説明

帯電装置、画像形成装置及び製造方法

【課題】グリッドに撓み、歪み、変形等が生じることを防止し、感光体ドラムの外周面との間隔を該グリッドの全範囲にて一定にすることができ、該感光体ドラムの外周面に帯電ムラが発生することを防止できる帯電装置、画像形成装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】放電電極を収容する箱状の収容部材12に、グリッド27を有するグリッドケース13を外嵌することによって、収容部材12の側壁とグリッドケース13とが当接した状態にて保持され、グリッドケース13及びグリッド27での撓み、歪み、変形等の発生を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラムの外周面を帯電させる帯電装置、該帯電装置を備える画像形成装置、前記帯電装置の部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成装置が普及しているが、電子写真方式の画像形成装置には、感光体を帯電させる帯電器が搭載されている。一般には、非接触帯電方式の帯電器が用いられており、該非接触帯電方式の帯電器はコロナ放電により感光体の表面を所定電位に帯電させる手法がとられている。
【0003】
一方、特許文献1には、放電電極と制御グリッドの一対化により、部品点数を削減してコスト低減を図ると共に、組み立てが容易で、組み立て工数が少なくなるコロナ帯電装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、放電電極を挟んで対向配置された一対の板状シールド部と、複数の開口を有する板状グリッド電極部とが一体的に構成されたスコロトロン荷電電極が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、コロナワイヤの周りを囲むシャーシと、感光体表面の電位をグリッド制御するグリッドとを‘コ’の字形に一体化した前帯電器の構造が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、コロナ放電を行うワイヤ電極を囲むシールド電極とグリッド電極とが一体に形成された電子写真式写真機の帯電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−123135号公報
【特許文献2】実開平2−5763号公報
【特許文献3】実開平1−128260号公報
【特許文献4】実開昭62−140544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、一般に感光体はローラ状をなしており、該感光体の外周面を帯電させる帯電器のグリッド(又はグリッド電極)は、該感光体の回転軸方向に沿って長い短冊状に構成されている。その上、帯電器のグリッド又はグリッド電極は、板状をなしている。このようなことから、帯電器のグリッド又はグリッド電極には、撓み、歪み、変形等が生じ易い。ひいては帯電器のグリッド又はグリッド電極と感光体の外周面との間隔にバラツキが生じることとなるので、感光体の外周面にて帯電ムラが発生するという問題が発生する。また、特許文献1から4においては、このような問題に対する対応について開示されていない。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、放電電極を収容する箱状の収容部材に外嵌され、グリッドを有するグリッド部材を備えることにより、前記グリッドに撓み、歪み、変形等が生じることを防止し、感光体ドラムの外周面との間隔を該グリッドの全範囲にて一定にすることができ、該感光体ドラムの外周面に帯電ムラが発生することを防止できる帯電装置及び画像形成装置を提供するところにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、帯電装置が備えるグリッド部材を製造する製造方法において、エッチングによって前記グリッド部材のグリッド及び排気口を形成することにより、一つの工程で前記グリッド及び排気口が共に形成され、工程の数を減らす上に、作業時間を短縮することができる製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る帯電装置は、放電電極を収容し、感光体ドラムに面する一面に開口を有する箱状の収容部材を備え、感光体ドラムの外周面を帯電させる帯電装置において、前記収容部材に外嵌し、前記収容部材の開口を覆うグリッドを有するグリッド部材を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、放電電極を収容する箱状の収容部材に、グリッドを有するグリッド部材を外嵌することによって、前記収容部材の側壁と前記グリッド部材とが当接した状態にて保持され、前記グリッド部材及びグリッドでの撓み、歪み、変形等の発生を防ぐ。
