説明

平板型燃料電池のインターコネクタ及びその製法、平板型燃料電池、平板型燃料電池スタック並びにその製法

【課題】ガス通路からのガス漏れを防止できる平板型燃料電池のインターコネクタ及びその製法、平板型燃料電池、平板型燃料電池スタック、並びに、平板型燃料電池スタックの製法を提供する。
【解決手段】固体電解質の両側に電極を設けてなる平板型燃料電池セルと、一方の電極3aに接続し、該電極3aにガスを供給するためのガス通路7aを形成するインターコネクタ5とを交互に積層してなるとともに、平板型燃料電池セルとインターコネクタ5とが同時焼成して形成され、ガス通路7aの角部にすみ肉部S、Sが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス通路を形成するための凹部を有するインターコネクタ及びその製法、平板型燃料電池セルにインターコネクタを積層してなる平板型燃料電池、並びに、平板型燃料電池セルとインターコネクタとを交互に積層してなる平板型燃料電池スタック及びその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池セルとしては、円筒型燃料電池セル、中空平板型燃料電池セルが知られており、これらは、円筒型、又は中空平板型の支持体を押出成形にて作製し、この支持体成形体の表面に、電極成形体、固体電解質成形体を積層し、焼成することにより作製されていた。
【0003】
また、従来の平板型燃料電池として、複数のシートを積層して積層成形体を作製し、この積層成形体を焼成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2003−297387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、平板型燃料電池を作製するのに、未焼結のシートを積層し、ガス通路を形成する部分にポリエチレンやカーボンブラックを印刷形成し、これを焼成時に飛散させ消失させてガス通路を形成することが記載されているが、このようなシート積層法では、ガス通路の角部からクラックが入りやすく、仮に作製時にクラックが入らないとしても、長期間の発電によりクラックが入り進展し、ガス通路からガス漏れが発生する虞があった。
【0005】
また、一般にシート積層法により基板を作製する際には、未焼結のシート間の密着性を向上すべく、厚み方向にプレスして加圧されるが、この時、ガス通路を形成する空間は、そのシート積層方向中央部の側面が内方(飛散物質側)に突出しようとし、ガス通路を形成する空間の角部に剥離が生じ、隙間が形成され、発電中にその角部からクラックが進展し、ガス通路からガス漏れが発生する虞があった。
【0006】
本発明は、ガス通路からのガス漏れを防止できる平板型燃料電池のインターコネクタ及びその製法、平板型燃料電池、平板型燃料電池スタック、並びに、平板型燃料電池スタックの製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の平板型燃料電池のインターコネクタは、ガス通路を形成するための凹部を有し、インターコネクタ材料粉末を含有する未焼結テープを複数積層し、焼成してなるとともに、前記凹部の角部にすみ肉部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような平板型燃料電池のインターコネクタは、ガス通路を形成するための凹部の角部にすみ肉部が形成されているため、インターコネクタの作製時にはガス通路の角部におけるクラックの発生を抑制でき、さらに長時間の発電によっても角部からのクラックの発生、並びに進展を防止でき、ガス通路からのガス漏れを防止できる。
【0009】
また、本発明の平板型燃料電池のインターコネクタの製法は、ガス通路を形成するための凹部を有する平板型燃料電池のインターコネクタの製法であって、厚み方向に貫通孔を有しインターコネクタ材料粉末を含有する未焼結テープを複数積層して形成されるとともに、該複数の未焼結テープの貫通孔により形成されたガス通路形状の凹部内に、該凹部の角部にすみ肉部を形成する無機材料と焼成時に消失する消失物質とからなるガス通路形成材料が収容されたインターコネクタ成形体を、焼成する工程を経て形成することを特徴とする。
【0010】
このような製法によれば、インターコネクタ成形体のガス通路形状の凹部内に無機材料と飛散物質とからなるガス通路形成材料が収容されているため、インターコネクタ成形体を焼成すると、ガス通路形成材料中の飛散物質が飛散するとともに、無機材料が、凹部の角部に、特にインターコネクタ成形体の加圧時に形成された角部の隙間(剥離部)に毛細管現象により集合し、焼成することによりすみ肉部を形成でき、凹部の角部を丸めることができる。これにより、セル作製時におけるクラックの発生を防止でき、さらにすみ肉部により角部からのクラックの進展を防止できる。
