説明

帯電部材及びその製造方法

【課題】表面が粗面化されてなり、表面への汚れの付着を抑制し得る帯電部材の提供。
【解決手段】支持体、弾性層102および表面層103を有する帯電部材であって、表面層は、Si−O−M結合を有し、かつ、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で示される構成単位から選ばれる少なくとも1つ、並びに下記一般式(3)で示される構成単位を有する高分子化合物を含み、帯電部材は、その表面から該弾性層に至る亀裂104を有し、亀裂はその縁部105が凸状に盛り上がり、それによって表面が粗面にされている帯電部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置等に使用される帯電部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置には、感光体の外表面に接触して外表面を帯電させる帯電部材、感光体の外表面に形成された静電潜像にトナー像を形成させる為の現像部材、感光体に付着したトナーを除去するクリーニング部材等の電子写真用部材が使用されている。ここで帯電部材としては、感光体との当接ニップを十分に確保する観点から、支持体および支持体上に設けられた弾性層(導電性弾性層)を有するものが一般的である。また、弾性層の表面への現像剤などの付着を抑制するために、弾性層の表面に表面層を設けることも一般的に行われている。
【0003】
特許文献1においては、フッ化アルキル基及びオキシアルキレン基を有するポリシロキサンからなる表面層を、いわゆるゾルゲル法によって形成した帯電部材が記載されている。フッ化アルキル基部位によって低表面自由エネルギーを達成し、これにより、長期間の繰り返し使用によってもトナーやトナーに用いられる外添剤などが表面に固着し難くしている。その結果、DC接触帯電方式に用いても、長期間安定した帯電および画像出力が可能な帯電部材として使用できることが記載されている。また、電子写真用部材の表面への汚れの付着を抑制する方法のひとつとして、特許文献2に記載されているように、表面層に粗し粒子を含有させ、表面層の表面を適度に粗面化する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−004102号公報
【特許文献2】特開2009−009028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、極めて薄い表面層を形成することが可能である特許文献1に係る発明について検討した。表面層の厚さを薄くすることは、帯電部材の帯電性能をより一層向上させる上で有利な構成だからである。その一方で、本発明者らの検討によれば、特許文献1に係る、ポリシロキサンからなる表面層中に粗し粒子を含有させ、当該表面層の表面を粗面化することは困難であった。具体的には、表面層形成用の塗工液中に粗し粒子を安定的に分散させることが困難であり、その結果として、表面層の表面を均一に粗面化することが困難であった。
【0006】
そこで本発明の目的は、粗し粒子を用いなくとも、表面が適度に粗面化されてなり、表面への汚れの付着を抑制し得る帯電部材およびその製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、支持体、弾性層および表面層を有している帯電部材であって、該表面層は、Si−O−M結合を有している高分子化合物を含み、該高分子化合物は、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で示される構成単位から選ばれる少なくとも1つ、並びに下記一般式(3)で示される構成単位を有しており、該帯電部材は、その表面から該弾性層に至る亀裂を有し、該亀裂はその縁部が凸状に盛り上がり、それによって該帯電部材は、該表面が粗面にされている帯電部材が提供される。
【0008】
【化1】

【0009】
上記一般式(1)において、Mは、Ti、Zr及びHfからなる群から選ばれるいずれかの元素である。
【0010】
【化2】

【0011】
上記一般式(2)において、Mは、Ta元素である。
【0012】
【化3】

【0013】
上記一般式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立に以下の一般式(4)〜(7)のいずれかを示す。
【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
【化6】

【0017】
【化7】

【0018】
上記R〜R、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は、各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R、R、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は、各々独立に水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は、各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルコキシル基、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1以上8以下の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4以上12以下の整数を示す。xおよびyは、各々独立に0もしくは1を示す。記号「*」および記号「**」は、各々、一般式(3)中のケイ素原子および酸素原子への結合部位を示す。
【0019】
また、本発明によれば、上記高分子化合物が下記一般式(12)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物と、下記一般式(13)〜(16)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物の少なくとも1種との架橋物である帯電部材の製造方法であって、
(i)前記一般式(12)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物と、前記一般式(13)〜(16)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物の少なくとも1種とを含む液状の縮合物を得る工程と、
(ii)該液状の縮合物と光重合開始剤とを含む表面層形成用の塗料を得る工程と、
(iii)該塗料の塗膜を、支持体の外周に配置された弾性層の上に形成し、該塗膜中の加水分解縮合物のR33のエポキシ基を開裂させることによりこれらの加水分解縮合物を架橋させて該塗膜を硬化させ、表面層を形成する工程とを有する帯電部材の製造方法が提供される。
【0020】
【化8】

【0021】
上記一般式(12)中、R33は、下記一般式(17)〜(20)のいずれかを示し、R34〜R36は、各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。上記一般式(13)〜(16)中、R37〜R53は、各々独立に炭素数1〜9のアルキル基を示す。
【0022】
【化9】

【0023】
【化10】

【0024】
【化11】

【0025】
【化12】

【0026】
一般式(17)〜(20)中、R54〜R58、R59〜R65、R66、R67、R72およびR73は、各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R57、R58、R62〜R65、R70、R71およびR76〜R79は、各々独立に水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は、各々独立に1以上8以下の整数を示す。p’およびr’は、各々独立に4以上12以下の整数を示す。また、記号「*」は、一般式(12)のケイ素原子との結合位置を示す。
【0027】
更に、本発明によれば、上記高分子化合物が、前記一般式(12)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物と一般式(13)〜(16)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物の少なくとも1種と、下記一般式(21)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物との架橋物である帯電部材の製造方法であって、
(i)前記一般式(12)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物と、前記一般式(21)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物と、前記一般式(13)〜(16)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物の少なくとも1種と含む液状の縮合物を得る工程と、
(ii)該液状の縮合物と光重合開始剤とを含む表面層形成用の塗料を得る工程と、
(iii)該塗料の塗膜を、支持体の外周に配置された弾性層の上に形成し、該塗膜中の加水分解縮合物のR33のエポキシ基を開裂させることによりこれらの加水分解縮合物を架橋させて該塗膜を硬化させ、表面層を形成する工程とを有する帯電部材の製造方法が提供される。
【0028】
【化13】

