説明

帯電装置

【課題】電子写真プロセスに用いられる帯電装置において、長期間の繰り返し使用によってもトナーやトナーに用いられる外添剤などが帯電部材表面に付着しにくく、さらに帯電部材表面の摩擦による磨耗や熱劣化を抑えて、長期間安定した帯電付与が可能な帯電装置を提供する。
【解決手段】被帯電体1に当接する帯電部材2に電圧を印加して被帯電体を帯電する電子写真方式の帯電装置において、帯電部材に電圧を印加するための、帯電部材の表面に当接する導電性部材12を備え、帯電部材が表面層を有し、表面層がフッ化アルキル基およびオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有し、帯電部材の該導電性部材との当接部の動摩擦係数が0.1以上1.5以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LBP(Laser Beam Printer)、複写機及びファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置において、電圧を印加した帯電部材を被帯電体に当接させて被帯電体面の帯電を行なう接触式の帯電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から電子写真の帯電・転写プロセスにおいて、接触帯電及び接触転写の手法が多く研究されている。レ−ザプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置においては、ドラム状又はベルト状の像担持体の表面を帯電装置によって帯電した後、露光装置により露光して静電潜像を形成する。そして、その潜像を現像装置からの現像剤により顕像化した後、それを転写装置を用いて紙上に転写し、定着装置によって定着するようにしている。
【0003】
近年、このような画像形成装置における帯電装置において用いられる帯電部材の形状としてローラ形状をとるものが一般的であり、帯電ローラや転写ローラと呼ばれる接触型の帯電部材が用いられている。こうした帯電、転写等に用いられるローラは、回転可能に支持される芯金と、芯金の外周面に設けられた弾性層によって構成される弾性体ローラが一般的である。
【0004】
上記のような帯電ローラや転写ローラと呼ばれる接触型の帯電部材を用いた帯電装置においては、像担持体にローラが接触している為に長期間の繰り返し使用によってトナーやトナーに用いられる外添剤などがローラ表面に付着し、汚染されることがある。しかもローラ表面が汚染されると、付着汚染部分で過帯電や帯電不良を引き起こすことがあり、結果として印刷画像品質が低下することがある。
【0005】
そのため上記のようなローラ表面の汚染を抑制する手段を備えた帯電装置が提案されている(特許文献1参照)。この帯電装置では、ローラ表面にクリーニング部材として導電性ブレードを当接させローラ表面汚染を抑制し、且つ該クリーニング部材を介してローラに電圧印加する。
【特許文献1】特許第3276757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、市場の高画質化の要求により、トナーが小粒径化し、微粉トナーの割合も増加し、それに伴い帯電部材の汚染の度合いも増加してきた。また、長寿命化、カラー化などの要求により、帯電部材及び感光ドラムを含むユニットの目標耐久寿命値(時間)が大幅に伸びており、それにより付着物の堆積量が大きくなり、以前の耐久枚数では発生しなかった画像不良も耐久後半で顕在化してくるようになった。
【0007】
特に、帯電部材表面の付着物を除去するため、上述のような帯電部材の表面に導電性ブレードを当接させて給電する構成の帯電装置においては、長期間使用する場合に耐久後半で帯電部材表面に導電性ブレードとの摩擦による微小な摺擦キズが生じることがあった。また、摩擦熱によって帯電部材の表層および基層が劣化することもあった。
【0008】
本発明の目的は、電子写真プロセスに用いられる帯電装置において、長期間の繰り返し使用によってもトナーやトナーに用いられる外添剤などが帯電部材表面に付着しにくく、さらに帯電部材表面の摩擦による磨耗や熱劣化を抑えて、長期間安定した帯電付与が可能な帯電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、被帯電体に当接する帯電部材に電圧を印加して被帯電体を帯電する電子写真方式の帯電装置において、
該帯電部材に電圧を印加するための、該帯電部材の表面に当接する導電性部材を備え、
該帯電部材が表面層を有し、該表面層がフッ化アルキル基およびオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有し、該帯電部材の該導電性部材との当接部の動摩擦係数が0.1以上1.5以下であることを特徴とする帯電装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、電子写真プロセスに用いられる帯電装置において、長期間の繰り返し使用によってもトナーやトナーに用いられる外添剤などが帯電部材表面に付着しにくく、さらに帯電部材表面の摩擦による磨耗や熱劣化を抑えて、長期間安定した帯電付与が可能な帯電装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明によれば、帯電部材の表面に導電性部材を当接させ、導電性部材より帯電部材に電圧が印加される帯電装置において、帯電部材の導電性部材との当接部の動摩擦係数μが0.1以上1.5以下である。このため、長期間の繰り返し使用によってトナーやトナーに用いられる外添剤などがローラ表面に付着しにくく、帯電部材表面の摩擦による磨耗が抑えられるため、安定して被帯電体を帯電処理できる帯電装置が得られる。
【0012】
帯電部材表面に当接する導電性部材の帯電部材に対する当接線圧が1[N/m]以上20[N/m]以下であることが好ましい。上記当接線圧がこの範囲であると、長期間の繰り返し使用による帯電部材表面の摩擦による磨耗が抑えられるため、より安定して被帯電体を帯電処理できる帯電装置が得られる。
【0013】
帯電部材が表面層を有し、その表面層がフッ化アルキル基およびオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有することが好ましい。これにより、長期間の繰り返し使用による帯電部材表面の摩擦による磨耗が抑えられるため、より安定して被帯電体を帯電処理できる帯電装置が得られる。
【0014】
前記導電性部材が導電性ブレードであることが好ましい。導電性部材と帯電部材表面との間で発生する摩擦熱を逃がし、長期間の繰り返し使用による帯電部材表面の熱劣化が抑えられるため、より安定して被帯電体を帯電処理できる帯電装置が得られるからである。
【0015】
前記帯電部材が弾性層を備えた導電性ローラであることが好ましい。回転従動性が良好かつ導電性部材の従動性も良好であり、安定して被帯電体を帯電処理できる帯電装置が得られるからである。
【0016】
以下、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に更に詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0017】
図1は、接触帯電手段及び接触転写手段を有する電子写真装置の構成を模式的に示す図である。アルミニウムなどの導電性の支持体とその外周面に少なくとも光導電層を有するドラム型の電子写真プロセスに用いられる感光体1は、像担持体であり、被帯電体である。この感光体に接し、感光体面を所定の電位に一様に帯電させる帯電部材として、ここではローラ形状のもの、すなわち帯電ローラ2を示す。
【0018】
この帯電ローラ2は、少なくとも中心部の芯金と、その外周面に弾性体の層(以下、弾性層という)を有する。この帯電ローラ2はバネ等の圧接手段(不図示)で感光体1に所定の圧接力をもって圧接され、感光体1の回転にともない従動回転可能とされる。そして、帯電ローラ2の表面に導電性部材12が当接するように設置され、この導電性部材12には高圧電源11が接続される。導電性部材12に接続された高圧電源11から直流+交流(又は、直流のみ)電圧を印加することで、導電性部材12を介して帯電ローラ2へ電圧が印加され、感光体1が所定の電位に接触帯電される。つまり、良好なコピー画像を得るために、帯電部材2には、感光体1との均一な接触状態と、導電性が求められる。帯電部材2で所定の電位に帯電された感光体1の表面が、レーザー、LED等の露光手段(不図示)から出力される露光光3によって画像情報を露光されることによって、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0019】
