説明

帯電ローラの製造方法

【課題】本発明の課題は、電気抵抗の安定した帯電ローラの製造方法を提供することにある。
【解決手段】ガラスビーズを溶剤1で洗浄する洗浄工程、条件(A)を満たすようになるまで、溶剤2によりガラスビーズの洗浄をn回(nは2以上の自然数である)、繰り返し行う追洗浄工程、を有することを特徴とする帯電ローラの製造方法。
(A) (n−1)回洗浄後とn回洗浄後の溶剤2のイオン導電率の変化率Δσが、下記式(B)を満たす
Δσ=1−σn/σn-1≦0.1・・・(B)
(σnは追洗浄工程でn回、洗浄後の溶剤2の導電率[nScm-1]を表す)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ及び複写機等の電子写真方式を採用した画像形成装置に使用する帯電ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を採用した画像形成装置の帯電装置としてはコロナ帯電器が使用されてきたが、近年、これに代って接触帯電装置が実用化されている。これは、低オゾン、低電力を目的としており、中でも特に帯電部材として導電性ローラを用いたローラ帯電方式の接触帯電装置が、帯電の安定性という点で好ましく、広く用いられている。
【0003】
ローラ帯電方式の接触帯電装置では、導電性を有する帯電ローラを被帯電体に加圧当接させ、これに電圧を印加することによって放電により被帯電体への帯電を行う。ローラ帯電方式の接触帯電装置には、DC電圧を印加することで帯電を行うDC帯電方式と、DC電圧にAC成分を重畳した電圧を印加することで帯電を行うAC帯電方式とがある。具体的にはDC帯電方式の接触帯電装置では、放電開始電圧(電子写真感光体に対して帯電ローラを加圧当接させた場合には、約550V)に、必要とされる感光体表面電位Vdを足したDC電圧を印加する。一方、AC帯電方式の接触帯電装置では、必要とされる感光体表面電位Vdに相当するDC電圧に放電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を持つAC成分を重畳した電圧を印加する。これは、AC電圧による電位の均一化効果を目的としたものであり、被帯電体の電位はAC電圧のピークの中央である電位Vdに収束し、環境等の外乱に影響されることはなく、接触帯電方式として優れた方法である。
【0004】
しかしながら、AC帯電方式では直流電圧印加時における放電開始電圧(以下、VTHと表す)の2倍以上のピーク間電圧である高圧の交流電圧を重畳させるため、直流電源とは別に交流電源が必要となり、装置自体のコストアップを招いていた。更には、交流電流を多量に消費することにより、帯電ローラ及び感光体の耐久性が低下し易いという問題点があった。
【0005】
これらの問題点は、帯電ローラに直流電圧のみを印加して帯電を行うDC帯電方式により解消される。しかしながら、帯電ローラへの印加電圧を直流電圧のみの電圧とした場合、帯電処理された被帯電体表面の帯電電位がムラになりやすくなる。このような印加電圧を直流電圧のみとした帯電部材の問題点に対して、導電性粒子を用いることにより帯電性及び抵抗の均一性を得ることを目的とした技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
一般的な帯電ローラは最外層に被覆層を持ち、その形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法及びディップコート法等が挙げられ、数μm〜数十μmの膜が形成されることが多い。この被覆層により帯電ムラを防止する効果があるが、被覆層は塗工液を用いて形成している。このため、膜厚ムラや塗工ムラを防止し安定した抵抗の帯電ローラを生産していくためには、塗工液の電気抵抗、粘度、比重、温度を十分に管理することが重要な課題となる。
【0007】
特に、電気抵抗は帯電ローラとしての特性を発揮するために非常に重要な管理項目であり、また帯電ローラの電気抵抗は被覆層の抵抗が支配的になる場合が多い。このため、安定した電気抵抗の帯電ローラを得るためには、被覆層の抵抗を安定化(均一化)させることが重要となる。
【0008】
被覆層の抵抗安定性の問題は、塗工液の(a)経時抵抗安定性及び(b)分散バッチ毎の抵抗安定性の2種類に大別できる。
上記(a)経時抵抗安定性の問題に対しては、例えばアルミナ、シリカ等の表面にカーボンブラックを被覆した導電性粒子を用いる技術(特許文献2参照)が開示されており、ある程度の効果が得られている。
【0009】
上記(b)分散バッチ毎の抵抗安定性の問題に対しては、従来から、スチール、ジルコニア、アルミナ、ガラスビーズ等の分散方法が試みられている。また、メディアペイントシェーカー、サンドミル、ビーズミル等の分散機により導電性粒子を分散させる方法が試みられている。更に、これらの分散メディアの中でも、ガラスビーズは比重や硬度がスチール、ジルコニア、アルミナ等と比べて小さく、粉砕力が小さいという特性を有する。このため、ガラスビーズを用いた分散方法では、導電性粒子が適正粒径以上に粉砕されて再凝集が起きる現象、いわゆる、過分散の状態になりにくく、塗工液の粘度上昇等の問題が起こりにくい。また、ガラスビーズは分散条件の制御が行いやすく、比較的、低汚染度で安価であるという利点を挙げることができる。従って、従来からガラスビーズは帯電ローラ用塗工液における導電性粒子の分散に好適なものとして使用されている。
【特許文献1】特開平06−250494号公報