【0029】
一般式(21)中、R80は、炭素数1〜21のアルキル基またはフェニル基を示し、R81〜R83は、各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、感光体との接触点数が制御され、感光体との接触面積を小さくすることにより、長期間の使用によってもトナーや外添剤の付着が抑制され、表面が汚れにくく、その結果として、長期に亘って均一な帯電を維持し得る帯電部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る帯電部材の表面の亀裂の状態を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る帯電部材の構成の一例を示す図である。
【図3】本発明に係る電子写真装置の断面図である。
【図4】現像装置の一例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る帯電部材の表面状態の一例の説明図である。
【図6】本発明に係る帯電部材の表面の亀裂の形状を示す図である。
【図7】本発明に係る表面層中の金属元素の種類と弾性率との関係の説明図である。
【図8】ESCAによる解析結果を示すO1sスペクトル図である。
【図9】本発明に係る架橋反応の説明図である。
【図10】本発明に係る高分子化合物の化学構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図2に本発明の一実施態様に係る帯電部材の断面を示す。帯電部材は、支持体101と、導電性の弾性層102と、表面層103とを有している。また、図1は、帯電部材の表面近傍の拡大断面図である。帯電部材は、表面から弾性層102に至る亀裂104を有している。亀裂104は、その縁部105が凸状に盛り上がっている。そして、盛り上がっている当該縁部105により、帯電部材の表面は粗面化されている。
【0033】
図5(a)は、帯電部材の表面についての上面図(2値化)であり、図5(b)はその鳥瞰図である。図5(a)から帯電部材の表面に無数の亀裂104が存在することが分かる。また図5(b)から亀裂104の縁部105は凸状に盛り上がっている様子が分かる。図6(a)は、帯電部材の表面に存在する亀裂104の形状の一例である。図6(b)は、図6(a)のライン1〜5に沿った表面凹凸状態を示し、横軸はライン方向(μm)、縦軸は深さ方向(μm)である。表面層の厚みは2μmである。図6(b)のプロファイルを確認すると、深さ方向に数μmの亀裂が生じており、亀裂が弾性層にまで進行していることが分かる。
【0034】
〔支持体〕
支持体としては導電性を有するものが用いられる。具体例としては、以下のものが挙げられる。鉄、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金又はニッケルで形成されている金属製(合金製)の支持体。
【0035】
〔弾性層〕
導電性弾性層には、従来の帯電部材の弾性層(導電性弾性層)に用いられているゴムなどの弾性体を1種または2種以上用いることができる。ゴムとしては以下のものが挙げられる。ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびアルキルエーテルゴム。
【0036】
また、導電性弾性層には、導電剤を適宜使用することによって、その導電性を所定の値にすることができる。導電性弾性層の電気抵抗値は、導電剤の種類および使用量を適宜選択することによって調整することができ、その電気抵抗値の好適な範囲は10〜10Ωであり、より好適な範囲は10〜10Ωである。また、導電性弾性層用の導電剤として、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、および、熱分解カーボンなどの導電性のカーボンを用いることもできる。また、導電性弾性層用の導電剤として、天然グラファイトおよび人造グラファイトの如きグラファイトを用いることもできる。導電性弾性層には、無機または有機の充填剤や架橋剤を添加してもよい。
【0037】
導電性弾性層の硬度は、帯電部材と被帯電体である感光体とを当接させた際の帯電部材の変形を抑制する観点から、MD−1で60度以上85度以下、特には、70度以上80度以下であることが好ましい。MD−1が上記範囲内であれば、塗膜の硬化収縮を利用して、該導電性弾性層の亀裂深さをより制御し易くなる。
【0038】
導電性弾性層の表面粗さ(Rz)の目安としては、3.0μm以上12.0μm以下、特には、5.0以上10.0μm以下が好ましい。
【0039】
導電性弾性層は、上記の導電性弾性体の原料を密閉型ミキサー等で混合して、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形等の公知の方法により支持体上に形成される。尚、導電性弾性層は必要に応じて接着剤を介して支持体上に接着される。支持上に形成された導電性弾性層は必要に応じて加硫処理される。加硫温度を急速に立ち上げると、加硫反応による加硫促進剤等の揮発性副生成物がガス化してボイドの要因となる。従って、加熱ゾーンを2つに分けて、第1ゾーンを加硫温度より低い状態に保持してガス成分を十分抜いた後に、第2ゾーンで加硫を行うことが好ましい。
【0040】
〔表面層〕
表面層は、Si−O−M結合を有している高分子化合物を含み、該高分子化合物は、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で示される構成単位の少なくとも1種、並びに下記一般式(3)で示される構成単位の少なくとも1種を有している。
【0041】
【化14】

【0042】
上記一般式(1)において、Mは、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれるいずれかの元素である。
【0043】
【化15】

【0044】
上記一般式(2)において、Mは、Ta元素である。
【0045】
【化16】

【0046】
上記一般式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立に以下の一般式(4)〜(7)のいずれかを示す。
【0047】
【化17】

【0048】
【化18】

【0049】
【化19】

【0050】
【化20】

【0051】
上記R〜R、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は、各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R、R、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は、各々独立に水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27、およびR28は、各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルコキシル基、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1以上8以下の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4以上12以下の整数を示す。xおよびyは、各々独立に0もしくは1を示す。記号「*」および記号「**」は、各々、一般式(3)中のケイ素原子および酸素原子への結合位置を示す。
【0052】
本発明に係る高分子化合物の一例として、式(3)のRが式(4)で示される構造であり、Rが式(5)で示される構造であり、かつ、Si−O−Ti結合を分子内に有する高分子化合物の構造の一部を図10(a)に示す。また、本発明に係る高分子化合物の他の例として、式(3)中のRが式(4)で示される構造であり、Rが式(7)で示される構造であり、かつ、Si−O−Ti結合を分子内に有する高分子化合物の構造の一部を図10(b)に示す。
【0053】
前記高分子化合物において、前記一般式(3)のRおよびRが以下の一般式(8)〜(11)のいずれかで示されるものであることが好ましい。この場合、有機鎖が存在することで、表面層の弾性率制御、あるいは表面層の膜特性としてのもろさやフレキシビリティ性の制御が可能となる。また有機鎖の構造、特にエーテル部位が存在すると、表面層の弾性層への密着性が向上する。
【0054】
【化21】

【0055】
【化22】

【0056】
【化23】

【0057】
【化24】

【0058】
ここでN、M、L、Q、SおよびTは、各々独立に1以上8以下の整数、x’およびy’は、各々独立に0もしくは1を示す。また、記号「*」および記号「**」は、各々、一般式(3)中のケイ素原子および酸素原子への結合部位を示す。
【0059】
前記高分子化合物における、Mとケイ素との原子数比M/Siが0.10以上12.50以下であることが好ましい。0.50以上10.00以下であることがより好ましい。この値が0.10以上であれば、硬化収縮による亀裂の生成が容易であり、表面粗面化効果が生じる。また12.50以下であれば、得られる縮合物やその希釈液の保存性が安定する。
【0060】
前記高分子化合物は、下記一般式(12)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物と、下記一般式(13)〜(16)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物の少なくとも1種との架橋物である帯電部材であることが好ましい。すなわち、上記の加水分解縮合物は架橋の際に大きく収縮するため、当該架橋物からなる表面層には亀裂が生じる。加えて、当該加水分解縮合物は弾性層との密着性が極めて高い。そのため、上記加水分解縮合物を弾性層上で架橋させて表面層を形成した場合、架橋時の収縮力によって弾性層にまで亀裂が生じる。その結果、亀裂の縁部は盛り上がり、帯電部材の表面を粗面化させることとなる。
【0061】
【化25】

【0062】
上記一般式(12)中、R33は、下記一般式(17)〜(20)のいずれかを示し、R34〜R36は、各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。また、一般式(13)〜(16)中、R37〜R53は、各々独立に炭素数1〜9のアルキル基を示す。
【0063】
【化26】