【0011】
さらに、本発明の平板型燃料電池は、固体電解質の両側に電極を設けてなる平板型燃料電池セルに、一方の前記電極に接続し、該電極にガスを供給するためのガス通路を形成するインターコネクタを積層してなる平板型燃料電池であって、前記固体電解質と、前記一方の電極と、前記インターコネクタとが同時焼成して形成され、前記ガス通路の角部にすみ肉部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
このような平板型燃料電池では、ガス通路の角部にすみ肉部が形成されているため、平板型燃料電池の作製時にはガス通路の角部におけるクラックの発生を抑制でき、さらに長時間の発電によっても角部からのクラックの発生、並びに進展を防止でき、ガス通路からのガス漏れを防止できる。インターコネクタは、インターコネクタ材料粉末を含有する未焼結テープを複数積層して形成される場合、プレス成形により形成される場合も含む。
【0013】
また、本発明の平板型燃料電池は、前記一方の電極と前記インターコネクタとで形成される前記ガス通路の角部に、すみ肉部が形成されていることを特徴とする。このような平板型燃料電池では、一方の電極とインターコネクタとで形成されるガス通路の角部におけるクラックの発生を抑制でき、さらに長時間の発電によっても角部からのクラックの発生、並びに進展を防止できる。
【0014】
また、本発明の平板型燃料電池は、前記ガス通路は、前記インターコネクタが接続される電極と、前記インターコネクタの電極側に形成された凹部により形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の平板型燃料電池スタックは、固体電解質の両側に電極を設けてなる平板型燃料電池セルと、一方の前記電極に接続し、該電極にガスを供給するためのガス通路を形成するインターコネクタとを交互に積層してなるとともに、前記平板型燃料電池セルと前記インターコネクタとが同時焼成して形成され、前記ガス通路の角部にすみ肉部が形成されていることを特徴とする。このような平板型燃料電池スタックでは、セルスタックの作製時にはガス通路の角部におけるクラックの発生を抑制でき、さらに長時間の発電によっても角部からのクラックの発生、並びに進展を防止でき、ガス通路からのガス漏れを防止できる。
【0016】
また、本発明の平板型燃料電池スタックの製法は、固体電解質成形体の両側に電極成形体を設けてなる燃料電池成形体と、インターコネクタ成形体とを交互に積層してなるとともに、前記インターコネクタ成形体の前記一方の電極成形体側に形成された凹部に、無機材料と焼成時に飛散する飛散物質とからなるガス通路形成材料が収容されたスタック成形体を、焼成する工程を経て形成することを特徴とする。
【0017】
このような平板型燃料電池スタックの製法では、インターコネクタ成形体のガス通路形状の凹部内に無機材料と飛散物質とからなるガス通路形成材料が収容されているため、焼成すると、ガス通路形成材料中の飛散物質が飛散するとともに、無機材料が、ガス通路の角部に、特にスタック成形体の加圧時に形成された角部の隙間(剥離部)に毛細管現象により集合し、焼成することによりすみ肉部を形成でき、ガス通路の角部を丸めることができる。これにより、スタック作製時におけるクラックの発生を防止でき、さらにすみ肉部により角部からのクラックの発生並びに進展を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図面を参考にして本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0019】
本発明の平板型燃料電池スタックは、図1に示すように、多孔質なガス透過性の導電性支持体3aに、多孔質な燃料側電極3b、緻密な板状の固体電解質3c、多孔質な酸素側電極3dを順次積層してなる平板型燃料電池セル3と、インターコネクタ5とを交互に積層して構成されている。
【0020】
このインターコネクタ5の支持体3a側と、酸素側電極3d側の面には、断面矩形状の凹部5a、5bが形成され、これらの凹部5a、5bと支持体3a、酸素側電極3dとで、それぞれ燃料ガス通路7a、酸素含有ガス通路7bが形成されている。燃料ガス通路7aの片方の端部には、燃料ガスを燃料電池セル3に導入するための燃料ガス導入口8が形成されており、他方の端部には燃料ガス排出口(図示せず)が形成されている。また、酸素含有ガス通路7bの片方の端部には酸素含有ガス導入口(図示せず)が形成されており、他方の端部には酸素含有ガス排出口9が形成されている。