【0013】
本発明に係る帯電装置は、前記グリッド部材は、樋状をなす外嵌部と、該外嵌部の端縁にて面方向に延設され、電源と接続する接続部とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、前記グリッド部材が前記接続部を介して電源に接続され、該電源から前記外嵌部(グリッド)に電圧が印加され、前記感光体ドラムの外周面が帯電される。
【0015】
本発明に係る帯電装置は、前記収容部材は前記接続部を補強する補強部を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、例えば前記グリッド部材が該収容部材に外嵌した場合、前記収容部材の補強部が、前記グリッド部材の接続部を補強し、撓み、変更等の発生を防ぐ。
【0017】
本発明に係る帯電装置は、前記接続部は板状をなし、前記補強部は前記接続部を該接続部の厚み方向に挟持するように構成してあることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、例えば前記グリッド部材が該収容部材に外嵌した場合、前記収容部材の補強部が、前記グリッド部材の接続部をその厚み方向に挟持することによって補強し、撓み、変更等の発生を防ぐ。
【0019】
本発明に係る帯電装置は、前記収容部材は直方体形状であり、前記一面に隣り合う面に切欠部を備え、前記グリッド部材は、前記収容部材の切欠部を介して前記収容部材内の気体を排出する排気口を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明にあっては、例えば前記放電電極の放電によって前記収容部材の内にガスが発生した場合、発生したガスは前記収容部材の切欠部を介して前記グリッド部材の排気口から外側に排出される。
【0021】
本発明に係る帯電装置は、前記グリッド部材の排気口はメッシュ状をなしていることを特徴とする。
【0022】
本発明にあっては、前記グリッド部材の排気口はメッシュ状をなしており、所定の範囲を切り取って前記排気口を成形する場合に比べ、該排気口を補強する効果を招き、前記グリッド部材(又は外嵌部)の変形、歪みの発生を抑制する。
【0023】
本発明に係る画像形成装置は、前述の発明の何れか一つに記載の帯電装置と、該帯電装置によって外周面が帯電される感光体ドラムと、該感光体ドラムの外周面に形成されたトナー像を記録シート上に転写する転写器とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明にあっては、前記感光ドラムの外周面が前記帯電装置によって帯電され、該感光体ドラムの外周面にトナー像が形成される。該感光体ドラムの外周面に形成されたトナー像は、前記転写器によって記録シート上に転写される。
【0025】
本発明に係る製造方法は、前述の発明の何れか一つに記載の帯電装置が備える前記グリッド部材を製造する製造方法において、樋状に成形すべき板材に、エッチングによって前記グリッド及び排気口を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明にあっては、前記帯電装置のグリッド部材を製造する際、板材にエッチング処理を施すことによって前記グリッド部材のグリッド及び排気口を形成する。この後、斯かる板材を樋状に曲げ成形して前記グリッド部材を製造する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、前記グリッドに撓み、歪み、変形等が生じることを防止し、前記感光体ドラムの外周面との間隔を該グリッドの全範囲にて一定にすることができるので、該感光体ドラムの外周面に帯電ムラが発生することを防止できる。
【0028】
本発明によれば、前記帯電装置が備えるグリッド部材を製造する際、エッチングによって前記グリッド部材のグリッド及び排気口を形成することにより、一つの工程で前記グリッド及び排気口が共に形成され、工程の数を減らす上に、作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のデジタル複合機の全体構成を模式的に示す縦断面図である。
【図2】本発明のデジタル複合機の感光体ドラムの周囲を示す模式図である。
【図3】本発明のデジタル複合機の帯電器が分解された場合の斜視図である。
【図4】本発明のデジタル複合機の帯電器が組み立てられた場合の斜視図である。
【図5】本発明のデジタル複合機において、グリッドケースと電源との接続を説明する説明図である。
【図6】本発明のデジタル複合機のグリッドケースの製造工程において、エッチング処理した後、樋状に曲げる成形加工前の状態を示す図ある。
