフラッシュタンクに送り、アルコール生成物の少なくとも一部を回収した後、発酵槽に戻した。スカルパーへの吸気口ストリームを30℃〜36℃で加熱し、スカルパーを4psiaで操作する一方、フラッシュタンクを0.5psiaで操作した。連続して配列した2つの蒸気排出装置によって、0.5psia圧力を生じさせた。スカルパーは溶解したCOの大部分を発酵槽ブロスから除去し、フラッシュタンク中の濃縮可能でない充填物を低減した。Aspen Plus(登録商標)2006.5(Aspen Technology,Inc.、Burlington、MA)モデリングにより、スカルパーに入ったCOの75%が36℃及び4psiaで除去されたと評価した。フラッシュタンク中での残留時間は、平衡に達し、且つ一通過あたり(per pass)14%のブロスイソブタノールを除去するのに十分なものとした。0.5psiaでは、ブロスでの0.5重量%と比較して、蒸気は11重量%イソブタノールであった。揮発化合物の阻害レベルが相成長中に起こる場合、発酵ブロスは、フラッシュタンクを介して、それを除去するためのプロセスのその段階中に再循環することができるであろう。
【0229】
フラッシュタンク後、残留した発酵培地を生成発酵槽に再循環した。再循環ループ(発酵槽−予備加熱−スカルパー−フラッシュタンク−発酵槽)を50gpmで実施した。
【0230】
フラッシュタンクは、図4に例示し及び本明細書に記載する通り、フラッシュタンク/直接接触濃縮器システムの一部とした。システムのフラッシュタンク部分で生成された蒸気はシステムの直接接触濃縮器部分に運搬され、濃縮速度を増加するためにアルコール生成物を含む再循環される濃縮物の細かいスプレーに暴露した。蒸気を濃縮するために用いた再循環される濃縮物を熱交換器により最初に冷却した。細かいスプレーとして用いなかった濃縮物の残りを液体−液体分離器に送った。
【0231】
発酵槽での生成を完了した後、使用済みブロスをビアスティルに送った。使用済みブロス中のiBuOHをビアスティルで回収し、生成微生物を不活性化した。
【0232】
図10を参照して、発酵槽ブロス中及びフラッシュ後ブロス中のイソブタノール濃度を例示する。フラッシュタンクは、ブロスが発酵槽に戻される前に、ブロスiBuOHの約15%〜20%を除去したことが分かる。
【0233】
イソブタノール生成を、グルコース消費に基づく嫌気性相について計算し、グルコース1gあたり0.41gイソブタノールの理論収率の90%であるとみなされ、グルコースが汚染微生物によって消費された主な副生成である乳酸塩を生成したことが原因であった。図11は有効力価を示しており、生産性は従前のベンチスケール実験に相当する。この発酵の実施及び回収の結果を以下の表1に示す
【表1】

【0234】
実施例2
この実施例は、本発明による高生産性(2.8g/L−hr)の発酵操作をシミュレートするために、溶液からのイソブタノールの除去、回収、及び精製を例示している。2重量%のイソブタノール溶液から、37.4kg/hrの除去速度を達成された。2つのカラムシステムを用いた蒸留による回収イソブタノールを精製すると、ブタノール生成物中の水分含有量が1%未満であった。この実施例の方法フローを図12に示す。
【0235】
45,000Lの運転体積発酵槽230に13,400Lの水を充填した。イソブタノールを238を介して添加し、2重量%の最終濃度とした。溶液を加熱し、発酵ブロス中の少なくとも幾らかのガスを除去するためにスカルパーを介して送り、232を介してフラッシュタンク/直接接触濃縮器システム234のフラッシュタンク部分に送り、アルコール生成物の少なくとも一部を回収した後に、236を介して発酵槽を戻した。スカルパー(示していない)への吸気口ストリームは3℃〜36Cで加熱した。スカルパーを4psiaで操作し、フラッシュタンクを0.5psiaで操作した一方、連続した2つの蒸気排出装置によって0.5psiaの圧力を発生させた。スカルパーは、発酵槽ブロスから溶解COの大部分を除去し、フラッシュタンク中の濃縮可能でない充填物を低減した。Aspen Plus(登録商標)2006.5モデリングにより、スカルパーに入ったCOの75%が36℃及び4psiaで除去されたと評価された。フラッシュタンク中の残留時間は、平衡に達し、一通過あたり15%のイソブタノールを除去するのに十分なものとした。0.5psiaにおいて、溶液での2重量%と比較して、蒸気は41重量%であった(モデリングシステムに基づく)。フラッシュタンクを介した再循環ループを55gpmで実施し、1.1体積/時間の発酵槽回転速度が得られた。追加のイソブタノールを34kg/hrで発酵槽に供給し、活発な発酵によるイソブタノール生成をシミュレートした。
【0236】
