説明

平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体

【課題】平板表示装置の製造に当たっての蒸着精度を高めるのに好適な薄膜蒸着用マスク組立体を提供する。
【解決手段】マスク組立体は、開口部201を囲む一対の第1支持部22及び一対の第2支持部24を備えたフレーム20と、少なくとも一組のパターン開口部401を形成し、引張力が加わった状態で第1支持部22に固定される複数の単位マスク40と、を含む。第1支持部は単位マスクが固定される第1基準面221と、第1基準面から単位マスクの厚さ方向に沿って第1基準面と高低差を有する第2基準面222とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体に関し、より詳しくは、引張力が加わった複数の単位マスクを固定および支持して、複数の単位マスクと共にマスク組立体を構成するフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
最近になって陰極線管の短所を克服して、軽量化および小型化が可能な平板表示装置が脚光を浴びている。このような平板表示装置の代表的な例として有機発光表示装置、液晶表示装置およびプラズマディスプレイパネル等がある。
【0003】
平板表示装置、特に有機発光表示装置を製造するためには、特定パターンを有する電極と発光層などを形成しなければならず、これらの形成法としてマスク組立体を用いた蒸着法が適用できる。
【0004】
公知のマスク組立体は、開口部を備えたフレームと、長手方向に沿って引張力が加わった状態でフレームに並んで固定される帯状の単位マスク群で構成される。単位マスクは溶接によってフレームに固定して、単位マスクが固定されるフレームの上面は平らな面で構成される。
【0005】
それぞれの単位マスクは、母基板に複数の有機発光表示装置を製作することができるように複数組のパターン開口部を備えることができる。一組のパターン開口部は、一つの表示装置に対応し、表示装置に形成する複数の電極または複数の発光層と同一な形状に形成される。
【0006】
前述したマスク組立体を用いて、一定時間の間、蒸着工程を進行すれば、単位マスクとフレームにも有機物質が蒸着される。これによって有機物質を洗浄で除去した後、マスク組立体を再び蒸着工程に投じるようになる。マスク組立体の洗浄は、洗浄液を用いてマスク組立体に蒸着された有機物質を除去した後、乾燥させる過程で行われる。
【0007】
ところで、洗浄過程で単位マスクとフレームの間の隙間空間に洗浄液が浸透して、乾燥後にも洗浄液が除去されず残るようになる。洗浄液には粒子形態の有機物質が含まれているため、乾燥時に除去されない洗浄液によって単位マスクの表面には屈曲(凹凸)が形成される。
【0008】
したがって、蒸着のために母基板が単位マスク上に配置される時、単位マスクに形成された屈曲によって、母基板と単位マスクの密着度が落ちるので蒸着精密度が低下し、母基板によって押さえられた屈曲部位から洗浄液がもれて、蒸着不良を発生することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、マスク組立体の洗浄後に単位マスクとフレームの隙間空間に洗浄液が残るのを最少化して、単位マスクの屈曲形成を抑制し、その結果、蒸着精密度を高めて蒸着不良を最小化することができる平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例による平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体は、開口部を囲む一対の第1支持部及び一対の第2支持部を備えたフレームと、少なくとも一組のパターン開口部を形成し、引張力が加わった状態で第1支持部に固定される複数の単位マスクと、を含む。第1支持部は単位マスクが固定される第1基準面と、第1基準面から単位マスクの厚さ方向に沿って第1基準面と高低差を有する第2基準面と、を含む。
【0011】
第1基準面は第2基準面より開口部に近く位置できて、第2基準面は第1基準面より低く形成できる。第1基準面で測定される第1支持部の厚さは、第2基準面で測定される第1支持部の厚さより大きいことが好ましい。第1支持部は第1基準面と第2基準面の反対側面を平らに形成することが好ましい。
【0012】
第1基準面は、第2支持部と同一な高さに位置することができる。第1支持部は下記条件を満足するように形成できる。
【0013】
条件:0.2≦W2/W1≦0.4
ここで、W1は第1支持部の幅を示し、W2は第1基準面の幅を示す。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蒸着のために複数の単位マスクの上に母基板を配置する時、母基板と単位マスクの密着度が向上して、蒸着精密度を高め、蒸着過程で洗浄液がもれないようにして蒸着不良を予防できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照して、本発明の好ましい実施例について当業者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかしながら、本発明は多様に異なる形態で実現できて、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施例による平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体の分解斜視図であり、図2は本発明の一実施例による平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体の平面図であり、図3は図2のI−I線を基準に切開した断面を示すマスク組立体の断面図である。
