説明

平板型燃料電池スタック及びモジュール

【課題】従来よりも軽量で且つ性能の高い平板型燃料電池スタック及びモジュールを提供する。
【解決手段】平板型燃料電池を含む単セルを複数積層した平板型燃料電池スタックにおいて、各平板型燃料電池1の周囲に配設され、平板型燃料電池スタックの外枠を構成する各セパレータ7aは、その周辺部に切欠き部11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板型燃料電池を含む単セルを複数積層した平板型燃料電池スタック、および平板型燃料電池スタックを同一容器内に複数配置した平板型燃料電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の平板型燃料電池スタックの構成を示す斜視図である。図5において、1は平板型燃料電池、2は燃料供給マニホールド、3は空気供給マニホールド、4は燃料排出マニホールド、5は例えば水素などの燃料、6は空気、7はセパレータである。図5に示す単セルスタックを多数積層することによって平板型燃料電池スタックが構成される。このような平板型燃料電池スタックについては、例えば非特許文献1に開示されている。
【0003】
図5を用いて、従来の平板型燃料電池スタックについて説明する。燃料5は、燃料供給マニホールド2からセパレータ7内の燃料供給用流路を介して平板型燃料電池1に供給される。空気6は、空気供給マニホールド3からセパレータ7内の空気供給用流路を介して平板型燃料電池1に供給される。平板型燃料電池1は、燃料5の電気化学的酸化反応により、電気を発生させる。燃料5は、平板型燃料電池1で発電に利用された後は、セパレータ7内の燃料排出用流路を介して燃料排出マニホールド4によって回収される。また、空気6は、平板型燃料電池1で発電に利用された後は、平板型燃料電池スタック外に放出される。
【0004】
図5に示す従来の平板型燃料電池スタックでは、マニホールドの形成やスタック構造の保持に寄与していない余分な箇所10がセパレータ7に存在し、この余分な箇所10のために、平板型燃料電池スタックが重くなるという問題点があった。
また、図5に示す従来の平板型燃料電池スタック、及び平板型燃料電池スタックを同一容器内に複数配置した平板型燃料電池モジュールでは、発電によって生じる熱がこもり、平板型燃料電池に大きな温度勾配が生じるという問題点があった。使用する材料の耐熱温度に従って、最高温度がある温度以下となるように発電することが要求される平板型燃料電池スタックにおいては、大きな温度勾配がつくことは、平板型燃料電池スタックとしての性能低下につながる。
【0005】
【非特許文献1】田川博章,「12.6.3 ガス供給室(マニホルド)」,固体酸化物燃料電池と地球環境,アグネ承風社,p.271−272,1998年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、従来の平板型燃料電池スタック及び平板型燃料電池モジュールでは、セパレータに余分な箇所が多く、重量が大きいという問題があった。また、従来の平板型燃料電池スタック及び平板型燃料電池モジュールでは、発電によって生じる熱がこもり、スタックおよびモジュールの積層方向に大きな温度勾配が生じるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、従来よりも軽量で且つ性能の高い平板型燃料電池スタック及びモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の平板型燃料電池スタックにおいて、各平板型燃料電池の周囲に配設され、平板型燃料電池スタックの外枠を構成する各板状部材は、その周辺部に切欠き部を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の平板型燃料電池スタックの1構成例において、各板状部材に設けられた前記切欠き部は、前記積層の方向の中心に近づくほど大きくなることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明は、平板型燃料電池スタックを同一容器内に複数配置した平板型燃料電池モジュールにおいて、隣り合う二つの平板型燃料電池スタックの前記切欠き部を合わせるように各平板型燃料電池スタックを密接して配置することにより、隣り合う二つの平板型燃料電池スタックの間に空間を形成したことを特徴とするものである。
