説明

帯鋼の冷間仕上圧延方法および冷間仕上圧延装置

【課題】板厚が2.5mm以下の帯鋼を、微少な表面疵を確実に生じることなく、所要の厚みに冷間仕上圧延する帯鋼の冷間仕上圧延方法、およびこれに用いる冷間仕上圧延装置を提供する。
【解決手段】板厚tが2.5mm以下の帯鋼s1に対し、1.0〜10%の圧下率により冷間仕上圧延を施す上下一対のワークロールw1,w2と、係るワークロールw1,w2の入側INにおける上記帯鋼s1のパスラインPSの上下に対向して配置した油含有冷却液W,wのノズル管(噴射手段)6,ノズル孔(噴射手段)9と、係るノズル管6,ノズル孔9におけるワークロールw1,w2側に隣接する位置において、帯鋼s1のパスラインPSの上下にそれぞれ配置した合成ゴム製の第1ワイパ2a,2bと、ワークロールw1,w2の出側OUTにおける冷間仕上圧延後の帯鋼s2のパスラインPSの上下にそれぞれ配置した合成ゴム製の第2ワイパ12a,12bと、を含む、帯鋼s1の冷間仕上圧延装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯鋼を上下一対のワークロール間において、最終的な板厚に冷間圧延する冷間仕上圧延方法、およびこれに用いる冷間仕上圧延装置に関する。
【背景技術】
【0002】
予め、板厚を2.5mm以下に冷間圧延され且つコイル状に巻き付けられた帯鋼は、ペイオフロールから巻き返され、上下から布製のパッドを押された後、上下一対のワークロール間に通され且つ約1〜10%の圧下率による冷間仕上圧延を受けた後、巻き取りロールにコイル状に巻き取られる。従来は、上記布製のパッドを帯鋼の表面および裏面に押し付けることで、係る帯鋼が通過するパスラインの位置を安定させ、引いては帯鋼自体の疵付きを抑制していた。尚、布製のパッドを用いるのは、硬質樹脂などのパッドでは、帯鋼に接触疵が生じ易いためである。
ところで、近年になり、例えば、ベアリングレースなどに用いる帯鋼の表面品質が高くなっている。例えば、上記布製のパッドをワークロールの入側で帯鋼の表・裏面に押し付けた際に、該パッドを構成していた繊維クズが脱落し、上下一対のワークロールとの間に進入した結果、冷間仕上圧延後の帯鋼の表面に微少な凹み状の表面疵を生じさせる場合があり、係る表面疵の撲滅が求められている。
【0003】
一方、光沢ムラのない表面品質の良好なステンレス鋼冷間圧延材を得るため、リバース圧延を含む2パス以上の冷間圧延する際に、ワークロール(圧延機)の入側および出側に被圧延材の表面に接触するワイパをそれぞれ配置し、係るワイパのごと外側におけるパスラインに潤滑油の塗布手段(ノズル)を配置した上記冷間圧延材の製造法および設備が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、上記冷間圧延材の製方法および設備では、特許文献1の図2に示すように、圧延油が直に塗布されるワークロール(圧延機)の入側と出側とのパスライン上において、当該ワークロールからかなり離れた位置の上下に合成ゴムからなるほぼ円筒形状のワイパを配置している。更に、該ワイパごとの外側の離れた位置の上下に潤滑油塗布用のノズルを配置し、該ノズルから潤滑油剤を滴下、噴霧、あるいは少量塗布して、上記ワイパの焼け付きを防ぎ、油切りや摩耗金属粉の除去効果の低下を防いでいる(特許文献1の段落番号(0020)参照)。
【0004】
そのため、前記設備では、ワークロール(圧延機)と、その入側および出側のそれぞれ離れた位置に配置したワイパとの間で、被圧延材の表・裏面に塵埃や繊維クズなどが不用意に付着すると、係る塵埃と上記ワークロールとによって、被圧延材の表面に微少な凹状の表面疵を生じてしまう、という場合があった。
