説明

平行六面体形状のレーザ増幅媒質およびランプを備える励起手段を備える増幅装置

本発明は、平行六面体形状の増幅媒質(2)と、増幅に有用な周波数範囲における第1の放射、および増幅媒質を劣化させる可能性がある第2の放射を放出するランプ(5)を備える励起手段とを備える増幅装置に関する。ランプ(5)が、少なくとも第2の放射の一部を吸収するジャケット(3)内に一体化されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行六面体形状の増幅媒質を有するレーザ増幅装置の分野であり、とりわけランプ励起のナノ秒レーザ、ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザに適用される。
【背景技術】
【0002】
固体レーザ発振媒質を有するレーザ増幅装置の分野では、最近まで大きく分けて2種類の増幅材料が存在していた。
− 第1のものは単結晶材料、例えばイットリウムアルミニウムガーネット(YAGともいう)、サファイアまたはルビーである。これらの材料には、一般に例えば希土類イオン、またはチタンもしくクロムをドープする。
− 第2のものは無定形基質、例えばリン酸塩ガラスまたはケイ酸塩ガラスなどである。これらの基質には、主に希土類イオンをドープする。
【0003】
一般に、単結晶増幅媒質(例えばYAG基質タイプの)を有する増幅装置では、高い繰り返し率が達成可能であるが、ビームエネルギーは控えめである。このエネルギー制限は、単結晶増幅媒質の断面が制限されているためで、前記制限は、結晶成長プロセスにより設定されたものである。例えば、単結晶のネオジムをドープしたYAG(Nd:YAGと呼ばれる)を広い断面に成長させることは困難で、その損傷閾値の制限により、レーザパルス幅が数ナノ秒のパルスモードにおいて、2cmの断面で4〜5ジュール程度のエネルギーを得るのがやっとである。
【0004】
さらに、ガラス増幅媒質を備える増幅装置は、10ジュール程度〜数キロジュールの高いビームエネルギーを達成することができるが、それぞれの繰り返し率は、1Hz〜1時間当たり1ショット未満である。このような高エネルギーは、かかる増幅媒質の断面を大きくできることにより可能となる。単結晶の場合と異なり、ガラス基質の場合は断面に関する制限がない。しかし、ガラス基質は熱機械特性が劣るため、レーザ繰り返し率の増加が妨げられ、とりわけ波面歪みの補償に複合手段の使用が時に要求される。
【0005】
固体増幅媒質を光励起する技法の主なものには、ランプまたはフラッシュランプによる連続励起が一方にあり、連続励起またはパルスレーザダイオード励起が他方にある。
【0006】
これらの各光励起技法の主な特徴は、次のとおりである。
・連続ランプは、極めて低域の連続体に重畳した多重線スペクトルを放出する。
・フラッシュランプは、低強度スペクトル線を重ねた連続体から本質的になるスペクトルを放出する。放出線のスペクトル位置は、ランプ内で使用されているガスに依存する。
・レーザダイオードは、使用されている半導体に依存する単一のスペクトル線を放出する。
【0007】
レーザ発振材料は、これらの技法の1つにより励起されると、1つ以上の固有波長に対する増幅器となる。
【0008】
これらの2つの励起技法の各々には長所および短所がそれぞれあり、それらの主なものは次のとおりである。
・レーザ発振材料をランプ励起した場合、ランプの放出スペクトルのわずかな一部だけが有効に励起を行い、その他の部分はレーザ発振媒質内で部分的に熱散逸してしまう。この熱散逸が大きくなりすぎると、波面の歪みおよび/または複屈折が誘発され、レーザの適用を制限してしまう可能性がある。
・連続ランプおよびフラッシュランプの寿命は、多くの場合、連続ダイオードおよびパルスダイオードの寿命よりもそれぞれ短い。その結果、ランプ励起レーザについては保守作業がより頻繁に行われる。
・同じ性能の場合、ランプ励起増幅器のコストは、ダイオード励起増幅器のコストよりもはるかに低い。
・いくつかのレーザ発振材料については、それらの吸収線の1つと一致する波長で放出する励起ダイオードが存在する。この結果、増幅媒質内の熱散逸が低減され、誘発される有害効果(波面歪み、複屈折の誘発等)が低減される。従って、連続励起の場合は、ランプ励起レーザよりもむしろダイオード励起レーザの方が、より高い平均パワー出力を得ることが可能である。さらに、パルス励起の場合は、励起タイプ(フラッシュランプまたはダイオード)とは無関係に同じ出力のレーザエネルギーを得られるが、ダイオード励起の場合に、より高い繰り返し率を達成することができる。
・ダイオードのコストはランプのコストよりもはるかに高いため、動作条件下でのダイオードの保守コストは、ランプ励起レーザの保守コストよりも高くなる可能性がある。
【0009】
従って、とりわけパルスレーザの分野では、下記の製造が現時点で可能である。
・ガラスベースのレーザ発振材料を備えるタイプの固体レーザ増幅器。高エネルギーを供給するが、フラッシュランプ励起によるものは、熱効果のため繰り返し率が非常に低い。
