説明

帯電防止塗料

【課題】導電性ポリマーがバインダ樹脂に均一に分散されており、電気抵抗が低く、電気抵抗の湿度依存性が小さく、接着性および貯蔵安定性に優れる塗膜を得ることができる帯電防止塗料の提供。
【解決手段】ドーパントによってドープ接合されている導電性ポリマーと、ハロゲン化ポリマーとを含有する帯電防止塗料であって、前記ドーパントがスルホコハク酸を10モル%以上含み、前記導電性ポリマーが、ドープ接合されていないときの重量平均分子量が10,000を超える導電性ポリマーであり、前記導電性ポリマーの含有量が、前記ハロゲン化ポリマー100質量部に対して5〜300質量部である、帯電防止塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
帯電防止塗料としては、一般に、界面活性剤や金属酸化物をバインダ樹脂に混合した塗料が用いられている。しかしながら、界面活性剤を用いた帯電防止塗料は、乾燥雰囲気下では極端に抵抗値が上昇し、効果が低下する、耐熱性が低い、効果の持続性が乏しい等の問題点を有している(非特許文献1参照。)。金属酸化物を用いた帯電防止塗料(非特許文献1参照。)は、電子伝導性によるため湿度依存性のない安定した導電性を発現するが、導電性はフィラーの分散度に左右されやすく、フィラーの粒子径や分散度に依存して貯蔵安定性に問題がでたり、ヘーズ値が高くなる場合が多いという問題がある。
【0003】
一方、導電性ポリマーを水や有機溶媒に分散した材料が市販されているが、導電性ポリマーは他の樹脂材料との相溶性が低く、塗料化することは困難であった。
【0004】
【非特許文献1】村田雄司 監修、帯電防止塗料の応用と評価、株式会社シーエムシー出版、2003年7月31日、p.60〜62
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、導電性ポリマーがバインダ樹脂に均一に分散されており、電気抵抗が低く、電気抵抗の湿度依存性が小さく、接着性および貯蔵安定性に優れる塗膜を得ることができる帯電防止塗料を提供することを目的とする。
また、本発明は、導電性ポリマーがバインダ樹脂に均一に分散されており、電気抵抗が低く、電気抵抗の湿度依存性が小さく、基材と帯電防止層との接着性に優れる帯電防止材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、特定のドーパントによってドープ接合されている重量平均分子量が10,000を超える導電性ポリマー5〜300質量部と、ハロゲン化ポリマー100質量部とを含有する帯電防止塗料が、導電性ポリマーがバインダ樹脂に均一に分散されており、電気抵抗が低く、電気抵抗の湿度依存性が小さく、接着性および貯蔵安定性に優れる塗膜を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は下記(1)〜(9)を提供する。
(1)ドーパントによってドープ接合されている導電性ポリマーと、ハロゲン化ポリマーとを含有する帯電防止塗料であって、
前記ドーパントがスルホコハク酸を10モル%以上含み、
前記導電性ポリマーが、ドープ接合されていないときの重量平均分子量が10,000を超える導電性ポリマーであり、
前記導電性ポリマーの含有量が、前記ハロゲン化ポリマー100質量部に対して5〜300質量部である、帯電防止塗料。
(2)前記導電性ポリマーがポリアニリン類である上記(1)に記載の帯電防止塗料。
(3)前記ハロゲン化ポリマーが塩素化ポリオレフィンである上記(1)または(2)に記載の帯電防止塗料。
(4)前記塩素化ポリオレフィンの塩素量が10〜50質量%である上記(3)に記載の帯電防止塗料。
(5)前記ハロゲン化ポリマーが、酸変性されているハロゲン化ポリマーである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の帯電防止塗料。
(6)更に、溶剤を含有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の帯電防止塗料。
(7)基材と、前記基材に上記(1)〜(6)のいずれかに記載の帯電防止塗料を積層して得られる帯電防止層とを有する帯電防止材。
(8)前記基材がフィルムである上記(7)に記載の帯電防止材。
(9)前記基材がポリオレフィン系基材である上記(7)または(8)に記載の帯電防止材。
【発明の効果】
【0008】
本発明の帯電防止塗料は、導電性ポリマーがバインダ樹脂に均一に分散されており、電気抵抗が低く、電気抵抗の湿度依存性が小さく、接着性および貯蔵安定性に優れる塗膜を得ることができる。
