説明

幹細胞自己複製のための方法及び組成物

本発明は、幹細胞集団を増大させる方法に関する。より詳細には、本発明は、とりわけ、幹細胞集団、特に造血幹細胞集団を増大させるための方法及び組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2007年4月23日出願の米国特許出願第60/926,065号、及び2008年2月22日出願の米国特許出願第61/066,693号の利益を主張するものであり、これらの出願はその全文が参照することで本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、幹細胞集団、特に造血幹細胞集団を増大させるための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
造血幹細胞(HSC)はクローン原性細胞であり、自己複製(増大)及び、すべての種類の成熟血液細胞を生じさせる多系列分化能(multilineage potential)という両方の特性を有する。HSCは、造血の役割を担っており、増殖及び分化を起こすことによって、自己複製の能力は維持したまま種々の系列の成熟血液細胞を産生する。この自己複製の能力により、HSCの集団が動物の一生の間維持され、さらに、致死量の放射線を受けたコンジェニックホストの骨髄でのHSCの再増殖を可能とする。
【0004】
HSC発生の初期は、階層的な配列を示し、広範囲の自己複製能力を有する長期(long−term)(LT−)HSCから始まり、短期(short−term)(ST−)HSC(自己複製能力が限定される)及び増殖性多分化能前駆細胞(proliferative multipotent progenitors)(MPP)(多分化能の潜在能力は持つが自己複製能力は持たない)に対応する増大状態がこれに続く。MPPは、分化のためのプライミング又は準備の段階でもある。MPPは分化して、すべてのリンパ球系列を生じさせる共通リンパ球前駆細胞(CLP)、又はすべての骨髄系列を産生する共通骨髄前駆細胞(CMP)のいずれかとなることが決まっている。このプロセスの間、より原始的な集団が、より原始的でない細胞の集団を生じさせ、このより原始的でない細胞の集団は、より原始的な細胞の集団を生じさせることはできない。HSCの多分化能、自己複製、及び活性化(又は、一過性の増幅)、並びにMPPからCLP又はCMPへという決定された系列を含むこのようなプロセスを制御する固有の遺伝的プログラムの大部分は、依然として未知である。
【0005】
個体の一生の間の血液細胞の生成を一定に維持するために、骨髄のニッチに位置するHSC(Zhang,J.etal.Nature425,836−841,2003;Calvi,L.M.et al.Nature425,841−846,2003;Kiel,M.J.,etal.Cell121,1109−1121,2005;Arai,F.etal.Cell118,149−161,2004)は、静止状態と活性化状態の間のバランスを保つ必要があり、それによって当面の造血に対する要求を満足させ、一方長期的な幹細胞の維持も確保される。成体の場合、幹細胞の静止状態と活性化状態の間の恒常性は、HSCがその自己複製の能力を喪失することを防ぎ、同時に、進行中の組織の再生を補助するために、重要である(Li,L.and Xie,T.Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.21,605−631,2005)。幹細胞の過剰な活性化及び増大は、最終的な幹細胞集団の喪失及び腫瘍形成しやすい性質という両方のリスクを有する。幹細胞の活性化に対して重要であるいくつかの因子が明らかにされてはいるが(Heissig,B.etal.Cell 109,625−637,2002)、静止状態と活性化状態の間の移行を決定する分子イベントはよく分かっていない。
【0006】
ホスファターゼテンシンホモログ(PTEN)は、PI3K/Akt経路の負の制御因子として機能し、これは、細胞の増殖、生存、分化、及び遊走において決定的な役割を担っている(Stiles,B.etal.Dev.Biol.273,175−184,2004)。PETN腫瘍抑制因子は一般に、調節解除された造血を特徴とする、リンパ系新生物と関連するものを含む腫瘍中で変異を起こす(Mutter,G.L.Am.J.Pathol.158,1895−1898,2001;Suzuki,a.et al.Immunity14,523−534,2001)。PTEN欠損は、神経及び胚性幹細胞集団と関連付けられている(Groszer,M.et al.Science 294,2186−2189,2001;Kimura,T.et al.Development 130,1691−1700,2003)。しかし、幹細胞中、並びに及び腫瘍形成及び過去の腫瘍の再発におけるPTENの役割は分かっていない。
【0007】
PTENは、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)のアンタゴニストとして機能する(Maehama T & Dixon JE.J Biol Chem.273:13375−13378.1998)。セリンキナーゼAktは、PI3Kシグナルの下流である(Cross DA,Alessi DR,Cohen P et al.Nature 378:785−789 1995)。PTENは、Aktを阻害し、それによって、β−カテニンの核内集積を阻害することが示されている(Persad S et al.J Cell Biol.153:1161−1174 2001)。
【0008】
Aktは、広範囲の効果を有する。その主たる機能は、生存シグナルを発生し、アポトーシスを阻止することであり、そのβ−カテニンの機能の制御と相補的である(Song,G.et al.,J.Cell. Mol.Med.,9(1):59−71,2005)。Aktは、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)、転写因子のフォークヘッドファミリー(FoxO)、BAD、カスパーゼ9、マウス微小タンパク質2(murine double minute 2)(Mdm2)を含む数多くのタンパク質を通して作用する。
【0009】
Aktは、シグナル伝達カスケードを通してタンパク質翻訳を活性化するセリン/スレオニンキナーゼmTORを、直接的及び間接的に活性化することができる(LoPiccolo,J.,et al.,Anti−Cancer Drugs,18:861−874,2007)。間接的な活性化は、結節性硬化症複合体2(TSC2)を通して発生し、これは、非リン酸化状態の場合、結節性硬化症複合体1(TSC1、ハマルチンとしても知られる)と複合体を形成する。この複合体は、脳内富化Rasホモログ(Ras homolog enriched in brain)(RHEB)のGTPアーゼ活性を促進し、次にこれが、mTOR活性を下方制御するように作用する。しかし、Aktによってリン酸化されると、TSC1−TSC2複合体がRHEBのGTPアーゼ活性を促進する能力は阻害され、従って、mTORの活性が促進される(Cully,M.et al.,Nat.Rev.Cancer,6:184−192,2006)。mTORは、Rictorとも複合体を形成することができ、この複合体は、Aktをリン酸化して活性化することによって、Aktシグナル伝達カスケード上に正のフィードバックを提供することができる(Sarbassov,D.D.,et al.,Science,307:1098−1101,2005)。
【0010】
Aktは、FoxOを含む転写因子を通して細胞生存も制御する。AktによるFoxOのリン酸化は、FoxOを阻害し、結果として、Fas−L、IGFBP1、及びBim等のいくつかのアポトーシス促進性遺伝子の転写が阻害される(Datta,S.R.,et al.,Cell,91:231−241,1997;Nicholson,K.M.,et al.,Cell Signal,14:381−395,2002)。
【0011】
FoxOの下流標的の一つは、サイクリンE/cdk2複合体の強力なインヒビターであるp27(Kip1)である(Wu,H.et al.,Oncogene,22:3113−3122,2003)。FoxO因子は、p27の発現を誘発し、これがサイクリンE/cdk2複合体と結合してその活性を阻害することができ、その結果として細胞の増殖が阻止される(Burgering,B.M.T.& Medema,R.H.,J.Leukocyte Biol.,73:689−701,2003)。さらに、Akt自体もT157上のp27を直接リン酸化することができ、その結果として、p27が核から細胞質へ再分布され、サイクリンE/cdk2複合体から遠ざかる(同文献)。T198上のp27のリン酸化は、14−3−3タンパク質へのp27の結合において非常に重要であり、この経路を通して、Aktはp27の分解を直接促進することができる(Fujita,N.,etal.,J.Biol.Chem.,277(32):28706−28713,2002)。
【0012】
細胞生存の促進におけるAktの別の標的の一つは、タンパク質のBcl−2ファミリーのメンバーであるBADである。Aktによるリン酸化の非存在下では、BADは、ミドコンドリア膜上でBcl−2又はBcl−Xと複合体を形成し、Bcl−2及びBcl−Xの抗アポトーシス能を阻害する(Song,G.etal.,J.Cell.Mol.Med.,9(1):59−71,2005)。Aktは、セリン136上でBADをリン酸化し、それによってBADをBcl−2/Bcl−X複合体から解離させる(Song,G.etal.,J.Cell.Mol.Med.,9(1):59−71,2005;Datta,S.R.,etal.,Genes Dev.,13:2905−2927,1999)。従って、Aktは、BADが媒介するアポトーシスを抑制し、細胞生存を促進する。
【0013】
さらに、セリン196におけるプロカスパーゼ9のリン酸化により、Aktは、活性形態であって、アポトーシスのイニシエーター及びエフェクターであるカスパーゼ9への、プロカスパーゼ9のタンパク質プロセシングを阻害する(Cardone et al.,1998,Science,282:1318−1320,Donepudi,M. & Grutter,M.G.,Biophys.Chem.,145−152,2002)。
【0014】
さらに、Aktは、Mdm2/p53経路を介して細胞生存を制御する。Aktは、Mdm2を直接のリン酸化によって活性化することができ、それによって、Mdm2の核内移行又はMdm2のユビキチンリガーゼ活性の上方制御が誘発される(MayoL.D.,Donner D.B.,2001,Proc.Natl.,Acad.Sci.USA98:11598−11603;Gottlieb T.M.et al,Ocogene,21:1299−1303,2002)。Mdm2は、ストレスに反応して細胞死を誘発し得るp53タンパク質を(Oren M.,Cell Death Differ.,10:431−442,2003)、ユビキチン媒介タンパク質分解においてp53を標的とすることによって(Haupt,Y.etal.,1997,Nature 387:296−299)又はp53のトランス活性化ドメインへ結合することによって、負に制御し、それによって、p53媒介遺伝子制御が阻害される(Momand,J.etal.,Cell,69:1237−1245,1992)。p53の下流標的の一つは、p21(CIP1/WAF1)遺伝子である。p53遺伝子産物は、p21コード配列の2.4kb上流に位置する部位へ結合し、この結合部位は、p53依存的転写制御をもたらす(El−Deiry,W.S.,et al.,Cell,75:817−825,1993)。従って、P53の下方制御は、p21の転写も下方制御する。
【0015】
PTENは、Akt−Mdm2経路をアンタゴナイズすることによってp53タンパク質を制御するだけでなく、p53を直接制御することもできる。第一に、PTENは、ホスファターゼに依存しない方法で、p53のトランス活性化を促進することができる(Tang,Y.& EngC,Cancer Research,66:736−742,2006)。第二に、PTENは、核内でp300と複合体を形成し、p53の活性化された形態であるp53の高いアセチル化を維持する役割を担う(LiA.et al.,Molecular Cell,23(4):575−587,2006)。さらには、p53がPTENの転写を活性化することもできる(Cully,M.et al.,Nat.Rev.Cancer,6:184−192,2006)。
【0016】
Wnt経路内での標準シグナル(canonical signals)は、幹細胞増殖に関与している(Kim,L.& Kimmel,A.R.Current Drug Targets 7:1411−1419,2006)。グリコーゲンシンターゼキナーゼ3ベータ(GSK−3β)は、Wntシグナル伝達経路の一部であり、その主たる基質はβ−カテニンである(Hagen,Tetal.,J.Biochem.277(26):23330−23335)。標準Wntシグナル伝達の非存在下では、GSK−3βはβ−カテニンと結合し、β−カテニンをリン酸化し、それによって、ユビキチン化においてβ−カテニンを標的とし、続いてプロテアソームの媒介によって分解されるが、これは、大腸腺腫症(APC)によって媒介される(同文献、Moon,R.T.etal.,Science 296:1644−1646.2002)。標準Wntシグナルは、GSK−3βからのβ−カテニンの解離を誘発し、それによって、β−カテニンを活性化する(Katoh,M & Katoh,M.Cancer Biol Ther.5(9):1059−64,2006)。β−カテニンは、次に、核内へ局在化し、そこで遺伝子転写を活性化する(同文献)。
【0017】
まとめると、GSK−3β及びPTENの調節によって、HSCを例とする幹細胞の増殖を促進することができることが、個別に知られ又は示唆された。しかし、そのような知見及び推測は、続いての移植及び生着した細胞系列の再構成のために幹細胞集団を増大させるための臨床的に有用である手法を提供するには不十分であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記の観点から、Wnt及びPTENシグナル伝達経路間の相互作用を解明し、幹細胞の増殖及び分化の分子制御に対する新たな見識を提供することは有利であろう。そのような見識を用いて、幹細胞をインビボ及びエキソビボにて増大させるための新たな方法及び組成物を提供することも有用であり、このような幹細胞は、適切なレシピエントへ移植するのに十分な種類及び量であろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概要
従って、本発明の一つの態様は、末梢血液、臍帯血、及び骨髄から成る群より選択される組織から得られた幹細胞の集団を増大させるための方法である。この方法は、幹細胞の集団中のPTEN経路及びWnt経路を調節して幹細胞の数を増大させることを含む。
【0020】
本発明の別の態様は、実質的に未分化の幹細胞集団のエキソビボでの増大のための方法である。この方法は、未分化幹細胞集団中のPTEN経路及びWnt経路を調節して、幹細胞集団の著しい分化を伴うことなく未分化幹細胞の数を増大させることを含む。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、末梢血液、臍帯血、及び骨髄から成る群より選択される組織から得られた造血幹細胞(HSC)集団をエキソビボで増大させるための方法である。この方法は、HSC集団中のPTEN経路及びWnt経路を調節して、HSC集団の多系列分化能は維持したまま、HSC集団を、続いてのそれを必要としている患者への移植に足る十分な量まで増大させることを含む。
【0022】
本発明の別の態様は、本発明の方法によって作製された、増大され実質的に未分化の幹細胞集団である。関連する態様では、本発明は、本発明の方法によって作製された、増大されたHSC集団である。
【0023】
追加の態様は、造血幹細胞(HSC)をエキソビボにて少なくとも40倍に増大させるための方法であって、増大されたHSCは、それを必要とする哺乳類患者へ移植した際にHSC系列を再構成する能力を有する。この方法は、HSCの集団を、PTEN阻害剤及びGSK−3β阻害剤を含む適切な培地で培養することを含む。
【0024】
本発明のさらなる態様は、続いてのそれを必要としている患者への移植のために、造血幹細胞(HSC)集団を増大させるためのキットである。キットは、PTEN阻害剤、GSK−3β阻害剤、及びこれらの阻害剤の使用説明書を含む。
【0025】
追加の態様は、幹細胞集団のエキソビボでの増大を実施するための培地である。この培地は、培地中に存在する生存幹細胞、並びにPTEN及びGSK−3β阻害剤を、この幹細胞集団の増大を可能とするのに十分な濃度に維持する一方、この幹細胞の多系列分化能を維持するのに適する流体培地を含む。
【0026】
さらに別の態様は、造血幹細胞(HSC)を、それを必要とする患者に投与するための方法である。この方法は、(a)適切な培地中、PTEN経路中の分子の調節剤及びWnt経路中の分子の調節剤の存在下にて、HSC集団を含むサンプルを、サンプル中のHSCの数が患者への移植に十分な数まで増大するのに十分な時間培養すること;(b)PTEN及びWnt経路調節剤を培養物から除去すること;並びに(c)このHSCを患者へ投与すること、を含む。
【0027】
本発明のさらなる態様は、骨髄の再構成を、それを必要とする患者に施すための方法である。この方法は、(a)適切な培地中、PTEN経路中の分子の調節剤及びWnt経路中の分子の調節剤の存在下にて、HSC集団を含むサンプルを、サンプル中のHSCの数が患者への移植に十分な数まで増大するのに十分な時間培養すること;(b)PTEN及びWnt経路調節剤を培養物から除去すること;並びに(c)このHSCを患者へ投与すること、を含む。
【0028】
別の態様は、造血幹細胞(HSC)の集団を増大させるための方法である。この方法は、HSC集団を少なくとも40倍に増大させる結果を得るのに十分な条件下にてHSCの集団を培養することを含み、ここで、増大されたHSCの集団は、それを必要とする哺乳類への移植に適している。
【0029】
さらに別の態様は、骨髄移植、末梢血液移植、及び臍帯血移植から成る群より選択される移植を必要とする患者を治療するための方法である。この方法は、本発明の方法によって得られたHSCの集団をその患者へ投与することを含む。
【0030】
さらなる態様は、造血幹細胞(HSC)の集団を増大させるための方法であって:(a)HSC集団を含有する組織サンプルを哺乳類から得ること;(b)インビトロにて、サンプルからのHSC集団を増大させること、を含み、ここで:(i)HSC集団は少なくとも40倍に増大し;及び(ii)増大したHSC集団は、レシピエントへの移植後少なくとも4週間、造血系列を再構成する能力を有する。
【0031】
追加の態様は、造血幹細胞系列の再構成を、それを必要とするレシピエントに施すための方法である。この方法は:(a)HSC集団を含有する組織サンプルを哺乳類から得る工程;(b)インビトロにて、サンプルからのHSC集団を増大させる工程であって、ここで:(i)HSC集団は少なくとも40倍に増大し;及び(ii)増大したHSC集団は、それを必要とするレシピエントへの移植後少なくとも4週間、造血系列を再構成する能力を有する、工程;並びに、(c)増大したHSC集団をそれを必要とするレシピエントへ移植する工程、を含む。
【0032】