・ガラスベースのレーザ発振材料を備えるタイプの固体レーザ増幅器。高エネルギーを供給するが、ダイオード励起によるものは、熱効果のため繰り返し率が非常に低く、コストが非常に高い。
・フラッシュランプ励起による固体レーザ増幅器。良好な熱機械特性を有する特定の単結晶レーザ発振材料を使用しているため、約10〜100Hzの中程度の繰り返し率で動作するが、結晶成長により得られる結晶断面が制限されるため、供給するエネルギーは数ジュールに制限される。
・高価なダイオード励起による固体レーザ増幅器。良好な熱機械特性を有する特定の単結晶レーザ発振材料を使用しているため、50Hzを超える高い繰り返し率で動作するが、結晶成長により得られる結晶断面が制限されるため、供給するエネルギーは数ジュールに制限される。
【0010】
広い断面が利用可能なため高エネルギーを達成可能であるというガラス基質の長所を、良好な熱機械特性を有する最良の単結晶材料の長所と組み合わせた新しいレーザ発振材料の出現により、新たな展望が開かれている。
【0011】
これらの新しいレーザ発振材料は、多結晶固体構造で、レーザセラミックともいう。
【0012】
フラッシュランプ励起の場合は中程度の繰り返し率、またはダイオード励起の場合は高い繰り返し率で、高エネルギーの供給を同時に達成するレーザ増幅装置の生産が、今や可能である。
【0013】
このため、励起技法の選択は、購入コストおよび保守コストの検討により主導されている。恐らく(過去における約20cmと比較して)200cmを超える量の増幅媒質を励起するためには、ダイオード励起増幅装置の取得コストは高い場合がある。このため、工業的製造者にとっては、ランプ励起が検討する価値のある代替案となっている。
【0014】
例えば、Nd3+希土類イオンをドープしたYAGセラミックは、その多結晶構造により大きな増幅媒質が得られるためNd:YAGの単結晶で20cmを超える断面を有し、高エネルギー増幅装置の生産に用いることができる。このようにして得られるエネルギエネルギーは、数十ジュール程度であり、通常得られる4〜5ジュールを超える。達成される繰り返し率は、10Hzを大きく超える。
【0015】
しかし、レーザセラミックをランプ励起する際には、いくつかの問題がある。ランプの放出スペクトルの一部は、紫外領域内にある。この放射は、ソラリゼーション効果を誘発するためレーザセラミックを損傷させ、最終的には、増幅媒質として使用されるレーザセラミックの光学特性を劣化させる可能性がある。このため、レーザセラミックを使用するレーザ増幅装置を設計する際には、ランプの紫外線放射によるレーザセラミックの劣化を防止する技法を用いる必要がある。
【0016】
これらのレーザセラミックとともに、現在使用されている複合ソリューションよりもはるかに低いワット当たりの平均コストで高い平均パワーレベルを供給可能で、かつレーザ数を増加させた、またはビームを多重化させたタイプの新しいレーザを生み出すことが考えられる。
【0017】
本発明において提案される装置は、平行六面体ロッドの形態で大きなサイズで生産可能な材料、例えばNd3+希土類イオンをドープしたセラミックYAGと、望ましくない放射を遮断するための手段とを組み合わせて使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
平行六面体形状の増幅媒質と、増幅に有用な周波数範囲における第1の放射、および増幅媒質を劣化させる可能性がある第2の放射を放出するランプを備える励起手段とを備える増幅装置の目的は、第2の放射の少なくとも一部を吸収するジャケットにランプを一体化することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの、例えば希土類イオンをドープしたセラミックを備えるタイプの増幅媒質の主な利点は、それらの製造方法により、生産時にサイズ制限が課されないという点である。従って、増幅媒質をより大きくし、光励起をより大きくすることができる。
【0020】
パルスレーザの場合は、数十ジュールのエネルギー、10Hzを超える繰り返し率でのレーザビーム増幅が可能である。連続レーザの場合は、数十キロワットのパワーレベルでのレーザビーム増幅が達成可能である。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、本装置は、ジャケットに一体化されたフラッシュランプを使用する。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、本装置は、セラミックベースの増幅媒質を備える。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、本装置は、Nd3+イオンをドープしたYAGセラミックで作製された増幅媒質を備える。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、本装置は、Nd3+イオンをドープし、Cr3+イオンを共ドープしたYAGセラミックで作製された増幅媒質を備える。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、励起装置が、増幅媒質により形成される平面に対して対称的である。