説明

干渉判定装置

【課題】荷電粒子線照射装置において、患者を載置台に載置させてから治療が終わるまでの時間を短縮させることが可能な干渉判定装置を提供する。
【解決手段】干渉判定装置10は、患者9が載置される患者ベッド21の周りに可動に配置され陽子線を照射するノズル25を有する陽子線治療装置2と通信可能とされ、陽子線治療装置2とは独立して作動し、ノズル25の動きに関する情報である動作情報と、患者ベッド21およびノズル25の位置に関する情報である位置情報とに基づいて、ノズル25と、患者9および患者ベッド21との干渉の有無を判定する干渉判定端末7を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、がん治療等に使用される荷電粒子線照射装置は、荷電粒子線照射ノズル、フラットパネル検出器、およびPET−CT装置(Positron Emission Tomography - Computed Tomography)等の治療検査機器と載置台(載置台を支持するロボットアームも含む)とを備えている。このような荷電粒子線照射装置では、これら治療検査機器および載置台が独立して動くために、互いに衝突するおそれがある。このため、センサによって治療検査機器および載置台の位置を検出し、両者が衝突しそうな(干渉する)場合には、治療検査機器の動きを停止することで互いの衝突を回避している。しかしながらこのような方法では、センサの信頼性に問題がある場合には、衝突を回避できないおそれがある。また、センサを用いて常に干渉確認をしなければならず手間がかかるという問題がある。
【0003】
また、その他の衝突回避方法として、治療検査機器や載置台等の設計寸法に基づいて事前に治療検査機器と載置台とが互いに干渉しない範囲を算出し、当該範囲内でのみ治療検査機器を動かすことも行われている。しかしながらこのような方法では、決められた範囲でしか治療検査機器を動かすことができないため、治療中の当該治療検査機器の可動範囲が狭くなってしまうという問題がある。
【0004】
これらを改善するために、例えば特許文献1では、治療検査機器の寸法や患者の治療計画に基づいて、上記の各治療検査機器と載置台との干渉の可能性をコンピュータシミュレーションにより確認し、この結果に基づいて各治療検査機器を位置決めする技術が開示されている。また、例えば特許文献2では、各治療検査機器の寸法や、患部に応じた照射時間、照射位置等の治療計画に基づいて、上記の各治療検査機器と載置台とが干渉する可能性を判定し、干渉するおそれのある場合には自動的に治療検査機器の駆動を停止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−503176号公報
【特許文献2】特開平07−163670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の技術では、荷電粒子照射装置における治療時に、載置台に患者を横臥させ、当該患者から干渉の判定に必要な患者の体型情報を取得して干渉の可能性を判定している。このような荷電粒子照射装置では、治療を行う毎に干渉の判定に必要な情報を取得して干渉の有無の判定をする必要があり、患者を載置台に載置させてから治療が終わるまでの時間が長くなってしまう。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、荷電粒子線照射装置において、患者を載置台に載置させてから治療が終わるまでの時間を短縮させることが可能な干渉判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の干渉判定装置は、患者が載置される載置台の周りに可動に配置され患者へ荷電粒子線を照射する照射部と、患者および載置台との干渉の有無を判定する干渉判定装置であって、照射部を有する荷電粒子線照射装置と通信可能とされ、当該荷電粒子線照射装置とは独立して作動し、照射部の動きに関する情報である動作情報と、載置台および照射部の位置に関する情報である位置情報とに基づいて、干渉の有無を判定する干渉判定手段を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明の干渉判定装置では、荷電粒子線照射装置とは独立して作動する干渉判定手段によって、照射部と患者および載置台との干渉の有無が判定される。このように本発明の干渉判定装置では、干渉判定手段が荷電粒子線照射装置とは独立して作動するようになっているので、荷電粒子線照射装置が他の患者によって使用されていても、上記干渉の有無を判定することができる。そして、荷電粒子線照射装置において当該患者を治療する際には、干渉判定手段によって判定された干渉が無いと判定された際の動作情報を用いることにより、照射部と患者および載置台とを干渉させることなく治療することができる。このように本発明の干渉判定装置は、従来患者を載置台に載置させた後に行っていた上記干渉の判定を省略して、すぐに患者を治療させることができるので、患者が載置台に載置されてから治療が終わるまでの時間を短縮させることが可能となる。