【0064】
【化27】

【0065】
【化28】

【0066】
【化29】

【0067】
一般式(17)〜(20)中、R54〜R58、R59〜R65、R66、R67、R72およびR73は、各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R57、R58、R62〜R65、R70、R71およびR76〜R79は、各々独立に水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は、各々独立に1以上8以下の整数を示す。p’およびr’は、各々独立に4以上12以下の整数を示す。また、記号「*」は、一般式(12)のケイ素原子との結合位置を示す。
【0068】
以下に、一般式(13)で示される構造を有する加水分解性チタン化合物の具体例を示す。(13−1):チタニウムメトキシド、(13−2):チタニウムエトキシド、(13−3):チタニウムn−プロポキシド、(13−4):チタニウムi−プロポキシド、(13−5):チタニウムn−ブトキシド、(13−6):チタニウムt−ブトキシド、(13−7):チタニウムi−ブトキシド、(13−8):チタニウムノニルオキシド、(13−9):チタニウム2−エチルヘキソキシド、(13−10):チタニウムメトキシプロポキシド。
【0069】
以下に、一般式(14)で示される構造を有する加水分解性ジルコニウム化合物の具体例を示す。(14−1):ジルコニウムメトキシド、(14−2):ジルコニウムエトキシド、(14−3):ジルコニウムn−プロポキシド、(14−4):ジルコニウムi−プロポキシド、(14−5):ジルコニウムn−ブトキシド、(14−6):ジルコニウムt−ブトキシド、(14−7):ジルコニウム2−エチルヘキソキシド、(14−8):ジルコニウム2−メチル―2―ブトキシド。
【0070】
以下に、一般式(15)で示される構造を有する加水分解性ハフニウム化合物の具体例を示す。(15−1):ハフニウムメトキシド、(15−2):ハフニウムエトキシド、(15−3):ハフニウムn−プロポキシド、(15−4):ハフニウムi−プロポキシド、(15−5):ハフニウムn−ブトキシド、(15−6):ハフニウムt−ブトキシド、(15−7):ハフニウム2−エチルヘキソキシド、(15−8):ハフニウム2−メチル―2―ブトキシド。
【0071】
以下に、一般式(16)で示される構造を有する加水分解性タンタル化合物の具体例を示す。(16−1):タンタルメトキシド、(16−2):タンタルエトキシド、(16−3):タンタルn−プロポキシド、(16−4):タンタルi−プロポキシド、(16−5):タンタルn−ブトキシド、(16−6):タンタルt−ブトキシド、(16−7):タンタルム2−エチルヘキソキシド、(16−8):タンタル2−メチル―2―ブトキシド。
【0072】
以下に、一般式(17)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。(17−1):4−(1,2−エポキシブチル)トリメトキシシラン、(17−2):4−(1,2−エポキシブチル)トリエトキシシラン、(17−3):5,6−エポキシヘキシルトリメトキシラン、(17−4):5,6−エポキシヘキシルトリエトキシラン、(17−5):8−オキシラン−2−イルオクチルトリメトキシシラン、(17−6):8−オキシラン−2−イルオクチルトリエトキシシラン。
【0073】
以下に、一般式(18)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。(18−1):グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(18−2):グリシドキシプロピルトリエトキシシラン。
【0074】
以下に、一般式(19)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。(19−1):2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、(19−2):2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン。
【0075】
以下に、一般式(20)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。(20−1):3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリメトキシシラン、(20−2):3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリエトキシシラン。
【0076】
更に前記高分子化合物が、一般式(12)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物と、一般式(13)〜(16)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物の少なくとも1種と、下記一般式(21)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物との架橋物であることが好ましい。このような架橋物は、その架橋物の生成時の硬化収縮によって本発明の亀裂を形成することができる。また、帯電部材の表面の材料組成は充填材を含まない単一系で構成可能である。更に表面層の膜厚を薄くすることが可能である。
【0077】
【化30】

【0078】
一般式(21)中、R80は、炭素数1〜21のアルキル基またはフェニル基を示し、R81〜R83は、各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。
【0079】
以下に、一般式(21)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。(21−1):メチルトリメトキシシラン、(21−2):メチルトリエトキシシラン、(21−3):メチルトリプロポキシシラン、(21−4):エチルトリメトキシシラン、(21−5):エチルトリエトキシシラン、(21−6):エチルトリプロポキシシラン、(21−7):プロピルトリメトキシシラン、(21−8):プロピルトリエトキシシラン、(21−9):プロピルトリプロポキシシラン、(21−10):ヘキシルトリメトキシシラン、(21−11):ヘキシルトリエトキシシラン、(21−12):ヘキシルトリプロポキシシラン、(21−13):デシルトリメトキシシラン、(21−14):デシルトリエトキシシラン、(21−15):デシルトリプロポキシシラン、(21−16):フェニルトリメトキシシラン、(21−17):フェニルトリエトキシシラン、(21−18):フェニルトリプロポキシシラン。
【0080】
一般式(21)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用する場合、R80が炭素数6〜10の直鎖状のアルキル基を有する加水分解性シラン化合物と、R80がフェニル基を有する加水分解性シラン化合物を組み合わせることが好ましい。この場合は、加水分解・縮合反応によりモノマー構造が変化しても溶媒への相溶性が良好である。
【0081】
金属元素Mとしては、Ti、Zr、Hf及びTaからなる群から選ばれるいずれかの元素が使用される。金属元素Mの種類と帯電部材の表面粗面化程度との関係を、例えばM/Si=2.0として、比較すると、図7に示すように、合成中に生じる微小粒子の大きさが異なり、Ta<Hf<Zr<Tiの順に大きくなる傾向にあることがわかった。まだ明確とはなっていないが、Mの反応速度の差、あるいは価数が反映しているものと推測している。合成した溶液中の粒子サイズが小さいと弾性率が高くなる傾向にあるが、塗膜の硬化過程の際に、微粒子の大きさが膜(表面層)の緻密性を決定し、これがそのまま膜の弾性率へ影響しているものと推測される。つまり、緻密になる程、塗膜の硬化収縮の程度が大きく、この大小関係がそのまま表面割れ、つまり硬化収縮への影響を示しており、亀裂の縁部の凸状の盛り上がり方に影響を及ぼすことが判明している。
【0082】
表面層の膜厚の目安としては、0.10〜2.50μm、特には、0.15〜2.00μmである。表面層の形成用の塗料の塗膜が硬化収縮することによる、表面層から弾性層に至る亀裂を容易に生じさせることができるからである。また、その結果として、亀裂の縁部が凸状に盛り上がる効果が大きくなり、表面を粗面化するうえで有利となる。また表面層の体積抵抗率の目安としては、1010〜1016Ω・cmである。
【0083】
本発明の帯電部材は、塗膜の硬化収縮によって生じた、その表面から該弾性層に至る亀裂を有し、該亀裂はその縁部が凸状に盛り上がり、それによって該帯電部材は、表面が粗面にされている。この亀裂のサイズは、表面の粗さRzと亀裂の深さRyとして表すことができる。またこの亀裂の縁部の凸状盛り上がりの高さは、0.5μm以上35.0μm以下程度であることが好ましい。
【0084】
帯電部材の表面へのトナーや外添剤の固着を抑制し、また、表面割れを制御する観点から、帯電部材の表面の粗さRzは5μm以上25μm以下、特には、7μm以上22μm以下、更には、10μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0085】
帯電部材の亀裂の深さRyは、表面層の亀裂縁部(凸部)の最大高さと、硬化収縮後に生じる導電性弾性層の亀裂を含んだ最大深さの距離を示す。つまり、帯電部材表面の亀裂の深さRyは、導電性弾性層の表面からの亀裂の深さyよりは、該表面層の亀裂縁部(凸部)の最大高さを含む分必ず大きくなる。
【0086】
〔帯電部材の製造方法〕
以下に、本発明の帯電部材の製造方法を例示する。本発明に係る帯電部材は、例えば、次の工程(1)〜(3)を含む方法により製造することができる。
【0087】
工程(1):
一般式(12)で示される加水分解性シラン化合物、及び一般式(13)〜(16)で示される加水分解性化合物からなる群から選択される少なくとも1つ、任意成分としての一般式(21)で示される加水分解性シラン化合物、水、および、アルコールを含む混合液を加熱、還流させて、該混合液中の加水分解性化合物の加水分解、縮合を行って、液状の縮合物を得る。
【0088】
本工程においては、以下の「第1段階反応」と「第2段階反応」とを含むことが好ましい。
第1段階反応:一般式(12)で示される加水分解性シラン化合物、または、一般式(12)及び一般式(21)で示される加水分解性シラン化合物を、水およびアルコールの存在下で加熱還流させて加水分解・縮合を行って、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物を含む縮合物中間体を得る反応。
第2段階反応:上記縮合物中間体、および、一般式(13)〜(16)で示される構造を有する化合物群から選択される少なくとも1つの加水分解性化合物を、水およびアルコールの存在下で加熱還流させて、加水分解・縮合を行って最終的な縮合物を得る反応。
【0089】
一般式(12)の加水分解性化合物、あるいは一般式(12)と一般式(21)の加水分解性化合物との組み合わせによる反応速度と比較して、一般式(13)〜(16)の加水分解性化合物の反応速度が非常に速い。そのため、全ての加水分解性化合物を一挙に加水分解させた場合、前記一般式(13)〜(16)の加水分解性化合物のみが選択的に反応し、白濁・沈殿が生じ易くなる。従って、元素「M」が均一に分子内に含まれている高分子化合物を得るためには、上記したように、2段階の反応工程を経ることが好ましい。
【0090】
なお、M/Si比が0.10〜0.30程度(Mの濃度が小さい領域)であれば、加水分解・縮合反応を2段階に分割しなくても反応は円滑に進行する。一方、M/Si比が0.30〜12.50(Mの濃度が大きい領域)である場合は、上記したように2段階の反応により縮合物を調製することが好ましい。
【0091】
また、加水分解縮合物を合成する際の加水分解性シラン化合物に対する水の添加量の割合WR(モル比)が0.3以上6.0以下であることが好ましい。
【0092】
【数1】