次いで、その潜像を現像手段4によってトナー画像として可視像化する。転写部材5によって転写材6の裏からトナーと逆極性の帯電を行うことで感光体1の表面のトナー画像が転写材6の表面側に転写される。トナー画像の転写を受けた転写材6は感光体1から分離され、定着部材7によって熱、圧力で固着される。また、像転写後の感光体1の表面はクリーニング部材8で転写時における残留トナー等の付着物の除去を受けて清浄面化され、くり返し作像に供される。なお、図1の中の9はトナー、10は感光体の回転軸を示す。ここで、感光体1の表面は前述のようにクリーニング部材8の作用により残留トナー等の付着物は除去されるが、わずかではあるがクリーニング部材8と感光体1との圧接部をすり抜ける残留トナー等が存在することがある。この残留トナー等の現像材は、帯電ローラ2と感光体1との圧接部で帯電ローラ2の表面に付着してしまうことがある。この残留トナー等の付着物が帯電ローラ2の表面上を汚染し、帯電ローラ2の帯電作用を妨げ、結果として画像不良となって現れることがある。
【0020】
そのため本発明では帯電ローラ2の表面上の付着物を除去する手段として、導電性部材12が帯電ローラ2の表面に当接するように設置されており、帯電ローラ2表面上の付着物は導電性部材12により良好に掻き取られることとなる。
【0021】
以上、接触帯電手段及び接触転写手段を有する電子写真装置の構成において、本発明の帯電装置を画像形成装置の感光体の電化付与手段として用いた例を説明したが、同様の構成により本発明の帯電装置を転写装置に用いることもできる。この場合、転写ロ−ラを、上記帯電ローラの場合と同様に回転可能に且つ感光体に圧接して転写部に設け、導電性部材を転写ロ−ラ表面に当接するように設置する。該導電性部材を高圧電源に接続すればよい。画像形成時に、感光体上に形成されたトナー画像が転写部に至ったときに、上記転写ロ−ラに導電性部材を通して高圧電源からトナーと逆極性の電圧を印加することにより、転写材にトナー画像を転写することが可能となる。またこのような画像形成において、上記転写ロ−ラ上の残留トナー等の付着物が良好に除去されるのは上述の帯電ロ−ラの場合と同様である。
【0022】
帯電部材は、支持体、支持体上に形成された導電性弾性層、および、導電性弾性層上に形成された表面層を有することができる。この「表面層」とは、帯電部材が有する層のうち、帯電部材の最表面に位置する層を意味する。
【0023】
表面層を有する帯電部材の構成は、例えば、支持体上に導電性弾性層および表面層の2層を設けた構成であるが、支持体と導電性弾性層との間や導電性弾性層と表面層との間に別の層を1つまたは2つ以上設けてもよい。
【0024】
図2に、本発明に用いることのできる帯電部材の構成の一例を示す。ここに示すのは帯電ローラであって、円筒状の支持体201の外周面に、導電性弾性層202が設けられ、さらにその外周面に表面層203が設けられる。
【0025】
帯電部材の支持体としては、例えば、ニッケルメッキやクロムメッキしたSUM材等の鋼材を含むステンレス、鉄、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、リン青銅などの金属(合金)製の支持体を用いることができる。あるいは、導電性樹脂等の導電性の支持体、もしくは樹脂等の絶縁性の支持体のいずれも用いることができる。
【0026】
導電性弾性層には、電子写真プロセスにおいて公知の帯電部材の弾性層(導電性弾性層)に用いられているゴムや熱可塑性エラストマーなどの弾性体を1種または2種以上用いることができる。
【0027】
例えば、ゴムとしては、天然ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびアルキルエーテルゴムなどが挙げられる。
【0028】
また、導電性弾性層には、導電剤を適宜使用することによって、その導電性を所定の値にすることができる。導電性弾性層の電気抵抗は、導電剤の種類および使用量を適宜選択することによって調整することができ、その電気抵抗の好適な範囲は102〜108Ωであり、より好適な範囲は103〜106Ωである。
【0029】
導電性弾性層に用いられる導電剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、帯電防止剤、電解質などが挙げられる。
【0030】
また、導電性弾性層用の導電剤として、カーボンブラック、導電性カーボン等のカーボン類、及び金属粉、導電性の繊維、或いは酸化スズ等の半導電性金属酸化物粉体、更にこれらの混合物等やイオン導電性導電剤を用いることもできる。
【0031】
また、導電性弾性層には、無機または有機の充填剤や架橋剤を添加してもよい。充填剤としては、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウムおよび硫酸アルミニウムなどが挙げられる。架橋剤としては、例えば、イオウ、過酸化物、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤などが挙げられる。
【0032】
導電性弾性層の硬度は、帯電部材と被帯電体である電子写真感光体とを当接させた際の帯電部材の変形を抑制する観点から、アスカーCで70度以上であることが好ましく、特には73度以上であることがより好ましい。
【0033】
アスカーC硬度の測定は、測定対象の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)の押針を当接し、1000g加重の条件で行うことができる。
【0034】
また、帯電部材の表面へのトナーや外添剤の固着を抑制する観点から、帯電部材の表面(表面層を有する場合は表面層の表面)の粗さ(Rz)はJIS94で10μm以下であることが好ましい。そして、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがより一層好ましい。
【0035】
次に、表面層について説明する。
【0036】
一般的に、表面層の膜厚が薄い場合、帯電部材の帯電能を保持することが出来るため、画像形成上の構成として有利となる。しかし、低分子量成分のブリードアウトによるドラムアタック、また帯電ローラの導電性部材による表面の削れなどを抑制し、画像不良の発生を優れて防止する観点から、ある程度の厚さの表面層を設けることが好ましい。
【0037】
長期間使用しても優れた帯電能を得、画像不良を優れて防止する観点から、表面層の層厚は2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。また、表面層に導電性部材が当接されることにより表面層が削られることや、低分子量成分のブリードアウトによるドラムアタックによる画像不良を優れて防止する観点から、表面層層厚を好ましくは0.01μm、より好ましくは0.05μmとする。
【0038】
また、電子写真感光体との当接ニップを確保するために設けた導電性弾性層の機能を優れて発揮させる観点から、帯電部材の表面層の弾性率は2000MPa以下であることが好ましい。一方、層の弾性率は小さくなるほど架橋密度が小さくなる傾向にあるため、帯電部材の表面にブリードアウトした低分子量成分による電子写真感光体の表面の汚染を抑制する観点から、帯電部材の表面層の弾性率は100MPa以上であることが好ましい。
【0039】
本発明の帯電部材の表面層の材料としては、加水分解性シラン化合物の加水分解によって縮合されて得られ、フッ化アルキル基およびオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有することが好ましい。このオキシアルキレン基を有するポリシロキサンはシロキサン結合を多く持つため、永久圧縮ひずみが小さくなり、柔軟性に富み、このオキシアルキレン基がポリシロキサンの中に一定量存在することで、ポリシロキサンの結晶性を阻害し、更に柔軟性を発現させる。そのため、汚れが表面に固着しづらくなり、導電性部材で残トナーなどの汚れを容易に落とすことが出来る。また、表面層が柔軟であるため、導電性部材との接触による力を逃がし、摺擦による傷の発生を防いでいる。一方、シロキサン結合を多く持つことにより、耐熱性が増すため、表面層が薄膜であっても、帯電部材と耐久後半に導電性部材に固着した固着物との摩擦熱による外径変化、性能の変化を受けにくくなり、安定な帯電付与が可能となる。また、オキシアルキレン基が弾性層の成分と水素結合を起こすため、弾性層、表面層の密着性を高める効果があるので、若干の摩擦熱による熱膨張に対しても、弾性層、表面層のズレによって生じる表面のシワ、クラックなどが抑制できる。
【0040】
このオキシアルキレン基を含むポリシロキサンは開裂によってオキシアルキレン基を生成する官能基、例えば、エポキシ基やオキセタン基等の環状エーテル基、及び、ビニルエーテル基等を持つシラン化合物を用いて合成し、カチオン重合させることで得られる。加水分解性シラン化合物が加水分解によって縮合した後に、カチオン重合可能な基を開裂させることにより、この縮合物を架橋させることによって、架橋密度を上げて、シロキサンに起因する耐熱性、密着性、などの効果をさらに高めることが出来るからである。
【0041】
これらの中でも、入手の容易性および反応制御の容易性の観点から、エポキシ基を持つシラン化合物を用いてポリシロキサンを得た後、開環重合させる方法が好ましい。
【0042】
またフッ化アルキル基をポリシロキサンの構造に持つことによって、フッ素を含むことにより帯電部材の表面自由エネルギーを低減することにより、帯電部材の表面にトナーや外添剤が固着しにくくなる傾向があるからである。また、耐熱性が良好になり、帯電部材と耐久後半に導電性部材に固着した固着物との摩擦熱による影響をさらに緩和し、帯電部材の外径変化、性能の変化を受けにくくなり、安定な帯電付与が可能となる。