【0010】
また、本発明では、荷電粒子線照射装置は、患者を検査する検査部を有しており、干渉判定手段は、検査部と、患者および載置台との干渉の有無を判定してもよい。これにより、照射部と照射部以外の対象物との干渉の有無を判定できるようになるので、より干渉の有無の精度を高めることが可能となる。
【0011】
また、本発明では、荷電粒子線照射装置とは独立して作動し、患者の体型に関する体型情報および患者の治療対象部位に関する治療部位情報を取得する患者情報取得手段を更に備えていてもよい。本発明においては、患者情報取得手段が荷電粒子線照射装置とは独立して作動するようになっているので、荷電粒子線照射装置が他の患者によって使用されていても、体型情報や治療部位に関する情報を取得し、患者を治療するために必要な荷電粒子線の線量や照射部の動作等を決定することが可能となる。
【0012】
また、本発明では、干渉判定手段によって干渉が有と判定された場合に、動作情報を再設定する動作情報再設定手段を更に備えていてもよい。
【0013】
また、本発明では、干渉判定手段によって干渉が無と判定された場合に、当該干渉が判定される際に取得された動作情報に基づいて、荷電粒子線照射装置を制御する制御手段を更に備えていてもよい。これにより、照射部および検査部を互いに干渉させることなく動作させることが可能となる。
【0014】
また、本発明では、干渉判定手段によって判定された干渉の有無を表示する表示手段を更に備えていてもよい。これにより、荷電粒子線照射装置を使用する使用者に対して、上記干渉の有無の結果を明示的に提示できるようになる。
【0015】
また、本発明では、干渉判定手段によって干渉が無と判定された場合に、当該干渉が判定される際に取得された動作情報を蓄積する動作情報蓄積手段を更に備えていてもよい。これにより、取得された動作情報を後日使用したり、同様の装備を備えた荷電粒子線照射装置において当該動作情報を使用したりできるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の干渉判定装置によれば、荷電粒子線照射装置において、患者が載置台に載置されてから治療が終わるまでの時間を短縮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る陽子線治療システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示す陽子線治療装置の構成を示す正面図である。
【図3】図1に示す陽子線治療装置の構成を示す側面断面図である。
【図4】図1に示す干渉判定装置の機能構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す治療計画端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図6】図1の干渉判定装置における動作を示したフローチャートである。
【図7】他の実施形態に係る干渉判定装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る干渉判定装置の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。本実施形態では、干渉判定装置を備えた陽子線治療システムについて説明する。図1は、本実施形態に係る陽子線治療システムの全体構成を示す図である。図2は、陽子線治療装置の構成を示す正面図である。図3は、陽子線治療装置の構成を示す側面断面図である。
【0019】
図1に示す陽子線治療システム1は、患者の体内の腫瘍に対して陽子線(荷電粒子線)を照射してがん治療を行うシステムであり、陽子線を照射するノズル(照射部)25を有する陽子線治療装置(荷電粒子線照射装置)2と、陽子線治療装置2の各機器の動作を制御する陽子線治療装置制御端末4と、患者9および各機器の干渉の有無を判定する干渉判定装置10とを含んでいる。
【0020】
陽子線治療装置2は、図2および図3に示すように、患者9が載置される患者ベッド(載置台)21、および、アイソセンタPを通る軸線L回りに回転する回転ガントリ24を備えている。陽子線治療装置2は、患者9の体内の腫瘍(アイソセンタPに対応する位置に位置決めされている)に対して陽子線を照射する。陽子線治療装置2は、建屋1階に形成された陽子線治療室11に配置され、被曝を防ぐために、放射線遮蔽壁11aによって覆われている。
【0021】
患者ベッド21は、患者9を載置する天板22と、当該天板22を支持するロボットアーム23とを有している。ロボットアーム23は、天板22の位置を移動させて、患者9を任意の位置および任意の向きに位置決めすることができる。なお、ロボットアーム23は、建屋側に設置されているため、後述する回転ガントリ24と共には回転しない構成となっている。
【0022】