【0093】
WRの値は1.2以上3.0以下が好ましい。水の添加量が上記範囲内であれば、合成時の縮合の程度を制御し易くなる。また縮合速度の制御もし易く、加水分解縮合物あるいはその希釈液の保存安定性の向上にも効果がある。また上記範囲内であれば、前記一般式(12)のエポキシ基が開環しないpH領域で合成が行えるので好ましい。
【0094】
縮合物を合成する際に用いるアルコールとしては、第1級アルコールのみ、第1級アルコールと第2級アルコールとの混合系、または、第1級アルコールと第3級アルコールとの混合系を用いることが好ましい。特にエタノール、メタノール/2−ブタノールの組み合わせ、および、エタノール/2−ブタノールの組み合わせが好ましい。
【0095】
工程(2):
工程(1)で得た縮合物に、必要に応じて光重合開始剤を加え、また、必要に応じて溶媒を加えて適当な固形分濃度に調整して、表面層形成用の塗料を調製する。
【0096】
縮合物の固形分濃度の調整の際には、塗料の塗工性を向上させるために、合成に使用した溶剤以外に、揮発性を考慮した適当な溶剤を用いても良い。適当な溶剤としては、2−ブタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、あるいは、これらを混合したものが挙げられる。
【0097】
また、後述する工程(3)における縮合物の架橋反応の際に、架橋効率を向上させる観点から、光重合開始剤であるカチオン重合触媒を塗料に含有させておくことが好ましい。例えば、活性エネルギー線によって賦活化されるルイス酸のオニウム塩に対してエポキシ基は高い反応性を示すことから、上記のカチオン重合可能な基がエポキシ基である場合、カチオン重合触媒としては、ルイス酸のオニウム塩を用いることが好ましい。
【0098】
その他のカチオン重合触媒としては、例えば、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物が挙げられる。各種カチオン重合触媒の中でも、感度、安定性および反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特には、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記化学式(22)で示される構造を有する化合物(商品名:アデカオプトマ−SP150、旭電化工業(株)製)や、下記化学式(23)で示される構造を有する化合物(商品名:イルガキュア261、チバスペシャルティーケミカルズ社製)が好ましい。
【0099】
【化31】

【0100】
【化32】

【0101】
また、該光重合開始剤であるカチオン重合触媒の添加量は、加水分解性縮合物の固形分100質量部に対して、1.0〜3.0質量部添加することが好ましい。この範囲内であれば硬化特性、及び重合光開始剤の溶解性が良好となる。
【0102】
工程(3):
工程(2)で調製した塗料を、基体上に形成した導電性弾性層の上に塗布し、該塗料の塗膜を形成する。塗布方法としては、公知の手段、例えば、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布などを用いることができる。
【0103】
次に、導電性弾性層上の該塗膜中の縮合物が分子内に有するカチオン重合可能な基を反応させて該縮合物を架橋させて、本発明に係る高分子化合物を得る。具体的には、例えば、縮合物が分子内に有するエポキシ基を開裂させることで高分子化合物を形成することができる。ここで、架橋方法としては、活性エネルギー線を照射する方法、加熱する方法が挙げられる。そして、縮合物の架橋によって該塗膜が硬化し、表面層を構成することとなる。
【0104】
活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。これは、架橋反応を紫外線によって行えば、熱履歴による導電性弾性層の劣化を抑制することができる為、導電性弾性層の電気的特性の低下を抑制することもできる。
【0105】
紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、又はエキシマUVランプなどを用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150〜480nmの光を豊富に含む紫外線源が用いられる。なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
紫外線積算光量[mJ/cm]=紫外線強度[mW/cm]×照射時間[s]
紫外線の積算光量の調節は、照射時間や、ランプ出力や、ランプと被照射体との距離で行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。
【0106】
低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、紫外線積算光量計(商品名:UIT−150−A、UVD−S254、いずれも、ウシオ電機(株)製)を用いて測定できる。また、エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、紫外線積算光量計(商品名:UIT−150−A、VUV−S172、いずれも、ウシオ電機(株)製)を用いて測定できる。
【0107】
本発明に係る高分子化合物の形成過程において生じる架橋および硬化反応について図9を用いて説明する。
【0108】
例えば、前記した一般式(12)に係る化合物としての、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、前記した一般式(13)〜(16)からなる群から選択される少なくとも1つの加水分解性化合物とを加水分解させて得られる縮合物は、カチオン重合可能な基としてエポキシ基を有する。このような縮合物のエポキシ基は、カチオン重合触媒(図9中、Rと記載)の存在下で、エポキシ環が開環し、連鎖的に重合が進む。その結果、MO4/2またはMO5/2を含むポリシロキサン同士が架橋し、硬化して本発明に係る高分子化合物が形成される。なお、図9中、nは1以上の整数を表す。
【0109】
<電子写真装置、プロセスカートリッジ>
図3に、本発明の帯電部材を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。この電子写真装置は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される円筒状の感光体1を有する。感光体は支持体、支持体上に形成された感光層、電荷注入層、表面層等を有するものであってもよい。
【0110】
回転駆動される感光体の表面は、帯電部材3により、正又は負の所定電位に均一に帯電され、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光の露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受け、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。
【0111】
帯電部材3による感光体1の表面の帯電の際、帯電部材3には、電圧印加手段(不図示)から直流電圧或いは直流電圧に交流電圧を重畳した電圧が印加される。感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5に設けられる現像ローラにより現像剤が供給され反転現像又は正規現像されてトナー像となる。次いで、感光体1の表面のトナー像は、転写ローラ6に印加される転写バイアスによって、感光体1と転写ローラ6との間に感光体の回転と同期して搬送された紙等の転写材Pに順次転写される。
【0112】
現像手段としては、例えば、ジャンピング現像手段、接触現像手段、磁気ブラシ手段等が挙げられる。また、転写ローラとしては、支持体上に中抵抗に調整された弾性層を有するものを使用することができる。
【0113】
トナー像が転写された転写材Pは、感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて、トナー像が定着された画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合、この画像形成物は、再循環搬送機機構に導入されて転写部へ再導入される。
【0114】
トナー像転写後の感光体1の表面は、クリーニングブレード等のクリーニング手段7によって転写残りの現像剤(トナー)が除去され清浄面化され、さらに前露光手段からの前露光光により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。帯電手段が接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0115】
感光体1、帯電部材3、現像手段5、クリーニング手段7を一体化してプロセスカートリッジ9とし、電子写真装置本体のレール等の案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱可能な構造としている。上記部材の他、転写手段等から適宜選択してカートリッジ化し、電子写真装置本体に着脱可能とすることもできる。
【0116】
更に図4に上記現像手段5の現像装置の模式断面図を示す。図4において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を保持する静電潜像保持体としての電子写真感光体ドラム501は、矢印B方向に回転される。現像剤担持体としての現像スリーブ508は、現像剤容器としてのホッパ503によって供給された磁性トナーを有する一成分系現像剤504を担持して、矢印A方向に回転する。こうすることによって、現像スリーブ508と感光体ドラム501とが対向している現像領域Dに現像剤504を搬送する。図4に示すように、現像スリーブ508内には、現像剤504を現像スリーブ508上に磁気的に吸引且つ保持するために、磁石が内接されているマグネットローラ505が配置されている。
【0117】
本発明の現像装置で用いられる現像スリーブ508は、基体としての金属円筒管506と、その上に被覆された導電性樹脂被覆層507を有する。ホッパ503中には、現像剤504を攪拌するための攪拌翼510が設けられている。513は、現像スリーブ508とマゲネットローラ505とが非接触状態にあることを示す間隙である。現像剤504は、現像剤を構成する磁性トナー相互間及び現像スリーブ508上の導電性樹脂被覆層507との摩擦により、感光体ドラム501上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。図4の例では、現像領域Dに搬送される現像剤504の層厚を規制するために、現像剤層厚規制部材としての強磁性金属製の磁性規制ブレード502が設けられている。この磁性規制ブレード502は、現像スリーブ508の表面から約50〜500μmのギャップ幅を持って現像スリーブ508に臨むように、ホッパ503から垂下されている。マグネットローラ505の磁極N1からの磁力線が磁性規制ブレード502に集中することにより、現像スリーブ508上に現像剤504の薄層が形成される。
【0118】
また、本発明で使用する現像剤(トナー)は、いずれの形式であっても、質量平均粒径が4μm以上11μm以下の範囲にあることが好ましい。このようなものを使用すれば、トナーの帯電量あるいは画質及び画像濃度等がバランスのとれたものとなる。現像剤(トナー)用結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能であり、例えばビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられるが、この中でもビニル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0119】
現像剤(トナー)には帯電特性を向上させる目的で、荷電制御剤をトナー粒子に包含させること(内添)、又はトナー粒子と混合して用いること(外添)ができる。これは、荷電制御剤によって、現像システムに応じた最適の荷電量コントロールが可能となるためである。
【0120】
正の荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン、トリアミノトリフェニルメタン系染料及び脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレード、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレートを単独であるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。また、負の荷電制御剤としては、例えば、有機金属化合物、キレート化合物が有効である。その例としては、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジターシャリーブチルサリチル酸クロム等があり、特にアセチルアセトン金属錯体、モノアゾ金属錯体、ナフトエ酸あるいはサリチル酸系の金属錯体又は塩が好ましい。
【0121】
現像剤(トナー)が、磁性現像剤(トナー)である場合、磁性材料として、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄系金属酸化物;Fe、Co、Niのような磁性金属、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金、及びこれらの混合物等を配合する。その際、これら磁性材料に、着色剤としての役目を兼用させても構わない。
【0122】
現像剤(トナー)に配合する着色剤として、従来からこの分野で使用している顔料、染料を使用することが可能であり、適宜選択して使用すればよい。現像剤(トナー)には離型剤を配合することが好ましく、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス、モンタンワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類等が適当である。
【0123】
さらに、現像剤(トナー)には、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上及びクリーニング性向上のために、シリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機微粉体を外添すること、すなわち現像剤表面近傍に存在させていることが好ましい。中でも、シリカ微粉体が好ましい。
【実施例】
【0124】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。先ず、実施例または比較例において使用した、〔1〕導電性弾性ローラおよび〔2〕縮合物について記載する。
【0125】
〔1〕導電性弾性ローラの作成および評価
<1−1.導電性弾性ローラ1の作成および評価>
表1に示す量の成分(1)、(2−1)、(3)、(4)及び(5)、を6Lニーダーで20分間混練し、次いで表1に示す量の成分(6)及び(7)を加え、オープンロールでさらに8分間混練することによって、混練物Iを得た。
【0126】
【表1】