また、本発明の帯電防止材は、導電性ポリマーがバインダ樹脂に均一に分散されており、電気抵抗が低く、電気抵抗の湿度依存性が小さく、基材と帯電防止層との接着性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の帯電防止塗料は、ドーパントによってドープ接合されている導電性ポリマーと、ハロゲン化ポリマーとを含有する帯電防止塗料であって、上記ドーパントがスルホコハク酸を10モル%以上含み、上記導電性ポリマーが、ドープ接合されていないときの重量平均分子量が10,000を超える導電性ポリマーであり、上記導電性ポリマーの含有量が、上記ハロゲン化ポリマー100質量部に対して5〜300質量部である、帯電防止塗料である。
【0010】
<導電性ポリマー>
本発明の帯電防止塗料に用いられる導電性ポリマーは、ドーパントによってドープ接合されており、上記ドーパントがスルホコハク酸を10モル%以上含み、ドープ接合されていないときの重量平均分子量が10,000を超える導電性ポリマーであれば特に限定されない。具体的には、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびこれらの誘導体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの導電性ポリマーの中でも、ポリアニリン類が、汎用性、経済性という点から好ましい。
【0011】
上記ポリアニリン類は、ポリアニリン、ポリアニリン誘導体およびこれらの混合物であり、具体的には、下記式(1)で表される化合物の重合体が好適に挙げられる。
【0012】
【化1】

【0013】
上記式(1)中、nは0〜5の整数を表す。
1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルチオアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルコキシアルキル基、アルキルスルホニル基、カルボキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ハロアルキル基、ニトロアルキル基またはシアノアルキル基であり、水素原子、アルキル基であるのが好ましい。複数のR1は、同一であっても異なっていてもよい。
【0014】
上記式(1)で表される化合物としては、具体的には、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、o−エチルアニリン、m−エチルアニリン、o−エトキシアニリン、m−ブチルアニリン、m−ヘキシルアニリン、m−オクチルアニリン、2,3−ジメチルアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2,5−ジメトキシアニリン、o−シアノアニリン、2,5−ジクロロアニリン、2−ブロモアニリン、5−クロロ−2−メトキシアニリン、3−フェノキシアニリン等が挙げられる。
上記ポリアニリン類は、これらのモノマーの1種を用いた重合体であってもよく、2種以上を用いた共重合体であってもよい。また、上記ポリアニリン類には、上記モノマーの他に、更に他のモノマーを本発明の目的を損なわない範囲で用いてもよい。
【0015】
上記ポリアニリン類としては、具体的には、例えば、ポリアニリン、ポリ(メチルアニリン)、ポリ(ジメチルアニリン)、ポリ(エチルアニリン)、ポリ(アニリンスルホン酸)が好適に挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記導電性ポリマーのドープ接合されていないときの重量平均分子量は、10,000超である。本発明の帯電防止塗料は、重量平均分子量が10,000を超える導電性ポリマーを含有するため、電気抵抗を低くできる。
上記導電性ポリマーのドープ接合されていないときの重量平均分子量は、電気抵抗を低くでき、かつ、ハロゲン化ポリマーとの混合性に優れる点から、10,000〜1,000,000であるのが好ましく、導電性および混合性のバランスに優れる点から50,000〜300,000であるのがより好ましい。
なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて、UV検出器で測定、算出した。標準試料としてはポリスチレンを使用した。
【0017】
上記導電性ポリマーの製造方法は特に限定されず、公知の製造方法を用いることができる。ポリアニリン類を製造する場合、一般的には、非常に低温(−10℃以下)の状態で長時間(48時間程度)に渡って重合を行うことが良いとされている。また、0℃〜常温の比較的高い温度においてもアニオン系の界面活性剤を含んだ系中で重合するとアニリンが高分子化し、2万〜100万の分子量を有するポリアニリンが合成できる。さらには、低温・長時間の重合とアニオン系界面活性剤の併用で合成を行う方法を使用してもよい。
