説明

帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルム

【課題】帯電防止剤の凝集物が少ない帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】実質的に粒子を含有しないポリエステル中に有機系帯電防止剤を0.1〜15重量%含有する帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、直径1μm以上の粗大物の個数が100(個/0.01g)以下であるポリエステルからなることを特徴とする帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤を練りこんだ帯電防止二軸配向ポリエステルフィルムに関し、特に、帯電防止剤の凝集物が少ない帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリエステルフィルムは優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性から各種光学用フィルムとして多く利用されている。
特に、LCDに用いられるプリズムレンズシート用のベースフィルムやハードコート加工、AR(アンチリフレクション)フィルム用のベースフィルム及びCRT用の破砕防止フィルムの用途は、優れた強度、寸法安定性が要求されるため比較的厚手のフィルムが好適に用いられる。この様な光学用フィルムに用いられるフィルムは優れた透明性とプリズムレンズ加工やハードコート加工、AR加工に対する優れた接着性が要求される他、フィルム中に含まれる微小な異物も光学的な欠点となるため極力少ないことが望まれ、この傾向は画像表示装置の高精細化にともない近年ますます強まっている。
【0003】
さらに、高い透明性を維持するためにはフィルムの表面を平滑にすることが重要であるが、微少な凹凸が表面に存在すると、透明性、ヘイズ等光学特性が低下し、品位の低下につながっていた。
【0004】
一方、ポリエステルフィルムは、優れた特性を有するが、プラスチックフィルム共通の問題として静電気が発生しやすく、製膜工程、加工工程、さらに製品の使用時などにおいて種々のトラブルを発生するという欠点がある。
【0005】
このような静電気障害の防止法として、(1)アニオン性化合物やカチオン性化合物あるいはいわゆる導電性粒子を塗布する方法、(2)金属化合物を蒸着する方法、(3)有機スルホン酸塩や有機リン酸塩などのアニオン性化合物を練り込む方法、などが知られている。
【0006】
アニオン性化合物やカチオン性化合物等の帯電防止剤を塗布する方法は該被覆層に粘着性が生じる場合が多く、フィルムの巻き取り性が著しく低下する。この巻き取り性の改良のため、無機粒子を大量に被覆層に添加すると透明性が低下し、光学用の基材フィルムとして用いる場合、好ましくない。滑り性改良のためポリエチレンワックスなどの滑り性改良剤を添加する方法もあるが、ハードコート層や、光拡散層、プルズム層との接着性が著しく低下する場合がある。また、導電性カーボンや導電性金属粒子を塗布する方法は、帯電防止効果が比較的良好であると共に比較的安価に製造できる利点があるものの、フィルムの透明性が悪化するという欠点がある。
【0007】
また、(2)の金属化合物を蒸着する方法は、帯電防止性に優れ、近年は透明導電性フィルムとして用途が拡大しつつあるものの、製造コストが高く、特定の用途には向いているが、一般の帯電防止性フィルムとしては利用し難い。
【0008】
また、(3)の帯電防止剤を練り込む方法は、安価に製造できるものの、有機系帯電防止剤がポリエステル樹脂中で均一に、かつ、微分散されていないために、効果に斑が生じる場合や、有機系帯電防止剤の凝集のために、フィルム表面に凹凸がみられる場合があり、透明性等の光学特性に劣るという問題点があった。
【0009】
特許文献1によればポリエステル樹脂を重合する段階で、帯電防止剤を0.1〜15重量%添加し、さらに、得られたポリエステル樹脂を再度、二軸押し出し機を用いて再押し出しし、帯電防止性の斑の低減と帯電防止剤の凝集物発生の低減を図っている。しかしながら、帯電防止性の斑は低減できるものの帯電防止剤の凝集物発生の低減効果は十分なものではなく、再押し出しによって樹脂の黄色味が増し、光学用途においては不適当なものであった。
【特許文献1】特許3629878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、帯電防止剤の凝集物が少ない帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、鋭意研究の結果、高度に精製した帯電防止剤をポリエステル樹脂の重合段階で添加することによって帯電防止剤の凝集物発生の極めて少ない帯電防止フィルムを得るに至った。
【0012】
すなわち、前記の課題は、以下の解決手段により達成することができる。
第1の発明は、実質的に粒子を含有しないポリエステル中に有機系帯電防止剤を0.1〜15重量%含有する帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、直径1μm以上の粗大物の個数が100(個/0.01g)以下であるポリエステルからなることを特徴とする帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルムである。
【0013】
第2の発明は、実質的に粒子及び有機系帯電防止剤を含有しない二軸配向ポリエステルフィルム(A層)の少なくとも片面に、第1の発明に記載の帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルム(B層)を積層してなる帯電防止性積層二軸配向ポリエステルフィルムである。
【0014】
第3の発明は、さらに、密着性改質樹脂と粒子を含む組成物からなる被覆層(C層)を設けてなる第1または第2の発明に記載の帯電防止性積層二軸配向ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルムは、帯電防止性能を有し、帯電防止剤に由来する粗大凝集物が極めて少ないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明において、フィルムの原料として用いられるポリエステル組成物は、実質的に粒子を含有しないポリエステル中に有機系帯電防止剤を0.1〜15重量%含有する。
