説明

帯電防止用粘着剤および帯電防止用粘着シート

【課題】本発明の目的は、高い帯電防止能を発揮し、透明性・耐湿熱性を併せ持ち、被着体汚染が発生しない帯電防止用粘着剤および帯電防止用粘着シートを提供することを目的とする。
【解決手段】アクリル系樹脂(A)と、化学式(1)で表されるアニオンとカチオン(B)からなるイオン性化合物とを含むことを特徴とする帯電防止用粘着剤。前記カチオン(B)が、一般式(2)〜(5)で表される一種以上のカチオンを含み、前記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が−85〜0℃であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離ライナーを剥がしたときの剥離帯電が少なく、かつ静電気の帯電が少ない帯電防止用粘着剤、および帯電防止用粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、粘着シートは、粘着層の保護を目的として、剥離ライナーが粘着層に貼り合わされており、使用に際しては、剥離ライナーを剥離して被着体に貼り付けられる。この剥離ライナーを剥離する際に粘着シートに静電気が帯電し、ほこりやゴミが付着し外観不良が発生する。
【0003】
これらの静電気の帯電を抑制する試みとして、粘着剤に低分子の界面活性剤を添加することで帯電防止する方法(特許文献1参照)が開示されている。しかし、かかる方法は、添加した低分子の界面活性剤が粘着層表面にブリードし易く、表面保護フィルムに適用した場合、被着体が汚染され、被着体に曇りが生じる問題がある。
【0004】
その他にも、特許文献2、特許文献3および特許文献4には、それぞれエレクトロニクス用途、保護フィルム用途および偏光板固定用途において使用される粘着剤に、帯電防止剤としてアルカリ金属塩を含有する帯電防止性粘着剤が開示されている。しかし、電気製品や電子部品に使用される材料に、金属イオン含有する帯電防止性粘着剤を用いることは汚染の懸念があり、さらには金属イオンを含有する粘着剤は親水性が高いため、粘着シートとしての耐湿熱性が低下する。
【0005】
そこで、近年はブリードアウトによる汚染が軽減され、透明性・耐湿熱性を併せ持ち、金属や金属イオンを含まない帯電防止剤として、イオン性液体が注目されている。
【0006】
イオン性液体とは常温溶融塩とも呼ばれ、常温で液体状態であるイオン性化合物で、透明性が高く、帯電防止剤のブリードが抑制され、経時や高温下においても被着体への汚染性が低い粘着剤が得られるとされている(特許文献5参照)。
【0007】
しかし、粘着剤に要求される帯電防止能は年々高くなっており、上記のイオン性液体では帯電防止能を上げるために、粘着剤中のイオン性液体濃度を高くしなくてはならない。しかし、イオン性液体の濃度を高くすると、粘着剤への溶解性が低下し透明性が悪化したり、湿熱環境下で被着体からの剥がれなどの不具合も発生するという問題が起こっていた。
【0008】
このような状況に鑑み、良好な耐湿熱性及び光学特性等を維持しつつ、フィルムラベル用途から電気、光学用途に至るまで使用可能な、高い帯電防止能を付与できる帯電防止用粘着剤が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−165460号公報
【特許文献2】特表平10−511726号公報
【特許文献3】特開2005−298569号公報
【特許文献4】特開2006−199873号公報
【特許文献5】特開2005−330464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高い帯電防止能を発揮し、透明性・耐湿熱性を併せ持ち、被着体汚染のない帯電防止用粘着剤および帯電防止用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明において、第1の発明は、 アクリル系樹脂(A)と、下記化学式(1)で表されるアニオンとカチオン(B)からなるイオン性化合物とを含む帯電防止用粘着剤であって、前記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が−85〜0℃であることを特徴とする帯電防止用粘着剤に関する。
化学式(1)
【0012】
【化1】

【0013】
また、第2の発明は、カチオン(B)が、下記一般式(2)〜(5)からなる群より選択される一種以上のカチオンを含むことを特徴とする上記発明の帯電防止用粘着剤に関する。
一般式(2)〜(5)
【0014】
【化2】

【0015】
[ 式(2)中のR1は、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R2およびR3は、同一又は異なっても良く、水素または炭素数1から12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、R3はない。]、
[ 式(3)中のR4は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R4、R6、およびR6は、同一又は異なってもよく、水素または炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]、
[ 式(4)中のR8は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R9 、R10、およびR11は、同一又は異なっても良く、水素または炭素数1から2の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]、
[ 式(5)中のXは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、R12、R13、R14、およびR14は、同一又は異なって、炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しX が硫黄原子の場合、R12はない。]。
【0016】
さらに、第3の発明は、基材フィルム上に、上記発明の帯電防止用粘着剤からなる粘着層が形成されてなる帯電防止用粘着シートに関する。
【0017】
さらに、第4の発明は、偏光板上に、上記発明の帯電防止用粘着剤からなる粘着層が形成されてなる偏光板用粘着シートに関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、高い帯電防止能を発揮し、透明性・耐湿熱性を併せ持ち、被着体汚染がない帯電防止用粘着剤および、帯電防止用粘着シートを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の帯電防止用粘着剤は、炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを主成分とするアクリル系樹脂(A)とイオン性化合物を含んでなり、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が−85℃〜0℃であることを特徴とする。