【0018】
また、上記導電性ポリマーは、ドーパントの存在下で上記モノマーの重合を行うのが、得られる導電性ポリマーの導電性を向上しうる点から好ましい態様の1つである。
また、ドープされていない導電性ポリマーにドーパントを添加してドープする方法も好ましい態様の1つである。
【0019】
本発明においては、上記ドーパントとしてスルホコハク酸を10モル%以上含むものを用いる。上記スルホコハク酸は、下記式(2)で表される化合物である。
【0020】
【化2】

【0021】
上記式(2)中、R2およびR3は、それぞれ、アルキル基であり、炭素数は4〜20のアルキル基が好ましく、入手容易性から炭素数6〜12のアルキル基がより好ましい。
【0022】
上記スルホコハク酸としては、スルホコハク酸塩(例えば、ナトリウム塩)の形で市販されているものも用いることができる。
【0023】
本発明に用いられるドーパントは、スルホコハク酸以外のドーパントを含有することができる。スルホコハク酸以外のドーパントとしては、例えば、ヨウ素、臭素、塩素、ヨウ素等のハロゲン化合物;硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸等のプロトン酸;これらプロトン酸の各種塩;三塩化アルミニウム、三塩化鉄、塩化モリブデン、塩化アンチモン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン等のルイス酸;酢酸、トリフルオロ酢酸、ポリエチレンカルボン酸、ギ酸、安息香酸等の有機カルボン酸;これら有機カルボン酸の各種塩;フェノール、ニトロフェノール、シアノフェノール等のフェノール類;これらフェノール類の各種塩;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ポリエチレンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アルキルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、樟脳スルホン酸、銅フタロシアニンテトラスルホン酸、ポルフィリンテトラスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸縮合物等の有機スルホン酸;これら有機スルホン酸の各種塩;ポリアクリル酸等の高分子酸;プロピルリン酸エステル、ブチルリン酸エステル、ヘキシルリン酸エステル、ポリエチレンオキシドドデシルエーテルリン酸エステル、ポリエチレンオキシドアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル;これらリン酸エステルの各種塩;ラウリル硫酸エステル、セチル硫酸エステル、ステアリル硫酸エステル、ラウリルエーテル硫酸エステル等の硫酸エステル;これら硫酸エステルの各種塩等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
導電性ポリマーとハロゲン化ポリマーとの相溶性に優れる点から、上記ドーパントはスルホコハク酸を100モル%含むのが好ましい態様の1つである。
また、導電性ポリマーとハロゲン化ポリマーとの相溶性に優れ、電気抵抗をより低くできる点から、上記ドーパントは、スルホコハク酸と、アルキルベンゼンスルホン酸および/またはアルキルナフタレンスルホン酸とを含むのが好ましい態様の1つである。ドーパントの添加時におけるスルホコハク酸とアルキルベンゼンスルホン酸および/またはアルキルナフタレンスルホン酸とのモル比(スルホコハク酸/アルキルベンゼンスルホン酸とアルキルナフタレンスルホン酸の合計)は、導電性ポリマーとハロゲン化ポリマーとの相溶性および電気抵抗のバランスに優れる点から、10/90〜90/10であるのが好ましく、20/80〜80/20であるのがより好ましく、30/70〜50/50であるのが更に好ましい。
【0025】
上記アルキルベンゼンスルホン酸は下記式(3)で表される化合物であり、上記アルキルナフタレンスルホン酸は下記式(4)で表される化合物である。
【0026】
【化3】

【0027】
上記式(3)中、R4は、炭素数1〜20のアルキル基であり、一般的には炭素数10〜14のアルキル基を持つアルキルベンゼンスルホン酸およびその塩が市販されている。価格面等から最も一般的なドデシル基がより好ましい。ドデシルベンゼンスルホン酸には、直鎖型と分岐型があるがどちらでも同じように用いることができる。
