説明

常圧ソープフリー重合によるアクリロニトリル含有ポリマーラテックスの製造方法

【課題】アクリロニトリル高含有率であり、分散安定性に優れ、残存モノマーを含まず環境適性に優れたポリマーラテックスの工業的に有利な製造方法を提供する。
【解決手段】アクリロニトリルを50質量%以上含有する重合性モノマーを、水および重合開始剤と混合し、常圧下にて重合したのち、残存モノマーを常圧にて溶媒を添加することなく留去することを特徴とする、残存モノマーを含まないアクリロニトリル含有ポリマーラテックスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリロニトリルを含有するポリマーラテックスの製造方法に関する。詳しくは、分散安定性に優れ、残存モノマーを含まず環境適性に優れたアクリロニトリル含有率の高いポリマーのラテックスを工業的に有利に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリロニトリル系樹脂は、ニトリル基特有の分子間結合に基づいて優れたガスバリヤー性を示し、また、酸、アルカリ、有機溶剤などに対する耐薬品性および曲げ弾性率、強度、耐クリープ性などの機械的物性に優れた熱可塑性樹脂であり、近年食品や農医薬品、化粧品等の分野で包装材料としてフィルム、シート、容器の素材として、その利用価値が認められている。
【0003】
しかし、一般にアクリロニトリル系重合体は重合体粒子間の凝集力が強いため、アクリロニトリル成分の含有率が高いと重合安定性が悪くなり、安定にラテックスを得ることができない。高いアクリロニトリル含有率にて安定にラテックスを得る技術としては、特定の圧力および温度条件下で重合する際に生成する重合体中に一定量以上の酸性基を導入する製造方法が開示されている(例えば、特許文献1,2参照。)。しかし、これら公知文献には、オートクレーブ等の製造装置が必要であったり、また100℃以上の高温を必要としたりする方法しか開示されておらず、より簡便に製造する方法は知られていなかった。
【0004】
また、通常乳化重合におけるアクリロニトリルの重合性は高くないため、重合後に未反応の残存モノマーが残り、ラテックスの塗布乾燥の際、人体に有害なアクリロニトリルを飛散する状況を、これまでは回避できなかった。
これに対し、アクリロニトリル共重合体から残存モノマーをメタノールとの共沸により除去する方法は報告例があるが(例えば、特許文献3参照。)、共沸用の溶媒を使用しなければならず、製造コストがかかるばかりでなく、人体に有害なメタノールを使用しており、環境安全性の面からも、有利な方法とはいえなかった。
【0005】
また、乳化剤や分散剤を使用する重合方法では、ラテックスを塗布・乾燥して機能性皮膜を形成する際、発泡が激しく、塗布性や塗布面状に不都合が生じることが問題であり、この改良が望まれていた。
【特許文献1】特公昭54−41638号公報
【特許文献2】特公昭55−2207号公報
【特許文献3】米国特許第4414063号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記の問題点を解決するためになされたものであり、優れたガスバリヤー性、酸、アルカリ、有機溶剤などに対する耐薬品性、曲げ弾性率、強度、耐クリープ性などの機械的物性を有する高アクリロニトリル含有率の皮膜を得るための、分散安定性に優れ、残存モノマーを含まず環境適性に優れたポリマーラテックスの工業的に有利な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記従来技術の課題を克服すべく鋭意検討の結果、驚くべきことに、常圧下の重合および常圧下での残留モノマーの留去による方法で、分散安定性に優れ、残存モノマーを全く含まないアクリロニトリル高含有のポリマーラテックスが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0008】
(1)アクリロニトリルを50質量%以上含有する重合性モノマーを、水および重合開始剤と混合し、常圧下にて重合したのち、残存モノマーを常圧にて溶媒を添加することなく留去することを特徴とする、残存モノマーを含まないアクリロニトリル含有ポリマーラテックスの製造方法。
(2)前記残存モノマーを常圧にて溶媒を添加することなく留去する方法が、50℃から100℃の範囲に加熱して留去する方法であること特徴とする前記1に記載のポリマーラテックスの製造方法。
(3)前記重合性モノマーが、アクリロニトリルを80質量%以上含有することを特徴とする前記1または2に記載のポリマーラテックスの製造方法。
(4)前記重合性モノマーが、さらにスルホン酸基、硫酸基、カルボキシル基およびこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸性基を有する重合性モノマーを含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
(5)前記製造方法において、重合反応を100℃未満の温度で行うことを特徴とする前記1〜4のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
(6)前記製造方法において、重合反応を90℃以下で行うことを特徴とする前記1〜5のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
(7)前記残存モノマーを常圧にて溶媒を添加することなく留去する方法が、窒素気流下で行う方法であることを特徴とする前記1〜6のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
(8)前記の重合性モノマー総量が重合反応の混合物中20質量%以下であることを特徴とする前記1〜7のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
(9)前記重合開始剤量が重合性モノマー総量に対して10質量%以下であることを特徴とする前記1〜8のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
(10)前記重合性モノマーが、さらに多官能性の重合性モノマーを含有することを特徴とする前記1〜9のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
(11)前記重合開始剤が、過硫酸塩系重合開始剤またはアゾ系重合開始剤であることを特徴とする前記1〜10のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、高濃度でアクリロニトリルを含有し、残存モノマーを含まず、分散安定性の高い、アクリロニトリル含有ポリマーラテックスが、簡便な製造装置を使用することで得られる。