【0043】
前記フッ化アルキル基としては、例えば、直鎖型または分岐型のアルキル基の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換したものが挙げられる。その中でも、炭素数6〜31の直鎖状のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0044】
前記オキシアルキレン基とは、−O−R−(R:アルキレン基)で示される構造を有する2価の基(「アルキレンエーテル基」と呼ばれることもある。)である。このR(アルキレン基)としては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましい。
【0045】
前記ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.0〜50.0質量%であることが好ましい。ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.0〜70.0質量%であることが好ましい。ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して20.0〜90.0質量%であることが好ましい。
【0046】
また、前記ポリシロキサンは、さらにアルキル基および/またはフェニル基を有するものが好ましい。このアルキル基としては、炭素数1〜21の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基、ヘキシル基、デシル基がより好ましい。
【0047】
前記ポリシロキサンがさらにアルキル基およびフェニル基を有する場合、前記ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.0〜50.0質量%であることが好ましい。ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.0〜30.0質量%であることが好ましい。ポリシロキサン中のアルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.0〜30.0質量%であることが好ましい。ポリシロキサン中のフェニル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.0〜30.0質量%であることが好ましい。ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して20.0〜80.0質量%であることが好ましい。
【0048】
前記フッ化アルキル基およびオキシアルキレン基を有するポリシロキサンは次のようにして得ることができる。まず、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物と、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解によって縮合させて加水分解性縮合物を得る。次いで、カチオン重合可能な基を開裂させることにより、加水分解性縮合物を架橋させる。
【0049】
前記カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物としては、下記式(2)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物が好適である。
【0050】
【化1】

【0051】
前記式(2)中、R21は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。R22は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。Z21は、2価の有機基を示す。Rc21は、カチオン重合可能な基を示す。dは0〜2の整数であり、eは1〜3の整数であり、d+e=3である。
【0052】
前記式(2)中のRc21のカチオン重合可能な基とは、開裂によってオキシアルキレン基を生成するカチオン重合可能な有機基を意味し、例えば、エポキシ基やオキセタン基などの環状エーテル基、および、ビニルエーテル基などが挙げられる。これらの中でも、入手の容易性および反応制御の容易性の観点から、エポキシ基が好ましい。
【0053】
前記式(2)中のR21およびR22の飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基がより好ましい。
【0054】
前記式(2)中のZ21の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基およびアリーレン基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、さらにはエチレン基がより好ましい。
【0055】
前記式(2)中のeは3であることが好ましい。
【0056】
前記式(2)中のdが2の場合、2個のR21は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0057】
前記式(2)中のeが2または3の場合、2個または3個のR22は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0058】
以下に、前記式(2)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
【0059】
化合物(2−1):グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
化合物(2−2):グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
化合物(2−3):エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン
化合物(2−4):エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン
また、前記フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物としては、下記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物が好適である。
【0060】
【化2】

【0061】
前記式(3)中、R31は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。R32は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。Z31は、2価の有機基を示す。Rf31は、炭素数1〜31の直鎖状のパーフルオロアルキル基を示す。fは0〜2の整数であり、gは1〜3の整数であり、f+g=3である。
【0062】
前記式(3)中のR31およびR32の飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基がより好ましい。
【0063】
前記式(3)中のZ31の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基およびアリーレン基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、さらにはエチレン基がより好ましい。
【0064】
前記式(3)中のRf31の炭素数1〜31の直鎖状のパーフルオロアルキル基としては、処理性の観点から、特に炭素数6〜31の直鎖状のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0065】
前記式(3)中のgは3であることが好ましい。
【0066】
前記式(3)中のfが2の場合、2個のR31は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0067】
前記式(3)中のgが2または3の場合、2個または3個のR32は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0068】
以下に、前記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
【0069】
化合物(3−1):CF3−(CH22−Si−(OR)3
化合物(3−2):F(CF22−(CH22−Si−(OR)3
化合物(3−3):F(CF24−(CH22−Si−(OR)3
化合物(3−4):F(CF26−(CH22−Si−(OR)3
化合物(3−5):F(CF28−(CH22−Si−(OR)3
化合物(3−6):F(CF210−(CH22−Si−(OR)3
前記化合物(3−1)〜(3−6)中のRはメチル基またはエチル基を示す。
【0070】
前記化合物(3−1)〜(3−6)の中でも、化合物(3−4)〜(3−6)が好ましい。
【0071】
