説明

広域またはグローバルディファレンシャルGPSシステムのためのクロック補正値を生成するための方法

WADGPSネットワークのための衛星クロック補正値を生成するための方法は、他の実質的な誤差成分を除去した後に、衛星クロック補正値を計算する。電離層屈折影響により引き起こされる誤差は、二周波数GPS測定値を使用して、基準局で取得されるGPS測定値から取り除かれる。マルチパス雑音は、キャリア−位相測定値を用いるGPS擬似距離コード測定値の平滑化により取り除かれる。対流圏屈折影響は、モデル化によって大部分は取り除くことができ、所望される場合、クロック補正値の計算に含まれる小さな確率論的な調整を使用することにより改善できる。前記誤差要因を取り除いた後に、個別基準局について衛星クロック補正値が計算される。そして、衛星を見ることができる基準局に関して衛星クロック補正値の平均または加重平均を取ることにより、複数の衛星のそれぞれに平均クロック補正値が形成される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してグローバルポジショニングシステム(GPS)を使用する測位システム及びナビゲーションシステムに関し、詳細には広域ネットワークまたはグローバルディファレンシャルGPS(DGPS)ネットワークのための衛星クロック補正値(satellite clock corrections)を計算する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GPSは、地球上にある目標物の位置を突き止めるために宇宙にある衛星を使用する。GPSを用いると、衛星からの信号はGPS受信機に到達し、GPS受信機の位置を決定するために使用される。現在では、ロックされたGPS衛星信号を伴う各相関器チャネル(correlator channel with a locked GPS satellite signal)に対応する二種類のGPS測定値が、民間のGPS受信機用に使用できる。前記二種類のGPS測定値は、擬似距離と、それぞれ周波数が1.5754GHzと1.2276GHz、あるいは波長が0.1903mと0.2442mである2つのキャリア信号L1とL2の積分キャリア位相(integrated carrier phase)である。いくつかの受信機は、2つの連続する積分キャリア位相測定値の差異にすぎないドップラー測定値を出力する。擬似距離測定値(つまりコード測定値)は、すべての種類のGPS受信機が観測可能とすることができる基本的なGPSである。それは、キャリア信号に変調されるC/AコードまたはPコードを活用する。測定は、関連コードが衛星から受信機まで移動するのに要する見かけの時間、つまりコード化された信号が衛星のクロックに従って衛星を出発した時間からそれが受信機のクロックに従って受信機に到達する時間を差し引いた時間を記録する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
キャリア位相測定値は、コード化された信号の再構築されたキャリアを、それが受信機に達したところで積分することにより得られる。したがって、キャリア位相測定値は、信号が衛星クロックに従って衛星を出発した時間と、それが受信機クロックに従って受信機に達した時間によって求められるような遷移時間差(transit time difference)の測定値でもある。しかしながら、通常、受信機が信号のキャリア位相の追跡を開始するときに衛星と受信機の間の遷移におけるサイクル全体の初期数は正確にわからないため、遷移時間差は、数キャリアサイクルという期間、間違っている可能性がある。つまりキャリア位相測定値には、全サイクルの曖昧性がある。キャリア周波数はC/AコードまたはPコードの周波数よりはるかに高く、それらのパルスはC/AコードまたはPコードの周波数のパルスよりはるかに接近しているため、キャリア位相測定値はコード測定値よりはるかに正確となる場合がある。加えて、コード測定値は、直接信号と反射信号との干渉により、キャリア位相測定値よりはるかに影響を受ける。この干渉によってもコード測定値はキャリア位相測定値より正確でなくなる。
【0004】
GPS測定値が使用できる場合、GPS受信機と衛星の間の距離(range or distance)は、信号の移動時間を光の速度で乗算することにより計算される。一般的に受信機クロックは、測定された距離に共通の偏りを引き起こす大きな時間誤差を有するため、これらの距離は、通常、擬似距離(偽の距離)と呼ばれる。受信機クロック誤差からのこの共通の偏りは、通常のナビゲーション計算の一部として、受信機の位置座標とともに解決される。天体暦誤差(ephemeris error)、衛星クロックタイミング誤差、大気効果、受信機雑音、及びマルチパスエラーを含む多様な他の要因が、計算される距離の誤差または雑音につながることがある。これらの誤差を排除する、あるいは削減するために、GPS応用例では微分演算が使用され、これらの誤差原因から生じる擬似距離測定値及び/またはキャリア位相測定値の雑音要因を相殺する。