41重量%イソブタノール蒸気を、フラッシュタンクフラッシュタンク/直接接触濃縮器システム234の濃縮物側で噴霧される液体と直接接触させることによって濃縮した。濃縮物を240を介して液体−液体分離器242に供給し、イソブタノールリッチ軽相及び水リッチ重相を分離した。重相は、250を介して液体−液体分離器242に送られるイソブタノールを含む濃縮された塔頂蒸気(overhead vapor)とともに、246を介して10psiaで操作したストリッパーカラム248に供給した。液体−液体分離器からの軽相生成物を、254を介して4〜5psiaで操作した精留塔カラム252に送った。水及びアルコールを含む精留塔カラムからの塔頂蒸気を258を介して液体−液体分離器242に送った。精留塔カラムの底部で生成された精製イソブタノールを256を介して回収し、分析した。このシミュレーションの結果を以下の表2に示す。
【表2】

【0237】
実施例3
この実施例は、本発明に従って真空除去と合わせた場合における生成相中に発酵ブロス中のエアレーションを増加させた生成の利点を例示する。2LのDasGip発酵槽を400mlフラッシュ容器とともに用いた。発酵槽を酵母の生成微生物を用いて、30℃、pH=6.0、1.1Lの初期体積で操作した。フラッシュ容器を0.7〜0.9psiaの真空レベルで36C℃で操作し、ブロスのイソブタノール力価が約3g/Lになったときに発酵ブロスをフラッシュ容器に再循環した。酢酸塩のレベルが増加したとき、約24〜48時間毎に、発酵培地をフレッシュな培地に換えた。
【0238】
発酵槽を、接種後の最初の14時間、微生物の密度を増加するためにl5〜16mM/L−hに達する酸素移動速度(「OTR」)で好気性条件下で実施し、アルコールの生成物の生成はほとんどなかった。生成を増加するために、エアレーションを低下させて5mM/l−hの標的OTRとし、0.24g/L−hの体積生産性に達した。全体積生産性は、217時間において0.24g/L−hの最大速度から349時間において0.21g/L−hに安定して低下した。次いで、発酵期間中にエアレーションを増加させて約8mm/l−hのOTRとし、生産性は再び0.24g/l−hに達した。
【0239】
この実施例は、生成相中での発酵中にOTRを増加させることによって生産性を増加させることができることを例示している
【0240】
実施例4
この実施例は、断熱フラッシュを用いた発酵ブロスからのイソブタノールの除去及び回収を例示している。Aspen Plus(登録商標)2006.5を用いて、フラッシュ容器からポンプ吸引される発酵ブロス及びフラッシュ容器にポンプ吸引され、且つ35.0℃及び37.0℃において様々なフラッシュ圧力でフラッシュされる、発酵ブロスの平衡データを作成した。Aspen Plus(登録商標)内の非ランダムな2つの液体(NRTL)を用いた。システムを図14に図示する。
【0241】
発酵槽からのストリームを1atmの操作絶対圧で固定し、0.9789の水、0.0011の二酸化炭素、及び0.0200のイソブタノールの組成物(質量分画)を4psiaで断熱的に操作されるスカルパー中に1000kmol/hr基準でフローするとみなした。以下の表3に示すこれらの条件の結果は、フラッシュシステムを介する一通過あたり除去されるイソブタノールの割合によって示されるように、高い割合のイソブタノールがブロスから除去されること、及び断熱フラッシュシステムを用いた濃度因子により示されるように、蒸気の富化が起こることを示している。
【表3】

【0242】
この実施例は、断熱フラッシュが発酵ブロスからイソブタノールを除去するための効率的な方法であることを実証している。
【0243】
実施例5
この実施例は、等温フラッシュを用いた発酵ブロスからのイソブタノールを除去及び回収を例示している。Aspen Plus(登録商標)2006.5を用いて、フラッシュ容器からポンプ吸引される発酵ブロス及びフラッシュ容器にポンプ吸引され、且つ35.0℃及び37.0℃において様々なフラッシュ圧力でフラッシュされる、発酵ブロスの平衡データを作成した。Aspen Plus(登録商標)内の非ランダムな2つの液体(NRTL)を用いた。
【0244】
発酵槽からのストリームを1atmの操作絶対圧で固定し、0.9789の水、0.0011の二酸化炭素、及び0.0200のイソブタノールの組成物(質量分画)を4psiaで断熱的に操作されるスカルパー中に1000kmol/hr基準でフローするとみなした。以下の表4に示すこれらの条件の結果は、フラッシュシステムを介する一通過あたり除去されるイソブタノールの割合によって示されるように、高い割合のイソブタノールがブロスから除去されること、及び等温フラッシュシステムを用いた濃度因子により示されるように、蒸気の富化が起こることを示している。
【表4】

【0245】
この実施例は、等温フラッシュが発酵ブロスからイソブタノールを除去するための効率的な方法であることを実証している。
【0246】
実施例6
この実施例は、第4段で等温フラッシュを用いる4段式カラムを用いて発酵ブロスからイソブタノールの除去及び回収を例示している。Aspen Plus(登録商標)2006.5を用いて、フラッシュ容器からポンプ吸引される発酵ブロス及びフラッシュ容器にポンプ吸引され、且つ35.0℃及び37.0℃において示したカラム圧力でフラッシュされる、発酵ブロスの平衡データを作成した。Aspen Plus(登録商標)内の非ランダムな2つの液体(NRTL)を用いた。
【0247】