【0017】
ポリエステルとしては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(エチレンー2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)が好ましい。なお、本発明の目的を阻害しない範囲内で、2種以上のポリマーを混合してもよいし、共重合ポリマーを用いてもよい。また、本発明の目的を阻害しない範囲内で酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤などの添加剤が通常添加される程度添加されていてもよい。
【0018】
また、本発明において、フィルムの原料として用いられるポリエステル組成物には、フィルム加工後の易滑性付与を目的とした粒子は添加されていない。フィルムの製造工程でインラインで積層される易接着層に、均一な粒径の微小粒子を含有させて、滑り性を付与すれば、良好な巻き取り性、キズ発生防止機能を付与できる。そのため、ポリエステル系基材フィルム中の粒子は不要であるし、高透明フィルムを得るにはポリエステル系基材フィルム中への粒子は添加しない方が適している。
【0019】
本発明のフィルムの原料として用いられるポリエステル組成物は、有機系帯電防止剤を0.1〜15重量%含有する。有機系帯電防止剤としては特に限定されないが、炭素数が14〜28の脂肪酸と炭素数が5〜34のアルコールからなる、通常、ワックスと呼ばれる高級エステル、または、アルキルスルホン酸金属塩誘導体等が好ましく例示される。なかでも炭素数が18〜22の2価の脂肪酸と6〜18のアルコールからなる高級エステル、または、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩が特に好ましい。
【0020】
有機系帯電防止剤の含有量は、添加剤の微分散の点から0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。含有量がこの範囲より少ないと他の期待される効果、例えば、帯電防止性等の効果が少なく、この範囲より多いと添加剤の微分散状態が良好でも、ポリエステルの他の物性、例えば、融点等が低下するためにフィルムに加工した際に機械的強度など物性が低下する場合がある。
【0021】
本発明において有機系帯電防止剤はポリエステル組成物の重合段階において添加する。また、本発明では有機系帯電防止剤は高度に精製した後に添加することが重要である。
具体的な精製方法については後述する。
【0022】
次に、本発明でフィルム原料として使用するポリエステル組成物の好ましい製造方法をポリエチレンテレフタレートを例に説明するが、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明のポリエステルフィルムに用いるポリエステルは、重縮合触媒を使用し、必要に応じてマグネシウム化合物とリン化合物等を抵抗調整剤、耐熱性改良剤として添加することによって製造できる。その詳細についは後述する。
【0024】
本発明のポリエステルフィルムに用いるポリエステルは、目的の高度の清澄度を有する観点から、主たるエステル単位(繰り返し単位)がエチレンテレフタレートからなるものが好適であり、具体的には、全エステル単位(繰り返し単位)の好ましくは80モル%以上(より好ましくは90〜100モル%)がエチレンテレフタレートからなるものが好適である。
【0025】
共重合成分としては、ジカルボン酸成分として、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類等が挙げられる。また、グリコール成分として、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族グリコール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール類;p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール等の芳香族グリコール類等が挙げられる。かかる共重合成分は、ジカルボン酸成分及びグリコール成分のいずれにおいても、いずれか1種を単独で使用しても、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0026】
本発明の帯電防止ポリエステルフィルムに用いるポリエステルの重縮合触媒として、アンチモン化合物を使用する場合、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイド等が挙げられ、これらはいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。特に三酸化アンチモンが好ましい。
【0027】
当該アンチモン化合物は、最終的に得られるポリエステルに対するアンチモン原子の含有量が100〜200ppmとなる量を添加するのが好ましく、100ppm未満であると重合生産性が低下し、逆に、200ppmを超えると、不溶性の異物を生じやすくなる。より好ましいアンチモン原子の含有量は140〜170ppmである。
【0028】
なお、本発明において、重合触媒には、上記アンチモン化合物以外のものを併用してもよく、該アンチモン化合物以外の重合触媒としては、例えば、ゲルマニウム化合物、チタン化合物などが挙げられる。これらの使用量は、それぞれ、最終的に得られるポリエステルに対するゲルマニウム原子またはチタン原子の含有量が多くても50ppm以下となる量である。
【0029】
本発明のポリエステルフィルムに用いるポリエステル樹脂は、重縮合触媒を使用し、かつ、有機系帯電防止剤等を添加して製造できる。その際にエステル化反応缶を常圧以上の圧力にし、この段階で有機系帯電防止剤及び必要に応じてマグネシウム化合物とリン化合物等の抵抗調整剤、耐熱性改良剤を添加することが好ましい。また、3缶以上のエステル化反応缶を用いてエステル化反応を行い有機系帯電防止剤は前記3缶以上のエステル化反応缶のうちの2缶以上の反応缶に分けて添加するのが均質に混合させる上でさらに好ましい。
【0030】
なお、かかる本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、重合触媒の添加時期は特に制限されない。すなわち、エステル化反応における初期段階で添加しておいても、その後に添加してもよい。また、有機系帯電防止剤及び必要に応じてマグネシウム化合物とリン化合物等の抵抗調整剤、耐熱性改良剤は、供給精度の点からエチレングリコール溶液として添加するのが好ましい。