【0021】
この燃料ガス導入口8から燃料ガス通路7aに導入された燃料ガスは支持体3a表面から、支持体3a内部に拡散し、さらに、燃料側電極3bに到達する。また、酸素含有ガス導入口から酸素含有ガス通路7bに導入された酸素含有ガスは酸素側電極3dに供給される。このように固体電解質3cを介して対向する燃料側電極3bと酸素側電極3dに供給された燃料ガスと酸素含有ガスとが電気化学反応を起こし発電する。余剰の燃料ガスと酸素含有ガスはそれぞれ燃料ガス排出口(図示せず)と酸素含有ガス排出口9から排出される。
【0022】
平板型燃料電池装置は、このような平板型燃料電池セルスタックにマニホールドを設けて構成されている。
【0023】
即ち、図2に示すように、平板型燃料電池装置では、外部からの酸素含有ガスを複数の燃料電池セル3に導入するための給気側ガス配管13が給気側マニホールド15に接続され、給気側マニホールド15には、複数の平板型燃料電池セル3間に配置されたインターコネクタ5の給気側マニホールド15側に形成されたガス導入口にそれぞれガスを導く給気側ガス室19が形成されている。
【0024】
インターコネクタ5の他方の端部には、ガスを排出する酸素含有ガス排出口9が形成されており、排気されたガスを燃料電池装置外に排出するための排気側マニホールド23と排気側ガス配管25が配置されている。排気側マニホールド23には排気ガスを集めるための排気側ガス室27が形成されている。また、平板型燃料電池セル3間に配置されたインターコネクタ5には、ガス導入口17からガス排出口9に連通する酸素含有ガス通路7bが形成されている。また、インターコネクタ5の酸素含有ガス通路7bと直交する方向には、燃料ガスを平板型燃料電池セル3に供給する燃料ガス通路7aが形成されている。
【0025】
平板型燃料電池セル3は一般に矩形板状の形状を有しており、図2に示した給気側マニホールド15と排気側マニホールド23は平板型燃料電池セル3に酸素含有ガスを供給し、排気するためのもので、ガス流れが酸素含有ガスと直交する方向に、燃料ガスを供給、排気するための給気側マニホールド(図示せず)と排気側マニホールド(図示せず)を有している。
【0026】
また、平板型燃料電池セル3の周辺は、ガスシール層31でシールされている。
【0027】
このような平板型燃料電池装置では、図2に示す給気側マニホールド15に、酸素含有ガスを供給し、給気側ガス室19を通じて、インターコネクタ5の一方の端部に形成されたガス導入口17にガスを導き、インターコネクタ5の酸素側電極3dと接する面に形成された酸素含有ガス通路7bを通過させる。酸素含有ガス通路7bを通過したガスは、インターコネクタ5の他方端部に形成されたガス排出口9から、排気側マニホールド23に形成された排気側ガス室27に導かれ、排気側ガス配管25を経由して、燃料電池装置外へと排気される。
【0028】
同時に、燃料ガスを他方の給気側マニホールド(図示せず)に供給し、インターコネクタ5の燃料側電極3bと接する面に形成された燃料ガス通路7aを通過させる。燃料ガス通路7aを通過した燃料ガスは排気側マニホールド(図示せず)に形成された排気側ガス室(図示せず)に導かれ、排気側ガス管(図示せず)を経由して、燃料電池装置外へと排気される。
【0029】
燃料ガスと酸素含有ガスは、上記の経路を辿り、平板型燃料電池セル3へ供給され、排出される。このとき、平板型燃料電池セル3の燃料側電極3bに供給された燃料ガスと、酸素側電極3dに供給された酸素含有ガスとが電気化学反応を起こし、発電を行う。
【0030】
そして、ガス通路7a、7bは、図3に示すように断面矩形状であり、その角部には、すみ肉部S、Sが形成されており、ガス通路7a、7bの角部が丸められている。即ち、インターコネクタ5の凹部5a、5bの角部にすみ肉部Sが形成され、凹部5a、5bと支持体3aとで形成される角部にもすみ肉部Sが形成されている。図3では、すみ肉部S、Sを形成する材料はガス通路7a、7bの四隅のみならず、その側面の角部にも付着している。すみ肉部S、S、側面角部のすみ肉部材料の付着は、後述するガス通路形成材料中の無機材料の含有比率により制御することができる。即ち、ガス通路形成材料中の無機材料が多い場合には、ガス通路7a、7bの四隅のみならず、その側面の角部にもすみ肉部S、Sの形成材料が付着し、ガス通路形状が断面円形状に近づき、少ない場合には、主にガス通路7a、7bの四隅にすみ肉部S、Sが形成される。
【0031】