ディファレンシャルGPS(DGPS)動作は、通常、ベース基準GPS受信機、ユーザGPS受信機、及びユーザと基準受信機間の通信機構を必要とする。基準受信機は既知の場所に配置され、前記既知の位置は、前記誤差要因のいくつかまたはすべてと関連付けられる補正値を生成するために使用される。補正値がユーザ受信機に供給されると、ユーザ受信機はその計算位置を適切に補正するために、補正値を使用する。補正値は、基準サイトで決定される基準受信機位置に対する補正値の形、あるいは特定のGPS衛星クロック及び/または軌道に対する補正値の形を取ることができる。基準受信機位置に対する補正値は、それらが最適精度のためにユーザ受信機と基準受信機が同じ衛星を観測することを必要とするために適応性がない。
【0005】
ディファレンシャルGPS(DGPS)の根本的な概念は、GPS測定値に固有の誤差の空間的及び時間的な相関を利用するということである。擬似距離またはキャリア位相測定値に対する偏りとして現れるGPS衛星クロックタイミング誤差(クロック誤差)は、基準受信機とユーザ受信機の間で完全に相関している。したがって、DPGSシステムはクロック誤差を完全に取り除くことができる。このクロック誤差は、通常、ユーザ位置に対して約数メートルの誤差を提供する。
【0006】
大気効果は、GPS信号が電離層の荷電粒子を通過してから対流圏の水蒸気を通過することに起因する。GPS信号に対する電離層の影響は、通常、電離層屈折モデルによってモデル化され、モデルの誤差は、計算された距離における誤差の一因となる。これらの誤差は、基準受信機とユーザ受信機間の短い距離では、この2つの受信機の間で強力に相関するが、この相関は長い距離では減少する。
【0007】
対流圏でのGPS信号の屈折は、概して、対流圏影響の90パーセントから95パーセントを取り除くために、モデル化できる。残留対流圏誤差(residual tropospheric errors)は、ユーザが長い距離に渡ってローミングしないときには、DGPSを使用することによって削減できる。ユーザが基準受信機から数十キロ離れると、対流圏屈折誤差の相関は通常消えてしまうためである。したがって、DGPS自体を使用しても、残留対流圏屈折誤差の有意義な削減は生じない。基準受信機における非相関性の誤差が、計算されたユーザ位置に追加の誤差を取り込むことによって、状況をなおさらに悪化させることもある。
【0008】
天体暦または衛星軌道(satellite orbital)の誤差は、軌道に沿った誤差ベクトル、交差する誤差ベクトル、及び放射状の誤差ベクトルを有するものとしてモデル化できる。衛星軌道の誤差は、DGPSシステムを使用することによって削減できる。しかしながら、基準受信機とユーザ受信機の間の分離が拡大するにつれて衛星軌道誤差の相関が徐々に削減するために、誤差の削減はいくぶん限られる。相関は、大陸の距離を越える場合には(over continental distances)大きく減少する。
【0009】
受信機雑音及びマルチパス(反射信号)の影響は、基準受信機とユーザ受信機の間では概して相関していない。これらの誤差の影響は、DGPSシステムを使用することにより拡大されることもある。
【0010】
広域用途でのDGPSシステムの不正確を克服するために、多様な広域DGPS(WADGPS)技法が開発された。WADGPSは、計算上の中心つまりハブと通信する複数の基準局(reference station)のネットワークを含む。誤差補正値は、基準局の既知の場所及びそれらにより取得される測定値に基づいて、ハブで計算される。計算された誤差補正値は、次に衛星、電話、または無線などの通信リンクを介してユーザに送信される。
【0011】
いくつかのケースでは、補正値よりも、測定値及び基準受信機の位置などの未処理データ(raw data)がユーザ受信機に供給される。ユーザ受信機は、ある特定の基準局からデータを選択する、あるいは複数の基準局からのデータの加重組み合わせから補正値を形成することができる。
【0012】
複数の基準局を使用することによって、WADGPSは、誤差補正値のさらに正確な推定値を提供する。しかしながら、複数の基準局を使用すると、誤差補正値の計算はさらに複雑化し、さまざまな誤差要因が互いにエイリアスし、GPS測定値に固有な相関を破壊することがある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、広域ディファレンシャルGPS(WADGPS)ネットワークのための衛星クロック補正値を生成する方法を含む。本発明のある実施例では、WADGPSネットワークは、それぞれが二周波数GPS受信機を有する複数の基準局を含み、それらは、L1キャリア信号とL2キャリア信号両方での擬似距離コード測定値とキャリア位相測定値を含む、GPS測定値の取得を容易にする。前記二周波数測定値を用いると、基準局で取得されるGPS測定値から電離層屈折影響を完全に取り除くことができる。