常温倉庫、常温倉庫内での物品保管方法、および鉛直温度分布の把握方法
【課題】倉庫等の建屋内の鉛直温度分布を把握して、適正な保管温度が指示された商品等の品物を可能な限り常温管理できる技術を提供する。
【解決手段】保管場所の保管時温度を、温度を変数として多数室の年間非定常熱収支計算を行う熱回路網法の計算式の前記温度に、上中下の各ブロック間の熱移動を温度で示せる室内上下温度分布対応型ブロックモデルの温度式を代入して得られる鉛直温度算出式に基づいて、前記鉛直温度算出式の係数をCFD計算結果により求め、前記常温倉庫内の鉛直温度分布を把握する。かかる把握結果を用いて、保管温度が指示された物品を常温倉庫内に保管する。
【解決手段】保管場所の保管時温度を、温度を変数として多数室の年間非定常熱収支計算を行う熱回路網法の計算式の前記温度に、上中下の各ブロック間の熱移動を温度で示せる室内上下温度分布対応型ブロックモデルの温度式を代入して得られる鉛直温度算出式に基づいて、前記鉛直温度算出式の係数をCFD計算結果により求め、前記常温倉庫内の鉛直温度分布を把握する。かかる把握結果を用いて、保管温度が指示された物品を常温倉庫内に保管する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉛直温度分布の新規な把握技術に関し、特に倉庫等の天井が高い建屋の内部鉛直温度分布の把握に適用して有効である。かかる把握技術により得られた結果を利用すれば、例えば、保管温度が指定されている商品等の品物を恒温室等に別途取り分けて管理することなく、常温倉庫内で適切に保管管理を行うことができる。
【背景技術】
【0002】
近年の流通業界の国際化により、空港や高速道路インターチェンジ周辺に比較的短工期で施工可能な世界標準の大規模倉庫が急ピッチで建設されている。かかる倉庫では、効率的在庫管理のため、倉庫内のパレット配置はスムーズな出庫や入庫を目的とした商品の配置管理手法である「倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)」というITシステムで管理されている。例えば、商品Aは○列△段目・・・といったようにコンピューターシステムが指示をして、当該商品の在庫あるいは入出庫を管理している。現状では、「保管温度条件が少しでも設定されている商品」は「恒温倉庫」で保存している。
【0003】
室内上下温度分布の簡易年間非定常計算については、非特許文献1に、中原等により日成層型蓄熱槽の熱特性予測モデル(R値モデル)の提案がなされている。非特許文献2には、宮川等により、大空間を2〜3ブロックに分けブロック間の仮想換気量を設定しながら時間ステップを進める手法が提案されている。非特許文献3には、戸河里等により、壁面を沿う下降流とブロック間の熱移動係数をモデル化した提案がなされている。いずれも実験結果と良く一致している。
【0004】
また、CFDに関しては、例えば、倉庫等の天井が高い建屋の内部鉛直温度分布に関してではないが、特許文献1、2等の例がある。
【非特許文献1】伊藤尚寛・横井睦己・中原信生:温風暖房空間の上下温度分布の簡易計算モデル(空調空間の熱的特性に関する研究 第2報)、日本建築学会計画系論文報告集、第398号、pp.59〜67、1989年4月
【非特許文献2】宮川保之:大空間の上下室温分布算定に関する実験的研究、日本建築学会論文報告集、第286号、pp.75〜82、1979年12月
【非特許文献3】戸河里敏、荒井良延、三浦克弘:大空間における上下温度分布の予測モデル(大空間の空調・熱環境計画手法の研究 その1)、日本建築学会計画系論文報告集、第427号、pp.9〜19、1991年9月
【特許文献1】特許第4072887号公報
【特許文献2】特許第4001523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大規模な常温倉庫(空調しない倉庫)では1年を通した室温の変化や鉛直方向の温度分布予測は、現状では困難である。そのため、「保管温度条件が少しでも設定されている商品」は「恒温倉庫」で保存しなければならず、恒温倉庫に関わる「熱源設備稼動期間の過剰設定」が問題となっている。
【0006】
本発明の目的は、倉庫等の建屋内の鉛直温度分布を把握して、適正な保管温度が指定された商品等の品物を可能な限り常温管理できる技術を提供することにある。
【0007】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
すなわち、常温での保管温度が指示された物品を、常温倉庫内の指示された保管温度以下の場所で保管することができる。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0011】
常温での保管温度が指示された物品を、従来とは異なり、常温倉庫内で適切に保管することができる。そのため恒温室等の使用を抑えることができ、恒温室使用に際しての空調負荷を低減することができる。つまり。温暖化ガス排出量の大幅な削減につなげることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
本発明は、大規模空間の鉛直温度分布を利用する技術に関する。例えば、天井高さが3m以上の建屋内の大規模空間で発生する鉛直方向の温度差を利用する技術である。例えば、商品等の物品を、その物品に適った温度の空間内の鉛直温度分布域に配置することで、商品等の適正な保管管理を行う技術である。例えば、常温倉庫内に、保管温度が指示された商品等の物品を、保管することができる技術である。
【0014】
かかる本発明では、大規模空間における鉛直温度分布がどのようになっているか、先ず把握する必要がある。かかる温度把握を大前提として、上記本発明にかかる技術が可能となる。また、かかる技術の適用は、例えば、建屋の天井高さが3m以下の空間の場合には、建屋内の空間の温度状況は一様と見做すことができるため、本発明の技術はかかる空間への適用は想定していない。すなわち、以下の説明では、本発明の適用技術は、天井高さが3mを越える空間に適用するものであると言える。
【0015】
前記の如く、従来、常温内で保管温度の指示がある物品は、恒温倉庫内に保管していた。少なくとも、常温倉庫内の常温雰囲気での保管はあり得なかった。しかし、天井高さが3mを越える大規模空間内では、鉛直方向に温度差が現れるのである。本発明者は、かかる温度差を有効利用することができないかと着想した。
【0016】
例えば、日本国内では、年間を通じて、四季の移り変わりと共に外気温度が著しく変化する。そのため、かかる環境内に存在する常温倉庫も外気の温度雰囲気に対応して変化する。例えば、常温倉庫内での平均温度は、低い場合では約10℃前後となることが多い。場合によっては、氷点下の場合も十分にあり得る。また、一方では、夏季等の常温倉庫内の温度が高いときには、平均温度が約30℃あるいはそれ以上となる場合も考えられる。
【0017】
このように常温倉庫内の平均温度は、一年で、すなわち12カ月で例えば約10℃〜30℃まで変化するのである。かかる温度は、倉庫内での平均温度を示している。より正確に言えば、倉庫内の個々の位置で温度は異なっている筈である。倉庫内の空間が、例えば、天井高さが3m以下の空間であれば、かかる倉庫空間内の温度は一様と見做せることが知られている。しかし、本発明者の考察では、天井高さが3mを超える場合には、最早かかる空間内の温度を一様と見做すことはできないものと実験等の結果から判断した。すなわち、鉛直方向で、無視出来ないほどの温度差が発生することが確かめられた。高さ方向に沿って、上方領域と、中間領域、下方領域とでは、明瞭に温度差が発生することが明らかとなった。
【0018】
平均温度は、上述の如く、例えば10℃であっても、空間内の上方位置と下方位置とでは、明瞭に温度差が発生しているのである。あるいは、空間内の上方位置と、中間位置と、下方位置とでは、それぞれ明瞭に温度差が発生している場合がある。また、平均温度が30℃になった場合でも、同様に、空間内の上方位置、下方位置、あるいは上方、中間、下方等のそれぞれの位置間では、明瞭に温度差が発生している場合がある。
【0019】
すなわち、春夏秋冬、四季を通じて、季節毎に、あるいは月毎に、倉庫内の鉛直方向の温度はそれぞれ変化しているのである。かかる状況を前提とすれば、一年を通じてみれば、倉庫内には、少なくとも、平均温度の上限と下限の間の温度を示す空間位置が存在している筈であるということになる。そこで、平均温度の上限と下限の間の特定温度が保管時の温度と指定された場合には、かかる温度を示す空間位置に保管すれば、従来の恒温室での保管は省けるということになる。勿論、かかる保管している空間位置の温度が変化する場合には、その保管時の温度が維持できる別の空間位置に適宜に移動させることは必要である。
【0020】
かかる状況を前提とすれば、例えば23℃の保管温度が指示された物品は、一年の何カ月間は、場合によっては、常温倉庫内に置いて保管することができることを意味している。すなわち、23℃の恒温室内への保管は必要ないのである。倉庫内の温度状況が把握できるなら、例えば、23℃の温度域が倉庫内の空間内に存在すれば、そこに商品の保管が可能であることを示唆しているのである。さらには、かかる保管場所の温度が変化した場合には、例えば、高くなった場合には、適した23℃の温度域に移し変えることで、対応することもできるのである。勿論、夏季等のように倉庫内の全ての空間位置の温度が23℃を超える状況になった場合には、恒温室内に入れて保管するようにすればよいのである。
【0021】
このように本発明は、倉庫内の温度分布、特に上下方向の鉛直温度分布が分かっていれば可能となる技術である。尚、水平方向の温度に関しては、実験では、略一様と見做すことができる。