本発明のさらなる態様は、造血幹細胞集団の増大を、そのような増大を必要とする哺乳類へ施すための方法である。この方法は、Wnt及びAktの調節剤の治療効果量を、HSCが哺乳類中で造血系列を再構成する能力を保持した状態でHSC集団を少なくとも40倍に増大させるのに十分な時間、哺乳類へ投与することを含む。
【0033】
本発明のこれらの及びその他の局面を、以下の詳細な説明及び実施例にてさらに開示する。
【0034】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本発明の特定の局面をさらに実証するために含まれるものである。本発明は、これらの図面の1若しくは2つ以上を本明細書で提示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせて参照することによって、より深く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1−1】図1A乃至Kは、構成的活性化β−カテニンと合わせたPTENの欠失によって、初期造血前駆細胞の喪失と共に造血幹細胞(HSC)の増大が引き起こされていることが全体として示される、一連の棒グラフ及び蛍光活性化細胞走査(「FACS」)分析である。図1Aは、Scl−Creネガティブコントロール、及び構成的活性化β−カテニンを有するSclCre+PTEN(Pten:Ctnnb1)二重変異体(double mutant)、及び各一重変異体(single mutant)の骨髄(上図)並びに脾臓(下図)における系列陰性(lineage negative)、Sca−1+Kit+(LSK)細胞の、FACS分析によって測定した絶対数(大腿骨+脛骨あたり)を示す2つの棒グラフである(Harada,N.,et al.,Embo J,18(21):5931−42 1999.Yilmaz,O.H.,et al.,Nature,441:475−82 2006.Zhang,J.,et al.,Nature,441(7092):518−22 2006)。マウスは、タモキシフェン誘導後の10日目である。LSK細胞の二重変異体骨髄中での減少とそれに伴う脾臓中での増大は、骨髄から脾臓への動員を示すものである。Scl−Creは、LoxPが隣接(LoxPを導入(floxed))したPten及びCtnnb1アレルのコンディショナルノックアウトを達成するために用いられるHSC特異的タモキシフェン誘導性Cre−リコンビナーゼである(Gothert,J.R.,et al.,Blood,105(7):2724−2732,2005)。
【0036】
【図1−2】図1B乃至1Eは、図に示すように、Scl−Creネガティブコントロール(B及びD)、及び構成的活性化β−カテニンを有するScl−Cre+PTEN(Pten:Ctnnb1)二重変異体(C及びE)の骨髄並びに脾臓における系列陰性、Sca−1+Kit+(LSK)細胞のFACS分析の代表的な結果を示す。左側のボックスは、Sca−1-Kit+(初期造血前駆細胞)を、右側のボックスは、Sca−1+Kit+(LSK)細胞を示す。細胞は、生存系列陰性細胞を予めゲーティングした。細胞は、タモキシフェンの誘導後6週間目のマウスから採取した。
【0037】
【図1−3】図1F及び1Gは、誘導後6週間目での、コントロール、Ctnnb1、Pten、及びPten:Ctnnb1二重変異体の骨髄(F)及び脾臓(G)における大腿骨及び脛骨あたりのLSK細胞の絶対数を示す棒グラフである。LSKのパーセントが二重変異体で上昇する一方(図1C参照)、二重変異体由来の骨髄の低い細胞性のため、絶対数はコントロールと比較してゆるやかな上昇しか得られていない。
【0038】
【図1−4】図1Hは、誘導後6週間目での、コントロール、Ctnnb1、Pten、及びPten:Ctnnb1変異体の骨髄における、Flk2-(長期再構成(LT)−HSCを示す)であるLSK細胞のパーセントの、それぞれ棒グラフ及びFACS分析である。Ctnnb1一重変異体は、この時点ではコントロールと大きく異なってはいない(データ示さず)。
【0039】
【図1−5】図1Iは、誘導後6週間目での、コントロール、Ctnnb1、Pten、及びPten:Ctnnb1変異体の骨髄における、Flk2-(長期再構成(LT)−HSCを示す)であるLSK細胞のパーセントの、それぞれ棒グラフ及びFACS分析である。Ctnnb1一重変異体は、この時点ではコントロールと大きく異なってはいない(データ示さず)。図1I中のボックスは、Flk2-(LT HSC)細胞を示す。
【0040】
【図1−6】図1Jは、白血病Pten:Ctnnb1変異体骨髄中のCD45のFACS分析一式である。CD45(高)急性転化細胞(blast crisis cells)を示す(左のパネル、青色ボックス)。コントロール及びCtnnb1変異体には芽細胞集団は見られず、一方、誘導後6週間目のPten一重変異体マウス1体のうちの1体で小集団が見られた(データ示さず)。右のパネルは、白血病Pten:Ctnnb1変異体マウス骨髄のLSK分析を示す。ほんの僅かのLSK集団を残しての芽細胞への転換(下部左側)に留意されたい(図1Cと比較して)。
【0041】
【図1−7】図1Kは、コントロール、Ctnnb1、Pten、及びPten:Ctnnb1二重変異体の骨髄におけるFACS分析によって明らかとした初期造血前駆細胞を示す棒グラフである。共通骨髄前駆細胞(CMP);顆粒球−単球前駆細胞(GMP);巨核球−赤血球前駆細胞(MEP);及び共通リンパ球前駆細胞(CLP)。
【0042】
【図2−1】図2A乃至Jは、二重変異体HSCがインビトロ及びインビボで劇的に増大するが分化はしないことを全体として示す一連の写真、棒グラフ、及びFACS分析である。図2Aは、コントロール、β−カテニン(Ctnnb1)、Pten変異体、及び二重変異体(Pten:Ctnnb1)マウスから単離した、10日間培養の100個のLSK細胞を示す一連の写真である(元の倍率100×)。コントロールでは、細胞数は播種された100個のLSKから大きく増加していないが、Ctnnb1一重変異体のLSKは生存していない。対照的に、Pten一重変異体のLSKは、より大きな増殖を見せるが、より不均一であり、このことは、分化がより著しいことを示している。最も大きく最も均一な増大は、Pten:Ctnnb1二重変異体のLSKから発生している。
【0043】
【図2−2】図2Bは、培養34日目のPten及びPten:Ctnnb1変異体からのLSK細胞を示す一式の写真である(元の倍率200×)(注:野生型コントロールの培養物は4週間を超えて増大することはない;Ctnnb1変異体の培養物は、10日間を超えて生存することはない)。Pten変異体のHSC培養物は、著しい細胞の凝集とより不規則な細胞形態で、より不均一に見える。さらに、分化を示す紡錘形状の(spindle−shaped)接着細胞(矢印)にも留意されたい。対照的に、二重変異体のHSC培養物は、均一な形態を示している。従って、Pten一重変異体のLSKは、生存し増大するが、これよりも非常に均一であるPten:Ctnnb1二重変異体のLSKと比べて、より著しい分化を起こしている。
【0044】
【図2−3】図2C及びDは、増大実験の結果を示す棒グラフである。Pten及びPten:Ctnnb1のLSKの7週間の培養物をカウントし、LSK表現型の保持についてFACSによる分析を行った(野生型コントロール及びCtnnb1培養物は、この長さまでインビトロにて生存することはなかった)。Pten一重変異体のLSKの増大が50倍であるのに対して、二重変異体のLSKは>1200倍の増大を起こしている。培養物のLSKの純度は、Pten:Ctnnb1の培養物の方が非常に高く、全生存細胞に対するLSK表現型の保持率が、Pten一重変異体の培養物で約50%なのに対して、約85%である。
【0045】
【図2−4】図2Eは、Pten:Ctnnb1のLSK細胞の7週間の培養物のFACS分析である(生存系列陰性細胞を予めゲーティング)。ボックス内の領域は、Kit+Sca−1+(LSK)細胞を示す。
【0046】
【図2−5】図2Fは、移植片生着実験(transplant engraftment experiment)を示すFACS分析である。培養5週間目にて(図2B参照)、Pten及びPten:Ctnnb1のLSK培養物を再選別し、各々からの1000個のLSK細胞(CD45.2+)を、2×105個のコンジェニック全骨髄競合細胞(congenic whole bone marrow competitor cells)と共に、致死量の放射線(10Gy)を照射したCD45.1+レシピエントマウスへ移植した。野生型細胞は5週間の培養で生存しなかったので、別のコントロール群として1000個の新鮮な野生型LSK細胞の移植も行った。移植後4週間目にて、Pten又はPten:Ctnnb1のLSK培養物を移植したマウスの末梢血液分析から、いずれも生着は検出されなかった(データ示さず)。移植後5週間目にて、レシピエントマウスからの骨髄を、ドナー生着(CD45.2+細胞)及びドナーLSK細胞(CD45.2+LSK)について分析した。図2F及びGは、1000個の新鮮なLSK細胞(F)を移植したマウスの骨髄からの代表的なドナー生着(左、ボックス内の領域はCD45.2+ドナー細胞を示す)及びドナーLSK細胞生着(右、ボックス内の領域はLSK細胞を示す)を示す。
【0047】
【図2−6】図2Gは、移植片生着実験(transplant engraftment experiment)を示すFACS分析である。培養5週間目にて(図2B参照)、Pten及びPten:Ctnnb1のLSK培養物を再選別し、各々からの1000個のLSK細胞(CD45.2+)を、2×105個のコンジェニック全骨髄競合細胞(congenic whole bone marrow competitor cells)と共に、致死量の放射線(10Gy)を照射したCD45.1+レシピエントマウスへ移植した。野生型細胞は5週間の培養で生存しなかったので、別のコントロール群として1000個の新鮮な野生型LSK細胞の移植も行った。移植後4週間目にて、Pten又はPten:Ctnnb1のLSK培養物を移植したマウスの末梢血液分析から、いずれも生着は検出されなかった(データ示さず)。移植後5週間目にて、レシピエントマウスからの骨髄を、ドナー生着(CD45.2+細胞)及びドナーLSK細胞(CD45.2+LSK)について分析した。図2F及びGは、1000個の培養されたPten:Ctnnb1のLSK細胞(G)を移植したマウスの骨髄からの代表的なドナー生着(左、ボックス内の領域はCD45.2+ドナー細胞を示す)及びドナーLSK細胞生着(右、ボックス内の領域はLSK細胞を示す)を示す。
【0048】
【図2−7】図2H乃至Jは、移植後5週間目にて図2F及び2Gで述べるレシピエントマウスの骨髄から単離した、ドナー(CD45.2+)細胞(H)、ドナーLSK細胞(I)、及びドナーLSKの倍数の増加(J)の定量分析を示す棒グラフである。
【0049】
【図3−1】図3A乃至Kは、PTEN/Akt及びWnt/β−カテニンシグナル伝達経路に対するエキソビボでの薬理学的な操作が協同的に機能HSCの増大を進行させることを示す、概略図、写真、棒グラフ、及びFACS分析である。図3Aは、Wnt及びPTEN経路の代表的なメンバーの概略図である。GSK−3βの阻害が、HSCの分化を阻止するβ−カテニンの活性化を誘発する。PTENの阻害が、生存を促進するAktの活性化を誘発する。両経路共に、単独でHSCの増殖を促進することが示されている。
【0050】
【図3−2】図3Bは、HSCの写真である。100個のLSK Flk2-細胞を野生型(C57Bl/6)マウスから選別し、(1)培地、(2)培地+1μM CHIR99021(GSK−3β阻害剤)、(3)培地+200nM ビスペルオキソ(ピコリナート)オキソバナジン酸二カリウム塩(BpV(pic)、PTEN阻害剤)、及び(4)培地+1μM CHIR99021+200nM BpV(pic)にて培養した。別の選択肢としてのPTEN阻害剤、シコニンも、200nMを単独で(5)又は1μM CHIR99021と組み合わせて(6)用いた。写真は培養17日目(B、元の倍率100×)、及び23日目(C、元の倍率40×)のものである。コントロールと比較して、別々に適用された阻害剤ではいずれも、より大きなLSK細胞の増大が得られ、このことは、GSK−3βの阻害が、Ctnnb1変異体のLSKで示されるβ−カテニンの構成的活性化と厳密に同等であるわけではないことを示しており、一方、Pten変異体のLSKと比較して(図2参照)、BpV(pic)では類似の結果が得られている。二重変異体のLSK(図2)と同様に両方の阻害剤の存在下にて最大の増大が見られる(図3B、パネル4)。
【0051】
【図3−3】図3Cは、HSCの写真である。100個のLSK Flk2-細胞を野生型(C57Bl/6)マウスから選別し、(1)培地、(2)培地+1μM CHIR99021(GSK−3β阻害剤)、(3)培地+200nM ビスペルオキソ(ピコリナート)オキソバナジン酸二カリウム塩(BpV(pic)、PTEN阻害剤)、及び(4)培地+1μM CHIR99021+200nM BpV(pic)にて培養した。別の選択肢としてのPTEN阻害剤、シコニンも、200nMを単独で(5)又は1μM CHIR99021と組み合わせて(6)用いた。写真は培養17日目(B、元の倍率100×)、及び23日目(C、元の倍率40×)のものである。コントロールと比較して、別々に適用された阻害剤ではいずれも、より大きなLSK細胞の増大が得られ、このことは、GSK−3βの阻害が、Ctnnb1変異体のLSKで示されるβ−カテニンの構成的活性化と厳密に同等であるわけではないことを示しており、一方、Pten変異体のLSKと比較して(図2参照)、BpV(pic)では類似の結果が得られている。二重変異体のLSK(図2)と同様に両方の阻害剤の存在下にて最大の増大が見られる(図3C、パネル4)。
【0052】
【図3−4】図3Dは、図示した培地条件における培養28日目のLSK Flk2-細胞を示す一連の写真である(元の倍率200×)。ここで、いずれの阻害剤も別々に存在する場合は、コントロールと比較して著しい増大が観察されているが;しかし、いずれの阻害剤単一での培養においても、より不定である細胞の大きさ/形態、及び/又は紡錘形状の接着細胞への分化を含む細胞形態の著しい分化/不均一性が観察されている(中央のパネル)。対照的に、そして非常に驚くべきことに、両方の阻害剤の存在下にて、均一性を有する増大が達成されている(最後のパネル)。
【0053】
【図3−5】図3Eは、両阻害剤(200nM BpV(pic)及び1μM CHIR99021)を含む培地にて28日間培養したLSK Flk2-細胞のFACS分析である。細胞は、生存系列陰性細胞を予めゲーティングした。ボックス内の領域は、Kit+Sca1+(LSK)細胞を示す。90%を超えるLSKがFlk2陰性を維持した(データ示さず)。LSK Flk2-表現型は、両阻害剤を含む培養物中にて高純度で維持されている。
【0054】
【図3−6】図3Fは、図に示した条件における28日間の培養後の、LSK Flk2-細胞の増大の倍数を示す棒グラフである。両阻害剤を別々に添加した場合は、いずれの阻害剤も含まない培地と比較して著しい増大が誘発されているが、最大の増大(約270倍)は、両方の阻害剤を合わせて添加した場合で観察されている。
【0055】
【図3−7】図3Gは、生着したマウスからの再増殖率(%)及びCD45.2+細胞の割合(%)を示す棒グラフである。28日間の培養物(図3D乃至F)をLSK Flk2-細胞について再選別し、各培地条件からの1000個のLSK Flk2-細胞(CD45.2+)を、2×105個のコンジェニック全骨髄競合細胞と共に、致死量の放射線(10Gy)を照射したCD45.1+レシピエントマウスへ移植した。移植後4週間目にて、ドナー生着(G)について末梢血液を分析した。図3Gでは、各棒グラフが個々のマウスを表しており:横方向の点線は、競合細胞のみを移植されたマウスの平均の「生着」、従って、実際の生着の検出可能限界を表している。長期間(4ヶ月)の生着は28日間の培養物からは観察されていない(データ示さず)。両阻害剤の存在下にて培養したLSK Flk2-細胞を移植した場合、>1%の生着を示したのは、CHIR99021のみが存在する場合の4/8、BpV(pic)のみが存在する場合の0/10、及び培地のみの2/6と比較して、8体のうちの6体のマウスである。1パーセント若しくはそれを超える生着は、実質的な生着に対する基準限界である(Zhang,C.C.,et al.,Nat Med,12(2):240−5,2006.Zhang,C.C. and H.F.Lodish,Blood,105(11):4314−20,2005)。従って、両阻害剤を合わせて用いることによってLSKの最大の増大が誘発されるが(図3F)、同等数のこれらの培養したLSK Flk2-細胞の移植によっても、両阻害剤で培養した場合は、阻害剤なし又は一方の阻害剤単独の場合と比較して、短期的な生着/機能性の上昇が見られる。
【0056】
【図3−8】図3Hは、生着したマウスからの再増殖率(%)及びCD45.2+細胞の割合(%)を示す棒グラフである。28日間の培養物(図3D乃至F)をLSK Flk2-細胞について再選別し、各培地条件からの1000個のLSK Flk2-細胞(CD45.2+)を、2×105個のコンジェニック全骨髄競合細胞と共に、致死量の放射線(10Gy)を照射したCD45.1+レシピエントマウスへ移植した。移植後4週間目にて、多系列生着(H)について末梢血液を分析した。
【0057】
【図3−9】図3Iは、(1)培地、(2)培地+200nM BpV(pic)、(3)培地+100nM CHIR99021、及び(4)培地+200nM BpV(pic)+100nM CHIR99021における9日間の培養後の、LSK Flk2-細胞の増大の倍数を示す棒グラフである。28日間の培養からは長期間の生着が観察されなかったことから(図3D乃至H、データは示さず)、増大及び長期間の再増殖の両方の達成が可能かどうかの試験には、LSK Flk2-細胞は9日間のみの培養とした。ここでは28日間の培養と類似の傾向が観察されるが(図3Fと比較して)、増大の度合いは、28日間の培養と比較して、9日間のみでは著しく低下している。
【0058】
【図3−10】図3Jは、培地+200nM BpV(pic)+100nM CHIR99021で9日間培養したLSK Flk2-細胞のFACS分析である。ボックス内の領域は、Kit+Sca−1+(LSK)細胞を示す。細胞は、生存系列陰性細胞を予めゲーティングした。90%を超えるLSKがFlk2陰性を維持している(データ示さず)。ここで、Sca−1及びKitのレベルは、28日間の培養から示されるSca−1(high)Kit(high)集団と比較して(図3E)、正常であると思われる。
【0059】
【図3−11】図3Kは、マウス内での10日間培養細胞の再増殖率(%)を示す棒グラフである。10日間の培養物を、2×105個のコンジェニック全骨髄競合細胞と共に、致死量の放射線(10Gy)を照射したCD45.1+レシピエントマウスへ移植した。100個から開始したLSK Flk2-細胞を10日間培養した後の全非接着細胞産物(non−adherent cell product)を各マウスに移植した。移植後8週間目にて、ドナー生着について末梢血液を分析した。図3Hのように、実際の生着を示したマウスすべてから多系列再構成が観察された(データ示さず)。各棒グラフが個々のマウスを表しており:横方向の点線は、競合細胞のみを移植されたマウスの平均の「生着」、従って、実際の生着の検出可能限界を表している。ここで、両阻害剤の存在下で培養されたLSK Flk2-細胞を移植されたマウス7体のうち3体が、1%若しくはそれを超えるドナー生着を示し、これに対して、単一の阻害剤又は阻害剤なしのグループでは、いずれのマウスもこの限界値に達しなかった。