【0017】
図1乃至図3を参照すると、本実施例のマスク組立体100は、パターン開口部401の全数組(7組×9列=63組)に対応する開口部201を備えたフレーム20と、蒸着のためのパターン開口部401を複数組(本例は7組)備えて1列とし、長さ方向(図面のy軸方向)に沿って引張力が加わった状態でフレーム20に並んで固定される帯状の単位マスク群40を9列含む。
【0018】
フレーム20は単位マスク群40の両端を固定および支持して、開口部201を通じて、単位マスク群40に具備されたパターン開口部401を露出させる。この時、フレーム20には単位マスク群40に印加または付与された引張力によって、単位マスク群40の長手方向に沿って圧縮力が作用するので、フレーム20は圧縮力による変形が起こらないように剛性が大きい金属材料で形成される。
【0019】
単位マスク群40は、シート形状のマスクから分割されたものなどである。マスク組立体100は、シート形状のマスクから分割された単位マスク群40の中で、パターン精密度に優れた単位マスク群40を選別して使用する。これによって実際蒸着に使用されるパターン開口部401の形状誤差を最少化できる。
【0020】
また、蒸着過程で生じる可能性のある熱膨張による単位マスク群40の変形やパターン開口部401のわい曲を抑制できて、単位マスク群40の長手方向に沿って均一な引張力が加えられるので、単位マスク群40の特定部位に変形量が集中することを最少化できる。
【0021】
単位マスク群40に具備された複数組のパターン開口部401のうちの一組のパターン開口部401は、一つの表示装置に対応できて、マスク組立体100は、単位マスク群40の長手方向(図面のy軸方向)および幅方向(図面のx軸方向)に沿って複数組のパターン開口部401を備える。パターン開口部401は、表示装置に形成される複数の電極または複数の発光層と同一な形状に形成される。図1乃至図3では便宜上パターン開口部401を棒形状に概略化して示した。
【0022】
図4は前記マスク組立体を用いた平板表示装置の蒸着過程を示す概略図である。
【0023】
図4を参照すると、マスク組立体100は、蒸着設備内のフレームホルダー12に固定され、複数の単位マスク群40の上に母基板14が置かれる。図4では便宜上単位マスク群40に形成されたパターン開口部の図示を省略した。
【0024】
この状態で蒸着源16から電極材料または発光層材料が蒸発すると、パターン開口部401(図1参照)を通じて、母基板14にパターン開口部401と同一な形状に材料が蒸着される。このようにマスク組立体100を用いて、一枚の母基板14に複数の平板表示装置、例えば複数の有機発光表示装置を製作することができる。
【0025】
上記ではマスク組立体100が有機発光表示装置の複数の電極と複数の発光層を形成するのに使用されるものと記載したが、本発明はここに限定されず、マスク組立体100は他の平板表示装置の電極などを形成するのに有効に適用できる。
【0026】
再び図1乃至図3を参照すると、本実施例でフレーム20は開口部201を間において単位マスク群40の長手方向(図面のy軸方向)に沿って互いに対向する一対の第1支持部22と、開口部201を間において単位マスク群40の幅方向(図面のx軸方向)に沿って互いに対向する一対の第2支持部24とを含む。従って、各第1支持部22は各帯状単位マスクの両短辺に対応して位置し、各第2支持部24は各帯状単位マスクの長辺に平行に対応する位置にある。
【0027】
第1支持部22と第2支持部24は、同じ長さに形成されたり異なる長さに形成されることができる。図1及び図2では、一例として第1支持部22が第2支持部24より長い長さに形成されて、第1支持部22がフレーム20の長辺を構成して第2支持部24がフレーム20の短辺を構成することを示した。
【0028】
ここで、単位マスク群40が固定される第1支持部22の上面は、所定の高低差を有する形状になって単位マスク群40とフレーム20が重なる面積を縮小させる。
【0029】
つまり、第1支持部22の上面は、単位マスク群40が固定される第1基準面221と、第1基準面221から単位マスク群40と遠くなる方向、つまり、単位マスク群40の厚さ方向(図1と図3のz軸方向)に沿って第1基準面221より低い高さを有する第2基準面222を含む。図3で第1基準面221と第2基準面222の高低差をhと表記した。
【0030】
第1基準面221は、第2基準面222より開口部201に近く位置し、第2支持部24と同一な高さを維持する。そして、第1支持部22の下面は平らに形成される。これによって第1基準面221で測定される第1支持部22の厚さ(t1)(図3参照)が第2基準面222で測定される第1支持部22の厚さ(t2)(図3参照)より厚く形成される。
【0031】
前述した構造は、先ず一定の厚さを有するフレームを製作した後、第1支持部22の外側一部を機械加工で除去して完成することができる。第1基準面221と第2基準面222の高低差(h)(図3参照)が数mm以内であると、第2基準面222での厚さの縮小がフレーム20の強度特性に実質的な影響を与えない。
【0032】
単位マスク群40は、長手方向(図面のy軸方向)に沿って引張力が加わった状態で両端部が第1基準面221と重なるように位置し、溶接などの方法で第1基準面221に固定される。そして、単位マスク群40が第1基準面221に固定された後、単位マスク群40の溶接点外側部位が切断されてマスク組立体100が完成される。
【0033】
このように第1支持部22より狭い幅を有する第1基準面221に単位マスク群40が固定されることにより、本実施例のマスク組立体100は、単位マスク群40とフレーム20の重畳面積を縮小させて、単位マスク群40とフレーム20の間の隙間空間を縮小することができる。
