説明

平版印刷版用包装箱及び平版印刷版包装構造

【課題】平版印刷版の塗布膜に損傷を生じさせず、また、コストダウン、多品種に対応した管理等の各種課題の解決が可能である平版印刷版用包装箱及びこの平版印刷版用包装箱を使用した平版印刷版包装構造を提供する。
【解決手段】1枚以上の段ボール紙が折り畳まれて形成され、内部に平版印刷版の積層体20を収容して包装するための平版印刷版用包装箱30である。段ボール紙の端辺部分が折り返され端辺先端の側面44T、48Tが積層体の側面と相対するように配置され、端辺先端の側面と積層体の側面との平行度が30度以下となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版用包装箱及び平版印刷版包装構造に係り、特に、平版印刷版と合紙とが交互に積層された状態の積層体に好適に使用される平版印刷版用包装箱及びこの平版印刷版用包装箱を使用した平版印刷版包装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の製版法(電子写真製版法を含む)では、製版工程の自動化を容易にすべく、感光性印刷版や感熱性印刷版等の平版印刷版が広く用いられている。平版印刷版は、一般にシート状又はコイル状のアルミニウム板等の支持体に、たとえば、砂目立て、陽極酸化、シリケート処理、その他化成処理等の表面処理を単独又は適宜組み合わせて行い、次いで、感光層又は感熱層(以下、これらをまとめて「塗布膜」といい、塗布膜が塗布された面を「画像形成面」、塗布膜が形成されていない面を「非画像形成面」という)の塗布、乾燥処理を行った後に所望のサイズに切断されることにより製造される。
【0003】
この平版印刷版は、露光、現像処理、ガム引き等の製版処理が行われ、印刷機にセットされる。そして、印刷機にセットされた平版印刷版に、インクが塗布され、これが転写されることにより、紙面に文字、画像等が印刷される。
【0004】
ところで、複数の平版印刷版を積層して運搬等する場合、支持体に塗布された塗布膜(画像形成面)を保護するために、合紙と呼ばれる紙を塗布膜に接触させることがある。特に、平版印刷版を効率よく荷扱いするために、複数の平版印刷版を厚さ方向に積層して平版印刷版の積層束を構成し、この積層束を包装した状態で荷扱いすることがあり、この場合は積層束を包装した状態で段ボール等の包装箱に収納して荷扱いするのが一般的である。
【0005】
この包装箱に関しては、コストダウン、塗布膜の損傷防止、多品種に対応した管理等の各種課題があり、この各課題に対処すべく本出願人等により各種の提案がなされている(たとえば特許文献1〜特許文献8等。)。
【0006】
このうち、特許文献1には、底面板の端を折り曲げて包装箱を作成する内容が開示されている。特許文献2には、積層束の外周のみを覆う包装体の内容が開示されている。特許文献3には、綴じ紐付き包装体の内容が開示されている。特許文献4には、段ボール外装体用紙の製造方法の内容が開示されている。
【0007】
特許文献5には、端部に管状構造の補強材を付けた包装箱の内容が開示されている。特許文献6には、各辺に対応して外力のエネルギーを吸収する保護部材の内容が開示されている。特許文献7には、底面板の端部を折り重ねて包装箱を組立てる内容が開示されている。特許文献8には、アルミ箔等を使用せずに透湿度が低い包装材を使用する内容が開示されている。
【0008】
そして、これら各種の提案を実施することにより、所期の効果が得られるとされている。
【特許文献1】特開昭54−12996号公報
【特許文献2】特開平1−99976号公報
【特許文献3】特開平1−45273号公報
【特許文献4】特開平1−253431号公報
【特許文献5】特開平10−16946号公報
【特許文献6】特開2000−95271号公報
【特許文献7】特開平10−269456号公報
【特許文献8】特開平6−122469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、現状では平版印刷版包装構造として求められる上記の各種課題を全て解決したものは見られない。たとえば、コストダウンができるものの、塗布膜の損傷防止が図られていない場合であったり、コストダウンができるものの、多品種に対応した管理に問題があったりする。
【0010】
