説明

帯電部材および画像形成装置

【課題】帯電ブレードにおける帯電の安定化を目的とする。
【解決手段】帯電ブレードにおいて、先端部と帯電部と支持部材が別部材で構成され、かつ先端部と帯電部同士は非接触で同一の支持部材に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像が形成される像担持体(被帯電体)に当接して相対的に移動し電圧が印加されることにより像担持体の表面を帯電するためのブレード状の帯電部材、およびその帯電部材を用いた画像形成装置に関するものである。
【0002】
上記において、静電潜像が形成される像担持体の代表例としては、電子写真感光体、静電記録誘電体が挙げられる。画像形成装置としては電子写真方式や静電記録方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機能機、画像表示ディスプレイ装置などが挙げられる。
【背景技術】
【0003】
転写方式の電子写真画像形成装置を例にして説明する。この装置は、一般に、回転ドラム型に代表される電子写真感光体(像担持体:以下、ドラムと記す)に対して、ドラム表面を所定の極性・電位に一様に帯電する帯電手段と、そのドラム帯電面に選択的に露光する露光手段により画像情報の静電潜像が形成される。そして、その潜像が現像手段により現像剤(以下、トナーと記す)を用いてトナー像として可視化(現像)される。そのトナー像が転写手段により記録材(記録媒体)に転写される。そして、記録材上のトナー像が定着手段により固着画像として定着されて、その記録材が画像形成物として出力される。
【0004】
帯電手段は、近年は、半導電性のゴムや樹脂によるベルト形状、ロール形状、ブラシ形状などの回転方式の帯電部材、あるいはブレード形状、フィルム形状などの固定方式の帯電部材を用いた接触型の帯電器が注目されるようになった。接触型の帯電器の特徴として、非接触型のコロナ帯電器に比べて電源の低圧化がはかれ、オゾンの発生量が少ないなどの長所を有している。
【0005】
このような接触型の帯電器はドラム表面を帯電するために、通常直流電圧を−1.0〜−1.5kV印加することによってドラム表面を−500V程度に帯電する。また直流電圧のみだと帯電の不安定性から交流電圧を直流電圧に重畳させることによって帯電の安定化を図るといった方法が用いられている。
【0006】
ここで、接触型の帯電器の問題点の一つとして帯電器の汚れがある。これは転写されずにドラム上に残ったトナーがクリーニング部材でクリーニングされるはずが、必ずしもすべてのトナーや外添剤を除去できるわけではないために起こる現象である。そのため、クリーニング部材でクリーニングできず、すり抜けたトナーや外添剤が接触型の帯電器に送られ、帯電器を汚してしまう。そのため、均一な放電を阻害してしまうために縦スジや不均一放電といった帯電不良を発生させていた。
【0007】
こういった問題から、放電によって発生するオゾンの量を極力抑えるためと汚れを防止するために、できるだけ小さなギャップを保ちつつ非接触でドラム表面を帯電させる非接触型の帯電器(コロナ帯電器とは別に)も考えられている。
【0008】
上記非接触帯電器では放電によって発生するオゾンの量を極力抑え電源の低圧化をはかるため、放電可能な範囲でできるだけ狭いギャップを保証する必要がある。ドラムの振れや外径を考慮すると、狭いギャップを保証するためには通常ドラムに帯電器の一部を突き当て、突き当て部材でギャップを保証する方法がとられる。
【0009】
当然このときドラムに突き当てる部材は帯電に影響がでないようにドラム表面を傷つけないような可撓性の材質が選択される。また、帯電部はできるだけ放電領域を広くとりたいために、先端部にできるだけ近い部分に形成される。そのため、通常は先端部と帯電部は隣接して接触して形成されることとなる(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−319183号公報
【特許文献2】特開平11−202597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記のような狭いギャップを保証するような非接触型の帯電器(ブレード状の帯電部材)においては、ドラムと接触している部分においてドラムの回転とともに微小な振動が発生してしまう。そのため、先端部と隣接して接している帯電部においてはその振動が直接帯電部に伝わり、非接触での放電による帯電に帯電ムラといった帯電不良をもたらす可能性があった。
【0012】
ブレード状の帯電部材(以下、帯電ブレードと記す)における可撓性の材質の先端部41の挙動を図12により説明する。帯電ブレードの可撓性の材質(弾性体)からなる先端部41が回転方向Aの方向に駆動しているドラム3と接している。この先端部41では摩擦が発生するため摩擦力fがはたらき、摩擦が大きい場合には先端部41がドラム3の回転方向Aに連れ回ろうとする((a)、(b))。
【0013】
その後、弾性体の復元力Fが、摩擦力fによる変形よりも打ち勝った場合に先端部41はもとに戻ろうとする((c)、(d))。そのため、先端部41は交互に連れまわり、復元を繰り返すいわゆるスティックスリップを繰り返す。
【0014】
このスティックスリップにより、帯電ブレードにはドラム3と接触している先端部41で微小な振動が発生することとなる。ドラム3に接触していれば当然そこに摩擦力が発生するため上記運動をおこなうことになる。特にエッジ当接であればあるほどこの傾向が顕著になり振動も大きくなる傾向にある。
【0015】
そのため、この振動が帯電ブレードの先端部41に隣接する帯電部51(図13)にも伝わり、帯電部51での放電ギャップを変化させてしまうことがあった。放電ギャップは通常良好な帯電を得るためには7.5〜150μmあればよいため、放電ギャップの変化は帯電ムラといった帯電不良の原因となることがあった。
【0016】
このときの状態を図13を用いて説明する。(a)は帯電ブレードの先端部41がドラム3との摩擦力fによってまさにドラム3に連れまわろうとしているところである。このとき摩擦力fによって先端部41が変形しようとしている。このとき先端部41に隣接する帯電部51は摩擦力fによる先端部41の変形にともなって同時に変形している((b))。そのため放電ギャップ53、54が変化してしまう。このとき、放電ギャップ53、54はそれぞれ最小放電ギャップ(53)、最大放電ギャップ(54)であり、放電が生じる範囲として放電領域55を示している。