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、増幅媒質の少なくとも2つの対向する面部が、Oy軸周周りの回転により数度の角度で互いに傾斜し、この場合、増幅媒質が疑似平行六面体形状を有する。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、本装置は、サマリウムイオンをドープした石英またはガラスをベースとする材料で作製されたジャケットを備える。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、本装置は、UV領域において第2の放射を放出するランプを収容するジャケットを備える。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、本装置は、増幅媒質のレーザ輝線と一致するスペクトルを有する光子を吸収するジャケットを備える。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、本装置は、冷却剤の循環を伴い増幅媒質を冷却するための手段を含む。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、本装置は、ランプを冷却するための手段を備える。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、本装置は、ジャケット内の冷却剤の流量を制御するため断面が互いに異なる開口を有するジャケットを備える。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、本装置は、ジャケットと増幅媒質との間に配置されたUVフィルタを備える。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、本装置は、増幅媒質の励起を均一化する機能を有するとともに、ジャケットを覆うか、または囲む光拡散媒質を備える。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、本装置は、容器内に詰められたMgO粉末、またはドープされていないセラミックで作製された拡散媒質を備える。
【0036】
本発明の他の特徴および利点は、下記の添付図面とともに後続の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による増幅装置の一例の分解斜視図を示す。
【図2】図1の一断面を示す。
【図3】本発明による冷却手段を一体化した増幅装置の一例の全体図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、1種類以上の希土類または他のイオンをドープしたセラミックで作製された平行六面体形状の増幅媒質2を備える増幅装置の一例の分解斜視図を示す。これらのイオンは、典型的にはネオジムイオンまたはイッテルビウムイオンであってもよい。セラミックには、Cr3+イオンを共ドープしてもよい。増幅媒質は、励起ランプ5に面する2つの大きな面部を有する。励起は、これらの面部に対して垂直に行われる。ビーム6は、増幅媒質の側方の面部を介してランプの軸心に対して垂直に増幅媒質を通過し、装置を通過後は増幅ビーム7を形成する。
【0039】
ランプ、例えばフラッシュランプ5は、下記の3つの機能を有するジャケット3内に配置される。
・このジャケットは、例えばサマリウムイオンをドープした石英/ガラス材料で作製され、ランプにより放出されるUV放射の全部または一部を吸収可能である。
・増幅媒質のレーザ輝線と一致するスペクトルを有するランプが放出する光子を吸収する。この輝線は、例えばNd3+をドープしたYAGセラミックの場合1064nmである。この機能により、ランプの誘導放出によるOx軸に沿ったレーザ利得の低下が防止される。
・ランプおよび増幅媒質の冷却を意図する冷却剤を十分な速度で供給する。この冷却剤により、ランプの放射により生じる熱の大部分が除去される。
【0040】
増幅媒質2の大きな面部のうちのいずれかの側において、ジャケットと増幅媒質との間にUVフィルタ4を配置すると有益である。このUVフィルタの役割は、ジャケットの役割と重複している。ただし、このフィルタは、ランプが放出するUVパワーに応じて設けるオプションである。図1では、このフィルタを一例として示している。
【0041】
増幅媒質は、均一な励起を達成するための手段を含む。ディフューザと呼ばれる光拡散媒質1を使用して増幅媒質の励起を均一に行うことにより、増幅媒質が受ける放射は、ランプにより放出される直接放射とディフューザの反射による放射との和となる。ディフューザの目的は、増幅媒質における有効な放射を拡散して、ランプ間でできるだけ均一にすることである。光ディフューザの形状寸法は、増幅媒質が受ける放射を均一化するように設計される。例えば、光ディフューザが形成する放物線の焦点に各ランプがくるようにしてもよい。
【0042】