【特許文献2】特開2006−133589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記(b)分散バッチ毎の抵抗安定性の問題に関しては、上記のようにガラスビーズを分散メディアとして用いた分散方法によっても、未だ十分に解決できていなかった。特に、ガラスビーズにより、導電性粒子は塗工液中でかなり激しい条件で攪拌混合されることとなる。このため、この混合攪拌時に、多数回、ガラスビーズが導電性粒子と接触・衝突を繰り返すこととなり、この接触・衝突時にガラスビーズ表面の微細な空隙内などに導電性粒子の小片が入り込んでいた。
【0011】
従って、このガラスビーズを繰り返し使用して導電性粒子を含有する塗工液を混合攪拌すると、このビーズ表面内に導電性粒子が入り込んだり、又はビーズ表面内から導電性粒子が飛び出たりすることとなっていた。このため、単に塗工液中への導電性粒子の添加量を調節するだけでは、塗工液中の導電性粒子の濃度を完全に制御できず、分散バッチ毎に製造後の帯電ローラの抵抗値が変動することとなっていた。
【0012】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、塗工液の分散メディアとしてガラスビーズを繰り返し使用した場合であっても、塗工液中の導電性粒子濃度を一定とできるものである。この結果、分散バッチ(製造バッチ)毎に電気抵抗の安定した帯電ローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の課題以下によりは解決される。
1.導電性支持体と、前記導電性支持体の外周面上に弾性層と、前記弾性層の外周面上に被覆層と、を有する帯電ローラの製造方法であって、
(1)前記弾性層を有する導電性支持体を準備する工程、
(2)ガラスビーズを溶剤1で洗浄する洗浄工程、
(3)下記条件(A)を満たすようになるまで、溶剤2により前記ガラスビーズの洗浄をn回(nは2以上の自然数である)、繰り返し行う追洗浄工程、
(A) (n−1)回洗浄後とn回洗浄後の溶剤2のイオン導電率の変化率Δσが、下記式(B)を満たす
Δσ=1−σn/σn-1≦0.1・・・(B)
(σnは追洗浄工程でn回、洗浄後の溶剤2の導電率[nScm-1]を表す)
(4)導電性粒子を含有する溶液を準備した後、前記追洗浄工程で洗浄したガラスビーズを分散メディアとして用いて前記溶液の分散処理を行い、前記溶液中に導電性粒子を分散させた塗工液を得る塗工液調製工程、
(5)前記弾性層の外周面上に前記塗工液を塗布、乾燥して被覆層を形成する塗布工程、
を有することを特徴とする帯電ローラの製造方法。
【0014】
2.導電性支持体と、前記導電性支持体の外周面上に弾性層と、前記弾性層の外周面上に被覆層と、を有する帯電ローラの製造方法であって、
下記工程(1)〜(5)をL回(Lは2以上の自然数である)、繰り返し行い、第(M−1)回目(M=2,・・・L)の工程(4)で分散メディアとして用いたガラスビーズを、第M回目の工程(2)及び(3)のガラスビーズとして洗浄することを特徴とする帯電ローラの製造方法。
(1)前記弾性層を有する導電性支持体を準備する工程、
(2)ガラスビーズを溶剤1で洗浄する洗浄工程、
(3)下記条件(A)を満たすようになるまで、溶剤2により前記ガラスビーズの洗浄をn回(nは2以上の自然数である)、繰り返し行う追洗浄工程、
(A) (n−1)回洗浄後とn回洗浄後の溶剤2のイオン導電率の変化率Δσが、下記式(B)を満たす
Δσ=1−σn/σn-1≦0.1・・・(B)
(σnは追洗浄工程でn回、洗浄後の溶剤2の導電率[nScm-1]を表す)
(4)導電性粒子を含有する溶液を準備した後、前記追洗浄工程で洗浄したガラスビーズを分散メディアとして用いて前記溶液の分散処理を行い、前記溶液中に導電性粒子を分散させた塗工液を得る塗工液調製工程、
(5)前記弾性層の外周面上に前記塗工液を塗布、乾燥して被覆層を形成する塗布工程。
【0015】
3.前記ガラスビーズが、ソーダ石灰から構成されるガラスビーズであることを特徴とする上記1又は2に記載の帯電ローラの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、塗工液調整工程において分散ロット毎の塗工液及び帯電ローラの抵抗ばらつきを抑えることができる。これにより、均一な抵抗特性を有する帯電ローラを製造して、その生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
1.帯電ローラの製造方法
(第一の帯電ローラの製造方法)
本発明の帯電ローラは、導電性支持体と、導電性支持体の外周面上に弾性層と、弾性層の外周面上に被覆層と、を有する。この帯電ローラの第一の製造方法は、以下の工程を有する。
(1)弾性層を有する導電性支持体を準備する工程。
(2)ガラスビーズを溶剤1で洗浄する洗浄工程。
(3)下記条件(A)を満たすようになるまで、溶剤2によりガラスビーズの洗浄をn回(nは2以上の自然数である)、繰り返し行う追洗浄工程。
【0018】
(A) (n−1)回洗浄後とn回洗浄後の溶剤2のイオン導電率の変化率Δσが、下記式(B)を満たす
Δσ=1−σn/σn-1≦0.1・・・(B)
(σnは追洗浄工程でn回、洗浄後の溶剤2の導電率[nScm-1]を表す)。
(4)導電性粒子を含有する溶液を準備した後、追洗浄工程で洗浄したガラスビーズを分散メディアとして用いて溶液の分散処理を行い、溶液中に導電性粒子を分散させた塗工液を得る塗工液調製工程。
(5)弾性層の外周面上に塗工液を塗布、乾燥して被覆層を形成する塗布工程。
【0019】