【0020】
本発明におけるイオン性化合物は、下記化学式(1)で表されるアニオンを用いることが必要である。
化学式(1)
【0021】
【化3】

【0022】
一般にフッ素原子を含み、非対称構造をもつアニオンは優れた導電性を有することが知られているが、上記構造をもつアニオンはさらに、類似構造をもつビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンなどと比べても分子中に炭素原子を含まず、分子サイズが小さいため、アクリル系樹脂に溶解した際には樹脂中を移動しやすく、特に優れた導電性を示すと考えられる。
【0023】
また、イオン性化合物を構成するカチオン(B)としては、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、イミドゾリウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられるが、その中でも下記一般式(2)〜(5)で表される有機カチオンを用いることが好ましい。
【化4】

【0024】
[ 式(2)中のR1は、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R2およびR3は、同一又は異なっても良く、水素または炭素数1から12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、R3はない。]、
[ 式(3)中のR4は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R4、R6、およびR6は、同一又は異なってもよく、水素または炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]、
[ 式(4)中のR8は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R9 、R10、およびR11は、同一又は異なっても良く、水素または炭素数1から2の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]、
[ 式(5)中のXは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、R 12、R13、R14 、およびR14は、同一又は異なって、炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しX が硫黄原子の場合、R12はない。]。
【0025】
一般式(2)で表されるカチオンとしてはピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピぺリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピぺリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピぺリジニウムカチオン、1−メチル−1−オクチルピぺリジニウムカチオン、1−メチル−1−ラウリルピぺリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−オクチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ラウリルピロリジニウムカチオン、2−メチル−1−ピロリンカチオン、1−エチル−2−フェニルインドールカチオン、1,2−ジメチルインドールカチオン、1−エチルカルバゾールカチオンが挙げられる。
【0026】
一般式(3)で表されるカチオンとしてはイミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジ"ニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0027】
一般式(4)で表されるカチオンとしてはピラゾリウムカチオン、ビラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1−メチルピラゾリウムカチオン、3−メチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2−メチルピラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。
【0028】
一般式(5)で表されるカチオンとしてはテトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、上記アルキル基の一部がアルケニル基やアルコキシル基、さらにはエポキシ基に置換されたものなどが挙げられる。具体例としては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、トリヘキシルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラヘキシルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、などが挙げられる。
【0029】
その中でも、1−オクチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ラウリル−3−メチルピリジニウムカチオン1,1−ジメチルピぺリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピぺリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピぺリジニウムカチオン、1−メチル−1−オクチルピぺリジニウムカチオン、1−メチル−1−ラウリルピぺリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−オクチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ラウリルピロリジニウムカチオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオンなどのピペリジウム、ピロリジニウム、イミダゾリウムカチオンが好ましく用いられ、さらに好ましくはイミダゾリウムカチオンが用いられる。