発酵槽からのストリームを1atmの操作絶対圧で固定し、0.9789の水、0.0011の二酸化炭素、及び0.0200のイソブタノールの組成物(質量分画)を4psiaで断熱的に操作されるスカルパー中に1000kmol/hr基準でフローするとみなした。以下の表5に示すこれらの条件の結果は、カラムのより低い第4段を介して一通過あたり除去されるイソブタノールの割合によって示されるように、高い割合のイソブタノールがブロスから除去されること、及びこの構成を用いた濃度因子により示されるように、蒸気の富化が起こることを示している。
【表5】

【0248】
この実施例は、多段式の等温フラッシュが発酵ブロスからイソブタノールを除去するための効率的な方法であることを実証している。
【0249】
実施例7
この実施例は、様々なイソブタノール生産性での断熱及び等温フラッシュ条件について平衡でイソブタノール力価を維持するのに必要な発酵槽回転速度を例示している。発酵槽回転速度に所与の発酵槽体積を掛けることによって、一定の発酵槽力価を維持するのに必要なリサイクルポンプ吸引速度が得られる。断熱及び及び等温フラッシュ条件について前述の例4及び5(図3及び4の最終行)で説明されるように、フラッシュへのブロス及びブロス戻りについてブロスの力価が生じた。
【0250】
以下の表6に示す結果は、より低い発酵槽回転速度、したがって、より低いリサイクルポンプ吸引速度が所定の生産性での等温フラッシュ対(vs)断熱フラッシュに必要であることを示している。
【表6】

【0251】
この実施例は、等温フラッシュは、断熱フラッシュと比較して、より低い発酵槽回転速度が必要であることを実証している。
【0252】
本発明の原理、好ましい実施態様、及び操作形態が前述の本明細書で記述されている。しかし、ここで保護されることが意図される本発明は、開示された特定の形態に限定されるものと理解すべきではなく、これらは限定するものではなく、例示とみなすものである。
本発明の真意から逸脱することなく、当業者によって変更及び変化が行われ得る。したがって、本発明を実施するための前述の最良の実施形態は、本質的に例示であるとみなすべきであり、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲及び真意を限定するものとみなすべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物、ガス、及びC3〜C6アルコールを含む発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、
a.前記発酵培地から前記ガスの少なくとも一部を除去する工程;
b.前記発酵培地の一部中の前記C3〜C6アルコールの活性を、少なくとも、前記一部中のC3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加する工程、又は前記発酵培地の一部中の水活性を、少なくとも、前記一部中の前記C3〜C6アルコールの飽和の該活性に低減する工程;
c.前記発酵培地の前記一部からC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相を形成する工程;及び
d.前記C3〜C6アルコールリッチ相を前記水リッチ相から分離する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記発酵培地中で微生物を培養し、前記C3〜C6アルコール及びガスを生成する工程;及び
前記水リッチ相の少なくとも一部を前記発酵培地に誘導する工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多糖類及び少なくとも1つの他の化合物を含む供給原料を加水分解し、発酵可能な加水分解生成物を生成する工程;
前記発酵培地中の前記発酵可能な加水分解生成物の少なくとも一部を発酵し、前記C3〜C6アルコール及びガスを生成する工程であって、前記発酵培地が、少なくとも1つの発酵されていない化合物をさらに含む工程;
前記発酵培地、又は前記水リッチ相、又は両方から前記少なくとも1つの発酵されていない化合物を分離する工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
微生物、ガス、及びC3〜C6アルコールを含む発酵培地中でC3〜C6アルコール由来の生成物を生成する方法であって、
a.前記ガスの少なくとも一部を前記発酵培地から除去する工程;
b.水及びC3〜C6アルコールを含む気相を前記発酵培地から蒸留する工程;
c.前記気相中のC3〜C6アルコールを反応させて、前記生成物を形成する工程
を含む、方法。
【請求項5】
発酵培地中で微生物を培養し、前記C3〜C6アルコール及びガスを生成する工程;及び
前記水リッチ液相の少なくとも一部を前記発酵培地に誘導する工程
をさらに含み、
前記C3〜C6アルコールの活性を増加する工程又は前記水の活性を低減する工程が、前記発酵培地の一部を蒸留して、水及びC3〜C6アルコールを含む気相及び液相を生成する工程をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の量のC3〜C6アルコール及びガスを含む希釈水溶液からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、