また、装置の対称性によっても、増幅媒質における励起が均質に行われることが保証される。入射レーザビーム6は、Oxy平面に形成された面部を介して増幅媒質に進入する。一方では、レーザビームの伝搬軸Ozはランプ軸Oyに対して垂直であるため、他方では、装置がOyz平面に対して対称であるため、増幅媒質における励起は、Oyz平面において対称となる。このため、励起はOyz平面において非常に均質なものとなる。
【0043】
さらに、装置の対称性には、増幅媒質のねじれを防止するという別の利点がある。
【0044】
図2は、図1の装置のOxz平面における断面を示す。ランプが放出する放射が強力であると、増幅媒質が熱せられ、その光学特性が劣化してしまうという欠点がある。これを相殺するため、構造内に2つの冷却装置を配置する。冷却剤20を増幅媒質2の両側に導入し、その最大面積の面部(図1のOyz平面)に沿って流すことにより、励起装置の熱の一部を制御する。また、冷却装置をジャケット3に一体化させてもよい。ジャケットに異なる断面の開口を設けることにより、ジャケット内の冷却剤20の流量を制御する。これにより、冷却剤は、ジャケット内におけるランプ5の周囲と、ジャケットの周囲とを流れる。この冷却装置は、ランプの放射により生じる熱の除去、および増幅媒質の加熱の制限を助ける。
【0045】
ジャケット3は、ディフューザ1内に収められる。ディフューザ1は、ランプの放射を透過する容器で構成され、容器の内部には、例えばMgO粉末を詰めてもよい。オプションとして、別の状況ではドープされていないセラミックを使用してもよい。この媒質の機能は、ランプが放出する光を反射により拡散することである。ディフューザの形状は最適化してもよく、図2に示すものから変形してもよい。
【0046】
ディフューザ1、冷却剤20、ジャケット3およびUVフィルタ4は、冷却剤に対して密な筐体22に挿入される。この目的のため、シール21により筐体が増幅媒質2に固定される。装置は、増幅媒質の最大中位面により形成されるOzy主面に対して対称的であるため、上記の各要素を収容する筐体22は、この媒質の両側に設けられる。
【0047】
一方では、励起装置の対称性は、増幅媒質を均質的および対称的に冷却し、増幅媒質の熱散逸による機械的変形を制限するために有益である。他方では、励起装置の対称性により、OxおよびOyに沿った光軸のそれぞれに対して、増幅媒質にかかる熱機械応力により複屈折が誘発される。従って、それらの光軸の一方に沿って偏光され、増幅媒質において増幅されたレーザビームは、ビームの全断面で偏光したままとなる。この装置は、円筒形のレーザロッドを伴って生産された励起構造に対して、増幅ビームに対して空間に依存した偏光解消効果をもたらさないという利点を有する。
【0048】
図3は、冷却剤を注入および排出するための流体コネクタ30を含む増幅装置の一例を示す。冷却剤の流量を制御することにより、励起装置の温度を調整可能である。ランプにより生じる加熱が制御され、増幅媒質の寿命および変形が要件に合致するようになる。
【0049】
入射レーザビームは、面部Aを介して増幅媒質に進入し、増幅されて面部Bから出射する。イオン(例えば希土類イオン)をドープしたセラミックから増幅媒質を形成することにより、面部AおよびBの面積を、例えばYAG単結晶で達成可能な最大面積である2cmよりもはるかに大きくすることが可能である。増幅媒質の寸法は、非常に大きくすることができる。これは、その製造プロセスが、結晶成長をもはや伴わず、セラミックの製造に取って代わられたためである。レーザセラミック(例えば希土類イオンをドープしたYAGセラミック)の場合、もはや面積の制限はない。このため、面積を大きくすることにより、パルスモードで数十ジュール、連続モードで数万キロワットのエネルギーで、ビームを増幅することが可能となる。
【0050】
増幅媒質の側方の面部CおよびDには、前記面部間の横断的な寄生レーザ発振を防止するための装置が装備される。この装置には、数種類のものがある。すなわち、増幅媒質のレーザ波長における反射を防止する反射防止処理を施すこと、または面部CおよびDに溝を形成すること、および/または各面部をつや消し化すること、またはドープされたセラミックのレーザ放出波長で吸収するとともにレーザセラミックと整合する光学指数を提供する1つ以上の吸収材料を各面部に塗布すること、などである。
【0051】
増幅媒質の面部AおよびBには、前記面部間の事前の寄生レーザ発振を防止するための装置が設けられる。この装置には、数種類のものがある。すなわち、増幅媒質のレーザ波長のおける反射を防止する反射防止処理を施すこと、および/または対向する面部AおよびBをOy軸周りの回転により数度の角度で傾斜させること、などである。この場合、増幅媒質は準平行六面体形となる。
【0052】
ランプ5の数、ランプの配置およびランプ間の距離は、レーザ発振媒質内への励起堆積を最大限に均質化するため最適化されるパラメータである。従って、ランプ(数、距離、配置)の調整とともに光学ディフューザおよびその形状を選択することにより、増幅媒質内への励起堆積の均質な分散に加え、最大の利得を達成可能になる。
【0053】
これらの新規な増幅装置の高い平均パワー性能を生かした、網羅的ではないいくつかの適用例を示す。