このすみ肉部S、Sは、インターコネクタ5を形成する材料により形成され、多孔質とされていることが望ましいが、すみ肉部S、Sを形成する無機材料は、ガス通路7a、7bの角部にすみ肉部S、Sを形成できれば、導電性でなくても良く、また、多孔質とする必要もない。たとえば、すみ肉部Sは、アルミナ、固体電解質材料で形成することができる。
【0032】
(導電性支持体3a)
導電性支持体3aは多孔質導電体とされ、燃料ガスを燃料側電極3bまで透過させるためにガス透過性とされている。また、導電性支持体3aはインターコネクタ層5を介しての集電を行うために導電性であることが要求されるが、このような要求を満たすと同時に、同時焼成により生じる不都合を回避するために、鉄族金属成分と特定の希土類酸化物とから支持基板1を構成することが望ましい。
【0033】
鉄族金属成分は、支持体3aに導電性を付与するためのものであり、鉄族金属単体であってもよいし、また鉄族金属酸化物、鉄族金属の合金もしくは合金酸化物であってもよい。鉄族金属には、鉄、ニッケルおよびコバルトがあり、本発明では、何れをも使用することができるが、安価であることおよび燃料ガス中で安定であることからNiおよび/またはNiOを鉄族金属成分として含有していることが好ましい。
【0034】
また希土類酸化物は、支持体3aの熱膨張係数を、固体電解質3cを形成している希土類元素を含有するZrOと近似させるために使用されるものであり、高い導電率を維持し且つ固体電解質3c等への拡散を防止するために、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prからなる群より選ばれた少なくとも1種の希土類元素を含む酸化物が、上記鉄族成分との組合せで使用される。このような希土類酸化物の具体例としては、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prを例示することができ、特に安価であるという点で、Y,Ybが好適である。
【0035】
(インターコネクタ5)
インターコネクタ5は、導電性セラミックスからなるが、燃料ガス(水素)および酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、かかる導電性セラミックスとしては、一般に、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)、酸化チタン系等が使用される。また、支持体3aの内部を通る燃料ガスおよび支持体3aの外部を通る酸素含有ガスのリークを防止するため、かかる導電性セラミックスは緻密質でなければならず、たとえば93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好適である。
【0036】
(燃料側電極3b)
燃料側電極3bは電極反応を生じせしめるものであり、それ自体公知の多孔質の導電性サーメットから形成される。たとえば、希土類元素が固溶しているZrOと、Niおよび/またはNiOとから形成される。この希土類元素が固溶しているZrO(安定化ジルコニア)としては、以下に述べる固体電解質3c形成に使用されているものと同様のものを用いるのがよい。
【0037】
燃料側電極3b中の安定化ジルコニア含量は、35〜65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNi或いはNiO含量は、65〜35体積%であるのがよい。さらに、この燃料側電極3bの開気孔率は、15%以上、特に20〜40%の範囲にあるのがよく、その厚みは、性能向上と、固体電解質3cと燃料側電極3bとの間での熱膨張差による剥離等を防止するという点から、1〜30μmであることが望ましい。
【0038】
(固体電解質3c)
この燃料側電極3b上に設けられている固体電解質3cは、一般に3〜15モル%の希土類元素が固溶したZrO(通常、安定化ジルコニア)と呼ばれる緻密質なセラミックスから形成されている。希土類元素としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luを例示することができるが、安価であるという点からY、Ybが望ましい。
【0039】
この固体電解質3cを形成する安定化ジルコニアセラミックスは、ガス透過を防止するという点から、相対密度(アルキメデス法による)が93%以上、特に95%以上の緻密質であることが望ましく、且つその厚みが10〜100μmであることが望ましい。固体電解質3cとしては、安定化ジルコニア以外に、ランタンガレート系ペロブスカイト型組成物から構成されていても良い。
【0040】
(ガスシール層31)