a.前記希釈水溶液から前記ガスの少なくとも一部を除去する工程;
b.前記希釈水溶液の一部をC3〜C6アルコール及び水を含む気相に蒸留する工程であって、前記気相が、約1重量%〜約45重量%の前記希釈水溶液の一部由来の前記第1の量のC3〜C6アルコールを含む工程;及び
c.前記気相を濃縮する工程
を含む、方法。
【請求項7】
C3〜C6アルコールを生成するために予備処理ユニット、複数発酵ユニット、及びビアスティルを含む改装エタノール生成プラントを操作する方法であって、
a.前記予備処理ユニットで、供給原料を予備処理して、発酵可能な糖を形成する工程;
b.第1の発酵ユニットで、前記発酵可能な糖を含む発酵培地中で微生物を培養して、前記C3〜C6アルコールを生成する工程;
c.前記発酵培地から前記ガスの少なくとも一部を除去する工程;
d.前記C3〜C6アルコールを含む前記発酵培地の一部を処理して、前記C3〜C6アルコールの一部を除去する工程;
e.前記処理した発酵培地の一部を前記第1の発酵ユニットに戻す工程;
f.前記発酵培地を前記第1の発酵ユニットから前記ビアスティルに移す工程
を含む、方法。
【請求項8】
前記ガスが、二酸化炭素を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記二酸化炭素の少なくとも約30%が、前記除去工程中に除去される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記二酸化炭素の少なくとも約75%が、前記除去工程中に除去される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記二酸化炭素の少なくとも約85%が、前記除去工程中に除去される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記二酸化炭素の少なくとも約90%が、前記除去工程中に除去される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記除去工程が、加熱、大気圧以下への減圧、吸着、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記除去工程が、約1psia〜約10psiaの圧力に減圧する工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記除去工程が、約2psia〜約5psiaに圧力に減圧する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記除去された二酸化炭素が、pH調整のために発酵ユニットに誘導され、通気され、又はそれらの組み合わせがなされる、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記ガスを処理して前記C3〜C6アルコールを除去する工程、及び前記ガスを通気する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記発酵培地又は前記希釈水溶液から少なくとも1つの不純物を除去する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの不純物が、エタノール、酢酸、プロパノール、フェニルエチルアルコール、及びイソペンタノールからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水溶液中のC3〜C6アルコール濃度を増加する方法であって、
a.前記C3〜C6アルコールを含む水溶液の第1ストリームを容器に導入する工程;
b.前記C3〜C6アルコールを含む水溶液の前記第1ストリームを減圧し、前記C3〜C6アルコールを含む蒸気を形成する工程;
c.前記C3〜C6アルコールを含む前記蒸気を前記C3〜C6アルコールを含む溶液と接触させて、前記C3〜C6アルコールの濃縮された蒸気を含む濃縮物を形成する工程であって、前記濃縮物中の前記C3〜C6アルコール濃度が、前記水溶液の第1ストリーム中の前記C3〜C6アルコール濃度より大きい工程
を含む、方法。
【請求項21】
微生物及びC3〜C6アルコールを含む発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、
a.前記発酵培地の一部中の前記C3〜C6アルコールの活性を、少なくとも、前記一部中の前記C3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加し、前記C3〜C6アルコールを含む蒸気を形成する工程、又は前記発酵培地の一部中の前記水の活性を、少なくとも、前記一部中の前記C3〜C6アルコールの飽和の該活性に低減し、前記C3〜C6アルコールを含む蒸気を形成する工程;
b.前記C3〜C6アルコールを含む蒸気を前記C3〜C6アルコールを含む溶液と接触させることにより、前記C3〜C6アルコール蒸気を濃縮する工程;