あるいは代わりに、キャリア−位相測定値の一次結合を、対応するコード測定値の電離層屈折影響に適合させるために形成できる。電離層屈折影響、またはコード測定値に対する電離層屈折影響と対応キャリア位相測定値に対する影響の間の差異を取り除くと、対応キャリア位相測定値によるコード測定値の無制限な平滑化が可能になる。これは、10分以上など特定の期間平滑化した後に、マルチパス雑音の実質上の排除を可能にする。はるかにゆっくりと変化するため、衛星軌道誤差は、WADGPSネットワークがグローバルDGPSネットワークであるときに、別の計算プロセスにおいて削除することができるか、あるいはWADGPSネットワークが大陸規模の地域用であるときには、単に無視できるかのどちらかである。対流圏屈折影響は、モデル化によって大部分は取り除くことができ、所望される場合にはクロック補正値の計算に含まれる小さな確率論的な調整を使用することによって、改善できる。前記誤差要因を取り除いた後に、衛星クロック補正値は個々の基準局について計算される。平均クロック補正値は、衛星を見ることができる基準局に関して衛星クロック補正値の平均または加重平均を取ることによって、複数の衛星のそれぞれについてその後形成される。
【0014】
本発明の方法は、他のすべての実質的な誤差成分を取り除いた後に衛星クロック補正値を計算することから、前記方法は、しばしば多くの異なるパラメータについて同時に解くためにカルマンフィルタを利用する従来の方法に比較すると、著しく簡略且つ非常に頑丈である場合がある。これらの従来の方法の不利な点は、多様な誤差の原因が互いの中にエイリアスし、衛星クロック誤差に固有の完全な相関を破壊することがあるという点である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による広域またはグローバルDGPS(WADGPS)システム100を描く。図1に図示されるように、WADGPSネットワークは、複数の衛星110と、それぞれがGPS受信機122を有する複数の基準局120と、前記衛星110と前記基準局120の間の通信リンク(不図示)を含む。前記基準局120は、広域DGPSシステムの場合、大陸などの広域101全体で、あるいはグローバルDGPSネットワークの場合、地球全体で、既知の場所に配置される。WADGPSネットワーク100は、それぞれが測位及び/またはナビゲーションのためにユーザGPS受信機142を有する一人または複数のユーザ140によって活用されてよい。
【0016】
WADGPSシステム100は、基準局の間で共用されるメインコンピュータシステム(図1では不図示)をさらに含む。メインコンピュータシステムは、基準局の1つに、あるいは領域101内のまたは近くの別の場所に位置できる。図2Aは、メインコンピュータシステムとして使用できる例示的なコンピュータシステム200のブロック図を示す。図2Aを参照すると、コンピュータシステム200は、インターネット及び/または多様な他の通信リンクを介して基準局120に結合されるマイクロプロセッサベースのコンピュータである場合がある。コンピュータシステム200は、中央演算処理装置(CPU)202と、メモリ210と、多数の入力ポート204と出力ポート206と、(オプションとして)1本または複数の通信バス209によって互いに結合されるユーザインタフェース208とを含む。メモリ210は、高速ランダムアクセスメモリを含んでよく、1台または複数台の磁気ディスク記憶装置などの不揮発性大量記憶装置を含んでよい。メモリ210は、中央演算処理装置202から遠隔に位置する大量記憶装置を含んでよい。メモリ210は、好ましくはオペレーティングシステム212と、データベース214と、さらに詳しく後述されるように、本発明の実施形態で衛星クロック補正値を生成する方法を実現するためのプロシジャ218を含むGPSアプリケーションプロシジャ216とを記憶する。メモリ210に記憶されるオペレーティングシステム212とアプリケーションプログラムとプロシジャ216と218は、コンピュータシステム200のCPU202による実行用である。メモリ210は、好ましくは、本明細書に説明される他のデータ構造だけではなく、後述されるような、個々の基準局と関連付けられる平滑化された屈折補正済み(refraction corrected)コード測定値及び平均受信機時間誤差を含む、GPSアプリケーションプロシジャ216と218の実行中に使用されるデータ構造も記憶する。
【0017】
オペレーティングシステム212は、エンベッディッド(embedded)オペレーティングシステム、UNIX、Solaris、またはWindows95、98、NT 4.0、2000、またはXPであってよく、ただしこれらに限定されない。さらに一般的には、オペレーティングシステム212は、データを通信する、処理する、アクセスする、及び記憶するための、及び他の基本的な動作を実行するためのプロシジャと命令とを有する。