上記式(4)中、R5は、炭素数1〜20のアルキル基であり、炭素数2〜12のアルキル基が好ましく、入手が容易であることから炭素数4〜12のアルキル基がより好ましい。通常市販では、塩の形で扱われており、同様に使用可能である。
【0028】
上記ドーパントの含有量は、上記導電性ポリマーの構成単位と、ドーパントとのモル比(導電性ポリマーの構成単位/ドーパント)が、100/20〜100/200となる量であるのが好ましく、100/40〜100/100となる量であるのがより好ましい。ドーパントの含有量がこの範囲であると導電性に優れ(抵抗値小)、ハロゲン化ポリマーとの混合性に優れる。
【0029】
上記導電性ポリマーの含有量(導電性ポリマーとドーパントの合計)は、ハロゲン化ポリマー100質量部に対して5〜300質量部であり、10〜200質量部であるのがより好ましい。この範囲であると、電気抵抗を低くできるため、塗膜厚を薄くして光透過性を向上できる。また、塗料を塗布する基材との接着性も確保できる。
【0030】
<ハロゲン化ポリマー>
本発明の帯電防止塗料はバインダ樹脂としてハロゲン化ポリマーを含有する。
上記ハロゲン化ポリマーは、ハロゲン原子を有するポリマーであれば特に限定されないが、上記導電性ポリマーに該当するものは除かれる。
上記ハロゲン化ポリマーとしては、例えば、塩素化ポリオレフィン、クロロプレンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エピクロルヒドリンゴム、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、塗料化し易さ、基材との接着性という点から塩素化ポリオレフィンが好ましい。
【0031】
塩素化ポリオレフィンとしては、具体的には、例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性、汎用性という点から塩素化ポリプロピレンが好ましい。
【0032】
上記塩素化ポリオレフィンの塩素量は、10〜50質量%であるのが好ましい。塩素量がこの範囲であると、上記導電性ポリマーとの相溶性、溶剤への溶解性および接着性に優れる。
【0033】
上記ハロゲン化ポリマーとしては、酸変性されているハロゲン化ポリマーが上記導電性ポリマーとの相溶性に優れ、電気抵抗を低くできる点から好ましい。
酸変性のハロゲン化ポリマーは、例えば、無水マレイン酸等を有するオレフィン系ポリマーに公知の方法によって塩素ガスを導入していく方法で得ることができる。
【0034】
上記ハロゲン化ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、10,000〜100,000であるのが好ましい。この範囲であると塗料が塗布し易く、かつ、塗膜の強度が確保できる。
【0035】
本発明の帯電防止塗料は、低粘度化でき、作業性を向上できる点から、更に、溶剤を含有するのが好ましい。溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、他の成分との相溶性および揮発性に優れる点からトルエンが好ましい。
【0036】
溶剤量は、塗料を塗布する際の作業性および塗膜の性能(抵抗値、強度等)によって最適な膜厚にするために、自由に設定することができる。
溶剤の含有量は、上記ハロゲン化ポリマー100質量部に対して100〜100,000質量部であるのが好ましい。
【0037】
本発明の帯電防止塗料は、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤、反応遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤、分散剤、脱水剤、接着付与剤等の各種添加剤等を含有することができる。
【0038】
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物が挙げられる。
【0039】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0040】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
【0041】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
【0042】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、アエロジル(日本アエロジル(株)製)、ディスパロン(楠本化成(株)製)等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0043】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