c.前記濃縮された蒸気からC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相を形成する工程;及び
d.前記水リッチ相から前記C3〜C6アルコールリッチ相を分離する工程
を含む、方法。
【請求項22】
前記発酵培地で微生物培養して、前記C3〜C6アルコールを生成する工程;
前記水リッチ相の少なくとも一部を前記発酵培地に誘導する工程
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
多糖類及び少なくとも1つの他の化合物を含む供給原料を加水分解して、発酵可能な加水分解生成物を生成する工程;
前記発酵培地中で前記発酵可能な加水分解生成物の少なくとも一部を発酵して、前記C3〜C6アルコールを生成する工程であって、前記発酵培地が、少なくとも1つの発酵されていない化合物をさらに含む工程;
前記発酵培地、又は前記水リッチ相、又は両方から前記少なくとも1つの発酵されていない化合物を分離する工程
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
C3〜C6アルコールを生成する方法であって、
a.発酵培地中で微生物を培養して、前記C3〜C6アルコールを生成する工程;
b.前記発酵培地の一部中の前記C3〜C6アルコールの活性を増加する工程;
c.前記発酵培地の前記一部を蒸留し、水及び前記C3〜C6アルコールを含む気相及び液相を形成する工程;
d.前記気相を前記C3〜C6アルコールを含む溶液と接触させることにより、前記気相を濃縮する工程;
e.前記液相を前記発酵培地に誘導する工程
を含む、方法。
【請求項25】
第1の量のC3〜C6アルコールを含む希釈水溶液からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、
a.前記希釈水溶液の一部を蒸留して、前記C3〜C6アルコール及び水を含む気相を形成する工程であって、前記気相が、前約1重量%〜約45重量%の前記希釈水溶液の一部由来の前記第1の量のC3〜C6アルコールを含む工程;及び
b.前記C3〜C6アルコールを含む溶液と接触させることにより、前記気相を濃縮する工程
を含む、方法。
【請求項26】
前記C3〜C6アルコールを含む前記溶液が、前記C3〜C6アルコールを含む前記蒸気に噴霧される、請求項20〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記C3〜C6アルコールを含む前記溶液が、前記C3〜C6アルコールの濃縮物を含む、請求項20〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記濃縮物が、前記C3〜C6アルコール蒸気との接触前に冷却される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記蒸気又は気相を形成する工程、及び前記蒸気又は気相を濃縮する工程が、単一容器中で行われる、請求項20〜25のいずれか1項に記載の方法、
【請求項30】
前記容器が、第1及び第2の流体含有部分を画定するウェアーを含み、前記第1の流体含有部分が、微生物及び前記C3〜C6アルコールを含む前記水溶液又は前記発酵培地を受容するように適合され、前記第2の流体含有部分が、前記濃縮された蒸気を受容するように適合される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の流体含有部分が、微生物及び前記C3〜C6アルコールを含む前記水溶液又は前記発酵培地を前記第1の流体含有部分に誘導するための導管、及び微生物及び前記C3〜C6アルコールを含む前記水溶液又は前記発酵培地を前記第1の流体含有部分から誘導するための導管を含み、前記第1の流体含有部分の外に誘導された前記水溶液又は前記発酵培地中の前記C3〜C6アルコールの含有量が、前記第1の流体含有部分に誘導された前記水溶液又は前記発酵培地の前記含有量よりも低い、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の流体含有部分が、前記濃縮された蒸気を前記第2の流体含有部分の外に誘導するための導管を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
水溶液中のC3〜C6アルコールの濃度を増加するためのフラッシュタンク/直接接触濃縮器システムであって、
a.容器;
b.前記C3〜C6アルコールを含む水溶液のストリームを前記容器に導入するための手段;
c.前記C3〜C6アルコールを含む前記水溶液のストリームを減圧し、前記C3〜C6アルコールを含む蒸気を形成するための手段;
d.前記C3〜C6アルコールを含む前記蒸気を前記C3〜C6アルコールを含む溶液と接触させて、前記C3〜C6アルコールの濃縮された蒸気を含む濃縮物を形成するための手段であって、前記濃縮物中の前記C3〜C6アルコール濃度が、前記水溶液の第1ストリーム中の前記C3〜C6アルコール濃度より大きい手段
を含む、フラッシュタンク/直接接触濃縮器システム。