【発明を実施するための形態】
【0060】
発明の詳細な説明
本発明の一つの態様は、末梢血液、臍帯血、及び骨髄から成る群より選択される組織から得られた幹細胞の集団を増大させるための方法である。この方法は、幹細胞の集団中のPTEN経路及びWnt経路を調節して幹細胞の数を増大させることを含む。
【0061】
本明細書で用いる「増大させる(expand)」、「増大させる(expanding)」、及び類似の用語は、本明細書で開示されるいずれかの方法を用い、インビボ又はエキソビボにて、集団中の幹細胞の数を元の集団中の幹細胞の数に対して増加させることを意味する。増大は、集団中の幹細胞の元の数と比較して少なくとも40倍であることが好ましい。より好ましくは、増大は、幹細胞の元の数と比較して、少なくとも80倍、100倍、150倍、200倍、250倍、又は270倍である。
【0062】
本発明において、「幹細胞の集団」とは、多くの異なる種類の細胞を生じさせる能力を有し、自己複製の能力を有する、実質的に未分化の細胞の群を意味する。本発明に従う幹細胞の代表的な限定されない例としては、気管支肺胞上皮幹細胞(BASC)、バルジ上皮幹細胞(bulge epithelial stem cells)(bESC)、角膜上皮幹細胞(CESC)、心筋幹細胞(CSC)、上皮神経冠幹細胞(epidermal neural crest stem cells)(eNCSC)、胚性幹細胞(ESC)、血管内皮前駆細胞(EPC)、肝臓卵細胞(hepatic oval cells)(HOC)、造血幹細胞(HSC)、ケラチノサイト幹細胞(KSC)、間葉系幹細胞(MSC)、神経幹細胞(NSC)、膵臓幹細胞(PSC)、網膜幹細胞(RSC)、及び皮膚由来前駆細胞(SKP)が挙げられる。
【0063】
例えば、造血幹細胞は、自己複製(すなわち、増大)する能力を有し、すべての種類の前駆細胞(例えば、CMP、GMP、MEP、及びCLP等)、そして最終的にはすべての種類の血液細胞(例えば、赤血球、Bリンパ球、Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、マクロファージ、及び血小板等)を、造血系内で生じさせることができる。
【0064】
本発明において、「調節する」、「調節」、及び類似の用語は、例えば、PTEN及び/又はWnt経路のタンパク質を例とするシグナル伝達経路を変化させることを意味し、これらに限定されないが、タンパク質の発現レベルを低下若しくは上昇させること、又はそのようなタンパク質の配列を変化させること(変異、翻訳前若しくは翻訳後の修飾、又はその他による)、又はそのようなタンパク質を阻害若しくは活性化すること(結合、リン酸化、グリコシル化、トランスロケーション、若しくはその他による)を含む。そのような調節は、遺伝子的に又は薬理学的に達成することができる。
【0065】
本明細書で用いる「PTEN経路の調節剤」(又は、「PTEN経路調節剤」)とは、PTENのメンバーのいずれかの活性を調節するいずれの剤をも意味し、それによって、例えば、幹細胞中のβ−カテニンの発現の上昇、及び/若しくは幹細胞中のβ−カテニンの機能の上昇、及び/若しくは幹細胞の核へのβ−カテニンの局在化の増加という結果となり、並びに/又はβ−カテニンに相補的な生存シグナルが提供される。従って、PTEN経路の調節剤は、PTENの上流で作用しても下流で作用してもよく;好ましくは、調節剤は、PTENにて、又はPTENから下流にて作用する。PTENの阻害によって、生存を促進するAktの活性化が誘発される(図3A)。PTEN経路のメンバーの代表的な限定されない例としては、PTEN、ホスファチジルイノシトール 3−キナーゼ(PI3K)、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼAkt、及びβ−カテニンが挙げられる。
【0066】
PI3K調節剤、特にPI3K活性化剤の代表的な限定されない例としては、過バナジン酸(Maude Tessier and James R.Woodgett,J.Biol.Chem.,281(33):23978−23989(2006))、インスリン(Hui,L.,et al.,Brain Research,1052(1):1−9(2005))、インスリン様増殖因子(Kenney,A.M.,et al.,Development,131:217−228(2004)、及びDatta,S.R.,et al.,Cell,91:231−241(1997))、血小板由来増殖因子(Datta,S.R.,et al.,Cell 91:231−241(1997))、カルバコール(Cui,QL,et al.,Neurochem Int,48:383−393(2006))、ニコチン(West,K.et al.,J.Clinical Investigation,111:81−90(2003))、4−(メチルニトロソアミノ)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン(NNK)(同文献)、アドレノメデュリン(AM)(Nikitenko,LL et al.,British J.Cancer,94:1−7(2006))、リゾホスファチジン酸、血小板活性化因子、マクロファージ刺激因子、及びスフィンゴシン−1−リン酸が挙げられる。
【0067】
Akt調節剤、特にAkt活性化剤の代表的な限定されない例としては、Ro−31−8220(Wen,H.et al.,Cellular signaling,15:37−45(2003));ニコチン(West,K.et al.,J.Clinical Investigation,111:81−90(2003));カルバコール(Cui QL,Fogle E & Almazan G Neurochem Int,48:383−393(2006));4−(メチルニトロソアミノ)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン(NNK)(West,K.et al.,J.Clinical Investigation,111:81−90(2003));アドレノメデュリン(AM)(Nikitenko,LL et al.,British J.Cancer,94:1−7(2006));リゾホスファチジン酸;血小板活性化因子;マクロファージ刺激因子;スフィンゴシン−1−リン酸;フォルスコリン、クロロフェニルチオ−cAMP、プロスタグランジン−E1、及び8−ブロモ−cAMP等のcAMP上昇剤(cAMP−elevating agents)(Song et al.,J.Cell.Mol.Med.,9(1):59−71(2005));並びに、インスリン及びインスリン増殖因子−1(Datta,S.R.,et al.,Cell,91:231−241(1997))を含む増殖因子、並びに血小板由来増殖因子、が挙げられる。
【0068】
本発明の追加の好ましい調節剤としては、mTOR、RHEB、FoxO、p27、BAD、カスパーゼ−9、又はp53を標的とするものが挙げられる。そのような調節剤の代表的な限定されない例としては、ホスファチジン酸(PA)等のmTOR調節剤、特にmTOR活性化剤(例えば、国際公開第2006/027545号;Foster,D.A.,Cancer Res,67(1):1−4(2007);及び、Tee et al.,J.Biol.Chem.278:37288−96(2003)を参照);RHEB抗体等のRHEB調節剤、特にRHEB−GTPアーゼ阻害剤(例えば、国際公開第2004/048536号参照);FKHRL1の切断型であるFKH(DBD)等のFoxO調節剤、特にFoxO阻害剤(例えば、Gilley,J.,et al.,J.Cell Biol.162(4):613−622(2003)参照);p27アンチセンス阻害剤及び三重鎖形成オリゴヌクレオチド、タンパク質及びペプチドアンタゴニスト等のp27調節剤、特にp27阻害剤(例えば、米国特許第5958769号参照);14−3−3タンパク質等のBAD調節剤、特にBAD阻害剤(例えば、S.Hsu et al.,Molecular Endocrinology 11(12):1858−1867(1997)参照);LB−84451(LG Life Sciences)及びZ−LEHD−FMKカスパーゼ阻害剤(Thornberry,N.A., and Lazebnik,Y.,Science 281:1312−1316(1998))等のカスパーゼ−9調節剤、特にカスパーゼ−9阻害剤;並びに、ピフィスリン−α及びその誘導体等のp53調節剤、特にp53阻害剤(例えば、Science, Komarov et al.,285(5434):1733−1737(1999),Pietrancosta et al.,Drug Dev Res 65:43−49(2005)参照)、が挙げられる。
【0069】
本発明において、「Wnt経路の調節剤」(又は、「Wnt経路調節剤」)とは、Wnt経路のメンバーのいずれかの活性を調節するいずれかの剤であり、それによって、例えば、幹細胞中のβ−カテニンの発現の上昇、及び/又は幹細胞中のβ−カテニンの機能の上昇、及び/又は幹細胞の核へのβ−カテニンの局在化の増加という結果となる。Wnt経路の調節剤は、Wntの上流で作用しても下流で作用してもよい。好ましくは、調節剤は、GSK−3βにて、又はそこから下流にて作用する。Wnt経路のメンバーの代表的な限定されない例としては、Wnt、7回膜貫通型Frizzled(seven−transmembrane Frizzled)(Fz)、1回膜貫通型(single−pass)、LDL受容体関連タンパク質(LRP)5/6、アキシン、ディシブルド、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3ベータ(GSK−3β)、大腸腺腫症(APC)、及びβ−カテニンが挙げられる。GSK−3βの阻害により、生存を促進するAkt活性化が誘発される(図3A)。
【0070】
本発明の一つの局面では、PTEN経路の調節は、幹細胞の集団に変異を導入することを含み、この変異の結果、PTEN経路中の分子が調節される。本発明において、PTEN経路の調節は、幹細胞を、β−カテニンの活性化を誘発するPTEN経路中の分子の調節剤と接触させることも含む。そのような調節剤の代表的な限定されない例としては、低分子、バイオロジック(biologic)、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の本局面は、Wnt経路を調節することをさらに含み、これは、Wnt経路中の分子が調節される結果となる幹細胞の集団への変異の導入を含む。本発明において、Wnt経路の調節は、Wnt経路中の分子の調節剤と幹細胞を接触させることも含む。そのような調節剤の代表的な限定されない例としては、低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
本明細書で用いる「変異を導入する」とは、幹細胞集団の遺伝子上の構造に変化を作り出すための従来のいずれの方法をも意味する。幹細胞集団への変異の導入の限定されない例としては、紫外光の照射による変異誘発、化学的変異誘発、幹細胞の部位特異的変異誘発等の標的変異誘発(targeted mutagenesis)、及びトランスジェニックマウスの作出が挙げられる。
【0072】
本発明において、「PTEN経路中の分子の調節」という表現は、PTEN経路のメンバーの機能を変化させることを意味し、変化された機能は、PTENの機能の阻害又は低下と類似の効果を有する。このような「調節」の限定されない例としては、β−カテニンの構成的活性化、Aktの構成的活性化、又はPTENの機能喪失型若しくはヌル対立遺伝子が挙げられる。「Wnt経路中の分子の調節」という表現は、Wnt経路のメンバーの機能を阻止又は低下することを意味し、これは、GSK−3β機能の阻止又は低下と類似の効果を有する。このような調節の限定されない例としては、β−カテニンの構成的活性化、及びGSK−3βの機能喪失型若しくはヌル対立遺伝子が挙げられる。
【0073】
「PTEN経路中の分子の調節剤」は、β−カテニンの活性化を直接又は間接的に引き起こす分子である。このような分子の限定されない例としては、β−カテニンを活性化する、Aktを活性化する、PI3Kを活性化する、又はPTENを阻害するものが挙げられる。「Wnt経路中の分子の調節剤」は、Wnt経路のメンバーの機能を直接若しくは間接的に阻止又は低下させる分子である。このような分子の限定されない例としては、β−カテニンを活性化するもの、又はGSK−3β、アキシン、若しくはAPCを阻害するものが挙げられる。
【0074】
本発明において、「低分子」という用語は、生物学的プロセスに影響を与えるように、特にWnt及びPTEN経路のメンバーを調節するように作用することができる、ポリペプチド及び核酸以外のいかなる化学的又はその他の部分をも含む。低分子は、現在知られている及び用いられている、又は生物学的機能についてスクリーニングする目的でそのような分子のライブラリーにて合成することができる、いかなる数の治療薬も含むことができる。低分子は、その大きさによって高分子と区別される。本発明の低分子の分子量は、通常は約5000ダルトン(Da)未満であり、好ましくは約2500Da未満であり、より好ましくは1000Da未満であり、最も好ましくは約500Da未満である。
【0075】
低分子は、限定されることなく、有機化合物、ペプチド模倣体、及びこれらの接合体を含む。本明細書で用いる「有機化合物」という用語は、核酸及びポリペプチド等の高分子以外の炭素を主体とするいかなる化合物も意味する。炭素に加えて、有機化合物は、カルシウム、塩素、フッ素、銅、水素、鉄、カリウム、窒素、酸素、硫黄、及びその他の元素を含んでいてよい。有機化合物は、芳香族又は脂肪族の形態であってもよい。有機化合物の限定されない例としては、アセトン、アルコール、アニリン、炭水化物、単糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、脂質、レチノイド、ステロイド、プロテオグリカン、ケトン、アルデヒド、飽和、不飽和、及び多価不飽和脂肪、油及びワックス、アルケン、エステル、エーテル、チオール、スルフィド、環状化合物、ヘテロ環化合物、イミダゾール、並びにフェノールが挙げられる。本明細書で用いる有機化合物は、硝酸化有機化合物及びハロゲン化(例:塩素化)有機化合物も含む。
【0076】
好ましい低分子は、比較的容易に、低いコストにて製造、製剤、又はそうでなければ作製される。好ましい低分子は、種々の保存条件下で安定である。好ましい低分子は、高分子と密接に結びついた形で配置されて、生物学的に活性であり、薬理学的特性が改良された分子を形成することができる。改良された薬理学的特性は、所望の生物学的活性にとって有利である、循環時間、分布、代謝、修飾、排泄、分泌、排出、及び安定性の改変を含む。改良された薬理学的特性は、化学的要素の毒物学的特性及び効力特性の改変を含む。
【0077】
一般的に、ポリペプチド模倣体(「ペプチド模倣体」)は、ポリペプチドの生物学的活性を模倣するが、化学的性質がペプチド性ではない分子である。特定の態様では、ペプチド模倣体は、ペプチド結合(すなわち、アミノ酸間のアミド結合)を含まない分子であるが、ペプチド模倣体という用語は、擬ペプチド、半ペプチド(semi−peptides)、及びペプドイド等のその特性が完全にペプチド性ではない分子を含むことができる。
【0078】
本明細書で用いる「バイオロジック」という用語は、化学的プロセスに対するものとして、生物源に由来する生成物を意味する。「バイオロジック」の限定されない例としては、タンパク質、条件培地、及び組織からの部分的に精製された生成物を含む。
【0079】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書にて交換可能に用いられる。本発明では、これらの用語は、アミノ酸の連結された配列を意味し、天然物、合成物、又は天然物と合成物の修飾物若しくは組み合わせであってよい。この用語は、抗体、抗体模倣体、ドメイン抗体、リポカリン、及び標的プロテアーゼを含む。この用語は、ペプチド又はペプチド断片に対して抗体を産生させる意図でペプチド又はペプチド断片を含有するワクチンも含む。
【0080】
本明細書で用いる「抗体」は、IgG、IgM、IgA、IgD、若しくはIgEの分類の抗体、又はこれらの断片若しくは誘導体を含み、Fab、F(ab’)2、Fd、並びに単鎖抗体、ダイアボディ(diabodies)、二重特異性抗体、及び二機能性抗体を含む。抗体は、所望のエピトープ又はそれから誘導される配列との十分な結合特異性を示すモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、アフィニティ精製抗体、又はこれらの混合物であってよい。抗体は、キメラ抗体であってもよい。抗体は、本技術分野で公知の化学的部分、ペプチド部分、又はポリペプチド部分の1若しくは2つ以上を結合することによって誘導体化されていてもよい。抗体は、化学的部分と接合していてもよい。抗体は、ヒト又はヒト化抗体であってもよい。これらの及びその他の抗体は、米国特許出願公開第20070065447号に開示されている。
【0081】
その他の抗体様分子も、本発明の範囲内である。そのような抗体様分子としては、例えば、受容体トラップ(receptor traps)(エンタネルセプト(entanercept)等)、抗体模倣体(アドネクチン、例えばCompound Therapeutics,Inc.からのフィブロネクチンに基づく「指向可能な(addressable)」治療結合分子等)、ドメイン抗体(天然の単一ドメイン抗体の最も小さい機能断片(例:ナノボディ等;例えば、Cortez−Retamozo et al.,Cancer Res.2004 Apr 15;64(8):2853−7参照))が挙げられる。
【0082】
適切な抗体模倣体は、一般に、本明細書で述べる抗体及び抗体断片に対するサロゲートとして用いることができる。そのような抗体模倣体には、有利な特性が付随し得る(例えば、それらは、水溶性、タンパク質分解に対する耐性、及び/又は非免疫原性を有し得る)。例えば、モノクローナル抗体の第二の相補性決定領域(CDR)を模倣する合成ベータループ構造を有するペプチドが提案され、作製されている。例えば、Saragovi et al.,Science.Aug.16,1991;253(5021):792−5、を参照されたい。ペプチド抗体模倣体は、「活性な」抗原認識残基を特定するためのペプチドマッピング、分子モデリング、及び分子動力学軌道分析(molecular dynamics trajectory analysis)を用いることによっても作製されており、それによって、複数のCDRからの抗原接触残基(antigen contact residues)を含むペプチド擬態が設計される。例えば、Cassett et al.,Biochem Biophys Res Commun.Jul.18,2003;307(1):198−205、を参照されたい。本発明に関連して適用可能であり得る関連する原理、方法等についてのさらなる考察は、例えば、Fassina,Immunomethods.October 1994;5(2):121−9、に提供されている。
【0083】
本明細書で用いる「ペプチド」は、標的プロテアーゼを含み、これは、例えば、米国特許出願公開第20060275823号等に開示のように、例えば、基質を標的とした翻訳後修飾の阻害の能力を有する。
【0084】