【0030】
本発明でイオン性化合物の添加量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.001〜20重量部が好ましく、0.01〜10重量部がより好ましい。0.001重量部未満では、帯電防止機能が不足する恐れがある。また20重量部を超えると粘着物性が低下する恐れがある。また、イオン性化合物は単独、または複数組み合わせて使用することも可能である。
【0031】
本発明においてアクリル系樹脂(A)は、ガラス転移温度(以下、「Tg」とも表記する)は−85℃〜0℃であることが重要であり、−60℃〜0℃がより好ましい。−85℃未満では、粘着剤として必要な凝集力が得られず、0℃以上では、粘着剤用樹脂として不適当である。
【0032】
なお、上記のTgは、共重合体を構成する各モノマーから得られる単独重合体のガラス転移温度をもとにして、以下の数式(1)(FOXの式)により理論的に算出した値である。
1/Tg =〔(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+・・・+(Wn/Tgn)〕/100 数式(1)
(ここに温度は絶対温度である。)
Wn:モノマーnの重量%
Tgn:モノマーnからなる単独重合体のガラス転移温度
Tg:共重合体のガラス転移温度
【0033】
本発明においてアクリル系樹脂(A)は、アクリル酸エステル等のモノマーの共重合体であり、その重量平均分子量は10万〜250万あることが好ましい。
上記モノマーとして、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルやアクリル系官能基含有モノマーを含むことが好ましく、さらにビニル系モノマーを含むことができる。炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、全モノマー100重量%中に50〜100重量%含むことが好ましい。これによりTgを上記数値範囲内にすることができる。
【0034】
炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル等の直鎖または分岐脂肪族アルコールのアクリル酸エステル、及び対応するメタクリル酸エステル等が挙げられる。好ましくは、使用される(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が4〜12個のアルキルエステルである。この(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で、または複数組み合わせて用いることができる。
【0035】
アクリル系官能基含有モノマーの官能基として、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基、ヌクレンイミド基及びエポキシ基等を挙げることができる。
カルボキシル基を有するアクリル系官能基含有モノマーとしてアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、クロトン酸等などが挙げられる。
【0036】
水酸基を有するアクリル系官能基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
尚、「2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート」とは、「2−ヒドロキシエチルアクリレート」、「2−ヒドロキシエチルメタクリレート」と併記すべきところを略記したものである。他も同様である。また特に一級の水酸基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを挙げることが出来る。
【0037】
アミノ基を有するアクリル系官能基含有モノマーとしては、アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
アミド基を有するアクリル系官能基含有モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0039】
ヌクレンイミド基を有するアクリル系官能基含有モノマーとしては、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンヌクレンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンヌクレンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンヌクレンイミド等が挙げられる。
【0040】
エポキシ基を有するアクリル系官能基含有モノマーとしてはグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
ビニル系モノマーとは、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル等のビニル系モノマー、ジビニルベンゼン等のジビニル系モノマー、1、4−ブチルジアクリレートや1、6−ヘキシルジアクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のジアクリレート系モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェイト等のリン酸基含有モノマー等が挙げられる。これらのモノマーは1種もしくは2種以上用いても良い。
【0042】
アクリル系官能基含有モノマーの添加量は、アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーの合計100重量%中に0.1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。
【0043】
本発明の帯電防止用粘着剤は、硬化剤で、アクリル系樹脂(A)を三次元架橋することで、各種基材や被着体との密着性を確保するだけでなく、粘着力の制御や、従来よりも過酷な条件下における耐湿熱性をも向上させることもできる。
【0044】
硬化剤とは、前記したアクリル系樹脂(A)中の水酸基、あるいはカルボキシル基等と反応しうる官能基を分子内に有する化合物であり、このような化合物としてはポリイソシアネート化合物、多官能シラン化合物、N−メチロール基含有化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物及び金属キレート化合物などが挙げられるが、これらの中でも、架橋剤として作用するために、アクリル系樹脂(A)中の水酸基、あるいはカルボキシル基と反応し得る官能基を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。特に前記のアクリル系樹脂(A)が水酸基を有する場合にはポリイソシアネート化合物が、また、カルボキシル基を有する場合には、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、もしくは金属キレート化合物が好ましく用いられる。