【0022】
本発明は、前記の如く、天井高さが3mを超える倉庫に適用するものである。そこで、床面から天井までの高さが3mを超える倉庫内空間等の大規模空間に適用する場合について以下説明する。
【0023】
本実施の形態で説明する空間は、図1に示すように、床面から天井までの高さが3mを超える大規模空間Aに構成されている。かかる大規模空間Aを有する倉庫10は、図1に示すように2階建て以上の多数階に構成されているものとする。勿論、平屋でも構わない。さらに、かかる大規模空間Aは、大規模空間内と大規模空間外とを隔てる外壁110により囲まれている。図1に示す場合には、例えば、外壁110は、屋内の大規模空間Aと屋外とを仕切る壁として構成されている。勿論、かかる外壁110は、屋内の間仕切り壁として使用される場合であっても構わない。
【0024】
かかる外壁110には、例えば、上方に換気設備120が設けられ、倉庫内の換気が行えるようになっている。かかる換気設備120は、例えば、換気扇が設けられた換気口に構成しておけばよい。但し、かかる換気設備120は、特段設けない構成でも構わない。
【0025】
かかる大規模空間Aの倉庫10内には、図に示すように、棚20が設けられている。かかる棚20には、物品が載せられたパレットが、フォークリフト等を用いて載置できるようになっている。個々の棚20には、棚位置の温度を確認する温度計30が設けられている。
【0026】
例えば、図1に示す場合には、倉庫10内には、4段構成の棚20が設けられているとする。最下段の棚21(20)には、温度計31(30)が、棚位置の温度が確認できるように設けられている。同様に、棚22(20)、23(20)、24(20)には、温度計32(30)、33(30)、34(30)が設けられている。このようにして、棚位置のリアルタイムの温度が分かるようになっている。
【0027】
かかる棚20毎に設けられた温度計30は、例えば、図2に示すように、倉庫管理室40a等の部屋40に設けられたコンピュータ41に転送される。かかる転送された温度は、例えば、パネル42に一括表示されて、棚位置毎の温度状況がリアルタイムに分かるように構成されている。かかる棚位置毎の温度状況を確認しながら物品の保管管理を行えばよい。保管温度が指定された物品のある棚位置が、保管温度より高くなりそうな場合や、実際に高くなった場合には、別の保管温度が維持されている棚位置に物品を移動させて置くようにすればよい。
【0028】
かかる保管管理では、棚毎の温度を、有線であるいは無線で、保管温度を管理するコンピュータ41等に自動で転送できるようにしておけばよい。かかる自動転送されたリアルタイムの棚位置の温度と、物品の棚置きの管理状況とから、保管温度が維持されていて、且つまだ物品が置ける空き状況の棚位置を探し出せるようになっている。かかる結果は、作業者に送られ、フォークリフトで物品の移動を速やかに行うようにすればよい。自動でフォークリフトの運転者に、棚位置を変えるか、あるいは恒温室へ運び込むかを、適宜に指示を出すように設定しておけばよい。
【0029】
このようにして、例えば23℃の温度域が常温倉庫内に存在する場合には、物品の棚位置を変える等して、常温倉庫内で保管することができる。常温倉庫内に、指示された保管温度領域がなくなった場合には、恒温室内に避難して保管すればよい。また、常温倉庫内に指示された保管温度領域が発生した場合には、恒温室内から、常温倉庫内の当該棚位置に移せばよい。
【0030】
以上の説明の場合には、常温倉庫内の棚毎に温度計を設けて、その温度計でリアルタイムに鉛直温度分布を把握する方法であった。かかる方法でも、十分に対応できる筈だが、しかし、温度計を棚毎に設けたり、あるいは全ての棚からの温度情報を集計してその対応を指示する等、処理にはかなりの手間がかかる。さらには、棚位置の温度は、温度計がある空間点の温度でしかない。
【0031】
また、基本的には、温度予測ができないのである。すなわち、リアルタイムに温度を計測することはできても、例えば、明日の温度をはっきりと予測することはできないのである。勿論、今日のこの時点でこの温度であれば、今日の温度から明日はそれ程温度は上がらないだろうとの漠然とした範囲での予測はつけることができる。そこで、かかる予測を頼りにして、物品を保管することになる。しかし、あくまで漠然とした予測であるため、どうしても保管管理に対しては、不安が残ることとなる。
【0032】
勿論、前述のリアルタイムの温度結果を元に、過去に得られた温度結果をも参考にして、温度の推移状況をコンピュータで判断し、例えば明日等の将来の温度を予測させることはできる。しかし、保管温度の管理が厳しい場合には、もっと確実で信頼がおける温度予測が求められる。
【0033】
そこで、本発明者は、かかる倉庫内の鉛直温度分布をより細かく適切に表現することができないかと考えた。その結果、CFD解析で熱移動を再現し得れば、その解決が図れるのではないかと考えた。そこで、かかるCFD解析結果を用いて、鉛直温度の分布状況を確認する技術について以下説明する。
【0034】
熱の移動を物理的に示す実験式は、これまで幾つか提案されてきた。先に示した非特許文献等に記載されている。しかし、かかる非特許文献に記載の方法では、前述の如く、再現性は良好であるものの、浮力による熱移流を必須とした構成である。境界条件(天井や壁の表面温度など)が既知である大空間室内の鉛直温度分布は、様々なCFDにより正確な再現は可能である。しかし、1年を通して境界条件が逐次変化する様子を再現することは難しい。
【0035】
さらには、CFDを用いた計算は極めて再現性の高いものであるが、一方では、計算に要する時間が膨大なものとなりやすい。そのため、1年を通しての温度変化を再現性高く予測計算させるには、膨大な時間がかかることとなる。特に、倉庫等の場合には、商品配置計画の際には複数回のケーススタディをする必要があるため、計算負荷が大きくなりやすい。そこで、極力計算負荷を減らす必要がある。
【0036】
本発明では、以下に説明するブロックモデルを使用することで、その計算負荷を低減した。かかる本発明のブロックモデルを使わずに鉛直温度分布の年間非定常計算を実施するとなると、1〜10時間(CFD計算1回分の時間)×20回以上(各時間ステップに必要な収束回数)×24(1日分の計算に必要なステップ数)×365日(1年分)=約20万〜200万時間といったように、完全に非現実的計算が必要となり、実質的に計算は不可能となる。後述する本発明に係わるブロックモデルを採用した熱回路網法により計算する場合には、例えば、1年分でも1時間以内で計算が可能となるのである。
【0037】
室内上下温度分布の簡易年間非定常計算については、前述の如く、非特許文献1、2、3等で種々の手法が提案されている。しかし、これらの簡易年間非定常計算手法は、浮力によるブロック間の空気の移流を実現象の通りに再現させることで室内上下温度分布を算出している。そのため、境界条件が複雑に変化する大空間多数室モデルでの適用は難しかった。また、様々な形状の大空間に適用できるよう、対象空間内は流体のみで満たされていることを大前提としており、この点でも障害物(保存商品)を空間内に複数配置している大規模倉庫での適用は難しい。
【0038】
そのため、現状の常温倉庫の利用に関しては、倉庫管理システム(WMS)であるコンピューターシステムでも、各商品に対して「出庫予定日時」しか登録されておらず、常温倉庫内の上下の鉛直温度分布に従った適切な温度環境で商品を保管する等の処置は、一切とられていなかった。また、保管温度の指定がある商品を常温倉庫内の常温雰囲気で保管しようとする発想もなかった。
【0039】
そこで、本発明者は、「多数室の年間非定常熱収支計算」が短時間で計算可能な「熱回路網法(一般的な熱解析技術、しかし現状では室内上下温度分布までは考慮できない)」を選び、この計算モデルに直接適用可能な「大規模常温倉庫の中間ブロック内に温度差をもたせた室内上下温度分布対応型ブロックモデル」、および、「『そのブロックモデルを利用する際に新たに必要となる各種係数』のCFD計算結果による推定方法」を発明することで、室内上下温度差を利用した商品配置計画を倉庫管理システム上で簡単に実施することを可能とした。
【0040】
すなわち、対象となる大空間(大規模常温倉庫)について、「数十パターンのCFD計算を実施」し、その後「CFD計算結果データベースを利用して『室内上下温度分布の簡易年間非定常計算システム』に必要な各種係数を推定」し、「完成した『室内上下温度分布の簡易年間非定常計算システム』を倉庫管理システムに導入」して、「各月の高さ毎の室温を予測しながら商品の配置を決定」するようにした。
【0041】
かかる結果、保管温度が指定された商品を、例えば指定温度の棚位置に保管する等して、恒温倉庫の使用を極力減らすことができる。また、「室温の低いエリアを有効利用することで空調室の稼働時間を削減」するという効果も得られる。
【0042】
すなわち、本発明で新たに開発したブロックモデルを採用した手法により、1年を通した高さごとの室温の変動状況が事前に把握できるようになった。かかる結果を用いることで、大規模空間独特の室内上下方向の温度差を簡単に把握でき、「低層部の低温化」の有効利用が可能となった。「効率的な保存商品配置計画」や「空調室の稼働時間の削減」が可能になるのである。
【0043】
また、大規模常温倉庫は物流業界の倉庫施設の大部分を占めるが、これらの倉庫に対して本システムを導入することで、温暖化ガス排出量の大幅な削減につながる。大規模常温倉庫は、本システムの導入により、改修工事を必要とすることなく「温度管理が出来ない倉庫」から「配置計画により温度管理が可能になった倉庫」への格上げが可能になる。
【0044】