本明細書で用いる「アンチセンス」分子は、標的mRNA(センス)又はDNA(アンチセンス)配列と結合する能力を持つ一本鎖核酸配列(RNA又はDNA)を有するアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを含む。所定のタンパク質をコードするcDNA配列に基づいてアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを誘導する能力については、例えば、Stein and Cohen, Cancer Res.48:2659,(1988)、及び、van der Krol et al.,BioTechniques 6:958,(1988)、に記載されている。
【0085】
アンチセンス分子は、修飾若しくは未修飾のRNA、DNA、又は混合されたポリマーオリゴヌクレオチドであってよい。これらの分子は、対応する配列と特異的に結合することによって機能し、その結果、立体的に阻止するか又はリボヌクレアーゼH酵素を活性化することによってペプチド合成を阻害する(Wu−Pong,November 1994,BioPharm,20−33)。アンチセンス分子は、RNAプロセシングの干渉、又は核から細胞質への輸送によってタンパク質合成を改変することもできる(Mukhopadhyay & Roth,1996,Crit.Rev.in Oncogenesis 7,151−190)。さらに、一本鎖DNAのRNAへの結合の結果、ヌクレアーゼの媒介によるヘテロ二重鎖の分解をもたらすことができる(Wu−Pong,上述)。これまでにリボヌクレアーゼHに対する基質として作用することが示されているバックボーンが修飾されたDNAの化学は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ボロントリフルオリデート(borontrifluoridates)、並びに2’−アラビノ及び2’−フルオロアラビノ含有オリゴヌクレオチドである。
【0086】
アンチセンス分子は、国際公開第91/04753号に記載のように、リガンド結合分子と接合体を形成することによって、標的ヌクレオチド配列を含む細胞へ導入することができる。適切なリガンド結合分子としては、これらに限定されないが、細胞表面受容体、増殖因子、その他のサイトカイン、又は細胞表面受容体と結合するその他のリガンドが挙げられる。リガンド結合分子の接合体形成は、実質的に、リガンド結合分子がその対応する分子若しくは受容体と結合する能力に干渉せず、センス若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド、又はその接合した形態が細胞へ侵入することも阻止しないことが好ましい。別の選択肢として、センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、国際公開第90/10448号に記載のように、オリゴヌクレオチド−脂質複合体を形成することによって、標的核酸配列を含む細胞へ導入することができる。
【0087】
低分子干渉RNA(「siRNA」)の用語は、RNA干渉(RNAi)経路を誘発する低分子阻害RNA二重鎖を意味する(Elbashir,S.M.et al.Nature 411:494−498(2001);Caplen,N.J.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:9742−9747(2001);Harborth,J.et al.J Cell Sci.114:4557−4565(2001))。これらの分子は、長さが様々であり得(一般に、18乃至30塩基対)、そのアンチセンス鎖に標的mRNAに対する種々の度合いの相補性を有し得る。すべてではないが、いくつかのsiRNAは、センス鎖及び/若しくはアンチセンス鎖の5’又は3’末端上に、不対オーバーハング塩基を有する。「siRNA」の用語は、2本の別々の鎖の二重鎖、並びに二重鎖領域を含むヘアピン構造を形成することができる一本鎖を含む。本明細書で用いるsiRNA分子とは、RNA分子に限定されず、さらに、化学的に修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドを包含する。siRNAのジーンターゲティングは、siRNAを細胞中へ一時的に移行させることによって実施することができる(リポソーム媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、又はマイクロインジェクション等の従来の方法によって達成される)。
【0088】
本発明の別の局面では、PTEN及びWnt経路の調節は、幹細胞集団をPTEN経路の低分子阻害剤及びWnt経路の低分子阻害剤と接触させることを含む。PTEN及びWnt経路の調節は、それぞれ、PTEN及びGSK−3βの下方制御を含むことが好ましい。本明細書で用いる「下方制御」とは、PTEN及びGSK−3βの量を抑制する若しくは減少させること、又はその活性を阻害する若しくは低下させることを意味する。このような下方制御は、例えば、アンチセンスRNA、siRNA、抗体、又は低分子を用いて達成することができる。
【0089】
PTEN及びGSK−3βの下方制御は、幹細胞集団を:(a)低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される可逆的PTEN阻害剤、及び(b)低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される可逆的GSK−3β阻害剤、と接触させることを含むことが好ましい。本明細書で用いる「可逆的」とは、下方制御の効果が恒久的ではないことを意味する。本発明では、PTEN及びWnt経路の両方の遺伝子的改変により、長期間の培養の後にインビトロ並びにインビボの両方での自己複製の能力が高められるが、分化することはできず、従って移植レシピエントの造血系を再増殖させることはできない。対照的に、例えばbpV(pic)及びCHIR99201等の両方の経路の可逆的下方制御剤を用いることにより、機能HSCの増大が可能となるが、(1)下方制御剤が取り除かれると、遺伝子変異体からの培養されたHSCとは異なり、培養されたHSCは分化することができ、及び(2)そのような培養されたHSCが移植された場合、レシピエント動物は、遺伝子変異体が起こすような白血病を発症することはない。
【0090】
可逆的PTEN阻害剤及び可逆的GSK−3β阻害剤は、いずれも低分子であることが好ましい。一つの局面では、可逆的PTEN阻害剤は、PTEN又はPTEN経路の下流メンバーを阻害することができ、その阻害によってβ−カテニンの活性化を誘発する、低分子等のいずれかの分子である。PTEN阻害剤は、シコニン、ビスペルオキソバナジウム化合物、SF−1751(Semafore Pharmaceuticals)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択されることが好ましい。本局面では、ビスペルオキソバナジウム化合物は、bpV(phen)2、bpV(pic)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される。
【0091】
本発明では、可逆的GSK−3β阻害剤は、GSK−3βを可逆的に阻害することができるいずれかの分子である。そのような阻害剤は、ヒメニアルジシン(Hymenialdisine)、フラボピリドール、ケンパウロン(Kenpaullone)、アルステルパウロン(Alsterpaullone)、アザケンパウロン(Azakenpaullone)、インディルビン−30−オキシム、6−ブロモインディルビン−30−オキシム(BIO)、6−ブロモインディルビン−30−アセトキシム、アロイシンA(Aloisine A)、アロイシンB(Aloisine B)、TDZD8、化合物12、CHIR98014、CHIR99021(CT99021)、CT20026、化合物1、SU9516、ARA014418、スタウロスポリン、化合物5a、化合物29、化合物46、GF109203x(ビスインドリルマレイミド I)、Ro318220(ビスインドリルマレイミド IX)、SB216763、SB415286、I5、CGP60474、化合物8b、TWS119、化合物1A、化合物17、リチウム、ベリリウム、亜鉛、低分子GSK−3β阻害剤(Vertex Pharmaceuticals)、NP−12(Neuropharma)、GSK−3β阻害剤(Amphora)、GSK−3β阻害剤(CrystalGenomics)、SAR−502250(Sanofi−Aventis)、3544(Hoffmann−La Roche)、GSK−3β阻害剤(Lundbeck)、TDZD−8(Cancer Center, University of Rochester)、これらの薬理学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせ、から成る群より選択されることが好ましい。
【0092】
PTEN及びGSK−3β阻害剤は、所望のレベルの幹細胞の増大が達成される好都合ないかなる方法によっても幹細胞集団と接触させてよいが、阻害剤が供投与されることが好ましい。さらに、複数のPTEN及びGSK−3β阻害剤を幹細胞と接触させてもよい。さらに、PTEN及びGSK−3β阻害剤は、幹細胞の自己複製を促進するのに適するその他の剤と合わせて、幹細胞との接触/幹細胞への投与を行ってもよい。好ましくは、PTEN阻害剤はbpV(pic)であり、GSK−3β阻害剤はCHIR99201である。
【0093】
本発明の追加の局面では、幹細胞の数は少なくとも40倍の倍率で増加する。好ましくは、幹細胞の数は、少なくとも150倍、少なくとも200倍、少なくとも250倍、又は少なくとも270倍を含む少なくとも100倍等、少なくとも80倍の倍率で増加する。驚くべきことに、そして予想外なことに、このようなレベルの幹細胞の増大は、本発明の方法を用いることによって達成される。
【0094】
上記のように、本発明の方法を用いて、幹細胞のいかなる集団をも増大させることができる。好ましくは、本発明の方法に従って増大することができる幹細胞は、造血幹細胞(HSC)、血管内皮前駆細胞(EPC)、間葉系幹細胞(MSC)、心筋幹細胞(CSC)、神経幹細胞(NSC)、及びこれらの組み合わせから選択することができる。より好ましくは、幹細胞はHSCである。
【0095】
本発明の別の態様は、実質的に未分化の幹細胞集団のエキソビボでの増大のための方法である。この方法は、未分化幹細胞集団中のPTEN経路及びWnt経路を調節して、幹細胞集団の著しい分化を伴うことなく未分化幹細胞の数を増大させることを含む。
【0096】
本態様では、集団中の十分な数の細胞が、自己複製の能力を保持し、及び、例えば、HSC集団の場合であれば、移植された際にHSC系列を再増殖させる等、レシピエントに移植された際に様々な種類の分化細胞を生じさせることができる場合、幹細胞集団は「実質的に未分化である」。本明細書で用いる「著しい分化を伴うことなく」とは、増大された幹細胞集団が、全範囲の標的幹系列(target stem lineage)を、増大された幹細胞集団をレシピエントへ移植した際に再生することができる多系列分化能を維持するのに十分な数の細胞を有することを意味する。従って、例えば、HSC集団の場合、レシピエントに移植されると、増大されたHSC集団は、造血細胞系列全体を再生することができる。
【0097】
本発明のさらなる態様は、末梢血液、臍帯血、及び骨髄から成る群より選択される組織から得られる造血幹細胞(HSC)集団をエキソビボで増大させるための方法である。この方法は、HSC集団中のPTEN経路及びWnt経路を調節して、HSC集団の多系列分化能は維持したまま、HSC集団を、続いてのそれを必要としている患者への移植に足る十分な量まで増大させることを含む。
【0098】
本明細書で用いる、組織から「得られる」とは、ドナーから組織を採取又は分離する従来のいかなる方法も意味する。例えば、組織は、末梢血液若しくは臍帯血サンプル等の血液サンプルから得られてもよく、又は骨髄から採取されてもよい。そのようなサンプルを得るための方法は、当業者に公知である。本発明では、サンプルは、新鮮なもの、すなわち、凍結することなくドナーから得られたものであってよい。さらに、サンプルをさらに処理して、外来性又は望ましくない成分を増大の前に除去してもよい。サンプルは、保存ストックから得てもよい。例えば、末梢血液又は臍帯血の場合、サンプルは、低温貯蔵又はその他の方法で保存されたそのような血液のバンクから引き出してもよい。そのようなサンプルは、適切ないかなるドナーから得てもよい。ドナーは、ヒト等の霊長類を例とする哺乳類が好ましい。さらに、サンプルは、自己若しくは同種のドナー又はサンプル源から得てもよい。サンプルは、自己サンプル源から得ることが好ましい。
【0099】
本方法において、「多系列分化能を維持する」とは、増大されたHSC集団が、そのような移植を必要とする患者へ移植された場合に、CMP、GMP、MEP、及びCLPを例とするすべての種類の前駆細胞を作り出し、そして最終的には、例えば、赤血球、Bリンパ球、Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、マクロファージ、及び血小板を含むすべての種類の血液細胞を造血系内で作り出す能力を有していることを意味する。
【0100】
本発明において、「続いての移植に足る」増大されたHSCの量とは、一般に、移植後に約1%超の生着の結果をもたらすであろうHSCの数に対応している。これは、移植の成功に対する一つの公認された尺度である。本発明では、実施例に記載のものを含めて、従来のいかなる方法を用いて生着率を決定してもよい。そのような測定は、競合細胞と共に実施しても、又は競合細胞なしで実施してもよく、通常は、及び好ましくは、競合細胞なしで実施される(Zhang,C.C,et al.,Nat Med,12(2):240−5,2006.Zhang,C.C.and H.F.Lodish,Blood,105(11):4314−20,2005)。
【0101】
上述のエキソビボでの増大方法では、PTEN及びWnt経路の調節は、既述のようにして達成することができる。PTEN及びWnt経路の調節は、幹細胞集団をPTEN経路の低分子阻害剤及びWnt経路の低分子阻害剤と接触させることを含むことができる。PTEN及びWnt経路の調節は、それぞれ、PTEN及びGSK−3βの下方制御を含むことができる。PTEN及びWnt経路の下方制御は、前述のように、幹細胞集団を可逆的PTEN阻害剤及び可逆的GSK−3β阻害剤と接触させることを含むことが好ましい。可逆的PTEN阻害剤及び可逆的GSK−3β阻害剤の両方が低分子であることが好ましい。
【0102】
可逆的PTEN阻害剤は、シコニン、ビスペルオキソバナジウム化合物、SF−1751(Semafore Pharmaceuticals)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択することができる。ビスペルオキソバナジウム化合物は、bpV(phen)2、bpV(pic)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択されることが好ましい。
【0103】
可逆的GSK−3β阻害剤は、ヒメニアルジシン、フラボピリドール、ケンパウロン、アルステルパウロン、アザケンパウロン、インディルビン−30−オキシム、6−ブロモインディルビン−30−オキシム(BIO)、6−ブロモインディルビン−30−アセトキシム、アロイシンA、アロイシンB、TDZD8、化合物12、CHIR98014、CHIR99021(CT99021)、CT20026、化合物1、SU9516、ARA014418、スタウロスポリン、化合物5a、化合物29、化合物46、GF109203x(ビスインドリルマレイミド I)、Ro318220(ビスインドリルマレイミド IX)、SB216763、SB415286、I5、CGP60474、化合物8b、TWS119、化合物1A、化合物17、リチウム、ベリリウム、亜鉛、低分子GSK−3β阻害剤(Vertex Pharmaceuticals)、NP−12(Neuropharma)、GSK−3β阻害剤(Amphora)、GSK−3β阻害剤(CrystalGenomics)、SAR−502250(Sanofi−Aventis)、3544(Hoffmann−La Roche)、GSK−3β阻害剤(Lundbeck)、TDZD−8(Cancer Center,University of Rochester)、これらの薬理学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせ、から成る群より選択することができる。
【0104】
これらのエキソビボでの増大方法では、PTEN阻害剤はbpV(pic)であり、GSK−3β阻害剤はCHIR99201であることが好ましい。これらの方法では、幹細胞は、HSC、血管内皮前駆細胞(EPC)、間葉系幹細胞(MSC)、心筋幹細胞(CSC)、神経幹細胞(NSC)、及びこれらの組み合わせから選択されることが好ましい。好ましくは、幹細胞はHSCである。これらの方法では、HSCは、霊長類又はヒトを例とする哺乳類の組織から得られ、組織は、臍帯血、末梢血液、及び骨髄から成る群より選択される。
【0105】
造血幹細胞(HSC)集団のエキソビボでの増大方法の別の局面では、幹細胞の数の増大は、例えば、少なくとも100倍、少なくとも150倍、少なくとも200倍、少なくとも250倍、又は少なくとも270倍を含む少なくとも80倍等、少なくとも40倍である。
【0106】
本発明のさらに別の態様は、例えば、実質的に未分化の幹細胞集団をエキソビボで増大させる方法、又は造血幹細胞(HSC)集団をエキソビボで増大させる方法等の本発明の方法によって作製された、増大された実質的に未分化の幹細胞集団である。
【0107】
本発明の追加の態様は、造血幹細胞(HSC)をエキソビボにて少なくとも40倍に増大させるための方法であり、ここで、増大されたHSCは、それを必要とする哺乳類患者へ移植した際にHSC系列を再構成する能力を有する。この方法は、HSCの集団を、PTEN阻害剤及びGSK−3β阻害剤を含む適切な培地で培養することを含む。
【0108】
本発明の本局面において、「HSC系列を再構成する能力を有する」とは、増大されたHSCが、適切な哺乳類患者へ移植された場合に、レシピエント内にて1%超の生着をもたらし、この生着した細胞が、正常に機能する造血系を持つのに必要である細胞系列へ分化することができることを意味する。本方法において、本明細書で交換可能に用いられる「適切な培地」、「流体培地」、及び「培地」とは、幹細胞集団を必要とされる期間維持することができる生理的平衡塩溶液を意味し、この溶液は、本発明のPTEN及びGSK−3β調節剤/阻害剤が補足されていてもよい。このような基本培地は本技術分野で公知である。HSCのための適切な基本培地の限定されない例は、StemSpan Media(Stem Cell Technologies;カタログ番号09600)であり、これは、10μg/mlヘパリン、5×ペニシリン/ストレプトマイシン、10ng/ml組換えマウス(rm)幹細胞因子、及び20ng/ml rm−トロンボポエチンが補足されている。
【0109】
通常、培地は、約100乃至約1000nMのPTEN阻害剤も含む。培地は、約50nM乃至約500nMのGSK−3β阻害剤をさらに含んでもよい。本発明では、範囲が示された場合、終点を含むその範囲内のいずれの数値をも意図している。培地は、PTEN及びGSK−3β阻害剤の両方を示した濃度で含むことが好ましい。例えば、培地は、bpV(pic)をPTEN阻害剤として、CHIR99201をGSK−3β阻害剤として含んでよい。
【0110】