これにより、ラテックスを塗布乾燥して、膜形成した際に、有害な残存モノマーが蒸発する問題も解消され、環境安全性を付与することができる。
また、本発明の高アクリロニトリル含有率のラテックスは、安定で、優れたガスバリヤー性、酸、アルカリ、有機溶剤などに対する耐薬品性、曲げ弾性率、強度、耐クリープ性などの機械的物性を有する皮膜を提供することができる。
本発明によって得られるラテックスは、アクリロニトリル含率が高いため、アクリロニトリル本来の優れた性能を発揮することができる。また、従来の高ニトリル共重合体ラテックスより、低温、短時間で乾燥可能である。特に、本発明によって得られるラテックスからなる皮膜をプラスチックフィルムに被覆したガスバリヤー性フィルムは、塩素原子を含まないガスバリヤー包装資材としての用途を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の詳細を説明する。
本発明は分散安定性に優れ、残存モノマーを含まず環境適性に優れた、高アクリロニトリル含有率のポリマーラテックスの製造方法であり、アクリロニトリルを50質量%以上含有する重合性モノマーを、水および水に溶解可能な重合開始剤と混合し、常圧下にて重合(乳化重合)したのち、残存モノマーを常圧にて溶媒を添加することなく留去することを特徴とする。
【0011】
本発明の乳化重合は、乳化剤、分散剤等の保護コロイドは使用しない、常圧ソープフリー重合である。乳化剤、分散剤等の保護コロイドを使用すると、ラテックスを塗布・乾燥して機能性皮膜を形成する際、発泡が激しく、塗布性や塗布面状に不都合が生じることがあるためであり、本発明の趣旨の一つはこの問題を解決することである。
【0012】
本発明において使用する重合性モノマーは、アクリロニトリルが50質量%以上、望ましくは80〜100質量%であり、これらと共重合可能な1種以上の重合性モノマーは0〜50質量%、望ましくは0〜20質量%である。アクリロニトリルが50質量%未満では、塗膜を形成した際、充分なガスバリヤー性、酸、アルカリ、有機溶剤などに対する耐薬品性、曲げ弾性率、強度、耐クリープ性などの機械的物性得られない。
【0013】
本発明において使用するアクリロニトリルと共重合可能な重合性モノマーは、特に限定されず、炭素−炭素不飽和二重結合を有する公知ないしは周知の化合物が有用に使用できる。
例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、(無水)マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、部分アミド化マレイン酸共重合体に使用されているモノマー、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニル基を有する芳香族炭化水素環類、ビニル基を有するヘテロ芳香族環類、無水マレイン酸、イタコン酸エステル類、クロトン酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル、クロトンニトリル、α−メチルクロトンニトリル、各種スチレン類、各種ベンゾイルオキシエチレン類、各種アセトキシエチレン類、ビニルカルバゾール類、ビニルピロリドン、等が挙げられる。
【0014】
この中で、(メタ)アクリル酸、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のアルキル(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のシクロアルキル(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のビシクロ環を有する(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のアラルキル(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のアリール(メタ)アクリレート、
【0015】
(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の2級または3級のアルキル(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の2級または3級のシクロアルキル(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の2級または3級のビシクロ環を有する(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の2級または3級のアラルキル(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の2級または3級のアリール(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の(メタ)アクリロイルモルホリン、
【0016】
ビニル基を有する置換または無置換の炭素数1〜25の芳香族炭化水素環、ビニル基を有する置換または無置換の炭素数1〜25のヘテロ芳香族環、無水マレイン酸、置換または無置換の炭素数1〜25のスチレン類、置換または無置換の炭素数1〜25のα−メチルスチレン類、ビニルイミダゾール、ビニルトリアゾール、無水マレイン酸、置換または無置換の炭素数1〜25の部分エステル化マレイン酸共重合体、置換または無置換の炭素数1〜25の部分アミド化マレイン酸、メチルジャスモネート、
【0017】
イタコン酸、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のイタコン酸アルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のイタコン酸シクロアルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のビシクロ環を有するイタコン酸エステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のイタコン酸アラルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のイタコン酸アリールエステル、
【0018】
クロトン酸、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のクロトン酸アルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のクロトン酸シクロアルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のビシクロ環を有するクロトン酸エステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のクロトン酸アラルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のクロトン酸アリールエステル、