【図7】図4のY−Y線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施の形態に係る帯電装置及び該帯電装置を備える画像形成装置を、デジタル複合機を例として、図面に基づいて詳述する。
【0031】
本発明に係る画像形成装置は、後述するスキャナ8において読み取られる原稿の画像データに応じて原稿の複写物を印刷し、又はネットワークを介して接続されているパーソナルコンピュータなどの外部機器からの画像データに基づく画像を印刷するデジタル複合機100である。
【0032】
図1は本発明のデジタル複合機100の全体構成を模式的に示す縦断面図である。デジタル複合機100は、帯電器1と、感光体ドラム2と、転写器3と、定着器4と、クリーニングユニット5と、除電ランプ6と、露光器7と、スキャナ8と、給紙トレイ9と、現像器10と、排紙トレイ20とを含む。図2は本発明のデジタル複合機100の感光体ドラム2の周囲を示す模式図である。
【0033】
感光体ドラム2は、例えば、アルミニウム等の金属からなり、軸線回りを矢印方向に回転駆動可能に設けられており、表面に静電潜像及びトナー像が形成される感光膜を有するローラ状部材である。感光体ドラム2の外周面は帯電器1によって所定の極性及び電位に帯電される。
【0034】
転写器3は、感光体ドラム2に向かう一面が開口している直方体形状のケース31と、ケース31内であって前記一面と対向するケース31の他面に支持され、エポキシ等からなる絶縁性基板に設けられた放電電極32とからなる。放電電極32は、例えば、ワイヤ状又は鋸歯状の放電先端を備えており、図示しない電源と接続されている。転写器3は、高電圧(例えば、負の高電圧)が印加されると、前記放電先端からコロナ放電が発生し、感光体ドラム2及び転写器3の間を通る記録用紙Pの裏面を帯電させ、感光体ドラム2の外周面に形成されたトナー像を記録用紙P上に転写する。
【0035】
定着器4は、定着ローラ41と、加圧ローラ42とを備えている。定着ローラ41は軸線回りに回転可能に設けられており、その内部に加熱部材を有し、転写器3から搬送される記録用紙Pに担持されている未定着のトナー像を構成するトナーTを加熱して溶融させて記録用紙Pに定着させる。また、定着ローラ41は、例えば、芯金及び弾性層を含む。前記芯金は、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属によって形成される。前記弾性層は、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの弾性材料で形成される。前記加熱部材としてはハロゲンランプ、赤外線ランプなどを使用できる。
【0036】
加圧ローラ42は回転自在に支持され、かつ定着ローラ41に対して圧接するように設けられている。加圧ローラ42は定着ローラ41の回転に従動回転する。定着ローラ41と加圧ローラ42との圧接部が定着ニップ部である。加圧ローラ42は、定着ローラ41によるトナー像の記録用紙Pへの加熱定着に際し、溶融状態にあるトナーTを記録用紙Pに対して押圧することによって、トナー像の記録用紙Pへの定着を促進する。
【0037】
定着器4では、トナー像が転写された記録用紙Pが前記定着ニップ部を通過する際、トナー像を構成するトナーTが溶融されると共に記録用紙Pに押圧されることによって、トナー像が記録用紙Pに定着される。トナーTが定着された記録用紙Pは、排紙トレイ20に排出され、積載される。
【0038】
クリーニングユニット5は、クリーニングブレード(図示せず)と、トナー貯留槽(図示せず)とを有し、トナー像を転写した後の感光体ドラム2の外周面を清浄にする。前記クリーニングブレードは、例えば、矩形であり、一辺側の縁が感光体ドラム2の外周面に当接するように設けられた板状部材であり、記録用紙Pにトナー像を転写した後に感光体ドラム2の外周面に残留するトナーT、紙粉などを感光体ドラム2の外周面から取り除く。前記トナー貯留槽は内部空間を有する容器状部材であり、前記クリーニングブレードによって除去されるトナーを一時的に貯留する。
【0039】
除電ランプ6は、クリーニングユニット5によるクリーニング処理後において感光体ドラム2の外周面上に残留する電荷を光学的に除電する。
【0040】
露光器7は、スキャナ8からの画像データ又は外部機器からの画像データに応じた信号光を、帯電状態にある感光体ドラム2外周面に照射する。これによって、感光体ドラム2外周面に、画像データに応じた静電潜像が形成される。露光器7には光源を含む光スキャニング装置が用いられる。光スキャニング装置は、例えば、光源、ポリゴンミラー、fθレンズ、反射ミラーなどを組合せた装置である。光源としては、例えば、半導体レーザ、LEDアレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)素子などを使用できる。