回転ガントリ24は、治療機器である上述のノズル25のほか、検査機器として、PET−CT装置26およびX線撮影装置28を備え、アイソセンタPを通る軸線L回りに360度回転する。
【0023】
ノズル(照射部)25は、陽子線を照射する照射口として機能する。ノズル25は、回転ガントリ24の回転に応じて、軸線L回りに周方向に移動し、患者9の腫瘍に対して任意の角度で陽子線の照射が可能となる。
【0024】
PET−CT装置(検査部)26は、患者の体内に投与された放射性薬剤から放出されるガンマ線を検出するPETカメラ27を備えている。PETカメラ27は、回転ガントリ24の背面パネル24aより背面側に収納可能とされ、治療時には、図示しないエアシリンダ等によってA方向(図3参照)に駆動されて、患者9の両側に配置される。
【0025】
また、PET−CT装置26は、PETカメラ27により取得された画像情報を処理し、PET画像を生成する画像処理部(図示せず)を備え、生成されたPET画像は、記憶部に記憶され、モニタ等の表示部に表示される。なお、上述の画像処理部、記録部、表示部等は本実施形態では、後述する陽子線治療制御室12内に配置されている。
【0026】
X線撮影装置(検査部)28は、X線(光子線)を照射するX線源29、および患者9を透過したX線を検出するフラットパネル検出器30を備え、患者9のX線透視画像(コンピュータ断層画像)を取得するものである。X線源29は、2つ設けられ、回転ガントリ24の回転方向において、互いに90度異なる位置に配置されている。
【0027】
フラットパネル検出器30は、回転ガントリ24の背面パネル24aより背面側に収納可能とされ、治療時には、図示しないエアシリンダ等によってA方向(図3参照)駆動されて、X線源29と患者9を挟んで対向する位置に配置される。X線撮影装置28は、フラットパネル検出器30によって検出されたデータに基づいて、患者9のX線透視画像を作成し、骨、金属マーカー等の特徴点に基づき患者9の位置を測定することができる。
【0028】
陽子線治療装置制御端末4は、干渉判定装置10から出力された情報に基づいて、陽子線治療装置2の動作を制御するものであり、回転ガントリ24および患者ベッド21の動作を制御する端末である。陽子線治療装置端末4は、回転ガントリ24を回転させ、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30の回転位置を制御する。陽子線治療装置端末4は、PETカメラ27、およびフラットパネル検出器30のA方向の位置を制御する。また、PETカメラ27がアイソセンタPへ接近離間する方向へ移動する機構を有する場合には、その移動を制御する。陽子線治療装置端末4は、ロボットアーム23を制御して、患者が載置される天板(載置台)22の位置を制御する。例えば、陽子線治療装置端末4は、建屋1階に形成された陽子線治療制御室12に設置され、陽子線治療制御室12は、放射線遮蔽壁11aを挟んで陽子線治療室11に隣接して設けられている。なお、陽子線治療装置制御端末4は、陽子線治療装置2を制御する専用端末であってもよいし、また、公知のパーソナルコンピュータやワークステーション等を用いてもよい。
【0029】
次に、干渉判定装置10について説明する。干渉判定装置10は、治療前の患者の診断に利用されるコンピュータ断層撮影装置(患者情報取得手段、以下、「CT(Computed Tomography)装置」と示す)5、陽子線治療装置2による治療の計画を立案する治療計画端末6、および、ノズル25などの各機器と患者ベッド21との干渉の有無を判定する干渉判定端末(干渉判定手段)7を備えている。そして、CT装置5、治療計画端末6、干渉判定端末7、陽子線治療装置制御端末4、および陽子線治療装置2は、ネットワークによって接続され、データの送受信が可能な構成とされている。また、干渉判定装置10は、陽子線治療装置2とは独立して作動するものである。
【0030】
CT装置5は、建屋2階に形成されたCT撮影室13に配置されている。CT装置5は、X線を照射するX線源(図示せず)と、患者9を透過したX線を検出するフラットパネル検出器(図示せず)とを有し、このフラットパネル検出器によって検出されたデータに基づいて、患者9のCT画像(患者の体型に関する情報および患者の治療対象部位に関する治療部位情報)を生成する。CT装置5は、生成されたCT画像を、ネットワークを介して、治療計画端末6に出力する。なお、CT装置5は、X線CT装置に限らずPET−CT装置でもよく、また、X線CT装置とPET−CT装置との両方を用いてもよい。
【0031】
治療計画端末6は、入力された患者9のCT画像から癌腫瘍(治療対象部位)の3次元画像を生成し、癌腫瘍の患者体内での位置や大きさ等に基づいて、陽子線治療装置2における治療計画を立案するものである。治療計画端末6によって立案される治療計画としては、治療に必要な陽子線(治療ビーム)の線量、治療ビームの照射方向(ガントリー角度)、治療時(ビーム照射時)の患者ベッドの位置情報、および、患者ベッドに対する患者9の位置情報などがある。治療計画端末6は、建屋2階に形成された治療計画室14に配置されている。図4に示すように、治療計画端末6は機能的構成要素として、動作情報生成部61、患者体型情報生成部62、および位置情報蓄積部63を有している。