【0017】
その後、先端部41のスティックスリップに連動して放電ギャップ53、54は変化し、放電ギャップ53、54が変化すると帯電可能な領域55が当然変化することになる。そのため、ドラム削れ防止のために少ない放電で帯電しようとする場合や、耐久後半などの場合において、特にハーフトーン画像で横スジといった帯電ムラが発生するため、更なる改良が望まれていた。
【0018】
そこで本発明の目的は、先端部の振動(スティックスリップ)によって生じる放電ギャップの変動を低減し、安定した帯電が行えるブレード状の帯電部材、およびその帯電部材を用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するための本発明に係る帯電部材の代表的な構成は、静電潜像が形成される像担持体に当接して相対的に移動し電圧が印加されることにより前記像担持体の表面を帯電するためのブレード状の帯電部材であって、前記像担持体の表面に対して放電を行うための帯電部と、前記像担持体の表面に対して放電を行わないための非帯電部と、を有し、前記非帯電部は前記像担持体と接触して、前記帯電部と前記像担持体との間に放電可能な間隙を設けることが可能であり、前記非帯電部は、前記非帯電部から前記像担持体の表面に対して放電をしないように、少なくとも一部が前記帯電部よりも高抵抗の物質で構成されており、前記非帯電部と、前記帯電部とを支持する支持部を備え、前記非帯電部と、前記帯電部とはそれぞれ別部材で非接触に前記支持部に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、先端部の振動によって生じる放電ギャップの変動を低減し、安定した帯電が行えるブレード状の帯電部材、およびその帯電部材を用いた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の帯電ブレードのドラムに対する設定の説明図
【図2】画像形成装置例の模式図
【図3】帯電ブレードの構成説明図
【図4】非帯電部(先端部)の各種構成形態(変形例)の説明図
【図5】設定角θ、侵入量δの測定方法の説明図
【図6】非帯電部の振動グラフ図
【図7】非帯電部の挙動概略図
【図8】実施例2の帯電ブレードの概略図
【図9】実施例4の帯電同時クリーニングブレードの概略図
【図10】帯電同時クリーニングブレードの挙動概略図
【図11】実施例5の帯電同時クリーニングブレードの概略図
【図12】スティックスリップの概略図
【図13】スティックスリップによる放電ギャップ変化の概略図
【図14】実施例6の帯電同時クリーニングブレードの概略図
【図15】放電領域を示す図
【図16】各種比較例のブレード構成を示す図
【図17】実施例6の結果を説明する図
【図18】実施例6のクリーニング機能の効果を説明する図
【図19】実施例7の帯電ブレードの概略図
【図20】実施例7のクリーニング性に関する効果を説明する図
【図21】実施例7の帯電性に関する効果を説明する図
【図22】実施例8の画像形成装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0023】
[実施例1]
(1)画像形成装置例の全体的な概略構成及び作像動作
図2は本発明に従うブレード状の帯電部材4を用いた画像形成装置1の一例の概略構成図である。装置1は、電子写真プロセス利用のプロセスカートリッジ着脱式の電子写真画像形成装置(プリンタ)である。装置1はパソコン・イメージリーダ・ファクシミリ装置等のホスト装置300から制御回路部(制御手段:CPU)100に入力する電気的な画像信号に基づいて記録材(記録メディア、記録媒体)Pに対する画像形成を実行する。
【0024】
記録材Pは電子写真プロセスで画像形成が可能なシート状物であり、例えば、用紙、樹脂シート、ラベル等が挙げられる。制御回路部100は操作部200やホスト装置300との間で各種の電気的情報の授受をすると共に、装置1の画像形成動作を記憶部に記憶させた所定の制御プログラムや参照テーブルに従って統括的に制御する。
【0025】
装置1の装置本体内には、カートリッジ収納部1Aが設けられている。プロセスカートリッジ2はカートリッジ収納部1Aに対して所定の操作要領にて取り外し可能に装着されている。本実施例において、カートリッジ2は一体型のプロセスカートリッジである。即ち、現像剤Tで現像される静電潜像が形成される回転ドラム型の像担持体としての電子写真感光体ドラム3と、このドラム3に作用するプロセス手段としての帯電手段4・現像手段6・クリーニング手段8が共通の筺体に一体的に組み付けられて一体化されている。
【0026】
本実施例において、帯電手段4は帯電ブレード(ブレード状の帯電部材)である。この帯電ブレード4については後述する。現像手段6は現像剤Tとして磁性1成分トナーを用いた非接触現像装置である。以下、現像剤Tをトナーと記す。本実施例で使用されるトナーTは、母体と複数の外添剤からなり、平均粒径8μmの磁性1成分ネガトナーである。クリーニング手段8はクリーニング部材として弾性ブレード(クリーニングブレード)8aを用いたブレードクリーニング装置である。
【0027】
現像装置6は、トナーTを収容している現像剤収容部としての現像容器6aを有する。また、ドラム3に形成された静電潜像をトナー像として現像する現像剤担持体としての現像スリーブ6b、スリーブ6b内に配設された非回転のマグネットローラ6c、現像スリーブ6b上のトナーの量を規制する現像ブレード6dなどを有する。
【0028】
カートリッジ収納部1Aの上方部には、像露光手段としてのレーザースキャナユニット(レーザー光学装置)5が配設されている。ユニット5は、ホスト装置300から制御回路部100に入力する画像情報に対応して変調したレーザー光Lを出力する。そのレーザー光Lがカートリッジ2の上面側の露光窓2aを通してカートリッジ2内に進入する。これにより、ドラム3の表面にレーザー走査露光がなされる。
【0029】
カートリッジ2のドラム3の下面には転写ローラ7が当接して転写ニップ部Nを形成している。カートリッジ収納部1Aに収容されているカートリッジ2は、押圧手段(不図示)により装置本体側の位置決め部(不図示)に押し付けられて位置決め固定されている。また、カートリッジ2の駆動入力部(不図示)に対して装置本体側の駆動出力部(不図示)が結合している。また、カートリッジ2の各種電気接点(不図示)に対して装置本体側の対応する各種電気接点(不図示)が導通している。