【0127】
次に、直径6mm、長さ252mmの円柱形の鋼製の支持体(表面をニッケルメッキ加工したもの)の円柱面軸方向中央を挟んで両側115.5mmまでの領域(あわせて軸方向幅231mmの領域)に、金属およびゴムを含む熱硬化性接着剤(商品名:メタロックN−33、(株)東洋化学研究所製)を塗布し、これを30分間温度80℃で乾燥させた後、さらに1時間温度120℃で乾燥させた。
【0128】
次にクロスヘッド押出機を使用して、上記接着層付き支持体上に混練物Iを同軸状に外径8.75〜8.90mmの円筒形に押出し、端部を切断して、支持体の外周に未加硫の導電性弾性層(長さ242mm)を積層した。押出機はシリンダー径70mm、L/D=20の押出機を使用し、押出時の温度条件はヘッドの温度を90℃とし、シリンダーの温度を90℃とし、スクリューの温度を90℃とした。
【0129】
次に上記ローラを異なる温度設定にした2つのゾーンをもつ連続加熱炉を用いて加硫した。第1ゾーンを温度80℃に設定し、30分で通過させ、第2ゾーンを温度160℃に設定し30分通過させ、未加硫の導電性弾性層の加硫を行った。
【0130】
加硫された導電性弾性層の幅方向の両端を切断して、導電性弾性層部分の軸方向の長さを232mmとした。さらに、導電性弾性層の表面を回転砥石で研磨して、端部直径8.26mm、中央部直径8.5mmのクラウン形状に成形した。これを導電性弾性ローラ1とした。
【0131】
〔評価1:導電性弾性層の評価〕
導電性弾性ローラ1の導電性弾性層の表面の十点平均粗さ(Rz)、最大深さ(Ry)、硬度、および、外径差振れを評価した。結果を表2に示す。尚、最大深さRyは、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の、縦倍率の方向に測定した値である。つまり基準測定長中の、表面層の亀裂縁部(凸部)の最大高さと、硬化収縮後に生じる導電性弾性層の亀裂を含んだ最大深さの距離を示す。
【0132】
十点平均粗さ(Rz)、および、最大深さ(Ry)は、日本工業規格(JIS)B0601(1994)に準拠して測定した。測定条件は、評価長さ8.0mm、カットオフ値0.8mm、送り速度0.5mm/s、フィルター特性2CRを用いた。
【0133】
硬度は、マイクロゴム硬度計(MD−1 capa、高分子計器株式会社製)を用いて測定した。
【0134】
また、振れの測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザー測定機LSM−430vを用いて行った。詳しくは、該測定機を用いて外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。
【0135】
<1−2.導電性弾性ローラ2〜7の作成および評価>
加硫した導電性弾性層の表面研磨条件を変更したこと以外は、導電性弾性ローラ1と同様にして導電性弾性ローラ2および導電性弾性ローラ3を得た。
【0136】
また、成分(2−1)の代わりに、表1に示す量の成分(2−2)を使用し、また、加硫した導電性弾性層の表面研磨条件を変更したこと以外は、導電性弾性ローラ3と同様にして導電性弾性ローラ4、および、導電性弾性ローラ5を得た。
【0137】
更にまた、成分(2−1)の代わりに、表1に示す量の成分(2−3)を使用し、また、加硫した導電性弾性層の表面研磨条件を変更したこと以外は、導電性弾性ローラ1と同様にして導電性弾性ローラ6および導電性弾性ローラ7を得た。これらの導電性弾性ローラ2〜7について、導電性弾性ローラ1と同様に評価した。導電性弾性ローラ1〜7の評価結果を下記表2に示す。
【0138】
【表2】

【0139】
〔2〕縮合物の調製および評価
<2−1.縮合物1の調製および評価>
〔第1段階反応〕
下記表3に記載した材料を300mlのナスフラスコに入れた。
【0140】
【表3】