前記カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物および前記フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物は、それぞれ、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0072】
特に、前記フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物として、前記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を用いる場合、次のように相異なる化合物を併用することが好ましい。Rf31の炭素数nA(nAは6〜31の整数)のものと、炭素数nB(nBは6〜31の整数かつnB≠nA)のものとを併用すると、得られるポリシロキサンは、炭素数の異なるパーフルオロアルキル基を有することになる。パーフルオロアルキル基は、表面層の表面に向かって配向する傾向にあるため、表面層に含有されるポリシロキサンが炭素数の異なるパーフルオロアルキル基を有していれば、表面層の表面に向かって長さの異なるパーフルオロアルキル基が配向することになる。この場合、単一の長さのパーフルオロアルキル基が表面層の表面に向かって配向する場合に比べて、表面層の表面近傍のフッ素原子濃度が高くなり、表面層の表面自由エネルギーが低くなる。このため、長期間繰り返し使用した際の表面層の表面へのトナーや外添剤などの付着をより抑制することができる。
【0073】
前記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を2種以上用いる場合は、前記化合物(3−4)〜(3−6)の中から2種以上選択することが好ましい。
【0074】
表面層に用いられるポリシロキサンは、前述のとおり、次のようにして得ることができる。すなわちカチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物と、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解によって縮合させて加水分解性縮合物を得る。次いで、カチオン重合可能な基を開裂させることにより、加水分解性縮合物を架橋させる。加水分解性縮合物を得る際に、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物およびフッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物に加えて、さらに、下記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用することが好ましい。表面層の表面特性の制御を容易にするためである。
【0075】
【化3】

【0076】
前記式(1)中、R11は、フェニル基置換のアルキル基もしくは無置換のアルキル基、または、アルキル基置換のアリール基もしくは無置換のアリール基を示す。R12は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。aは0〜3の整数であり、bは1〜4の整数であり、a+b=4である。
【0077】
前記式(1)中のR11のフェニル基置換のアルキル基もしくは無置換のアルキル基のアルキル基としては、炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0078】
前記式(1)中のR11のアルキル基置換のアリール基もしくは無置換のアリール基のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0079】
前記式(1)中のaは1〜3の整数であることが好ましく、特には1であることがより好ましい。
【0080】
前記式(1)中のbは1〜3の整数であることが好ましく、特には3であることがより好ましい。
【0081】
前記式(1)中のR12の飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基がより好ましい。
【0082】
前記式(1)中のaが2または3の場合、2個または3個のR11は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0083】
前記式(1)中のbが2、3または4の場合、2個、3個または4個のR12は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0084】
以下に、前記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
【0085】
化合物(1−1):テトラメトキシシラン
化合物(1−2):テトラエトキシシラン
化合物(1−3):テトラプロポキシシラン
化合物(1−4):メチルトリメトキシシラン
化合物(1−5):メチルトリエトキシシラン
化合物(1−6):メチルトリプロポキシシラン
化合物(1−7):エチルトリメトキシシラン
化合物(1−8):エチルトリエトキシシラン
化合物(1−9):エチルトリプロポキシシラン
化合物(1−10):プロピルトリメトキシシラン
化合物(1−11):プロピルトリエトキシシラン
化合物(1−12):プロピルトリプロポキシシラン
化合物(1−13):ヘキシルトリメトキシシラン
化合物(1−14):ヘキシルトリエトキシシラン
化合物(1−15):ヘキシルトリプロポキシシラン
化合物(1−16):デシルトリメトキシシラン
化合物(1−17):デシルトリエトキシシラン
化合物(1−18):デシルトリプロポキシシラン
化合物(1−19):フェニルトリメトキシシラン
化合物(1−20):フェニルトリエトキシシラン
化合物(1−21):フェニルトリプロポキシシラン
化合物(1−22):ジフェニルジメトキシシラン
化合物(1−23):ジフェニルジエトキシシラン
前記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物および前記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用する場合、前記式(1)中のaは1〜3の整数であることが好ましく、bは1〜3の整数であることが好ましい。また、a個のR11のうちの1個のR11は炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基であることが好ましい。さらに、この炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基の炭素数をn1(n1は1〜21の整数)とし、前記式(3)中のRf31の炭素数をn2(n2は1〜31の整数)としたとき、n2−1≦n1≦n2+1であることが好ましい。
【0086】
前記炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基は、パーフルオロアルキル基と同様、帯電部材の表面に向かって配向する傾向にある。このときn1≦n2+1とすることにより、前記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物のパーフルオロアルキル基による効果が優れて発揮される。
【0087】
前記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合には、前記式(1)中のR11がアルキル基のものと前記式(1)中のR11がフェニル基のものとを併用することが好ましい。
【0088】
以下、本発明で用いることのできる帯電ローラの具体的な製造方法(前記ポリシロキサンを含有する表面層の具体的な形成方法)の例について説明する。
【0089】
まず、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物およびフッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物、ならびに、必要に応じて前記の他の加水分解性シラン化合物を水の存在下で加水分解反応させることによって加水分解性縮合物を得る。
【0090】
加水分解反応の際、温度やpHなどを制御することで、所望の縮合度の加水分解性縮合物を得ることができる。
【0091】
また、加水分解反応の際、加水分解反応の触媒として金属アルコキシドなどを利用し、縮合度を制御してもよい。金属アルコキシドとしては、例えば、アルミニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシドおよびジルコニアアルコキシドなど、ならびに、これらの錯体(アセチルアセトン錯体など)が挙げられる。
【0092】
また、加水分解性縮合物を得る際の、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物およびフッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物の配合割合は、次のようにすることが好ましい。あるいは、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物および前記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の配合割合も、次のようにすることが好ましい。すなわち、得られるポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量がポリシロキサン全質量に対して5.0〜50.0質量%になるようにする。オキシアルキレン基の含有量がポリシロキサン全質量に対して5.0〜70.0質量%になるようにする。そして、シロキサン部分の含有量がポリシロキサン全質量に対して20.0〜90.0質量%になるようにする。