かかる本発明の適用範囲は、例えば、常温室内の鉛直温度分布を把握することで、空間の利用価値が向上する分野で有効利用することができる。すなわち、常温室内の鉛直温度分布を把握することで、省エネルギーが実現できる分野での適用が考えられる。例えば、物流倉庫、食品保管庫、薬品保管庫等を例示として挙げることができる。すなわち、物流業界における省エネルギー技術、食品業界、製薬業界における省エネルギー技術に役立つものと思われる。
【0045】
現状のコンピューターシステムには各商品に対して「出庫予定日時」しか登録されていないが、今回はさらに「適正保管温度」も登録し、事前に計算した各月の高さ毎の温度振れ幅を利用して、入出庫や保管温度も適正になるような商品配置を決定することができる。
【0046】
さらに、本発明の特徴的な点の一つは、既存倉庫の大規模空間に適用できることである。本発明が適用できるように、敢えて新しく倉庫等を立替、あるいは改善する必要がないのである。要は運用で、本発明のメリットが十分に得られるのである。
【0047】
先ず、「大規模常温倉庫の中間ブロック内に温度差をもたせた鉛直温度分布対応型ブロックモデル」について説明する。
【0048】
提案するモデルは、熱回路網への導入を目的としているため、各ブロック間における熱収支が「温度」対「温度」ベースで構築されていなければならない。そこで、本発明者は、次に説明する新たな構成のモデルを考えた。すなわち、図3(a)、(b)に示すように、中間ブロック(M-Block)の上端温度(TaM+TgC)と天井付近ブロック(C-Block)の平均温度(TaC)の間の熱収支にはC〜M-Block間熱移動係数(KCM)[W/m2K] を、M-Block下端温度(TaM−TgF)と床付近ブロック(F-Block)の平均温度(TaF)の間の熱収支にはF〜M-Block間熱移動係数(KFM)[W/m2K] を新たに設定した。
【0049】
また、天井付近ブロックの熱収支式、中間ブロックの熱収支式、床付近ブロックの熱収支式は、表1、2に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
C-BlockとM-Blockの分割位置は、図4(a)、(b)に示すように、換気設備の中心高さとした。換気設備を通して流入する外気との温度差によって発生する熱流は、外気温がC-M-Block分割高さの室温より高い場合はC-Blockで処理されるものとして扱う。低い場合はM-Blockで処理されるものとして扱う。
【0053】
また、図4(c)に示すように、「換気なし」の状態(自然対流下)ではM-Block平均室温とM-Block上端温度との差(TgC)と下端温度との差(TgF)は同じ値をとるはずである。しかし「換気あり」の状態では、気流による攪拌効果によりTgC、TgFともに、熱流バランスが同条件の「換気なし」時に比べて減少することになる。そこで、「換気なし」の状態でのM-Block内の鉛直温度差を基準(Tg)とし、これに対し「換気あり」の場合に変化する割合(換気による気流が与える鉛直温度差の減衰係数 RC、RF )を定義する。尚、RCおよびRFの推定式は後記するCFD計算結果データベースにより事前に求めることができる。
【0054】
また、壁面が断熱条件(qM=0)で、かつ倉庫内が自然対流下であれば、M-Block内の温度差(Tg)は、C-Blockに屋根面から流入する熱量と、床付近ブロック(F-Block)に床面から流入する熱量の差(qCF)で決定されるはずである。ここで、qCFでTgを求める式をf1(qCF)と定義する。また、M-Blockを囲う鉛直面に熱流(qM)がある場合は、この熱流もTgCおよびTgFを拡大する方向に働くため、qCFの補正値q'CFを設定し、q'CFとqCF、qMの関係式 f2(qCF,qM)を定義する。式f1,式f2ともにCFD計算結果データベースにより事前に作成しておく。
【0055】
次に、「『ブロックモデルを利用する際に新たに必要となる各種係数』のCFD計算結果による推定方法」について説明する。
【0056】
「熱回路網法」に今回発明した「ブロックモデル」を組み込んで「室内上下温度分布の簡易年間非定常計算」を実施するためには、建物の形状ごとに「ブロックモデルに必要となる各種係数の推定式」を事前に作成する必要がある。つまり、換気設備の間隔や天井の高さにあわせた「ブロックモデルに必要となる各種係数の推定式」を、その都度作成する必要があるということである。
【0057】
しかし、一度この推定式を作成しておけば、その倉庫のあらゆる運用パターンや気象条件に対して「室内上下温度分布の簡易年間非定常計算」が可能になり、複数パターンのケーススタディにより最適な商品配置計画や換気設備や照明設備の稼動方法の決定が容易にできる。
【0058】
「ブロックモデルに必要となる各種係数の推定式」は、複数パターンの「CFD計算(計算時間が大変長いため1年分の計算は不可能だが、室内温度分布をもっとも精密に解析できるシミュレーション手法)」によって作成された「CFD計算結果データベース」を利用して作成する。
【0059】
各種係数推定式の作成に必要な「CFD計算結果データベース」は、対象とするモデルに対して適当と思われるCFDによって作成する(たとえば線形低レイノルズ数型k-ε乱流モデルなど)。例えば、対象とするモデルは、図5(a)に示すように、本発明を適用する大規模空間Aを直方体100として捉えたものである。本発明を適用する建屋が倉庫等の場合には、かかる直方体として把握する方法が有効に適用可能な形状である。かかる直方体100の大規模空間Aは、前掲の図4(a)、(b)に示すように、相対する外壁110の上方に換気設備120としての換気扇が相対して設けられているものとする。かかる直方体100の大規模空間Aの中には、例えば、ラックや棚等の障害物130が設けられているものとする。
【0060】
また、CFDの計算対象は、データベース作成の際の計算負荷を軽減するため、図5(b)に示すように、換気設備120の設置間隔でスライスした倉庫モデルを採用する。すなわち、相対する外壁110に設けられた換気設備120としての換気扇間を、換気扇の中心を通るスライス面で切断する。スライス面で切断された一方の側について計算すれば、他方の側の計算を行わなくても、他方の側も一方の面側と同様の結果と見做す倉庫モデルが完成される。
【0061】
上記モデルによるCFDによる境界条件(「表面温度」や換気設備から入る「外気温度」)の異なる計算パターンは、その数が多いほど精度の高い推定式を得ることが可能である。しかし、倉庫利用等に関してのコンサルティング実務への適用等を目標とすると、例えば、その数を最大でも100パターン以内に効率的に絞り込む必要がある。
【0062】
【表3】
【0063】
そこで、表3に示すように、各種係数推定式の作成毎に最低限必要な境界条件のレンジの組み合わせを網羅するように、数十パターンの境界条件をもつCFD計算パターンを決定し、CFD計算を実施し、「CFD計算結果データベース」を作成する。「CFD計算結果データベース」を利用した各種係数推定式の作成方法としては様々な手法が考えられるが、いずれの手法においても、表3に示す組合せの範囲内で各種係数とも作成可能である。
【0064】
次に、「室内上下温度分布の簡易年間非定常計算システム」を利用した省エネパレット配置計画について説明する。
【0065】
前述した「室内上下温度分布の簡易年間非定常計算システム」と、対象とする倉庫の設置域からもっとも近い気象台の「標準年気象データ(例えば、日本建築学会編集の拡張アメダス気象データより標準年データ)」を利用して、高さ毎の1年を通した室温変化を計算する。このようにして、「各月のパレットラックの高さ毎の最高室温をデータベース化」する。かかるデータベースを利用し、商品配置を管理する倉庫管理システム(ITシステム)上で「温度制限のある商品を優先的に下段に配置」させ、データベースにおける最下段室温が商品上限温度を超えない限り、常温倉庫で保管させるのである。
【実施例】
【0066】
以下、上記構成の本発明について、より具体的に実施例で説明する。先ず、「『ブロックモデルを利用する際に新たに必要となる各種係数』のCFD計算結果による推定」について説明する。
【0067】
例えば、各フロアに40m(x)×30m(y)×7m(z)の倉庫を1室のみ配置する4階建ての占有型常温倉庫を対象モデルに設定して、各種係数の推定式を作成する。その際に必要となるCFD計算パターンを、表3に示す判定基準にそって、68パターンに絞り込んだ。絞り込んだパターンを、表4、5に示した。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
[M-Block内基準鉛直温度差(Tg)推定式の作成]:「換気なし」モデルの中からM-Blockの周壁からの熱流の影響が最も少ないA-01〜A-08モデルの計算結果を利用し、qCFから鉛直温度差の基準となるTgを推定する式(f1)を求めた。次に、作成されたf1式と、壁面からの熱流が存在するA-09〜A-32モデルの計算結果を利用し、qCFの補正値であるq'CFの推定式(f2)を求めた。得られた推定式を図6に示す。
【0071】
[換気時の鉛直温度差の減衰係数(RC、RF)推定式の作成]:「換気あり」モデルの中から、鉛直温度勾配が発生しやすく、かつ導入外気の温度が異なるB-01〜B-12モデルの計算結果を利用し、鉛直温度差の減衰係数(RC、RF)推定式を求めた。2つの減衰係数はともに「屋外気温−M-Block平均室温」と強く相関していた。得られた推定式を図7に示す。
【0072】