【0041】
スキャナ8は原稿セットトレイ、自動原稿搬送装置(RADF、Reversing Automatic Document Feeder)などが設けられている。また、スキャナ8は原稿読み取り装置を備えており、該原稿読み取り装置は、原稿載置台と、原稿走査装置とを有する。該原稿載置台は、原稿を載置するためのガラス製板状部材である。前記原稿走査装置は、光源、反射部材、光学レンズ、ラインセンサ(例えば、Charge Coupled Device)などを備えている。
【0042】
給紙トレイ9は、普通紙、コート紙、カラーコピー用紙、OHPフィルムなどの記録用紙Pを収容するトレイである。給紙トレイ9は複数設けられ、それぞれの給紙トレイ9にはサイズの異なる記録用紙Pが収容される。
【0043】
感光体ドラム2と転写器3との間に、感光体ドラム2の回転によってトナー像が搬送されるのに同期して、給紙トレイ9から記録用紙Pが1枚ずつ供給され、記録用紙Pが感光体ドラム2と転写器3との間を通過することによって、感光体ドラム2の外周面のトナー像が記録用紙Pに転写される。斯かる際、トナー像を構成するトナーの帯電極性とは逆極性の高電圧を転写器3に印加することによって、感光体ドラム2の外周面のトナー像が記録用紙Pに円滑に転写される。
【0044】
帯電器1は、感光体ドラム2の上方に、感光体ドラム2の外周面に対向して設けられた帯電チャージャであり、感光体ドラム2の外周面を所定の極性及び電位に帯電させる。図3は本発明のデジタル複合機100の帯電器1が分解された場合の斜視図であり、図4は本発明のデジタル複合機100の帯電器1が組み立てられた場合の斜視図である。
【0045】
帯電器1は、高圧電源14に接続された放電電極11を収容しており、感光体ドラム2に面する矩形の一面18に開口16が設けられた収容部材12と、開口16を覆うグリッド27を有し、収容部材12に外嵌しているグリッドケース13(グリッド部材)とを備えている。
【0046】
帯電器1の収容部材12は中空の直方体形状であり、長手方向が感光体ドラム2の軸方向と平行になるように設けられている。また、収容部材12は、例えば、PP、PC等の樹脂からなる。
【0047】
収容部材12は感光体ドラム2の外周面と対向する下側の一面18に開口16を設けている。開口16は、短手寸法が一面18の短手寸法と等しく、長手寸法が一面18の長手寸法より少し短い矩形である。開口16は放電電極11の放電によって生じた荷電粒子を後述するグリッド27に通過させる。
【0048】
一面18であって開口16の短辺側の両縁部には、収容部材12にグリッドケース13が外嵌する際、後述するグリッドケース13のグリッド部19と当接して支える支持部23,23を設けている。収容部材12にグリッドケース13が外嵌する際、支持部23,23はグリッド部19の内側と当接してグリッド部19を支持する。従って、グリッド部19(グリッド27)の撓みが防止でき、感光体ドラム2の軸方向におけるグリッド部19と感光体ドラム2の外周面との間隔を、グリッド部19(グリッド27)の全範囲において、一定に保つことができるので、感光体ドラム2の外周面にて帯電ムラが生じることを防ぐ。
【0049】
一面18の両短辺と隣り合う側面24,24は、互いに対向配置されており、側面24,24には線状の放電電極11の両端部が夫々保持されることにより、放電電極11が収容部材12内に架設されている。
【0050】
一方、一面18の両長辺と隣り合う側面25,25の中、何れか一方には、放電電極11の放電によって収容部材12内に発生するいわゆる汚染ガスを収容部材12(帯電器1)外に排気させるための切欠部17,17が設けられている。切欠部17,17は前記一方の側面25の下方の長辺側の縁から矩形に切り取られた部分であり、夫々所定の間隔をおいて形成されている。
【0051】
前記一方の側面25の上方の長辺側の隅付近には、後述するグリッドケース13の接続部22を補強する補強部26が設けられている。補強部26は縦断面視「U」の字の形状をなしており、前記一方の側面25の短辺側縁から面に平行な方向に、面一となるように延設された矩形の圧接板261と、圧接板261側への圧接力が付与されてなる板バネ262とからなる。板バネ262は、圧接板261の上端縁に連結された基部263と、基部263から下方に延設された矩形の付勢部264とを有する。基部263は圧接板261側に屈曲されており、これによって得られるバネ力によって付勢部264が圧接板261の方へ付勢される。圧接板261及び板バネ262は一体に形成されている。
【0052】
以上の構成により、収容部材12にグリッドケース13が外嵌する際、接続部22は補強部26によって挟持される。つまり、接続部22が圧接板261及び板バネ262の間に介在され、接続部22の厚み方向に圧接板261及び板バネ262からの圧接力が付与されるので、接続部22が撓むことを防止する。