ガスシール層31は、固体電解質材料で形成された固体電解質材料膜からなることが、使用材料種を少なくし、ガスシールを確実に行うという点から望ましいが、緻密な絶縁性の材料であれば良く、たとえば、アルミナで形成しても良い。
【0041】
支持基板1の両側の側面に形成されているガスシール層31が固体電解質材料膜からなる場合は、上記燃料側電極3b上面に形成されている固体電解質3cと同一材料を用いることができるが、固体電解質3cと全く同一材料を用いる必要はなく、組成が多少ずれていても良く、ランタンガレート系の固体電解質材料を用いても良い。また、この部分では発電しないため、固体電解質材料を用いる必要はなく、上記したように、一般的に用いられる絶縁性緻密質セラミックスであっても良い。この固体電解質材料膜からなるガスシール層31の厚みは、固体電解質3cと同様、ガス透過防止という点から10μm以上であることが望ましい。
【0042】
(酸素側電極3d)
酸素側電極3dは、所謂ABO型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスから形成される。かかるペロブスカイト型酸化物としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物、特にAサイトにLaを有するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物の少なくとも1種が好適であり、600〜1000℃程度の作動温度での電気伝導性が高いという点からLaFeO系酸化物が特に好適である。尚、上記ペロブスカイト型酸化物においては、AサイトにLaと共にSrなどが存在していてもよいし、さらにBサイトには、FeとともにCoやMnが存在していてもよい。
【0043】
また、酸素側電極3dは、ガス透過性を有していなければならず、したがって、酸素側電極3dを形成する導電性セラミックス(ペロブスカイト型酸化物)は、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが望ましい。このような酸素側電極3dの厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが望ましい。酸素側電極3dには、酸素ガスや酸素を含有する空気等が供給される。
【0044】
以下、平板型燃料電池スタックの製法について説明する。
【0045】
先ず、たとえば、所定の原料粉末に、有機バインダ、溶媒等を添加混合し、これをドクターブレード法によりテープ成形を行い、図4(a)〜(d)、図5(a)〜(c)に示すような7種類のテープを作製する。
【0046】
ここで、図4(a)は酸素側電極テープ33、(b)は固体電解質用テープ35、(c)は燃料側電極テープ37、(d)は支持体テープ39、図5(a)〜(c)はインターコネクタテープ41a、41b、41cである。
【0047】
酸素側電極テープ33、燃料側電極テープ37、支持体テープ39には、枠状に貫通孔がテープ厚み方向に形成され、これらの貫通孔には、固体電解質材料膜からなるガスシール層31を形成するための固体電解質材料43が充填されている。また、ガス通路7a、7bを形成するためのインターコネクタテープ41a、41cには、それぞれガス通路7a、7bを形成するための複数の貫通孔が形成され、これらの貫通孔には、すみ肉部S、Sを形成する無機材料と焼成時に飛散する飛散物質とを混合してなるガス通路形成材料45が充填されている。すみ肉部Sを形成する無機材料としては、上記したように、インターコネクタとの相性という点からインターコネクタ材料からなることが望ましい。また、焼成時に飛散する飛散物質としては、パラフィンワックス等の樹脂やカーボンであることが望ましい。
【0048】
固体電解質用テープ35を除き、各テープには、プレスにて断面矩形状の貫通孔(スルーホール)を厚み方向に形成することができ、貫通孔には、スクリーン印刷により固体電解質材料43やガス通路形成材料45を含有するペーストを充填することができる。固体電解質材料43やガス通路形成材料45をシート状に形成し、これを貫通孔内に収容することもできる。
【0049】
最初に、図6に示すように、図5(c)のインターコネクタテープ41c上に、インターコネクタテープ41b、インターコネクタテープ41aを積層し、このインターコネクタ成形体の上に、それぞれの貫通孔内の固体電解質材料43が同一位置にくるように、図4(d)の支持体テープ39を2枚積層し、この積層体の上面に、それぞれの貫通孔内の固体電解質材料43が同一位置にくるように、図4(c)の燃料側電極テープ37、図4(b)の固体電解質用テープ35、(a)の酸素側電極テープ33を積層することにより、燃料電池成形体を作製できる。これらの積層を繰り返した後、加圧することにより複数のスタック成形体が形成されたブロックを作製できる。尚、図6では、理解を容易にするため、各テープの積層数を少なくして記載した。