本発明の第一の帯電ローラの製造方法では、工程(2)の洗浄工程で予備的に洗浄を行い、分散メディアとして用いるガラスビーズの洗浄を行う。次に、工程(3)の追洗浄工程でガラスビーズ表面に付着又は入り込んだ導電性物質などの微細な異物を取り除く。従って、このように洗浄工程及び追洗浄工程により洗浄したガラスビーズを用いて、導電性粒子を含有する溶液の分散処理を行う際には、ガラスビーズから異物や導電性物質が遊離する(飛び出す)ことを防止できる。この結果、塗工液調整時に、溶液中の導電性粒子の濃度が変動したり、不均一になるといったことを防止できる。また、この塗工液を塗布、乾燥して得た被覆層中の導電性粒子の濃度を所望の濃度に制御できると共に、被覆層中の導電性粒子の分布を均一にすることができる。この結果、製造バッチ毎の抵抗特性が変化しない、動作安定性に優れた帯電ローラを製造することができる。
【0020】
この製造方法では、工程(1)でまず、弾性層を有する導電性支持体を準備する。この弾性層を有する導電性支持体としては、予め弾性層を設けた導電性支持体を用意しても、まず、導電性支持体を準備し、この上に弾性層用の塗工液を塗布、乾燥することによって弾性層を形成しても良い。
【0021】
また、工程(2)(洗浄工程)で用いる溶剤1と工程(3)(追洗浄工程)で用いる溶剤2は同じものであっても異なるものであっても良い。ただ、分散作業の効率の面、ガラスビーズの乾燥工程を省略できる点、及び洗浄工程後のガラスビーズ上に残留した溶剤1が溶剤2を汚染することを防止するため、溶剤1と2は同じものであることが好ましい。また、洗浄工程と追洗浄工程で用いる洗浄方法は同じものであっても異なるものであっても良い。更に、追洗浄工程において、各洗浄回の洗浄条件(溶剤2の種類、洗浄方法、洗浄時間など)は同じであっても、異なっていても良いが、同じにすることが好ましい。
【0022】
本発明のガラスビーズの洗浄用の溶剤1及び2としては、特に限定されるものではないが、以下のものを使用することができる。
・メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と表す)、アセトンなどのケトン系溶剤、
・メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤などの有機溶剤、
・純水。
【0023】
本発明の追洗浄工程では、2回以上、ガラスビーズの洗浄を繰り返す。また、各回の洗浄ごとに、使用した溶媒2を取り替える。そして、各回で洗浄後の溶媒2が、下記条件(A)を満たすようになった時点で洗浄を終了する(すなわち、下記条件(A)を満たすようなn回(nは2以上の自然数である)でガラスビーズの洗浄を終了する)。
(A) (n−1)回洗浄後とn回洗浄後の溶剤2のイオン導電率の変化率Δσが、下記式(B)を満たす
Δσ=1−σn/σn-1≦0.1・・・(B)
(σnは追洗浄工程でn回、洗浄後の溶剤2の導電率[nScm-1]を表す)。
なお、上記イオン導電率は、追洗浄工程において1回の洗浄操作を行う毎に新しく溶剤2を取り替え、各洗浄回数毎にガラスビーズの洗浄操作を行った後の溶剤2のイオン導電率を表したものである。従って、σnは、(n−1)回目の洗浄操作を行った後、溶剤2を取り替え、新しい溶剤2を用いて洗浄操作を行った後の溶剤2のイオン導電率となる。また、典型的には、追洗浄工程において、各洗浄回毎の溶剤2の使用量を同じとする。
【0024】
なお、導電率の測定は、任意の容器に溶剤を取分け、恒温槽を用いて溶剤温度を20℃から25℃のレンジの範囲内とし、この溶剤内に測定用プローブを浸漬させて行う。溶剤温度がこの範囲を越えると、温度による導電率の変化が無視できなくなる。
【0025】
ここで、追洗浄工程では、下記式(C)を満たすようになるまで、ガラスビーズの洗浄を繰り返すことが好ましい。
Δσ=1−σn/σn-1≦0.07・・・(C)
(σnは追洗浄工程でn回、洗浄後の溶剤2の導電率[nScm-1]を表す)。
また、下記式(D)を満たすようになるまで、ガラスビーズの洗浄を繰り返すことがより好ましい。
Δσ=1−σn/σn-1≦0.05・・・(D)
(σnは追洗浄工程でn回、洗浄後の溶剤2の導電率[nScm-1]を表す)。
【0026】
上記式(C)又は(D)を満たすようになるまで洗浄を繰り返すことによって、塗工液中の導電性粒子濃度の値及びその均一性をより向上させることができる。この結果、製造バッチ毎の抵抗変化が少ない、より動作安定性に優れた帯電ローラを製造することができる。
【0027】
また、洗浄工程及び追洗浄工程では、洗浄用の溶剤1及び2中にガラスビーズを投入直後に導電率が急増し、その後、10分程度で一定値となる傾向がある。このため、洗浄工程及び追洗浄工程におけるガラスビーズの洗浄時間は、10分以上とすることが好ましい。
【0028】
また、追洗浄工程における洗浄回数nは、2以上の自然数であり、その数は特に限定されるわけではない。洗浄回数nが多いほど上式(B)の条件を満たすには有利となる。しかしながら、洗浄回数が10回を越えると、ガラスビーズの種類、平均粒径などの違いにより、ガラスビーズの磨耗や割れが生じる場合がある。このため、洗浄回数nは10回以内とすることが好ましい。
【0029】
本発明では、次に、工程(4)において、導電性粒子を含有する溶液を準備する。この溶液は、被覆層の形成用に必要とする材料を随時、添加することによって準備することができる。この溶液としては例えば、結着樹脂、導電性粒子(導電剤)、絶縁性粒子、その他の添加剤を溶媒中に添加したものを挙げることができる。
【0030】
次に、この溶液は構成材料が均一に分散していないため、上記洗浄工程及び追洗浄工程により洗浄したガラスビーズを分散メディアとして用いて、分散処理を行い、導電性粒子を所望の濃度に制御すると共に、均一に分散した塗工液を得る。この分散処理を行うための分散手段としては、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル等の各種分散装置を使用することができる。なお、ガラスビーズを分散メディアとして用いた分散処理を行う前に、予め予備的に溶液に対して分散、攪拌混合処理などを行っても良い。