【0032】
動作情報生成部61は、陽子線治療装置2の各機器の動きに関する情報である動作情報(治療計画)を生成する部分である。動作情報としては、例えば回転ガントリ24の角度、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30の動線、ノズル25から照射される陽子線の照射時間および照射量等がある。動作情報生成部61は、このような動作情報を干渉判定端末7へ出力する。なお、動作情報は、CT装置5によって取得されるCT画像等に基づいて自動的に生成されるような構成であっても、CT画像等を診た医師等の使用者が入力することによって生成されるような構成であってもよい。
【0033】
患者体型情報生成部62は、CT装置5によって取得されたCT画像から患者体型情報を生成する部分である。患者体型情報生成部62は、CT装置5において撮影されたCT画像を元に、例えば患者9の身長、体の幅、体の厚みといった体型情報を生成する。患者体型情報生成部62は、取得した体型情報を干渉判定端末7へ出力する。
【0034】
位置情報蓄積部63は、陽子線治療装置2の各機器の位置および寸法に関する情報である位置情報(載置台および照射部の位置に関する情報)を蓄積している部分である。位置情報蓄積部63は、例えば治療前の陽子線治療装置2における初期状態の患者ベッド21、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30の位置および外形寸法等の位置情報を蓄積している。位置情報蓄積部63は、干渉判定端末7の出力要求によって、位置情報を当該干渉判定端末7へ出力する。
【0035】
図5は、治療計画端末6のハードウェア構成の一例を示す図である。治療計画端末6は、図5に示すように、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなどを実行するCPU91、ROMおよびRAMで構成される主記憶部92、ハードディスク、メモリ等で構成される補助記憶部93、キーボード、タッチパネル等の受付部94、液晶ディスプレイ等の表示部(表示手段)95で構成される。上述した治療計画端末6における機能的構成要素が実現する各機能は、CPU91および主記憶部92に所定のソフトウェアを読み込ませ、CPU91の制御の下で、入力される情報を読み込んだり、主記憶部92および補助記憶部93に対して情報の読み書きを実行させたりすることで実現される。このように、治療計画端末6は、公知のパーソナルコンピュータやワークステーション等を用いて実現することができる。
【0036】
図1に戻り、干渉判定端末7は、建屋2階に形成された治療計画室14に配置されている。図4に示すように、干渉判定端末7は機能的構成要素として、動作情報取得部71、患者体型情報取得部72、位置情報取得部73、干渉判定部(干渉判定手段)74、動作情報出力部75、および動作情報蓄積部(動作情報蓄積手段)76を備えている。
【0037】
動作情報取得部71は、治療計画端末6から出力された動作情報を取得する部分である。患者体型情報取得部72は、治療計画端末6から出力された患者体型情報を取得する部分である。位置情報取得部73は、治療計画端末6から出力された位置情報を取得する部分である。当該位置情報に含まれる当該位置および外形寸法等は、干渉判定部74における干渉判定で使用される外形モデル等の生成に用いられる。
【0038】
干渉判定部74は、治療計画端末6から取得した動作情報、患者体型情報、および位置情報に基づいて、陽子線治療装置2における干渉判定を行う部分である。干渉判定部74は、患者9および患者ベッド21と、ノズル25との干渉の有無を判定する。干渉判定部74は、患者および患者ベッド21と、その他の機器(PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30)との干渉の有無を判定する。
【0039】
具体的には、干渉判定部74は、取得した動作情報および位置情報に基づいて患者ベッド21の動線(移動軌跡)を算出し、動作情報および患者体型情報に基づいて患者ベッド21に載置された患者9の動線を算出する。また、干渉判定部74は、位置情報および動作情報と基づいて、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30の各動線を算出する。これらの動線はいずれも時間の情報を有している。干渉判定部74は、このようにして算出された患者9および患者ベッド21の動線と、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30の各動線とに基づいて互いの干渉の有無を判定する。干渉判定部74は、例えば患者ベッド21とノズル25との干渉判定を行う場合、患者ベッド21の外形モデルの内部範囲に、ノズル25の外形を示す線が存在すれば、患者ベッド21とノズル25とは干渉すると判定する。なお、当該干渉の判定方法は、上述した例に限られるものではなく、またこのような干渉の判定には公知のソフトウェア等を使用することも可能である。