しかも、前記ワイパと潤滑油塗布用のノズルとの距離が不明確であるため、前述した効果を十分に常に奏することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−99203号公報(第1〜4頁、図1,2,4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、背景技術において説明した問題点を解決し、板厚が2.5mm以下の帯鋼を、微少な表面疵を確実に生じることなく、所要の厚みに冷間仕上圧延する帯鋼の冷間仕上圧延方法、およびこれに用いる冷間仕上圧延装置を提供する。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、発明者らによる鋭意研究および調査の結果得られたものであり、上下一対のワークロールの入側におけるパスラインの上下において、油含有冷却液を噴射し、且つ該噴射位置の直後の上下にワイパをそれぞれ隣接して配置する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明による帯鋼の冷間仕上圧延方法(請求項1)は、板厚が2.5mm以下の帯鋼を上下一対のワークロール間で1.0〜10%の圧下率により冷間仕上圧延する方法であって、上記ワークロールの入側において、上記帯鋼の表面および裏面に油含有冷却液を個別に流下または噴射して、当該帯鋼の表面および裏面に付着した異物を除去し、上記冷却液が付着された直後の上記帯鋼の表面および裏面に対し、合成ゴム製の第1ワイパを個別に押し付けて、上記帯鋼の表・裏面と第1ワイパとに付着した異物を除去し、且つ当該第1ワイパの摩耗と焼け付きとを抑制すると共に、上記ワークロールの出側において、上記圧下率による冷間仕上圧延を施された上記帯鋼の表面および裏面に対し、合成ゴム製の第2ワイパを個別に押し付けて、上記冷却液の液切りを行う、ことを特徴とする。
【0008】
これによれば、前記パスラインに沿って送られた帯鋼は、前記ワークロールの入側において、上記帯鋼の表面および裏面に油含有冷却液を個別に流下または噴射して、当該帯鋼の表面および裏面に付着した塵埃などの異物を除去される。特に、該帯鋼の表面では、該表面に流下した油含有冷却液自体の圧力で異物が除去され、係る冷却液が第1ワイパーに接触するため、該第1ワイパと帯鋼の表面との間に挟まれた異物を洗い流せると共に、該第1ワイパ自体の焼け付きおよび摩耗を防止できる。一方、上記帯鋼の裏面では、複数のノズル孔からほぼ円錐形状に上向きに噴射された上記冷却液によって、該裏面の幅全体において異物を確実に除去できる。従って、清浄な表面および裏面を有する帯鋼を、前記一対のワークロール間で所定の圧下率に従って冷間仕上圧延を正確に施せると共に、異物による表・裏面における約数μmの微少な凹状の表面疵を確実に防止できる。
しかも、前記ワークロールの出側において、前記冷間仕上圧延を施された上記帯鋼の表面および裏面に対し、合成ゴム製の第2ワイパを個別に押し付けて、前記冷却液の液切りを行うので、清浄で且つ平坦な表・裏面の帯鋼を確実に提供することが可能となる。
【0009】
尚、前記帯鋼には、例えば、SCM(クロムモリブデン鋼)、SK(炭素工具鋼)、ステンレス鋼などが含まれる。該帯鋼の板厚が2.5mm以下であるのは、仕上圧延すべく、予め、冷間圧延により上記板厚以下に圧延されている故である。
また、油含有冷却液は、例えば、エマルジョン形水溶性切削油剤(油分1〜10vol%、水に加えると白濁する)や、ソリューブ形水溶性切削油剤(油分1〜2vol%)などであり、通称がクーラント(冷却剤:coolant)である。
更に、前記圧下率は、1〜10%、望ましくは1.0〜5%、より望ましくは1.0〜1.5%である。
また、前記第1・第2ワイパは、例えば、ネオプレンゴム(クロロプレンの重合体)からなり、全体が円筒形状を呈し、外周面の軸方向に沿って多数の細かな凹凸条が形成されている。
