説明

平滑なシャフトを介して回転運動を伝達する装置

本発明は、(i)可撓性シャフト(2)、および(ii)可撓性シャフト(2)を収容し、かつその内部で同シャフト(2)を回転させる構成を備えたシース(3)を有する回転伝達装置(1)に関する。可撓性シャフト(2)の外側表面は、本質的に平滑な表面が形成されるように、機械加工される。本発明は、本装置を備えた自動車(7)シート調整システムにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転運動を伝達する装置と、該装置を備える自動車シートの調整システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性シャフトと、内部に可撓性シャフトを回転可能に収容するシースとを備えた回転伝達装置が公知である。より詳細には、可撓性シャフトは金属製ケーブルから構成され得る。
【0003】
この回転伝達装置は、特に自動車のシートの調整に使用される場合、シース内の可撓性シャフトの回転速度は2000rpmよりも速く、通常は3000rpmのオーダーにある。
【0004】
このような速度にて回転中、振幅の小さい振動が発生し、この振動は可撓性シャフトに沿って伝播して騒音が発生する。
また、シース内に潤滑物質が提供されると、可撓性シャフトの回転によってアルキメデス・スクリュー効果が発生し、潤滑物質をシース末端に移動させる。そのため、潤滑効果が損失し、伝達装置の信頼性が低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、可撓性シャフトが実質的に平滑な表面を有する回転運動伝達装置を提供することによって、このような不都合を克服することを目的としている。これは即ち、本願発明者はこの可撓性シャフトの特徴により、一方では可撓性シャフトの回転により発生する振動を相当低減させ、他方ではアルキメデス・スクリュー効果を排除することが可能であることに気付いたためである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のことを目的として、本発明の第一態様は、可撓性シャフトと、内部に可撓性シャフトが収容されるシースとを備える回転運動伝達装置に関する。このシースは、シャフトが同シース内にて回転可能であるように構成されている。可撓性シャフトの外側表面には機械加工が施され、そのため可撓性シャフトの外側表面にはほぼ平滑な表面仕上げがなされている。
【0007】
本発明の第二態様は、自動車シートの調整システムに関する。このシステムは、自動車の構造上に塔載される少なくとも1個の調整ラナーと、シートを調整ラナーに固定する調整手段とを備える。このシステムは、少なくとも1個の回転出力部を有する駆動モータも備える。調整システムは、駆動モータの回転出力部と、固定手段との間に配置されて、出力部の回転に応答して固定手段を調整ラナーに沿って移動させる伝達装置も備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、添付の図面を参照にした以下の説明を読むことにより、理解が深まるであろう。
回転運動を伝達する装置1は、可撓性シャフト2およびシース3を備える。可撓性シャフト2は、シース3の内部に収容されている。シース3の内径は、シース3内で可撓性シャフト2が回転可能であるように設定される。
【0009】
可撓性シャフト2の回転速度は、通常、約3000rpmである。この速度にて回転させるために、シース3内に潤滑物質15を配置して、シース内での可撓性シャフト2の回転を容易にすることも可能である。
【0010】
図1に示す第一実施形態によれば、シース3は、例えばプラスチック等により形成された可撓性の管状カバーから構成されている。
図2に示す第二の実施形態によれば、シース3は、コア4と、コア4を包囲する外側管状カバー5とを備える。コア4は、金属材料により形成された螺旋状ばね等から構成され得る。この螺旋状ばねは、螺旋状に巻回された金属細長片等から形成される。ばねの回旋はシース3に可撓性を付与するため不連続である。外側カバー5は、PVC等の射出プラスチック材料により形成されていてもよい。
【0011】
この実施形態によれば、シース3のコア4は、内側表面上、即ち可撓性シャフト2に面した表面上に、フロッキング6を備えている。
フロック加工を施すために、例えば静電手段等によって、ポリアミド繊維6,6を含んでもよいフロッキング6で、コア4の内側表面を被覆する。
【0012】
上述のことは、シース3の内側にてフロック加工が施された構成によって、最高の防音が提供されたことに起因する。フロッキング6は可撓性シャフト2上に押し当たることによって可撓性シャフト上に圧縮力を付与し、それによって可撓性シャフト2とシース3との間に機械的な絶縁が提供され得る。
【0013】
さらに、可撓性シャフトを円滑にするため、シース内にグリース等の潤滑物質が挿入される場合、フロック加工されたシースは、可撓性シャフトの回転によって離反されたグリースの漏れを防止することが可能である。フロッキングは、グリースを定位置に保持することが可能である。これは、即ち、平滑な内側表面を有するシースの場合、グリースの漏れがシース末端にて発生し得るためである。
【0014】
可撓性シャフト2は、数個の金属製ワイヤ、特にスチール製ワイヤを螺旋状に巻回して形成されたケーブルからなる。この構成において、ケーブルの外側表面は、数個のワイヤを使用した結果形成される輪郭を有する。
【0015】
ケーブルの輪郭の寸法を縮小するために、ケーブルの外側表面は機械加工されることによって、ほぼ平滑な表面仕上げが提供される(図面参照)。
より詳細には、ケーブルは、シース3内に配置されるに先立って、研磨され得る。この研磨は、例えば1個のワイヤの半径の高さの上部にて実行され得る。従って、ワイヤの外側を、同ワイヤの半径と等しい距離上にて均すことよって、実質的に平滑な外側表面を有するケーブルが得られる。この表面仕上げはフロッキング6の磨耗を抑制するよう構成された円筒面に類似している。