【0045】
例えば、ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0046】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4',4"−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0047】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0048】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω'−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω'−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω'−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0049】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0050】
また上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体や、イソシアヌレート環を有する3量体等も使用することができる。
【0051】
さらは、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等を使用し得る。なおポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のうちのいずれかの基、またはこれらの基の2種以上を有する変性物を使用できる。また、ポリオールとジイソシアネートとの反応生成物もポリイソシアネートとして使用することができる。
【0052】
これらポリイソシアネート化合物の内、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)、キシリレンジイソシネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:水添MDI)等の無黄変型または難黄変型のポリイシソアネート化合物を用いると耐候性、耐熱性あるいは耐湿熱性の点から、特に好ましい。
【0053】
硬化剤としてポリイソシアネート化合物を使用する場合、反応促進のため、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。例えば三級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられ、単独でもあるいは複数を使用することもできる。
【0054】
硬化剤としてのエポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N'−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0055】
硬化剤としてのアジリジン化合物の例としては、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N'−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N'−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)ブチレート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−(2−メチル)アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)−2−メチルプロピオネート]、2,2'−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラ[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン−4,4−ビス−N,N′−エチレンウレア、1,6−ヘキサメチレンビス−N,N′−エチレンウレア、2,4,6−(トリエチレンイミノ)−Syn−トリアジン、ビス[1−(2−エチル)アジリジニル]ベンゼン−1,3−カルボン酸アミド等が挙げられる。
【0056】
硬化剤としてのカルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基(−N=C=N−)を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられ、公知のポリカルボジイミドを用いることができる。
【0057】
また、カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドも使用できる。このような化合物としては、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させたものが挙げられる。
上記ジイソシアネートとしては、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートの内の一種、または、これらの混合物を使用することができる。
【0058】
カルボジイミド化触媒としては、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、あるいはこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシドを利用することができる。
【0059】
硬化剤としてのオキサゾリン化合物としては、分子内にオキサゾリン基を2個以上有する化合物が好ましく用いられ、具体的には、2′−メチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−プロピレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−フェニレンビス−2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)等を挙げることができる。または、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンや、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリンなどのビニル系モノマーと、これらのビニル系モノマーと共重合しうる他のモノマーとの共重合体でもよい。