【請求項34】
前記容器が、ウェアーによって分離された2つの液体含有区画又は部分を含み、前記ウェアーが、前記容器の底部で前記区画又は部分を分ける、請求項33に記載のフラッシュタンク/直接接触濃縮器システム。
【請求項35】
前記手段(c)が、真空を生じさせるための手段を含む、請求項34に記載のフラッシュタンク/直接接触濃縮器システム、
【請求項36】
前記手段(d)が、スプレーノズルを含む、請求項34に記載のフラッシュタンク/直接接触濃縮器システム。
【請求項37】
微生物及びC3〜C6アルコールを含む発酵培地からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、
a.ガスを前記発酵培地に導入し、前記C3〜C6アルコールの一部を前記ガスに移す工程;
b.前記ガスを前記発酵培地から回収ユニットに誘導する工程;及び
c.前記ガスから前記C3〜C6アルコールを回収する工程
を含む、方法。
【請求項38】
d.前記発酵培地の一部中の前記C3〜C6アルコールの活性を、少なくとも、前記一部中の前記C3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加する工程、又は前記発酵培地の一部中の前記水の活性を、少なくとも、前記一部中の前記C3〜C6アルコールの飽和の該活性に低減する工程;
e.前記発酵培地の一部からC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相を形成する工程;及び
f.前記水リッチ相から前記C3〜C6アルコールリッチ相を分離する工程
をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
発酵培地中で微生物を培養し、前記C3〜C6アルコールを生成する工程;及び
前記水リッチ相を前記発酵培地に誘導する工程
をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
多糖類及び少なくとも1つの他の化合物を含む供給原料を加水分解して、発酵可能な加水分解生成物を生成する工程;
発酵培地中で前記発酵可能な加水分解生成物の少なくとも一部を発酵して、前記C3〜C6アルコールを生成する工程であって、前記発酵培地が、少なくとも1つの発酵されていない化合物をさらに含む工程;
前記発酵培地、前記水リッチ相、又は両方から前記少なくとも1つの発酵されていない化合物を分離する工程
をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
水及び前記C3〜C6アルコールを含む気相を蒸留する工程;
前記気相中で前記C3〜C6アルコールを反応させて、生成物を形成する工程
をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
発酵培地中で微生物を培養し、前記C3〜C6アルコールを生成する工程;
前記発酵培地の一部中の前記C3〜C6アルコールの活性を増加する工程;
前記発酵培地の前記一部を蒸留し、水及び前記C3〜C6アルコールを含む気相及び液相を生成する工程;
前記液相を前記発酵培地に誘導する工程
をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記希釈水溶液の一部をC3〜C6アルコール及び水を含む気相に蒸留する工程;
前記気相が、約1重量%〜約45重量%の前記希釈水溶液の一部由来の前記第1の量C3〜C6アルコールを含む工程;及び
前記気相を濃縮する工程
を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
C3〜C6アルコールを生成するために予備処理ユニット、複数発酵ユニット、及びビアスティルを含む改装エタノール生成プラントを操作する方法であって、
a.前記予備処理ユニットで、供給原料予備処理して、発酵可能な糖を形成する工程;
b.発酵ユニットで、前記発酵可能な糖を含む発酵培地中で微生物を培養し、前記C3〜C6アルコールを生成する工程;
c.ガスを前記発酵培地に導入し、前記C3〜C6アルコールの一部を前記ガスに移す工程;
d.前記ガスを前記発酵培地から回収ユニットに誘導する工程;
e.前記ガスから前記C3〜C6アルコールを回収する工程;
f.前記C3〜C6アルコールを含む前記発酵培地の一部を処理して、前記C3〜C6アルコールの一部を除去する工程;
g.前記処理した発酵培地の一部を前記発酵ユニットに戻す工程;
h.前記発酵培地を前記発酵ユニットから前記ビアスティルに移す工程
を含む、方法。
【請求項45】
前記C3〜C6アルコールの少なくとも約50%が、前記ガスから回収される、請求項37−44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記C3〜C6アルコールの少なくとも約70%が、前記ガスから回収される、請求項37−44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記C3〜C6アルコールの少なくとも約85%が、前記ガスから回収される、請求項37−44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記C3〜C6アルコールの少なくとも約90%が、前記ガスから回収される、請求項37−44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