【0018】
入力ポート204は、基準局120からデータを受信するためであり、出力ポート206は、データ及び/または計算結果を出力するために使用される。データと計算結果はユーザインタフェース208の表示装置に示されてもよい。本発明のある実施例では、基準局で取得されるGPS測定値データは、さらに詳細に後述されるように、プロシジャ218に従ってコンピュータシステム200による処理のために、コンピュータシステム200の入力ポート204に送信される。計算結果はコンピュータシステム200の出力ポート206を通して出力され、基準局220中のアップロード局に冗長な通信リンクを介して送信される。アップロード局は、ユーザ240への放送のために補正データを衛星210の1つまたは複数に送信する。
【0019】
コンピュータシステム200は、多数のGPS受信機からの未処理のGPS測定データを処理する必要があるため、通常、非常に高速なプロセッサを含む。大陸WADGPSシステムは、コンピュータシステム200にデータを送る通常約3台から10台の基準受信機を有し、グローバルWADGPSシステムは、約20台から100台の基準受信機を有する。
【0020】
いくつかの応用例では、基準局120のそれぞれが、GPS受信機122に結合されるコンピュータシステム124を含んでよい。図2Bに示されているように、基準局120でGPS受信機122に結合されるコンピュータシステム124は、中央演算処理装置(CPU)126と、メモリ128と、入力ポート134と出力ポート136と、(オプションとして)1本または複数の通信バス129によって互いに結合されるユーザインタフェース138とを含む。メモリ128は、高速ランダムアクセスメモリを含んでよく、1つまたは複数の磁気ディスク記憶装置などの不揮発性大量記憶装置を含んでよい。メモリ128は、好ましくはオペレーティングシステム131と、データベース133と、GPSアプリケーションプロシジャ135とを記憶する。GPSアプリケーションプロシジャは、さらに詳しく後述されるように、本発明の実施形態の平滑化された屈折補正済みコード測定値を形成する方法を実現するためのプロシジャ137を含んでよい。メモリ128に記憶されるオペレーティングシステム131とアプリケーションプログラムとプロシジャ135と137は、コンピュータシステム124のCPUによる実行用である。メモリ128は、好ましくは、本明細書で説明される他のデータ構造だけではなく、GPS擬似距離とキャリア位相測定値139を含む、GPSアプリケーションプロシジャ135と137の実行中に使用されるデータ構造も記憶する。
【0021】
入力ポート134は、GPS受信機122からデータを受信するためであり、出力ポート136は、WADGPSシステムのメインコンピュータシステム200にデータ及び/または計算結果を出力するために使用される。データと計算結果は、ユーザインタフェース138の表示装置にも表示されてよい。本発明の1つの実施形態では、コンピュータシステム124のCPU126とメモリ128と入力ポート134はGPS受信機122と一体化され、図2Bの破線によって示されるような、単一のハウジング内の単一のデバイスになる。しかしながら、このような一体化は、本発明の方法を実行するために必須ではない。
【0022】
本発明の1つの実施形態では、衛星クロック補正値は、1つまたは複数の基準局と関連付けられる平滑化された屈折補正済みコード測定値を使用して計算される。前記1つまたは複数の基準局のそれぞれについて、基準局におけるGPS受信機によって取得される擬似距離測定値とキャリア位相測定値から、それぞれの測定値エポック(measurement epoch)で平滑化された屈折補正済みコード測定値が形成される。多くのGPS受信機は、L1またはL2周波数でC/Aコード測定とPコード測定の両方を行い、C/Aコード測定またはPコード測定のどちらもL1またはL2コード測定値として使用できる。しかしながら、前記2つの測定の間には小さな偏りが存在しているため、基準受信機において前記2つのどちらが使用されても、ユーザGPS受信機の同等なプロセスのために同じものが使用されなければならない。以下の説明では、基準局で可視のそれぞれの衛星について、L1周波数とL2周波数がそれぞれfとfと表され、測定エポックでのL1周波数とL2周波数の未処理擬似距離コード測定値はそれぞれPとPと表され、同じ測定エポックでのL1周波数とL2周波数での未処理キャリア位相測定値はφ1とφ2と表される。
【0023】
図3Aは、本発明のある実施形態に従って基準局で取得されるGPSデータから平滑化された屈折補正済みのコード測定値を取得するための方法300を示している。図3Aに示されるように、方法300は、基準局で可視の各衛星の未処理コード測定値及びキャリア位相測定値が、屈折補正済みコード測定値及びキャリア位相測定値を求めるために、最初に屈折補正されるステップ310を含む。PRCと表される屈折補正済みのコード測定値は、以下に示すように形成される。