【0060】
硬化剤としての金属キレート化合物の例としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウムなどの多価金属がアセチルアセトンやアセト酢酸エチルに配位した化合物が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いてもよいし、あるいは複数を使用することもできる。
【0061】
本発明の帯電防止用粘着剤は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、硬化剤を0.001〜20重量部含有することが好ましく、0.01〜10重量部含有することがより好ましい。硬化剤の使用量が、20重量部を越えると得られる粘着剤の接着性が低下する傾向となり好ましくない。また0.001重量部未満では、充分な架橋構造が得られないため、目的とする耐湿熱性の向上が望めない。
【0062】
本発明の帯電防止用粘着剤においては、アクリル系樹脂(A)と光重合性組成物とを混合し、光重合させることによりアクリル系樹脂(A)を実質的な三次元架橋構造化することで、各種基材や被着体との密着性を確保するだけでなく、粘着力の制御や、従来よりも過酷な条件下における耐湿熱性をも向上させることもできる。
【0063】
光重合性組成物として、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、オリゴマーおよび光重合開始剤等を挙げることができる。
【0064】
(メタ)アクリロイル基を有するモノマーの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化リン酸トリアクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、β-カルボキシルエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、エチルジグリコールアクリレート、トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
また光重合開始剤と増感剤とを組み合わせて光に対する活性を高め、高感度な光重合性組成物とすることもできる。
【0066】
本発明で使用される光重合性組成物に配合する光重合開始剤および増感剤の配合量の合計は光重合性組成物の合計100重量%中に0〜20重量%が好ましく、0.1〜15重量%がより好ましい。
【0067】
本発明の帯電防止用粘着剤に光重合性組成物を使用する場合、配合量はアクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.01重量部以上50重量部未満が好ましく、0.02〜20重量部がより好ましく、0.02〜10重量部がさらに好ましい。50重量部以上は得られる粘着剤の接着性が低下傾向となり好ましくない。また0.001重量部未満では、充分な架橋構造が得られないため、目的とする耐湿熱性の向上が望めない。
【0068】
また、本発明で用いられる光重合性組成物は、保存時の重合を防止する目的で重合禁止剤を添加することも可能である。
【0069】
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−メトキシフェノール、アルキル置換ハイドロキノン、カテコール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることが出来る。重合禁止剤の添加量はとくに限定されるものではないが、好ましくは光重合性組成物中に0.01〜5重量%の範囲で用いられる。
【0070】
また、本発明で用いられる光重合性組成物はさらに重合を促進する目的で、アミンやチオール、ジスルフィドなどに代表される重合促進剤や連鎖移動触媒を添加することが可能である。
【0071】
本発明における光重合性組成物は、光重合反応に際して、紫外線や可視光線、近赤外線等によるエネルギーの付与により反応し、硬化することが可能である。尚、本明細書でいう紫外線、可視光線、近赤外線等の定義は久保亮五ら編「岩波理化学辞典第4版」(1987年、岩波)によった。
【0072】
したがって、本発明における光重合性組成物は、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンイオンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザ、ヘリウムネオンレーザ、クリプトンイオンレーザ、各種半導体レーザ、YAGレーザ、発光ダイオード、CRT光源、プラズマ光源、ArFエキシマーレーザ、KrFエキシマーレーザ、F2レーザ等の各種光源によるエネルギーの付与により硬化することが出来る。
【0073】
本発明の帯電防止用粘着剤には、必要に応じて各種樹脂、他の帯電防止剤、顔料、染料、着色剤、タッキファイヤ、酸化防止剤、紫外線吸収剤、補強剤、耐候剤、可塑剤、香料、発泡剤、難燃剤、表面調整剤、シランカップリング剤等の添加物を配合することも可能である。
【0074】
本発明の帯電防止用粘着シートは、基材上へ、帯電防止用粘着剤からなる粘着層が形成されているものである。
本発明の帯電防止粘着シートは、(ア)剥離ライナーの剥離処理面に帯電防止用粘着剤を塗工、乾燥・硬化し、粘着層を形成し、その表面に基材を貼り合わせる方法や、(イ)基材フィルムに帯電防止用粘着剤を塗工、乾燥・硬化し、粘着層を形成する方法によって製造することができる。また上記(イ)の場合、形成された粘着層の保護を目的として、その表面上に剥離ライナーを貼り合わせることが好ましい。
【0075】
本発明の帯電防止粘着シートは、被着体に一時的に貼り合わせる表面保護用として用いることも好ましく、被着体に貼り続ける永久粘着用として用いることも好ましい。
【0076】
また高級なステッカーや書籍の表面保護に用いられるラミネートフィルムには、特に高い透明性や、静電気によるほこりやゴミの付着に起因する外観不良の低減が要求され、本発明の帯電防止用粘着シートは、それらの用途向けのラミネートフィルムとしても用いることができる。本発明の帯電防止用粘着剤は、その外、帯電防止性が必要なラベル・シール用途、エレクトロニクス用テープ用途、建材保護フィルム用途、包装材料用途に使用することもできる。
【0077】