C3〜C6アルコールを生成する方法であって、
a.発酵培地中で微生物を培養し、前記微生物を成長させる工程;
b.前記発酵培地中で前記微生物を培養し、前記C3〜C6アルコールを生成する工程;
c.前記培養工程中に前記発酵培地から前記C3〜C6アルコールを回収する工程;及び
d.(b)工程中、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約20モル未満の酸素の酸素移動速度(OTR)で前記発酵培地に導入する工程
を含む、方法。
【請求項50】
前記導入工程が、(b)工程中、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約10モル未満の酸素のOTRで前記発酵培地中に導入する工程を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記導入工程が、(b)工程中、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約0.1〜約5モルの酸素のOTRで前記発酵培地中に導入する工程を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記発酵培地から前記C3〜C6アルコールを回収する工程が、
前記発酵培地の一部中の前記C3〜C6アルコールの活性を、少なくとも、前記一部中の前記C3〜C6アルコールの飽和の該活性に増加する工程、又は前記発酵培地の一部中の水の活性を、少なくとも、前記一部中の前記C3〜C6アルコールの飽和の該活性に低減する工程;
前記発酵培地の前記一部からC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相を形成する工程;
前記水リッチ相から前記C3〜C6アルコールリッチ相を分離する工程
を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記水リッチ相を前記発酵培地に誘導する工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記発酵培地から水及びC3〜C6アルコールを含む気相を蒸留する工程;
前記気相中の前記C3〜C6アルコールを反応させて、生成物を形成する工程
をさらに含む、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項55】
C3〜C6アルコールを生成する方法であって、
a.発酵培地中で微生物を培養し、前記C3〜C6アルコールを生成する工程;
b.(a)工程中、酸素を含むガスを1リットルあたり発酵培地1時間あたり約20モル未満の酸素の酸素移動速度(OTR)で前記発酵培地中に導入する工程;
c.前記発酵培地の一部中の前記C3〜C6アルコールの活性を増加する工程;
d.前記発酵培地の前記一部を蒸留し、水及びC3〜C6アルコールを含む気相及び液相を生成する工程;及び
e.前記液相を前記発酵培地に誘導する工程
を含む、方法。
【請求項56】
C3〜C6アルコールを生成するために予備処理ユニット、複数発酵ユニット、及びビアスティルを含む改装エタノール生成プラントを操作する方法であって、
a.前記予備処理ユニットで、供給原料を予備処理し、発酵可能な糖を形成する工程;
b.第1の発酵ユニットで前記発酵可能な糖を含む発酵培地中で微生物を培養し、前記微生物を成長させる工程;
c.第1の発酵ユニットで、前記発酵可能な糖を含む前記発酵培地中で前記微生物を培養し、前記C3〜C6アルコールを生成する工程;
d.(c)工程中に、酸素を含むガスを1時間あたり発酵培地1リットルあたり約20モル未満の酸素の酸素移動速度(OTR)で前記発酵培地中に導入する工程;
e.前記C3〜C6アルコールを含む前記発酵培地の一部を処理し、前記C3〜C6アルコールの一部を除去する工程;
f.前記処理した前記発酵培地の一部を前記発酵ユニットに戻す工程;及び
g.前記発酵ユニットから前記ビアスティルに前記発酵培地を移す工程
を含む、方法。
【請求項57】
前記C3〜C6アルコールを生成する前記工程が、嫌気性である、請求項49、55、又は56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
大気圧未満の圧力で操作される複数ユニット操作を含む、C3〜C6アルコールを生成及び回収する方法を操作する方法であって、
a.第1のユニット操作で、蒸気を第1の排出装置中に導入し、大気圧未満の圧力を生じさせる工程;及び
b.第2のユニット操作で、蒸気を前記第1の排出装置から第2の排出装置に誘導し、大気圧未満の圧力を生じさせる工程
を含む、方法。
【請求項59】