更に、帯鋼の表面への油含有冷却液の供給(流下)は、比較的低圧(最大3気圧)のノズル(噴射手段)から流下させ、長手方向に沿って走行している当該帯鋼のほぼ幅方向に沿って直ちに濡れ広がる。
加えて、帯鋼の裏面への油含有冷却液の噴射:比較的高圧(最大10気圧)の複数のノズル孔(噴射手段)をパスラインの幅方向に沿って配置し、各ノズル孔から上記冷却液を上向きにほぼ円錐形状の吹き上げる。
【0010】
また、本発明には、前記ワークロールの入側における油含有冷却液の噴射は、前記当該第1ワイパの直前に位置する前記帯鋼の表面および裏面に対して行われる、帯鋼の冷間仕上圧延方法(請求項2)も含まれる。
これによれば、前記帯鋼の表面においては、該表面に流下した油含有冷却液の圧力で異物が除去でき、係る冷却液が近接する第1ワイパに確実に接触するため、該第1ワイパと帯鋼の表面との間に挟まれた異物を洗い流せる。同時に、該第1ワイパ自体の焼け付きと摩耗とを防止できる。しかも、上記帯鋼の裏面では、複数のノズル孔からほぼ円錐形状に上向きに噴射された上記冷却剤によって、該裏面の幅全体にわたって異物を確実に除去できる。
尚、前記冷却液の噴射は、第1ワイパの前方の1〜10cmに位置するノズル管(噴射手段)あるいは複数のノズル孔(噴射手段)によって行われる。
【0011】
一方、本発明による帯鋼の冷間仕上圧延方装置(請求項3)は、板厚が2.5mm以下の帯鋼に対し、1.0〜10%の圧下率により冷間仕上圧延を施す上下一対のワークロールと、該ワークロールの入側における上記帯鋼のパスラインの上下に対向して配置した油含有冷却液の噴射手段と、該噴射手段における上記ワークロール側に隣接する位置において、上記帯鋼のパスラインの上下にそれぞれ配置した合成ゴム製の第1ワイパと、上記ワークロールの出側における冷間仕上圧延後の上記帯鋼のパスラインの上下にそれぞれ配置した合成ゴム製の第2ワイパと、を含む、ことを特徴とする。
これによれば、帯鋼の表面および裏面に付着した塵埃などの前記異物を除去し、第1ワイパと帯鋼の表面との間に挟まれた異物を洗い出し、第1ワイパ自体の焼付きおよび摩耗の防止ないし抑制ができると共に、清浄な表面および裏面を有する帯鋼に対して、前記一対のワークロール間で所定の圧下率に従って正確に冷間仕上圧延することが可能となる。
【0012】
尚、前記ワイパの配置は、断面チャンネル形のホルダ内に周面の一部が外側に露出(突出)するように嵌め込まれる。また、第1・第2ワイパは、共に裏面側のホルダを固定し、表面側のホルダを流体圧(油圧または水圧)シリンダにより下向きに押し付けつつ支持されている。更に、入側の噴射手段と第1ワイパとの間隔は、約1〜10cmの距離である。該噴射手段は、前記帯鋼の表面側に位置し且つ前記連客液を流下させる単数または複数のノズル管、あるいは、帯鋼の裏面側に位置するノズル箱体に開設された複数のノズル孔である。
【0013】
また、本発明には、前記噴射手段および前記第1・第2ワイパは、前記ワークロールが支持されているロールスタンドに取り付けられている、帯鋼の冷間仕上圧延装置(請求項4)も含まれる。
これによれば、前記噴射手段および前記第1・第2ワイパを、前記ワークロールが支持されているロールスタンドの入側および出側に取り付けられるので、設置スペースが少なくて済み且つメンテナンスも容易となる。
尚、前記第1・第2ワイパは、それぞれ前記パスラインを挟んだ一方を固定側とし、且つこれに対向する他方をロールスタンドに対して、昇降(移動)可能に取り付けた形態としても良い。
【0014】
更に、本発明には、前記第1・第2ワイパは、前記記帯鋼のパスラインの上下において、該パスラインと直交する方向に沿って2本以上が平行且つ隣接して配置されている、帯鋼の冷間仕上圧延装置(請求項5)も含まれる。