【0040】
動作情報出力部75は、干渉判定部74によって干渉が無と判定された場合に、干渉判定の結果を治療計画端末6に出力する部分である。動作情報蓄積部76は、干渉判定部74によって干渉が無と判定された場合に、当該判定に用いられた動作情報を保存する部分である。
【0041】
干渉判定端末7は、上述した治療計画端末6と同様に、公知のパーソナルコンピュータやワークステーション等を用いて実現することができる。上記干渉の有無等の結果は、表示部95に表示することが可能である。
【0042】
なお、陽子線治療室11、陽子線治療制御室12、CT撮影室13、および治療計画室14は、必ずしも1階と2階とに分ける必要はない。1階に全ての部屋を揃える構成としてもよいし、陽子線治療室11、陽子線治療制御室12、CT撮影室13、および治療計画室14という4つの部屋に分けるのではなく、陽子線治療制御室12内に治療計画端末6および干渉判定端末7を配置したりする等、適宜必要に応じて配置を変更してもよい。
【0043】
次に、図6を参照しながら、干渉判定装置10の動作について説明する。図6は、図1の干渉判定装置における動作を示したフローチャートである。
【0044】
まず、CT装置5によって、患者9のCT画像を取得する(S1)。CT装置5は、取得したCT画像を治療計画端末6へ出力する。
【0045】
次に、動作情報生成部61は、CT装置5から入力されるCT画像に基づいて、回転ガントリ24の角度、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30の各動線、ノズル25から照射される陽子線の照射時間および照射量等の動作情報を生成する(S2)。動作情報生成部61は、この動作情報を干渉判定端末7へ出力する。
【0046】
次に、患者体型情報生成部62は、CT装置5から入力されるCT画像に基づいて、例えば患者9の身長、体の幅、体の厚みといった体型情報を生成する(S3)。患者体型情報生成部62は、この体型情報を干渉判定端末7へ出力する。なお、ステップS2およびステップS3における工程は、どちらが先に処理されてもよいし、同時に行われてもよい。
【0047】
次に、動作情報取得部71は、動作情報生成部61から患者ベッド21、回転ガントリ24、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30の動きに関する情報である動作情報を取得する(S4)。具体的には、動作情報取得部71は、回転ガントリ24の角度、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30の各動線、ノズル25から照射される陽子線の照射時間等の動作情報を取得する。動作情報取得部71は、これらの動作情報を干渉判定部74へ出力する。
【0048】
次に、患者体型情報取得部72は、患者体型情報生成部62から患者体型情報を取得する(S5)。具体的には、患者体型情報取得部72は、患者体型情報生成部62に対して、上記体型情報の出力を要求し、当該要求に応じて出力された、患者9の身長、体の幅、体の厚みといった体型情報を取得する。患者体型情報取得部72は、これらの患者体型情報を干渉判定部74へ出力する。
【0049】
次に、位置情報取得部73は、患者ベッド21、回転ガントリ24、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30等の位置情報を取得する(S6)。具体的には、位置情報取得部73は、位置情報蓄積部63に対して、上記位置情報の出力を要求し、当該要求に応じて出力された、陽子線治療装置2における初期状態の患者ベッド21、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30の位置および外形寸法等の位置情報を取得する。位置情報取得部73は、これらの位置情報を干渉判定部74へ出力する。なお、ステップS4〜ステップS6における工程は、どのような順番で処理されてもよいし、同時に行われてもよい。
【0050】