(1)
RCと表される屈折補正済みのキャリア位相測定値は、以下のように同様に形成される。

(2)
ここで、LとLは、それぞれL1信号とL2信号の波長でスケーリングされたキャリア位相測定値であり、それぞれが、スケーリングされたキャリア位相測定値を対応コード測定値と同じ値に近づけるために加算されている近似全サイクル曖昧値(approximate whole-cycle ambiguity value)を含む。

(3)

(4)
ここで、NとNの全サイクル値は、スケーリングされたキャリア位相測定値と対応コード測定値の間の差異を小さく保つために、対応コード測定値の1つのキャリア波長内にある値を示すべく、キャリア位相追跡(carrier-phase tracking)の開始時に初期化されている。式(2)の形から、屈折補正済みのキャリア位相測定値が、約0.1070メートルである、f周波数とf周波数の合計によって決定される波長とともに、全サイクル曖昧性を含むことが留意される。
【0024】
電離層影響が、式(1)から(4)に従ってステップ310で実行される演算によってコード測定値とキャリア位相測定値の両方から取り除かれているため、そして、擬似距離測定値とキャリア位相測定値に対する衛星クロック誤差と軌道誤差の影響が同じであるため、ステップ310で得られたPRCとLRCの値は、キャリア位相測定値に関連付けられる存在し得る(possible)全サイクル曖昧性とコード測定値におけるさらに高いマルチパス雑音を除き、ほぼ同一でなければならない。これにより、キャリア位相の小さい測定雑音に近づくが、関連付けられた全サイクル曖昧性はない、キャリア位相平滑化済みコード測定値の形成が可能になる。
【0025】
このようにして、方法300は、屈折補正済みのコード測定値が、対応する屈折補正済みのキャリア位相測定値によって平滑化されるステップ320をさらに含む。図3Bに示されるような本発明の一実施形態では、ステップ320は、2つのサブステップ、サブステップ332とサブステップ324で実行される。サブステップ322では、基準局で可視の衛星ごとに一連の測定エポックのそれぞれでの屈折補正済みコード測定値と屈折補正済みキャリア位相測定値との間のオフセットが計算され、拡大する平均(expanding average)が取られ、以下のように平滑化されたオフセットOを形成する。