また、本発明の平板型燃料電池モジュールの1構成例は、各平板型燃料電池スタックの板状部材の四隅のマニホールドのうち一つを空気供給マニホールドとして用い、四つの平板型燃料電池スタックの前記空気供給マニホールドが中心に集まるように各平板型燃料電池スタックを密接して配置し、隣り合う二つの平板型燃料電池スタックの間の前記空間に改質器を配置したことを特徴とするものである。
また、本発明の平板型燃料電池モジュールの1構成例は、各板状部材の各辺に設けられた前記切欠き部とは別に、各板状部材の一隅に設けられた切欠き部が中心に集まるように四つの平板型燃料電池スタックを密接して配置し、この四つの平板型燃料電池スタックの中心に形成された空間に改質器を配置し、隣り合う二つの平板型燃料電池スタックの間の前記空間を給気供給マニホールドとして用いることを特徴とするものである。
また、本発明の平板型燃料電池モジュールの1構成例において、各板状部材に設けられた前記切欠き部は、前記積層の方向の中心に近づくほど大きくなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、平板型燃料電池スタックの外枠を構成する各板状部材の周辺部に切欠き部を設けることにより、従来の平板型燃料電池スタックと比べて重量を軽くすることができる。また、本発明では、各板状部材の周辺部に切欠き部を設けることにより、この切欠き部から外部への放熱を促進することができるので、平板型燃料電池スタックにこもる熱量を減らすことができ、従来の平板型燃料電池スタックに比べて、スタックの積層方向の温度勾配を小さくすることができる。その結果、本発明では、従来よりも軽量で且つ性能の高い平板型燃料電池スタックを構築することができる。
【0011】
また、本発明では、各板状部材に設けた切欠き部が、積層の方向の中心に近づくほど大きくなるようにすることにより、平板型燃料電池スタックの積層方向の温度勾配をより小さくすることができる。
【0012】
また、本発明では、平板型燃料電池スタックの外枠を構成する各板状部材の周辺部に切欠き部を設け、隣り合う二つの平板型燃料電池スタックの切欠き部を合わせるように各平板型燃料電池スタックを密接して配置することにより、従来よりも軽量で且つ性能の高い平板型燃料電池モジュールを構築することができる。
【0013】
また、本発明では、隣り合う二つの平板型燃料電池スタックの間の切欠き部によって形成される空間に改質器を配置することにより、積層方向の温度勾配の低減をより効果的に実現することができる。
【0014】
また、本発明では、各板状部材の各辺に設けられた切欠き部とは別に、各板状部材の一隅に設けられた切欠き部が中心に集まるように四つの平板型燃料電池スタックを密接して配置し、この四つの平板型燃料電池スタックの中心に形成された空間に改質器を配置することにより、積層方向の温度勾配の低減をより効果的に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る平板型燃料電池スタックの構成を示す斜視図である。図1において、1は平板型燃料電池、2は燃料供給マニホールド、3は空気供給マニホールド、4は燃料排出マニホールド、5は燃料、6は空気、7aはセパレータ(板状部材)である。
【0016】
図2は、図1の平板型燃料電池スタックの構造を模式的に表す断面図である。セパレータ7aは、平板型燃料電池1の燃料極と電気的に接触する、金属からなる板状のアノードセパレータ70と、平板型燃料電池1の空気極と電気的に接触する、金属からなる板状のカソードセパレータ71とから構成される。図2の例では、平板型燃料電池1の上面に燃料極が配置され、下面に空気極が配置されている。
【0017】
セパレータ7a(70,71)には、燃料供給マニホールド2から平板型燃料電池1の燃料極に燃料5を供給するための燃料供給用流路(不図示)、空気供給マニホールド3から平板型燃料電池1の空気極に空気6を供給するための空気供給用流路(不図示)、平板型燃料電池1の燃料極から燃料5を燃料排出マニホールド4に排出するための燃料排出用流路(不図示)と、平板型燃料電池1の空気極から空気6をスタック外部に排出するための空気排出用流路(不図示)が形成されている。
【0018】
図1、図2では記載を容易にするために単セルスタックの状態で示しているが、実際には十分な発電電力を得るために、図1の破線で示すように単セルスタックを多数積層することによって平板型燃料電池スタックが構成される。そして、セパレータ7aの四隅に設けられた孔は、単セルスタックを積層することによってマニホールド2〜4となる。
【0019】