【0031】
また。3缶以上のエステル化反応缶における缶内(反応系)温度は通常240〜280℃、好ましくは255〜265℃である。240℃未満では、反応速度が低下するので、好ましくなく、逆に、280℃を超えると有機系帯電防止剤が変質する場合があり、また、DEGの副生量が増大し、さらには、生成ポリマーの色相が変化する傾向を示すので好ましくない。また、エステル化反応缶はポリエステルの製造効率の観点からは、5缶以下とするのが好ましい。
【0032】
また、最終生成物(ポリマー)はろ過してから、チップ化されるのが好ましい。かかるろ過には、通常、目開き3〜20μm程度のフィルターが使用されるが7μm以下好ましくは5μm以下である。
【0033】
本発明の基材のポリエステルフィルム中には、粒子が実質的に含有されていない。粒子が実質的に含有されていないとは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分などが混入する場合があるためである。
【0034】
(有機系帯電防止剤の精製)
一般に、アルキルスルホン酸金属塩誘導体のような有機系帯電防止剤は前記エステル化反応缶工程等に添加し、撹拌された状態であっても、この有機系帯電防止剤の凝集体が存在し、重合が完了したポリエステル樹脂を使用し帯電防止機能を有するポリエステルフィルムを製造した際、この凝集物が核となり、凹凸を生じさせ、透明性等光学特性を低下させる。また、必要な帯電防止機能が得られなくなる場合もある。これを防止するために本発明では有機系帯電防止剤を添加する前に高度な精製を行うことが重要である。
【0035】
有機系帯電防止剤中の凝集物含有量を低減させる方法には特に制限はないが、例えば以下に記載の方法が挙げられる。有機系帯電防止剤を溶媒に溶解させて溶液化し、当該溶液を液温度15℃以上、35℃未満の条件下で濾過粒子サイズ0.5μm以上、1μm以下のフィルターで濾過し、次いで50℃以上、70℃未満に加温した後、さらに15℃以上、35℃未満に冷却し、この条件下で濾過粒子サイズ0.5μm以上、1μm以下のフィルターで濾過して凝集体を除去する方法が好ましい。
【0036】
有機系帯電防止剤を溶媒に溶解させて溶液化する際の溶媒としては、有機系帯電防止剤が溶解する限り特に制限はなく、例えば、水溶性または水分散性のポリエステル樹脂については、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が好適に使用でき、水、イソプロピルアルコールが最も好ましい。
【0037】
溶液化についてさらに詳述すれば、例えば、有機系帯電防止剤に溶媒を加えて攪拌し、固形分濃度2質量%〜溶解限界濃度、好ましくは5質量%〜溶解限界濃度の溶液とする。この溶液は、このまま静置し、粗大な凝集物を沈降させる。静置時間としては、5〜20日間が好ましく、静置時の温度は35℃未満が好ましい。35℃以上では凝集物の沈降が十分に行われない場合がある。この静置したものより、その上澄み液の好ましくは約10分の9を取り出し、精密濾過処理に供する。精密濾過処理により、静置期間中に生成した凝集物が除去される。
【0038】
当該精密濾過に使用される濾材は、濾過性能として濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が1μm以下、0.5μm以上である。当該範囲内で濾過性能が異なる2種以上のフィルターを組み合わせて用いることがさらに好ましい。濾過粒子サイズが1μmを超えると、凝集物の除去が不十分となりやすい。濾過性能が0.5μm未満の場合は濾過圧力が高くなり濾過効率が悪くなる。濾過性能が異なるフィルターを組み合わせて用いる場合、濾過粒子サイズの大きいフィルターから順次細かいフィルターとするのが効果的である。
【0039】
溶液を精密濾過するための濾材のタイプは、上記性能を有していれば特に限定はなく、例えば、フィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。溶液を精密濾過するための濾材の材質は、上記性能を有しかつ溶液に悪影響を及ばさない限り特に限定はなく、例えば、ステンレス鋼、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。フィルターを通過する濾過回数は2回以上、好ましくは5回以上、さらに好ましくは20回以上である。濾過回数に上限はないが、効率を考慮すると最大でも、50回程度でよい。
【0040】
次いで、この溶液の濾液を50℃以上、70℃未満、好ましくは55℃以上、65℃未満まで加温する。この時、溶液の温度を均一に保つために、必要に応じて攪拌することが好ましい。加温時間は1時間以上、3時間未満が好ましい。1時間未満では十分な効果が得られない。また3時間以上でも効果は変わらない。
【0041】
その後、温度を下げ、静置して微細な凝集物を沈降させて再び精密濾過処理を行う。この再濾過処理により、再度生成した凝集物が除去されるのである。静置時間としては、2〜10時間が好ましく、静置時の温度は30℃未満が好ましい。再濾過処理に用いるフィルターの濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)は0.5〜1μmである。濾過温度は15℃以上、35℃未満であり、20℃以上、35℃未満が好ましい。また、フィルターを通過する濾過回数は2回以上、好ましくは5回以上、さらに好ましくは20回以上である。濾過回数に上限はないが、効率を考慮すると最大でも、50回程度でよい。
【0042】
次いで得られた溶液をエチレングリコールに任意の割合で混合し、加温して、エチレングリコール以外の溶媒を10%以下になるまで蒸発させる。
得られた有機系帯電防止剤のエチレングリコール溶液を所定の配合量になるように添加する。
【0043】
以上に例示されたような精製処理等により得られる帯電防止剤を用いることにより、帯電防止剤に由来する凝集物の含有量が少ないポリエステル樹脂が得られ、効果的に、本発明が規定する直径1μm以上の粗大物の個数が100(個/0.01g)以下の光学特性の優れた帯電防止性能を有するポリエステル樹脂フィルムが得られる。
また、本発明で基材として使用するポリエステルフィルムの層構成は単層でもよいし、少なくとも片面が有機系帯電防止剤を含む層が積層された構造とすることもできる。積層構造とする場合には、共押出法が好適である。