(5)
ここで、iは現在の測定エポックを示すために使用され、ηの値は平均の最大値が達成されるまでiに等しい。例えば、キャリア位相測定値がコード測定値の雑音の100分の1だけを有すると仮定される場合、「η」の値は二乗された100、つまり10000に限定されるであろう。
【0026】
サブステップ324では、平滑化された屈折補正済みのコード測定値Sが、現在の測定エポックの屈折補正済みキャリア位相測定値を、平滑化されたオフセットに加算することによって得られ、その結果

(6)
となる。
【0027】
代替実施例では、前述されたようにステップ320を実行するための2ステッププロセスを単一ステップに結合でき、その結果、

(7)
であり、ここで


である。この単一ステッププロセスは、屈折補正済みのキャリア位相測定値の変化を使用して測定値を先に予測し、次にその予測とコード測定値の差異を平均化する。しかしながら、2ステッププロセスは、オフセット値の普遍性を監視することができ、所望される場合には、値の閾値変化を誤った測定値を削除するために使用できるという点で優位点を有している。
【0028】
図3Cは、本発明の代替実施形態に従って平滑化された屈折補正済みのコード測定値をGPSデータから取得するための別の方法350を示している。図3Cに図示されるように、方法350は、コード測定値PとPのそれぞれに対する電離層屈折影響に適合(match)させるために、各衛星のLとLの一次結合が形成されるステップ360を含む。Pコード測定値に対する電離層屈折影響に適合するキャリア−位相の結合はMと表され、以下のように形成される。

(8)
コード測定値に対する電離層屈折影響に適合するキャリア−位相の結合はMと表され、以下のように形成される。

(9)
【0029】
方法350は、さらにステップ370を含む。ステップ370では、平滑化されたコード測定値を、以下のように式(5)と(6)を連立させた様式で(in a fashion parallel)、

(10)

(11)
あるいは代わりに、以下のように式(7)を連立させた様式で

(12)
形成できる。
ここで


である。ここでは下付き文字jは、j=1または2となるように2つの異なる周波数での測定値を表すために使用される。
【0030】
方法350は、最終的な平滑化された屈折補正済みのコード測定値が、以下の式を介して得られるステップ380をさらに含む。

(13)
【0031】
式(7)を使用して第1の方法から得られる平滑化された屈折補正済みのコード測定の値は、式(13)を使用して第2の方法から得られる平滑化された屈折補正済みのコード測定の値に数学的に同等である。しかしながら、屈折補正プロセスは雑音を拡大させるため、式(5)の屈折補正済みのオフセットの変化のために使用される任意の編集閾値(edit threshold)は、式(10)の対応する編集閾値より大きくなければならない。
【0032】
衛星クロック補正値を計算するために、平滑化された屈折補正済みのコード測定値は、以下のとおりに、対応するGPS測定値の残余(residual)を計算するために使用される。

(14)
ここで、Rは残余を表し、下付き文字kと上付き文字lは、残余Rが形成されるそれぞれ特定の基準局と特定の衛星を表し、Tは基準局kと衛星lの間の理論上の距離を表す。現在の測定エポックを表す上付き文字iは、式(14)及び以下の説明のすべてにおいて削除される。理論上の距離Tは、基準局の既知の位置を使用して従来通りに計算されてよい。理論上の距離の計算は、対流圏屈折影響のための理論上のモデルに基づいて計算される対流圏屈折影響の調整または補正を含んでよい。理論上の距離は、衛星軌道誤差の調整または補正も含んでよい。これらの補正は別個のまたはオフラインのモジュールで計算されてよい。それらはクロック補正値の計算ほど頻繁ではなく計算されてもよい。
【0033】
本発明のある実施形態では、衛星クロック補正値を生成するために、WADGPSネットワークの基準局のいくつかまたはすべてを含む基準局のグループの中からマスタ局が選択される。前記マスタ基準局は、基準局のグループの中でそのクロックが最も正確であるという判定に基づいて、あるいはそれが基準局のグループの中の最大数の衛星から使用可能な測定値を有するという判断に基づいて、あるいはこれらの要因または他の要因のなんらかの組み合わされた関数に基づいて、あるいは任意でも、選択することができる。マスタ基準局以外の基準局は、以下でローカル基準局と呼ばれる。
【0034】
図4Aは、本発明のある実施形態に従ってWADGPSネットワーク200のための衛星クロック補正値を生成するための方法400を示している。図4Aに示されるように、方法400は、衛星クロック補正値が、マスタ基準局のために現在の測定エポックiにおいて計算されるステップ410を含む。本発明の一実施形態では、マスタ基準局のために、マスタ基準局において可視の衛星のマスタクロック補正値が、以下のとおりに計算される。