具体的には、たとえば、上記の特許文献2によれば、外力に対する保護・緩衝機能が乏しく、塗布膜の損傷防止が図られていない。また、特許文献5によれば、包装箱の隙間から光漏れを生じやすく、塗布膜の光被りとなりやすい。また、特許文献6によれば、箱内の遮光性が確保できるものの、構造が複雑であり高価となる。また、廃却時の解体が困難であるという不具合もある。
【0011】
以下、図によって現状の平版印刷版包装構造の不具合点を説明する。図9及び図10は、従来の平版印刷版包装構造の端辺近傍の部分断面図である。図9及び図10に示されるように、平版印刷版12と、塗布膜を保護する合紙10とが、交互に厚さ方向に重ね合わされ、更に、この上面及び下面に保護用厚紙(図示略)が配置され、平版印刷版12の積層束20が構成されている。そして、積層束20を内装紙(図示略)によって包装(内装)し、包装構造を平版印刷版用包装箱2に収容することにより、平版印刷版包装構造4が構成されている。
【0012】
この平版印刷版用包装箱2は、段ボール紙が折り畳まれて形成された箱である。このうち、図9のものは、上側部分2Aと下側部分2Bとが積層されて構成されている。この上側部分2A及び下側部分2Bは、それぞれ段ボール紙が2回折り畳まれて形成されており、積層束20の左側面に相対する部分2Cが山形に形成されている。したがって、積層束20の左側面と、この部分2Cとの平行度が不良な状態となっている。すなわち、この部分2Cと積層束20の左側面とのクリアランスは、C〜C’まで変化しており、箱内部での積層束20が動く原因となり、塗布膜の損傷防止の点では好ましくない。
【0013】
一方、図10のものは、段ボール紙がコ字状に折り畳まれて形成され、これが二重になって形成された箱である。この構造においても、積層束20の左側面と、これに相対する部分2Dとの平行度が不良な状態となっている。したがって、箱内部での積層束20が動く原因となり、塗布膜の損傷防止の点では好ましくない。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、平版印刷版の塗布膜に損傷を生じさせず、また、コストダウン、多品種に対応した管理等の各種課題の解決が可能である平版印刷版用包装箱及びこの平版印刷版用包装箱を使用した平版印刷版包装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、1枚以上の段ボール紙が折り畳まれて形成され、内部に平版印刷版の積層体を収容して包装するための平版印刷版用包装箱において、前記段ボール紙の端辺部分が折り返され該端辺先端の側面が前記積層体の側面と相対するように配置され、前記端辺先端の側面と前記積層体の側面との平行度が30度以下となっていることを特徴とする平版印刷版用包装箱を提供する。
【0016】
本発明によれば、段ボール紙の折り返された端辺先端の側面が積層体の側面と相対するように配置され、この端辺先端の側面と積層体の側面との平行度が30度以下となっているので、箱内部での積層束の動きを拘束しやすく、塗布膜の損傷防止の点では好ましい。
【0017】
なお、本発明において、積層体の形状は、一般的に矩形状であることが好ましい。また、「平行度」とは、JIS規格によれば、基準面に平行なある感覚を持つ、互いに平行な二つの平面の間の空間を表す、とされているが、本明細書においては、一方の面が他方の面とのなす角度を意味する。
【0018】
また、本発明は、1枚以上の段ボール紙が折り畳まれて形成され、内部に平版印刷版の積層体を収容して包装するための平版印刷版用包装箱において、前記段ボール紙の端辺部分が折り返され該端辺先端の側面が前記積層体の側面と相対するように配置されるとともに、前記積層体の4つの側面のうちの前記端辺先端と相対していない側面の側にスペーサ部材が配置可能となっており、前記スペーサ部材の側面と前記積層体の側面との平行度が30度以下となっていることを特徴とする平版印刷版用包装箱を提供する。
【0019】
本発明によれば、段ボール紙の折り返された端辺先端の側面が積層体の側面と相対するように配置されるとともに、積層体の4つの側面のうちの前記端辺先端と相対していない側面の側にスペーサ部材が配置可能となっており、このスペーサ部材の側面と積層体の側面との平行度が30度以下となっているので、箱内部での積層束の動きを拘束しやすく、塗布膜の損傷防止の点では好ましい。