本態様の一つの局面では、HSCは、臍帯血、末梢血液、及び骨髄から選択される、哺乳類の組織から、好ましくは霊長類又はヒトの組織から得られる。本態様では、HSCの数は、少なくとも150倍、少なくとも200倍、少なくとも250倍、又は少なくとも270倍を含む少なくとも100倍等、少なくとも80倍の倍率で増大する。
【0111】
本発明のさらに別の態様は、それを必要としている患者への続いての移植のために、造血幹細胞(HSC)集団を増大させるためのキットである。キットは、上述の様に、PTEN阻害剤及びGSK−3β阻害剤、並びにこれらの阻害剤の使用説明書を含む。好ましくは、このキットにおいて、PTEN阻害剤はbpV(pic)、GSK−3β阻害剤はCHIR99201である。このキット及びその構成成分は、流通及び/又は保存のために適切であるいかなる手段によって梱包されていてもよい。
【0112】
本発明のさらなる態様は、幹細胞集団のエキソビボでの増大を実施するための培地である。この培地は、培地中に存在する生存幹細胞、並びにPTEN及びGSK−3β阻害剤を、この幹細胞集団の増大を可能とするのに十分な濃度に維持する一方、この幹細胞の多系列分化能を維持するのに適する流体培地を含む。
【0113】
本態様において、「増大を可能とするのに十分な濃度」とは、生着を成功させるのに十分な増大を例とする、所望のレベルの幹細胞の複製を達成するのに十分である、PTEN及びGSK−3β阻害剤の最低濃度を意味する。
【0114】
本態様の一つの局面では、幹細胞の数の増大は、少なくとも40倍、少なくとも80倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍、少なくとも200倍、少なくとも250倍、又は少なくとも270倍から成る群より選択される倍率である。
【0115】
本発明のさらなる態様は、造血幹細胞(HSC)を、それを必要とする患者に投与するための方法である。この方法は、(a)適切な培地中、PTEN経路中の分子の調節剤及びWnt経路中の分子の調節剤の存在下にて、HSC集団を含むサンプルを、サンプル中のHSCの数が患者への移植に十分な数まで増大するのに十分な時間培養すること;(b)PTEN及びWnt経路調節剤を培養物から除去すること;並びに(c)このHSCを患者へ投与すること、を含む。本態様において、培地、サンプル、並びにPTEN及びGSK−3β調節剤は既述である。
【0116】
本発明の追加の態様は、骨髄の再構成を、それを必要とする患者に施すための方法である。この方法は、適切な培地中、PTEN経路中の分子の調節剤及びWnt経路中の分子の調節剤の存在下にて、HSC集団を含むサンプルを、サンプル中のHSCの数が患者への移植に十分な数まで増大するのに十分な時間培養することを含む。次に、PTEN及びWnt経路調節剤を培養物から除去する。そして、増大されたHSCを、従来の方法のいずれかによって患者へ投与する。
【0117】
本方法において、「骨髄を再構成する」とは、正常な骨髄機能が損なわれる疾患に罹患する患者の骨髄のすべて又は一部分を回復させることを意味する。そのような疾患の限定されない例としては、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群(MDS)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、及び白血病等の血液の癌が挙げられる。従って、本明細書で用いる「再構成された」とは、移植されたHSCがホストに正常に生着し、通常骨髄で見られる又は骨髄から誘導される細胞系列のすべてに分化することができることを意味する。
【0118】
本方法において、「HSCの数が増大するのに十分な時間」とは、1若しくは2つ以上の移植のために十分な数のHSCが存在する段階まで、培養中のHSCを増大させるための最短の時間を意味する。通常、そのような時間は、少なくとも約10日間の培養であってよい。特定の状況下では、HSCを例とする幹細胞集団を、単一の移植に必要とされるレベルを超えて増大させることが望ましい場合がある。例えば、HSCを例とする幹細胞集団を、例えば、約2乃至100の移植等、複数の移植に対して十分である数まで増大させることが望ましい場合がある。このような状況では、過剰の細胞は、後の使用のめに、例えば凍結保存等の従来のいかなる方法によって保存してよい。
【0119】
前述の「移植に十分な数」とは、レシピエント内にて1%を超える生着を達成するのに必要である、HSCを例とする幹細胞の最小数を意味する。「患者へHSCを投与する」とは、HSCを患者へ送達するための従来の方法を意味し、これらに限定されないが、外科手術によって及び/又は静脈を通してHSCを送達することを含む。本態様において、HSCを得る組織、並びにPTEN及びGSK−3β阻害剤は既述である。
【0120】
本発明の追加の態様は、造血幹細胞(HSC)の集団を増大させるための方法である。この方法は、HSC集団を少なくとも40倍に増大させる結果を得るのに十分な条件下にてHSCの集団を培養することを含み、ここで、増大されたHSCの集団は、それを必要とする哺乳類への移植に適している。本態様において、「HSC集団を増大させる結果を得るのに十分な条件」とは、培養中のHSCが、例えば少なくとも80倍、少なくとも150倍、少なくとも200倍、少なくとも250倍、又は少なくとも270倍等、例えば少なくとも40倍に増大する結果を得ることができる条件である。「哺乳類への移植に適している」とは、HSCの数及び性質が、1%を超える生着を、例えばヒトレシピエントを含む霊長類レシピエント等、それを必要としている哺乳類レシピエント内で補助するのに十分であることを意味する。
【0121】
本発明のさらに別の態様は、骨髄移植、末梢血液移植、又は臍帯血移植を必要とする患者を治療するための方法であって、この方法は、本明細書で開示される方法、特に、造血幹細胞(HSC)の集団を増大させるための方法、によって得られたHSCの集団をその患者へ投与することを含む。
【0122】
本発明のさらなる態様は、造血幹細胞(HSC)の集団を増大させるための方法である。本方法は、(a)HSC集団を含有する組織サンプルを哺乳類から得ること;(b)インビトロにて、サンプルからのHSC集団を増大させること、を含み、ここで:(i)HSC集団は少なくとも40倍に増大し;及び(ii)増大したHSC集団は、レシピエントへの移植後、例えば少なくとも8週間等、少なくとも4週間、造血系列を再構成する能力を有する。本態様において、「造血系列を再構成する能力」とは、増大されたHSC集団が、レシピエントへ移植された場合、レシピエント内にて1%を超えるHSCの生着をもたらすことを意味する。本態様の一つの局面では、HSC集団が、例えば、少なくとも150倍、少なくとも200倍、少なくとも250倍、又は少なくとも270倍を含む少なくとも100倍等、少なくとも80倍に増大する。本態様の別の局面では、哺乳類はヒトを含む霊長類である。好ましくは、ヒトは、末梢血液移植、臍帯血移植、又は骨髄移植を必要とする。さらなる局面では、組織サンプルは、臍帯血、末梢血液、及び骨髄から成る群より選択される組織から得られる。
【0123】
本発明の追加の態様は、造血幹細胞系列の再構成を、それを必要とするレシピエントに施すための方法である。この方法は:(a)HSC集団を含有する組織サンプルを哺乳類から得る工程;(b)インビトロにて、サンプルからのHSC集団を増大させる工程であって、ここで:(i)HSC集団は、例えば、少なくとも100倍、少なくとも150倍、少なくとも200倍、少なくとも250倍、又は少なくとも270倍を含む少なくとも80倍等、少なくとも40倍に増大し;及び(ii)増大したHSC集団は、それを必要とするレシピエントへの移植後、例えば少なくとも8週間等、少なくとも4週間、造血系列を再構成する能力を有する、工程;並びに、(c)増大したHSC集団を、霊長類又はヒトを含む哺乳類等のそれを必要とするレシピエントへ移植する工程、を含む。
【0124】
本態様において、「造血幹細胞系列を再構成する」とは、増大したHSCが、レシピエントに移植された場合、造血細胞の1%を超える生着をもたらし、これが正常な造血系列へ分化することができることを意味する。本態様において、ヒトレシピエントは、末梢血液移植、臍帯血移植、又は骨髄移植を必要とする。従って、さらなる局面では、組織サンプルは、臍帯血、末梢血液、及び骨髄から成る群より選択される組織から得られる。サンプルは、自己若しくは同種サンプル源から得てもよい。サンプルは、自己サンプル源から得ることが好ましい。
【0125】
本発明において、増大したHSC集団は、最も原始的な長期未分化ヒトHSCに対するマーカーである、CD34-若しくはCD34+/CD38-/low/Thy−1+/CD90+/Kit-/lo/Lin-/CD133+VEGFR2+;ヒトHSC及びその前駆細胞に対するマーカーである、CD150+/CD48-/CD244-;並びに/又は、非自己複製性多分化能造血前駆細胞(non−self−renewing multipotent hematopoietic progenitors)に対するマーカーである、CD150-/CD48-/CD244+及びCD150-/CD48+/CD244+、並びに、これらの組み合わせ、から成る群より選択される表現型を有するHSCを含むことが好ましい(例えば、Mimeault,M.,et al.,Stem Cells:A Revolution in Therapeutics−Recent Advances in Stem Cell Biology and Their Therapeutic Applications in Regenerative Medicine and Cancer Therapies.Clin Pharmacol Ther.,82(3):252−64(2007)参照)。
【0126】
集団中のこれらのマーカーを有するHSCの正確な割合は、増大したHSC集団が全体としてレシピエント内で少なくとも1%の生着をもたらすのに十分である限りにおいて、それほど重要ではない。
【0127】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞集団の増大を、そのような増大を必要とする哺乳類へ施すための方法である。この方法は、Wnt及びAktの調節剤の治療効果量を、HSCが哺乳類中で造血系列を再構成する能力を保持した状態でHSC集団を少なくとも40倍に増大させるのに十分な時間、哺乳類へ投与することを含む。
【0128】
本方法では、Wnt及びAktのそれぞれの調節剤は、低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、siRNA、又はこれらの組み合わせ等、β−カテニンを活性化するために直接又は間接的に作用するいかなる分子であってよい。好ましくは、Wnt調節剤は、Wntポリペプチド、QS11(Zhang,Q.et al.,PNAS,104(18):7444−8(2007))、2−アミノ−4−[3,4−(メチレンジオキシ)ベンジル−アミノ]−6−(3−メトキシフェニル)ピリミジン(Liu,J.et al.,Angew Chem Int Ed Engl.44(13):1987−90(2005))、デオキシコール酸(R.Pai et al.,Mol Biol Cell.15(5):2156−63(2004))、及びこれらの組み合わせから選択される。好ましくは、Aktの調節剤は、Ro−31−8220(Wen, H. et al.,Cellular signaling,15:37−45(2003));ニコチン(West,K.et al.,J.Clinical Investigation,111:81−90(2003));カルバコール(Cui QL,Fogle E & Almazan G Neurochem Int,48:383−393(2006));4−(メチルニトロソアミノ)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン(NNK)(West,K.et al.,J.Clinical Investigation,111:81−90(2003));アドレノメデュリン(AM)(Nikitenko,LL et al.,British J.Cancer,94:1−7 (2006));リゾホスファチジン酸;血小板活性化因子;マクロファージ刺激因子;スフィンゴシン−1−リン酸;フォルスコリン、クロロフェニルチオ−cAMP、プロスタグランジン−E1、及び8−ブロモ−cAMP等のcAMP上昇剤(Song et al.,J.Cell.Mol.Med.,9(1):59−71(2005));並びに、インスリン及びインスリン増殖因子−1を含む増殖因子(Datta, S.R.,et al.,Cell,91:231−241(1997))、血小板由来増殖因子、並びに、これらの組み合わせ、から成る群より選択される。
【0129】
本方法では、Wnt及びAkt調節剤は、HSCが哺乳類中で造血系列を再構成する能力を保持した状態で、HSC集団を実質的に少なくとも40倍に増大させるいかなるレジメンを用いて投与してもよい。Wnt及びAkt調節剤は、同時に投与されることが好ましい。
【0130】
本発明において、「治療効果量」とは、有益な、又は所望の結果をもたらすのに十分な量である。哺乳類の治療という点において、調節剤の「治療効果量」とは、哺乳類の骨髄疾患等の状態を、治療、処理、緩和、改善、又は安定化するのに十分な量である。治療効果量は、1若しくは2回分以上の用量で投与することができる。
【0131】
治療効果量は、一般に個別の状況に応じて医師が決定するものであり、当業者の技術の範囲内である。適切な用量を決定する場合に、通常いくつかの因子を考慮に入れる。これらの因子としては、患者の年齢、性別、及び体重、治療中である状態、状態の重症度、並びに投与中の薬剤の形態、が挙げられる。
【0132】
効果的な剤形、投与モード、及び用量は、経験的に決定することができ、そのような決定を行うことは、本技術分野の技術の範囲内である。当業者であれば、用量は、投与経路、排泄速度、治療期間の長さ、投与中の他の薬剤の内容、動物の年齢、大きさ、及び種、並びに医学及び獣医学の分野で公知の因子、に応じて異なるであろうことは理解される。一般に、本発明による調節剤の適切な用量は、所望の効果をもたらすのに効果的である最小の用量である調節剤の量であろう。調節剤の効果用量は、2、3、4、5、6、又は7つ以上のサブ用量として、1日を通して適切な間隔で別々に投与してもよい。
【0133】
調節剤、特に本発明のWnt又はAkt調節剤は、経口摂取のための、又は、非経口投与、若しくは、腹腔内、皮下、局所、皮内、吸入、肺内、直腸内、膣内、舌下、筋肉内、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、若しくはリンパ内等のその他の適切ないずれかの方法による投与のための医薬組成物として、所望の及び効果的ないかなる方法で投与してもよい。さらに、本発明の調節剤、特にWnt又はAkt調節剤は、他の治療と組み合わせて投与してもよい。本発明の調節剤、特にWnt又はAkt調節剤は、所望される場合は、カプセル化、又はそれ以外の方法により、胃若しくはその他の分泌物から保護してもよい。
【0134】
本発明の調節剤、特にWnt又はAkt調節剤は、単独で投与することが可能であるが、調節剤を医薬製剤(組成物)として投与することが好ましい。そのような医薬製剤は、通常、1若しくは2種類以上の薬理学的に許容される担体との、並びに、任意に、1若しくは2種類以上のその他の化合物、薬剤、成分、及び/又は物質との混合物として、1若しくは2種類以上の調節剤を活性成分として含む。選択された投与経路に関わらず、本発明の調節剤、特にWnt又はAkt調節剤は、当業者に公知の従来の方法によって、薬理学的に許容される剤形へ製剤される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,イーストン,ペンシルベニア州)、を参照されたい。
【0135】
薬理学的に許容される担体は、本技術分野で公知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,イーストン,ペンシルベニア州)、及びThe National Formulary(American Pharmaceutical Association,ワシントン,D.C.)参照)、糖類(例:ラクトース、スクロース、マンニトール、及びソルビトール)、デンプン、セルロース製剤、リン酸カルシウム(例:リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、及びリン酸水素カルシウム)、クエン酸ナトリウム、水、水溶液(例:生理食塩水、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、乳酸リンゲル注射液)、アルコール(例:エチルアルコール、プロピルアルコール、及びベンジルアルコール)、ポリオール(例:グリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコール)、有機エステル(例:オレイン酸エチル及びトリグリセリド)、生分解性ポリマー(例:ポリラクチド−ポリグリコリド、ポリ(オルソエステル)、及びポリ(無水物))、エラストマーマトリックス、リポソーム、ミクロスフェア、油類(例:トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ひまし、ゴマ、綿実、及び落花生)、ココアバター、ロウ(例:坐薬ロウ)、パラフィン、シリコーン、タルク、シリシレート(silicylate) 等、が挙げられる。本発明の調節剤を含有する医薬組成物に用いられる薬理学的に許容される担体の各々は、その製剤の他の成分と適合し、対象に対して有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。選択された剤形及び意図する投与経路に適する担体は、本技術分野で公知であり、選択された剤形及び投与方法に対して許容される担体は、本技術分野における通常の技術を用いて決定することができる。
【0136】