【0034】
図5は図3に示すマスク組立体の部分拡大図であり、図6は比較例のマスク組立体を示す部分拡大図である。
【0035】
図5を参照すると、本実施例のマスク組立体100では第1支持部22の上面が第1基準面221と第2基準面222に区分される。その反面、図6を参照すると、比較例のマスク組立体100’では第1支持部22’の上面が第1基準面と第2基準面の区分なしに平らに形成される。本実施例のマスク組立体100が比較例のマスク組立体100’より単位マスク群40とフレーム20の間の隙間空間を効果的に縮小させる可能性があることを確認できる。
【0036】
従って、本実施例のマスク組立体100は、蒸着工程の後にマスク組立体100に蒸着された有機物質を洗浄および乾燥する過程で、単位マスク群40とフレーム20の間の隙間空間に洗浄液が残ることを最少化し、洗浄液によって単位マスク群40の表面に屈曲(凹凸)が形成されることを抑制することができる。
【0037】
その結果、蒸着のために複数の単位マスク群40の上に母基板14(図4参照)を配置する時、母基板14と単位マスク群40の密着度が向上して蒸着精密度が高くなり、蒸着過程で洗浄液がもれないようにして蒸着不良を予防できる。
【0038】
本実施例のマスク組立体100で第1支持部22の幅(W1)(図5参照)に対する第1基準面221の幅(W2)(図5参照)比率は0.2乃至0.4に設定でき、特に、0.3に設定される。
【0039】
前記比率が0.2より小さい場合、単位マスク群40とフレーム20の間の溶接品質が低下して溶接部位で単位マスク群40が突き出される。この突出部位によって、蒸着過程で母基板14と単位マスク群40の密着度が低下して蒸着精密度が低くなりうる。一方、前記比率が0.4より大きい場合、単位マスク群40とフレーム20の間の隙間空間を縮小させる効果が微小であるので、第2基準面222の形成による効果が得にくくなる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付した図面の範囲内で多様に変形して実施するのが可能であり、これもまた本発明の範囲に属することは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例による平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施例による平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体の平面図である。
【図3】図2のI−I線を基準に切開した断面を示す本発明の一実施例による平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体の断面図である。
【図4】図1に示すマスク組立体を用いた平板表示装置の蒸着過程を示す概略図である。
【図5】図3に示すマスク組立体の部分拡大図である。
【図6】比較例のマスク組立体を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0042】
20 フレーム
22 第1支持部
24 第2支持部
40 単位マスク群
100 マスク組立体
201 開口部
221 第1基準面
222 第2基準面
401 パターン開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を囲む一対の第1支持部及び一対の第2支持部を備えたフレームと、
少なくとも一組のパターン開口部を形成し、引張力が加わった状態で前記第1支持部に固定される複数の単位マスクと、
を含み、
前記第1支持部は、
前記単位マスクが固定される第1基準面と、
前記第1基準面から前記単位マスクの厚さ方向に沿って前記第1基準面と高低差を有する第2基準面と、
を含むことを特徴とする、平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体。
【請求項2】
前記第1基準面が前記第2基準面より前記開口部に近く位置し、前記第2基準面が前記第1基準面より低い高さで形成されることを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体。
【請求項3】
前記第1基準面で測定される前記第1支持部の厚さが前記第2基準面で測定される前記第1支持部の厚さより大きいことを特徴とする、請求項2に記載の平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体。
【請求項4】
前記第1支持部は前記第1基準面と前記第2基準面の反対側面を平らに形成することを特徴とする、請求項3に記載の平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体。
【請求項5】
前記第1基準面は前記第2支持部と同一な高さに位置することを特徴とする、請求項2に記載の平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体。
【請求項6】
前記第1支持部は下記条件を満足することを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の平板表示装置の薄膜蒸着用マスク組立体。
条件:0.2≦W2/W1≦0.4
ここで、W1は前記第1支持部の幅を示し、W2は前記第1基準面の幅を示す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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