【0031】
分散効率上、ガラスビーズの平均粒径は1mm以下が好ましい。ガラスビーズは比重や硬度がスチール、ジルコニア、アルミナ等と比べて小さく、過分散になりにくいため、塗工液の粘度上昇等の問題を起こしくい。このため、分散条件の制御が行いやすく、被覆層用の塗工液における導電性粒子の分散に適している。また、比較的、低汚染度で安価であるという利点を有する。
【0032】
また、特に、ガラスビーズとしては、ソーダ石灰から構成されたガラスビーズを用いることが好ましい。このソーダ石灰から構成されたガラスビーズを用いて分散処理を行うと、塗工液の粘度上昇を小さくすることができる。
【0033】
次に、工程(5)では、工程(4)で調整した塗工液を、弾性層の外周面上に塗布、乾燥して最終的に被覆層を形成する。この被覆層用の塗工液を塗布する方法については特に限定されず、ディッピング法、スプレーコート法、ロールコート法などの公知の方法を用いることができる。また、塗工液の乾燥は公知の条件で行うことができる。
【0034】
(第二の帯電ローラの製造方法)
本発明の帯電ローラは、導電性支持体と、導電性支持体の外周面上に弾性層と、弾性層の外周面上に被覆層と、を有する。この帯電ローラの第二の製造方法は、下記工程(1)〜(5)をL回(Lは2以上の自然数である)、繰り返し行う。そして、第(M−1)回目(M=2,・・・L)の工程(4)で分散メディアとして用いたガラスビーズを、第M回目の工程(2)及び(3)のガラスビーズとして洗浄する。
(1)弾性層を有する導電性支持体を準備する工程、
(2)ガラスビーズを溶剤1で洗浄する洗浄工程、
(3)下記条件(A)を満たすようになるまで、溶剤2によりガラスビーズの洗浄をn回(nは2以上の自然数である)、繰り返し行う追洗浄工程、
(A) (n−1)回洗浄後とn回洗浄後の溶剤2のイオン導電率の変化率Δσが、下記式(B)を満たす
Δσ=1−σn/σn-1≦0.1・・・(B)
(σnは追洗浄工程でn回、洗浄後の溶剤2の導電率[nScm-1]を表す)
(4)導電性粒子を含有する溶液を準備した後、追洗浄工程で洗浄したガラスビーズを分散メディアとして用いて溶液の分散処理を行い、溶液中に導電性粒子を分散させた塗工液を得る塗工液調製工程。
(5)弾性層の外周面上に塗工液を塗布、乾燥して被覆層を形成する塗布工程。
【0035】
第二の帯電ローラの製造方法では例えば、Lが3以上の場合、以下のようにして処理を行う。
第1回目の工程(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、第2回目の工程(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、・・・第L回目の工程(1)、(2)、(3)、(4)、(5)。
そして、工程(1)〜(5)をL回、繰り返す。ただし、上記の例ではLを3以上としたが、このように工程(1)〜(5)を繰り返す回数Lは2以上の自然数であれば良い。そして、各回の工程(2)及び(3)では、前の回の工程(4)で分散メディアとして用いたガラスビーズを洗浄する。また、各回の洗浄工程、及び追洗浄工程の1回の洗浄処理を行う度に、使用した溶媒2を取り替える。このようにして、各回数(この回数をM回とする)の工程ごとに前の回数(M−1回)で使用したガラスビーズの洗浄を行うことによって、帯電ローラの製造にガラスビーズを繰り返し、使用することができる。
【0036】
すなわち、工程(1)〜(5)は、前記Mが2から1つずつ増加してLになるまで繰り返して行い、各回数の工程ごとに前の回数(M−1回)で使用したガラスビーズの洗浄を行うものとなる(ただし、Lが2の時は、Mが2で終了する)。また、各回の工程(4)において、塗工液調整時に溶液中の導電性粒子の濃度が変動したり、不均一になるといったことを防止できる。更に、この塗工液を塗布、乾燥して得た被覆層中の導電性粒子の濃度を所望の濃度に制御できると共に、被覆層中の導電性粒子の分布を均一にすることができる。この結果、製造バッチ毎の抵抗特性が変化しない、動作安定性に優れた帯電ローラを製造することができる。
【0037】
なお、この第二の帯電ローラの製造方法では、各工程の下記条件は、第一の帯電ローラの製造方法と同様にすることができる。
・工程(2)及び(3)で使用する洗浄手段及び洗浄の条件。
・工程(2)〜(4)のガラスビーズの種類・特性。
・工程(4)及び(5)の塗工液の組成・特性。
・工程(5)の塗工液の塗布・乾燥条件。
また、これ以外の条件についても、第一の帯電ローラの製造方法と同様にすることができる。
【0038】
2.帯電ローラ
以下に図面を参照して、本発明の帯電ローラを詳細に説明する。
図1に本発明の帯電ローラの一例における概略断面図を示す。本発明の帯電ローラは、図1(a)に示すように、導電性支持体1a、導電性支持体1aの外周面上に形成された弾性層1bと、弾性層1bの外周面上に形成された被覆層1cとからなる2層を有する。
【0039】
また、図1(b)に示すように、導電性支持体1a上に、弾性層1b、抵抗層1d及び被覆層1cからなる3層を有する。更に、図1(c)に示すように、導電性支持体1a上に、弾性層1b、抵抗層1d、第2の抵抗層1e及び被覆層1cの4層を有する。このように、本発明の帯電ローラでは導電性支持体上に接触して弾性層、最表層として被覆層が設けられており、導電性支持体1a上には、少なくとも弾性層と被覆層が設けられている必要があるが、これらの層の間に複数の層が設けられていても良い。また、導電性支持体1a上に、4層以上の層を形成した構成としても良い。
【0040】
(導電性支持体)