【0044】
中間層に有機系帯電防止剤を含まないポリエステル樹脂からなる層、両表面の層は有機系帯電防止剤を含む層とした場合、有機系帯電防止剤の使用量低減させることができるため、経済的であるばかりでなく、有機系帯電防止剤に由来する凝集物の単位面積あたりの総数を低減させることができより好ましい。
【0045】
基材のポリエステルフィルムの製造方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。前記方法で得られた有機系帯電防止剤を含有し、実質的に易滑性付与を目的とした粒子含有していない熱可塑性樹脂のペレットを十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、溶融温度以上でシート状に溶融押出しし、冷却固化せしめて未配向熱可塑性樹脂シートを製膜する。
【0046】
ペレットを移送するには通常、所定の配管を用いて空送で行うがこの際の空気は埃混入防止のため、HEPAフィルターを用い、清浄化された空気を用いることが好ましい。この際に用いるHEPAフィルターは公称濾過精度0.5μm以上の埃を95%以上カットの性能を有するフィルターを用いるのが好ましい。
【0047】
この際、溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行う。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は特に限定はされないがステンレス焼結体の濾材がSi、Ti、Sb、Ge、Cu、を主成分とする凝集物及び高融点有機物の除去性能に優れ好適である。
【0048】
さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は15μm以下が好ましい。15μm以上では20μm以上の異物が十分除去できない。(初期濾過効率95%)は15μm以下の濾材を使用して溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより生産性が低下する場合があるが光学欠点の少ない光学用フィルムを得るには必要不可欠である。
【0049】
得られた未延伸シートを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して一軸配向PETフィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して80〜180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き160〜240℃の熱処理ゾーンに導き、1〜60秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で必要に応じて幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0050】
この工程中の任意の段階でポリエステルフィルムの少なくとも片面に、接着性を改質するための塗布液を塗布する。本発明の光学用積層ポリエステルフィルムに積層される、密着性改質樹脂と粒子を含む組成物からなる被覆層とは、積層ポリエステルフィルムにハードコート層を積層するときに密着性を高める作用をするものである。
【0051】
この被覆層の密着性改質樹脂としては、例えば共重合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合体、マレイン酸グラフト変性のポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフインなどが挙げられ、少なくともこれらの樹脂を単独で使用するか、これらの樹脂をポリマーブレンドすることにより使用する。共重合ポリエステル系樹脂のみからなる単独層では、密着性が不足する場合には、ポリマーブレンドが推奨される。なかでも、共重合ポリエステル系樹脂、ポリエステル樹脂のブレンド、共重合ポリエステル系樹脂及とポリウレタン系樹脂のブレンド、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリル系樹脂が優れた密着性を有し、特に好ましい。各樹脂の両者のブレンド比は、干渉縞の発生や、密着性などの事情を考慮して、質量比で10〜90:90〜10の割合でブレンドすることが好ましい。
【0052】
被覆層に用いる前記の共重合ポリエステル系樹脂を用いる場合の共重合ポリエステル系樹脂とは、分岐したグリコール成分を構成成分とすることが好ましい。分岐したグリコール成分とは、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2、2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2、2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、及び2、2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0053】
上記の分岐したグリコール成分は、全グリコール成分に対し、好ましくは10モル%以上の割合で、さらに好ましくは20モル%以上の割合で含有される。上記化合物以外のグリコール成分としてはエチレングリコールが最も好ましい。少量であれば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは1,4シクロヘキサンジメタノールなどを用いても良い。
【0054】
また、前記の共重合ポリエステル樹脂に含有される、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸およびイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が最も好ましい。少量であれば他のジカルボン酸;ジフェニルカルボン酸及び2,6−ナルタレンジカルボン酸の芳香族ジカルボン酸を加えて共重合させてもよい。
【0055】
上記のジカルボン酸成分の他に、水分散性を付与させるため、5−スルホイソフタル酸またはそのアルカリ金属塩を1〜10モル%の範囲で使用するのが好ましい。例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレンイソフタル酸−2,7−ジカルボン酸および5−(4−スルフォフェノキシ)イソフタル酸及びその塩類等を挙げることができる。