【0141】
フットボール型攪拌子(全長45mm、径20mm)を上記ナスフラスコに入れ、室温(25℃)で、回転数500rpmで1分間、スターラー上で攪拌し、内容物を混合した。更にスターラーの回転数を900rpmに変更し、イオン交換水(pH=5.5)11.34gを滴下しながら添加した。合成時の固形分は、28.00質量%であった。
【0142】
次いで、温度暴走防止機構付きスターラー上に、温度120℃に設定したオイルバスを設置し、このオイルバス中に上記フラスコを浸し、回転数750rpmで撹拌した。フラスコの内容物は20分後に温度120℃に到達した。そして、20時間加熱還流を行うことによって、第1段階反応を行い、縮合物中間体1を得た。
【0143】
〔第2段階反応〕
下記表4の材料を300mlのナスフラスコに入れ、室温で3時間攪拌して、第2段階反応を行い最終的な縮合物1を合成した。
【0144】
【表4】

【0145】
〔評価(1):縮合物1の希釈液の保存性の評価〕
先ず、縮合物1の固形分を調整した。すなわち、アルミニウム製の計量カップの質量(A)を測定した。この計量カップを用いて、縮合物1を約2.000〜3.000g(B)を精密天秤で秤量した。更に温度200℃、30分間オーブン中に放置し、水分蒸発後の質量(C)を測定し、次式により、固形分を算出した。
【0146】
【数2】

【0147】
次いで、縮合物1をエタノールで希釈し、固形分を1.3質量%調整して、縮合物1の希釈液を得た。
得られた縮合物1の希釈液の保存性を以下の基準で評価した。
A:1ヶ月放置しても白濁・沈殿が無い状態である。
B:2週間程度から白濁化する状態である。
C:1週間程度から白濁化する状態である。
D:合成時に白濁・沈殿を生じる状態である。
評価結果を表2に示す。
【0148】
〔評価(2):縮合物の硬化物の化学構造の評価〕
次に、以下の方法で調製した縮合物1の硬化物について、核磁気共鳴装置(商品名:JMN−EX400、JEOL社製)を用いて、29Si−NMR、13C−NMRスペクトルを測定し、当該硬化物中に、一般式(3)の構造が存在していることを確認した。
【0149】
まず、光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩[商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製]をメタノールで10質量%に希釈した。次いで、評価(1)に記載の方法と同じ方法で調製した縮合物1の希釈液の固形分100質量部に対して、上記光カチオン重合開始剤の液量が3.0質量部となるように上記光カチオン重合開始剤の希釈液を加えた。これに、エタノールと2−ブタノールとを1:1(質量比)で混合した溶媒を加えて、理論固形分濃度を7.0質量%に調整した。これをコーティング液1とした。
【0150】
次いで、厚さが100μmのアルミニウム製シートの脱脂した表面に前記コーティング液1をスピンコートした。スピンコート装置としては、1H−D7(商品名:ミカサ(株)製)を用いた。スピンコートの条件としては、回転数を300rpm、回転時間を2秒間とした。コーティング液1の塗膜を乾燥させた後、当該塗膜に対して、波長が254nmの紫外線を照射し、当該塗膜を硬化させた。当該塗膜が受ける紫外線の積算光量は、9000mJ/cmとした。なお、紫外線の照射には、低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング(株)製)を用いた。
【0151】
次いで、硬化膜をアルミニウム製シートから剥離し、メノウ製の乳鉢を用いて粉砕し、NMR測定用試料を調製した。この試料を核磁気共鳴装置(商品名:JMN−EX400、JEOL社製)を用いて29Si−NMRスペクトル、および、13C−NMRスペクトルを測定した。29Si−NMRスペクトルにより、エポキシ基を含む有機鎖をもつ加水分解性シラン化合物が縮合し、−SiO3/2の状態で存在する種があることを確認した。また、13C−NMRスペクトルにより、エポキシ基が残存せず全て重合していることを確認した。以上のことより、一般式(3)の構造を硬化膜内に有していることを確認した。
【0152】
<2−2.縮合物2〜19の調製および評価>
〔縮合物中間体2〜7の調製〕
下記表5に示す組成としたこと以外は、縮合物中間体1と同様にして縮合物中間体2〜7を調製した。なお、表5中の略号(EP−1〜EP−5、He、Ph)が表している化合物の詳細は表11に示す。
【0153】
【表5】

【0154】
〔縮合物2〜60の調製および評価〕
下記表6〜9に示す組成としたこと以外は、縮合物1と同様にして縮合物2〜60を調製し、評価(1)および評価(2)を行った。評価結果を表6〜9に併せて示す。なお、表6〜9中の略号(Ti−1〜Ti−3、Zr−1〜Zr−3、Hf−1〜Hf−3、および、Ta−1〜Ta−3)が表している化合物の詳細は表11に示す。
【0155】
【表6】

【0156】
【表7】

【0157】
【表8】

【0158】
【表9】

【0159】
<2−3.比較用の縮合物61の調製および評価>
縮合物中間体4を縮合物61として前記評価(1)及び評価(2)に供した。その結果を表10に示す。
【0160】
<2−4.比較用の縮合物62〜65の調製および評価>
下記表10に記載の組成としたこと以外は、縮合物中間体1と同様にして縮合物62〜65を調製し、前記評価(1)に供した。その結果を表10に示す。なお、縮合物62〜65は、合成中に白濁、沈殿を生じ、評価(2)を行うためのコーティング液を調製できなかったため、評価(2)は行っていない。
【0161】
【表10】