本発明の調節剤を含む医薬組成物は、任意に、医薬組成物に一般的に用いられる追加の成分及び/又は物質を含んでもよい。このような成分及び物質は、本技術分野で公知であり、(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸等の充填剤又は増量剤(extenders);(2)カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース、及びアラビアゴム等のバインダー;(3)グリセロール等の湿潤剤(humectants);(4)カンテン、炭酸カルシウム、ジャガイモ若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び炭酸ナトリウム等の崩壊剤(disintegrating agents);(5)パラフィン等の溶解遅延剤(solution retarding agents);(6)四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤;(7)セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール等の湿潤剤(wetting agents);(8)カオリン及びベントナイトクレイ等の吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、及びラウリル硫酸ナトリウム等の滑沢剤;(10)エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、カンテン、並びにトラガカントゴム等の懸濁剤;(11)緩衝剤;(12)ラクトース、乳糖、ポリエチレングリコール、動物性及び植物性油脂、油類、ロウ、パラフィン、ココアバター、デンプン、トラガカントゴム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、サリチレート、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミドパウダー等の賦形剤;(13)水又はその他の溶媒等の不活性希釈剤;(14)保存料;(15)界面活性剤;(16)分散剤;(17)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、その他のポリマーマトリックス、生分解性ポリマー、リポソーム、ミクロスフェア、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、及びロウ等の徐放剤若しくは吸収遅延剤;(18)不透明化剤(opacifying agents);(19)アジュバント;(20)湿潤剤;(21)乳化及び懸濁剤;(22)エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル等の可溶化剤並びに乳化剤;(23)クロロフルオロ炭化水素、並びにブタン及びプロパン等の揮発性無置換炭化水素、等の噴射剤;(24)抗酸化剤;(25)糖類及び塩化ナトリウム等、製剤を意図するレシピエントの血液と等浸透圧にする剤;(26)増粘剤;(27)レシチン等のコーティング剤;並びに、(28)甘味料、香味料、着色料、香料、及び保存料、が挙げられる。このような成分又は物質の各々は、その製剤の他の成分と適合し、対象に対して有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。選択された剤形及び意図する投与経路に適する成分及び物質は、本技術分野で公知であり、選択された剤形及び投与方法に対して許容される成分及び物質は、本技術分野における通常の技術を用いて決定することができる。
【0137】
経口投与に適する医薬組成物は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤、水性若しくは非水性液体中の溶液剤又は懸濁液剤、水中油若しくは油中水型液体エマルジョン剤、エリキシール剤若しくはシロップ剤、パステル剤、巨丸剤、舐剤、又はペースト剤の形態であってよい。このような製剤は、例えば、従来のパンコーティング、混合、顆粒化、又は凍結乾燥プロセスの手段等、本技術分野で公知の方法によって作製することができる。
【0138】
経口投与のための固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣剤、粉末剤、顆粒剤等)は、活性成分を、1若しくは2種類以上の薬理学的に許容される担体、並びに、任意に、1若しくは2種類以上の充填剤、増量剤、バインダー、湿潤剤、崩壊剤、溶解遅延剤、吸収促進剤、湿潤剤、吸収剤、滑沢剤、及び/又は着色剤と混合することによって作製することができる。類似の種類の固体組成物を、適切な賦形剤を用いて、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル剤の充填剤として用いることができる。錠剤は、任意に1若しくは2種類以上の補助成分(accessory ingredients)と共に圧縮又は成型することによって作製することができる。圧縮錠剤は、適切なバインダー、滑沢剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤、界面活性若しくは分散剤を用いて作製することができる。成型錠剤は、適切な機械で成型することによって作製することができる。錠剤、並びに糖衣剤、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤等のその他の固体剤形は、任意に、腸溶コーティング及び医薬製剤の分野で公知のその他のコーティング等のコーティング及びシェルによって印字又は作製してもよい。これらは、その中の活性成分が緩やかな又は制御された放出となるように製剤することもできる。これらは、例えば、細菌保持フィルターを通したろ過により、滅菌することができる。これらの組成物は、任意に不透明化剤を含んでもよく、及び、胃腸管の特定の部分でのみ又は優先的に、任意に遅延放出により、活性成分を放出するような組成物であってよい。活性成分は、マイクロカプセル化された形態であってもよい。
【0139】
経口投与のための液体剤形としては、薬理学的に許容されるエマルジョン剤、マイクロエマルジョン剤、溶液剤、懸濁液剤、シロップ剤、及びエリキシール剤が挙げられる。液体剤形は、本技術分野で一般的に用いられる適切な不活性希釈剤を含んでよい。不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化及び懸濁剤、甘味料、香味料、着色料、香料、並びに保存料等のアジュバントを含んでもよい。懸濁液剤は、懸濁剤を含んでよい。
【0140】
直腸内又は膣内投与のための医薬組成物は、坐薬として提供することができ、これは、1若しくは2種類以上の活性成分を、室温では固体であるが体温では液体であり、従って直腸腔又は膣腔内で溶融して活性化合物を放出する、1若しくは2種類以上の適切な非刺激性担体と混合することによって作製することができる。膣内投与に適する医薬組成物には、本技術分野で適切であることが公知である薬理学的に許容される担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、フォーム、又はスプレー製剤も含まれる。
【0141】
局所又は経皮投与のための剤形としては、粉末剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、溶液剤、パッチ剤、ドロップ剤、及び吸入剤が挙げられる。活性化合物は、滅菌条件下にて適切な薬理学的に許容される担体と混合してよい。軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、及びジェル剤は、賦形剤を含んでよい。粉末剤及びスプレー剤は、賦形剤及び噴射剤を含んでよい。
【0142】
非経口投与に適する医薬組成物は、適切な抗酸化剤、緩衝剤、製剤を意図するレシピエントの血液と等浸透圧にする溶質、又は懸濁剤若しくは増粘剤を含んでよい、1若しくは2種類以上の薬理学的に許容される滅菌等張水性若しくは非水性溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルジョン、又は使用直前に滅菌注射溶液若しくは分散液へ再構成することができる滅菌粉末と組み合わせて、1若しくは2種類以上の調節剤を含む。適切な流動性は、例えば、コーティング剤の使用、分散液の場合は必要な粒子サイズの維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。これらの組成物は、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤等の適切なアジュバントを含んでもよい。等張剤(isotonic agents)を含むことが望ましい場合もある。さらに、吸収を遅延させる剤を含有させることにより、注射用医薬剤形(injectable pharmaceutical form)の吸収時間を延長することができる。
【0143】
場合によっては、本発明の調節剤を含有する薬剤の効果を延長するために、皮下又は筋肉内注射からのその吸収を緩やかにすることが望ましい。これは、水溶性が低い結晶性又は非晶性物質の懸濁液を使用することによって達成することができる。
【0144】
ここで、薬剤の吸収速度は、その溶解速度に依存し、そして次に、それは結晶サイズ及び結晶形態に依存し得る。別の選択肢として、非経口投与された薬剤の吸収の遅延は、薬剤を油系媒体中に溶解又は懸濁させることによって達成することができる。注射用デポー剤形は、活性成分のマイクロカプセルマトリックスを生分解性ポリマー中に形成することによって作製することができる。ポリマーに対する活性成分の割合、及び用いた特定のポリマーの性質に応じて、活性成分の放出速度を制御することができる。デポー注射用製剤は、身体組織との適合性を有するリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬剤を包括することによっても作製される。注射用物質は、例えば、細菌保持フィルターを通したろ過によって滅菌することができる。
【0145】
製剤は、アンプル及びバイアルを例とする、ユニットドーズ(unit−dose)又はマルチドーズ(multi−dose)密封容器中に提供することができ、及び、注射の際には水を例とする滅菌液体担体の添加のみを必要とする凍結乾燥条件下で貯蔵することができる。即時注射溶液(extemporaneous injection solutions)及び懸濁液は、上述の滅菌粉末剤、顆粒剤、及び錠剤の種類から作製することができる。
【0146】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物をさらに説明するために提供する。これらの実施例は、単に説明のためのものであり、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0147】
実施例1
構成的活性化β−カテニンと合わせたPTENの欠失が初期の造血前駆細胞の喪失と共にHSCの増大を引き起こす
PTEN/構成的活性化β−カテニン二重変異マウスの誘導
Ptenのホモ接合LoxP導入(fl)アレル(Ptenfl/fl)を有するマウスを、マウスβ−カテニン遺伝子のエクソン3(ここにリン酸化標的セリン/スレオニン残基のすべてが位置する)が2つのloxP配列にはさまれたCtnnb1fl/flマウスと交配させた(Harada,N.,et al.,Embo J,18(21):5931−42 1999.Yilmaz,O.H.,et al.,Nature,441:475−82 2006.Zhang,J.,et al.,Nature,441(7092):518−22 2006)。次に、この交配からの二重ヘテロ接合体マウス(double heterozygous mice)を交配させて、Ptenfl/flCtnnb1fl/+マウス(Ctnnb1は機能獲得型アレルであるため、Ctnnb1に対するヘテロ接合体マウスのみが必要である)を作出した。同時に、Ptenfl/flマウスをScl−Cre+トランスジェニックマウスと交配させ、Scl−Cre+Ptenfl/+マウスを作出した。次に、これらを交配させ、Scl−Cre+Ptenfl/flマウス(「Pten」)を作出した。最後に、Ptenfl/flCtnnb1fl/+マウスをScl−Cre+Ptenfl/flマウスと交配させ、Scl−Cre+Ptenfl/flCtnnb1fl/+マウス(「Pten:Ctnnb1」)を作出した。Scl−CreマウスをCtnnb1fl/flマウスとも交配させて、一重変異Scl−Cre+Ctnnb1fl/+マウス(「Ctnnb1」)を作出した。Scl−Creが欠失したマウス(「Scl−Cre陰性」又は「コントロール」)をコントロールとして用いた。
【0148】
Scl−Creは、LoxPが隣接(LoxPを導入)したPten及びCtnnb1アレルのコンディショナルノックアウトを達成するために用いられるHSC特異的タモキシフェン誘導性Cre−リコンビナーゼである(Gothert,J.R.,et al.,“In vivo fate−tracing studies using the Scl stem cell enhancer: embryonic hematopoietic stem cells significantly contribute to adult hematopoiesis.”Blood,2005.105(7):p.2724−2732)。Pten/構成的活性化β−カテニン二重変異マウスは、トウモロコシ油(Sigma,カタログ番号C8267)0.1mlに溶解したタモキシフェン(Sigma,カタログ番号T5648)(42℃の水浴中、約5分間の超音波処理によって完全に溶解させた)を、第1日に5mg、第2日乃至第5日に2mg用いて5日間毎日腹腔内注射することによって誘導した。
【0149】
骨髄及び脾臓中のHSC分析
タモキシフェンによる誘導後の6週間目にて骨髄及び脾臓を採取し、単一細胞懸濁液とした。溶血緩衝剤(0.16M塩化アンモニウム、Sigma カタログ番号A9434)を用いて赤血球溶解を行った。細胞は、系列マーカーに対しては、Kitと共にCD3、CD4、CD8、B220、IgM、Mac−1、Gr1、及びTer119抗体を、LSK分析に対してはSca−1を、又は前駆細胞分析に対しては、IL−7Rα、CD34、及びCD16/32と共にこれらのマーカーを用いて染色した(Akashi,K.,et al.,A clonogenic common myeloid progenitor that gives rise to all myeloid lineages.Nature 2000.404(6774):p.193−7)。示したように、LT−HSC分析に対してはFlk2を加えた。
【0150】
特に断りのない限り、抗体はすべて以下に示すようにeBiosciences(サンディエゴ、カリフォルニア州)より入手した:フルオレセインイソチオシアネート(FITC)接合CD3抗体(カタログ番号11−0452−85)、FITC接合CD4抗体(カタログ番号11−0042−85)、FITC接合CD8抗体(カタログ番号11−0081−85)、FITC接合B220抗体(カタログ番号11−0452−85)、FITC接合Ter119抗体(カタログ番号11−5921−85)、FITC接合Mac−1抗体(カタログ番号11−0112−85)、FITC接合Gr1抗体(カタログ番号11−5931−85)、FITC接合IgM抗体(カタログ番号11−5790−85)、フィコエリトリン(PE)接合Sca−1抗体(カタログ番号12−5981−83)、アロフィコシアニン(APC)接合Kit抗体(カタログ番号17−1171−83)、ビオチン接合CD135(Flk−2)抗体(カタログ番号13−1351−85)、PE−Cy5接合CD127(IL−7Rα)抗体(カタログ番号15−1271−83)、PE−Cy7接合CD16/32(FcyRII/III)抗体(カタログ番号25−0161−82)、ビオチン接合CD34抗体(カタログ番号13−0341−85)、ストレプトアビジン接合PE−Cy7抗体(カタログ番号25−4317−82)、ストレプトアビジン接合APC−Cy7抗体(カタログ番号10−4317−82)、APC接合Gr1抗体(カタログ番号17−5931−82)、APC接合B220抗体(カタログ番号17−0452−83)、PE接合Mac−1抗体(カタログ番号12−0112−83)、及びPE接合CD3抗体(カタログ番号12−0031−85)。
【0151】
抗体染色細胞は、MoFlo(Dako,Ft.Collins,CO)フローサイトメーター及び/又はCyAn ADP(Dako,Ft.Collins,CO)を用いたFACSによって選別し、Scl−Creネガティブコントロール、及び構成的活性化β−カテニンを有するSclCre+PTEN(Pten:Ctnnb1)二重変異体の骨髄並びに脾臓中の系列陰性、Sca−1+Kit+(LSK)細胞について分析した。
【0152】
Scl−Creネガティブコントロール、及び構成的活性化β−カテニンを有するSclCre+PTEN(Pten:Ctnnb1)二重変異体、及び各々の一重変異体の骨髄(図1A上)並びに脾臓(図1A下)中の系列陰性、Sca−1+Kit+(LSK)細胞のFACS分析によって測定される絶対数(大腿骨+脛骨あたり)をカウントした(Harada,N.,et al.,Embo J,18(21):5931−42 1999.Yilmaz,O.H.,et al.,Nature,441:475−82 2006.Zhang,J.,et al.,Nature,441(7092):518−22 2006)。マウスはタモキシフェン誘導の10日目である。二重変異体骨髄中のLSK細胞の減少及びそれに伴う脾臓中の増大は、骨髄から脾臓への動員を示唆するものである。
【0153】
Scl−Creネガティブコントロール、及び構成的活性化β−カテニンを有するScl−Cre+PTEN(Pten:Ctnnb1)二重変異体、及び各々の一重変異体の骨髄並びに脾臓からのLSK細胞についてFACS分析を行った(FACS分析の代表例については図1B乃至Eを参照)。細胞は、生存系列陰性細胞を予めゲーティングした。
【0154】
誘導後6週間目での、コントロール、Pten、及びPten:Ctnnb1二重変異体の骨髄(図1F)並びに脾臓(図1G)における、大腿骨及び脛骨あたりのLSK細胞の絶対数をカウントした。LSKのパーセントが二重変異体で上昇しているが(図1C参照)、二重変異体からの骨髄の低い細胞性のため、絶対数はコントロールと比較してゆるやかな上昇しか得られていない。
【0155】
誘導後6週間目での、コントロール、Pten、及びPten:Ctnnb1変異体の骨髄におけるFlk−2-(長期再構成(LT)−HSCを示す)であるLSK細胞のパーセントを算出した(図1H乃至I)。Pten:Ctnnb1二重変異体マウスにおけるLT−HSC細胞のパーセントは、コントロール及びPten一重変異体マウスと比較して大きく上昇した。Ctnnb1一重変異体は、この時点ではコントロールと大きく異なっていなかった(データ示さず)。
【0156】
白血病Pten:Ctnnb1変異体骨髄中のCD45のFACS分析を行った。図1Jに示すように、CD45(高)急性転化細胞を左パネルの青色ボックス内に示す。これに対して、コントロール及びCtnnb1一重変異体には芽細胞集団は見られず、一方、誘導後6週間目のPten一重変異体マウス8体のうちの1体で小集団が見られた(データ示さず)。
【0157】
白血病Pten:Ctnnb1変異体マウスの骨髄のLSK分析も行った(図1J、右パネル)。ほんの僅かのLSK集団を残しての芽細胞への転換(下部左)に留意されたい(図1Cと比較して)。
【0158】
コントロール、Pten、及びPten:Ctnnb1変異体の骨髄中の初期造血前駆細胞を、FACSによって選別、分析した(図1K)。CMP;GMP;MEP;及びCLPの絶対数を測定した。
【0159】
まとめると、本データは、HSCにおける、β−カテニンの構成的活性化と組み合わせたPTENの遺伝的欠失による表現型への影響を示すものである。PTENのみの欠失は、骨髄からの動員によって脾臓のHSCの僅かではあるが有意の増大をもたらす一方、二重変異体のHSCは、誘導後の10日目に最大の動員を示している。誘導後の6週間目までには、二重変異体の脾臓HSCのみが劇的に増加する一方、一重変異体は、コントロールとの大きな違いはない。さらに、HSCの劇的な増加は、初期造血前駆細胞の増加を伴っておらず;むしろ、これらの初期前駆細胞は、コントロールとの大きな違いのないCLP以外は、すべて減少している。HSCは、分化が低減された状態での増殖により、一重変異体ではなく、二重変異体の脾臓中に劇的に集積されている。従って、驚くべきことに、そして予想外なことに、β−カテニンの構成的活性化と組み合わせられたPTENの欠失が、幹細胞の自己複製を進行させる一方、いずれの経路もそれ単独では長期的な自己複製を進行させることができない。
【0160】
実施例2
コントロール及び変異体LSK細胞のインビトロ培養
細胞培養
LSK又はLSK Flk2-細胞を、100細胞/ウェル、200μl培地/ウェルにて96ウェルU底組織培養プレートへ選別した。細胞を、37℃、5%O2、5%CO2(残量N2)にて、示した日数の間インキュベートした。1日おきに、培地の全容量の半分(基本培地については、以下の表1参照)を注意深く上部からピペットで取り、新鮮な培地で置換した。
【0161】
【表1】