・フェムト秒レーザの分野では、チタン−サファイア(Ti:Saと表記される)またはOPCPA(光パラメトリックチャープパルス増幅器)などの増幅媒質を使用してもよい。短期的な目的は、10Hz程度で約1ペタワット、すなわち約1015ワットのピークパワーレベルを発生できるようにすることである。このため、励起レーザは、緑色に対応する可視スペクトル帯において10Hzで、パルス当たり約100ジュールのエネルギーを供給しなければならない。通常、Nd:YAG単結晶を含む装置を用いてペタワットレーザと呼ばれるレーザシステムを励起するのに、120個のフラッシュランプ励起増幅媒質が必要とされる。本発明の装置によれば、Nd:YAGセラミックを有する増幅装置の必要数は、25個未満となる。取得および保守コストは大幅に低減され、レーザシステムは相当コンパクトになり、ソフトウェア制御は大幅に簡素化される。
・例えば10Hzを超える繰り返し率で10Jを超えるパルスを供給可能なNd:YAGセラミック増幅器を備えるレーザシステムを使用してレーザ衝撃処理を施すことにより、特定の金属の表面の機械的強度を向上させることができる。この適用の将来性は、とりわけ航空分野において見出されている。
・本発明の増幅装置の可能性のある使用法のさらなる例には、例えば現在よりも高い繰り返し率での塗装除去、レーザアブレーション、材料の微細加工、切断または溶接などの適用がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行六面体形状の増幅媒質(2)と、冷却剤(20)の循環を伴い前記増幅媒質およびランプを冷却するための冷却手段と、増幅に有用な周波数範囲における第1の放射、および前記増幅媒質を劣化させる可能性がある第2の放射を放出するランプ(5)を備える励起手段とを備える増幅装置であって、ランプが、少なくとも前記第2の放射の一部を吸収するとともに冷却剤(20)の循環を意図した断面が異なる開口を有するジャケット(3)内に一体化されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記ランプがフラッシュランプであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記増幅媒質がレーザセラミックベースであることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記増幅媒質が、Nd3+イオンをドープしたYAGセラミックであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記増幅媒質が、Cr3+イオンを共ドープしたYAGセラミックであることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が、前記増幅媒質(2)により形成される(Oyz)平面に対して対称的であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記増幅媒質(2)の少なくとも2つの対向する面部が、Oy軸周りの回転により数度の角度で互いに傾斜し、この場合、前記増幅媒質が準平行六面体形状を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ジャケットが、サマリウムイオンをドープした石英またはガラスをベースとする材料で作製されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ランプが、UV領域において前記第2の放射を放出することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記ジャケットが、前記増幅媒質のレーザ輝線と一致するスペクトルを有する光子を吸収することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記ジャケット(3)と前記増幅媒質(2)との間にUVフィルタ(4)が配置されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記増幅媒質の励起を均一化する機能を有する光拡散媒質(1)が、前記ジャケットを覆うことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記拡散媒質が、容器内に詰められたMgO粉末、またはドープされていないセラミックであることを特徴とする、請求項12に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−502029(P2010−502029A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526102(P2009−526102)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059014
【国際公開番号】WO2008/025807
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【Fターム(参考)】