【0050】
この後、各層の固体電解質材料43が積層された中央部分(枠状)を、一点鎖線(図4(a)、図6)で示す位置でカットし、即ち、固体電解質材料43の両端部をカットするとともに、固体電解質材料43の厚み方向の中間位置でカットし、一つの積層成形体から、3個のスタック成形体を作製できる。このスタック成形体を脱脂焼成することにより、ガス通路形成材料45の飛散物質が飛散してガス通路7a、7bが形成され、本発明の燃料電池スタックを作製できる。
【0051】
このようなシート積層法により作製された燃料電池セルのガス通路7a、7bは、その断面形状が、図3に示すように、積層するインターコネクタシート41a、41b、41cの状態により、内面に凹凸が形成されているため、シート積層法により作製されたか否か明確に判断できる。尚、図3では、インターコネクタシート41aを7枚、インターコネクタシート41bを4枚、インターコネクタシート41cを7枚積層した場合である。
【0052】
そして、本発明の製法では、スタック成形体を焼成することにより、ガス通路形成材料45の飛散物質が飛散するとともに、無機材料が、図3に符号S、Sで示したように、インターコネクタ5のガス通路7a、7bの四隅に拡散し、すみ肉部S、Sを形成することができる。
【0053】
即ち、燃料電池の積層成形体は加圧することにより、各テープの密着性向上が図られるが、この際に、図3に示すように、ガス通路を形成する空間の側面は内側に凸の形状になり、四隅が鋭角になり、この四隅のインターコネクタシート41a、41b、41cが剥離したり、インターコネクタシート41a、41cと電極シートにクラックが生じ易くなる。しかしながら、ガス通路7a、7bを形成する空間には無機材料を含有するガス通路形成材料45が充填されているので、積層成形体を焼成することにより、図3に示したように、ガス通路形成材料45中の無機材料が毛細管現象により、ガス通路7a、7bの四隅に拡散し、すみ肉部S、Sを形成することができる。
【0054】
このような燃料電池スタックでは、インターコネクタ5のガス通路7a、7bの角部にすみ肉部S、Sが形成されているため、燃料電池スタックの作製時にはガス通路7a、7bの角部における剥離、クラックの発生を抑制でき、さらに長時間の発電によってもガス通路7a、7bの角部からのクラックの進展を防止でき、ガス通路7a、7bからのガス漏れを防止できる。
【0055】
即ち、すみ肉部Sにより、インターコネクタシート41aとインターコネクタシート41bとで形成される凹部における角部、インターコネクタシート41bとインターコネクタシート41cとで形成される凹部における角部における剥離、クラックの発生を抑制し、すみ肉部Sにより、インターコネクタシート41aと燃料側電極テープ37とで形成される角部、インターコネクタシート41cと酸素側電極テープ33とで形成される角部における剥離、クラックの発生を抑制できる。
【0056】
尚、上記形態では、セルスタックを同時焼成にて作製する場合について説明したが、燃料電池セルとインターコネクタを積層した燃料電池を同時に焼成して形成する場合についても本発明を適用できる。この場合、同時焼成にて作製された燃料電池を複数積層してセルスタックが構成される。
【0057】
また、インターコネクタのみを焼成して作製する場合についても、本発明を適用することができる。即ち、上記形態で説明すると、インターコネクタシート41a、41b、41cを積層し、同時焼成してインターコネクタを作製する場合であり、この場合には、インターコネクタシート41aとインターコネクタシート41bとで形成される凹部における角部、インターコネクタシート41bとインターコネクタシート41cとで形成される凹部における角部にすみ肉部Sが形成され、インターコネクタの作製時における凹部におけるクラック剥離、クラックの発生を抑制できる。
【0058】
さらに、上記形態では、一つのインターコネクタ41の両側に凹部5a、5bを形成した例について説明したが、2種類のインターコネクタを用い、一方のインターコネクタに凹部5aを設け、他方のインターコネクタに凹部5bを設けた平板型燃料電池であっても本発明を適用することができる。
【0059】