[各面の対流熱伝達率推定式およびブロック間熱移動係数の作成]:「換気なし」モデルの天井面と床面の対流熱伝達率、および「換気なし」モデルの床面の対流熱伝達率は、当該表面と近傍ブロック内の平均室温との差に強く相関していた。得られた推定式を図8、9に示す。図8に示す場合は、換気なしのモデルである。図9に示す場合が、換気ありのモデルである。
【0073】
「換気あり」モデルの天井面の対流熱伝達率は、屋外気温により大きく変化し、「屋外気温−C-Block平均室温」と強く相関していることが確認できた。得られた推定式を図10に示す。
【0074】
その他の係数は、どのパラメータとも相関関係が認められなかったため、それぞれの対象モデルの平均値をそのまま採用する。表6にかかるパラメータを示した。
【0075】
【表6】
【0076】
次に、「今回開発された手法により作成された各種係数推定式の計算精度」について説明する。
【0077】
前頁までに作成された「各種係数推定式」をブロックモデル熱回路網に採用し、CFDと同境界条件における鉛直温度分布を算出した。その計算結果とCFDによる鉛直温度分布計算結果(精解)との間の誤差の程度を把握し、今回提案するブロックモデル作成手法の有効性を確認した。図11(a)ではCFDの計算結果を、図11(b)では本発明に係る手法による計算結果を、それぞれグラフ形式にして示した。尚、図11(c)に示した「1質点モデル」とは、従来の熱回路網法(上下温度差を考慮しない手法)での計算結果であり、参考までに示した。
【0078】
図11(a)〜(c)の場合は、表4に示すパターンの内、A01〜A06のモデルの場合である。表4に示すパターンの内A25〜A30のモデルに関しては、図11(d)〜(f)に示した。表5に示す換気ありの場合は、図12(a)〜(f)に示した。図11、12に示すモデルにおけるCFD計算結果と比べての誤差は、換気なしの場合には1℃以内で、換気ありの場合は最大2℃程度におさまっていることが確認された。また、本発明の手法を適用した場合には、極めてCFDの精密計算結果に略等しい結果が得られることも確認できた。
【0079】
次に、「『室内上下温度分布の簡易年間非定常計算システム』を利用した省エネパレット配置計画」について説明する。
【0080】
前頁までに作成した各種係数推定式を『室内上下温度分布の簡易年間非定常計算システム』に組み込み、1年を通したパレットラックの高さ毎の温度変化を計算し、月ごとの温度の触れ幅を箱髭図に示した。かかる計算に際しては、図13に示すようなモデルを想定した。
【0081】
すなわち、1テナント専有型倉庫で、階高7mの1階(最下階)の常温室に構成された常温倉庫を想定した。かかる倉庫10は、図13に示すように、2階建て以上の構成であってもよい。あるいは、平屋であってもかまわない。床は、土間コンクリート床で、外壁はALC壁を採用している。倉庫内の大規模空間Aには、障害物130としての4段ラック型パレットが設けられている。保管温度が指示された物品としては、例えば、熱容量小の乾燥商品を保管するものとする。かかる倉庫は、東京の標準年気象データが使用できる環境に建てられているものとする。換気は、図13に示すように、1時間に1回とし、8時から18時の間行うものとする。また、倉庫内の照明は、4W/m2で、8時から18時まで使用するものとした。
【0082】
さらに、図13に示す倉庫10は、大規模空間Aを囲む南側の外壁110の壁面のみが屋外に面しているものとする。その他の東側の外壁壁面、西側の外壁壁面、東側の外壁壁面は、大規模空間内と隣接する部屋空間との間仕切り壁として機能している。倉庫内に導入される外気は、南側の壁面上部に設けられた換気設備120としての換気口に設けた換気扇から導入される。かかる導入された外気は、南側壁面に設けた高さと同じ高さに設けられた北側壁面の換気設備120から、隣接する部屋空間に排出されるものとする。勿論、図13に示す倉庫10は、例えば、大規模空間Aの周囲が外壁110により屋外と隔てられている等、図1で説明したような構成でも構わない。
【0083】
かかる計算結果を、図14に箱髭図として示した。また、この箱髭図のデータを利用し、温度制限のある商品を優先的に下層ラックに配置するように「倉庫管理システム」上で管理することができる。図14に示す箱髭図を利用して、保管温度の上限が23℃の物品を保管する場合には、図15に示すように行えばよい。すなわち、各月毎に示す保管温度が23℃の以下の棚に、適宜移し変える等して保管すればよい。しかし、図14に示す如く、7月、8月、9月の3カ月間は、保管温度の23℃以下の棚は存在しないため、その時は恒温室等への移動が必要である。しかし、1月〜6月、10月〜12月の間は、常温倉庫内の棚に適切に保管できることが分かる。
【0084】
尚、箱髭図では、線の左端:各月の温度データから、低いほうから頻度1%の位置にある温度を示す。長方形の左端:各月の温度データから、低いほうから頻度25%の位置にある温度を示す。長方形の右端:各月の温度データから、低いほうから頻度75%の位置にある温度を示している。さらに、線の右端:各月の温度データから、低いほうから頻度99%の位置にある温度を示している。
【0085】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は天井が高い建屋を有する常温倉庫等の空間内の鉛直温度分布の状況把握に有効に利用でき、特に保管温度が指定された商品等を恒温室を用いることなく常温雰囲気で保管する分野で有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施例の棚毎に温度計を設けた構成の倉庫の構成を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の一実施例の棚毎に温度計を設けた構成で保管温度の指定のある物品を保管する場合の管理手法を模式的に示すブロック図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明の一実施例のCFDを用いて鉛直温度の分布状況を把握するためのモデルを模式的に示す説明図である。
【図4】(a)、(b)、(c)は、図3に示すモデルで、換気の有無による熱流量の分配方法を模式的に説明する説明図である。
【図5】(a)、(b)は、CFD計算するためのスライスモデルの説明図である。
【図6】換気なしモデルで採用する基準鉛直温度を示す式の説明図である。
【図7】換気ありモデルで採用する鉛直温度の減衰状況を示す式の説明図である。
【図8】(a)、(b)は、換気なしモデルで採用する天井面、床面の平均室温と対流熱伝達率の関係式を説明する説明図である。
【図9】(a)、(b)は、図3(a)に示すモデルのFブロックの平均室温と対流熱伝達率の関係式を説明する説明図である。
【図10】図3(a)に示すモデルのCブロックの平均室温と対流熱伝達率の関係式を説明する説明図である。
【図11】(a)〜(f)は、換気なしの場合のCFD、本発明の方法、1質点モデルのそれぞれの鉛直温度分布の計算結果を図示した説明図である。
【図12】(a)〜(f)は、換気ありの場合のCFD、本発明の方法、1質点モデルのそれぞれの鉛直温度分布の計算結果を図示した説明図である。
【図13】本発明に係る一実施例の鉛直温度分布の把握における採用した倉庫モデルを模式的に示した説明図である。
【図14】本発明に係る一実施例の年間の各月毎のラック高さ毎の室温状況を箱髭図で示した説明図である。
【図15】本発明に係る一実施例の年間の各月毎のラック高さ毎の室温状況に、保管指示温度が指定された商品を管理する場合を箱髭図で示した説明図である。
【符号の説明】
【0088】
10 倉庫
20 棚
21 棚
22 棚
23 棚
24 棚
30 温度計
31 温度計
32 温度計
33 温度計
34 温度計
40 部屋
40a 倉庫管理室
41 コンピュータ
100 直方体
110 外壁
120 換気設備
130 障害物
A 大規模空間
【技術分野】
【0001】
本発明は鉛直温度分布の新規な把握技術に関し、特に倉庫等の天井が高い建屋の内部鉛直温度分布の把握に適用して有効である。かかる把握技術により得られた結果を利用すれば、例えば、保管温度が指定されている商品等の品物を恒温室等に別途取り分けて管理することなく、常温倉庫内で適切に保管管理を行うことができる。
【背景技術】
【0002】
近年の流通業界の国際化により、空港や高速道路インターチェンジ周辺に比較的短工期で施工可能な世界標準の大規模倉庫が急ピッチで建設されている。かかる倉庫では、効率的在庫管理のため、倉庫内のパレット配置はスムーズな出庫や入庫を目的とした商品の配置管理手法である「倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)」というITシステムで管理されている。例えば、商品Aは○列△段目・・・といったようにコンピューターシステムが指示をして、当該商品の在庫あるいは入出庫を管理している。現状では、「保管温度条件が少しでも設定されている商品」は「恒温倉庫」で保存している。
【0003】
室内上下温度分布の簡易年間非定常計算については、非特許文献1に、中原等により日成層型蓄熱槽の熱特性予測モデル(R値モデル)の提案がなされている。非特許文献2には、宮川等により、大空間を2〜3ブロックに分けブロック間の仮想換気量を設定しながら時間ステップを進める手法が提案されている。非特許文献3には、戸河里等により、壁面を沿う下降流とブロック間の熱移動係数をモデル化した提案がなされている。いずれも実験結果と良く一致している。
【0004】
また、CFDに関しては、例えば、倉庫等の天井が高い建屋の内部鉛直温度分布に関してではないが、特許文献1、2等の例がある。
【非特許文献1】伊藤尚寛・横井睦己・中原信生:温風暖房空間の上下温度分布の簡易計算モデル(空調空間の熱的特性に関する研究 第2報)、日本建築学会計画系論文報告集、第398号、pp.59〜67、1989年4月