【0020】
本発明において、前記段ボール紙の端辺部分のうち、相対する2辺が折り返されることが好ましい。
【0021】
このように、相対する2辺が折り返されることにより、箱内部での積層束の動きを両側から拘束しやすく、平版印刷版の塗布膜に損傷を生じさせる不具合を一層減少させることができる。
【0022】
また、本発明において、前記端辺先端の側面と前記積層体の側面とのクリアランスが10mm以下となっていることが好ましい。また、本発明において、前記スペーサ部材の側面と前記積層体の側面とのクリアランスが10mm以下となっていることが好ましい。このように、クリアランスが10mm以下となっていれば、箱内部での積層束の動きを拘束しやすく、平版印刷版の塗布膜に損傷を生じさせる不具合を更に一層減少させることができる。
【0023】
また、本発明は、前記平版印刷版用包装箱を使用して平版印刷版を包装したことを特徴とする平版印刷版包装構造を提供する。本発明によれば、上記の各種平版印刷版用包装箱を使用して平版印刷版を包装するので、箱内部での積層束の動きを拘束しやすく、塗布膜の損傷防止の点では好ましい。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、平版印刷版の塗布膜に損傷を生じさせにくい平版印刷版用包装箱及びこの平版印刷版用包装箱を使用した平版印刷版包装構造を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面に従って、本発明に係る平版印刷版用包装箱及びこの平版印刷版用包装箱を使用した平版印刷版包装構造の好ましい実施態様(第1実施形態)について説明する。
【0026】
図1は、内装紙22及び合紙10を使用して平版印刷版12を包装する過程を示す斜視図である。図1に示されるように、平版印刷版12と、塗布膜を保護する合紙10とが、交互に厚さ方向に重ね合わされ、更に、この上面及び下面に保護用厚紙16、16が配置され、平版印刷版12の積層束20が構成されている。
【0027】
そして、積層束20を内装紙22によって包装(内装)することにより、積層束包装構造24が構成されている。なお、保護用厚紙16、16は必須のものではない。
【0028】
平版印刷版12は、長方形の板状に形成された薄いアルミニウム製の支持体上に、塗布膜(感光性印刷版の場合には感光層、感熱性印刷版の場合には感熱層)を塗布して形成されている。この塗布膜に、露光、現像処理、ガム引き等の製版処理が行われ、印刷機にセットされ、インクが塗布されることにより、紙面に文字、画像等が印刷される。
【0029】
なお、本実施形態の平版印刷版12は、印刷に必要な処理(露光や現像等)が施される前段階のものであり、場合によっては平版印刷版原版又は平版印刷版材と称されることもある。
【0030】
なお、上記のような構成であれば、平版印刷版12の具体的構成は特に限定されない。たとえば、ヒートモード方式及びフォトン方式のレーザ刷版用の平版印刷版とすることによって、デジタルデータから直接製版可能な平版印刷版とすることができる。
【0031】
また、平版印刷版12は、感光層又は感熱層中の成分を種々選択することによって、種々の製版方法に対応した平版印刷版とすることができる。本発明の平版印刷版の具体的態様の例としては、下記(1)〜(11)の態様が挙げられる。
【0032】
(1) 感光層が赤外線吸収剤、熱によって酸を発生する化合物、及び酸によって架橋する化合物を含有する態様。
【0033】
(2) 感光層が赤外線吸収剤、及び熱によってアルカリ溶解性となる化合物を含有する態様。
【0034】
(3) 感光層が、レーザ光照射によってラジカルを発生する化合物、アルカリに可溶のバインダー、及び多官能性のモノマー又はプレポリマーを含有する層と、酸素遮断層との2層を含む態様。
【0035】
(4) 感光層が、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との2層からなる態様。
【0036】
(5) 感光層が、多官能性モノマー及び多官能性バインダーとを含有する重合層と、ハロゲン化銀と還元剤を含有する層と、酸素遮断層との3層を含む態様。
【0037】
(6) 感光層が、ノボラック樹脂及びナフトキノンジアジドを含有する層と、ハロゲン化銀を含有する層との2層を含む態様。