【0056】
次に、本発明の帯電防止ポリエステルフィルムを構成する被覆層を構成する樹脂について、ポリウレタン樹脂を用いる場合について説明する。
【0057】
ポリウレタン樹脂とは、例えば、ブロック型イソシアネート基を含有する樹脂であって、末端イソシアネート基を親水性基で封鎖(以下ブロックと言う)した、熱反応型の水溶性ウレタンなどが挙げられる。上記イソシアネート基のブロック化剤としては、重亜硫酸塩類及びスルホン酸基を含有したフェノール類、アルコール類、ラクタム類オキシム類及び活性メチレン化合物類等が挙げられる。
【0058】
ブロック化されたイソシアネート基はウレタンプレポリマーを親水化あるいは水溶化する。フィルム製造時の乾燥あるいは熱セット過程で、上記樹脂に熱エネルギーが与えられると、ブロック化剤がイソシアネート基からはずれるため、上記樹脂は自己架橋した編み目に混合した水分散性共重合ポリエステル樹脂を固定化するとともに上記樹脂の末端基等とも反応する。塗布液調整中の樹脂は親水性であるため耐水性が悪いが、塗布、乾燥、熱セットして熱反応が完了すると、ウレタン樹脂の親水基すなわちブロック化剤がはずれるため、耐水性が良好な塗膜が得られる。
【0059】
上記ブロック化剤の内、熱処理温度、熱処理時間が適当で、工業的に広く用いられるものとしては重亜硫酸塩類が最も好ましい。
【0060】
上記樹脂において使用される、ウレタンプレポリマーの化学組成としては(1)分子内に2個以上の活性水素原子を有する、有機ポリイソシアネート、あるいは分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する分子量が200〜20,000の化合物、(2)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する、有機ポリイソシアネート、あるいは、(3)分子内に少なくとも2個活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応せしめて得られる、末端イソシアネート基を有する化合物である。
【0061】
上記(1)の化合物として一般に知られているのは、末端又は分子中に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基あるいはメルカプト基を含むものであり、特に好ましい化合物としては、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。
【0062】
ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレンオキシド及び、プロピレンオキシド等アルキレンオキシド類、あるいはスチレンオキシドおよびエピクロルヒドリン等を重合した化合物、あるいはそれらのランダム重合、ブロック重合あるいは多価アルコールへの付加重合を行って得られた化合物がある。
【0063】
ポリエステルポリオール及びポリエーテルエステルポリオールとしては、主として直鎖状あるいは分岐状の化合物が挙げられる。コハク酸、アジピン酸、フタル酸及び無水マレイン酸等の多価の飽和あるいは不飽和カルボン酸、あるいは該カルボン酸無水物等と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の多価の飽和及び不飽和のアルコール類、比較的低分子量のポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類、あるいはそれらアルコール類の混合物とを縮合することにより得ることができる。
【0064】
さらに、ポリエステルポリオールとしては、ラクトン及びヒドロキシ酸から得られるポリエステル類、またポリエーテルエステルポリオールとしては、あらかじめ製造されたポリエステル類にエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド等を付加せしめたポリエーテルエステル類も使用することができる。
【0065】
上記(2)の有機ポリイソシアネートとしては、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。
【0066】
上記(3)の少なくとも2個の活性水素を有する鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。
【0067】
上記(3)のウレタンポリマーを合成するには、通常、上記鎖伸長剤を用いた一段式あるいは多段式イソシアネート重付加方法により、150℃以下、好ましくは70〜120℃の温度において、5分ないし数時間反応させる。活性水素原子に対するイソシアネート基の比は、1以上であれば自由に選べるが、得られるウレタンプレポリマー中に遊離のイソシアネート基が残存することが必要である。さらに遊離のイソシアネート基の含有量は10質量%以下であればよいが、ブロック化された後のウレタンポリマー水溶液の安定性を考慮すると、7質量%以下であるのが好ましい。
【0068】
得られた上記ウレタンプレポリマーは、好ましくは重亜硫酸塩を用いてブロック化を行う。重亜硫酸塩水溶液と混合し、約5分〜1時間、よく攪拌しながら反応を進行させる。反応温度は60℃以下とするのが好ましい。その後、水で希釈して適当な濃度にして、熱反応型水溶性ウレタン組成物とする。該組成物は使用する際、適当な濃度および粘度に調製するが、通常80〜200℃前後に加熱すると、ブロック剤の重亜硫酸塩が解離し、活性なイソシアネート基が再生するために、プレポリマーの分子内あるいは分子間で起こる重付加反応によってポリウレタン重合体が生成する場合や、また他の官能基への付加反応を起こす場合がある。
【0069】
上記に説明したブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)の1例としては、第一工業製薬(株)製の商品名エラストロンが代表的に例示される。エラストロンは、重亜硫酸ソーダによってイソシアネート基をブロックしたものであり、分子末端に強力な親水性を有する、カルバモイルスルホネート基が存在するため、水溶性となっている。
【0070】