【0030】
画像形成動作は次のとおりである。ドラム3は矢印Aの時計回りに所定のプロセススピード、本実施例においては100mm/secで回転駆動される。ユニット5も駆動される。この駆動に同期して、所定の制御タイミングで帯電ブレード4に帯電バイアス印加電源Eから所定の帯電バイアスが印加されてドラム3の表面が帯電ブレード4により非接触式にて所定の極性・電位に一様に帯電処理される。ユニット5はドラム3の表面を画像信号に応じて変調されたレーザー光Lで走査露光する。これにより、ドラム3の表面に画像信号に応じた静電潜像が形成される。
【0031】
形成された静電潜像は現像装置6の現像スリーブ6bによりトナーが供給されてトナー像として現像される。現像スリーブ6bは矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。また、現像スリーブ6bには現像バイアス印加電源部(不図示)から所定の制御タイミングにて所定の現像バイアスが印加される。
【0032】
一方、給紙機構部13の給紙ローラ14が駆動されて記録材(記録メディア)Pが一枚分離給送される。その記録材Pがレジストレーション手段(不図示)を含むシートパス15を通って転写ニップ部Nに所定の制御タイミングで導入され、ニップ部Nを挟持搬送されていく。ニップ部Nを記録材Pが通過している間、転写ローラ7には転写バイアス印加電源部(不図示)から所定の転写バイアスが印加される。これにより、ドラム3側のトナー像が順次に記録材Pの面に転写されていく。
【0033】
ニップ部Nを出た記録材Pはドラム3の面から分離されて定着装置10に導入される。本実施例において、定着装置10はヒートローラ定着装置であり、記録材Pは定着ニップ部で挟持搬送されて熱と圧力を受ける。これにより、記録材P上の未定着トナー像が固着画像として熱圧定着される。そして定着装置10を出た記録材Pはシートパス16を通って画像形成物として装置1の上面の排紙トレー12に送られる。
【0034】
また、転写ニップ部Nにおいて記録材Pに転写されずにドラム3上に残存した転写残トナーは、クリーニング装置8のクリーニングブレード8aにより掻き取られ、廃トナー容器8bに収納される。クリーニングされたドラム3は繰り返して画像形成に供される。
【0035】
(2)帯電ブレード
図3は本実施例で用いる帯電ブレード4の構成説明図である。この帯電ブレード4は、静電潜像が形成される像担持体であるドラム3に当接して相対的に移動し電圧が印加されることによりドラム3の表面を帯電するためのブレード状の帯電部材である。そして、ドラム3の表面に対して放電を行うための帯電部51と、ドラム3の表面に対して放電を行わないための非帯電部64とを有する。非帯電部64はドラム3と接触して、帯電部51とドラム3との間に放電可能な間隙α(ギャップ:図1の(b))を設けることが可能である。
【0036】
非帯電部64は、非帯電部64からドラム3の表面に対して放電をしないように、少なくとも一部が帯電部51よりも高抵抗の物質で構成されている。そして、非帯電部64と、帯電部51とを支持する支持部63を備え、非帯電部64と、帯電部51とはそれぞれ別部材で非接触に支持部63に取り付けられる。
【0037】
より具体的に説明する。支持部63は電極板を兼ねる導電性の弾性支持部材であり、本実施例では、厚み100μmのリン青銅板(金属部材)である。支持部63はドラム3の母線方向(ドラム軸線方向)に長く、ドラム3の画像形成可能領域幅Gの全域に対応する長さ寸法を有する。支持部63の基部側(支持部63の短手方向の一端部側)はホルダー62に保持されている。
【0038】
ホルダー62は本実施例では剛性を有する金属板であり、支持部63と電気的に導通している。支持部63の先端側(ホルダー62側とは反対側)に、帯電ブレード先端部(突き当て部材)としての非帯電部64が配設されている。本実施例においてこの非帯電部64はウレタンゴム(絶縁性部材)である。
【0039】
<非帯電部64>
突き当て部材としての非帯電部64は、ドラム3に接して帯電部51が放電可能なギャップα(図1の(b))をもてるように位置決めをおこなうことを目的としている。そのため、非帯電部64は支持部63の長手全域にある必要はなく、図3の(b)にあるように端部(画像領域外)において、帯電部51における放電距離を十分に確保できれば良い。
【0040】
また、非帯電部64を絶縁性にすることによって帯電部51とは異なる部分での放電を発生させないようにすることで良好な帯電を得る。ただし、非帯電部64からの放電がなければ良いので、非帯電部64は必ずしも全体が絶縁性である必要はない。
【0041】
非帯電部64は、例えば、図4の(a)と(b)のように、絶縁性部材64aと導電性部材64bとの複合部材であって、先端に導電性部材64bが存在する。そして、導電性部材64bが絶縁性部材64aにより電極板である支持部63から電気的に絶縁されている形態であっても良い。また、(c)のように、導電性部材64bが絶縁性部材64aの途中に存在し、その導電性部材64bが絶縁性部材64aにより電極板である支持部63から電気的に絶縁されている形態であっても良い。それから、非帯電部64はドラム表面に接するため、弾性体の材質にすることでドラム表面が傷つくのを防止する。
【0042】
<帯電部51>
支持部63のドラム3と対向する側の面には、ドラム表面に放電を利用して帯電するために、支持部63の長手に沿って帯電部51が取り付けられている。本実施例において、帯電部51は中抵抗の導電ゴムであり、支持部63に対して導電性接着剤により接合されている。従って、帯電部51は支持部63と電気的に導通している。また支持部63はホルダー62と電気的に導通している。
【0043】
帯電部51を構成する導電ゴムの抵抗としては10Ωcm程度である。このとき、帯電部51は導電ゴムを利用しているため弾性体となる。これは帯電電圧を低くするためギャップをできるだけ狭くする必要性から、落下時などのドラム3との接触時の傷防止のために弾性体としている。
【0044】