【0019】
置換基を有していてもよい炭素数1〜25のベンゾイルオキシエチレン類、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のアセトキシエチレン類、(メタ)アクリロニトリル、クロトンニトリル、α−メチルクロトンニトリル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、が好ましく、
【0020】
なかでも、(メタ)アクリル酸、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のビシクロ環を有する(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアラルキル(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアリール(メタ)アクリレート、
【0021】
(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2級または3級のアルキル(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2級または3級のシクロアルキル(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2級または3級のビシクロ環を有する(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2級または3級のアラルキル(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2級または3級のアリール(メタ)アクリルアミド、
置換基を有していてもよい炭素数1〜20の(メタ)アクリロイルモルホリン、
【0022】
ビニル基を有する置換または無置換の炭素数1〜20の芳香族炭化水素環、ビニル基を有する置換または無置換の炭素数の1〜20ヘテロ芳香族環、無水マレイン酸、置換または無置換の炭素数1〜20の部分エステル化マレイン酸共重合体、置換または無置換の炭素数1〜20の部分アミド化マレイン酸、置換または無置換の炭素数1〜20のスチレン類、置換または無置換の炭素数1〜20のα−メチルスチレン類、メチルジャスモネート、
【0023】
イタコン酸、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のイタコン酸アルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のイタコン酸シクロアルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のビシクロ環を有するイタコン酸エステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のイタコン酸アラルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のイタコン酸アリールエステル、
【0024】
クロトン酸、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のクロトン酸アルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のクロトン酸シクロアルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のビシクロ環を有するクロトン酸エステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のクロトン酸アラルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のクロトン酸アリールエステル、
【0025】
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のベンゾイルオキシエチレン類、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアセトキシエチレン類、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル、クロトンニトリル、α−メチルクロトンニトリル、がより好ましく、
【0026】
特には、(メタ)アクリル酸、置換基を有していてもよい、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、直鎖または分岐のプロピル(メタ)アクリレート、直鎖または分岐のブチル(メタ)アクリレート、直鎖または分岐のペンチル(メタ)アクリレート、ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルマルヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレート、ノルマルデシル(メタ)アクリレート、ノルマルドデシル(メタ)アクリレート、
【0027】
置換基を有していてもよい、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナンメチル(メタ)アクリレート、ノルボルネンメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレート、アントラセンメチル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、
【0028】
(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい、メチルもしくはジメチル(メタ)アクリルアミド、エチルもしくはジエチル(メタ)アクリルアミド、直鎖または分岐のプロピルもしくはジプロピル(メタ)アクリルアミド、直鎖または分岐のブチルもしくはジブチル(メタ)アクリルアミド、直鎖または分岐のペンチルもしくはジペンチル(メタ)アクリルアミド、ノルマルヘキシルもしくはジ−ノルマルヘキシル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキシルもしくはジ−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、2−エチルヘキシルもしくはジ−(2−エチルヘキシル)(メタ)アクリルアミド、アダマンチル(メタ)アクリルアミド、ノルアダマンチル(メタ)アクリルアミド、ベンジル(メタ)アクリルアミド、ナフチルエチル(メタ)アクリルアミド、フェニルエチル(メタ)アクリルアミド、フェニルもしくはジ−フェニル(メタ)アクリルアミド、ナフチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ピペリジルアクリルアミド、ピロリジルアクリルアミド、