【0162】
【表11】

【0163】
〔実施例1〕
<1.表面層形成用塗料1−1〜1−3の調製>
縮合物1に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(0.7)%、(6.6)%、および、(13.1)%に調整した。これらを各々塗料No.1−1、1−2および1−3とした。
【0164】
<2.表面層の形成及び帯電ローラの評価>
上記[1]で作成した導電性弾性ローラ1を3本用意し、各々の導電性弾性ローラ1の導電性弾性層の外周部に塗料No.1−1〜1−3をリング塗布(吐出量:0.120ml/s、リング部のスピード:85mm/s、総吐出量:0.130ml)した。導電性弾性層の周面に形成された各塗料の塗膜に対して、波長が254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cmになるように照射した。これにより、塗料中の縮合物1を架橋させて表面層を形成した。なお、紫外線の照射には低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング(株)製)を用いた。このようにして帯電ローラ1−1〜1−3を作成した。各帯電ローラについて以下の評価(3)〜(8)を行った。評価結果を表12に示す。
【0165】
〔評価(3):表面層形成用の塗料の塗工性の評価〕
帯電ローラの表面の外観を目視にて観察し、以下の基準で表面層形成用の塗料の塗工状態を評価した。
A:塗工ムラが発生していない。
B:塗工ムラがローラの端部に一部発生している。
C:塗工ムラが全面に発生している。
【0166】
〔評価(4):表面層の膜厚〕
上記膜厚の測定には、帯電ローラの軸に沿う方向の中央部において周方向4箇所をサンプリングし、断面方向を観察する。このとき観察装置としては、SEM(HITACHI社製:走査型電子顕微鏡)を用い、加速電圧5kV〜20kV、倍率10000倍で確認できる。
【0167】
〔評価(5):表面層の弾性率〕
評価(2)と同様の方法にて、100μmのアルミニウム製シートの脱脂した表面に、厚みが5.0μmの、縮合物1の硬化膜を形成した。この硬化膜に対して、表面被膜物性試験(商品名:フィッシャースコープH100V;フィッシャーインストルメンツ社製)を用いて、圧子を測定対象の表面から0.5μm/7sで進入させた。このときの値を弾性率とした。
【0168】
〔評価(6):表面層の亀裂の評価、表面粗さ(Rzjis、Ry)の測定〕
カラー3Dレーザー顕微鏡(商品名:VK−8700(株)キーエンス社製)を用いて、倍率1000倍(対物レンズ50倍)で各帯電ローラの表面を観察した。また、表面粗さ(Rzjis、Ry)に関しては、解析ソフト VK Analzerを用いて算出した。
【0169】
〔評価(7):Si−O−M結合の確認〕
各帯電ローラの表面層内のSi−O−Ti結合の存在をX線光電子分光分析(ESCA、Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)により確認した。具体的には、ローラ表面の一部分を切断した。次いで、当該切断片をスパッタリング(スパッタリング条件:アルゴンガスを使用、1kV、1分)して表面の汚染を除去した。その後、この切断片について、X線光電子分光分析装置(商品名:Quantum2000;アルバックファイ社製、パスエネルギー(Pass Energy):140eV)を用いて、表面層内の化学結合様式を解析した。検出されたO1sスペクトルを、各結合様式に対応したピーク(Ti−O−Ti結合、Si−O−Ti結合、Si−O−Si結合)に分離し(図8参照)、それらのピークの存在により各化学結合が表面層内に存在することを確認した。
【0170】
〔評価(8):帯電部材の画像評価〕
各帯電ローラを用い、以下に示す画像評価を行った。
【0171】
まず、各帯電ローラと電子写真感光体とを、これらを一体に支持するプロセスカートリッジ(商品名:「HP 35A(CB435A)」、HP社製)に組み込む。該プロセスカートリッジを、A4紙縦出力用のレーザービームプリンター(商品名:「HP LaserJet P1006 Printer」、HP社製)に装着した。このレーザービームプリンターのプリントスピードは17枚/分であり、画像解像度は600dpiである。
【0172】
なお、帯電ローラとともにプロセスカートリッジに組み込んだ電子写真感光体は、支持体上に層厚8.0μmの有機感光層を形成してなる有機電子写真感光体である。また、この有機感光層は、支持体側から電荷発生層とポリカーボネート(結着樹脂)を含有する電荷輸送層とを積層してなる積層型感光層であり、この電荷輸送層は電子写真感光体の表面層となっている。
【0173】
また、前記レーザービームプリンターに使用した現像剤(トナー)は、現像剤用結着樹脂に着色剤、荷電制御剤、離型剤、無機微粒子等を配合したもので、形式として、磁性材料を必須成分とする磁性一成分現像剤と磁性材料を含まない非磁性一成分現像剤がある。形式は現像装置に適応して適宜選択される。ここでは、磁性一成分現像剤を使用した。
【0174】
画像としては、A4サイズの紙上に、電子写真感光体の回転方向と垂直方向に幅2ドット、間隔118スペースの横線を描く画像を用いた。また、出力は、25℃/55%RH環境下で、画像形成は、1枚印字する毎に7秒間で電子写真感光体の回転を停止させる、所謂、間欠モードで行った。こうして、1日に1000枚の画像を出力する画像形成動作を、2日間に亘って行って、合計2000枚の電子写真画像を出力した。こうして形成したハーフトーン画像について、帯電不良に起因する横スジの発生の有無、およびその程度を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
AA:帯電不良による帯電ムラに起因する横スジが認められない。
A:画像端部に軽微に帯電ムラに起因する横スジが確認できる。
B:画像端部にハッキリと帯電ムラに起因する横スジが確認できる。
C:画像全面に軽微に帯電ムラに起因する横スジが確認できる。
D:画像全面に帯電ムラに起因する横スジが確認できる。
【0175】
〔実施例2〜14〕
<1.表面層形成用塗料2−1〜2−3、3−1〜3−3の調製>
縮合物2を用いたこと以外は、塗料1−1〜1−3と同様にして表面層形成用の塗料2−1〜2−3、3−1〜3−3を調製した。
【0176】
<2.表面層形成用塗料4−1〜4−3の調製>
縮合物4に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(0.3)%、(6.6)%、および、(19.7)%に調整した。これらを各々塗料No.4−1、4−2および4−3とした。
【0177】
<3.表面層形成用塗料5−1〜5−2の調製>
縮合物5に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(0.3)%、および、(19.7)%に調整した。これらを各々塗料No.5−1、および5−2とした。
【0178】
<4.表面層形成用塗料6−1〜6−3の調製>
縮合物6に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(0.3)%、(6.6)%、および、(19.7)%に調整した。これらを各々塗料No.6−1、6−2および6−3とした。
【0179】
<5.表面層形成用塗料7〜14の調製>
縮合物7〜14の各々に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(9.8)%に調整した。これらを各々塗料No.7〜14とした。
【0180】
<6.表面層の形成及び帯電ローラの評価>
上記の塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ2−1〜2−3、3−1〜3−3、4−1〜4−4、5−1〜5−2、6−1〜6−3、7〜14を作成した。そして、これらを、評価(3)〜(8)に供した。評価結果を表12に示す。
【0181】
〔実施例15〕
<1.表面層形成用塗料15の調製>
縮合物15に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(13.1)%に調整した。これを塗料No.15とした。
【0182】
<2.表面層の形成及び帯電ローラの評価>
塗料No.15を用い、かつ、導電性弾性ローラ1を導電性弾性ローラ2〜7に替えたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ15−1〜15−6を作成した。これらを評価(3)〜(8)に供した。評価結果を表12に示す。
【0183】
〔実施例16〜29〕
<1.表面層形成用塗料16−1〜16−3、17−1〜17−3、18−1〜18−3の調製>
縮合物16〜18を用いたこと以外は、塗料1−1〜1−3と同様にして表面層形成用の塗料16−1〜16−3、17−1〜17−3、18−1〜18−3を調製した。
【0184】
<2.表面層形成用塗料19−1〜19−3、21−1〜21−3の調製>
縮合物19または21に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(0.3)%、(6.6)%、および、(19.7)%に調整した。これらを各々塗料No.19−1〜19−3、21−1〜21−3とした。
【0185】
<3.表面層形成用塗料20−1〜20−2の調製>
縮合物20に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(0.3)%、および、(19.7)%に調整した。これらを各々塗料No.20−1、および20−2とした。
【0186】
<4.表面層形成用塗料22〜29の調製>
縮合物22〜29の各々に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(9.8)%に調整した。これらを各々塗料No.22〜29とした。
【0187】
<5.表面層の形成及び帯電ローラの評価>
上記の塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ16−1〜16−3、17−1〜17−3、18−1〜18−3、19−1〜19−3、20−1〜20−2、21−1〜21−3、22〜29を作成した。そして、これらを、評価(3)〜(8)に供した。評価結果を表13に示す。
【0188】
〔実施例30〕
<1.表面層形成用塗料30の調製>
縮合物30に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(13.1)%に調整した。これを塗料No.30とした。
【0189】
<2.表面層の形成及び帯電ローラの評価>
塗料No.30を用い、かつ、導電性弾性ローラ1を導電性弾性ローラ2〜7に替えたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ30−1〜30−6を作成した。これらを評価(3)〜(8)に供した。評価結果を表13に示す。
【0190】
〔実施例31〜44〕
<1.表面層形成用塗料31−1〜31−3、32−1〜32−3、33−1〜33−3の調製>
縮合物31〜33を用いたこと以外は、塗料1−1〜1−3と同様にして表面層形成用の塗料31−1〜31−3、32−1〜32−3、33−1〜33−3を調製した。
【0191】
<2.表面層形成用塗料34−1〜34−3、36−1〜36−3の調製>
縮合物34または36に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(0.3)%、(6.6)%、および、(19.7)%に調整した。これらを各々塗料No.34−1〜34−3、36−1〜36−3とした。
【0192】
<3.表面層形成用塗料35−1〜35−2の調製>
縮合物35に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(0.3)%、および、(19.7)%に調整した。これらを各々塗料No.35−1、および35−2とした。
【0193】
<4.表面層形成用塗料37〜44の調製>
縮合物37〜44の各々に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(9.8)%に調整した。これらを各々塗料No.37〜44とした。
【0194】
<5.表面層の形成及び帯電ローラの評価>
上記の塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ31−1〜31−3、32−1〜32−3、33−1〜33−3、34−1〜34−3、35−1〜35−2、36−1〜36−3、37〜44を作成した。そして、これらを、評価(3)〜(8)に供した。評価結果を表14に示す。
【0195】
〔実施例45〕
<1.表面層形成用塗料45の調製>
縮合物45に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(13.1)%に調整した。これを塗料No.45とした。
【0196】
<2.表面層の形成及び帯電ローラの評価>
塗料No.45を用い、かつ、導電性弾性ローラ1を導電性弾性ローラ2〜7に替えたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ45−1〜45−6を作成した。これらを評価(3)〜(8)に供した。評価結果を表14に示す。
【0197】
〔実施例46〜59〕
<1.表面層形成用塗料46−1〜46−3、47−1〜47−3、48−1〜48−3の調製>
縮合物46〜48を用いたこと以外は、塗料1−1〜1−3と同様にして表面層形成用の塗料46−1〜46−3、47−1〜47−3、48−1〜48−3を調製した。
【0198】
<2.表面層形成用塗料49−1〜49−3、51−1〜51−3の調製>
縮合物49または51に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(0.3)%、(6.6)%、および、(19.7)%に調整した。これらを各々塗料No.49−1〜49−3、51−1〜51−3とした。
【0199】
<3.表面層形成用塗料50−1〜50−2の調製>
縮合物50に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(0.3)%、および、(19.7)%に調整した。これらを各々塗料No.50−1〜50−2とした。
【0200】
<4.表面層形成用塗料52〜59の調製>
縮合物52〜59の各々に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(9.8)%に調整した。これらを各々塗料No.52〜59とした。
【0201】
<5.表面層の形成及び帯電ローラの評価>
上記の塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ46−1〜46−3、47−1〜47−3、48−1〜48−3、49−1〜49−3、50−1〜50−2、51−1〜51−3、52〜59を作成した。そして、これらを、評価(3)〜(8)に供した。評価結果を表15に示す。
【0202】
〔実施例60〕
<1.表面層形成用塗料60の調製>
縮合物60に、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、固形分濃度を(13.1)%に調整した。これを塗料No.60とした。
【0203】
<2.表面層の形成及び帯電ローラの評価>
塗料No.60を用い、かつ、導電性弾性ローラ1を導電性弾性ローラ2〜7に替えたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ60−1〜60−6を作成した。これらを評価(3)〜(8)に供した。評価結果を表15に示す。
【0204】
【表12】