非帯電部64と、帯電部51とはそれぞれ別部材で非接触に支持部63に取り付けられる。即ち、非帯電部64と帯電部51は同じ支持部63に取り付けられている。これは、非帯電部64と帯電部51は同一部材63に取り付けているためドラム3に突き当てる部分で位置決めができるため、位置精度がよくなるためである。また帯電部51は突き当て部である非帯電部64の振動を受けないように、非帯電部64と帯電部51は非接触になるように支持部63に取り付けられている。
【0045】
また、非帯電部64と帯電部51は材料が異なるため異なる材料を接着することが難しいといった理由から、非接触にすることで生産上作り易いといった利点もある。非帯電部64と帯電部51の非接触の離間幅M(図3の(a))は本実施例では1mmとしている。これは、非帯電部64がドラム駆動時においても帯電部51に接触することなく、かつ放電可能なギャップ7.5〜150μmが確保できるかどうかで決まる値である。
【0046】
<帯電ブレードの設定>
本実施例の上記帯電ブレード4のドラム3に対する設定を図1を用いて説明する。帯電ブレード4は長手方向をドラム3の母線方向に並行にしてドラム3に対して配列される。帯電ブレード4はドラム3の回転方向Aに対してカウンター方向に配設されている。そして、非帯電部64のエッジ部をドラム3に接触させ、ホルダー62をカートリッジ2の筺体(不図示)に固定して、前記エッジ部を支持部63の撓み反力にて所定の押圧力でドラム3に当接させた状態にされる。
【0047】
この当接状態において、帯電部51はドラム3との間に非接触に対面して配置される。そして、帯電部51の放電位置がドラム3との間に放電可能な間隙αを持って非接触に配置される。導電性のホルダー62に対して帯電バイアス印加電源E(図2)から所定の帯電バイアスが印加され、そのバイアスが、ホルダー62、支持部63を介して帯電部51に印加される。
【0048】
これにより、帯電部51とドラム3との間の微小空隙においてドラム3の表面に対して放電がなされて回転するドラム3の表面が所定の極性・電位に一様に帯電される。本実施例では電源Eにより帯電部51に−1.0kVの直流電圧を印加し、ドラム表面を−500V程度に帯電する。
【0049】
本実施例では帯電ブレード4をドラム3に対して設定角θ=24°、侵入量δ=0.5mmでエッジ当接している。ここで、設定角θと侵入量δの求め方を図5を用いて説明する。設定角θと侵入量δは、画像形成時における帯電ブレード4とドラム3の配置状態から、ドラム3を取り去った状態で測定を行う。図5において、画像形成時にドラム3が配置されてた位置を仮想ドラム3とする。仮想ドラム3の中心を通り帯電ブレード4の先端のエッジ部(図5では先端は非帯電部64の例で説明している)を含み、ドラム1と対向する側の面と平行な軸をX軸とする。
【0050】
仮想ドラム1の中心を通りX軸に垂直な軸をY軸とする。仮想ドラム中心0を通り鏡面と平行なx軸と、仮想ドラム中心を通りx軸と垂直なy軸とし、図に示すように、仮想ドラム中心0からの先端部のエッジの座標の測定を行う。このドラム中心0からx方向の座標xとy方向の座標y、そしてドラム3の半径rから式(1)と式(2)を用いて設定角θと侵入量δを求めることが出来る。
【0051】
δ=√(r−x)−y・・・・・・・式(1)
θ=sin−1(x/r)・・・・・・・・・・式(2)
そして、帯電部51がドラム3とのギャップαを放電可能な7.5〜150μmを常に保てるようにする。また、できるだけ放電できる領域が広いほど帯電が安定するため、当接角θ、侵入量δを決定することとなる。
【0052】
<ドラム駆動時の帯電ブレードの振動>
ドラム駆動時には、帯電ブレード先端部(突き当て部)である非帯電部64にドラム3との摩擦によって振動(スティックスリップ)が発生する。特にドラムとの摩擦により、非帯電部64が連れまわり、その後、弾性力が摩擦に打ち勝ったときにもとに戻るといったスティックスリップを繰り返す。このとき非帯電部64と帯電部51が接触している場合この振動がどちらも弾性体であるためにそのまま伝わってしまう。
【0053】
このとき、実際の非帯電部64の振動を図6を用いて示す。横軸は測定時間、縦軸に歪み量(相対値)を示している。ドラム3による周期的な歪みに加えて、細かい歪み量が重なりあっているのがグラフから読み取れる。この細かい歪み量が帯電不良を引き起こす原因であり、帯電部51と非帯電部64を非接触にすることによって非帯電部64の振動が帯電部51に伝わるのを低減する。
【0054】
図7の(a)、(b)に非帯電部64と帯電部51を非接触にした場合の非帯電部64の動きを説明する。非帯電部64は先に示したようにドラム3に接しているために摩擦力fによってドラム3に連れまわろうとする((a))。そのため非帯電部64はスティックスリップ運動をおこなう。
【0055】
しかし、(b)にあるように帯電部51においては非帯電部64と非接触のため、丁度ギャップM(非帯電部64と帯電部51の非接触の離間幅)をはさんだ帯電部51には変形が伝わることはなくなる。そのため帯電部51における放電ギャップ53、54(α)の変化はみられず、従って放電が生じる範囲として放電領域55の変化はみられず、帯電に関しては非帯電部64のスティックスリップ運動とは関係なく一定の放電をおこなうことができるようになる。
【0056】
<検証実験>
ここで、本実施例において帯電不良が改善するのかの検証実験をおこなった。実験は温度23℃、湿度50%の環境でおこなった。帯電電圧−1.0kVの直流電圧を印加し、帯電不良が発生するのかを確認する。確認方法としては帯電させたドラム3の電位−500Vに対して、現像バイアスを変えることによってコントラストを変化させ現像剤(トナー)をドラム上に飛翔させることによってドラム上の電位ムラをトナー像で可視化することで帯電状態を確認した。
【0057】
検証実験した帯電ブレードサンプルは、1)非帯電部64と帯電部51が接触している帯電ブレード(比較例)、2)非帯電部64と帯電部51が非接触の帯電ブレード(本実施例)である。比較例では帯電ムラの横スジが発生した状態であったが、本実施例では帯電ムラの横スジは発生しないことを確認できた。
【0058】
以上のことから、本実施例1においては、帯電ブレードの非帯電部46と帯電部51を同一の支持部63に非接触で配設することで非帯電部46における振動に関係なく均一な帯電をおこなうことが可能となる。
【0059】
[実施例2]