燃料5は、燃料供給マニホールド2からセパレータ7a内の燃料供給用流路を介して平板型燃料電池1の燃料極に供給される。空気6は、空気供給マニホールド3からセパレータ7a内の空気供給用流路を介して平板型燃料電池1の空気極に供給される。平板型燃料電池1で発電に利用された後の燃料5は、セパレータ7a内の燃料排出用流路を介して燃料排出マニホールド4によって回収され、空気6は、空気排出用流路を介して平板型燃料電池スタック外に放出される。
【0020】
次に、従来の平板型燃料電池スタックとの違いについて説明する。本実施の形態の平板型燃料電池スタックでは、セパレータ7aにおいてマニホールド2〜4の形成やスタック構造の保持に寄与していない余分な箇所(図5の10に相当する箇所)に切欠き部11を設けている。本実施の形態では、セパレータ7aに切欠き部11を設けることにより、従来の平板型燃料電池スタックと比べて重量を軽くすることができる。
図1の例では、セパレータ7aの一辺につき切欠き部11を1箇所ずつ設けているが、各辺にそれぞれ複数箇所設けてもよい。
【0021】
図3は、図1の平板型燃料電池スタックを複数並べた平板型燃料電池モジュールの構成を示す斜視図である。図3において、8は改質器(図3では不図示)を設置するための改質空間である。この改質空間8は、隣り合う二つの平板型燃料電池スタックの切欠き部11を合わせることによって形成される。
図3では、図1と同様にそれぞれの平板型燃料電池スタックが単セルの状態で示しているが、実際には図3の破線で示すように1セットを多数積層することによって平板型燃料電池モジュールが構成される。
【0022】
図3を用いて、本実施の形態の平板型燃料電池モジュールについて説明する。図3の例では、2×2個の平板型燃料電池スタックが平面的に配置されている。そして、図4に示すように、改質空間8には、燃料5の改質反応により水素リッチガスを生成する改質器9が配置される。
また、各平板型燃料電池スタックの四隅のマニホールドのうち一つを空気供給マニホールド3として用い、四つの平板型燃料電池スタックの空気供給マニホールド3が平板型燃料電池モジュールの中心に集まるように、平板型燃料電池スタックは配置されている。
【0023】
さらに、各平板型燃料電池スタックの四隅のマニホールドのうち一つを燃料供給マニホールド2として用い、それぞれの平板型燃料電池スタックにおいて燃料供給マニホールド2が空気供給マニホールド3の対角に位置するように、平板型燃料電池スタックは配置されている。そして、各平板型燃料電池スタックの四隅のマニホールドのうち残った二つを燃料排出マニホールド4としている。
【0024】
図4のように改質器9を用いる場合、改質器9は、燃料5の水蒸気改質反応により水素リッチガスを生成する。そして、この水素リッチガスは、燃料供給マニホールド2からセパレータ7a内の燃料供給用流路を介して平板型燃料電池1に供給される。
【0025】
本実施の形態では、平板型燃料電池スタックの周辺部に切欠き部11を設けることにより、この切欠き部11から外部への放熱を促進することができるので、平板型燃料電池スタックにこもる熱量を減らすことができる。その結果、本実施の形態の平板型燃料電池スタックでは、従来の平板型燃料電池スタックに比べて、スタックの積層方向の温度勾配を小さくすることができる。
使用する材料の耐熱温度に従って、最高温度がある温度以下となるように発電することが要求される平板型燃料電池スタックにおいては、積層方向の温度勾配が小さくなることは、平板型燃料電池スタックとしての性能の向上につながる。
【0026】
また、本実施の形態では、従来の平板型燃料電池モジュールと異なり、改質器9を平板型燃料電池1の近傍に設置している。したがって、平板型燃料電池1の発電によって生じる熱を改質器9に必要な反応熱として利用することができ、この改質器9の熱利用によって各平板型燃料電池スタックにこもる熱量を減らすことができる。このため、本実施の形態の平板型燃料電池モジュールでは、積層方向の温度勾配の低減をより効果的に実現することができる。なお、改質器9は、平板型燃料電池1の温度が高い部分、すなわちスタックの積層方向の中心に近づけて配置した方がより効果的である。
【0027】
なお、本実施の形態では、各平板型燃料電池スタックのセパレータ7aにおいて切欠き部11の形状を全て同一にしているが、積層方向の中心に近づくほど切欠き部11が大きくなるようにしてもよい。平板型燃料電池1の発電によって生じる熱は積層方向の中心に近づくほど、こもり易くなることは明らかである。そこで、積層方向の中心に近づくほどセパレータ7aの切欠き部11を大きくして、放熱面積を増やし放熱効果を上げることで、各平板型燃料電池スタックの積層方向の温度勾配をより小さくすることができる。