【0093】
具体的には、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物を、全加水分解性シラン化合物に対して0.5〜20.0mol%の範囲になるように配合することが好ましく、特には1.0〜10.0mol%の範囲になるように配合することがより好ましい。
【0094】
また、前記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用する場合には、さらに、次のようにすることが好ましい。すなわち、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物(MC)と前記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物(M1)とのモル比(MC:M1)が10:1〜1:10の範囲になるように配合することが好ましい。
【0095】
次に、得られた加水分解性縮合物を含む表面層用塗布液を調製し、芯金の外周面に形成された導電性弾性層の外周面に、調製した表面層用塗布液を塗布する。表面層用塗布液を弾性層上に塗布する際には、リング塗布が好ましいが、浸漬塗布やロールコーターを用いた塗布等でも良い。最表面層用塗布液を調製する際には、塗布性向上のために、加水分解性縮合物以外に、適当な溶剤を用いてもよい。適当な溶剤としては、例えば、エタノールおよび2−ブタノールなどのアルコールや、酢酸エチルや、メチルエチルケトンなど、あるいは、これらを混合したものが挙げられる。
【0096】
次に、弾性層上に塗布された表面層用塗布液に活性エネルギー線を照射する。すると、表面層用塗布液に含まれる加水分解性縮合物中のカチオン重合可能な基は開裂し、これによって加水分解性縮合物を架橋させることができる。加水分解性縮合物は架橋によって硬化する。また、表面層を加熱硬化させる場合は、熱風炉、熱盤、遠・近赤外線、誘導加熱等のいずれの方法でも良く、更にこれらの加熱方法を併用しても良い。
【0097】
前記、活性エネルギー線は紫外線でも電子線でも良いが、紫外線が好ましい。架橋反応を紫外線によって行えば、熱履歴による導電性弾性層の劣化を抑制することができるため、導電性弾性層の電気的特性の低下を抑制することもできる。
【0098】
次に、表面層用塗布液が塗布されたローラ表面への紫外線の照射について詳細に説明する。
【0099】
表面層用塗布液が塗布されたローラは一定の回転数で回転させて紫外線を照射される。紫外線の照射には高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプ等が用いられる。また、これらのランプを用いる事により波長150〜400nmの紫外線強度が全波長強度の60%以上を満たす。なお、紫外線の積算光量は、下記で定義される。
【0100】
【数1】

【0101】
紫外線の積算光量については、表面処理の効果に応じて適宜選択すればよい。その調節は、照射時間、ランプ出力、ランプとローラとの距離などでのいずれでも行う事が可能であり、また照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。
【0102】
紫外線の積算光量は、254nmの波長を代表とする紫外線に関しては、ウシオ電機株式会社製のUIT−150−A、UVD−S254(商品名)の紫外線積算光量計を用いて測定できる。172nmの波長を代表とする紫外線に関しては、ウシオ電機株式会社製のUIT−150−A、VUV−S172(商品名)の紫外線積算光量計を用いて測定できる。更に365nmの波長を代表とする紫外線に関しては、ウシオ電機株式会社製のUIT−150−A、VUV−S365(商品名)の紫外線積算光量計を用いて測定することができる。
【0103】
次に、帯電部材の表面に当接させて用いる導電性部材について説明する。
【0104】
導電性部材の材質としては、導電性部材と帯電部材表面との間で発生する摩擦熱を逃がし、長期間の繰り返し使用による帯電部材表面の熱劣化が抑えられる観点から、例えば、ニッケルメッキやクロムメッキしたSUM材等の鋼材を含むステンレス、鉄、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、リン青銅などの金属(合金を含む)を用いることができる。あるいは、導電性樹脂、もしくは樹脂等にアルミニウムなど導電性を持つ金属等を蒸着し導電性を持たせたものを用いることもできる。
【0105】
導電性部材の構成としての帯電装置の例を、図5に概略構成図を、図7に概略斜視図を示す。図5および図7において、導電性部材を帯電部材に対して均一に接触させる観点から、支持部材502と導電性部材501は、帯電部材の長手方向(軸方向)に対し平行に配置されることが好ましい。そして、導電性部材は該支持部材に一端を固定され自由端側近傍の面において帯電部材の表面に対して接触させて接触ニップを形成するよう配置されていることが好ましい。導電性部材の形状としては、特に限定はされないが、導電性部材により帯電部材表面の汚れを掻き取る観点から図5および図7に示すような薄板のブレード形状をとることが好ましい。また、図8に示すようなリング形状の導電性部材801としてもよい。また導電性部材は、導電性部材を撓ませることによる反発力によって、該導電性部材を帯電部材の表面に対して面接触させることで均一に接触させる観点から撓み変形可能な可撓部材であることが好ましい。
【0106】
また図6に示すように導電性部材の幅W1を帯電部材の軸方向長さW2よりも長くすること、すなわち導電性部材の端部が帯電部材の端部よりも外側に設置されていることが好ましい。これにより、導電性部材端部から帯電部材へ高電圧が印加された場合に、導電性部材端部からリ−クが発生し帯電不良を生ずることを優れて防止することができる。また、導電性部材によって掻き取られた外添剤などの付着物が導電性部材端部から回りこみ、帯電部材へ再付着することを優れて防止することができる。
【0107】
導電性部材の厚みδ(図5および図8)としては、10〜1000μmの範囲が好ましいが、特に制限されるものではなく、帯電ローラの寿命や使用するトナーの特性、感光ドラムを清掃する手段の性能などにより、適宜選択することができる。
【0108】
また、導電性部材の帯電ローラ表面への当接線圧は、帯電部材の移動に伴う振動に導電性部材が追従できずに導電不良となることや汚れを掻き取りづらくなることを優れて防止する観点から、好ましくは1[N/m]以上、より好ましくは3[N/m]以上とする。また、導電性部材と帯電部材表面との摩擦力が増加して感光体と帯電ローラとの従動回転を妨げることや、帯電部材の表面を激しく磨耗させることを優れて防止する観点から、好ましくは20[N/m]以下、より好ましくは12[N/m]以下とする。ここで述べる線圧とは、帯電ローラに対する導電性部材の当接圧の総圧を、帯電ローラの回転軸方向の有効当接幅(当接ニップ幅)で割ったものである。
【0109】
その測定方法としては導電性部材と帯電ローラとの当接部に挟み込む形で加圧センサーを設置して、導電性部材が帯電ローラに加える総圧を測定することができる。ニッタ株式会社製のI−SCAN圧力分布測定システム(商品名)のセンサシートを用いて測定することができる。
【0110】
次に、帯電部材の表面の動摩擦係数(μ)について説明する。
【0111】
帯電部材が電子写真感光体に従動して回転する場合、動摩擦係数(μ)は次の範囲にすることが好ましい。μを好ましくは1.5以下、より好ましくは0.5以下とすると、回転の際に帯電部材が回転方向に弓状に撓みやすくなることにより帯電部材の表面に部分的にトナーや外添剤が固着したりトナーや外添剤の固着領域が増大したりすることを優れて防止できる。また、帯電部材が弓状に撓むことにより導電性部材との接触不良が発生し、結果として帯電不良を引き起こすことを優れて防止できる。また、帯電部材が電子写真感光体に従動して回転する場合、μを好ましくは0.1以上とすると、帯電部材が回転しにくくなることを優れて防止できる。
【0112】
また、帯電部材が電子写真感光体に従動して回転しない場合、例えば周速差をもつ場合あるいは帯電部材を固定し電子写真感光体のみを回転させる場合においても、μを0.5以下とすることが好ましくい。帯電部材と電子写真感光体との摩擦力が抑制され、感光体表面の磨耗を優れて防止できるからである。
【0113】
本発明において、帯電部材の表面の動摩擦係数(μ)は、次のようにして測定される値を意味する。この測定方法は、オイラーのベルト式に準拠している。
【0114】
本発明において動摩擦係数の測定に用いる測定機の概略図を図3に示す。
【0115】