上記基材としては、セロハン、プラスチック、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、金属板、木材等の平坦な形状のものが挙げられる。基材は板状であっても、フィルム状でも良い。また、各種基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。さらに基材には、反射防止機能、輝度向上機能や紫外線吸収機能等の機能を付与したものを用いることもできる。
【0078】
プラスチックとしては、ポリビニルアルコールやトリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0079】
粘着層の厚さは、0.1μm〜200μmであることが好ましく、1μm〜100μmであることがより好ましい。0.1μm未満では十分な接着力が得られないことがあり、200μmを超えても接着力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【0080】
本発明の帯電防止用粘着剤の塗工方法としては、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられる。乾燥・硬化方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥・硬化条件としては粘着剤が熱硬化型である場合には、通常60〜180℃程度の熱風加熱でよい。
一方、帯電防止用粘着剤が、光重合性組成物を含有する、光重合型である場合には、必要に応じて含有される有機溶剤等の揮発成分を温風加熱などの方法により除去した後、各種光源による光を照射し、粘着層を硬化させる。照射する光のエネルギーは、粘着層の膜厚等を考慮し、適宜決定される。
【0081】
また本発明は、基材として偏光シートを用い、その上に本発明の帯電防止用粘着剤からなる粘着層を形成した偏光板用粘着シートとすることも好ましい。前記偏光シートとは、液晶ディスプレイ用の部材として用いられるもので、例えば偏光シート、位相差シート、楕円偏光シート等を挙げることができる。なおシートはフィルム状であっても板状であってもよい。さらに偏光板用粘着シートは液晶セルのガラス面へ貼付して用いることも好ましい。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、例中、「部」とは「重量部」を、「%」とは「重量%」をそれぞれ示すものとする。そして以下の方法により性状を測定した。
【0083】
《ガラス転移温度(Tg)の算出》
1/Tg =〔(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+・・・+(Wn/Tgn)〕/100 数式(1)
(ここに温度は絶対温度である。)
Wn:モノマーnの重量%
Tgn:モノマーnからなる単独重合体のガラス転移温度
Tg:共重合体のガラス転移温度
共重合体のガラス転移温度(Tg)の算出にあたり、単独重合体のガラス転移温度として、次の値を使用した。アクリル酸2-エチルヘキシル:−85℃、アクリル酸ブチル:−54℃、アクリル酸エチル:−22℃、4−ヒドロキシブチルアクリレート:−80℃、アクリル酸:106℃、メタクリル酸メチル:105℃。
【0084】
《重量平均分子量(Mw)の測定》
Mwの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0085】
(製造例1)
攪拌機、温度計、冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、アクリル酸ブチル99.0部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1.0部、重合溶媒としてアセトン150.0部、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.06部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中で、この反応溶液を60℃に昇温させ、5時間反応させた。反応終了後、トルエンを190部とアクリル酸0.25部および重合開始剤である2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.50部を添加して、70℃に昇温し、6時間反応させた。反応後、トルエン55部を添加して室温まで冷却し、不揮発分20.0%のアクリル系樹脂の溶液を得た。樹脂のガラス転移温度(Tg)は−54℃であった。
【0086】
(製造例2)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにアクリル酸2−エチルヘキシル36.5部、アクリル酸ブチル10.0部、4−ヒドロキシブチルアクリレート3.5部、重合溶媒として酢酸エチル、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、アクリル酸2−エチルヘキシル36.5部、アクリル酸ブチル10.0部、4−ヒドロキシブチルアクリレート3.5部に、酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を約1時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈し、アクリル系樹脂の溶液を得た。この反応溶液は、不揮発分41%であり、樹脂のMw(重量平均分子量)は390,000、ガラス転移温度(Tg)は−79℃であった。
【0087】
(製造例3)
アクリル酸2−エチルヘキシル50.5部、アクリル酸ブチル40.5部、アクリル酸エチル5部、メタクリル酸メチル:3部、アクリル酸:1部、連鎖移動剤であるチオグリコール酸オクチル:0.01部を混合し、溶解させてモノマー混合物を得た。
この混合物に非反応性界面活性剤であるアルキル炭素数12、エチレンオキサイド付加モル数18のポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート:0.5部と脱イオン水45.6部を加え、ホモミキサーにて撹拌し、50%粒子径が0.5μmのモノマーエマルジョンを得、該モノマーエマルジョンを滴下槽に仕込んだ。
【0088】
加熱装置、撹拌機、還流冷却装置、温度計、窒素導入管および滴下槽を備えた重合用容器に脱イオン水:46部とアルキル炭素数12、エチレンオキサイド付加モル数18のポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート:0.1部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌して内温78℃まで昇温させて、重合開始剤である5%過硫酸カリウム水溶液を不揮発分換算で0.065部を入れた。5分後に上記モノマーエマルジョンと、5%過硫酸アンモニウム水溶液を不揮発分換算として0.187部をそれぞれ別の滴下槽から3時間かけて滴下して重合を行った。