【0038】
(7) 感光層が、有機光導電体を含む態様。
【0039】
(8) 感光層が、レーザー光照射によって除去されるレーザ光吸収層と、親油性層及び/又は親水性層とからなる2〜3層を含む態様。
【0040】
(9) 感光層が、エネルギーを吸収して酸を発生する化合物、酸によってスルホン酸又はカルボン酸を発生する官能基を側鎖に有する高分子化合物、及び可視光を吸収することで酸発生剤にエネルギーを与える化合物を含有する態様。
【0041】
(10) 感光層が、キノンジアジド化合物と、ノボラック樹脂とを含有する態様。
【0042】
(11) 感光層が、光又は紫外線により分解して自己もしくは層内の他の分子との架橋構造を形成する化合物とアルカリに可溶のバインダーとを含有する態様。
【0043】
特に、近年では、レーザ光で露光する高感度感光タイプの塗布膜を塗布した平版印刷版や、感熱タイプの平版印刷版が使用されることもあるが(たとえば、上記した(1)〜(3)の態様等)、このような高感度タイプの平版印刷版の場合には、本発明の平版印刷版用包装材を使用することにより、画像形成面の品質低下を確実に防止できる。
【0044】
なお、本実施形態の平版印刷版12(上記した(1)〜(11)の全ての態様の平版印刷版)は、積層束20を構成した状態で自動給版機能を持った自動製版機や、いわゆるプレートセッター等にセットされ、製版工程への供給(給版)される場合がある。
【0045】
また、自動給版機能を持った自動製版機やいわゆるプレートセッター等にセットされるときに、保護用厚紙16がなく、平版印刷版12と合紙10とが各々2枚程度の少量でセットされる場合もある。
【0046】
そして、図1により既述したように、塗布膜を保護する合紙10と、平版印刷版12と、を交互に厚さ方向に重ね合わせ、更に、この上面及び下面に保護用厚紙16を配置して、平版印刷版12の積層束20が構成されている。
【0047】
1つの積層束20を構成する平版印刷版12の数は特に限定されないが、運搬や保管の効率化の観点等から、たとえば10枚〜100枚とすることができる。また、このように10枚〜100枚の平版印刷版12によって積層束20を構成した場合には、平版印刷版12と保護用厚紙16とがずれないように、粘着テープ等の固定手段でこれらを固定することが好ましい。
【0048】
図2は、積層束包装構造24の外観を示す斜視図である。積層束包装構造24は、上記のようにして構成された積層束20を、内装紙22によって内装し、粘着テープ28、28…によって内装紙22を所定位置で張り付けて構成されたものである。
【0049】
この構成によって、不用意に内装紙22が広がったり脱落したりしないように固定され、平版印刷版12は確実に遮光及び防湿がなされる。このように、本実施形態では、積層束20を内装紙22によって内装することにより積層束包装構造24が構成されている。そして、この積層束包装構造24を、更に本発明に係る平版印刷版用包装箱によって外装(収容)する。
【0050】
次に、本発明に係る平版印刷版用包装箱30について詳説する。この平版印刷版用包装箱30は、1枚以上の段ボール紙32が折り畳まれて形成され、内部に積層束包装構造24(平版印刷版の積層体)を収容して包装するための包装箱である。
【0051】
図3は、この平版印刷版用包装箱30の製造方法(組立て方法)を示す図である。図3において組立て工程は、(A)〜(D)の順序で進行する。図3(A)は、平版印刷版用包装箱30の原材料となる矩形の段ボール紙32である。
【0052】
先ず、図3(B)に示されるように、段ボール紙32の上下方向等の廃棄部分H、H…が切除され、図の太線である折り返し線(罫線とも言う)が形成される。次いで、図3(C)に示されるように、左右の廃棄部分H、H…が切除され、更に折り返し線(図の太線)が形成される。
【0053】
図3(C)の状態において、折り返し線により、平版印刷版用包装箱30を展開した各部分が判別可能となっている。すなわち、底板36と、手前側天板38Aと、奥側天板38Bと、手前側側板40Aと、奥側側板40Bと、左下側側板42Aと、右下側側板42Bと、左上手前側側板42Cと、右上手前側側板42Dと、左上奥側側板42Eと、右上奥側側板42Fと、により直方体(包装箱)の外面が形成できるようになっている。
【0054】