【0028】
また、本実施の形態では、各平板型燃料電池スタックの空気供給マニホールド3を平板型燃料電池モジュールの中心に集め、改質空間8に改質器9を配置しているが、これに限るものではない。図1、図3に示した切欠き部11とは別にセパレータ7aの少なくとも一隅にマニホールドの代わりに切欠き部を設けて、この切欠き部が平板型燃料電池モジュールの中心に集まるように四つの平板型燃料電池スタックを配置し、これらの切欠き部を合わせることによって平板型燃料電池モジュールの中心に改質空間を形成し、この改質空間に改質器を配置するようにしてもよい。この場合は、図3の改質空間8を給気供給マニホールドとして用い、この空気供給マニホールドから平板型燃料電池1に空気を供給すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、平板型燃料電池スタックに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る平板型燃料電池スタックの構成を示す斜視図である。
【図2】図1の平板型燃料電池スタックの構造を示す断面図である。
【図3】図1の平板型燃料電池スタックを複数並べた平板型燃料電池モジュールの構成を示す斜視図である。
【図4】改質器を含む平板型燃料電池モジュールの外観図である。
【図5】従来の平板型燃料電池スタックの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1…平板型燃料電池、2…燃料供給マニホールド、3…空気供給マニホールド、4…燃料排出マニホールド、5…燃料、6…空気、7a…セパレータ、8…改質空間、9…改質器、11…切欠き部、70…アノードセパレータ、71…カソードセパレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板型燃料電池を含む単セルを複数積層した平板型燃料電池スタックにおいて、
各平板型燃料電池の周囲に配設され、平板型燃料電池スタックの外枠を構成する各板状部材は、その周辺部に切欠き部を備えることを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1に記載の平板型燃料電池スタックにおいて、
各板状部材に設けられた前記切欠き部は、前記積層の方向の中心に近づくほど大きくなることを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1に記載の平板型燃料電池スタックを同一容器内に複数配置した平板型燃料電池モジュールにおいて、
隣り合う二つの平板型燃料電池スタックの前記切欠き部を合わせるように各平板型燃料電池スタックを密接して配置することにより、隣り合う二つの平板型燃料電池スタックの間に空間を形成したことを特徴とする平板型燃料電池モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の平板型燃料電池モジュールにおいて、
各平板型燃料電池スタックの板状部材の四隅のマニホールドのうち一つを空気供給マニホールドとして用い、四つの平板型燃料電池スタックの前記空気供給マニホールドが中心に集まるように各平板型燃料電池スタックを密接して配置し、隣り合う二つの平板型燃料電池スタックの間の前記空間に改質器を配置したことを特徴とする平板型燃料電池モジュール。
【請求項5】
請求項3に記載の平板型燃料電池モジュールにおいて、
各板状部材の各辺に設けられた前記切欠き部とは別に、各板状部材の一隅に設けられた切欠き部が中心に集まるように四つの平板型燃料電池スタックを密接して配置し、この四つの平板型燃料電池スタックの中心に形成された空間に改質器を配置し、隣り合う二つの平板型燃料電池スタックの間の前記空間を給気供給マニホールドとして用いることを特徴とする平板型燃料電池モジュール。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の平板型燃料電池モジュールにおいて、
各板状部材に設けられた前記切欠き部は、前記積層の方向の中心に近づくほど大きくなることを特徴とする平板型燃料電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−70770(P2009−70770A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240686(P2007−240686)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】