滴下終了後30分間80℃に保ち、次いで30分かけて内温を60〜65℃に設定し、重合開始剤であるt−ブチルハイドロパーオキサイド:0.01部とロンガリット:0.012部を5%水溶液にて10分おきに3回に分けて添加した。更に撹拌しながら1時間反応させた後、アンモニア水で中和し、不揮発分49.7%であるアクリル系樹脂のエマルジョン(1)を得た。樹脂のガラス転移温度は−66℃であった。
上記で得たアクリル系樹脂のエマルジョン(1)100部に、シリコン系消泡剤:0.1部、濡れ剤としてナトリウムジオクチルスルホサクシネート:0.1部を加え、さらにウレタン系増粘剤:1部で5000mPa・s(BL型粘度計、25℃で#4ロータ/60rpmにて測定。)に増粘して、アクリル系樹脂のエマルジョン(2)を得た。
【0089】
(製造例4)
攪拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却器を備えた四つ口フラスコにアクリル酸2−エチルヘキシル160部、アクリル酸ブチル40部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184)0.1部、ベンジルメチルケタール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア651)0.1部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、高圧水銀灯(東芝ライテック社製、SHL−100UVQ−2)による紫外線を約5分間照射し反応を行い、酢酸エチル200部で希釈し、アクリル系樹脂の溶液を得た。樹脂のガラス転移温度(Tg)は−80℃であった。
【0090】
(製造例5)
攪拌機、温度計、冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、アクリル酸メチル99.0部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1.0部、重合溶媒としてアセトン150.0部、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.06部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中で、この反応溶液を60℃に昇温させ、5時間反応させた。反応終了後、トルエンを190部とアクリル酸0.25部および重合開始剤である2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.50部を添加して、70℃に昇温し、6時間反応させた。反応後、トルエン55部を添加して室温まで冷却し、不揮発分20.0%のアクリル系樹脂の溶液を得た。樹脂のガラス転移温度(Tg)は8℃であった。
【0091】
[実施例1]
製造例1で得られたアクリル系樹脂溶液の不揮発分20部に対して、イオン性化合物として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド0.1部、XDI/TMP(キシリレンジイソシネートのトリメチローププロパンアダクト体)0.05部を添加してよく撹拌して粘着剤を得た。
この粘着剤を、剥離ライナー(剥離処理されたポリエステルフィルム、)の剥離処理面に、乾燥塗膜の厚さが25μmになるように塗工し、100℃で1分間乾燥させた後、粘着層にポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)を貼り合わせ、この状態で温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成させて帯電防止用粘着シートを得た。
【0092】
[実施例2〜実施例10]
実施例1のイオン性化合物とその添加量を、表1に示すようにそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電防止用粘着シートを得た。
【0093】
[実施例11]
製造例2で得られたアクリル系樹脂溶液の不揮発分40部に対して、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド0.2部、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体の37%酢酸エチル溶液 10部を配合し粘着剤組成物を得たこと以外は、実施例1と同様にして帯電防止用粘着シートを得た。
【0094】
[実施例12]
製造例3で得られたアクリル系樹脂のエマルジョン(2)の不揮発分40部に対して、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド0.2部を配合し粘着剤組成物を得たこと以外は、実施例1と同様にして帯電防止用粘着シートを得た。
【0095】
[実施例13]
製造例4で得られたアクリル系樹脂溶液100部に対して、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド0.5部 光重合性樹脂として、アロニックスM408(東亞合成株式会社製)2.5部とカプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート1部、光重合開始剤として、ダイドキュア174(大同化成社製)を0.5部添加してよく撹拌して帯電防止用粘着剤を得た。
この帯電防止用粘着剤を、形成された粘着層に易接着層付のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)の易接着層へ乾燥塗膜の厚さが25μmになるように塗工し、100℃で1分間乾燥させた後、剥離ライナーを貼り合わせてから、メタルハライドランプを照射し(640mW/cm2)、硬化させ帯電防止用粘着シートを得た。
【0096】
[比較例1〜比較例6]
実施例1のイオン性化合物とその添加量を、表1に示すようにそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電防止用粘着シートを得た。
【0097】
[比較例7]
製造例5で得られたアクリル系樹脂溶液の不揮発分20部に対して、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド0.1部、XDI/TMP(キシリレンジイソシネートのトリメチローププロパンアダクト体)0.05部を配合し粘着剤組成物を得たこと以外は、実施例1と同様にして帯電防止用粘着シートを得た。