本発明に用いる導電性支持体1aは、導電性を有する材料からなるものであれば良く、具体的には導電性支持体1aとして、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム及びニッケル等の導電性金属材料の丸棒又は円筒管を用いることが好ましい。更に、これらの金属材料の丸棒又は円筒管の表面に防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理を施したものを用いても構わないが、導電性を損なわないことが必要である。
【0041】
(弾性層)
本発明の帯電ローラにおいては、弾性層1bは、被帯電体としての電子写真感光体に対する給電や、電子写真感光体に対する良好な均一密着性を確保するために適当な導電性と弾性を持たせたものである。また、帯電ローラと電子写真感光体との均一密着性を確保するために、弾性層1bは、弾性層1bを研磨によって中央部を太く、両端部に行くほど細くなる形状、いわゆるクラウン形状に形成することが好ましい。一般に、帯電ローラは、導電性支持体1aの両端部に所定の押圧力を与えて電子写真感光体と当接されているので、中央部の押圧力が小さく、両端部にいくほど大きくなっている。このため、導電性支持体の真直度が十分であれば問題ないが、十分でない場合には中央部と両端部に対応する画像に濃度ムラが生じる場合がある。この場合に、帯電ローラの形状をクラウン形状とすることにより画像の濃度ムラを防止することができる。
【0042】
本発明の弾性層1bは、導電性を有する。本発明の弾性層1bの導電性は、ゴム等の弾性材料中に導電剤(導電性粒子)を添加することによって調整することができる。本発明で使用できる導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト及び導電性金属酸化物粉末等の電子伝導機構を有する導電性材料を含む導電剤を挙げることができる。また、アルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン伝導機構を有する導電剤を挙げることができる。弾性層1bの導電性は、これら導電剤を適宜、添加することにより、体積抵抗率を1010Ωcm以下に調整するのが良い。
【0043】
弾性層1bを構成する弾性材料としては例えば、以下の合成ゴムを使用できる。
・天然ゴム、エチレンプロピレンゴム(以下、「EPDM」と表す)、スチレンブタジエンゴム(以下、「SBR」と表す)、シリコンーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(以下、「IR」と表す)。
・ブタジエンゴム(以下、「BR」と表す)、ニトリルブタジエンゴム(以下、「NBR」と表す)及びクロロプレンゴム(以下、「CR」と表す)。
また、上記合成ゴム以外に、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0044】
弾性層1bの形成方法は特に限定されず、公知の方法を用いて形成することができる。例えば、上記の弾性材料、導電剤等の原材料を配合して、押出成形や射出成形、圧縮成形等の公知の方法により弾性層1bを形成することができる。また、弾性層1bは導電性支持体の外周面上に直接、形成しても良いし、弾性層1bをチューブ形状に成形し、これに導電性支持体を圧入して被覆させても良い。導電性支持体上に弾性層1bを形成して作製した弾性ローラは、作製後に弾性層1b表面を研磨して形状を整えても良い。
【0045】
(被覆層)
被覆層1cは通常、弾性層1bに接した位置に形成されるが、図1(b)、(c)に示されるように、弾性層と被覆層の間に1以上の層を有していても良い。被覆層1cは、通常、弾性層1b中に含有される軟化油や可塑剤等が帯電ローラ表面へブリードアウトするのを防止したり、帯電ローラ全体の電気抵抗を調整する目的で設けられる。また、被覆層1cは、帯電ローラの最表面を構成し、被帯電体である電子写真感光体と直接、接触するため、電子写真感光体を汚染しない材料構成とする必要がある。
【0046】
本発明の被覆層1c並びに、必要に応じて設ける抵抗層1d及び第2の抵抗層1eは、導電性又は半導電性を有している必要がある。導電性又は半導電性の発現のために、導電剤(導電性粒子)として、各種電子伝導機構を有する導電性粒子(導電性カーボン、グラファイト等の導電性材料、導電性金属酸化物粒子、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等の金属粒子)を使用することができる。
【0047】
また、導電剤として、複数の層からなり、最外層に含まれる物質がカーボンブラックである導電性粒子を挙げることができる。ここで、「複数の層からなる」とは、導電性粒子の中心部からその半径方向に外側に向かって複数の層が存在することを表す。このとき、最外層より内側の内層中に含まれる物質としては、下記の物質を挙げることができる。
・シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム及びジルコン酸カルシウムなどの金属酸化物粒子。
この複数の層からなり、最外層に含まれる物質がカーボンブラックである導電性粒子を用いると、被覆層の経時抵抗安定性を向上させることができる。
【0048】
本発明の被覆層1cを構成する結着樹脂としては、下記の樹脂を挙げることができる。
・フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(SEBC)及びオレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(CEBC)。
【0049】