【0162】
二重変異体HSCは、インビトロ及びインビボで劇的に増大するが、分化することはできない
以下の実験において、表1の基本培地を、20ng/ml rm−IGF−2(R&D Systems,カタログ番号792−MG)及び10ng/ml組変えヒトFGF−1(Affinity BioReagents,カタログ番号ORP16010)によってさらに補足した。
【0163】
コントロール、構成的活性化β−カテニン(Ctnnb1)、Pten変異体、及び二重変異体(Pten:Ctnnb1)マウスから単離した100個のLSK細胞を、10日間培養した(図2A)。コントロールでは、細胞数は播種された100個のLSKから大きく増加しなかった一方、Ctnnb1一重変異体のLSKは生存しなかった。対照的に、Pten一重変異体のLSKは、より大きな増殖を見せたが、より不均一であり、このことは、分化がより著しいことを示している。最も大きく最も均一な増大は、Pten:Ctnnb1二重変異体のLSKから発生した。
【0164】
Pten及びPten:Ctnnb1変異体から単離されたLSK細胞を、培養34日目に分析した(図2B)。野生型コントロールの培養物は、4週間を超えて増大することはなく;Ctnnb1変異体の培養物は、10日間を超えて生存することはなかった。Pten変異体のHSC培養物は、著しい細胞の凝集とより不規則な細胞形態を有して、より不均一に見えた。さらに、分化を示す紡錘形状の接着細胞(矢印)にも留意されたい。対照的に、二重変異体のHSC培養物は、均一な形態を示した。従って、Pten一重変異体のLSKは、生存し増大したが、これよりも非常に均一であるPten:Ctnnb1二重変異体のLSKと比べて、より著しい分化を起こした。
【0165】
培養7週間目にて、Pten及びPten:Ctnnb1のLSK培養物をカウントし、LSK表現型の保持についてFACSによる分析を行った(図2E)。ここでも、野生型コントロール及びCtnnb1培養物は、この長さまでインビトロにて生存することはなかった。Pten一重変異体のLSKの増大が50倍であるのに対して、二重変異体のLSKは>1200倍の増大を起こしている。培養物のLSKの純度は、Pten:Ctnnb1の培養物の方が非常に高く、全生存細胞に対するLSK表現型の保持率が、Pten一重変異体の培養物の約50%と比較して、約85%であった。
【0166】
これらのデータは、全体として、一重変異体又はコントロールよりも、二重変異体のHSCがより長い期間、はるかに高い増大率で培養することができることを示している。
【0167】
実施例3
5週間の培養後におけるPten及びPten:Ctnnb1のLSK細胞の移植分析
以下の実験では、細胞を実施例2で述べたものと同じ方法で培養した。実施例2のように、表1の基本培地を、20ng/ml rm−IGF−2(R&D Systems,792−MG)及び10ng/ml 組換えヒトFGF−1(Affinity BioReagents,ORP16010)で補足した。
【0168】
培養5週間目にて、Pten及びPten:Ctnnb1のLSK培養物を再選別し、各々からの1000個のLSK細胞(CD45.2+)を、2×105個のコンジェニック全骨髄競合細胞と共に、致死量の放射線(10Gy)を照射したCD45.1+レシピエントマウスへ移植した。野生型細胞は5週間の培養で生存しなかったので、別のコントロール群として1000個の新鮮な野生型LSK細胞の移植も行った。移植後4週間目にて、Pten又はPten:Ctnnb1のLSK培養物を移植したマウスの末梢血液分析からはいずれも生着は検出されなかった(データ示さず)。移植後5週間目にて、レシピエントマウスからの骨髄を、ドナー生着(CD45.2+細胞)及びドナーLSK細胞(CD45.2+LSK)について分析した。
【0169】
図2F及び2Gは、1000個の新鮮なLSK細胞(F)又は1000個の培養されたPten:Ctnnb1のLSK細胞(G)を移植したマウスの骨髄からの代表的なドナー生着(左)及びドナーLSK細胞生着(右)を示す。図2H、2I、及び2Jは、移植後5週間目にて図2F及びGで述べるレシピエントマウスの骨髄から単離した、ドナー(CD45.2+)細胞(H)、ドナーLSK細胞(I)、及びドナーLSKの倍数の増加(図2J)の定量を示す。大腿骨あたりのPten:Ctnnb1ドナー細胞の絶対数は、コントロール又はPten一重変異体ドナー細胞よりも少ないが、Pten:Ctnnb1ドナーLSK細胞の数は、コントロール又はPten一重変異体ドナーLSK細胞の数よりも著しく多い。
【0170】
これらのデータは、全体として、一重変異体又はコントロールのHSCよりも、二重変異体のHSCがより長い期間、はるかに高い増大率で培養することができることを示している。しかし、両経路の恒久的な遺伝的改変により、長期間の培養後、インビトロ並びにインビボの両方において自己複製の能力の上昇が引き起こされるが、分化することはできず、従って、移植レシピエントの造血系の再増殖は引き起こされない。このことはさらに、PTEN及びβ−カテニンシグナル伝達経路の、分化を起こさない増殖による幹細胞の増大を協同的に進行させる能力を示している。
【0171】
実施例4
PTEN/Akt及びWnt/β−カテニンシグナル伝達経路に対するエキソビボでの薬理学的な操作が、協同的に機能HSCの増大を進行させる
100個のLSK Flk2-細胞を野生型(C57Bl/6)マウスから選別し、(1)培地、(2)培地+1μM CHIR99021(GSK−3β阻害剤、Dr. Sheng Dingより寄贈)、(3)培地+200nM ビスペルオキソ(ピコリナート)オキソバナジン酸二カリウム塩(BpV(pic)、PTEN阻害剤、Calbiochemより入手可能、カタログ番号203705)、(4)培地+1μM CHIR99021+200nM BpV(pic)、(5)培地+200nM シコニン(やはりPTEN阻害剤、Calbiochemより入手可能、カタログ番号565850)、及び(6)培地+200nM シコニン+1μM CHIR99021、にて培養した(図3B乃至C)。細胞の培養は上述のようにして行った。培養の17日目(図3B、元の倍率100×)、及び23日目(図3C、元の倍率40×)に細胞を調べた。コントロールと比較して、別々に適用された阻害剤ではいずれも、より大きなLSK細胞の増大が見られ、このことは、GSK−3βの阻害が、Ctnnb1変異体のLSKで示されるβ−カテニンの構成的活性化と厳密に同等であるわけではないことを示しており、一方、Pten変異体のLSKと比較して(図2参照)、BpV(pic)では類似の結果が見られた。二重変異体のLSK(図2)と同様に、両方の阻害剤の存在下にて最大の増大が発生した(図3B/C、パネル4)。
【0172】
示した培地条件における培養28日目のLSK Flk2-細胞を調べた(図3D、元の倍率200×)。ここで、いずれの阻害剤も別々に存在する場合は、コントロールと比較して著しい増大が観察されたが;しかし、いずれの場合も、より不定である細胞の大きさ/形態、及び/又は紡錘形状の接着細胞への分化を含む細胞形態の著しい分化/不均一性が観察された(中央のパネル)。対照的に、両方の阻害剤が存在する場合は、均一性を有する増大が達成された(最後のパネル)。
【0173】
培地+BpV(pic)+CHIR99021にて28日間培養したLSK Flk2-細胞のFACS分析(図3E)を行った。細胞は、生存系列陰性細胞を予めゲーティングした。90%を超えるLSKがFlk2陰性を維持した(データ示さず)。従って、LSK Flk2-表現型は、両阻害剤を含む培養物中にて高純度で維持されていた。
【0174】
(1)培地、(2)培地+BpV(pic)、(3)培地+CHIR99021、及び(4)培地+CHIR99021+BpV(pic)にて28日間培養した後のLSK Flk2-細胞の増大の倍数を分析した。各阻害剤を別々に添加することにより、いずれの阻害剤も含まない培地と比較して著しい増大が引き起こされたが、最大の増大(約270倍)は、両方の阻害剤が共に添加された場合に観察された。
【0175】
これらのデータは、全体として、PTEN/Akt及びWnt/β−カテニンシグナル伝達経路を薬理学的に操作することによって、HSCの増大を進行させることが可能であることを示している。両方の経路を同時に操作することによって、最大の増大が達成される。両阻害剤の存在下にて培養した場合、機能短期HSCが最も高い再構成能を示す。非常に長期間の再構成(8週間)は、HSCを両阻害剤の存在下で培養した場合にのみ発生し、いずれかの単一の阻害剤と共に、又はいずれの阻害剤も存在しない状態で培養した場合は発生しない。従って、両経路を同時に薬理学的に操作することにより、機能HSCの最大の増大が得られる。
【0176】
実施例5
エキソビボでの薬理学的な操作後の培養LSK細胞の移植分析
細胞の採取及び再増殖
細胞は、ピペットによる出し入れを数回行った後に新しいチューブへ移すことによって、移植の前にウェルから採取した。次に、さらに培地を添加してこの手順を繰り返すことで残留物を回収した。細胞をフェノールレッドを含有しないDMEM(Invitrogen,カタログ番号31053)で洗浄し、コンジェニックドナーからの適切な数の全骨髄レスキュー細胞(示したように、マウスあたり、200000個のレスキュー細胞+1000個の再選別LSK Flk2-細胞(図3F乃至H)、又は10日間培養した100個のLSK Flk2-細胞の非接着性産物(non−adherent product)(図3I乃至K)に対して)へ添加した。細胞は、致死量の放射線(10グレイ、単一照射)を照射したPtprc(CD45.1+)レシピエントマウスに、尾静脈からインスリンシリンジを用いて注入した。
【0177】
移植後4週間目にて、末梢血液の採取、赤血球溶解、及びeBiosciencesより購入した抗体(FITC接合CD45.2(カタログ番号11−0454−85)及びPE−Cy5接合CD45.1(カタログ番号15−0453−82))を用いてのCD45.2(ドナー)生着と比較したCD45.1(レシピエント)生着の染色、によって再増殖を測定した。レスキュー/競合細胞のみを移植されたマウスをコントロールとして用い、再増殖の検出限界を測定した。多系列再構成は、上述のように、CD3、B220(リンパ系に対して)、及びGr1、Mac−1(骨髄系に対して)によって測定した。
【0178】
28日間培養物の移植分析
(1)培地、(2)培地+BpV(pic)、(3)培地+CHIR99021、及び(4)培地+CHIR99021(1μM)+BpV(pic)(200nM)にて28日間培養した細胞を、LSK Flk2-細胞について再選別した。各培地条件からの1000個のLSK Flk2-細胞(CD45.2+)を、2×105個のコンジェニック全骨髄競合細胞と共に、致死量の放射線(10Gy)を照射したCD45.1+レシピエントマウスへ移植した。移植後4週間目にて、ドナー(図3G)及び多系列(図3H)生着について末梢血液を分析した。図3Gにおいて、各棒グラフは個々のマウスを表している。横方向の点線は、競合細胞のみを移植されたマウスの平均の「生着」、従って、実際の生着の検出可能限界を表している。28日間の培養物からは長期間(4ヶ月)の生着が観察されなかった(データ示さず)。両阻害剤の存在下にて培養したLSK Flk2-細胞を移植した場合、>1%の生着を示すマウスは、CHIR99021のみが存在する場合の4/8、BpV(pic)のみが存在する場合の0/10、及び培地のみの2/6と比較して、8体のうちの6体である。1パーセント若しくはそれを超える生着は、実質的な生着に対する基準限界である(Zhang,C.C.,et al.,Nat Med,12(2):240−5,2006.Zhang,C.C.and H.F.Lodish,Blood,105(11):4314−20,2005)。従って、両阻害剤を合わせて用いることによってLSKの最大の増大が誘発されるが(図2F)、同等数のこれらの培養したLSK Flk2-細胞の移植によっても、両阻害剤で培養した場合は、阻害剤なし又は一方の阻害剤単独の場合と比較して、短期的な生着/機能性の上昇が誘発される。
【0179】
構成的活性化β−カテニン及びPTENの欠失がもたらされる遺伝的改変を施したマウスはすべて白血病を発症し、変異の誘導後8乃至10週間以内に、不良な健康状態のために屠殺せざるを得ないが(図1I、データ示さず)、一方の阻害剤単独又は両阻害剤の組み合わせで培養したLSK Flk2-細胞を移植されたマウスは、移植後16週間まで、白血病発症の兆候は見られなかった。遺伝的二重変異マウスの誘導後8乃至10週間とは異なり、このようなマウスはすべて健康に見え、体重の減少、貧血、食欲減退、嗜眠、背弯姿勢(hunched posture)等を示さなかった。従って、例えば、BpV(pic)及びCHIR99021を用いた両経路の阻害の効果は、可逆的である。
【0180】
10日間培養物の移植分析
(1)培地、(2)培地+BpV(pic)(200nM)、(3)培地+CHIR99021(100nM)、及び(4)培地+CHIR99021(100nM)+BpV(pic)(200nM)において9日間培養した細胞を、LSK Flk2-細胞について再選別し、示した条件下での9日間の培養後のLSK Flk2-細胞の増大の倍数を測定した(図3I)。28日間の培養物からは長期間の生着が観察されなかったことから(図3D乃至H、データ示さず)、増大及び長期間の再増殖の両方の達成が可能かどうかの試験には、LSK Flk2-細胞は9日間のみの培養とした。ここでは、28日間の培養物と比較して類似の傾向が観察されたが(図9Fと比較して)、増大の度合いは、28日間の培養物に対して9日間のみでは著しく低下していた。
【0181】
培地+BpV(pic)(200nM)+CHIR99021(100nM)で9日間培養したLSK Flk2-細胞についてFACS分析を行った(図3J)。細胞は、生存系列陰性細胞を予めゲーティングした。90%を超えるLSKがFlk2陰性を維持している(データ示さず)。ここで、Sca−1及びKitのレベルは、28日間の培養物から示されるSca−1(high)Kit(high)集団と比較して(図1E)、正常であると思われる。
【0182】
10日間の培養物を、2×105個のコンジェニック全骨髄競合細胞と共に、致死量の放射線(10Gy)を照射したCD45.1+レシピエントマウスへ移植した。100個から開始したLSK Flk2-細胞を10日間培養した後の全非接着細胞産物を各マウスに移植した。移植後8週間目にて、ドナー(図3G)及び多系列(図3H)生着について末梢血液を分析した。図に示すように、実際の生着を示したマウスすべてから多系列再構成が観察された(データ示さず)。図3Gにおいて、各棒グラフが個々のマウスを表しており:横方向の点線は、競合細胞のみを移植されたマウスの平均の「生着」、従って、実際の生着の検出可能限界を表している。ここで、両阻害剤の存在下で培養されたLSK Flk2-細胞を移植されたマウス7体のうち3体が、1%若しくはそれを超えるドナー生着を示し、これに比べて、単一の阻害剤又は阻害剤なしのグループでは、いずれのマウスもこの限界値に達しなかった。
【0183】
これらのデータは、全体として、PTEN/Akt及びWnt/β−カテニンシグナル伝達経路を薬理学的に操作することによって、HSCの増大を進行させることが可能であることを示している。両方の経路を同時に操作することによってのみ、最大の増大が達成される。両阻害剤の存在下にて培養した場合、機能短期HSCが、最も高い再構成能を示す。非常に長期間の再構成(8週間)は、HSCを両阻害剤の存在下で培養した場合にのみ発生し、いずれかの単一の阻害剤と共に、又はいずれの阻害剤も存在しない状態で培養した場合は発生しない。従って、両経路を同時に薬理学的に操作することにより、機能HSCの最大の増大が得られる。遺伝的変異動物が白血病を発症したのに対してレシピエント動物は発症しなかったこと(図1)、及び遺伝的変異体からの培養HSCとは異なり、培養されたHSCは分化することが可能であったこと(図2)から、この効果は可逆的である。
【0184】
実施例6
バイオロジック含有培地でのHSCの培養
抗GSK−3β及び抗PTEN抗体は、本技術分野で公知の手順に従って作製(又は、例えば、Sigma、ExactAntigene、及びBiocompareから購入)することができる。
【0185】
100個のLSK Flk2-細胞を野生型(C57Bl/6)マウスから選別し、(1)培地、(2)培地+GSK−3β抗体、(3)培地+抗PTEN抗体、並びに(4)培地+抗GSK−3β及び抗PTEN抗体、にて培養する。細胞は上述のようにして培養する。細胞は、培養の9日目、17日目、及び23日目に分析する。HSCの最大の増大は、両抗体が存在する場合に発生すると考えられる。
【0186】
実施例7
siRNA又はRNAiを含有する培地でのHSCの培養
PTEN siRNA及びGSK−3b siRNAは、本技術分野で公知の手順に従って作製することができる(例えば、Mise−Omata S et al.Biochem Biophys Res Commun.328(4):1034−42 2005、を参照、又はBiocompareから購入可能)。
【0187】
100個のLSK Flk2-細胞を野生型(C57Bl/6)マウスから選別し、(1)培地、(2)培地+GSK−3β siRNA、(3)培地+PTEN siRNA、並びに(4)培地+GSK−3β siRNA及びPTEN siRNA、にて培養する。細胞は上述のようにして培養する。細胞は、培養の9日目、17日目、及び23日目に分析する。HSCの最大の増大は、両siRNAが存在する場合に発生すると考えられる。
【0188】
本願で引用したすべての文書は、その全体が本明細書に列挙されているいかのごとく、参照することで本明細書に組み入れられる。
【0189】
本発明の説明のための態様を本明細書にて説明したが、本発明は説明した態様に限定されるものではないこと、及び、当業者であれば、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、種々のその他の変更又は変形を行うことができることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末梢血液、臍帯血、及び骨髄から成る群より選択される組織から得られた幹細胞の集団を増大させるための方法であって、該方法は、該幹細胞の集団中のPTEN経路及びWnt経路を調節して幹細胞の数を増大させることを含む方法。
【請求項2】
(a)前記PTEN経路の調節が、PTEN経路中の分子の調節をもたらす変異を前記幹細胞へ誘導すること、又は低分子、バイオロジック(biologic)、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択されるPTEN経路中の分子の調節剤と前記幹細胞を接触させること、を含み;並びに、
(b)前記Wnt経路の調節が、Wnt経路中の分子の調節をもたらす変異を前記幹細胞へ誘導すること、又は低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択されるWnt経路中の分子の調節剤と前記幹細胞を接触させること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PTEN及びWnt経路の調節が、前記幹細胞を、PTEN経路の低分子調節剤及びWnt経路の低分子調節剤と接触させること、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記PTEN及びWnt経路の調節が、それぞれ、PTEN及びGSK−3βを下方制御することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
PTEN及びGSK−3βの下方制御が:
(a)低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される可逆的PTEN阻害剤、及び、
(b)低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される可逆的GSK−3β阻害剤
を前記幹細胞と接触させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記可逆的PTEN阻害剤及び前記可逆的GSK−3β阻害剤の両方が低分子である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記可逆的PTEN阻害剤が、シコニン、ビスペルオキソバナジウム化合物、SF−1751(Semafore Pharmaceuticals)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ビスペルオキソバナジウム化合物が、bpV(phen)2、bpV(pic)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記可逆的GSK−3β阻害剤が、ヒメニアルジシン(Hymenialdisine)、フラボピリドール、ケンパウロン(Kenpaullone)、アルステルパウロン(Alsterpaullone)、アザケンパウロン(Azakenpaullone)、インディルビン−30−オキシム、6−ブロモインディルビン−30−オキシム(BIO)、6−ブロモインディルビン−30−アセトキシム、アロイシンA(Aloisine A)、アロイシンB(Aloisine B)、TDZD8、化合物12、CHIR98014、CHIR99021(CT99021)、CT20026、化合物1、SU9516、ARA014418、スタウロスポリン、化合物5a、化合物29、化合物46、GF109203x(ビスインドリルマレイミド I)、Ro318220(ビスインドリルマレイミド IX)、SB216763、SB415286、I5、CGP60474、化合物8b、TWS119、化合物1A、化合物17、リチウム、ベリリウム、亜鉛、低分子GSK−3β阻害剤(Vertex Pharmaceuticals)、NP−12(Neuropharma)、GSK−3β阻害剤(Amphora)、GSK−3β阻害剤(CrystalGenomics)、SAR−502250(Sanofi−Aventis)、3544(Hoffmann−La Roche)、GSK−3β阻害剤(Lundbeck)、TDZD−8(Cancer Center, University of Rochester)、これらの薬理学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせ、から成る群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記PTEN阻害剤が、bpV(pic)であり、前記GSK−3β阻害剤が、CHIR99201である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記幹細胞の増大が、少なくとも40倍の倍率である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
幹細胞の数の増大が、少なくとも80倍の倍率である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
幹細胞の数の増大が、少なくとも150倍の倍率である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
幹細胞の数の増大が、少なくとも250倍の倍率である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記幹細胞が、造血幹細胞(HSC)、血管内皮前駆細胞(EPC)、間葉系幹細胞(MSC)、心筋幹細胞(CSC)、神経幹細胞(NSC)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記幹細胞が、HSCである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
実質的に未分化の幹細胞集団のエキソビボでの増大のための方法であって、該未分化幹細胞集団中のPTEN経路及びWnt経路を調節して、該幹細胞集団の著しい分化を伴うことなく未分化幹細胞の数を増大させることを含む、方法。
【請求項18】
末梢血液、臍帯血、及び骨髄から成る群より選択される組織から得られた造血幹細胞(HSC)集団をエキソビボで増大させるための方法であって、該方法が、該HSC集団中のPTEN経路及びWnt経路を調節して、該HSC集団の多系列分化能は維持したまま、該HSC集団を、続いてのそれを必要としている患者への移植に足る十分な量まで増大させることを含む、方法。
【請求項19】
(a)前記PTEN経路の調節が、前記PTEN経路中の分子の調節をもたらす変異を前記幹細胞集団へ導入すること、又は低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択されるPTEN調節剤と前記幹細胞集団を接触させることを含み、並びに、
(b)前記Wnt経路の調節が、前記Wnt経路中の分子の調節をもたらす変異を前記幹細胞集団へ導入すること、又は低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択されるWnt経路中の分子の調節剤と前記幹細胞集団を接触させることを含む、