(15)
ここで、下付き文字0はマスタ基準局を表すために使用され、rは計算される衛星lのマスタクロック補正値を表し、Mはマスタ平均受信機クロック誤差を表す。前記式において、及び以下の式のいくつかにおいて、衛星クロック補正値は、測定された距離に対する直接的な補正値としての用途のために距離で表されていることに留意する。マスタ平均受信機クロック誤差は以下のとおりに計算される。

(16)
ここで、合計はマスタ基準局における可視の衛星のグループに関してであり、λは衛星のグループの1つを表し、mは衛星グループ内の衛星の数を表す。
【0035】
方法400は、衛星クロック補正値が、それぞれがマスタ基準局と少なくとも1つの共通した衛星を有する1つまたは複数のローカル基準局について、現在の測定エポックiにおいて計算されるステップ420をさらに含む。基準局は、別の基準局と共通の衛星を有する。あるいは、前述したように現在の測定エポックにおいてある衛星のための平滑化された屈折補正済みコード測定値を形成するために、前記基準局の両方が前記衛星から取得可能なGPS測定値を有するときは、前記衛星は前記基準局の両方に共通である。
【0036】
ローカル基準局の場合、ローカル基準局と主基準局に共通な衛星のローカルクロック補正値は、以下のとおりに計算される。

(17)
ここで、rは衛星lのローカル基準局kのローカルクロック補正値を表し、Mはローカル平均受信機クロック誤差を表す。ローカル平均受信機クロック誤差は、以下のとおりに計算される。

(18)
ここで、合計はマスタ基準局とローカル基準局kの両方で可視の衛星のグループに関し、λはこの衛星グループの1つを表し、mはこの衛星グループの中の衛星の数を表し、


は、ローカル基準局kのローカル平均クロック誤差とマスタ平均受信機クロック誤差の間の差異を表す。式(18)の合計は、マスタ基準局と基準局kに共通な衛星に関してであり、mはこのような衛星の数を表す。いったん式(18)でマスタ基準局とローカル基準局に共通な衛星を使用してMが得られると、ローカル基準局で可視であり、マスタ基準局には可視ではない他の衛星のローカルクロック補正値が、それらの衛星について式(17)を計算することにより計算できる。
【0037】
ステップ420において個々の基準局の衛星クロック補正値を取得した後で、方法400は、マスタ基準局で可視であるか、あるいはマスタ基準局と1つまたは複数の共通した衛星を有するローカル基準局のいくつかまたはすべてで可視であるかのどちらかの衛星ごとに、平均クロック補正値が計算されるステップ430をさらに含む。本発明の1つの実施形態では、平均クロック補正値は、以下の式により表されるように、ステップ420においてある衛星について計算されるクロック補正値を平均することによって、ステップ430において前記衛星について計算される。