【非特許文献2】宮川保之:大空間の上下室温分布算定に関する実験的研究、日本建築学会論文報告集、第286号、pp.75〜82、1979年12月
【非特許文献3】戸河里敏、荒井良延、三浦克弘:大空間における上下温度分布の予測モデル(大空間の空調・熱環境計画手法の研究 その1)、日本建築学会計画系論文報告集、第427号、pp.9〜19、1991年9月
【特許文献1】特許第4072887号公報
【特許文献2】特許第4001523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大規模な常温倉庫(空調しない倉庫)では1年を通した室温の変化や鉛直方向の温度分布予測は、現状では困難である。そのため、「保管温度条件が少しでも設定されている商品」は「恒温倉庫」で保存しなければならず、恒温倉庫に関わる「熱源設備稼動期間の過剰設定」が問題となっている。
【0006】
本発明の目的は、倉庫等の建屋内の鉛直温度分布を把握して、適正な保管温度が指定された商品等の品物を可能な限り常温管理できる技術を提供することにある。
【0007】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
すなわち、常温での保管温度が指示された物品を、常温倉庫内の指示された保管温度以下の場所で保管することができる。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0011】
常温での保管温度が指示された物品を、従来とは異なり、常温倉庫内で適切に保管することができる。そのため恒温室等の使用を抑えることができ、恒温室使用に際しての空調負荷を低減することができる。つまり。温暖化ガス排出量の大幅な削減につなげることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
本発明は、大規模空間の鉛直温度分布を利用する技術に関する。例えば、天井高さが3m以上の建屋内の大規模空間で発生する鉛直方向の温度差を利用する技術である。例えば、商品等の物品を、その物品に適った温度の空間内の鉛直温度分布域に配置することで、商品等の適正な保管管理を行う技術である。例えば、常温倉庫内に、保管温度が指示された商品等の物品を、保管することができる技術である。
【0014】
かかる本発明では、大規模空間における鉛直温度分布がどのようになっているか、先ず把握する必要がある。かかる温度把握を大前提として、上記本発明にかかる技術が可能となる。また、かかる技術の適用は、例えば、建屋の天井高さが3m以下の空間の場合には、建屋内の空間の温度状況は一様と見做すことができるため、本発明の技術はかかる空間への適用は想定していない。すなわち、以下の説明では、本発明の適用技術は、天井高さが3mを越える空間に適用するものであると言える。
【0015】
前記の如く、従来、常温内で保管温度の指示がある物品は、恒温倉庫内に保管していた。少なくとも、常温倉庫内の常温雰囲気での保管はあり得なかった。しかし、天井高さが3mを越える大規模空間内では、鉛直方向に温度差が現れるのである。本発明者は、かかる温度差を有効利用することができないかと着想した。
【0016】
例えば、日本国内では、年間を通じて、四季の移り変わりと共に外気温度が著しく変化する。そのため、かかる環境内に存在する常温倉庫も外気の温度雰囲気に対応して変化する。例えば、常温倉庫内での平均温度は、低い場合では約10℃前後となることが多い。場合によっては、氷点下の場合も十分にあり得る。また、一方では、夏季等の常温倉庫内の温度が高いときには、平均温度が約30℃あるいはそれ以上となる場合も考えられる。
【0017】
このように常温倉庫内の平均温度は、一年で、すなわち12カ月で例えば約10℃〜30℃まで変化するのである。かかる温度は、倉庫内での平均温度を示している。より正確に言えば、倉庫内の個々の位置で温度は異なっている筈である。倉庫内の空間が、例えば、天井高さが3m以下の空間であれば、かかる倉庫空間内の温度は一様と見做せることが知られている。しかし、本発明者の考察では、天井高さが3mを超える場合には、最早かかる空間内の温度を一様と見做すことはできないものと実験等の結果から判断した。すなわち、鉛直方向で、無視出来ないほどの温度差が発生することが確かめられた。高さ方向に沿って、上方領域と、中間領域、下方領域とでは、明瞭に温度差が発生することが明らかとなった。
【0018】
平均温度は、上述の如く、例えば10℃であっても、空間内の上方位置と下方位置とでは、明瞭に温度差が発生しているのである。あるいは、空間内の上方位置と、中間位置と、下方位置とでは、それぞれ明瞭に温度差が発生している場合がある。また、平均温度が30℃になった場合でも、同様に、空間内の上方位置、下方位置、あるいは上方、中間、下方等のそれぞれの位置間では、明瞭に温度差が発生している場合がある。
【0019】
すなわち、春夏秋冬、四季を通じて、季節毎に、あるいは月毎に、倉庫内の鉛直方向の温度はそれぞれ変化しているのである。かかる状況を前提とすれば、一年を通じてみれば、倉庫内には、少なくとも、平均温度の上限と下限の間の温度を示す空間位置が存在している筈であるということになる。そこで、平均温度の上限と下限の間の特定温度が保管時の温度と指定された場合には、かかる温度を示す空間位置に保管すれば、従来の恒温室での保管は省けるということになる。勿論、かかる保管している空間位置の温度が変化する場合には、その保管時の温度が維持できる別の空間位置に適宜に移動させることは必要である。
【0020】
かかる状況を前提とすれば、例えば23℃の保管温度が指示された物品は、一年の何カ月間は、場合によっては、常温倉庫内に置いて保管することができることを意味している。すなわち、23℃の恒温室内への保管は必要ないのである。倉庫内の温度状況が把握できるなら、例えば、23℃の温度域が倉庫内の空間内に存在すれば、そこに商品の保管が可能であることを示唆しているのである。さらには、かかる保管場所の温度が変化した場合には、例えば、高くなった場合には、適した23℃の温度域に移し変えることで、対応することもできるのである。勿論、夏季等のように倉庫内の全ての空間位置の温度が23℃を超える状況になった場合には、恒温室内に入れて保管するようにすればよいのである。
【0021】
このように本発明は、倉庫内の温度分布、特に上下方向の鉛直温度分布が分かっていれば可能となる技術である。尚、水平方向の温度に関しては、実験では、略一様と見做すことができる。
【0022】
本発明は、前記の如く、天井高さが3mを超える倉庫に適用するものである。そこで、床面から天井までの高さが3mを超える倉庫内空間等の大規模空間に適用する場合について以下説明する。
【0023】
本実施の形態で説明する空間は、図1に示すように、床面から天井までの高さが3mを超える大規模空間Aに構成されている。かかる大規模空間Aを有する倉庫10は、図1に示すように2階建て以上の多数階に構成されているものとする。勿論、平屋でも構わない。さらに、かかる大規模空間Aは、大規模空間内と大規模空間外とを隔てる外壁110により囲まれている。図1に示す場合には、例えば、外壁110は、屋内の大規模空間Aと屋外とを仕切る壁として構成されている。勿論、かかる外壁110は、屋内の間仕切り壁として使用される場合であっても構わない。
【0024】
かかる外壁110には、例えば、上方に換気設備120が設けられ、倉庫内の換気が行えるようになっている。かかる換気設備120は、例えば、換気扇が設けられた換気口に構成しておけばよい。但し、かかる換気設備120は、特段設けない構成でも構わない。
【0025】
かかる大規模空間Aの倉庫10内には、図に示すように、棚20が設けられている。かかる棚20には、物品が載せられたパレットが、フォークリフト等を用いて載置できるようになっている。個々の棚20には、棚位置の温度を確認する温度計30が設けられている。
【0026】
例えば、図1に示す場合には、倉庫10内には、4段構成の棚20が設けられているとする。最下段の棚21(20)には、温度計31(30)が、棚位置の温度が確認できるように設けられている。同様に、棚22(20)、23(20)、24(20)には、温度計32(30)、33(30)、34(30)が設けられている。このようにして、棚位置のリアルタイムの温度が分かるようになっている。
【0027】
かかる棚20毎に設けられた温度計30は、例えば、図2に示すように、倉庫管理室40a等の部屋40に設けられたコンピュータ41に転送される。かかる転送された温度は、例えば、パネル42に一括表示されて、棚位置毎の温度状況がリアルタイムに分かるように構成されている。かかる棚位置毎の温度状況を確認しながら物品の保管管理を行えばよい。保管温度が指定された物品のある棚位置が、保管温度より高くなりそうな場合や、実際に高くなった場合には、別の保管温度が維持されている棚位置に物品を移動させて置くようにすればよい。
【0028】
かかる保管管理では、棚毎の温度を、有線であるいは無線で、保管温度を管理するコンピュータ41等に自動で転送できるようにしておけばよい。かかる自動転送されたリアルタイムの棚位置の温度と、物品の棚置きの管理状況とから、保管温度が維持されていて、且つまだ物品が置ける空き状況の棚位置を探し出せるようになっている。かかる結果は、作業者に送られ、フォークリフトで物品の移動を速やかに行うようにすればよい。自動でフォークリフトの運転者に、棚位置を変えるか、あるいは恒温室へ運び込むかを、適宜に指示を出すように設定しておけばよい。
【0029】