本発明で使用される、分岐したグリコール成分を含有する共重合ポリエステル樹脂(A)およびブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)を混合して塗布液を調製する場合、樹脂(A)と樹脂(B)の質量比は(A):(B)=90:10〜10:90が好ましく、更に好ましくは(A):(B)=80:20〜20:80の範囲である。固形分質量に対する上記樹脂(A)の割合が10質量%未満では、基材フィルムへの塗布性が不適で、表面層と該フィルムとの間の密着性が不十分となる。10質量%未満の場合には、UV硬化タイプのハードコートにおいては実用性のある密着性が得られない。
【0071】
本発明で使用される水性塗布液には、熱架橋反応を促進させるため、触媒を添加しても良く、例えば無機物質、塩類、有機物質、アルカリ性物質、酸性物質および含金属有機化合物等、種々の化学物質が用いられる。また水溶液のpHを調節するために、アルカリ性物質あるいは酸性物質を添加してもよい。
【0072】
上記水性塗布液を基材フィルム表面に塗布する際には、該フィルムへの濡れ性を上げ、塗布液を均一にコートするために、公知の界面活性剤を必要量添加して用いることができる。塗布液に用いる溶剤は、水の他にエタノール、イソプロピルアルコールおよびベンジルアルコール等のアルコール類を、全塗布液に占める割合が50質量%未満となるまで混合してもよい。さらに、10質量%未満であれば、アルコール類以外の有機溶剤を溶解可能な範囲で混合してもよい。ただし、塗布液中、アルコール類とその他の有機溶剤との合計は、50質量%未満とする。
【0073】
有機溶剤の添加量が50質量%未満であれば、塗布乾燥時に乾燥性が向上するとともに、水のみの場合と比較して塗布膜の外観向上の効果がある。50質量%を越えると、溶剤の蒸発速度が速く塗工中に塗布液の濃度変化が起こり、粘度が上昇して塗工性が低下するために、塗布膜の外観不良を起こす恐れがあり、さらには火災などの危険性も考えられる。
【0074】
塗布液の溶液粘度は1.0PaS(パスカルセック)以下が好ましい。1.0PaS(パスカルセック)以上ではスジ状の塗布厚み斑が発生しやすい。
【0075】
この被覆層は、密着性改質樹脂と粒子を含む組成物からなる。
前記の粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカ等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。
【0076】
これらの粒子の中でも、シリカがポリエステル樹脂と屈折率が比較的近く高い透明性が得やすいため最も好適である。この粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡法による円相当径で0.01〜3μmのものが使用できるが、本発明のポリエステルフィルムを光学機能フィルムの基材として用いる場合には、好ましい粒子の平均粒子径は0.02〜1.0μmである。乾燥後の塗布層中の粒子の含有量は、密着性改質樹脂、ポリエステル樹脂等の屈折率、透明性に影響しないという点を考慮して任意に決めうるが、通常は0.05〜30質量%、具体的には2〜20質量%とすることが好ましい。
【0077】
具体的な実施態様の粒子の平均粒径は、通常1.0μm以下、好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。平均粒径が1.0μmを超えるとフィルム表面が粗面化し、フィルムの透明性が低下する傾向がある。また、上記塗液中に含まれる粒子含有量は、通常、塗布、乾燥後で塗布膜の粒子含有量が30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下になるよう添加する。塗布膜の粒子含有量が30質量%を超えると、フィルムの透明性が悪化するだけでなく、密着性が損なわれる場合もある。
【0078】
被覆層中に、上記粒子を2種類以上配合してもよく、同種の粒子で粒径の異なるものを配合してもよい。いずれにしても、粒子全体の平均粒径、および合計の含有量が上記した範囲を満足することが好ましい。上記塗布液を塗布する際には塗布液中の粒子の粗大凝集物を除去するために塗布直前に塗布液が精密濾過されるように濾材を配置することが重要である。
【0079】
上記水性塗布液を塗布するには、公知の任意の方法で行うことができる。例えばリバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法およびカーテン・コート法などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【0080】
上記、塗布液を塗布する際のクリーン度は埃の付着を少なくするためクラス1000以下が好ましい。
【0081】
上記水性塗布液を塗布する工程は、通常の塗布工程、すなわち二軸延伸し熱固定した基材フィルムに塗布する工程でもよいが、該フィルムの製造工程中に塗布することがより好ましい。さらに好ましくは結晶配向が完了する前の基材フィルムに塗布する。水溶液中の固形分濃度は通常30重量%以下であり、好ましくは10重量%以下である。該水性塗布液は、走行しているフィルム1m2あたり0.04〜5g、好ましくは0.2〜4gが付着されるように塗工される。該水性塗布液が塗布されたフィルムは、延伸および熱固定のためにテンターに導かれ、そこで加熱されて、熱架橋反応により安定な被膜を形成し、ポリエステル系績層フィルムとなる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例においてTPAはテレフタル酸、EGはエチレングリコール。また、各特性、物性値は下記の試験方法で測定した。
【0083】
(1)粗大物の個数
実施例、及び比較例で得られた2軸延伸ポリエステルフィルムの被覆層を、メチルエチルケトンを含浸させたキムワイプ(WIPRS S200:クレシア社製)を用いてふき取り除去した。なお、被覆層を除去しうる溶剤であればメチルエチルケトン以外の溶剤でも構わない。
【0084】
被覆層を除去したフィルムを0.2mg秤量し、カバーガラス上で270℃にて溶融する。同じカバーガラスで上からプレスし、急冷する。NIRECO社製イメージアナライザー(Luzex−Fs)を用い、透過暗視野法で大きさ1μm以上の異物個数を顕微鏡で測定した。この時、対物レンズとして、CF Plan DM 40Xを用いた。
【0085】
実施例1
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を使用し、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間、反応温度255℃で反応させた。