【0044】
本発明の帯電防止塗料の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下のように行うことができる。
まず、反応容器に、アニリンモノマー、上記ドーパント、水および塩酸を加え、約0℃に冷却した後、適当な化学酸化重合触媒を加え、数時間保持して、ドーパントによりドープ接合されたポリアニリン(ドープポリアニリン)を合成する。これにメタノールを加え、ろ過した残渣を適当な混合ミキサー中で、上記ハロゲン化ポリマーおよび溶剤と十分に混合して、本発明の帯電防止塗料を得ることができる。
【0045】
本発明の帯電防止塗料から得られる塗膜の表面抵抗は、特に限定されないが、1×104〜9.9×109Ω/□であるのが好ましく、1×107〜5×109Ω/□であるのがより好ましい。
上記表面抵抗は、抵抗測定器(ダイアインスツルメンツ社製、ハイレスタIPとHRプローブ)を用いて測定した表面抵抗を意味する。
【0046】
上述した本発明の帯電防止塗料は、ハロゲン化ポリマーとの相溶性に優れるスルホコハク酸を10モル%以上含むドーパントを用いているため、導電性ポリマーとハロゲン化ポリマーとを均一に分散することができる。そのため、貯蔵安定性に優れ、更に、得られる塗膜の電気抵抗を低くできると共に、電気抵抗の湿度依存性も小さくできる。
また、ドープ接合されていないときの重量平均分子量が10,000を超える導電性ポリマーを含有するため、塗膜の電気抵抗を低くできる。
また、上記導電性ポリマーの含有量がハロゲン化ポリマー100質量部に対して5〜300質量部であるため、電気抵抗を低くでき、かつ、塗膜を施す基材との接着性を良好にすることができる。
また、本発明の帯電防止塗料は、特に基材としてポリオレフィン系材料を使用する際に極めて高い接着性を有する塗膜を提供できる。
更に、本発明の帯電防止塗料は、必ずしもカーボンブラックを含有しなくても導電性にできるので光透過率が高い材料を得ることができる。また、界面活性剤が材料表面にブリードする問題もない。
【0047】
また、本発明の帯電防止塗料は、得られる塗膜の表面抵抗を1×104〜9.9×109Ω/□の範囲にすることができる。そのため、用途に応じた電気抵抗に制御することができるので、広範な用途に用いることが可能であり、特に半導電性材料として有用である。
【0048】
次に、本発明の帯電防止材について説明する。
本発明の帯電防止材は、基材と、前記基材に本発明の帯電防止塗料を積層して得られる帯電防止層とを有する帯電防止材である。
【0049】
上記基材は、特に限定されないが、フィルムが好ましく、透明なフィルムがより好ましい。具体的には、例えば、ポリエステル;ナイロン;ポリオレフィン等のフィルムが挙げられる。これらの中でも、帯電防止層との接着性に優れる点からポリオレフィン系フィルムが好ましく、ポリプロピレンフィルムがより好ましい。
【0050】
本発明の帯電防止塗料を積層する方法は、特に限定されず、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、ハケ塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤバー法、ブレード法、ロールコーティング法、ディッピング法等で塗布した後、乾燥して、積層する方法が挙げられる。また、基材との2層押出方法、射出成形によるサンドイッチ方法、2枚のフィルムの熱融着等を採用することもできる。
【0051】
上記帯電防止層の厚さは、特に限定されないが、0.01μm〜2mmであるのが好ましく、0.05μm〜0.5μmであるのが価格、製造スピードの点からより好ましい。
【0052】
本発明の帯電防止材は、導電性ポリマーがバインダ樹脂に均一に分散されており、電気抵抗が低く、電気抵抗の湿度依存性が小さい。また、基材(特にポリオレフィン系基材)と帯電防止層との接着性に優れている。更に、光透過率が高く、ブリードの問題がない。
本発明の帯電防止材は、例えば、電子部品、電子材料等の包装材、保護フィルム;医療機関、クリーンルーム等の埃の存在が問題とされる場所等で使用される化粧材またはカーテン等の内装材等として好適に使用される。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
<導電性ポリマーの合成>
(合成例1)
アニリン1質量部、スルホコハク酸ナトリウム(リパール870P、ライオンアクゾ社製、スルホコハク酸70質量%灯油溶液、以下同じ)6.2質量部および蒸留水50質量部を混合した。次に、この混合液に6N塩酸1.8質量部を加えた。
この混合液を0℃に冷却した後、酸化剤として過硫酸アンモニウム2.7gを加えて、10時間酸化重合させた。