図3において、301は測定対象である帯電部材であり、302は帯電部材に所定の角度θで接触させたベルト(例えば、ステンレス等の金属フィルムやPET等のプラスチックフィルム)であり、303はベルト302の一端に繋がれた重りであり、304はベルト302の他端に繋がれた荷重計であり、305は荷重計304に接続された記録計である。
【0116】
図3に示す状態で、帯電部材301を所定の方向および所定の速度で回転させたとき、荷重計204で測定された力をF[N]、重りの重さとベルトの重さとの和をW[N]、帯電部材とベルトの巻付け角をθ(ラジアン)とすると、摩擦係数は以下の式で求められる。
【0117】
【数2】

【0118】
この測定方法により得られるチャートの一例を図4に示す。
【0119】
帯電部材を回転させた直後の値が回転を開始するのに必要な力であり、それ以降が回転を継続するのに必要な力である。従って、回転開始点(すなわちt=0[秒]の時点)の摩擦係数が静摩擦係数であり、t>0[秒]の任意の時間における摩擦係数が任意の時間における動摩擦係数である。本発明では、回転開始点から10秒後に得られる摩擦係数をもって、上記の動摩擦係数(μ)とする。
【0120】
動摩擦係数の測定において、ベルト302として厚さ20μm、幅30mm、長さ180mm、表面粗さRz=1.4μmのステンレス製シートを用い、W=0.98[N]とすることができる。そして、帯電部材の回転速度を115rpmとし、巻付け角度θ=90°とし、測定環境を23℃、53%RH(RHは相対湿度を表す)とすることができる。
【実施例】
【0121】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
[実施例1]
帯電ローラの作製
エピクロルヒドリンゴム(商品名「エピクロマーCG105」:ダイソー(株)製)100質量部に対して、酸化亜鉛(商品名:酸化亜鉛二種、正同化学社製)5質量部、ステアリン酸1質量部、導電性フィラーとしてカーボンブラック(商品名:HS500、旭カーボン社製)35質量部をオープンロールで30分間混練した。更に、加硫促進剤(DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)1質量部、加硫促進剤(TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド)1質量部及び加硫剤としてイオウ1.2質量部を加えて、15分間オープンロールで混練して未加硫ゴム組成物を作製した。
【0122】
次いで、外径(直径)6mm、長さ258mmのステンレス棒の芯金を用意した。クロスヘッド押出機を用いてこの芯金と上記未加硫ゴム組成物とを一体に押出すことで、芯金の周囲に円筒状の未加硫ゴム組成物を成形した。その後160℃、2時間の加熱加硫を行い、更に回転砥石を用いた乾式研磨、端部の切断・除去処理を行った。これにより、長さ232mm、端部直径8.2mm、中央部直径8.5mmのクラウン形状の導電性弾性ローラ(表面研磨後、表面層形成前の導電性弾性ローラ)Iを得た。この導電性弾性ローラの表面の十点平均粗さ(Rz)が5.5μmで、振れが22μmのであった。
【0123】
十点平均粗さ(Rz)はJISB6101に準拠して測定した。
【0124】
振れの測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザー測定機LSM−430v(商品名)を用いて行った。詳しくは、この測定機を用いて導電性弾性ローラIの弾性層部の外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。
【0125】
得られた導電性弾性ローラ(表面研磨後、表面層形成前の導電性弾性ローラ)Iの硬度は74度(アスカーC)であった。以降特に記載がない場合は、すべてこの方法で導電性弾性ローラを作成した。
【0126】
次に加水分解性シラン化合物としてのグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)27.84g(0.1mol)、メチルトリエトキシシラン(MTES)17.83g(0.1mol)およびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数6)7.68g(0.0151mol(加水分解性シラン化合物総量に対して7mol%相当))と、水17.43gおよびエタノール37.88gとを混合した。この混合物を室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物Iを得た。
【0127】
この縮合物Iを2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分3質量%の縮合物含有アルコール溶液Iを調製した。
【0128】
上記方法で得られる縮合物含有アルコール溶液Iの1100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を添加し、表面層用塗布液Iを調製した。
【0129】
次に、導電性弾性ローラ(表面研磨後、表面層形成前の導電性弾性ローラ)Iの導電性弾性層外周面上に表面層用塗布液Iをリング塗布した。これに254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cm2になるように照射し、表面層用塗布液Iを硬化(架橋反応による硬化)および乾燥させることによって表面層を形成した。紫外線の照射には、ハリソン東芝ライティング(株)製の低圧水銀ランプを用いた。
【0130】
紫外線の照射によってグリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ基が開裂し、縮合物Iの架橋反応が生じたと考えられる。また、この際の表面層の膜厚は0.1μmであった。
【0131】
以上のようにして、支持体、支持体上に形成された導電性弾性層および、導電性弾性層上に形成された表面層(表面層用塗布液Iを用いて形成したポリシロキサンを含有する層)を有する帯電ローラを作製した。この帯電ローラを、帯電ローラIとする。
【0132】
作製した帯電ローラIの表面の動摩擦係数(μ)は0.27であった。
【0133】
また、帯電ローラIの表面層の組成分析を以下のとおりにして行った。
【0134】
10〜1000倍の光学顕微鏡下、光学顕微鏡に設置した3次元粗微動マイクロマニピュレーター((株)ナリシゲ製)を用い、上記と同様にして作製した帯電ローラIの表面層から1mg程度の試料を採取した。
【0135】
採取した試料を、TG−MS法(TG(熱重量測定)装置にMS(質量分析)装置を直結)により、加熱時に発生する気体の質量数ごとの濃度変化を、重量変化と同時に、温度の関数として追跡した。測定の条件を表1に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
上記条件で測定して得られたTG−DTG(Derivative thrmogravimetry)曲線によると、室温付近から重量減少が認められ、また、400〜500℃付近および500〜650℃付近から、2段階の顕著な重量減少が認められた。
【0138】
ここで、400℃〜500℃で発生する気体について、質量数(m/z)31、43、58、59のオキシアルキレン基(グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ基由来)が確認できた。またその重量減少率から、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して37.36質量%であることがわかった。
【0139】
また、500℃〜600℃で発生する気体について、質量数(m/z)51、69、119、131のフッ化アルキル基(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシランのフッ化アルキル基由来)が確認できた。またその重量減少率から、ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して19.20質量%であることがわかった。
【0140】
残渣はポリシロキサン中のシロキサン部分であると考えられ、よってポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して100.00−(37.36+19.20)=43.44質量%である。
【0141】
<導電性部材>
導電性部材としては、ステンレス製のシートを長さL=15mm、厚さδ=50μm、幅W1=250mmの薄板ブレード形状に加工したものを用いた。この導電性部材を導電性部材Iとした。これを図7に示すように帯電ローラの長手方向(軸方向)に対し平行に配置し、導電性部材Iの片端を支持部材502に固定して自由端側近傍の導電性部材の表面において帯電ローラとの接触ニップを形成するように当接した。この際、帯電ローラに対する線圧が5.9N/mとなるように、導電性部材Iの長さLの支持部材への固定長さを変えることで導電性部材の撓み量を変えて設定した。
【0142】
<画像評価>
作製した帯電ローラIおよび導電性部材Iを用いて、以下に示す出力画像評価を行った。作製した帯電ローラIと電子写真感光体を一体に支持し、導電性部材Iより帯電ローラIに電圧印加が可能なプロセスカートリッジに組み込み、このプロセスカートリッジをA4紙縦出力用のレーザービームプリンターに装着した。このレーザービームプリンターの現像方式は反転現像方式であり、転写材の出力スピードは47mm/sであり、画像解像度は600dpiである。