【0086】
次に、上第1エステル化反応缶内の反応性生物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、さらに、生成PETに対してドデシルベンゼンスルホン酸リチウム塩が5重量%になる量の後述する方法で精製されたドデシルベンゼンスルホン酸リチウム塩のEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で260℃で反応させた。
【0087】
さらに、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で260℃で反応させた。
上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、さらに、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度5μm粒子90%カット)で濾過し、極限粘度0.62dl/gのポリエステル樹脂ペレット(A)を得た。
【0088】
(1)有機系帯電防止剤のEG溶液の調整
ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム塩の20質量%水分散液を10日間静置し、その上澄み液の約10分の9を取り出した。この水溶液を、液温度25℃の条件下で濾過粒子サイズが5μmのフェルト型フィルターで循環回数5回になるまで濾過し、さらに濾過粒子サイズが1μmのフェルト型フィルターで循環回数30回になるまで濾過した。次いで60℃に加温して2時間保持した後、さらに25℃の条件下で濾過粒子サイズが1μmのフェルト型フィルターで循環回数5回になるまで濾過した。
次いで、得られた水溶液をエチレングリコールに1:1の割合で混合し、次いで加温し、水を1重量%以下になるまで留去させた。
【0089】
(2)塗布液の調整
本発明に用いる塗布液を以下の方法に従って調製した。
ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール45質量部、酢酸亜鉛0.1質量部および三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムイソフタル酸6.0質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10〜0.2mmHg)で2時間かけて重縮合反応を行い、分子量19500、軟化点60℃のポリエステル樹脂を得た。
【0090】
得られた共重合ポリエステル樹脂の30質量%の水分散液を6.7質量部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン樹脂の20質量%の水溶液(第一工業製薬製:商品名エラストロンH−3)を40部、エラストロン用触媒(Cat64)を0.5質量部、水を47.8質量部およびイソプロピルアルコールを5質量部、それぞれ混合し、さらに界面活性剤を1質量%、コロイダルシリカ(日産化学工業社製、スノーテックスOL)を5質量%添加し塗布液とした。
【0091】
前記方法で得たポリエステル樹脂ペレット(A)を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出して、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。
【0092】
この時、溶融樹脂の異物除去用濾材として濾過粒子サイズ15μm(初期濾過効率95%)のステンレス製焼結濾材を用いた。次にこのキャストフィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。
【0093】
その後、前記塗布液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)25μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で片面に塗布液を塗布、乾燥した。塗布後引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して130℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に4.0倍に延伸し、さらに230℃で10秒間熱固定を行ない、130℃で横方向に3%弛緩処理し、厚さ125μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。この時の被覆層の厚さは0.07μmであった。
【0094】
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムを前述の粗大物の個数測定方法にて評価した結果、粗大物は39個/0.01gであった。
【0095】
実施例2
以下に示す方法でA/B/Aの3層構造を有する基材ポリエステルフィルムを共押し出し法を用いて製膜した。なお、A層は実施例1で得た有機系帯電防止剤を含むポリエステル樹脂を用い、B層は粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレット(東洋紡績社製、RE−553)を用いた。
【0096】
A層用ポリエステル樹脂原料として、実施例1と同様のドデシルベンゼンスルホン酸リチウム塩を5質量%含有するポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した。次いで、押出機1に、B層用原料として粒子を含有しないポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(東洋紡績製、RE−553)を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2つのポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm以上の粒子を95%カット)で濾過し、3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、B層、A層、B層の厚さの積層比が10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0097】