その後、メタノールを加えてポリアニリンを析出させ、ろ過して得られた固体を多量の蒸留水により洗浄して、余剰のスルホコハク酸や過硫酸アンモニウムの残分を除去して、60℃で真空乾燥し、ポリアニリンを得た。得られたポリアニリンをトルエンに分散させて、スルホコハク酸でドープされたポリアニリンを5質量%含むトルエン分散液とした。これを合成例1のポリアニリン分散液とする。
なお、ろ過終了時にポリアニリンの一部をとり、アンモニア水で脱ドープした後、NMPに溶解させ、GPCにより重量平均分子量を測定したところ、得られたポリアニリンの重量平均分子量は70,000であった。
【0055】
(合成例2)
ドーパントとしてスルホコハク酸ナトリウム3.1質量部とドデシルベンゼンスルホン酸(B121、テイカ社製、以下同じ)1.6質量部とを用いた以外は、合成例1と同様の方法でポリアニリンを合成した。なお、使用したスルホコハク酸とドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)とのモル比は50/50である。
合成例1と同様の方法でポリアニリンの重量平均分子量を測定したところ、得られたポリアニリンの重量平均分子量は150,000であった。
【0056】
(合成例3)
ドーパントとしてスルホコハク酸ナトリウム5.5質量部とドデシルベンゼンスルホン酸0.3質量部とを用いた以外は、合成例1と同様の方法でポリアニリンを合成した。なお、使用したスルホコハク酸とドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)とのモル比は90/10である。
合成例1と同様の方法でポリアニリンの重量平均分子量を測定したところ、得られたポリアニリンの重量平均分子量は170,000であった。
【0057】
(合成例4)
ドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸3.3質量部を用いた以外は、合成例1と同様の方法でポリアニリンを合成した。
合成例1と同様の方法でポリアニリンの重量平均分子量を測定したところ、得られたポリアニリンの重量平均分子量は180,000であった。
【0058】
<帯電防止塗料の調製>
(実施例1〜10および比較例1〜7)
下記第1表に示す各成分を、第1表に示す組成(質量部)で、ホモジナイザーを用いて5分間混合し、第1表に示される各塗料を得た。
得られた各塗料について下記の方法により外観および貯蔵安定性を評価した。また、各塗料を用いて下記の方法により作製した帯電防止材について接着性、光透過率、透明度および表面抵抗を評価した。結果を第1表に示す。
なお、第1表中「ポリアニリンの比率」は、バインダ樹脂100質量部に対するポリアニリンの固形分の質量部を示す。
【0059】
(外観)
得られた塗料を目視にて観察し、均一に混ざっているものを「○」、均一に混ざっていないものを「×」とした。
【0060】
(貯蔵安定性)
得られた塗料を50℃のオーブン中で1ヶ月間保管した後、外観を目視で観察した。保管前に対して変化のないものを「○」とし、分離、析出等の異常のあるものを「×」とした。
【0061】
(接着性)
ポリプロピレン(FB4BT、日本ポリプロ社製)をTダイ押出成形によって厚さ100μmのフィルムに成形した。それを5cm角に切断し、上記塗料をフィルムの上にスピンコータを用いて塗布した後、オーブン内で100℃で1分間乾燥して、厚さ0.5μmの帯電防止層を形成し、帯電防止材を得た。
得られた帯電防止材について、碁盤目テープ剥離試験を行った。
帯電防止材の帯電防止層に、1mmの基盤目100個(10×10)を作り、基盤目上にセロハン粘着テープ(幅18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端を直角に保ち、瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った基盤目の個数を調べた。
【0062】
(透明度)
得られた帯電防止材について、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM−150)により、全光透過率およびヘーズを求めた。
第1表中のデータは帯電防止材のデータからポリプロピレンフィルムのデータを差し引いたもので、塗膜(帯電防止層)のみのデータを記載した。
【0063】
(表面抵抗)
得られた帯電防止材について、抵抗測定器(ダイアインスツルメンツ社製、ハイレスタIPとHRプローブ)を用い、25℃、50%RHの条件下または60℃、85%RHの条件下において100Vにおける帯電防止層の表面抵抗を求めた。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