これによれば、前記噴射手段から流下あるいは噴射された前記冷却液の液切りを、確実に行えると共に、冷間仕上圧延後の帯鋼の表・裏面における上記冷却液の液切りも確実に行える。
尚、2本以上が平行且つ隣接して配置される第1・第2ワイパは、個別に断面チャンネル形のホルダ内に収容されるか、あるいは断面全体がほぼE字形状を呈する形鋼やアルミニウム合金からなる押出形材の凹部ごとに収容される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による帯鋼の冷間仕上圧延装置の概略を垂直断面図。
【図2】本発明による帯鋼の冷間仕上圧延方法の概略を垂直断面図。
【図3】図2中の一点鎖線の矢印Xの矢視に沿った部分斜視図。
【図4】図2中の一点鎖線の矢印Yの矢視に沿った部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明の帯鋼の冷間仕上圧延装置1は、図1に示すように、上下一対のワークロールw1,w2、およびこれらの上下において線接触し、且つ外側ほど大径となるバックアップロールb1,b2,B1,B2を支持するロールスタンドSと、上記ワークロールw1,w2の入側INにおけるパスラインPSの上下に2個ずつ設けた第1ワイパ2a,2bと、上記ワークロールw1,w2の出側OUTにおけるパスラインPSの上下に2個ずつ設けた第2ワイパ12a,12bとを備えている。
尚、上記圧延装置1では、上下一対のバックアップロールb1,b2のみとし、バックアップロールB1,B2を省略しても良い。また、図1中で一点鎖線の矢印で示すパスラインPSは、後述する帯鋼s1,s2が通過する軌跡である。
【0017】
図1に示すように、第1ワイパ2a,2bおよび第2ワイパ12a,12bは、例えば、ネオプレンゴム(クロロプレンの重合体)からなり、断面円形の中空部を内設する全体が円筒形状を呈し、外周面の軸方向に沿って多数の細かな凹凸条が等間隔に形成されている。該第1ワイパ2a,2bおよび第2ワイパ12a,12bは、断面チャンネル形のホルダ3内に一部の外周面を突出させつつ個別に収容されているが、摩耗の度合いに応じて円周方向に沿って適宜回転される。尚、上記ホルダ3は、ステンレス鋼の形鋼、またはアルミニウム合金の押出形材からなる。
前記パスラインPSの下側に位置する一対ずつの第1ワイパ2bおよび第2ワイパ12bは、個々のホルダ3と共に、ロールスタンドSにおける入・出側(IN・OUT)の側面に突設されたベース板7,10の上に固定されている。
【0018】
一方、図1に示すように、パスラインPSの上側に位置する一対ずつの第1ワイパ2aおよび第2ワイパ12aは、個々のホルダ3と共に、昇降板4,14に個別に固定され、係る昇降板4,14は、ロールスタンドSにおける入・出側(IN・OUT)の側面にピンpによって一端を結合された流体圧シリンダ5,15におけるピストンロッド5a,16の先端と連結されている。
そのため、図示しない圧力流体(油または水)を流体圧シリンダ5,15内に注入し、且つピストンロッド5a,16を下降させることにより、上記第1ワイパ2aおよび第2ワイパ12aを、対向する固定側の第1ワイパ2bおよび第2ワイパ12bに向かって個別に押し付けることができる。
【0019】
図1に示すように、パスラインPSの上側に位置する一対の第1ワイパ2aの直前には、油含有冷却剤(クーラント)Wを冷間仕上圧延すべき帯鋼s1の表面における幅方向の全体に流下させる1個あるいは複数個のノズル管(噴射手段)6がほぼ垂直に配設されている。係るノズル6管と外側の第1ワイパ2aとの間隔(L)は、約1〜10cmである。
一方、パスラインPSの下側に位置する一対の第1ワイパ2bの直前には、前記ベース板7に基端側を連結された複数のノズル箱体8が取り付けられ、各ノズル箱体8の先端側には、油含有冷却剤(クーラント)wを冷間仕上圧延すべき帯鋼s1の表面における幅方向の全体に噴射するための複数のノズル孔(噴射手段)9が水平方向に沿って開口している。