【0143】
なお、帯電ローラIとともにプロセスカートリッジに組み込んだ電子写真感光体は、支持体上に層厚14μmの有機感光層を形成してなる有機電子写真感光体である。また、この有機感光層は、支持体側から電荷発生層と変性ポリカーボネート(結着樹脂)を含有する電荷輸送層とを積層してなる積層型感光層であり、この電荷輸送層は電子写真感光体の表面層となっている。
【0144】
また、上記レーザービームプリンターに使用したトナーは、いわゆる重合トナーである。このトナーは、ワックス、荷電制御剤、色素、スチレン、ブチルアクリレートおよびエステルモノマーを含む重合性単量体系を水系媒体中で懸濁重合して得られた粒子にシリカ微粒子および酸化チタン微粒子を外添してなるトナー粒子を含む。トナーのガラス転移温度は63℃、体積平均粒子径は6μmである。
【0145】
画像出力は、温度23℃、相対湿度55%の各環境下で行い、A4紙にハーフトーン画像(電子写真感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)を形成し、これを47mm/sのプロセススピードで6000枚出力した。
【0146】
出力画像の評価は、初期と6000枚後での出力画像を目視することによって行った。
【0147】
帯電ローラの表面にトナーや外添剤が固着することによる帯電ムラに起因する画像不良、導電性部材と帯電ローラの摺擦キズによる画像不良の2つの要因に分けて、以下のように評価ランクをつけた。
AA:画像不良などが確認できず、画像上全く問題のないもの。
A:画像不良などがほとんど確認できず、画像上問題のないもの。
B:画像不良などが軽微に確認できるが、画像上大きな問題なく使用可能レベルのもの。
C:画像不良などが画像全体に確認でき、使用不可レベルのもの。
【0148】
画像評価の結果、帯電ローラIは耐久後も画像不良などがほとんど確認できず、画像上問題が無かった。
【0149】
以上の評価結果を表2に示す。
【0150】
〈実施例2〉
表面層用塗布液Iを以下の表面層用塗布液IIに変更した以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製した。この帯電ローラを帯電ローラIIとする。表面層用塗布液IIは以下のようにして調製した。
【0151】
すなわち、加水分解性シラン化合物としてのグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)27.84g(0.1mol)、メチルトリエトキシシラン(MTES)17.83g(0.1mol)およびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数10)3.34g(0.0047mol(加水分解性シラン化合物総量に対して2.3mol%相当))と、水16.6gおよびエタノール31.7gとを混合した。この混合物を、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物IIを得た。
【0152】
この縮合物IIを2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分3質量%の縮合物含有アルコール溶液IIを調製した。
【0153】
上記方法で得られる縮合物含有アルコール溶液IIの3100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を添加し、表面層用塗布液IIを調製した。
【0154】
実施例1と同様にして得られる表面層形成前の導電性弾性ローラIの弾性層外周面に、表面層用塗布液IIを用いてリング塗布を行い、表面層の膜厚が0.1μmの帯電ローラIIを得た。
【0155】
作製した帯電ローラIIの表面の動摩擦係数(μ)は0.27であった。
【0156】
また、帯電ローラIIの表面層の組成分析を、実施例1の帯電ローラIの表面層の組成分析と同様にして行ったところ、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して40.00質量%であり、ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して11.90質量%であり、ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して48.10質量%であった。
【0157】
また、導電性部材は実施例1と同じ導電性部材Iを使用し、画像評価も実施例1と同様に行った。
【0158】
画像評価の結果、耐久後も画像不良などが全く無く、非常に良好な画像が得られた。
【0159】
以上の評価結果を表2に示す。
【0160】
〈実施例3〉
表面層用塗布液Iを以下の表面層用塗布液IIIに変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ローラを作製した。この帯電ローラを帯電ローラIIIとする。
【0161】
表面層用塗布液IIIは以下のようにして調製した。
【0162】
すなわち、加水分解性シラン化合物としてのグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)27.84g(0.1mol)、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)24.04g(0.1mol)およびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数6)7.68g(0.0151mol(加水分解性シラン化合物総量に対して7mol%相当))と、水17.43gおよびエタノール53.82gとを混合した。この混合物を、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物IIIを得た。
【0163】
この縮合物IIIを2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分0.5質量%の縮合物含有アルコール溶液IIIを調製した。
【0164】
上記方法で得られる縮合物含有アルコール溶液IIIの5100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を添加し、表面層用塗布液IIIを調製した。
【0165】
実施例1と同様にして得られる表面層形成前の導電性弾性ローラIの弾性層外周面に、表面層用塗布液IIIをリング塗布法により塗布し、表面層の膜厚が0.1μmの帯電ローラIIIを得た。
【0166】
作製した帯電ローラIIIの表面の動摩擦係数(μ)は0.28であった。
【0167】
また、帯電ローラIIIの表面層の組成分析を、実施例1の帯電ローラIIIの表面層の組成分析と同様にして行ったところ、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して33.50質量%であった。ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して12.90質量%であった。ポリシロキサン中のフェニル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して6.70質量%であった。ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して46.90質量%であった。なお、400℃〜500℃で発生する気体については、質量数(m/z)78のベンゼンや質量数(m/z)91(トルエン)などのフェニル基も確認でき、これから上記フェニル基に関しての6.70質量%を算出した。
【0168】
また、導電性部材は実施例1と同じ導電性部材Iを使用し、画像評価も実施例1と同様に行った。
【0169】
画像評価の結果、耐久後も画像不良などが全く無く、非常に良好な画像が得られた。
【0170】
以上の評価結果を表2に示す。
【0171】
〈実施例4〉
NBR(商品名:N230S、JSR社製)100質量部に対して、酸化亜鉛(商品名:酸化亜鉛二種、正同化学社製)5質量部、ステアリン酸1質量部、導電性フィラーとしてケッチエンブラック(商品名:EC600JD、ライオン(株)製)6質量部、カーボンブラック(商品名:HS500、旭カーボン社製)14質量部、充填材として炭酸カルシウム(商品名:ナノックス#30、丸尾カルシウム(株)製)30質量部をオープンロールで30分間混練した。これに、更に加硫促進剤(DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)1質量部、加硫剤としてイオウ1.2質量部を加えて、15分間オープンロールで混練して未加硫ゴム組成物を作製した。
【0172】
未加硫ゴム組成物として上記組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、表面層形成前の導電性弾性ローラIIを作成した。さらにその弾性層外周面に、実施例3と同様にして得られた表面層用塗布液IIIをリング塗布法により塗布して帯電ローラIVを作製した。