【0016】
本願発明者は、本発明の可撓性シャフト2を使用すると、可撓性シャフト2のフロッキング6に対する回転中にフロッキング6が圧縮および弛緩することによって、振動現象を抑制することが可能であることに気付いた。
【0017】
さらに、本発明の可撓性シャフト2は、アルキメデス・スクリュー現象を抑制することが可能である。これは、潤滑物質15がもはや、シース3内で可撓性シャフト2の外側表面の輪郭により移動されないことに起因する。
【0018】
このような回転運動伝達装置は、図3に示すような自動車シートの調整システム7において使用され得る。
この目的において、自動車の図示されない構造に対して、2個のラナー8,9が任意の適切な手段を介して固定される。これらのラナーは、調整ノッチを備えている。このノッチの機能を以下に説明する。
【0019】
ラナー8,9は、自動車の同様に図示されないシート枠を支持する。シート枠の移動およびラナーに対する固定は、減速装置10,11によって行われる。各減速装置10,11には、上述したラナー8,9のノッチと協働する歯状輪が設けられている。
【0020】
電動モータ12は、自動車の構造またはシート枠に対して固定される。モータ12は、2個の回転出力部13,14を有する。各回転出力部13,14は、本発明の回転運動伝達装置1を介して、減速装置10,11に対して接続されている。
【0021】
モータ12に動力が付与されると、モータ12は回転伝達装置1の可撓性シャフトをシース内部にて回転させる。可撓性シャフトが回転すると減速装置10,11が駆動して、シートをラナー8,9に沿って移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第一実施形態による回転伝達装置の一部の概略を示す縦断面図。
【図2】第二実施形態による回転伝達装置の一部の概略を示す縦断面図。
【図3】本発明による自動車シート調整システムの斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性シャフト(2)と、同可撓性シャフト(2)が内部に収容されるシース(3)とを備える回転運動を伝達するための装置(1)であって、前記シースは、同シース内にてシャフト(2)の回転を可能にするように構成され、かつ可撓性シャフト(2)は、数個の金属製ワイヤを巻回して構成されたケーブルからなり、前記装置は、可撓性シャフト(2)の外側表面が機械加工されて、ほぼ平滑な表面仕上げがなされていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記機械加工は、可撓性シャフト(2)の外側表面を研磨する工程を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ワイヤは、螺旋状に巻回されている請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記研磨する工程は、1個のワイヤの半径の高さの上部にて実行される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記シース(3)は、管状カバーから構成されている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記シース(3)は、内部において可撓性シャフト(2)が回転可能に収容されるコア(4)を有し、同コアは金属材料から形成された螺旋状ばねから構成され、同ばねは、不連続の螺旋状に巻回された金属製の細長片から形成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記シース(3)は、コア(4)を包囲するプラスチック製の外側管状カバー(5)も備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記コア(4)は、その内側表面上にフロッキング(6)を備える請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記シース(3)の内部に潤滑物質(15)が配置される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
自動車シートのための調整システム(7)であって、自動車構造上に塔載される少なくとも1個の調整ラナー(8,9)と、同調整ラナー(8,9)に対して前記シートを固定する調整手段(10,11)とを備え、前記システムは少なくとも1個の回転出力部(13,14)を有する駆動モータ(12)も備え、前記調整システム(7)は、駆動モータ(12)と固定手段(10,11)との間に配置され、かつ固定手段(10,11)を回転出力部(13,14)の回転に応答して調整ラナー(8,9)に沿って移動させる請求項1乃至9のいずれか一項に記載の伝達装置(1)も備える、調整システム(7)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−519967(P2006−519967A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505719(P2006−505719)
【出願日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000597
【国際公開番号】WO2004/083659
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(504436963)インダーフレックス−テクノフレックス (4)
【氏名又は名称原語表記】INDERFLEX−TECHNOFLEX
【Fターム(参考)】