上記第1表に示す各成分は下記のとおりである。
・塩素化ポリプロピレン1(塩素化ポリプロピレン60質量%トルエン溶液):塩素化率41質量%、スーパークロン 814H、日本製紙ケミカル社製
・塩素化ポリプロピレン2(マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン20質量%トルエン溶液):塩素化率24.5質量%、スーパークロン 822、日本製紙ケミカル社製
・塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体20質量%トルエン溶液):塩素化率11.5質量%、スーパークロン A、日本製紙ケミカル社製
・塩素化ポリプロピレン3(塩素化ポリプロピレン15質量%トルエン溶液):塩素化率68質量%、スーパークロン HP215、日本製紙ケミカル社製
・ポリプロピレン:FB4BH、日本ポリプロ社製
・エチレン−グリシジルメタクリレート−メタクリレート共重合体:ボンドファースト 7M、住友化学社製
・固形ポリアニリン1(脱ドープ品):重量平均分子量10,000、試薬、アルドリッチ社製
・固形ポリアニリン2(脱ドープ品):重量平均分子量50,000、試薬、アルドリッチ社製
・スルホコハク酸ナトリウム(スルホコハク酸ナトリウム70質量%灯油溶液):リパール870P、ライオンアクゾ社製
・トルエン:試薬、アルドリッチ社製
・NMP:試薬、アルドリッチ社製
【0067】
上記第1表に示す結果から明らかなように、ドーパントがドデシルベンゼンスルホン酸のみであるポリアニリンを用いた比較例1の塗料は、ポリアニリンが凝集した粒が多く見られた。
重量平均分子量10,000の固形ポリアニリンを用いた比較例2は、ポリアニリンがトルエンに溶解しないため凝集した粒が多く見られた。溶剤をトルエンからNMPに変更した比較例3は、外観が改善したものの帯電防止効果を得るまでの表面抵抗にならなかった。
ポリアニリンの量が本発明の範囲よりも少ない比較例4は表面抵抗が高く、ポリアニリンの量が本発明の範囲よりも多い比較例5は接着性が低かった。
バインダ樹脂としてポリプロピレンを用いた比較例6は、ポリプロピレンが溶剤に溶解せずに凝集した。バインダ樹脂としてエチレン−グリシジルメタクリレート−メタクリレート共重合体を用いた比較例7は、ポリアニリンとバインダ樹脂の相溶性が悪く、凝集した粒が多く見られた。
一方、実施例1〜10は、ポリアニリンとバインダ樹脂が溶媒に均一に混ざっており、接着性、透明度および貯蔵安定性に優れ、表面抵抗が低く、表面抵抗の湿度依存性も小さかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーパントによってドープ接合されている導電性ポリマーと、ハロゲン化ポリマーとを含有する帯電防止塗料であって、
前記ドーパントがスルホコハク酸を10モル%以上含み、
前記導電性ポリマーが、ドープ接合されていないときの重量平均分子量が10,000を超える導電性ポリマーであり、
前記導電性ポリマーの含有量が、前記ハロゲン化ポリマー100質量部に対して5〜300質量部である、帯電防止塗料。
【請求項2】
前記導電性ポリマーがポリアニリン類である請求項1に記載の帯電防止塗料。
【請求項3】
前記ハロゲン化ポリマーが塩素化ポリオレフィンである請求項1または2に記載の帯電防止塗料。
【請求項4】
前記塩素化ポリオレフィンの塩素量が10〜50質量%である請求項3に記載の帯電防止塗料。
【請求項5】
前記ハロゲン化ポリマーが、酸変性されているハロゲン化ポリマーである請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止塗料。
【請求項6】
更に、溶剤を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の帯電防止塗料。
【請求項7】
基材と、前記基材に請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止塗料を積層して得られる帯電防止層とを有する帯電防止材。
【請求項8】
前記基材がフィルムである請求項7に記載の帯電防止材。
【請求項9】
前記基材がポリオレフィン系基材である請求項7または8に記載の帯電防止材。

【公開番号】特開2008−214375(P2008−214375A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49496(P2007−49496)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】