【0029】
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルトリアゾール、無水マレイン酸、メチルジャスモネート、マレイミド、(N−置換)マレイミド
【0030】
イタコン酸、クロトン酸、置換基を有していてもよい、メチルクロトネート、エチルクロトネート、直鎖または分岐のプロピルクロトネート、直鎖または分岐のブチルクロトネート、直鎖または分岐のペンチルクロトネート、ノルマルヘキシルクロトネート、シクロヘキシルクロトネート、ノルマルヘプチルクロトネート、2−エチルヘキシルクロトネート、ノルマルオクチルクロトネート、ノルマルデシルクロトネート、ノルマルドデシルクロトネート、アダマンチルクロトネート、イソボルニルクロトネート、ノルボルナンメチルクロトネート、ノルボルネンメチルクロトネート、ベンジルクロトネート、ナフチルメチルクロトネート、アントラセンメチルクロトネート、フェニルエチルクロトネート、フェニルクロトネート、ナフチルクロトネート、
【0031】
置換基を有していてもよい、ベンゾイルオキシエチレン、アセトキシエチレン、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、等が好ましい。
【0032】
また、上記のカルボキシル基は、金属塩となっていてもよい。
【0033】
上記置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のアリール基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアリールカルボニル基、炭素数1〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、フリル基、フルフリル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロフルフリル基、アルキルチオ基、トリメチルシリル基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、チエニル基、モルホリノ基、モルホリノカルボニル基、ビニル基、−SOM基(Mは、H、NaまたはK)、−COOM基(Mは、H、NaまたはK)、(メタ)アクリロイルオキシ基、フェニル基、等が好ましく、
【0034】
さらには、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のアラルキル基、炭素数1〜15のアリール基、炭素数1〜15のアシルオキシ基、炭素数1〜15のアシル基、炭素数1〜15のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜15のアリールカルボニル基、炭素数1〜15のジアルキルアミノ基、炭素数1〜15のアルキルアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、フリル基、フルフリル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロフルフリル基、アルキルチオ基、トリメチルシリル基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、チエニル基、モルホリノ基、モルホリノカルボニル基、ビニル基、−SOM基(Mは、H、NaまたはK)、−COOM基(Mは、H、NaまたはK)、(メタ)アクリロイルオキシ基、フェニル基、等が好ましく、
【0035】
特には、メチル基、エチル基、直鎖または分岐のプロピル基、直鎖または分岐のブチル基、直鎖または分岐のペンチル基、ノルマルヘキシル基、シクロヘキシル基、ノルマルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ノルマルオクチル基、ノルマルデシル基、ノルマルドデシル基、メチルオキシ基、エチルオキシ基、直鎖または分岐のプロピルオキシ基、直鎖または分岐のブチルオキシ基、直鎖または分岐のペンチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ノルマルヘプチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノルマルオクチルオキシ基、ノルマルデシルオキシ基、ノルマルドデシルオキシ基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、フェニル基、ナフチル基、
【0036】
メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、直鎖または分岐のプロピルカルボニルオキシ基、直鎖または分岐のブチルカルボニルオキシ基、直鎖または分岐のペンチルカルボニルオキシ基、ノルマルヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ノルマルヘプチルカルボニルオキシ基、2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基、ノルマルオクチルカルボニルオキシ基、ノルマルデシルカルボニルオキシ基、ノルマルドデシルカルボニルオキシ基、
【0037】
メチルカルボニル基(アセチル基)、エチルカルボニル基、直鎖または分岐のプロピルカルボニル基、直鎖または分岐のブチルカルボニル基、直鎖または分岐のペンチルカルボニル基、ノルマルヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、ノルマルヘプチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ノルマルオクチルカルボニル基、ノルマルデシルカルボニル基、ノルマルドデシルカルボニル基、
【0038】
メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、直鎖または分岐のプロピルオキシカルボニル基、直鎖または分岐のブチルオキシカルボニル基、直鎖または分岐のペンチルオキシカルボニル基、ノルマルヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ノルマルヘプチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノルマルオクチルオキシカルボニル基、ノルマルデシルオキシカルボニル基、ノルマルドデシルオキシカルボニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、