実施例1では非帯電部46を位置決めのために帯電ブレードの長手端部のみに設けていたが、本実施例では図8の(b)のように非帯電部46はドラム3の画像形成可能領域幅Gの全域以上の帯電ブレード長手にわたって配設されている。即ち、非帯電部46はドラム3の表面の画像形成可能領域幅Gの全幅に渡って当接してドラム3の表面を摺擦可能に設けられている。その他の帯電ブレード構成、ドラム3に対する設定は実施例1の帯電ブレード4と同様である。
【0060】
本実施例の帯電ブレード4においては、長手全域に非帯電部46が配設されているため、長手の一部のみのスティックスリップ運動がその近傍全体に伝わってしまうということがある。そのため、非帯電部46と帯電部51を非接触にすることにより実施例1よりも帯電ムラを低減することが可能となる。実施例1と同様の検証実験をおこなった。本実施例の帯電ブレード4も実施例1の帯電ブレードと同様に、帯電ムラの横スジは発生しないことを確認できた。
【0061】
[実施例3]
実施例2では非帯電部46が帯電部51の汚れ除去部材となっていたが、本実施例3では非帯電部46がドラム3のクリーニング部材も兼ね、画像形成可能領域幅Gでドラム3に接していることを特徴とする。即ち、クリーニング装置8のクリーニングブレード8aを帯電同時クリーニングブレード4にしたものである。
【0062】
非帯電部46は実施例2の帯電ブレード4と同様にドラム3の画像形成可能領域幅Gの全域以上の帯電ブレード長手にわたって配設されている。非帯電部46はドラム表面のトナーや外添剤をクリーニングするためのクリーニング部材としても機能する。本実施例ではドラム表面をクリーニングできるように当接角θ=24°、侵入量δ=0.8mmでエッジ当接している。また、帯電部51がドラムとのギャップαを放電可能な7.5〜150μmを常に保てるようにする。その他の帯電ブレード4の構成、ドラム3に対する設定は実施例2の帯電ブレード4と同様である。
【0063】
本実施例の帯電ブレード4は非帯電部46がドラム表面をクリーニングするクリーニング部材も兼ねるため、実施例2の帯電部51の汚れ除去部材となっている場合に比べて発生する振動が大きくなる。そのため、クリーニング部としての非帯電部46と帯電部51を非接触にすることでより帯電部51への振動を低減できる。実施例1と同様の検証実験をおこなった。本実施例のクリーニング部材を兼ねる帯電ブレード4も実施例1、2の帯電ブレードと同様に、帯電ムラの横スジは発生しないことを確認できた。
【0064】
以上のことから、本実施例においては帯電同時クリーニングブレードのクリーニング部46と帯電部51を同一の支持部63に非接触で配設することで、クリーニング部46における振動に関係なく均一な帯電をおこなうことが可能となる。
【0065】
[実施例4]
本実施例4の帯電ブレード4も実施例3と同様に非帯電部46がドラム3のクリーニング部材も兼ねた帯電ブレードである。実施例3の帯電ブレード4では支持部63が可撓性(弾性)の部材であったのに対して、本実施例では支持部63が剛体であることを特徴とする。
【0066】
図9は本実施例4のクリーニング部材も兼ねた帯電ブレード4の構成図である。この帯電ブレード4は剛体の支持部63として厚み1mmの鋼板を用いている。この支持部63にクリーニング部材としての非帯電部64と帯電部51を実施例3の帯電ブレード4と同様に非接触に取り付けられている。本実施例では当接角θ=24°、侵入量δ=0.8mmでエッジ当接している。そして帯電部51がドラム3とのギャップを放電可能な7.5〜150μmを常に保てるようにする。その他の帯電部材構成、ドラム3に対する設定は実施例3の帯電ブレード4と同様である。
【0067】
クリーニング部としての非帯電部64と帯電部51は同じ支持部63に取り付けられ、かつ非帯電部64の振動を受けないように非接触になるように取り付けられている。先端のクリーニング部と帯電部は非接触に配設されているため、非帯電部64の振動が直接帯電部に伝わることはない。
【0068】
しかし、非帯電部64で発生する振動は直接弾性体同士の接触のみで伝わるわけではなく、支持部63をとおして伝わる振動も当然ある。そのため、本実施例では支持部63が鋼板のために非帯電部64の振動は支持部63で吸収することができなく、すべての支持部63の振動が帯電部51に伝わってしまうことになる。
【0069】
そのため、本実施例では支持部63が剛体でも振動を吸収できるようにリンク部(ヒンジ部、枢軸部)155、ばね受け部156とばね部材157を支持部63に取り付けることによって支持部63に伝わる振動を吸収するようにする。ここでばね部材157は長手全域でも良いが本実施例では端部の二点にばね部材157を設けることによって支持部63に伝わる振動をばね部材157で吸収する構成とする。即ち、図10のようにリンク部155を中心としてばね部材157で上記振動を吸収し、帯電部51における放電ギャップの変動を抑える。
【0070】
実施例1と同様の検証実験をおこなった。本実施例のクリーニング部材を兼ねる帯電ブレード4も実施例3の帯電ブレードと同様に、帯電ムラの横スジは発生しないことを確認できた。
【0071】
[実施例5]
本実施例5の帯電ブレード4も実施例3と同様に非帯電部46がドラム3のクリーニング部材も兼ねた帯電ブレードである。本実施例5の帯電ブレード4では、支持部63が可撓性のものでできており、形状で支持部63の強度をあげることによって振動を低減することが特徴である。
【0072】
図11は本実施例5の帯電ブレード4の構成図であり、実施例3の帯電ブレード4においてクリーニング部としての非帯電部64と帯電部51の非接触の離間幅Mを1mmから2mmに変更した。そして、支持部材63はクリーニング部と帯電部との離間幅Mの部分で半径1mmの円弧形状のビード部63aをもち、支持部自体の強度をあげるようになっている。そのため、クリーニング部である非帯電部64から帯電部51に伝わる振動が、直接的にも支持部63を通しても低減されることになる。その他の帯電部材構成、ドラム3に対する設定は実施例3の帯電ブレード4と同様である。
【0073】
支持部63にビード部63aを設けることによって支持部63の強度をあげることができる。そのため、支持部63の強度を上げることによって支持部63をとおして伝わる振動も抑えることが可能となる。このとき、支持部63であるリン青銅は可撓性の材質であるので実施例4のように十分な剛性を有する剛体ではない。そのため、ある程度振動を吸収することが可能なため実施例4のようにばね部材157といった部材を必要とすることはなくコストアップすることなく非帯電部64の振動を低減することが可能となる。