このようにして、例えば23℃の温度域が常温倉庫内に存在する場合には、物品の棚位置を変える等して、常温倉庫内で保管することができる。常温倉庫内に、指示された保管温度領域がなくなった場合には、恒温室内に避難して保管すればよい。また、常温倉庫内に指示された保管温度領域が発生した場合には、恒温室内から、常温倉庫内の当該棚位置に移せばよい。
【0030】
以上の説明の場合には、常温倉庫内の棚毎に温度計を設けて、その温度計でリアルタイムに鉛直温度分布を把握する方法であった。かかる方法でも、十分に対応できる筈だが、しかし、温度計を棚毎に設けたり、あるいは全ての棚からの温度情報を集計してその対応を指示する等、処理にはかなりの手間がかかる。さらには、棚位置の温度は、温度計がある空間点の温度でしかない。
【0031】
また、基本的には、温度予測ができないのである。すなわち、リアルタイムに温度を計測することはできても、例えば、明日の温度をはっきりと予測することはできないのである。勿論、今日のこの時点でこの温度であれば、今日の温度から明日はそれ程温度は上がらないだろうとの漠然とした範囲での予測はつけることができる。そこで、かかる予測を頼りにして、物品を保管することになる。しかし、あくまで漠然とした予測であるため、どうしても保管管理に対しては、不安が残ることとなる。
【0032】
勿論、前述のリアルタイムの温度結果を元に、過去に得られた温度結果をも参考にして、温度の推移状況をコンピュータで判断し、例えば明日等の将来の温度を予測させることはできる。しかし、保管温度の管理が厳しい場合には、もっと確実で信頼がおける温度予測が求められる。
【0033】
そこで、本発明者は、かかる倉庫内の鉛直温度分布をより細かく適切に表現することができないかと考えた。その結果、CFD解析で熱移動を再現し得れば、その解決が図れるのではないかと考えた。そこで、かかるCFD解析結果を用いて、鉛直温度の分布状況を確認する技術について以下説明する。
【0034】
熱の移動を物理的に示す実験式は、これまで幾つか提案されてきた。先に示した非特許文献等に記載されている。しかし、かかる非特許文献に記載の方法では、前述の如く、再現性は良好であるものの、浮力による熱移流を必須とした構成である。境界条件(天井や壁の表面温度など)が既知である大空間室内の鉛直温度分布は、様々なCFDにより正確な再現は可能である。しかし、1年を通して境界条件が逐次変化する様子を再現することは難しい。
【0035】
さらには、CFDを用いた計算は極めて再現性の高いものであるが、一方では、計算に要する時間が膨大なものとなりやすい。そのため、1年を通しての温度変化を再現性高く予測計算させるには、膨大な時間がかかることとなる。特に、倉庫等の場合には、商品配置計画の際には複数回のケーススタディをする必要があるため、計算負荷が大きくなりやすい。そこで、極力計算負荷を減らす必要がある。
【0036】
本発明では、以下に説明するブロックモデルを使用することで、その計算負荷を低減した。かかる本発明のブロックモデルを使わずに鉛直温度分布の年間非定常計算を実施するとなると、1〜10時間(CFD計算1回分の時間)×20回以上(各時間ステップに必要な収束回数)×24(1日分の計算に必要なステップ数)×365日(1年分)=約20万〜200万時間といったように、完全に非現実的計算が必要となり、実質的に計算は不可能となる。後述する本発明に係わるブロックモデルを採用した熱回路網法により計算する場合には、例えば、1年分でも1時間以内で計算が可能となるのである。
【0037】
室内上下温度分布の簡易年間非定常計算については、前述の如く、非特許文献1、2、3等で種々の手法が提案されている。しかし、これらの簡易年間非定常計算手法は、浮力によるブロック間の空気の移流を実現象の通りに再現させることで室内上下温度分布を算出している。そのため、境界条件が複雑に変化する大空間多数室モデルでの適用は難しかった。また、様々な形状の大空間に適用できるよう、対象空間内は流体のみで満たされていることを大前提としており、この点でも障害物(保存商品)を空間内に複数配置している大規模倉庫での適用は難しい。
【0038】
そのため、現状の常温倉庫の利用に関しては、倉庫管理システム(WMS)であるコンピューターシステムでも、各商品に対して「出庫予定日時」しか登録されておらず、常温倉庫内の上下の鉛直温度分布に従った適切な温度環境で商品を保管する等の処置は、一切とられていなかった。また、保管温度の指定がある商品を常温倉庫内の常温雰囲気で保管しようとする発想もなかった。
【0039】
そこで、本発明者は、「多数室の年間非定常熱収支計算」が短時間で計算可能な「熱回路網法(一般的な熱解析技術、しかし現状では室内上下温度分布までは考慮できない)」を選び、この計算モデルに直接適用可能な「大規模常温倉庫の中間ブロック内に温度差をもたせた室内上下温度分布対応型ブロックモデル」、および、「『そのブロックモデルを利用する際に新たに必要となる各種係数』のCFD計算結果による推定方法」を発明することで、室内上下温度差を利用した商品配置計画を倉庫管理システム上で簡単に実施することを可能とした。
【0040】
すなわち、対象となる大空間(大規模常温倉庫)について、「数十パターンのCFD計算を実施」し、その後「CFD計算結果データベースを利用して『室内上下温度分布の簡易年間非定常計算システム』に必要な各種係数を推定」し、「完成した『室内上下温度分布の簡易年間非定常計算システム』を倉庫管理システムに導入」して、「各月の高さ毎の室温を予測しながら商品の配置を決定」するようにした。
【0041】
かかる結果、保管温度が指定された商品を、例えば指定温度の棚位置に保管する等して、恒温倉庫の使用を極力減らすことができる。また、「室温の低いエリアを有効利用することで空調室の稼働時間を削減」するという効果も得られる。
【0042】
すなわち、本発明で新たに開発したブロックモデルを採用した手法により、1年を通した高さごとの室温の変動状況が事前に把握できるようになった。かかる結果を用いることで、大規模空間独特の室内上下方向の温度差を簡単に把握でき、「低層部の低温化」の有効利用が可能となった。「効率的な保存商品配置計画」や「空調室の稼働時間の削減」が可能になるのである。
【0043】
また、大規模常温倉庫は物流業界の倉庫施設の大部分を占めるが、これらの倉庫に対して本システムを導入することで、温暖化ガス排出量の大幅な削減につながる。大規模常温倉庫は、本システムの導入により、改修工事を必要とすることなく「温度管理が出来ない倉庫」から「配置計画により温度管理が可能になった倉庫」への格上げが可能になる。
【0044】
かかる本発明の適用範囲は、例えば、常温室内の鉛直温度分布を把握することで、空間の利用価値が向上する分野で有効利用することができる。すなわち、常温室内の鉛直温度分布を把握することで、省エネルギーが実現できる分野での適用が考えられる。例えば、物流倉庫、食品保管庫、薬品保管庫等を例示として挙げることができる。すなわち、物流業界における省エネルギー技術、食品業界、製薬業界における省エネルギー技術に役立つものと思われる。
【0045】
現状のコンピューターシステムには各商品に対して「出庫予定日時」しか登録されていないが、今回はさらに「適正保管温度」も登録し、事前に計算した各月の高さ毎の温度振れ幅を利用して、入出庫や保管温度も適正になるような商品配置を決定することができる。
【0046】
さらに、本発明の特徴的な点の一つは、既存倉庫の大規模空間に適用できることである。本発明が適用できるように、敢えて新しく倉庫等を立替、あるいは改善する必要がないのである。要は運用で、本発明のメリットが十分に得られるのである。
【0047】
先ず、「大規模常温倉庫の中間ブロック内に温度差をもたせた鉛直温度分布対応型ブロックモデル」について説明する。
【0048】
提案するモデルは、熱回路網への導入を目的としているため、各ブロック間における熱収支が「温度」対「温度」ベースで構築されていなければならない。そこで、本発明者は、次に説明する新たな構成のモデルを考えた。すなわち、図3(a)、(b)に示すように、中間ブロック(M-Block)の上端温度(TaM+TgC)と天井付近ブロック(C-Block)の平均温度(TaC)の間の熱収支にはC〜M-Block間熱移動係数(KCM)[W/m2K] を、M-Block下端温度(TaM−TgF)と床付近ブロック(F-Block)の平均温度(TaF)の間の熱収支にはF〜M-Block間熱移動係数(KFM)[W/m2K] を新たに設定した。
【0049】
また、天井付近ブロックの熱収支式、中間ブロックの熱収支式、床付近ブロックの熱収支式は、表1、2に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
C-BlockとM-Blockの分割位置は、図4(a)、(b)に示すように、換気設備の中心高さとした。換気設備を通して流入する外気との温度差によって発生する熱流は、外気温がC-M-Block分割高さの室温より高い場合はC-Blockで処理されるものとして扱う。低い場合はM-Blockで処理されるものとして扱う。
【0053】
また、図4(c)に示すように、「換気なし」の状態(自然対流下)ではM-Block平均室温とM-Block上端温度との差(TgC)と下端温度との差(TgF)は同じ値をとるはずである。しかし「換気あり」の状態では、気流による攪拌効果によりTgC、TgFともに、熱流バランスが同条件の「換気なし」時に比べて減少することになる。そこで、「換気なし」の状態でのM-Block内の鉛直温度差を基準(Tg)とし、これに対し「換気あり」の場合に変化する割合(換気による気流が与える鉛直温度差の減衰係数 RC、RF )を定義する。尚、RCおよびRFの推定式は後記するCFD計算結果データベースにより事前に求めることができる。