【0039】
メチルもしくはジメチルアミノ基、エチルもしくはジエチルアミノ基、直鎖または分岐のプロピルもしくはジプロピルアミノ基、直鎖または分岐のブチルもしくはジブチルアミノ基、直鎖または分岐のペンチルもしくはジ−ペンチルアミノ基、ノルマルヘキシルもしくはジ−ノルマルヘキシルアミノ基、シクロヘキシルもしくはジ−シクロヘキシルアミノ基、ノルマルヘプチルもしくはジ−ノルマルヘプチルアミノ基、2−エチルヘキシルもしくはジ−(2−エチルヘキシル)アミノ基、
【0040】
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、フリル基、フルフリル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロフルフリル基、アルキルチオ基、トリメチルシリル基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、チエニル基、モルホリノ基、モルホリノカルボニル基、ビニル基、−SOM基(Mは、H、NaまたはK)、−COOM基(Mは、H、NaまたはK)、(メタ)アクリロイルオキシ基、フェニル基、等が好ましい。
【0041】
また、これらの置換基はさらに上記の置換基で置換されていてもよい。
【0042】
その他の共重合可能なモノマーとしては、燐酸基、燐酸エステル基、4級アンモニウム塩基、エチレンオキシ鎖、プロピレンオキシ鎖、スルホン酸基およびその塩基、モルホリノエチル基等を含んだ親水性を有するモノマー等も有用である。
【0043】
また、上記のスルホン酸基およびカルボン酸基は、二価以上の金属塩となっていてもよい。
【0044】
共重合するモノマー種の数も特には限定されないが、1〜12種が好ましく、1〜8種がより好ましく、1〜5種が特に好ましい。
【0045】
上記のアクリロニトリルと共重合する重合性モノマーのなかでも、特に、スルホン酸基、硫酸基、カルボキシル基およびこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸性基を有する重合性モノマーが有用である。具体例としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、メタクリル酸スルホエチルエステル、メタクリル酸スルホプロピルエステル、アクリル酸スルホエチルエステル、アクリル酸スルホプロピルエステル、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、アクリル酸、メタクリリル酸およびこれらの塩類(アルカリ金属塩(Na,K、Li、等)、アンモニウム塩(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、等)、等)が挙げられる。
これらの酸性基を有する重合性モノマーは、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
これらの酸性基を有する重合性モノマーは、モノマー全体のうち、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が特に好ましい。
【0046】
また、本発明では、重合性モノマーとして多官能性の重合性モノマーを用いることができる。特に、合成したラテックスの分散安定性を向上する観点からは、多官能性モノマーを用いて三元系ポリマーラテックスを形成することが好ましい。多官能性の重合性モノマーとしては、重合性基を分子内に2個以上有するモノマーであれば特に限定されない。
多官能性の重合性モノマーとしてはたとえば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、等が挙げられる。
これらの多官能性の重合性モノマーは、重合性モノマー総量のうち、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が特に好ましい。
【0047】
本発明において、ポリマーラテックスの平均粒子径は、分散安定性の観点で、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3μm以下が特に好ましい。
【0048】
本発明の製造方法における乳化重合反応の圧力は、簡便な装置での製造が可能という観
点で、常圧以下が好ましく、常圧が最も好ましい。
乳化重合の重合反応温度は、重合反応が進行できれば特には限定されないが、製造の簡便性の観点で、300℃以下で行うことが好ましく、200℃以下がより好ましく、100℃未満がさらに好ましく、90℃以下で行うのが最も好ましい。また、重合反応温度の下限は10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。
【0049】
重合に用いる重合開始剤のうち、水に溶解可能な重合開始剤が好ましく用いられる。好ましい開始剤は、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤であり、特に反応性などの観点から、過硫酸塩系重合開始剤とアゾ系重合開始剤が好ましく用いられる。
この中で、過酸化ベンゾイル、過酸化−ジ−t−ブチル、過酸化ラウロイル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化アセチル、テトラメチルチウラムジスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、フェニルアゾトリフェニルメタン、VA-086、V-50、VA-044、V-501(以上、和光純薬製アゾ系水溶性開始剤)等が好ましく、過酸化ベンゾイル、過酸化−ジ−t−ブチル、過酸化ラウロイル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化アセチル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、VA-086、V-50、VA-044、V-501、等がより好ましく、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、VA-086、V-50、VA-044、V-501、等が特に好ましい。
【0050】
乳化重合において、重合反応混合物全質量中の重合性モノマー総量は、分散安定性の観点で、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下が最も好ましい。
【0051】
乳化重合において、重合開始剤量は、分散安定性、コスト等の観点で、重合性モノマー総量に対して30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
【0052】