【0205】
【表13】

【0206】
【表14】

【0207】
【表15】

【0208】
〔比較例1〕
<1.表面層形成用塗料61−1〜61−3の調製>
縮合物61を用いたこと以外は塗料1−1〜1−3と同様にして表面層形成用の塗料61−1〜61−3を調製した。
【0209】
<2.表面層の形成及び評価>
塗料61−1〜61−3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして帯電ローラ61−1〜61−3を作成し、評価(3)〜(8)に供した。評価結果を表16に示す。
【0210】
【表16】

【符号の説明】
【0211】
101 支持体
102 導電性弾性層
103 表面層
104 亀裂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、弾性層および表面層を有している帯電部材であって、該表面層は、Si−O−M結合を有している高分子化合物を含み、該高分子化合物は、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で示される構成単位から選ばれる少なくとも1つ、並びに下記一般式(3)で示される構成単位を有しており、該帯電部材は、その表面から該弾性層に至る亀裂を有し、該亀裂はその縁部が凸状に盛り上がり、それによって該帯電部材は、該表面が粗面にされていることを特徴とする帯電部材:
【化1】

(上記一般式(1)において、Mは、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれるいずれかの元素である);
【化2】

(上記一般式(2)において、Mは、Ta元素である);
【化3】

(上記一般式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立に以下の一般式(4)〜(7)のいずれかを示す;
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

(上記R〜R、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は、各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R、R、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は、各々独立に水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は、各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルコキシル基、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1以上8以下の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4以上12以下の整数を示す。xおよびyは、各々独立に0もしくは1を示す。記号「*」および記号「**」は、各々、一般式(3)中のケイ素原子および酸素原子への結合部位を示す。))。
【請求項2】
前記高分子化合物において、前記一般式(3)のRおよびRが各々独立に以下の一般式(8)〜(11)のいずれかで示される請求項1に記載の帯電部材:
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

(上記N、M、L、Q、SおよびTは、各々独立に1以上8以下の整数を示す。x’およびy’は、各々独立に0もしくは1を示す。記号「*」および記号「**」は、一般式(3)中のケイ素原子および酸素原子への結合部位を示す。)。
【請求項3】
前記高分子化合物における、Mとケイ素との原子数比M/Siが0.10以上12.50以下である請求項1または2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記高分子化合物が、下記一般式(12)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物と、下記一般式(13)〜(16)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物の少なくとも1種との架橋物である請求項1〜3のいずれかの一項に記載の帯電部材:
【化12】

(上記一般式(12)中、R33は、下記一般式(17)〜(20)のいずれかを示し、R34〜R36は、各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。上記一般式(13)〜(16)中、R37〜R53は、各々独立に炭素数1〜9のアルキル基を示す;
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

(上記一般式(17)〜(20)中、R54〜R58、R59〜R65、R66、R67、R72およびR73は、各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R57、R58、R62〜R65、R70、R71およびR76〜R79は、各々独立に水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は、各々独立に1以上8以下の整数を示す。p’およびr’は、各々独立に4以上12以下の整数を示す。また、記号「*」は、一般式(12)のケイ素原子との結合位置を示す。))。
【請求項5】
前記高分子化合物が、請求項4に記載の一般式(12)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物と請求項4に記載の一般式(13)〜(16)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物の少なくとも1種と、下記一般式(21)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物との架橋物である請求項1〜3のいずれかの一項に記載の帯電部材:
【化17】

(上記一般式(21)中、R80は、炭素数1〜21のアルキル基またはフェニル基を示し、R81〜R83は、各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。)。
【請求項6】
請求項4に記載の帯電部材の製造方法であって、
(i)前記一般式(12)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物と、前記一般式(13)〜(16)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物の少なくとも1種とを含む液状の縮合物を得る工程と、
(ii)該液状の縮合物と光重合開始剤とを含む表面層形成用の塗料を得る工程と、
(iii)該塗料の塗膜を、支持体の外周に配置された弾性層の上に形成し、該塗膜中の加水分解縮合物のR33のエポキシ基を開裂させることによりこれらの加水分解縮合物を架橋させて該塗膜を硬化させ、表面層を形成する工程とを有することを特徴とする帯電部材の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の帯電部材の製造方法であって、
(i)前記一般式(12)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物と、前記一般式(21)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物と、前記一般式(13)〜(16)で示される構造を有する加水分解性化合物の加水分解縮合物の少なくとも1種と含む液状の縮合物を得る工程と、
(ii)該液状の縮合物と光重合開始剤とを含む表面層形成用の塗料を得る工程と、
(iii)該塗料の塗膜を、支持体の外周に配置された弾性層の上に形成し、該塗膜中の加水分解縮合物のR33のエポキシ基を開裂させることによりこれらの加水分解縮合物を架橋させて該塗膜を硬化させ、表面層を形成する工程とを有することを特徴とする帯電部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−93720(P2012−93720A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202219(P2011−202219)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】