また、目的に応じた表面粗さを確保するため、被覆層1c中には必要に応じて絶縁性粒子を含有しても良い。この絶縁性粒子としては、ポリウレタン、ポリメタクリル酸メチル(以下、「PMMA」と表す)等からなる絶縁性樹脂粒子を用いることができる。また、被覆層1cの体積抵抗率は、通常、104Ωcm以上、1015Ωcm以下であることが好ましい。被覆層1cの厚さは通常、10μm以上、100μm以下であることが好ましく、10μm以上、30μm以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は質量部を示す。
[実施例1]
下記の要領で本発明の帯電ローラを作製した。
(弾性層)
まず、下記材料を準備した。
・エピクロルヒドリンゴム 100部
(商品名:エピクロマーCG102 ダイソー株式会社製)
・炭酸カルシウム 30部
(商品名:シルバーW 白石工業株式会社製)
・酸化亜鉛 5部
(商品名:酸化亜鉛2種 ハクスイテック株式会社製)
・脂肪酸 5部
(商品名:ステアリン酸S 花王株式会社製)。
【0051】
以上の材料を密閉型ミキサーで混練し、原料コンパウンドを調製した。この原料コンパウンドに、さらに、前記エピクロルヒドリンゴム100部に対し加硫剤の硫黄1部、加硫促進剤のノクセラーDM(商品名、大内新興化学工業(株)製)1部及びノクセラーTS(商品名、大内新興化学工業(株)製)0.5部を加えた。これを2本ロール機にて混練した。
【0052】
得られたコンパウンドを押出成形機により押出すと同時に、連続的に導電性支持体を押出成形機のクロスヘッドダイ内を通過させ、導電性支持体の外周面上にコンパウンドを配置させた。そして、φ6mmのステンレス製の導電性支持体の外周面上にコンパウンド層を形成した。これを熱風炉にて170℃、1時間、加熱・加硫して導電性支持体の外周面上に弾性層を形成した後、外径φ8.5mmとなるように研磨処理を行ってローラ1を得た。
【0053】
(被覆層)
上記ローラ1の弾性層の外周面上に被覆層を形成するための塗工液を、以下のようにして調製した。
・アクリルポリオール溶液 100部
(商品名:PLACCEL DC2016 ダイセル化学社製)
・イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と表す) 40部
(商品名:VESTANAT B1370 デグサ社製)
・ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と表す) 30部
(商品名:DURANATE TPA−B80E 旭化成ケミカルズ社製)
・導電性粒子 30部
(商品名:CS−Bk100Y 戸田工業社製)
・ポリメチルメタクリレート粒子 35部
(商品名:MBX−5 積水化成品工業社製、平均粒子径5μm)
・メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と表す) 340部。
【0054】
以上の原材料を準備(液量として20L)し、羽型攪拌機(スリーワンモータ BL600(商品名);HEIDON社製)を用いて200rpm、30分撹拌し、混合溶液を調製した。次に、この混合溶液を循環式のビーズミル分散機(LMZ−10(商品名);アシザワ・ファインテック株式会社製)を用いて6時間、分散処理(処理速度8000ml/min、液温22℃±5℃)を行った。そして、被覆層形成用の塗工液P(1)を得た(塗工液調整工程)。このとき、分散メディアとしてガラスビーズを用い、このガラスビーズは次の操作を行ったものを用いた。
【0055】
まず、ビーズミル分散機にガラスビーズ(GB200M(商品名);ポッターズ・バロティーニ株式会社製、φ0.8mm)を13kg(体積占有率:90%)とMIBK(溶媒1)18Lを入れた。次に、350rpmで10min、循環させながら攪拌してガラスビーズの洗浄を行った(洗浄工程)。洗浄工程の終了後、MIBKの導電率を導電率計(商品名:Model645 日本ルフト株式会社製)を用いて測定した。さらにMIBK(溶媒2)を交換して同様の洗浄操作を10回、繰り返した(追洗浄工程)。
【0056】
このとき、追洗浄工程における洗浄9回目の導電率は44、洗浄10回目の導電率は40であり、MIBKの導電率変化Δσ=1−σ10/σ9の値は0.09であり、下記条件(B)を満たしていた。
【0057】
Δσ=1−σn/σn-1≦0.1・・・(B)
(σnは追洗浄工程でn回目の洗浄後の溶剤2の導電率[nScm-1]を表す。)
なお、本実施例では、上記条件(A)中のnは10となる。
【0058】
続いて、塗工液P(1)を分散機から取り出し後、容器内に入れた。次に、ローラ1を、容器内の塗工液P(1)の液面に対して垂直状態に保持して、塗工液P(1)中に浸漬し、弾性層の外周面上に塗工液P(1)を塗布した。この際、下方端部のステンレス製の導電性支持体1aにポリアセタール製のマスキング用キャップを被せた。
【0059】
この後、弾性層上に塗布した塗工液P(1)を、熱風乾燥機中で160℃、1時間、乾燥、硬化させて被覆層を形成し、帯電ローラR(1)を得た(塗布工程)。
また、塗工液P(1)を分散機から取り出した後、上記と同様の工程で続けて、新たな塗工液の調製及び分散処理を行い、上記と同様にして塗工液P(2)及び帯電ローラR(2)を得た。この際、塗工液P(1)の調整に使用したガラスビーズを上記と同様の洗浄工程及び追洗浄工程により洗浄した後、これを分散メディアとして用いて塗工液P(2)を調整した。
本実施例にて得られた塗工液及び帯電ローラについて、下記のようにして評価を行った。
【0060】
(塗工液粘度)
本発明の分散処理(塗工液調整工程)の終了時から、回転架台で24時間、保管した時の塗工液P(1)及びP(2)の粘度変化Δμ〔%〕を下記式(E)により求めた。