また、底左側折り返し部分44Aと、底右側折り返し部分44Bと、天手前左側折り返し部分46Aと、天手前右側折り返し部分46Bと、天奥左側折り返し部分48Aと、天奥右側折り返し部分48Bと、により直方体(包装箱)の内面への折り返し部分が形成できるようになっている。
【0055】
次いで、底左側折り返し部分44Aと、底右側折り返し部分44Bと、天手前左側折り返し部分46Aと、天手前右側折り返し部分46Bと、天奥左側折り返し部分48Aと、天奥右側折り返し部分48Bとをそれぞれ内面側(図の上側)に折り返し、図3(D)に示されるような状態30’に形成する。なお、図3(D)では、底板36の上に積層束包装構造24が載置されている。
【0056】
次いで、手前側天板38Aと、奥側天板38Bとをそれぞれ内面側(図の上側)に折り返し、平版印刷版用包装箱30が完成する。図4は、この平版印刷版用包装箱30の平面図であり、上面が手前側天板38A及び奥側天板38Bとなっている。
【0057】
このように平版印刷版用包装箱30を製造(組立て)することにより、製品(積層束包装構造24)のサイズに合わせた包装箱を容易に製造(組立て)でき、コストダウン、多品種に対応した管理等の各種課題に対応でき好ましい。特に、製品のサイズに合わせた平版印刷版用包装箱30の展開図をコンピュータ手段により自動で設計し、この設計データにより、廃棄部分H、H…を切除する装置や、折り返し線(図の太線)を形成する装置を制御する方法を採用すれば、コストダウン、多品種に対応した管理等が一層容易となる。
【0058】
次に、本発明の特徴部分である、端辺部分(図3(C)の斜線で示す部分)の折り返し構造について説明する。折り返し構造の説明の一例として、図3の平版印刷版用包装箱30左端部の例で説明する。図5は、図4の5−5線断面図であり、平版印刷版用包装箱30の左端部近傍を示す部分拡大図である。
【0059】
図5に示されるように、段ボール紙の端辺部分が折り返され、この端辺先端の側面が積層束20(積層束包装構造24であってもよい)の側面と相対するように配置されている。より具体的には、奥側天板38Bの端辺部分が折り返され、左上奥側側板42Eが左側壁を形成し、天奥左側折り返し部分48Aが奥側天板38Bと平行になっている。そして、天奥左側折り返し部分48Aの端辺先端48Tの側面が積層束20(積層体)の側面上半分と相対するように配置されている。
【0060】
また、底板36の端辺部分が折り返され、左下側側板42Aが左側壁を形成し、底左側折り返し部分44Aが底板36と平行になっている。そして、底左側折り返し部分44Aの端辺先端44Tの側面が積層束20(積層束包装構造24)の側面下半分と相対するように配置されている。
【0061】
更に、天奥左側折り返し部分48Aの端辺先端の側面48Tと積層束20の側面上半分との平行度が30度以下となっており、底左側折り返し部分44Aの端辺先端の側面44Tと積層束20の側面下半分との平行度が30度以下となっている。このように、積層束20の側面と当接する部分の平行度が良好となっていれば、箱内部での積層束20の動きを拘束しやすく、塗布膜の損傷防止の点では好ましい。
【0062】
更に、天奥左側折り返し部分48Aの端辺先端の側面48Tと積層束20の側面上半分とのクリアランスC1が10mm以下となっており、底左側折り返し部分44Aの端辺先端の側面44Tと積層束20の側面下半分とのクリアランスC2が10mm以下となっている。このように、積層束20の側面と当接する部分のクリアランスが10mm以下となっていれば、箱内部での積層束20の動きを拘束しやすく、平版印刷版の塗布膜に損傷を生じさせる不具合を更に一層減少させることができる。
【0063】
なお、図5に示されるように、奥側天板38Bの端辺部分が折り返されて形成された左側壁(左上奥側側板42E)や、底板36の端辺部分が折り返されて形成された左側壁(左下側側板42A)は、従来例(図9の部分2C、図10の部分2D)と同様に傾斜しているが、この部分が積層束20と当接する訳ではないので、積層束20品質に何ら影響を及ぼさない。
【0064】
次に、このような平版印刷版用包装箱30に使用される段ボール紙32について説明する。段ボール紙32の段については、JIS Z 1516に規定するA(強い)、C、B、及びE(弱い)の各種のものが使用できる。
【0065】