さらに、上記形態では、ガスシール層31を設け、セルスタックから排出されるガスを回収した燃料電池装置について説明したが、本発明では、ガスシール層31を形成することなく、ガスを平板型燃料電池セルの側方に噴出させ、燃焼させるタイプのセルスタックであっても本発明を適用することができる。この場合には、セルスタックが高熱となる傾向にあるため、本発明を好適に用いることができる。
【0060】
さらに、上記形態では、一つのインターコネクタ41の両側に凹部5a、5bを形成した例について説明したが、2つのインターコネクタにそれぞれ貫通孔を形成し、これらの2つのインターコネクタを導電性でガスを透過しない仕切り板を介して連結したものであっても良い。この場合、インターコネクタの貫通孔と仕切り板により凹部が形成されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の平板型燃料電池スタックを示す斜視図である。
【図2】本発明の平板型燃料電池装置を示す断面図である。
【図3】ガス通路部分の拡大断面図である。
【図4】燃料電池スタックの製法に用いられる各種テープの平面図であり、(a)は酸素側電極用テープ、(b)は固体電解質用テープ、(c)は燃料側電極用テープ、(d)は支持体テープである。
【図5】燃料電池スタックの製法に用いられるインターコネクタシートの平面図である。
【図6】スタック成形体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
5・・・インターコネクタ
5a、5b・・・凹部
7a、7b・・・ガス通路
3b・・・燃料側電極
3c・・・固体電解質
3d・・・酸素側電極
31・・・ガスシール層
、S・・・すみ肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス通路を形成するための凹部を有し、インターコネクタ材料粉末を含有する未焼結テープを複数積層し、焼成してなるとともに、前記凹部の角部にすみ肉部が形成されていることを特徴とする平板型燃料電池のインターコネクタ。
【請求項2】
ガス通路を形成するための凹部を有する平板型燃料電池のインターコネクタの製法であって、厚み方向に貫通孔を有しインターコネクタ材料粉末を含有する未焼結テープを複数積層して形成されるとともに、該複数の未焼結テープの貫通孔により形成されたガス通路形状の凹部内に、該凹部の角部にすみ肉部を形成する無機材料と焼成時に消失する消失物質とからなるガス通路形成材料が収容されたインターコネクタ成形体を、焼成する工程を経て形成することを特徴とする平板型燃料電池のインターコネクタの製法。
【請求項3】
固体電解質の両側に電極を設けてなる平板型燃料電池セルに、一方の前記電極に接続し、該電極にガスを供給するためのガス通路を形成するインターコネクタを積層してなる平板型燃料電池であって、前記固体電解質と、前記一方の電極と、前記インターコネクタとが同時焼成して形成され、前記ガス通路の角部にすみ肉部が形成されていることを特徴とする平板型燃料電池。
【請求項4】
前記一方の電極と前記インターコネクタとで形成される前記ガス通路の角部に、すみ肉部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の平板型燃料電池。
【請求項5】
前記ガス通路は、前記インターコネクタが接続される電極と、前記インターコネクタの電極側に形成された凹部により形成されていることを特徴とする請求項3又は4記載の平板型燃料電池。
【請求項6】
固体電解質の両側に電極を設けてなる平板型燃料電池セルと、一方の前記電極に接続し、該電極にガスを供給するためのガス通路を形成するインターコネクタとを交互に積層してなるとともに、前記平板型燃料電池セルと前記インターコネクタとが同時焼成して形成され、前記ガス通路の角部にすみ肉部が形成されていることを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【請求項7】
固体電解質成形体の両側に電極成形体を設けてなる燃料電池成形体と、インターコネクタ成形体とを交互に積層してなるとともに、前記インターコネクタ成形体の前記一方の電極成形体側に形成された凹部に、無機材料と焼成時に飛散する飛散物質とからなるガス通路形成材料が収容されたスタック成形体を、焼成する工程を経て形成することを特徴とする平板型燃料電池スタックの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−135272(P2008−135272A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319957(P2006−319957)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】