請求項17又は18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記PTEN及びWnt経路の調節が、前記幹細胞集団を、前記PTEN経路の低分子調節剤及び前記Wnt経路の低分子調節剤と接触させることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記PTEN及びWnt経路の調節が、それぞれ、PTEN及びGSK−3βを下方制御することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
PTEN及びGSK−3βの下方制御が:
(a)低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される可逆的PTEN阻害剤;及び、
(b)低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される可逆的GSK−3β阻害剤を、
前記幹細胞と接触させることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記可逆的PTEN阻害剤及び前記可逆的GSK−3β阻害剤の両方が、低分子である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記可逆的PTEN阻害剤が、シコニン、ビスペルオキソバナジウム化合物、SF−1751(Semafore Pharmaceuticals)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記ビスペルオキソバナジウム化合物が、bpV(phen)2、bpV(pic)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記可逆的GSK−3β阻害剤が、ヒメニアルジシン、フラボピリドール、ケンパウロン、アルステルパウロン、アザケンパウロン、インディルビン−30−オキシム、6−ブロモインディルビン−30−オキシム(BIO)、6−ブロモインディルビン−30−アセトキシム、アロイシンA、アロイシンB、TDZD8、化合物12、CHIR98014、CHIR99021(CT99021)、CT20026、化合物1、SU9516、ARA014418、スタウロスポリン、化合物5a、化合物29、化合物46、GF109203x(ビスインドリルマレイミド I)、Ro318220(ビスインドリルマレイミド IX)、SB216763、SB415286、I5、CGP60474、化合物8b、TWS119、化合物1A、化合物17、リチウム、ベリリウム、亜鉛、低分子GSK−3β阻害剤(Vertex Pharmaceuticals)、NP−12(Neuropharma)、GSK−3β阻害剤(Amphora)、GSK−3β阻害剤(CrystalGenomics)、SAR−502250(Sanofi−Aventis)、3544(Hoffmann−La Roche)、GSK−3β阻害剤(Lundbeck)、TDZD−8(Cancer Center, University of Rochester)、これらの薬理学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせ、から成る群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記PTEN阻害剤が、bpV(pic)であり、前記GSK−3β阻害剤が、CHIR99201である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記幹細胞が、造血幹細胞(HSC)、血管内皮前駆細胞(EPC)、間葉系幹細胞(MSC)、心筋幹細胞(CSC)、神経幹細胞(NSC)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記幹細胞が、造血幹細胞(HSC)である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記HSCが、臍帯血、末梢血液、及び骨髄から成る群より選択される哺乳類の組織から得られる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
幹細胞の数の増大が、少なくとも40倍、少なくとも80倍、少なくとも150倍、及び少なくとも250倍から成る群より選択される倍率である、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
請求項17に記載のプロセスによって作製された、増大され、実質的に未分化である幹細胞集団。
【請求項33】
請求項18に記載のプロセスによって作製された、増大されたHSC集団。
【請求項34】
造血幹細胞(HSC)をエキソビボにて少なくとも40倍に増大させるための方法であって、該増大されたHSCは、それを必要とする哺乳類患者へ移植した際にHSC系列を再構成する能力を有し、該方法は、HSCの集団を、PTEN阻害剤及びGSK−3β阻害剤を含む適切な培地で培養することを含む、方法。
【請求項35】
前記HSCが、臍帯血、末梢血液、及び骨髄から成る群より選択される哺乳類の組織から得られる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳類がヒトである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記PTEN阻害剤が、bpV(pic)であり、前記GSK−3β阻害剤が、CHIR99201である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記培地が、約100乃至約1000nMの前記PTEN阻害剤を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記培地が、約50nM乃至約500nMの前記GSK−3β阻害剤を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
HSCの数の増大が、少なくとも80倍、少なくとも150倍、及び少なくとも250倍から成る群より選択される倍率である、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
造血幹細胞(HSC)集団を、それを必要としている患者への続いての移植のために増大させるためのキットであって、該キットは、PTEN阻害剤、GSK−3β阻害剤、及び該阻害剤の使用説明書を含む、キット。
【請求項42】
前記PTEN阻害剤が、シコニン、ビスペルオキソバナジウム化合物、SF−1751(Semafore Pharmaceuticals)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択され、前記GSK−3β阻害剤が、ヒメニアルジシン、フラボピリドール、ケンパウロン、アルステルパウロン、アザケンパウロン、インディルビン−30−オキシム、6−ブロモインディルビン−30−オキシム(BIO)、6−ブロモインディルビン−30−アセトキシム、アロイシンA、アロイシンB、TDZD8、化合物12、CHIR98014、CHIR99021(CT99021)、CT20026、化合物1、SU9516、ARA014418、スタウロスポリン、化合物5a、化合物29、化合物46、GF109203x(ビスインドリルマレイミド I)、Ro318220(ビスインドリルマレイミド IX)、SB216763、SB415286、I5、CGP60474、化合物8b、TWS119、化合物1A、化合物17、リチウム、ベリリウム、亜鉛、低分子GSK−3β阻害剤(Vertex Pharmaceuticals)、NP−12(Neuropharma)、GSK−3β阻害剤(Amphora)、GSK−3β阻害剤(CrystalGenomics)、SAR−502250(Sanofi−Aventis)、3544(Hoffmann−La Roche)、GSK−3β阻害剤(Lundbeck)、TDZD−8(Cancer Center, University of Rochester)、これらの薬理学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
前記ビスペルオキソバナジウム化合物が、bpV(phen)2、bpV(pic)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項42に記載のキット。
【請求項44】
前記PTEN阻害剤が、bpV(pic)であり、前記GSK−3β阻害剤が、CHIR99201である、請求項41に記載のキット。
【請求項45】
幹細胞集団のエキソビボでの増大を実施するための培地であって、該培地中に存在する生存幹細胞、並びにPTEN及びGSK−3β阻害剤を、該幹細胞集団の増大を可能とするのに十分な濃度に維持する一方、該幹細胞の多系列分化能を維持するのに適する流体培地を含む培地。
【請求項46】
幹細胞の数の増大が、少なくとも40倍、少なくとも80倍、少なくとも150倍、及び少なくとも250倍から成る群より選択される倍率である、請求項45に記載の培地。
【請求項47】
造血幹細胞(HSC)を、それを必要とする患者に投与するための方法であって、該方法は:
(a)適切な培地中、PTEN経路中の分子の調節剤及びWnt経路中の分子の調節剤の存在下にて、HSC集団を含むサンプルを、該サンプル中のHSCの数が該患者への移植に十分な数まで増大するのに十分な時間培養すること;
(b)該PTEN及びWnt経路調節剤を培養物から除去すること;
(c)該HSCを該患者へ投与すること
を含む、方法。
【請求項48】
前記HSCが、臍帯血、末梢血液、及び骨髄から成る群より選択される組織から得られる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記PTEN経路調節剤及び前記Wnt経路調節剤が、それぞれ、PTEN及びGSK−3β阻害剤である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記PTEN阻害剤が、低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される可逆的PTEN阻害剤であり、前記GSK−3β阻害剤が、低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される可逆的GSK−3β阻害剤である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記可逆的PTEN阻害剤及び前記可逆的GSK−3β阻害剤が、いずれも低分子である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記可逆的PTEN阻害剤が、シコニン、ビスペルオキソバナジウム化合物、SF−1751(Semafore Pharmaceuticals)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ビスペルオキソバナジウム化合物が、bpV(phen)2、bpV(pic)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記可逆的GSK−3β阻害剤が、ヒメニアルジシン、フラボピリドール、ケンパウロン、アルステルパウロン、アザケンパウロン、インディルビン−30−オキシム、6−ブロモインディルビン−30−オキシム(BIO)、6−ブロモインディルビン−30−アセトキシム、アロイシンA、アロイシンB、TDZD8、化合物12、CHIR98014、CHIR99021(CT99021)、CT20026、化合物1、SU9516、ARA014418、スタウロスポリン、化合物5a、化合物29、化合物46、GF109203x(ビスインドリルマレイミド I)、Ro318220(ビスインドリルマレイミド IX)、SB216763、SB415286、I5、CGP60474、化合物8b、TWS119、化合物1A、化合物17、リチウム、ベリリウム、亜鉛、低分子GSK−3β阻害剤(Vertex Pharmaceuticals)、NP−12(Neuropharma)、GSK−3β阻害剤(Amphora)、GSK−3β阻害剤(CrystalGenomics)、SAR−502250(Sanofi−Aventis)、3544(Hoffmann−La Roche)、GSK−3β阻害剤(Lundbeck)、TDZD−8(Cancer Center, University of Rochester)、これらの薬理学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記PTEN阻害剤が、bpV(pic)であり、前記GSK−3β阻害剤が、CHIR99201である、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
骨髄の再構成を、それを必要とする患者に施すための方法であって:
(a)適切な培地中、PTEN経路中の分子の調節剤及びWnt経路中の分子の調節剤の存在下にて、HSC集団を含むサンプルを、該サンプル中のHSCの数が該患者への移植に十分な数まで増大するのに十分な時間培養すること;
(b)該PTEN及びWnt経路調節剤を該培養物から除去すること;
(c)該HSCを該患者へ投与すること
を含む、方法。
【請求項57】
前記HSCが、臍帯血、末梢血液、及び骨髄から成る群より選択される組織から得られる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記PTEN経路調節剤及び前記Wnt経路調節剤が、それぞれ、PTEN及びGSK−3β阻害剤である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記PTEN阻害剤が、低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される可逆的PTEN阻害剤であり、前記GSK−3β阻害剤が、低分子、バイオロジック、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される可逆的GSK−3β阻害剤である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記可逆的PTEN阻害剤及び前記可逆的GSK−3β阻害剤が、いずれも低分子である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記可逆的PTEN阻害剤が、シコニン、ビスペルオキソバナジウム化合物、SF−1751(Semafore Pharmaceuticals)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記ビスペルオキソバナジウム化合物が、bpV(phen)2、bpV(pic)、これらの医薬塩、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記可逆的GSK−3β阻害剤が、ヒメニアルジシン、フラボピリドール、ケンパウロン、アルステルパウロン、アザケンパウロン、インディルビン−30−オキシム、6−ブロモインディルビン−30−オキシム(BIO)、6−ブロモインディルビン−30−アセトキシム、アロイシンA、アロイシンB、TDZD8、化合物12、CHIR98014、CHIR99021(CT99021)、CT20026、化合物1、SU9516、ARA014418、スタウロスポリン、化合物5a、化合物29、化合物46、GF109203x(ビスインドリルマレイミド I)、Ro318220(ビスインドリルマレイミド IX)、SB216763、SB415286、I5、CGP60474、化合物8b、TWS119、化合物1A、化合物17、リチウム、ベリリウム、亜鉛、低分子GSK−3β阻害剤(Vertex Pharmaceuticals)、NP−12(Neuropharma)、GSK−3β阻害剤(Amphora)、GSK−3β阻害剤(CrystalGenomics)、SAR−502250(Sanofi−Aventis)、3544(Hoffmann−La Roche)、GSK−3β阻害剤(Lundbeck)、TDZD−8(Cancer Center, University of Rochester)、これらの薬理学的に許容される塩、及びこれらの組み合わせ、から成る群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記PTEN阻害剤が、bpV(pic)であり、前記GSK−3β阻害剤が、CHIR99201である、請求項58に記載の方法。
【請求項65】
造血幹細胞(HSC)の集団を増大させるための方法であって、HSC集団を少なくとも40倍に増大させる結果を得るのに十分な条件下にて該HSCの集団を培養することを含み、ここで、該増大されたHSCの集団は、それを必要とする哺乳類への移植に適している方法。
【請求項66】
前記HSC集団の増大が、少なくとも80倍である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記HSC集団の増大が、少なくとも150倍である、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記HSC集団の増大が、少なくとも200倍である、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記HSC集団の増大が、少なくとも250倍である、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
前記哺乳類が、ヒトである、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
前記ヒトが、骨髄移植、末梢血液移植、及び臍帯血移植から成る群より選択される移植を必要とする、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
骨髄移植、末梢血液移植、及び臍帯血移植から成る群より選択される移植を必要とする患者を治療するための方法であって、請求項65に記載の方法によって得られるHSCの集団を該患者へ投与することを含む、方法。
【請求項73】
造血幹細胞(HSC)の集団を増大させるための方法であって:
(a)HSC集団を含有する組織サンプルを哺乳類から得ること;
(b)インビトロにて、該サンプルからの該HSC集団を増大させること
を含み、ここで:
(i)該HSC集団は少なくとも40倍に増大し;及び、
(ii)該増大したHSC集団は、レシピエントへの移植後少なくとも4週間、造血系列を再構成する能力を有する、方法。
【請求項74】
前記HSC集団が、少なくとも80倍に増大する、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記HSC集団が、少なくとも150倍に増大する、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記HSC集団が、少なくとも200倍に増大する、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記HSC集団が、少なくとも250倍に増大する、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
前記哺乳類が、ヒトである、請求項73に記載の方法。
【請求項79】
前記ヒトが、骨髄移植を必要とする、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記組織サンプルが、臍帯血、末梢血液、及び骨髄から成る群より選択される組織から得られる、請求項73に記載の方法。
【請求項81】
造血幹細胞系列の再構成を、それを必要とするレシピエントに施すための方法であって、該方法は:
(a)HSC集団を含有する組織サンプルを哺乳類から得る工程;
(b)インビトロにて、該サンプルからの該HSC集団を増大させる工程であって、ここで:
(i)該HSC集団は、少なくとも40倍に増大し;及び、
(ii)該増大したHSC集団は、それを必要とするレシピエントへの移植後少なくとも4週間、造血系列を再構成する能力を有する、工程;
(c)該増大したHSC集団を、それを必要とするレシピエントへ移植する工程
を含む、方法。
【請求項82】
前記HSC集団が、少なくとも80倍に増大する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記HSC集団が、少なくとも150倍に増大する、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記HSC集団が、少なくとも200倍に増大する、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
前記HSC集団が、少なくとも250倍に増大する、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
前記哺乳類が、ヒトである、請求項81に記載の方法。
【請求項87】
前記ヒトが、骨髄移植を必要とする、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記組織サンプルが、臍帯血、末梢血液、及び骨髄から成る群より選択される組織から得られる、請求項81に記載の方法。
【請求項89】
前記サンプルが、自己若しくは同種サンプル源からのものである、請求項81に記載の方法。
【請求項90】
前記サンプルが、自己サンプル源からのものである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記増大したHSC集団が、CD34-、CD34+/CD38-/low/Thy−1+/CD90+/Kit-/lo/Lin-/CD133+VEGFR2+、CD150+/CD48-/CD244-、CD150-/CD48-/CD244+、CD150-/CD48+/CD244+、及びこれらの組み合わせ、から成る群より選択される表現型を有するHSCを含む、請求項73又は81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記増大したHSC集団が、それを必要とするレシピエントへの移植後少なくとも8週間、造血系列を再構成する能力を有する、請求項81に記載の方法。
【請求項93】
造血幹細胞集団の増大を、そのような増大を必要とする哺乳類へ施すための方法であって、Wnt及びAktの調節剤の治療効果量を、該HSCが該哺乳類中で造血系列を再構成する能力を保持した状態で該HSC集団を少なくとも40倍に増大させるのに十分な時間、該哺乳類へ投与することを含む、方法。
【請求項94】
前記Wntの調節剤が、Wntポリペプチド、QS11、2−アミノ−4−[3,4−(メチレンジオキシ)ベンジル−アミノ]−6−(3−メトキシフェニル)ピリミジン、デオキシコール酸、及びこれらの組み合わせ、から成る群より選択される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記Aktの調節剤が、Ro−31−8220、ニコチン、カルバコール、4−(メチルニトロソアミノ)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン(NNK)、アドレノメデュリン(AM)、リゾホスファチジン酸、血小板活性化因子、マクロファージ刺激因子、スフィンゴシン−1−リン酸、フォルスコリン、クロロフェニルチオ−cAMP、プロスタグランジン−E1、8−ブロモ−cAMP、インスリン、インスリン増殖因子−1、血小板由来増殖因子、及びこれらの組み合わせ、から成る群より選択される、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
前記Wnt及びAkt調節剤が同時に投与される、請求項93に記載の方法。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図1−3】
image rotate

【図1−4】
image rotate

【図1−5】
image rotate

【図1−6】
image rotate

【図1−7】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図2−3】
image rotate

【図2−4】
image rotate

【図2−5】
image rotate

【図2−6】
image rotate

【図2−7】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図3−3】
image rotate

【図3−4】
image rotate

【図3−5】
image rotate

【図3−6】
image rotate

【図3−7】
image rotate

【図3−8】
image rotate

【図3−9】
image rotate

【図3−10】
image rotate

【図3−11】
image rotate


【公表番号】特表2010−524499(P2010−524499A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506243(P2010−506243)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/005230
【国際公開番号】WO2008/133904
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(508297654)ストワーズ インスティテュート フォー メディカル リサーチ (2)
【Fターム(参考)】