Δμ=100×〔(μ−μ0)/μ0〕―――――(E)
(式中、μ0は上記分散処理終了時における塗工液の粘度を示し、μは分散処理終了時から回転架台で24時間、保管した時の該塗工液の粘度を示す。)。
【0061】
上記式(E)で求めた、粘度変化Δμ〔%〕に基づき、下記基準で塗工液P(1)及びP(2)についてランク付けを行い、塗工液を回転架台で24時間、保管した時の粘度安定性について各々評価した。得られた結果を表1に示す。
【0062】
A:塗工液P(1)、P(2)ともにΔμが25%以下であった
B:塗工液P(1)及びP(2)のうち、少なくとも一方のΔμが25%より大きく、50%以下であった
C:塗工液P(1)及びP(2)のうち、少なくとも一方のΔμが50%より大きかった。
【0063】
なお、上記基準においてA及びBランクの塗工液は被覆層を形成し、帯電ロールを作製した際に膜厚や抵抗値がほぼ安定しているが、Cランクの塗工液は粘度変化に付随して膜厚や抵抗値の変動が起こり、安定生産が難しくなることが確認されている。
【0064】
(塗工液の抵抗安定性)
本発明における塗工液の抵抗安定性を以下に示す方法で評価した。本実施例にて得られた帯電ローラR(1)及びR(2)をSUSドラム(φ30mm)に当接させ、SUSドラムを回転させながら−200Vの直流電圧を印加して電流値を測定した。帯電ローラR(1)の電流値C1及び帯電ローラR(2)の電流値C2から、下記式(F)により電流変化ΔC〔%〕を求めた。
ΔC=100×〔(C2−C1)/C1〕―――――(F)
得られた電流変化ΔC〔%〕に基づき、下記基準でランク付けを行い、評価した。
A:電流変化ΔCが20%以下であった
B:電流変化ΔCが20%より大きく、50%以下であった
C:電流変化ΔCが50%より大きかった。
【0065】
なお、上記基準においてA及びBランクの塗工液を用いて生産した場合には抵抗安定性が良いものと判断できるが、Cランクの塗工液はバッチ間の抵抗値バラツキが大きく抵抗安定性が悪いものと判断できる。
【0066】
(画像評価)
図1に示す電子写真方式の画像形成装置(キヤノン社製;LASER SHOT LBP−2510(商品名))に上記で得られた帯電ローラR(1)及びR(2)を組み込み、N/N環境(23℃、湿度53%)にてハーフトーン画像を出力した。この画像について、下記基準で目視に基づき評価した。
A:帯電ローラR(1)とR(2)の画像濃度に差がない
B:帯電ローラR(1)とR(2)の画像濃度に若干の差がある
C:帯電ローラR(1)とR(2)の画像濃度に大きな差がある
なお、このとき、帯電ローラによる帯電後の電子写真感光体の表面電位(暗部電位)VDが−400V付近となるように印加電圧(直流電圧のみ)を調節した。結果を表1に示す。
【0067】
なお、上記基準において、A及びBランクの帯電ローラR(1)及びR(2)を用いて画出したときには画像として実用上、使用しうるものが得られる。一方、Cランクの帯電ローラR(1)及びR(2)を用いて画出したものは、実用上の使用に適さないことが確認されている。
【0068】
[実施例2]
洗浄時の溶剤1及び2をMEKにし、分散処理前の追洗浄工程の洗浄操作を5回に変更した以外は実施例1と同様にして、被覆層形成用の塗工液P(1)と帯電ローラR(1)、及び塗工液P(2)と帯電ローラR(2)を得た。このとき、洗浄4回目の導電率は102、洗浄5回目の導電率は93であり、MEKの導電率変化Δσ=1−σ5/σ4の値は0.09であった。この帯電ローラの評価結果を表1に示す。
【0069】
[実施例3]
分散メディアとして用いたガラスビーズの外径をφ0.5mmとし、塗工液調整工程における分散処理の時間を4.5時間とした以外は実施例2と同様にした。そして、被覆層形成用の塗工液P(1)と帯電ローラR(1)、及び塗工液P(2)と帯電ローラR(2)を得た。分散処理前の追洗浄工程の洗浄操作を5回、繰り返した。このとき洗浄4回目の導電率は196、洗浄5回目の導電率は180であり、MEKの導電率変化Δσ=1−σ5/σ4の値は0.08であった。この帯電ローラの評価結果を表1に示す。
【0070】
[実施例4]
洗浄時の溶剤1及び2を36L(実施例1の2倍)にし、分散処理前の追洗浄工程の洗浄操作を4回に変更した以外は実施例2と同様にして、被覆層形成用の塗工液P(1)と帯電ローラR(1)、及び塗工液P(2)と帯電ローラR(2)を得た。このとき、洗浄3回目の導電率は77、洗浄4回目の導電率は72であり、MEKの導電率変化Δσ=1−σ5/σ4の値は0.06であった。この帯電ローラの評価結果を表1に示す。
【0071】
[実施例5]
分散メディアを低アルカリガラスビーズ(EGB200MM(商品名);ポッターズ・バロティーニ株式会社製、φ0.8mm)とした。また、分散処理時間を4時間とし、分散処理前の追洗浄工程の洗浄操作を3回に変更した以外は実施例2と同様にして、被覆層形成用の塗工液P(1)と帯電ローラR(1)、及び塗工液P(2)と帯電ローラR(2)を得た。このとき、洗浄2回目の導電率は64、洗浄3回目の導電率は63であり、MEKの導電率変化Δσ=1−σ3/σ2の値は0.02であった。この帯電ローラの評価結果を表1に示す。
【0072】
[比較例1]
ガラスビーズの洗浄を行わずに分散処理を行った以外は実施例1と同様にして、被覆層形成用の塗工液P(1)と帯電ローラR(1)、及び塗工液P(2)と帯電ローラR(2)を得た。この帯電ローラの評価結果を表2に示す。
【0073】
[比較例2]
分散処理前の追洗浄工程の洗浄操作を3回とし、2回目の導電率が86、洗浄3回目の導電率が63、MIBKの導電率変化Δσ=1−σ3/σ2の値が0.27の状態のガラスビーズを分散メディアとして用いて分散処理を行った。これ以外は実施例1と同様にして、被覆層形成用の塗工液P(1)と帯電ローラR(1)、及び塗工液P(2)と帯電ローラR(2)を得た。この帯電ローラの評価結果を表2に示す。