【0054】
また、壁面が断熱条件(qM=0)で、かつ倉庫内が自然対流下であれば、M-Block内の温度差(Tg)は、C-Blockに屋根面から流入する熱量と、床付近ブロック(F-Block)に床面から流入する熱量の差(qCF)で決定されるはずである。ここで、qCFでTgを求める式をf1(qCF)と定義する。また、M-Blockを囲う鉛直面に熱流(qM)がある場合は、この熱流もTgCおよびTgFを拡大する方向に働くため、qCFの補正値q'CFを設定し、q'CFとqCF、qMの関係式 f2(qCF,qM)を定義する。式f1,式f2ともにCFD計算結果データベースにより事前に作成しておく。
【0055】
次に、「『ブロックモデルを利用する際に新たに必要となる各種係数』のCFD計算結果による推定方法」について説明する。
【0056】
「熱回路網法」に今回発明した「ブロックモデル」を組み込んで「室内上下温度分布の簡易年間非定常計算」を実施するためには、建物の形状ごとに「ブロックモデルに必要となる各種係数の推定式」を事前に作成する必要がある。つまり、換気設備の間隔や天井の高さにあわせた「ブロックモデルに必要となる各種係数の推定式」を、その都度作成する必要があるということである。
【0057】
しかし、一度この推定式を作成しておけば、その倉庫のあらゆる運用パターンや気象条件に対して「室内上下温度分布の簡易年間非定常計算」が可能になり、複数パターンのケーススタディにより最適な商品配置計画や換気設備や照明設備の稼動方法の決定が容易にできる。
【0058】
「ブロックモデルに必要となる各種係数の推定式」は、複数パターンの「CFD計算(計算時間が大変長いため1年分の計算は不可能だが、室内温度分布をもっとも精密に解析できるシミュレーション手法)」によって作成された「CFD計算結果データベース」を利用して作成する。
【0059】
各種係数推定式の作成に必要な「CFD計算結果データベース」は、対象とするモデルに対して適当と思われるCFDによって作成する(たとえば線形低レイノルズ数型k-ε乱流モデルなど)。例えば、対象とするモデルは、図5(a)に示すように、本発明を適用する大規模空間Aを直方体100として捉えたものである。本発明を適用する建屋が倉庫等の場合には、かかる直方体として把握する方法が有効に適用可能な形状である。かかる直方体100の大規模空間Aは、前掲の図4(a)、(b)に示すように、相対する外壁110の上方に換気設備120としての換気扇が相対して設けられているものとする。かかる直方体100の大規模空間Aの中には、例えば、ラックや棚等の障害物130が設けられているものとする。
【0060】
また、CFDの計算対象は、データベース作成の際の計算負荷を軽減するため、図5(b)に示すように、換気設備120の設置間隔でスライスした倉庫モデルを採用する。すなわち、相対する外壁110に設けられた換気設備120としての換気扇間を、換気扇の中心を通るスライス面で切断する。スライス面で切断された一方の側について計算すれば、他方の側の計算を行わなくても、他方の側も一方の面側と同様の結果と見做す倉庫モデルが完成される。
【0061】
上記モデルによるCFDによる境界条件(「表面温度」や換気設備から入る「外気温度」)の異なる計算パターンは、その数が多いほど精度の高い推定式を得ることが可能である。しかし、倉庫利用等に関してのコンサルティング実務への適用等を目標とすると、例えば、その数を最大でも100パターン以内に効率的に絞り込む必要がある。
【0062】
【表3】
【0063】
そこで、表3に示すように、各種係数推定式の作成毎に最低限必要な境界条件のレンジの組み合わせを網羅するように、数十パターンの境界条件をもつCFD計算パターンを決定し、CFD計算を実施し、「CFD計算結果データベース」を作成する。「CFD計算結果データベース」を利用した各種係数推定式の作成方法としては様々な手法が考えられるが、いずれの手法においても、表3に示す組合せの範囲内で各種係数とも作成可能である。
【0064】
次に、「室内上下温度分布の簡易年間非定常計算システム」を利用した省エネパレット配置計画について説明する。
【0065】
前述した「室内上下温度分布の簡易年間非定常計算システム」と、対象とする倉庫の設置域からもっとも近い気象台の「標準年気象データ(例えば、日本建築学会編集の拡張アメダス気象データより標準年データ)」を利用して、高さ毎の1年を通した室温変化を計算する。このようにして、「各月のパレットラックの高さ毎の最高室温をデータベース化」する。かかるデータベースを利用し、商品配置を管理する倉庫管理システム(ITシステム)上で「温度制限のある商品を優先的に下段に配置」させ、データベースにおける最下段室温が商品上限温度を超えない限り、常温倉庫で保管させるのである。
【実施例】
【0066】
以下、上記構成の本発明について、より具体的に実施例で説明する。先ず、「『ブロックモデルを利用する際に新たに必要となる各種係数』のCFD計算結果による推定」について説明する。
【0067】
例えば、各フロアに40m(x)×30m(y)×7m(z)の倉庫を1室のみ配置する4階建ての占有型常温倉庫を対象モデルに設定して、各種係数の推定式を作成する。その際に必要となるCFD計算パターンを、表3に示す判定基準にそって、68パターンに絞り込んだ。絞り込んだパターンを、表4、5に示した。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
[M-Block内基準鉛直温度差(Tg)推定式の作成]:「換気なし」モデルの中からM-Blockの周壁からの熱流の影響が最も少ないA-01〜A-08モデルの計算結果を利用し、qCFから鉛直温度差の基準となるTgを推定する式(f1)を求めた。次に、作成されたf1式と、壁面からの熱流が存在するA-09〜A-32モデルの計算結果を利用し、qCFの補正値であるq'CFの推定式(f2)を求めた。得られた推定式を図6に示す。
【0071】
[換気時の鉛直温度差の減衰係数(RC、RF)推定式の作成]:「換気あり」モデルの中から、鉛直温度勾配が発生しやすく、かつ導入外気の温度が異なるB-01〜B-12モデルの計算結果を利用し、鉛直温度差の減衰係数(RC、RF)推定式を求めた。2つの減衰係数はともに「屋外気温−M-Block平均室温」と強く相関していた。得られた推定式を図7に示す。
【0072】
[各面の対流熱伝達率推定式およびブロック間熱移動係数の作成]:「換気なし」モデルの天井面と床面の対流熱伝達率、および「換気なし」モデルの床面の対流熱伝達率は、当該表面と近傍ブロック内の平均室温との差に強く相関していた。得られた推定式を図8、9に示す。図8に示す場合は、換気なしのモデルである。図9に示す場合が、換気ありのモデルである。
【0073】
「換気あり」モデルの天井面の対流熱伝達率は、屋外気温により大きく変化し、「屋外気温−C-Block平均室温」と強く相関していることが確認できた。得られた推定式を図10に示す。
【0074】
その他の係数は、どのパラメータとも相関関係が認められなかったため、それぞれの対象モデルの平均値をそのまま採用する。表6にかかるパラメータを示した。
【0075】
【表6】
【0076】
次に、「今回開発された手法により作成された各種係数推定式の計算精度」について説明する。
【0077】
前頁までに作成された「各種係数推定式」をブロックモデル熱回路網に採用し、CFDと同境界条件における鉛直温度分布を算出した。その計算結果とCFDによる鉛直温度分布計算結果(精解)との間の誤差の程度を把握し、今回提案するブロックモデル作成手法の有効性を確認した。図11(a)ではCFDの計算結果を、図11(b)では本発明に係る手法による計算結果を、それぞれグラフ形式にして示した。尚、図11(c)に示した「1質点モデル」とは、従来の熱回路網法(上下温度差を考慮しない手法)での計算結果であり、参考までに示した。
【0078】
図11(a)〜(c)の場合は、表4に示すパターンの内、A01〜A06のモデルの場合である。表4に示すパターンの内A25〜A30のモデルに関しては、図11(d)〜(f)に示した。表5に示す換気ありの場合は、図12(a)〜(f)に示した。図11、12に示すモデルにおけるCFD計算結果と比べての誤差は、換気なしの場合には1℃以内で、換気ありの場合は最大2℃程度におさまっていることが確認された。また、本発明の手法を適用した場合には、極めてCFDの精密計算結果に略等しい結果が得られることも確認できた。
【0079】
次に、「『室内上下温度分布の簡易年間非定常計算システム』を利用した省エネパレット配置計画」について説明する。
【0080】
前頁までに作成した各種係数推定式を『室内上下温度分布の簡易年間非定常計算システム』に組み込み、1年を通したパレットラックの高さ毎の温度変化を計算し、月ごとの温度の触れ幅を箱髭図に示した。かかる計算に際しては、図13に示すようなモデルを想定した。
【0081】
すなわち、1テナント専有型倉庫で、階高7mの1階(最下階)の常温室に構成された常温倉庫を想定した。かかる倉庫10は、図13に示すように、2階建て以上の構成であってもよい。あるいは、平屋であってもかまわない。床は、土間コンクリート床で、外壁はALC壁を採用している。倉庫内の大規模空間Aには、障害物130としての4段ラック型パレットが設けられている。保管温度が指示された物品としては、例えば、熱容量小の乾燥商品を保管するものとする。かかる倉庫は、東京の標準年気象データが使用できる環境に建てられているものとする。換気は、図13に示すように、1時間に1回とし、8時から18時の間行うものとする。また、倉庫内の照明は、4W/m2で、8時から18時まで使用するものとした。
【0082】