次に、干渉判定部74は、動作情報取得部71から入力される動作情報と、患者体型情報取得部72から入力される患者体型情報と、位置情報取得部73から入力される位置情報とに基づいて、患者9および患者ベッド21と、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30との干渉の有無を判定する(S7)。具体的には、例えば上記動作情報、患者体型情報および位置情報に基づいて患者ベッド21および患者9の動線と、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30の各動線とをそれぞれ算出し、これらの動線が治療時に互いに干渉するか否かを判定する。ここで、干渉判定部74が、これらの動線が治療時に互いに干渉すると判定した場合には(S7:YES)、表示部95にその旨が表示され(S8)、医師等の使用者に治療計画、すなわち患者ベッド21やノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30の動きの見直しを促す。
【0051】
一方、干渉判定部74は、これらの動線が治療時に互いに干渉しないと判定した場合には(S7:NO)、動作情報出力部75は、干渉判定の結果を治療計画端末6に出力する(S9)。このとき、干渉が無い旨が表示部95に表示されてもよい。また、判定に用いられた動作情報は、動作情報蓄積部76に保存されてもよい。
【0052】
以上、ステップS1〜ステップS9までは、陽子線治療装置2において患者ベッド21に患者9が載置されるまでの工程である。以下、ステップS10以降は、患者ベッド21に患者9が載置されてからの工程である。
【0053】
次に、陽子線治療装置2の患者ベッド21に患者9が載置される(S10)。このとき、上述した動作情報と干渉判定とに基づいて、予め患者ベッド21をノズル25等の治療検査機器と干渉しない位置に移動させることで、癌腫瘍の位置を照射ポイント(アイソセンタ)に位置決めしてもよい。なお、この位置決めに関する情報が動作情報に含まれていれば、当該動作情報に従って患者ベッド21が位置決めされる。
【0054】
次に、陽子線治療装置制御端末4は、治療計画端末6に対して、回転ガントリ24の角度、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30の動線、ノズル25から照射される陽子線の照射時間および照射量等の動作情報の出力を要求する(S11)。次に、陽子線治療装置制御端末4は、治療計画端末6から出力された上記動作情報に基づいて陽子線治療装置2を制御する(S12)。
【0055】
以上に説明した干渉判定装置10では、陽子線治療装置2および陽子線治療装置制御端末4とは独立して作動する干渉判定端末7によって、患者9および患者ベッド21と、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30との干渉の有無が判定される。このように本実施形態の干渉判定装置10では、干渉判定端末7が陽子線治療装置2および陽子線治療装置制御端末4とは独立して作動するようになっているので、陽子線治療装置2が他の患者によって使用されていても、上記干渉の有無を判定することができる。逆を言えば、干渉判定端末7が上記干渉の有無を判定している間に、他の患者の治療を行うことができる。そして、陽子線治療装置2において当該患者を治療する際には、干渉判定端末7によって干渉が無いと判定された動作情報を用いることにより、患者9および患者ベッド21とノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30とが干渉することなく治療させることができる。このように、陽子線治療装置2では、従来患者9を患者ベッド21に載置させた後に行っていた患者9および患者ベッド21とノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30との干渉の判定を省略して、すぐに治療部位を治療させることができるので、患者9が患者ベッド21に載置されてから治療が終わるまでの時間を短縮させることが可能となる。
【0056】
また、干渉判定装置10が、陽子線治療装置2および陽子線治療装置制御端末4から独立して作動することにより、従来の陽子線治療装置2ではできなかった、干渉の判定と陽子線治療とを並行して処理することができる。これにより、例えばノズル25の動線と患者9の動線とが干渉すると判定され、このノズル25の動きに関する動作情報を再設定する場合であっても、別の患者を先に治療させつつ、陽子線治療装置2および陽子線治療装置制御端末4からは独立して作動する干渉判定端末7において当該干渉の判定をすることができる。そして、この患者の治療が終わったら、すぐに再設定された動作情報に基づいて治療を行うことができる。この結果、陽子線治療装置2では、陽子線治療装置2でしかできない陽子線治療に特化して使用することが可能となり、陽子線治療装置2の稼働効率を向上させることが可能となる。
【0057】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で以下のような様々な変形が可能である。
【0058】
例えば、図7に示すように、干渉判定装置10は、上記実施形態の構成に加えて、動作情報再設定部(動作情報再設定手段)77を備えていてもよい。動作情報再設定部77は、干渉判定部74によって患者9および患者ベッド21とノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30との干渉が有と判定された場合に、当該動作情報を再設定する。