【0053】
一方、グリッドケース13は、収容部材12に外嵌して保持される外嵌部30と、外嵌部30の端縁にて面方向に延設された接続部22とを備えている。
【0054】
外嵌部30は、例えば、ステンレス鋼の板材から成形されており、該板材を屈設した樋形状をなしている。外嵌部30は、放電電極11の放電によって生じた荷電粒子を通過させるグリッド27が設けられた矩形の板状のグリッド部19と、グリッド部19の長辺側の両端縁から直交する方向に上向きに延びる折曲部28、28とからなる。また、外嵌部30の厚みは例えば、1〜0.05mm程度であれば良く、0.1mmであることが望ましい。
【0055】
グリッド27は、メッシュ又はスリット状に成形したものであり、その開口率は50〜90%程度に設定されている。グリッド27は、収容部材12の開口16に略等しい矩形であり、グリッドケース13が収容部材12に外嵌した場合、収容部材12の開口16を覆う。なお、グリッド27は、感光体ドラム2に面する外側、及びその反対側の裏側にメッキ処理が施され、放電によって生じるオゾンによる腐食に備えている。
【0056】
グリッド27が設けられたグリッド部19は矩形であり、短手寸法が収容部材12の一面18の短手寸法と等しく、長手寸法が一面18の長手寸法より少し短い矩形である。グリッドケース13が収容部材12に外嵌した場合、上述したように、グリッド部19の長手方向の両端部191,191の内側と収容部材12の支持部23,23とは当接してグリッド部19が支持される。従って、グリッド部19(及びグリッド27)の撓みが防止でき、感光体ドラム2の外周面にて帯電ムラが生じることを防ぐことが出来る。
【0057】
また、グリッドケース13(外嵌部30)が収容部材12に外嵌した場合、折曲部28、28は夫々収容部材12の側面25,25によって支持される。詳しくは、グリッドケース13が収容部材12に外嵌した場合、折曲部28、28の内側が側面25,25と当接した状態にて保持されるので、折曲部28、28に撓み、歪み等が生じない。
【0058】
以上のような構成から、本発明の帯電器1においては、グリッド部19(グリッド27)と感光体ドラム2の外周面との距離を、グリッド部19(グリッド27)全範囲において、一定に保つことができ、感光体ドラム2の外周面にて帯電ムラが生じることを未然に防止できる。
【0059】
また、折曲部28、28の中、何れか一方は、放電電極11の放電によって発生する汚染ガスを帯電器1の外に排気させる排気口21,21が設けられている。詳しくは、グリッドケース13(外嵌部30)が収容部材12に外嵌した場合、切欠部17,17が形成されている側面25と当接する折曲部28には、前記外嵌の際に切欠部17,17と整合する位置に排気口21,21が形成されている。排気口21,21は切欠部17,17と略等しい形状を有している。
【0060】
このように、本発明の帯電器1においては、両折曲部28、28の中、一方の折曲部28にのみ排気口21,21を設けている。従って、帯電器1の配置の際には、他方の折曲部28が除電ランプ6と隣り合うように配置することによって、遮蔽板を用いることなく、除電ランプ6からの除電光による影響を防ぐことが出来る。
【0061】
前記一方の折曲部28の上方の長辺側の隅付近には接続部22が設けられている。接続部22によってグリッドケース13は電源15に接続される。
図5は本発明のデジタル複合機100において、グリッドケース13と電源15との接続を説明する説明図である。接続部22は、例えば、ステンレス鋼の板材からなり、前記一方の折曲部28の短辺側縁から面に平行な方向に、面一となるように、延設されている。接続部22は先端に向かってその幅が狭くなるように構成されている。接続部22の先端部は、電源15との間に介在するコイル状の被接続バネCの内側に挿入されて、被接続バネCと接続されることによって、被接続バネCを介して電源15に接続される。
【0062】
なお、本発明の帯電器1においては、グリッド27を有するグリッド部19と、排気口21,21を有する折曲部28、28とが一体化されているので、グリッド27及び排気口21,21をエッチングによって共に形成できる。
詳しくは、板材を樋状に曲げる成形加工前に、該板材に対してエッチング処理を行い、図6に示すように、グリッド27及び排気口21,21を共に形成する。該エッチング処理の後、該板材を図中の点線に沿って樋状に曲げる成形加工が行われる。従って、一つの工程(エッチング処理)で、グリッド27及び排気口21,21が共に形成され、工程の数を減らす上に、作業時間を短縮することができる。
【0063】
図7は図4のY−Y線による断面図である。以下、補強部26による接続部22の補強を説明する。