【0074】
実施例1と同様の検証実験をおこなった。本実施例5のクリーニング部材を兼ねる帯電ブレード4も実施例3の帯電ブレードと同様に、帯電ムラの横スジは発生しないことを確認できた。
【0075】
以上のことから、本実施例5においては帯電同時クリーニングブレードのクリーニング部64と帯電部51を同一の支持部63に非接触で配設し、かつ支持部63の形状を変える。これによってクリーニング部64における振動に関係なく均一な帯電をおこなうことが可能となる。
【0076】
[実施例6]
図14の(a)は本実施例6の帯電ブレード4の構成説明図、(b)は(a)の破線部分Hの拡大図である。図15は帯電ブレード4とドラム3との当接状態を示す図である。本実施例の帯電ブレード4は、ドラム3上をクリーニングするとともに、ドラム表面を帯電するクリーニング機能をもつクリーニング兼用の帯電ブレードである。帯電ブレード4は少なくともドラム3と接触してクリーニングを行う非帯電部(絶縁部)221と、ドラム表面に対して非接触に近接配置され電圧が印加されることによりドラム表面を一様に帯電する半導電性の帯電部222とを有する。
【0077】
非帯電部221は、ドラム3の表面に対して帯電部222が非帯電部221のドラム3と当接する面よりも遠くなるように段差を作る突き出し部221aを持つ。突き出し部221aの幅Yが、30μm以上200μm以下である。突き出し部221aのドラム移動方向(回転方向)Aにおける最も下流側の点Kを通り、かつ、ドラム3と帯電部222との間の距離が最短となる線分QSを引いたとき、線分QSの長さgが、7.5μm以上150μm以下を満足することを特徴とする。
【0078】
上記において、線分QSの長さgがドラム3と帯電部222との最近接距離であり、かつ線分QSと帯電部222との交点が帯電部222におけるドラム3との最近接位置である。223は非帯電部221と帯電部222を支持する支持部(支持部材)、224は支持部223を保持するホルダーである。支持部223は本実施例では導電性部材で構成してあり、半導電性の帯電部222と電気的に導通しており、帯電用の印加電圧が支持部223を介して帯電部222にかかる。
【0079】
本実施例では、ドラム3の表面から帯電ブレード4の非帯電部221上の図15中にある点Kを通る垂線QKの延長線上にある帯電部222上の点Sが放電領域である。更に、帯電部222上の点Sがドラム3表面との最近接位置とすることでブレード侵入量δによらず安定した放電が可能となる。
【0080】
本実施例では線分QSの長さgは7.5μm以上150μmとする。長さgが7.5μm未満ではパッシェンの法則より放電が起こらない。一方、長さgが150μm以上では放電は起こるが不均一な放電であり、画像形成時には斑点状の不良画像となって現れる。このため、安定した放電のためには長さgは100μm以下とすることが望ましい。
【0081】
<帯電部222>
帯電部222はエピクロルヒドリンゴム・EPDM等のゴムに、カーボンブラックや金属酸化物(酸化亜鉛・酸化チタン等)などの導電粉を添加して、抵抗値を1×10〜1×10Ω・cmに制御している。
【0082】
1×10Ω・cmより小さい抵抗である場合には、ドラム3上にブツ等の不良部があった場合に電流リークを生じてしまい、いわゆる“横抜け”(反転現像の場合は、“横黒帯”)という画像不良を生じてしまう。また1×10Ω・cm以上になると抵抗が大きくなり、印加した電圧の減衰が大きく、帯電性が劣化してしまう。従って、帯電部の抵抗値は、1×10Ω・cm〜1×10Ω・cmが望ましい。
【0083】
<非帯電部221>
非帯電部221は、帯電ブレード4の先端部でドラム3と直接当接し、図14の(b)のように帯電部222よりも突き出した突き出し部221aをもっている。本実施例においては、帯電ブレード4の非帯電部221は硬度72度のウレタンゴムを使用しており、突き出し部221aは幅Y=180μm、突き出し量X=50μmとした。ウレタンゴムのほかにシリコンゴムなどの絶縁性ゴムを使用しても良い。
【0084】
<支持部223>
支持部223は本実施例ではリン青銅(厚みt=0.1mm)を使用している。更に、支持部223は図14の(a)に示すようにホルダー224に固定支持され、更にカートリッジ2の筐体に取り付けられる。本実施例のほかにも支持部223にはSUSなどの薄板を用いても良い。また、ホルダー224は画像形成装置本体に取り付けても良いし、あるいは支持部223を直接プロセスカートリッジ50の筐体や画像形成装置本体に固定支持しても良い。
【0085】
<検証実験>
次に、図14に示したクリーニング機能を持つ帯電ブレード4を侵入量δ=0.5mm、0.7mm、0.9mm、1.1mm、1.3mm、1.5mmの条件で設定し耐久試験を行った。ここでいうクリーニング機能とは、帯電ブレード4における帯電部222の汚れを低減するための機能のことである。クリーニングブレード8aからは少量ずつながらトナーなどがすり抜けているため、帯電部222に付着させないようにしている。また、比較のために本実施例を用いていない以下の帯電ブレード4においても同様の耐久試験を行った。
【0086】
比較例1:X=0.05mm、Y=0.4mm(図16の(a))
比較例2:X=0mm、Y=0.4mm(図16の(b))
比較例3:X=0.02mm、Y=0.02mm(図16の(c))
比較例4:X=0mm、Y=0.02mm(図16の(d))
<画出し条件>
プロセススピード:100mm/sec
感光ドラム径:φ24
クリーニングブレード:ウレタンゴム、カウンター当接
印加バイアス :DC−1050V
電位設定:暗部VD =−500V、明部VL =−150V
ハーフトーン部VH=−350V
結果を表1に示す。本実施例の帯電ブレード4を用いた画像形成装置では耐久の結果、8000枚程度まで帯電性を損なうことがなかった。また、ブレード侵入量δの異なるプロセスカートリッジ2で同様の耐久試験を行った結果においても良好であった。本実施例を用いていない比較例1〜比較例4の帯電ブレード4ではスジ状の不均一帯電画像の発生やブレード侵入量δによって画質に大きなばらつきがあり、帯電が行われないものもあった。
【0087】
【表1】


これは次のように考えられる。
【0088】
比較例1:図16の(a)のように突き出し部の幅Yが広い場合