段ボール紙32の層構成については、JIS Z 1516他に規定する、複複両面AAA(強い)、複両面AA、及び両面A(弱い)の各種のものが使用できる。
【0066】
段ボール紙32の表裏のライナーの種類については、JIS P 3902他に規定するAA(強い)、A、B、及びC(弱い)の各種のものが使用できる。
【0067】
段ボール紙32の表裏のライナーの秤量については、440g/m(強い)〜160g/m(弱い)の各種のものが使用できる。
【0068】
段ボール紙32の中芯の種類については、JIS P 3904他に規定する強化中芯A(強い)、B、及びC(弱い)の各種のものが使用できる。
【0069】
段ボール紙32の中芯の秤量については、280g/m(強い)〜100g/m(弱い)の各種のものが使用できる。
【0070】
段ボール紙32の代替材料としては、秤量200g/m〜2000g/mの厚紙が使用できる。
【0071】
次に、本発明の他の実施形態(第2実施形態)について説明する。なお、本実施形態において、段ボール紙32を2枚積層して平版印刷版用包装箱130を製造(組立て)する以外の点では、既述の第1実施形態と略同一なので製造(組立て)方法の図示及び詳細な説明は省略する。
【0072】
図6は、本実施形態における平版印刷版用包装箱130の左端部近傍を示す部分拡大図であり第1実施形態の図5に対応する。
【0073】
図6に示されるように、段ボール紙32、132の端辺部分が折り返され、この端辺先
端の側面が積層束20(積層体)の側面と相対するように配置されている。そして、上側折り返し部分の端辺先端の側面T1が積層束20(積層体)の側面上半分と相対するように配置されている。また、下側折り返し部分の端辺先端の側面T2が積層束20(積層体)の側面下半分と相対するように配置されている。
【0074】
更に、上側折り返し部分の端辺先端の側面T1と積層束20の側面上半分との平行度が30度以下となっており、下側折り返し部分の端辺先端の側面T2と積層束20の側面下半分との平行度が30度以下となっている。このように、積層束20の側面と当接する部分の平行度が良好となっていれば、箱内部での積層束20の動きを拘束しやすく、塗布膜の損傷防止の点では好ましい。
【0075】
更に、上側折り返し部分の端辺先端の側面T1と積層束20の側面上半分とのクリアランスC3が10mm以下となっており、下側折り返し部分の端辺先端の側面T2と積層束20の側面下半分とのクリアランスC4が10mm以下となっている。このように、積層束20の側面と当接する部分とのクリアランスが10mm以下となっていれば、箱内部での積層束20の動きを拘束しやすく、平版印刷版の塗布膜に損傷を生じさせる不具合を更に一層減少させることができる。
【0076】
次に、本発明の更に他の実施形態(第3実施形態)について説明する。第3の実施の形態は、段ボール紙の端辺部分が折り返され、該端辺先端の側面が積層体の側面と相対するように配置されるとともに、積層体の4つの側面のうちの前記端辺先端と相対していない側面の側にスペーサ部材が配置可能となるようにしたものである。なお、本実施形態においても、第2実施形態と同様に製造(組立て)方法の図示及び詳細な説明は省略する。
【0077】
図7は、本実施形態における製造(組立て)途上の形態を示す図であり、第1実施形態の図3(D)に対応する。図8は、本実施形態における平版印刷版用包装箱40の左端部近傍を示す部分拡大図である。
【0078】
図7に示されるように、段ボール紙2の中央部分(底板)に積層束包装構造24が載置され、この積層束包装構造24の両側面に密着するようにスペーサ部材S、Sが配されている。このスペーサ部材Sは、厚さが積層束包装構造24と略同一であり、断面が矩形(長方形)の棒状部材である。
【0079】
したがって、図8に示されるように、スペーサ部材Sの右側面と積層束20(積層束包装構造24)の左側面との平行度が30度以下となっている。このように、積層束20の側面と当接するスペーサ部材Sの平行度が良好となっていれば、箱内部での積層束20の動きを拘束しやすく、塗布膜の損傷防止の点では好ましい。
【0080】
また、スペーサ部材Sの側面と積層束20(積層束包装構造24)の側面とのクリアランスC5が10mm以下(実質上ゼロ)となっている。このように、積層束20の側面と当接する部分とのクリアランスが10mm以下(実質上ゼロ)となっていれば、箱内部での積層束20の動きを拘束しやすく、平版印刷版の塗布膜に損傷を生じさせる不具合を更に一層減少させることができる。