【0059】
また、上記実施形態の陽子線治療装置2では、ノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30が回転ガントリ24と共に回転する例を挙げて説明したがこれに限定されるものではなく、例えば互いに独立して可動するノズル25、PETカメラ27、X線源29、およびフラットパネル検出器30であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態の陽子線治療装置2では、検査部として、PET−CT装置26およびX線撮影装置28を備える構成としているが、その他の検査部を備えている構成でもよく、検査部を備えていない陽子線治療装置2でもよい。
【0061】
また、上記実施形態の干渉判定装置10では、照射部と患者および載置台との干渉の有無、ならびに検査部と患者および載置台との干渉の有無を判定しているが、検査部と患者および載置台との干渉の有無を判定しない干渉判定装置10でもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…陽子線治療システム、2…陽子線治療装置、4…陽子線治療装置制御端末、5…コンピュータ断層撮影装置(CT装置)、6…治療計画端末、7…干渉判定端末、9…患者、10…干渉判定装置、11…陽子線治療室、11a…放射線遮蔽壁、12…陽子線治療制御室、13…CT撮影室、14…治療計画室、21…患者ベッド、22…天板、23…ロボットアーム、24…回転ガントリ、24a…背面パネル、25…ノズル、26…PET−CT装置、27…PETカメラ、28…X線撮影装置、29…X線源、30…フラットパネル検出器、61…動作情報生成部、62…患者体型情報生成部、63…位置情報蓄積部、71…動作情報取得部、72…患者体型情報取得部、73…位置情報取得部、74…干渉判定部、75…動作情報出力部、76…動作情報蓄積部、77…動作情報再設定部、L…軸線、P…アイソセンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が載置される載置台の周りに可動に配置され前記患者へ荷電粒子線を照射する照射部と、前記患者および前記載置台との干渉の有無を判定する干渉判定装置であって、
前記照射部を有する荷電粒子線照射装置と通信可能とされ、当該荷電粒子線照射装置とは独立して作動し、前記照射部の動きに関する情報である動作情報と、前記載置台および前記照射部の位置に関する情報である位置情報とに基づいて、前記干渉の有無を判定する干渉判定手段を備えることを特徴とする干渉判定装置。
【請求項2】
前記荷電粒子線照射装置は、前記患者を検査する検査部を有しており、
前記干渉判定手段は、前記検査部と、前記患者および前記載置台との干渉の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の干渉判定装置。
【請求項3】
前記荷電粒子線照射装置とは独立して作動し、前記患者の体型に関する体型情報および前記患者の治療対象部位に関する治療部位情報を取得する患者情報取得手段を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の干渉判定装置。
【請求項4】
前記干渉判定手段によって前記干渉が有と判定された場合に、前記動作情報を再設定する動作情報再設定手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の干渉判定装置。
【請求項5】
前記干渉判定手段によって前記干渉が無と判定された場合に、当該干渉が判定される際に取得された前記動作情報に基づいて、前記荷電粒子線照射装置を制御する制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の干渉判定装置。
【請求項6】
前記干渉判定手段によって判定された前記干渉の有無を表示する表示手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の干渉判定装置。
【請求項7】
前記干渉判定手段によって前記干渉が無と判定された場合に、当該干渉が判定される際に取得された前記動作情報を蓄積する動作情報蓄積手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の干渉判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−10759(P2012−10759A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147789(P2010−147789)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】