【0074】
[比較例3]
分散処理前の追洗浄工程の洗浄操作を2回とし、1回目の導電率が157、洗浄2回目の導電率が80、MIBKの導電率変化Δσ=1−σ2/σ1の値が0.49の状態のガラスビーズを分散メディアとして用いて分散処理を行った。これ以外は実施例1と同様にして、被覆層形成用の塗工液P(1)と帯電ローラR(1)、及び塗工液P(2)と帯電ローラR(2)を得た。この帯電ローラの評価結果を表2に示す。
【0075】
[比較例4]
分散メディアをジルコニア(YTZ(商品名);株式会社ニッカトー製、φ0.8mm)とし、分散処理時間を3時間、分散処理前の追洗浄工程の洗浄操作を2回とした以外は実施例1と同様にした。そして、被覆層形成用の塗工液P(1)と帯電ローラR(1)、及び塗工液P(2)と帯電ローラR(2)を得た。このとき、洗浄1回目の導電率は30、洗浄2回目の導電率は28であり、MIBKの導電率変化Δσ=1−σ2/σ1の値は0.07であった。この帯電ローラの評価結果を表2に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
表1より、本発明の実施例1〜5では、ガラスビーズを用いて塗工液の分散処理を行い、かつ追洗浄工程ではΔσ≦0.1となるまで、ガラスビーズの洗浄を行うことによって、Δμ及びΔCは「A」又は「B」となった。このため、塗工液の粘度の安定性、抵抗の再現性は共に良好な結果が得られたことが分かる。また、画像評価も「A」又は「B」となっており、実施例1〜5で作成した帯電ローラは優れた帯電特性を有することが分かる。
【0079】
これに対して、表2より、比較例1では追洗浄工程を行わず、比較例2及び3ではΔσが0.1を超えており、比較例4では分散メディアとしてガラスビーズを使用しなかった。このため、何れの比較例もΔμ、ΔC及び画像評価が全て「A」又は「B」となることはなかった。従って、比較例の構成では、塗工液の粘度の安定性、抵抗の再現性及び画像特性が全て優れた帯電ローラを製造できないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の帯電ローラの実施形態例における概略断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1a 導電性支持体
1b 弾性層
1c 被覆層
1d 抵抗層
1e 第2の抵抗層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、前記導電性支持体の外周面上に弾性層と、前記弾性層の外周面上に被覆層と、を有する帯電ローラの製造方法であって、
(1)前記弾性層を有する導電性支持体を準備する工程、
(2)ガラスビーズを溶剤1で洗浄する洗浄工程、
(3)下記条件(A)を満たすようになるまで、溶剤2により前記ガラスビーズの洗浄をn回(nは2以上の自然数である)、繰り返し行う追洗浄工程、
(A) (n−1)回洗浄後とn回洗浄後の溶剤2のイオン導電率の変化率Δσが、下記式(B)を満たす
Δσ=1−σn/σn-1≦0.1・・・(B)
(σnは追洗浄工程でn回、洗浄後の溶剤2の導電率[nScm-1]を表す)
(4)導電性粒子を含有する溶液を準備した後、前記追洗浄工程で洗浄したガラスビーズを分散メディアとして用いて前記溶液の分散処理を行い、前記溶液中に導電性粒子を分散させた塗工液を得る塗工液調製工程、
(5)前記弾性層の外周面上に前記塗工液を塗布、乾燥して被覆層を形成する塗布工程、
を有することを特徴とする帯電ローラの製造方法。
【請求項2】
導電性支持体と、前記導電性支持体の外周面上に弾性層と、前記弾性層の外周面上に被覆層と、を有する帯電ローラの製造方法であって、
下記工程(1)〜(5)をL回(Lは2以上の自然数である)、繰り返し行い、第(M−1)回目(M=2,・・・L)の工程(4)で分散メディアとして用いたガラスビーズを、第M回目の工程(2)及び(3)のガラスビーズとして洗浄することを特徴とする帯電ローラの製造方法。
(1)前記弾性層を有する導電性支持体を準備する工程、
(2)ガラスビーズを溶剤1で洗浄する洗浄工程、
(3)下記条件(A)を満たすようになるまで、溶剤2により前記ガラスビーズの洗浄をn回(nは2以上の自然数である)、繰り返し行う追洗浄工程、
(A) (n−1)回洗浄後とn回洗浄後の溶剤2のイオン導電率の変化率Δσが、下記式(B)を満たす
Δσ=1−σn/σn-1≦0.1・・・(B)
(σnは追洗浄工程でn回、洗浄後の溶剤2の導電率[nScm-1]を表す)
(4)導電性粒子を含有する溶液を準備した後、前記追洗浄工程で洗浄したガラスビーズを分散メディアとして用いて前記溶液の分散処理を行い、前記溶液中に導電性粒子を分散させた塗工液を得る塗工液調製工程、
(5)前記弾性層の外周面上に前記塗工液を塗布、乾燥して被覆層を形成する塗布工程。
【請求項3】
前記ガラスビーズが、ソーダ石灰から構成されるガラスビーズであることを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電ローラの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−225086(P2008−225086A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63716(P2007−63716)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】