補強部26は、付勢部264及び圧接板261の内側面に、互いに対向する内向きに突出する圧接突起265が複数設けられている。接続部22が圧接板261及び板バネ262の間に挟持された場合、上述したように、バネ力によって付勢部264が圧接板261の方へ付勢される。この際、付勢部264側の複数の圧接突起265と、圧接板261側の複数の圧接突起265が互いに対向する方向に接続部22を押圧して接続部22を保持する。従って接続部22が撓むことを防止できる。
【0064】
以下、以上のような構成を有する帯電器1の作用について説明する。
高圧電源14により放電電極11に負の高電圧、例えば5kVを印加すると、放電電極11の先端に電界が集中してコロナ放電が生じる。そして、放電領域においてはO2 などの気体が電離し負に帯電したイオン(荷電粒子)と、O2 が解離して結合したオゾンの両方が生成される。
【0065】
放電領域において生成された荷電粒子は、電界に沿って移動する。この際、電源15により接続部22を介してグリッドケース13に、放電電極11に印加した電圧よりも弱い負の電圧、例えば650Vを印加すると、荷電粒子は放電電極11からグリッド部19に向かって移動する。荷電粒子はある一定の割合でグリッド部19へと流れ、残りはグリッド27を通過し感光体ドラム2まで到達する。これにより、感光体ドラム2の外周面を負に帯電させることができる。また、この場合、グリッドケース13は放電電極11の放電を安定させるいわゆるサイド電極として働く。
【0066】
なお、斯かる際、前記コロナ放電によって生成されたオゾン、NOx などの汚染ガスは、収容部材12の切欠部17、17を介してグリッドケース13の排気口21、21から帯電器1の外側へ排出される。
【0067】
更に、本発明の帯電器1の構成は以上の記載に限るものでなく、切欠部17,17及び排気口21,21はメッシュ状であっても良い。
【0068】
また、補強部26、接続部22及び被接続バネCは上述した形状に限るものではない。
【符号の説明】
【0069】
1 帯電器
2 感光体ドラム
3 転写器
6 除電ランプ
11 放電電極
12 収容部材
13 グリッドケース(グリッド部材)
14 高圧電源
15 電源
16 開口
17 切欠部
18 一面
21 排気口
22 接続部
23 支持部
25 側面
26 補強部
27 グリッド
30 外嵌部
100 デジタル複合機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極を収容し、感光体ドラムに面する一面に開口を有する箱状の収容部材を備え、感光体ドラムの外周面を帯電させる帯電装置において、
前記収容部材に外嵌し、前記収容部材の開口を覆うグリッドを有するグリッド部材を備えることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記グリッド部材は、
樋状をなす外嵌部と、
該外嵌部の端縁にて面方向に延設され、電源と接続する接続部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記収容部材は前記接続部を補強する補強部を備えることを特徴とする請求項2に記載の帯電装置。
【請求項4】
前記接続部は板状をなし、
前記補強部は前記接続部を該接続部の厚み方向に挟持するように構成してあることを特徴とする請求項3に記載の帯電装置。
【請求項5】
前記収容部材は直方体形状であり、前記一面に隣り合う面に切欠部を備え、
前記グリッド部材は、前記収容部材の切欠部を介して前記収容部材内の気体を排出する排気口を備えることを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載の帯電装置。
【請求項6】
前記グリッド部材の排気口はメッシュ状をなしていることを特徴とする請求項5に記載の帯電装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一つに記載の帯電装置と、
該帯電装置によって外周面が帯電される感光体ドラムと、
該感光体ドラムの外周面に形成されたトナー像を記録シート上に転写する転写器と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載の帯電装置が備える前記グリッド部材を製造する製造方法において、
樋状に成形すべき板材に、エッチングによって前記グリッド及び排気口を形成する工程を含むことを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−63615(P2012−63615A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208351(P2010−208351)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】