【0098】
実施例および比較例で得られた帯電防止用粘着シートについて下記項目の評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
<表面抵抗値>
帯電防止用粘着テープの剥離ライナーを剥がし、露出した粘着剤層表面の表面抵抗値を、23℃−50%RHの各条件下で、表面抵抗値測定装置(三菱化学株式会社製)を用いて測定した上で使用判定を行った(単位:Ω/□)。
◎:表面抵抗値 1×108以上〜1×109未満
○:表面抵抗値 1×109以上〜1010未満
△:表面抵抗値 1×1011以上〜1012未満
×:表面抵抗値 1×1012以上
【0100】
<透明性(ヘイズ)>
帯電防止用粘着シートの剥離ライナーを剥がし、露出した粘着層の外観を目視判定するとともに、粘着層の曇りをヘイズとして「NDH−300A」[日本電色工業(株)社製]で測定し、以下の評価基準により評価した。
○:「良好な外観で、かつヘイズ:1未満。」
△:「曇り等は認められない、かつヘイズ:1以上3未満。」
×:「若干曇りが認められる、光学干渉ムラが認められる、またはHAZE:3以上。
【0101】
<耐湿熱性>
帯電防止用粘着テープを150mm×80mmの大きさに裁断し、剥離ライナーを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板にラミネーターを用いて貼着した。続いて、帯電防止用粘着テープが貼り付けられたガラス板を50℃−5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて、帯電防止用粘着テープをガラス板に強固に密着させ、積層物を得た。
耐湿熱性の評価として、上記積層物を80℃、相対湿度90%で1000時間放置した後に、帯電防止用粘着テープの浮きやハガレ及びその白化の程度を目視で観察し、下記の3段階の評価基準に基づいて評価をおこなった。
○:「浮きハガレ、白化が全く認められず、実用上全く問題なし。」
△:「若干浮きハガレ、白化の何れかが認められるが、実用上問題がない」
×:「全面的に浮きハガレまたは白化があり、実用不可である」
【0102】
<総合評価>
◎:非常に優れている。
○:良好である。
△:問題はあるが実用は可能である。
×:実用不可である
【0103】
【表1】

【0104】
表中の略字は以下の通りである。
(*):アクリル樹脂100重量部に対するイオン性化合物の重量部、MPPy:1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、MOPy:1−メチル−1−オクチルピロリジニウムカチオン、EMIm:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、MPPi:1−メチル−1−プロピルピぺリジニウムカチオン、MOPi:1−メチル−1−オクチルピぺリジニウムカチオン、OMPyri:1−オクチル−3−メチルピリジニウムカチオン、FSI:ビスフルオロスルホニルイミド、TFSI:トリフルオロメタンスルホニルイミド、Bu4−N:テトラブチルアンモニウムカチオン、Li:リチウムカチオン、Cl:塩素アニオン、BF4:テトラフルオロボレートアニオン。
【0105】
表1の結果から、実施例1〜13の帯電防止用粘着テープは、高い帯電防止性能があり、かつ透明性、耐湿熱性も優れていた。それに対して、比較例1〜6の帯電防止用粘着テープは、帯電防止性能が低く、また樹脂への溶解性が低いため透明性が悪く、耐湿熱性も劣っていた。
以上より、本発明の帯電防止用粘着剤および帯電防止用粘着テープは、高い帯電防止能のみならず、透明性・樹脂や溶剤への溶解性(相溶性)・耐湿熱性を併せ持ち、各種の帯電防止用途へ好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂(A)と、下記化学式(1)で表されるアニオンとカチオン(B)からなるイオン性化合物とを含む帯電防止用粘着剤であって、
前記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が−85〜0℃であることを特徴とする帯電防止用粘着剤。
化学式(1)
【化1】

【請求項2】
カチオン(B)が、下記一般式(2)〜(5)からなる群より選択される一種以上のカチオンを含むことを特徴とする請求項1記載の帯電防止用粘着剤。
【化2】

[ 式(2)中のR1は、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R2およびR3は、同一又は異なっても良く、水素または炭素数1から12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、R3はない。]、
[ 式(3)中のR4は、炭素数2から2 0 の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R4、R6、およびR6は、同一又は異なってもよく、水素または炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]、
[ 式(4)中のR8は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R9 、R10、およびR11は、同一又は異なっても良く、水素または炭素数1から2の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[ 式(5)中のXは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、R12、R13、R14 、およびR14は、同一又は異なって、炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しX が硫黄原子の場合、R12 はない。]
【請求項3】
基材上に、請求項1または2記載の帯電防止用粘着剤からなる粘着層が形成されてなる帯電防止用粘着シート。
【請求項4】
偏光シート上に、請求項1または2記載の帯電防止用粘着剤からなる粘着層が形成されてなる偏光用粘着シート。

【公開番号】特開2011−37930(P2011−37930A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183948(P2009−183948)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】