この製膜の際、溶融樹脂の異物除去用濾材として濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)15mのステンレス製焼結濾材を用いた。次にこの未延伸フィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後、周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。
【0098】
その後、実施例1と同様の方法で被覆層を有する厚さ125μmの2軸延伸リエステルフィルムを得た。
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムを前述の粗大物の個数測定方法にて評価した結果、7個/0.01gであった。
【0099】
実施例3
生成PETに対するドデシルベンゼンスルホン酸リチウム塩の含有量が13質量%となるように配合量を変更したこと以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂ペレット(B)を得た。次いで、実施例1と同様の方法で被覆層を有する厚さ125μmの2軸延伸リエステルフィルムを得た。
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムを前述の粗大物の個数測定方法にて評価した結果、粗大物の個数は95個/0.01gであった。
【0100】
実施例4
生成PETに対するドデシルベンゼンスルホン酸リチウム塩の含有量が0.3重量%となるように配合量を変更したこと以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂ペレット(C)を得た。次いで、実施例1と同様の方法で被覆層を有する厚さ125μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムを前述の粗大物の個数測定方法にて評価した結果、粗大物の個数は5個/0.01gであった。
【0101】
比較例1
エステル化反応装置として、実施例1と同様の攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を使用し、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間、反応温度255℃で反応させた。
【0102】
次に、上第1エステル化反応缶内の反応性生物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、さらに、生成PETに対してドデシルベンゼンスルホン酸リチウム塩が5重量%になる量の精製されていないドデシルベンゼンスルホン酸リチウム塩のEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で260℃にて反応させた。
【0103】
次に、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で260℃にて反応させた。
【0104】
上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、さらに、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度5μm粒子90%カット)で濾過し、極限粘度0.620dl/gのポリエステル樹脂ペレットを得た。このペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押し出し機に供給し、約280℃で再度ペレット状に溶融押し出し、ポリエステル樹脂ペレット(D)を得た。
【0105】
次いで、実施例1と同様の方法で被覆層を有する厚さ125μmの2軸延伸リエステルフィルムを得た。
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムを前述の粗大物の個数測定方法にて評価した結果、粗大物の個数は145個/0.01mgであった。
【0106】
比較例2
生成PETに対してドデシルベンゼンスルホン酸リチウム塩の含有量が20質量%となるように配合量を変更したこと以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂ペレット(E)を得た。次いで、実施例1と同様の方法で被覆層を有する厚さ125μmの2軸延伸リエステルフィルムを得た。
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムを前述の粗大物の個数測定方法にて評価した結果、粗大物の個数は197個/0.01gであった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルムは、帯電防止性能を有し、帯電防止剤に由来する粗大凝集物が極めて少ないため、光学機能性フィルムの基材フィルムとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に粒子を含有しないポリエステル中に有機系帯電防止剤を0.1〜15重量%含有する帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、直径1μm以上の粗大物の個数が100(個/0.01g)以下であるポリエステルからなることを特徴とする帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
実質的に粒子及び有機系帯電防止剤を含有しない二軸配向ポリエステルフィルム(A層)の少なくとも片面に、請求項1に記載の帯電防止性二軸配向ポリエステルフィルム(B層)を積層してなる帯電防止性積層二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
さらに、密着性改質樹脂と粒子を含む組成物からなる被覆層(C層)を設けてなる請求項1または2に記載の帯電防止性積層二軸配向ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2007−254640(P2007−254640A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82629(P2006−82629)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】