乳化重合後の未反応残存モノマーの留去は、減圧下で行ってもよいし、常圧下で行ってもよいが、製造の簡便性の点で常圧下が好ましい。また、窒素、アルゴンまたは空気の気流下で行ってもよいが、留去過程におけるモノマーの重合防止および経済性の点から、窒素下が最も好ましい。
また、残存モノマー留去は、加熱で行っても、常温で行ってもよいが、製造設備の簡易化や工程の効率性などから、好ましい留去方法は加熱による留去であり、留去時の温度としては、30℃から200℃が好ましく、40℃から150℃がさらに好ましく、50℃から100℃が特に好ましい。
【0053】
また別法として、重合後に生成したラテックスを、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機塩等を添加して塩析/濾過し、未反応モノマーを除去してもよい。
【実施例】
【0054】
以下で実施例等を用いてさらに本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定させるものではない。
【0055】
本発明の実施例等で用いる分析手段などは以下の通りである。
(イ)重合時に発生した凝集物量
乳化重合終了後、重合釜中のラテックス全量を400メッシュ金網にて濾過し、金網上に残留した固形物を水洗乾固後、質量を測定し、重合に使用したモノマー混合物に対する質量分率にて表した。
(ロ)ラテックスの安定性
合成したラテックスを常温で3日間放置し、沈降物が発生したかどうかを目視で観察した。
(ハ)粒径
レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA、LA−910)を用いて、定法により測定した。
(ニ)残存モノマー測定
未反応のモノマーは、NMR(溶媒:重DMSO)によりその有無を確認または定量した。
(ホ)固形分量測定
ラテックス液をアルミパンに秤量し、130℃で2時間真空乾燥した。乾燥後の質量変化から固形分量を算出した。
【0056】
〔実施例1〕
メカニカルスターラーを備え付けた200mlの三口フラスコに水118g、アクリロニトリル4.8g、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸ナトリウム塩(スルホエチルメタクリレートNa塩:SEM)0.2g、ジビニルベンゼン1.19gを添加した。次いで、系内を窒素置換した後、窒素フロー(流量:10ml/min)した。次に、70℃に昇温したのち、300rpmの回転速度で攪拌しながら過硫酸カリウム(KPS:0.27g)を添加した。添加後、70℃で3時間攪拌した。次いで、95℃に昇温して、窒素フロー量を、流量=100ml/minとして2時間攪拌した。留去したアクリロニトリルは、冷却管を備え付けたディーンスターク管により捕捉した。
固形分量、重合時に発生した凝集物量、ラテックスの安定性、粒径、残存モノマー量は、表1の通りである。
表1に示すとおり、アクリロニトリルを高含有率で含有し、残存モノマーを含まず、分散安定性の高いポリマーラテックスが、簡便な製造装置を使用することで得られた。
【0057】
〔実施例2〜5〕
共重合モノマーの種類、量、開始剤種を表1のように代えたほかは、実施例1と同様にして乳化重合を行った。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
〔比較例1〕
実施例1において、過硫酸カリウム添加後、70℃で3時間攪拌し、残存モノマー留去操作を行うことなく反応を終了した。その結果を表1に示す。得られたポリマーラテックスには多量の未反応モノマーが残存した。
【0060】
〔比較例2〕
実施例1において、過硫酸カリウムをBPO(ベンゾイルパーオキサイド)に代えたほかは、実施例1と同様にして乳化重合を行った。結果は、BPOが溶解せず、重合が殆ど進行しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロニトリルを50質量%以上含有する重合性モノマーを、水および重合開始剤と混合し、常圧下にて重合したのち、残存モノマーを常圧にて溶媒を添加することなく留去することを特徴とする、残存モノマーを含まないアクリロニトリル含有ポリマーラテックスの製造方法。
【請求項2】
前記残存モノマーを常圧にて溶媒を添加することなく留去する方法が、50℃から100℃の範囲に加熱して留去する方法であること特徴とする請求項1に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項3】
前記重合性モノマーが、アクリロニトリルを80質量%以上含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項4】
前記重合性モノマーが、さらにスルホン酸基、硫酸基、カルボキシル基およびこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸性基を有する重合性モノマーを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項5】
前記製造方法において、重合反応を100℃未満の温度で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項6】
前記製造方法において、重合反応を90℃以下で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項7】
前記残存モノマーを常圧にて溶媒を添加することなく留去する方法が、窒素気流下で行う方法であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項8】
前記の重合性モノマー総量が重合反応の混合物中20質量%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項9】
前記重合開始剤量が重合性モノマー総量に対して10質量%以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項10】
前記重合性モノマーが、さらに多官能性の重合性モノマーを含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項11】
前記重合開始剤が、過硫酸塩系重合開始剤またはアゾ系重合開始剤であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。

【公開番号】特開2008−150510(P2008−150510A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340856(P2006−340856)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】