前記複数ユニット操作が、水再利用、第1の効用蒸発器、第2の効用蒸発器、ビアスティル、サイドストリッパー、及び精留塔からなる群から選択されるユニット操作を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記第1及び第2のユニット操作が同じである、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記第1及び第2のユニット操作が異なる、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
C3〜C6アルコールを生成する微生物を高細胞密度に培養する方法であって、発酵培地中で前記微生物を成長させる工程、及び前記成長工程中に前記発酵培地から及び前記C3〜C6アルコールを回収する工程を含み、前記微生物が、1リットルあたり約5g〜1リットルあたり約150gの乾燥重量の範囲の細胞密度に達する、方法。
【請求項63】
C3〜C6アルコールを生成する方法であって、発酵培地中で前記C3〜C6アルコールを生成する微生物を培養して前記C3〜C6アルコールを生成する工程、及び前記発酵培地から前記C3〜C6アルコールを回収する工程を含み、前記C3〜C6アルコールの生成が、1時間あたり1リットルあたり少なくとも約1gの速度である、方法。
【請求項64】
前記前記C3〜C6アルコールの生成が、1時間あたり1リットルあたり少なくとも約2gの速度である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記C3〜C6アルコールが、ブタノールである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記C3〜C6アルコールが、イソブタノールである、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
第1の温度(Tl)で希釈水溶液からC3〜C6アルコールを回収する方法であって、
a.前記希釈水溶液から水及びC3〜C6アルコールを含む気相を蒸留する工程;
b.第2の温度(T2)で前記気相を水性冷却液とともに濃縮する工程;
c. 前記気相の温度が第3の温度(T3)となるように、前記蒸留工程の圧力、Tl、及び前記C3〜C6アルコールの力価を制御する工程であって、T3及びT2の間の差が少なくとも約1℃である工程
を含む、方法。
【請求項68】
前記T3及びT2の間の差が、少なくとも約5℃である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
記T3及びT2の間の差が、少なくとも約10℃である、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
T2が、約30℃未満である、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記第2の温度(T2)での水性冷却液が、蒸発冷却により生成される、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
濃縮された気相の一部が、前記水性冷却液として用いられる、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
前記濃縮された気相からC3〜C6アルコールリッチ液相及び水リッチ液相を形成する工程をさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項74】
前記C3〜C6アルコールリッチ相と前記水リッチ相とを分離する工程をさらに含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記気相が、約2重量%〜約40重量%の前記希釈水溶液由来の前記C3〜C6アルコールを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項76】
前記蒸留工程が、断熱性である、請求項67に記載の方法。
【請求項77】
前記蒸留工程が、等温性である、請求項67に記載の方法。
【請求項78】
前記希釈水溶液が、微生物を含む発酵培地を含み、
前記発酵培地中で前記微生物を培養し、前記C3〜C6アルコールを生成する工程;及び
前記水リッチ相を発酵培地に誘導する工程
をさらに含む、請求項67に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2012−531209(P2012−531209A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517799(P2012−517799)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/040095
【国際公開番号】WO2010/151832
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(510153973)ジーヴォ,インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】