帯電ブレード4の侵入量δが小さいときは、微小空隙が放電可能な距離以上になることによる帯電不良が発生し、侵入量δ=0.5mmのときは放電が起こらなかった。帯電ブレード4の侵入量が大きいときは図17の(a)の破線で示すようにニップ幅が大きくなるため、図17の(b)の破線のように先端圧が減少しクリーニング性が低下する。このため、ブレード先端をすり抜けるトナーなどの増加による帯電部222の汚れが顕著になりスジ画像が発生した。
【0089】
比較例2:図16の(b)のように幅Yが広く、突き出し部が無い場合
比較例1と同様に、侵入量δが小さいときはδ=0.5mmで微小空隙がわずかに帯電性の不均一による斑点状の画像が見られるが実用上問題のない程度であった。帯電ブレード4の侵入量δが大きいときは帯電部の汚れよるスジ画像が発生した。
【0090】
比較例1および比較例2においてはスジによる画像不良のない範囲が存在するが、表2に示すようにブレード侵入量δの違いによって微小空隙距離のばらつきが大きい。このため帯電状態にばらつきを生じるため画質は安定していない。
【0091】
比較例3:図16の(c)のように突き出し部の幅Yが狭い場合
帯電ブレード4の侵入量δが小さい場合はニップ幅が狭すぎてクリーニング性を確保できないためトナーなどがすり抜ける量が非常に多くなり、耐久によって帯電部222の汚れが発生した。帯電ブレードの侵入量δが0.7mm以上ときはブレードの当接圧によって突き出し部がつぶれて帯電部222とドラム3表面が当接しスジ画像となった。
【0092】
比較例4:図16の(d)のように幅Yが狭く突き出し部がない場合
帯電ブレード4の侵入量δを小さくした場合は、クリーニング性を確保できなくなりトナーなどがすり抜ける量が非常に多くなったため、耐久によって帯電部222の汚れが発生した。帯電ブレード222の侵入量δが大きくなると帯電部222がドラム表面と接触してしまうため侵入量が1.1mm以上では耐久によってスジ状の画像不良が発生した。
【0093】
一方、本実施例のように突き出し部221aの幅Yを30μm以上200μm以下とすることにより、図17の実線に示すようにクリーニング性能が良好なニップ幅および先端圧を確保できる。そのためブレードをすり抜けるトナーなどが低減され、帯電部222の汚れが大幅に軽減でき、汚れによるスジ画像を抑制できた。
【0094】
これは以下の理由による。図18にニップ幅とブレード先端圧の関係を示す。ここでは非帯電部221の突き出し部221aの幅Yを振って、突き出し部221aの幅Y全面をドラム表面に圧接させており、ブレード侵入量δはδ=1.5mmの一定としている。図18のように先端圧はニップ幅の増加に伴って減少しており、ニップ幅が300μmの場合ではクリーニング機能に必要な先端圧を確保できなくなっている。
【0095】
そこで、常に先端圧を確保するにはニップ幅が200μm以下である必要がある。つまり、突き出し部221aの幅Yを200μm以下とすることで侵入量が大きくなった場合でもニップ幅が200μm以下を確保することができるため、先端圧はクリーニング機能に必要な圧を常に満足できる。
【0096】
また、表2に示すそれぞれの条件における微小空隙距離のように帯電部222とドラム3の表面との微小空隙の変化量は比較例1が95μm、比較例2が97μmに対して本実施例はブレードの侵入量δが異なっても38μmと変化が非常に少なかった。これは以下の理由による。
【0097】
ブレード侵入量が大きい場合は非帯電部221の突き出し量Xによって決定するため侵入量δ=1.1mm以上においては、微小空隙距離=50μmでほぼ一定となる。また、侵入量δが小さい場合においても帯電部222が帯電ブレード4の先端に近いため微小空隙が比較例1や比較例2に比べて狭い。従って本実施例では、ブレード侵入量δの違いに対する微小空隙距離の変化量を小さくできるため、ブレード侵入量δの異なる条件においても帯電状態が安定し、ブレード侵入量δによらず安定した出力画像が得られた。
【0098】
【表2】


以上のように、本実施例によってクリーニング性が安定し帯電ブレード4の設定(侵入量)にかかわらず安定して良好な出力画像が得られる。
【0099】
[実施例7]
本実施例の特徴は、突き出し部221aの形状が図19の(a)および(b)で示すような台形形状であるところにある。(b)は(a)の破線部分Hの拡大図である。ここで本実施例のクリーニング機能を持つ帯電ブレード4を実施例1と同様の条件で耐久試験を行った。本実施例で用いた帯電ブレード4は突き出し部221aの幅Y=100μm、突き出し量X=50μmであり、角度αを90°、110°、130°とした3種類を準備した。これを当接角θ°=20°でドラム3に当接させ、実施例1と同様に侵入量δを振って8000枚の耐久試験を行った。結果を表3に示す。
【0100】
【表3】


いずれの条件においても本実施例の帯電ブレード4を用いた画像形成装置では耐久の結果、8000枚程度までスジ状の画像不良がなく良好な画像が得られた。これは、次のように考えられる。
【0101】
図19の(b)のように突き出し部の面Cと面Dとのなす角度αを90度以上の台形形状とすることにより非帯電部221の強度が増加する。従って、特に帯電ブレード4の侵入量δがδ=1.5mm程度に大きい場合、図20のように実施例6に比べて更に先端圧を強くすることが可能となり、クリーニング性能が向上するため帯電部の汚れを軽減できる。また、侵入量δがδ=0.5mmにおいても実施例6に比べて先端圧が強くなるため、クリーニング性能が向上し帯電部の汚れを軽減できる。
【0102】
しかしながら、α=130°の場合はブレード侵入量δの違いによる画質の差がα=90°や110°に比べて大きかった。これは、図21の(a)のようなα=90°、110°の場合に比べると、α=130°では図21の(b)のように放電領域Sがブレード先端から遠い領域Uになることが影響している。侵入量δ=1.5mm程度に大きい場合は、帯電部222とドラム3の表面との微小空隙は非帯電部221の突き出し量Xで決まるため角度αが110°と130°の場合とで画質に違いはない。
【0103】
ところが、ブレード侵入量δ=0.5mm程度に小さい場合は図21の(b)のようにα=130°では放電領域がUとなり、α=110°の場合と比べてブレード侵入量δの違いに対する微小空隙の変化量が大きくなった。このため、感光体ドラム3上の表面電位が異なり画質に差が生じた。
【0104】