さらに、図13に示す倉庫10は、大規模空間Aを囲む南側の外壁110の壁面のみが屋外に面しているものとする。その他の東側の外壁壁面、西側の外壁壁面、東側の外壁壁面は、大規模空間内と隣接する部屋空間との間仕切り壁として機能している。倉庫内に導入される外気は、南側の壁面上部に設けられた換気設備120としての換気口に設けた換気扇から導入される。かかる導入された外気は、南側壁面に設けた高さと同じ高さに設けられた北側壁面の換気設備120から、隣接する部屋空間に排出されるものとする。勿論、図13に示す倉庫10は、例えば、大規模空間Aの周囲が外壁110により屋外と隔てられている等、図1で説明したような構成でも構わない。
【0083】
かかる計算結果を、図14に箱髭図として示した。また、この箱髭図のデータを利用し、温度制限のある商品を優先的に下層ラックに配置するように「倉庫管理システム」上で管理することができる。図14に示す箱髭図を利用して、保管温度の上限が23℃の物品を保管する場合には、図15に示すように行えばよい。すなわち、各月毎に示す保管温度が23℃の以下の棚に、適宜移し変える等して保管すればよい。しかし、図14に示す如く、7月、8月、9月の3カ月間は、保管温度の23℃以下の棚は存在しないため、その時は恒温室等への移動が必要である。しかし、1月〜6月、10月〜12月の間は、常温倉庫内の棚に適切に保管できることが分かる。
【0084】
尚、箱髭図では、線の左端:各月の温度データから、低いほうから頻度1%の位置にある温度を示す。長方形の左端:各月の温度データから、低いほうから頻度25%の位置にある温度を示す。長方形の右端:各月の温度データから、低いほうから頻度75%の位置にある温度を示している。さらに、線の右端:各月の温度データから、低いほうから頻度99%の位置にある温度を示している。
【0085】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は天井が高い建屋を有する常温倉庫等の空間内の鉛直温度分布の状況把握に有効に利用でき、特に保管温度が指定された商品等を恒温室を用いることなく常温雰囲気で保管する分野で有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施例の棚毎に温度計を設けた構成の倉庫の構成を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の一実施例の棚毎に温度計を設けた構成で保管温度の指定のある物品を保管する場合の管理手法を模式的に示すブロック図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明の一実施例のCFDを用いて鉛直温度の分布状況を把握するためのモデルを模式的に示す説明図である。
【図4】(a)、(b)、(c)は、図3に示すモデルで、換気の有無による熱流量の分配方法を模式的に説明する説明図である。
【図5】(a)、(b)は、CFD計算するためのスライスモデルの説明図である。
【図6】換気なしモデルで採用する基準鉛直温度を示す式の説明図である。
【図7】換気ありモデルで採用する鉛直温度の減衰状況を示す式の説明図である。
【図8】(a)、(b)は、換気なしモデルで採用する天井面、床面の平均室温と対流熱伝達率の関係式を説明する説明図である。
【図9】(a)、(b)は、図3(a)に示すモデルのFブロックの平均室温と対流熱伝達率の関係式を説明する説明図である。
【図10】図3(a)に示すモデルのCブロックの平均室温と対流熱伝達率の関係式を説明する説明図である。
【図11】(a)〜(f)は、換気なしの場合のCFD、本発明の方法、1質点モデルのそれぞれの鉛直温度分布の計算結果を図示した説明図である。
【図12】(a)〜(f)は、換気ありの場合のCFD、本発明の方法、1質点モデルのそれぞれの鉛直温度分布の計算結果を図示した説明図である。
【図13】本発明に係る一実施例の鉛直温度分布の把握における採用した倉庫モデルを模式的に示した説明図である。
【図14】本発明に係る一実施例の年間の各月毎のラック高さ毎の室温状況を箱髭図で示した説明図である。
【図15】本発明に係る一実施例の年間の各月毎のラック高さ毎の室温状況に、保管指示温度が指定された商品を管理する場合を箱髭図で示した説明図である。
【符号の説明】
【0088】
10 倉庫
20 棚
21 棚
22 棚
23 棚
24 棚
30 温度計
31 温度計
32 温度計
33 温度計
34 温度計
40 部屋
40a 倉庫管理室
41 コンピュータ
100 直方体
110 外壁
120 換気設備
130 障害物
A 大規模空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温での保管温度が指示された物品を保管する常温倉庫であって、
前記常温倉庫は、鉛直方向に設けた前記物品を常温で保管する棚が設けられ、
前記棚は、棚毎に、棚置きした前記物品の保管中の保管時温度が示されていることを特徴とする常温倉庫。
【請求項2】
請求項1記載の常温倉庫において、
前記保管時温度は、温度を変数として多数室の年間非定常熱収支計算を行う熱回路網法の計算式の前記温度に、上中下の各ブロック間の熱移動を温度で示せる室内上下温度分布対応型ブロックモデルの温度式を代入して得られる鉛直温度算出式に基づいて、前記鉛直温度算出式の係数をCFD計算結果により求めて、前記常温倉庫内の前記棚毎の保管時温度が決定されることを特徴とする常温倉庫。
【請求項3】
請求項1または2記載の常温倉庫において、
前記常温倉庫は、高さが3mを越える天井が高い倉庫に構成されていることを特徴とする常温倉庫。
【請求項4】
常温倉庫を用いて常温での保管温度が指示された物品を保管する保管方法であって、
前記物品は、前記常温倉庫内の鉛直方向の温度分布における前記保管温度以下を示す保管場所に、常温で保管することを特徴とする常温倉庫内での物品保管方法。
【請求項5】
請求項4記載の常温倉庫内での物品保管方法において、
前記保管場所の保管時温度は、温度を変数として多数室の年間非定常熱収支計算を行う熱回路網法の計算式の前記温度に、上中下の各ブロック間の熱移動を温度で示せる室内上下温度分布対応型ブロックモデルの温度式を代入して得られる鉛直温度算出式に基づいて、前記鉛直温度算出式の係数をCFD計算結果により求めて、前記常温倉庫内の鉛直温度分布を把握することで監視することを特徴とする常温倉庫内での物品保管方法。
【請求項6】
常温倉庫にも適用できる周囲が囲われた常温空間内の鉛直温度分布の把握方法であって、
温度を変数として多数室の年間非定常熱収支計算を行う熱回路網法の計算式の前記温度に、上中下の各ブロック間の熱移動を温度で示せる室内上下温度分布対応型ブロックモデルの温度式を代入して得られる鉛直温度算出式に基づいて、前記鉛直温度算出式の係数をCFD計算結果により求めて、前記空間内の鉛直温度分布を把握することを特徴とする鉛直温度分布の把握方法。
【請求項1】
常温での保管温度が指示された物品を保管する常温倉庫であって、
前記常温倉庫は、鉛直方向に設けた前記物品を常温で保管する棚が設けられ、
前記棚は、棚毎に、棚置きした前記物品の保管中の保管時温度が示されていることを特徴とする常温倉庫。
【請求項2】
請求項1記載の常温倉庫において、
前記保管時温度は、温度を変数として多数室の年間非定常熱収支計算を行う熱回路網法の計算式の前記温度に、上中下の各ブロック間の熱移動を温度で示せる室内上下温度分布対応型ブロックモデルの温度式を代入して得られる鉛直温度算出式に基づいて、前記鉛直温度算出式の係数をCFD計算結果により求めて、前記常温倉庫内の前記棚毎の保管時温度が決定されることを特徴とする常温倉庫。
【請求項3】
請求項1または2記載の常温倉庫において、
前記常温倉庫は、高さが3mを越える天井が高い倉庫に構成されていることを特徴とする常温倉庫。
【請求項4】
常温倉庫を用いて常温での保管温度が指示された物品を保管する保管方法であって、
前記物品は、前記常温倉庫内の鉛直方向の温度分布における前記保管温度以下を示す保管場所に、常温で保管することを特徴とする常温倉庫内での物品保管方法。
【請求項5】
請求項4記載の常温倉庫内での物品保管方法において、
前記保管場所の保管時温度は、温度を変数として多数室の年間非定常熱収支計算を行う熱回路網法の計算式の前記温度に、上中下の各ブロック間の熱移動を温度で示せる室内上下温度分布対応型ブロックモデルの温度式を代入して得られる鉛直温度算出式に基づいて、前記鉛直温度算出式の係数をCFD計算結果により求めて、前記常温倉庫内の鉛直温度分布を把握することで監視することを特徴とする常温倉庫内での物品保管方法。
【請求項6】
常温倉庫にも適用できる周囲が囲われた常温空間内の鉛直温度分布の把握方法であって、
温度を変数として多数室の年間非定常熱収支計算を行う熱回路網法の計算式の前記温度に、上中下の各ブロック間の熱移動を温度で示せる室内上下温度分布対応型ブロックモデルの温度式を代入して得られる鉛直温度算出式に基づいて、前記鉛直温度算出式の係数をCFD計算結果により求めて、前記空間内の鉛直温度分布を把握することを特徴とする鉛直温度分布の把握方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−112605(P2010−112605A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284333(P2008−284333)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】
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