【0020】
図2は、前記冷間仕上圧延装置1を用いた本発明の帯鋼の冷間仕上圧延方法の概略を示す垂直断面図、図3は、図2中の一点鎖線の矢印Xの矢視に沿った部分斜視図、図4は、図2中の一点鎖線の矢印Yの矢視に沿った部分斜視図である。
先ず、図2に示すように、パスラインPSに沿って、例えば、SCM415からなり且つ板厚が2.5mmの帯鋼s1を、上下一対ずつの第1ワイパ2a,2aと、第1ワイパ2b,2bとの間に通過させた。その際、図3に示すように、外側の第1ワイパ2aの直前の中央に垂設された1本のノズル管6から、油含有冷却Wを比較的低圧の圧力で、帯板s1の表面における幅方向の全体に流下させた。
その結果、流動する油含有冷却Wによって、塵埃や繊維クズなどの異物が除去され、係る冷却液Wが第1ワイパー2aに接触するため、該第1ワイパ2aと帯鋼s1の表面との間に挟まれた異物を洗い出せると共に、該第1ワイパ2a自体の焼け付きや摩耗を防止することができた。
【0021】
一方、図4に示すように、外側の第1ワイパ2bの直前において、前記ベース板7に基端側を支持された複数のノズル箱体8の先端側に水平方向に沿って開設した複数のノズル孔9から上向きに、比較的高圧の圧力により油含有冷却液wをほぼ円錐形状にして噴射した。その結果、前記帯鋼s1の裏面の幅全体において、付着していた塵埃などの異物を確実に除去することができた。尚、複数のノズル孔9から上向きで且つ円錐形状に噴射された複数の油含有冷却液wは、前記帯鋼s1の幅方向において互いに一部が重複するように設定されている。
次に、図2に示すように、表・裏面を清浄化された帯鋼s1を、上下一対のワークロールw1,w2間に通し、係る帯鋼s1に対し1.0〜10%の圧下率を伴った冷間仕上圧延を施した。この際、帯鋼s1の表・裏面には、塵埃などの異物がなかったので、該異物による微少に凹状の表面疵の発生を確実に防げた。
【0022】
尚、前記ワークロールw1,w2の入側INにおける帯鋼s1の表・裏面に対して、圧延油を塗布して上記冷間仕上圧延を行うようにしても良い。
次いで、図2に示すように、前記ワークロールw1,w2間を通過した結果、約2.25〜2.48mmの板厚とされた帯鋼s2の表面および裏面に対し、出側OUTに位置する合成ゴム製の第2ワイパ12a,12bを個別に押し付けて、前記冷却液W,wの液切りを行った。そして、液切りされた帯鋼s2を図示しないリールにコイル状に巻き付けた。
【0023】
以上のような帯鋼s1の冷間仕上圧延方法によれば、清浄で且つ平坦な表・裏面を有する帯鋼s2を確実に且つ効率良く提供することが可能となった。しかも、パスラインPSの安定化のため、従来行っていた布製パッドによる帯鋼の表・裏面への面接触させる場合にように、繊維クズなどのび庄な異物による数〜8μm程度のの極く浅い表面疵の発生も皆無にすることができた。
一方、帯鋼s1の冷間仕上圧延装置1によれば、帯鋼s1の表・裏面に付着した塵埃などの異物の除去、第1ワイパ2a,2bと帯鋼s1の表面との間に挟まれた異物を洗い出し、第1ワイパ2a,2b自体の焼け付きと摩耗の防止ないし抑制ができると共に、清浄な表・裏面を有する帯鋼s1に対して、前記一対のワークロールw1,w2間で所定の圧下率により正確に冷間仕上圧延が行えた。
【0024】
本発明は、以上において説明した形態に限定されるものではない。
例えば、ロールスタンドに一対のワークロールのみが支持された形態のものを用いても良い。
また、第1・第2ワイパ2a,2b,12a,12bは、前記一対のワークロールw1,w2における入側INおよび出側OUTにおいて、パスラインPSの上下に1個ずつを配置した形態としても良い。