【0173】
作製した帯電ローラIVの表面の動摩擦係数(μ)は0.18であった。
【0174】
導電性部材は実施例1と同じ導電性部材Iを使用し、画像評価を実施例1と同様に行った。
【0175】
画像評価の結果、耐久後も画像不良などが全く無く、非常に良好な画像が得られた。
【0176】
以上の評価結果を表2に示す。
【0177】
〈実施例5〉
実施例4において、導電性部材Iの線圧が10N/mになるように設定した以外は、実施例4と同様にして、帯電ローラIVを用いて画像評価を行った。
【0178】
画像評価の結果、耐久後も画像不良などが全く無く、非常に良好な画像が得られた。
【0179】
以上の評価結果を表2に示す。
【0180】
〈実施例6〉
実施例4において、導電性部材を厚さ100μmのポリイミド製のシートにアルミニウムを蒸着した導電性部材IIにした以外は、実施例4と同様にして、帯電ローラIVを用いて画像評価を行った。
【0181】
画像評価の結果、耐久後も画像不良などがほとんど確認できず、画像上問題が無かった。
【0182】
以上の評価結果を表2に示す。
【0183】
〈実施例7〉
実施例4において、導電性部材を厚さ80μmのりん青銅製シートの導電性部材IIIにした以外は、実施例4と同様にして、帯電ローラIVを用いて画像評価を行った。
【0184】
画像評価の結果、耐久後も画像不良などがほとんど確認できず、画像上問題が無かった。
【0185】
以上の評価結果を表2に示す。
【0186】
(比較例1)
表面層用塗布液Iを以下の表面層用塗布液IVに変更した以外は実施例1と同様にして帯電ローラVを作製した。作製した帯電ローラVの表面の動摩擦係数(μ)は0.52であった。
【0187】
加水分解性シラン化合物としてのメチルトリメトキシシラン15.1g、メチルトリエトキシシラン17.8gと、フェニルメトキシシラン75.0gと水20.13gおよびエタノール41.88gとを混合した。この混合物を室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物IVを得た。
【0188】
この縮合物IVを2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分3質量%の縮合物含有アルコール溶液IVを調製した。
【0189】
上記方法で得られる縮合物含有アルコール溶液IVの1100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を添加し、表面層用塗布液IVを調製した。
【0190】
また、導電性部材は実施例1と同じ導電性部材Iを使用し、画像評価も実施例1と同様に行った。
【0191】
画像評価の結果、耐久後にローラの傷に起因する縦スジ模様が画像上多く見られ、トナーによる汚れに起因する帯電ムラも画像上多く見られた。また、ローラの形状変形に起因する画像不良も端部に見られ、使用不可レベルであった。
【0192】
以上の評価結果を表2に示す。
【0193】
(比較例2)
表面層用塗布液Iを以下の表面層用塗布液Vに変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ローラVIを作製した。作製した帯電ローラVIの表面の動摩擦係数(μ)は0.56であった。
【0194】
フェニルトリエトキシシラン16.04gおよびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン7.68gと、水15.23gおよびエタノール43.82gとを混合した。この混合物を室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物Vを得た。
【0195】
この縮合物Vを2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分0.5質量%の縮合物含有アルコール溶液Vを調製した。
【0196】
上記方法で得られる縮合物含有アルコール溶液Vの1100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を添加し、表面層用塗布液Vを調製した。
【0197】
また、導電性部材は実施例1と同じ導電性部材Iを使用し、画像評価も実施例1と同様に行った。
【0198】
画像評価の結果、耐久後にローラの傷に起因する縦スジ模様が画像上多く見られ、トナーによる汚れに起因する帯電ムラも見られた。また、ローラの形状変形に起因する画像不良も端部に見られ、使用不可レベルであった。
【0199】
以上の評価結果を表2に示す。
【0200】
(比較例3)
実施例1の導電性弾性ローラIを表面層を形成せずに帯電ローラVIIとして使用した以外は、実施例1と同様にして、画像評価を行った。帯電ローラVIIの表面の動摩擦係数(μ)は摩擦力が高過ぎたために振動が発生し、そのため正確に計測はできなかったが、少なくとも1.8以上であった。また、導電性部材は実施例1と同じ導電性部材Iを使用した。
【0201】
画像評価の結果、耐久後にローラの傷に起因する縦スジ模様が画像上多く見られ、トナーによる汚れに起因する帯電ムラも見られた。また、ローラの形状変形に起因する画像不良も端部に見られ、使用不可レベルであった。
【0202】
以上の評価結果を表2に示す。
【0203】
(比較例4)
導電性部材Iの線圧が22N/mになるように設定した以外は、比較例1と同様にして、帯電ローラVを用いて画像評価を行った。
【0204】
画像評価の結果、耐久後にローラの傷に起因する縦スジ模様が画像上多く見られ、トナーによる汚れに起因する帯電ムラも見られた。また、ローラの形状変形に起因する画像不良も端部に見られ、使用不可レベルであった。
【0205】
以上の評価結果を表2に示す。
【0206】
実施例1〜7および比較例1〜2の帯電ローラ(導電性弾性ローラおよび表面処理用塗布液)と導電性部材(材質および線圧)の組み合わせ、および測定結果をまとめたものを表3および4に示す。
【0207】
【表2】

【0208】
【表3】

【0209】
【表4】

【0210】
以上のとおり、本発明によれば、長期間の繰り返し使用によってもトナーやトナーに用いられる外添剤などが帯電部材表面に付着しにくく、また帯電部材表面の摩擦による磨耗や熱劣化を抑えることによって、長期間安定した帯電付与が可能な帯電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】本発明の帯電装置の構成の一例を説明するための図である。
【図2】本発明で用いる帯電部材の構成の一例を示す図である。
【図3】動摩擦係数の測定に用いる測定機の概略図である。
【図4】動摩擦係数の測定で得られるチャートの一例を示す図である。
【図5】本発明で用いる導電性部材と帯電部材の配置構成の一例を示す図である。
【図6】本発明で用いる導電性部材と帯電部材の配置構成の一例を示す図である。
【図7】本発明で用いる導電性部材と帯電部材の配置構成の一例を示す図である。
【図8】本発明で用いる導電性部材と帯電部材の配置構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0212】
1 感光体
2 帯電部材
3 露光光
4 現像手段
5 転写部材
6 転写材
7 定着部材
8 クリーニング部材
9 トナー
10 回転軸
11 高圧電源
12 導電性部材
201 支持体
202 導電性弾性層
203 表面層
301 帯電部材
302 ベルト
303 重り
304 荷重計
305 記録計
501 導電性部材
502 支持部材
801 導電性部材(リング形状)
δ 導電性部材厚み
L 導電性部材長さ
1 導電性部材幅
2 帯電部材の軸方向長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被帯電体に当接する帯電部材に電圧を印加して被帯電体を帯電する電子写真方式の帯電装置において、
該帯電部材に電圧を印加するための、該帯電部材の表面に当接する導電性部材を備え、
該帯電部材が表面層を有し、該表面層がフッ化アルキル基およびオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有し、該帯電部材の該導電性部材との当接部の動摩擦係数が0.1以上1.5以下であることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記導電性部材の帯電部材に対する当接線圧が1[N/m]以上20[N/m]以下である請求項1記載の帯電装置。
【請求項3】
前記導電性部材が導電性ブレードである請求項1または2記載の帯電装置。
【請求項4】
前記帯電部材が、弾性層を備えた導電性ローラである請求項1から3の何れか一項記載の帯電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−225692(P2007−225692A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44018(P2006−44018)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】