以上より、当接角θ°=20°とした本実施例では角度αがα=90°〜110°において良好な出力画像が得られた。つまり、当接角θ°において角度αは90度以上(90+θ)度以下とする。これにより、非帯電部221の強度が増加し、かつ、帯電部222とドラム3表面との微小空隙の変化量が小さいことから、ブレード侵入量δによらず安定した帯電状態となり良好な出力画像が得られる。
【0105】
即ち、ドラム(回転ドラム型の像担持体)3に当接した帯電部材4の先端位置におけるドラム3の接線と非帯電部221のドラム3と当接する面とのなす角度をθ度とする。このとき、非帯電部221のドラム3と当接する面と、これに連続する突き出し部221aのドラム回転方向下流側(像担持体回転方向下流側)の面とのなす角度αは、90度以上(90+θ)度以下を満足する。
【0106】
以上のように、本実施例によってクリーニング性が安定し帯電ブレードの設定(侵入量)にかかわらず安定して良好な出力画像が得られる。
【0107】
[実施例8]
本実施例の特徴は、図22に示すように、帯電ブレードに備えたクリーニング機能をドラムのクリーニング手段として使用し、クリーニング兼帯電ブレードとしたところにある。これによりプロセスカートリッジ2および画像形成装置1の小型化、コストダウンが可能となる。
【0108】
本実施例の帯電ブレードを用いたプロセスカートリッジ2を使って耐久試験を行った。本実施例で使用した帯電ブレードは突き出し部221aの突き出し量X、幅Yと角度αがそれぞれX=0.05mm、Y=0.80mm、α°=105°である。本実施例のクリーニング機能を持つ帯電ブレード4を当接角θ°=15°、侵入量δ=0.5mm、0.7mm、0.9mm、1.1mm、1.3mm、1.5mmの条件で耐久試験を行った。結果は、表4に示すように通紙8000枚程度まで帯電性とクリーニング性を損なうことなく良好な画像が得られた。
【0109】
【表4】


以上のように、本実施例によってクリーニング性が安定し帯電ブレードの設定(侵入量)にかかわらず安定して良好な出力画像が得られる。
【0110】
[その他の事項]
1)本発明において静電潜像が形成される像担持体は、実施例の電子写真方式における電子写真感光体に限られない。静電記録方式における静電記録誘電体であっても良い。また、像担持体はドラム型に限られない。エンドレスの回動ベルトや走行される有端ベルトの形態であってもよい。また、像担持体は搬送手段で搬送されるシート状部材(エレクトロファックス紙、静電記録紙)の形態であってもよい。
【0111】
2)像担持体と帯電部材の相対的な移動には、実施例のように固定の帯電部材に対して像担持体が移動する形態に限られず、固定の像担持体に帯電部材が移動する形態、帯電部材と像担持体の両方が移動する形態も含まれる。
【0112】
3)帯電部材の像担持体に対する当接は実施例のカウンター方向当接に限られず、順方向当接でも良い。また、エッジ当接に限られず、腹当て当接でも良い。
【0113】
4)本発明において帯電部材による像担持体表面の帯電には像担持体表面を除電処理するための帯電も含まれるものである。また、本発明のブレード状の帯電部材は像担持体1のクリーニング兼帯電ブレードとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0114】
3・・像担持体、4・・ブレード状の帯電部材、51・・帯電部、64・・非帯電部、g・・放電可能な間隙、G・・画像形成可能領域幅、63・・支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体に当接して相対的に移動し電圧が印加されることにより前記像担持体の表面を帯電するためのブレード状の帯電部材であって、
前記像担持体の表面に対して放電を行うための帯電部と、
前記像担持体の表面に対して放電を行わないための非帯電部と、を有し、
前記非帯電部は前記像担持体と接触して、前記帯電部と前記像担持体との間に放電可能な間隙を設けることが可能であり、
前記非帯電部は、前記非帯電部から前記像担持体の表面に対して放電をしないように、少なくとも一部が前記帯電部よりも高抵抗の物質で構成されており、
前記非帯電部と、前記帯電部とを支持する支持部を備え、前記非帯電部と、前記帯電部とはそれぞれ別部材で非接触に前記支持部に取り付けられることを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記非帯電部は前記像担持体の表面の画像形成可能領域幅の全幅に渡って当接して前記像担持体の表面を摺擦可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記支持部は金属部材であり、前記支持部により前記帯電部に電圧が印加されることを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電部材。
【請求項4】
静電潜像が形成される像担持体の表面を帯電するためのブレード状の帯電部材と、前記帯電部材に電圧を印加する電源と、を備えた画像形成装置であって、前記帯電部材が請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の帯電部材であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
静電潜像が形成される回転ドラム型の像担持体の表面を帯電するためのブレード状の帯電部材と、前記帯電部材に電圧を印加する電源と、を備えた画像形成装置であって、前記帯電部材が請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の帯電部材であり、前記像担持体に当接した前記帯電部材の先端位置における像担持体の接線と前記非帯電部の像担持体と当接する面とのなす角度をθ度としたとき、前記非帯電部の前記像担持体と当接する面と、これに連続する突き出し部の像担持体回転方向下流側の面とのなす角度αは、90度以上(90+θ)度以下を満足することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−141580(P2012−141580A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236965(P2011−236965)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】