更に、前記冷間仕上圧延装置1において、ワークロールw1,w2の出側OUTにおける第2ワイパ12a,12bの外側に近接して、前記同様ノズル管6および複数のノズル孔9を有するノズル箱体8を、同数ずつ対称に更に取り付けることにより、リバース圧延による冷間仕上圧延に対しても、適用可能である。
加えて、本発明に適用される帯鋼は、厚みが2.5mm以下であれば、その幅寸法は、ワークロールw1,w2の軸方向の長さに応じて自由に選択可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、板厚が2.5mm以下の帯鋼を、微少な表面疵を確実に生じることなく、所望の厚みに正確且つ効率良く冷間仕上圧延することができる。
【符号の説明】
【0026】
1…………………冷間仕上圧延装置
2a,2b………第1ワイパ
6…………………ノズル管(噴射手段)
9…………………ノズル孔(噴射手段)
12a,12b…第2ワイパ
s1,s2………帯鋼
w1,w2………ワークロール
IN………………入側
OUT……………出側
W,w……………油含有冷却液
PS………………パスライン
S…………………ロールスタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚が2.5mm以下の帯鋼を上下一対のワークロール間で1.0〜10%の圧下率により冷間仕上圧延する方法であって、
上記ワークロールの入側において、上記帯鋼の表面および裏面に油含有冷却液を個別に流下または噴射して、当該帯鋼の表面および裏面に付着した異物を除去し、上記冷却液が付着された直後の上記帯鋼の表面および裏面に対し、合成ゴム製の第1ワイパを個別に押し付けて、上記帯鋼の表・裏面と第1ワイパとに付着した異物を除去し、且つ当該第1ワイパの摩耗と焼け付きとを抑制すると共に、
上記ワークロールの出側において、上記圧下率による冷間仕上圧延を施された上記帯鋼の表面および裏面に対し、合成ゴム製の第2ワイパを個別に押し付けて、上記冷却液の液切りを行う、
ことを特徴とする帯鋼の冷間仕上圧延方法。
【請求項2】
前記ワークロールの入側における油含有冷却液の流下または噴射は、前記当該第1ワイパの直前に位置する前記帯鋼の表面および裏面に対して行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の帯鋼の冷間仕上圧延方法。
【請求項3】
板厚が2.5mm以下の帯鋼に対し、1.0〜10%の圧下率により冷間仕上圧延を施す上下一対のワークロールと、
上記ワークロールの入側における上記帯鋼のパスラインの上下に対向して配置した油含有冷却液の噴射手段と、
上記噴射手段における上記ワークロール側に隣接する位置において、上記帯鋼のパスラインの上下にそれぞれ配置した合成ゴム製の第1ワイパと、
上記ワークロールの出側における冷間仕上圧延後の上記帯鋼のパスラインの上下にそれぞれ配置した合成ゴム製の第2ワイパと、を含む、
ことを特徴とする帯鋼の冷間仕上圧延装置。
【請求項4】
前記噴射手段および前記第1・第2ワイパは、前記ワークロールが支持されているロールスタンドに取り付けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の帯鋼の冷間仕上圧延装置。
【請求項5】
前記第1・第2ワイパは、前記記帯鋼のパスラインの上下において、該パスラインと直交する方向に沿って2本以上が平行且つ隣接して配置されている、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の帯鋼の冷間仕上圧延装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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