【0081】
なお、図8の平版印刷版用包装箱40において、既述した従来例の図10と同様に、スペーサ部材Sの左側面と、これに相対する部分2Dとの平行度が不良な状態となっているが、箱内部での積層束20の動きを拘束する機能は何ら影響されない。
【0082】
以上説明したように、本発明によれば、平版印刷版12の塗布膜に損傷を生じさせず、また、コストダウン、多品種に対応した管理等の各種課題の解決が可能である平版印刷版用包装箱及びこの平版印刷版用包装箱を使用した平版印刷版包装構造を提供できる。
【0083】
以上、本発明に係る平版印刷版用包装箱及びこの平版印刷版用包装箱を使用した平版印刷版包装構造の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0084】
たとえば、上記実施形態においては、平版印刷版用包装材として段ボール紙が採用されているが、他の包装材、たとえば段ボール紙と同様に機能する厚紙を使用してもよく、これによっても本実施形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】平版印刷版用包装材を使用して平版印刷版を包装する過程を示す斜視図
【図2】積層束包装構造の外観を示す斜視図
【図3】本発明に係る平版印刷版用包装箱の製造方法を示す図
【図4】本発明に係る平版印刷版用包装箱の平面図
【図5】図4の5−5線断面図
【図6】他の実施形態の平版印刷版用包装箱の左端部近傍を示す部分拡大図
【図7】更に他の実施形態の平版印刷版用包装箱を展開した状態を示す平面図
【図8】更に他の実施形態の平版印刷版用包装箱の左端部近傍を示す部分拡大図
【図9】従来の平版印刷版用包装箱の左端部近傍を示す部分拡大図
【図10】従来の平版印刷版用包装箱の左端部近傍を示す部分拡大図
【符号の説明】
【0086】
10…合紙(平版印刷版用包装材)、12…平版印刷版、16…保護用厚紙、20…積層束、22…内装紙、24…積層束包装構造、30…平版印刷版用包装箱、32…段ボール紙、S…スペーサ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚以上の段ボール紙が折り畳まれて形成され、内部に平版印刷版の積層体を収容して包装するための平版印刷版用包装箱において、
前記段ボール紙の端辺部分が折り返され該端辺先端の側面が前記積層体の側面と相対するように配置され、前記端辺先端の側面と前記積層体の側面との平行度が30度以下となっていることを特徴とする平版印刷版用包装箱。
【請求項2】
1枚以上の段ボール紙が折り畳まれて形成され、内部に平版印刷版の積層体を収容して包装するための平版印刷版用包装箱において、
前記段ボール紙の端辺部分が折り返され該端辺先端の側面が前記積層体の側面と相対するように配置されるとともに、前記積層体の4つの側面のうちの前記端辺先端と相対していない側面の側にスペーサ部材が配置可能となっており、前記スペーサ部材の側面と前記積層体の側面との平行度が30度以下となっていることを特徴とする平版印刷版用包装箱。
【請求項3】
前記段ボール紙の端辺部分のうち、相対する2辺が折り返される請求項1又は2に記載の平版印刷版用包装箱。
【請求項4】
前記端辺先端の側面と前記積層体の側面とのクリアランスが10mm以下となっている請求項1又は3に記載の平版印刷版用包装箱。
【請求項5】
前記スペーサ部材の側面と前記積層体の側面とのクリアランスが10mm以下となっている請求項2又は3に記載の平版印刷版用包装箱。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の平版印刷版用包装箱を使用して平版印刷版を包装したことを特徴とする平版印刷版包装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−290777(P2007−290777A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269531(P2006−269531)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】