(19)
ここで、合計は衛星lが可視である基準局に関してであり、pはこのような基準局の数である。
【0038】
図4Bは、本発明の代替実施形態によるWADGPSネットワーク200のために衛星クロック補正値を生成するための方法450を示している。方法450では、衛星クロック補正値は反復して計算される。各反復で、ローカル基準局のサブグループのそれぞれについて式(17)と(18)が計算される。式(19)の平均は、マスタ基準局とローカル基準局のサブグループに関してである。ローカル基準局のサブグループは最初は基準局を含まず、各反復でローカル基準局のサブグループにローカル基準局が追加される。
【0039】
図4Bに示されるように、方法450は、式(15)と(16)に従ってマスタ基準局のために衛星クロック補正値が計算されるステップ455を含む。次に、方法450は、第1のローカル基準局が、ローカル基準局のサブグループに追加されるステップ460に進む。第1のローカル基準局は、好ましくはマスタ基準局と最も多い数の共通した衛星を有するローカル基準局である。次に、方法450は、式(15)から(18)を使用して第1のローカル基準局のために衛星クロック補正値が計算されるステップ470に進み、そして、式(19)を使用してマスタ基準局と第1のローカル基準局とについて計算される衛星クロック補正値を平均することによって平均クロック補正値が計算されるステップ480に進む。
【0040】
マスタ基準局と共通した衛星を有する他のローカル基準局がある場合は、方法450はステップ460に戻り、これらの他のローカル基準局の1つをローカル基準局のサブグループに追加する。一般的には、マスタ基準局と共通した衛星の次に最大の数を共有する基準局が選択される。それから、方法450は、式(18)の中の項rが過去の反復においてステップ470の式(19)を使用して計算されるcによって置換される点を除き、式(17)から(19)を使用して新しいサブグループについてステップ470と480における計算を実行するために進む。このようにして、マスタ基準局と共通の衛星を共有するローカル基準局のすべてがローカル基準局のサブグループの中に含まれ、このローカル基準局のサブグループを考慮して平均クロック補正値が計算されるまで反復は続行する。
【0041】
式(17)から(19)の反復計算は、グローバルDGPSネットワークに特に有効である。マスタ基準サイトと、衛星クロック補正値が計算されている特定の基準サイトとの両方で可視である共通の衛星がごく少ないときに、グローバルDGPSネットワークで問題が発生する場合があるからである。このことによって、式(19)がしっかり定義されない、あるいは全く定義されないこともある(poorly defined or even undefined)。この問題は、方法450の反復プロセスで克服できる。
【0042】
衛星クロック補正値を生成するための方法400または450は、簡略且つ効果的である。本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、計算される衛星クロック補正値の精度を改善するために、前記方法に対して多様な修正を加えることができる。例えば、方法400または450は、個々の基準局について計算される衛星クロック補正値の加重結合(weighted combination)が、平均的なクロック補正値を形成するための式(19)の右辺で使用されるように修整できる。個々の基準局は、基準局における可視の衛星の角度位置、又は、各基準局におけるGPS受信機の見かけの雑音レベルを反映するように、式(19)において加重できる。
【0043】
方法400または450は、平均クロック誤差Mが従来の平滑化フィルタを使用することによってある測定エポックから次の測定エポックにゆっくりとだけ変化するように、修正することもできる。平均クロック誤差Mが大きな離散ジャンプ分変化することを許される場合、それはクロック補正値のステップ状の変化を引き起こす可能性があり、それはユーザ受信機クロック解の中に(into the user receiver clock solution)エイリアスする。これは、ユーザGPS受信機が受信機クロック解でのステップ状の変化を可能としないナビゲーションアルゴリズムを利用する場合、ナビゲーション誤差を引き起こすことがある。
【0044】
方法400または450は、図4Cに示されているように、方法400のステップ420と430の間にステップ425を、あるいは図4Dに示されるように、方法450のステップ470と480の間にステップ475を付け加えることによって、修正することもできる。ステップ425または475では、個々の基準局のためのクロック補正値の計算された値が互いに比較され、ある基準局のためのクロック補正値が他の基準局のためのクロック補正値と大きく異なることが判明すると、ステップ430または470で平均クロック補正値が計算される前に、それを編集する、あるいは置換値で代替することができる。
【0045】
方法400または450は、式の中の合計の対象となる(over which the summations in the Equations are taken)衛星の仰角に従って、式(16)の右辺にあるRの加重結合、及び/または式(18)の右辺にある(R−r)の加重結合を形成することによって、修正されてもよい。また、式(16)の中の1つの衛星のための(R−r)の値が他の衛星について得られる値と大きく異なる場合には、それを編集する、あるいは適切な置換値で代替することができる。
【0046】
式(18)の右辺での合計に入る(R−r)の値の広がりを評価することも、対流圏屈折影響を計算するために使用されるモデルをサイト単位で調整するために使用できる。小さな確率論的な調整により、局所的な気象情報に対する計算済みのクロック補正値の反応を改善することができるであろう。これは、異なる基準サイトにおける(R−r)の間の差異を最小限に抑えるように頭上の対流圏の屈折係数を調整する手順により達成できる。このようなプロセスでは、低い仰角の衛星からのデータは、より高く加重されてよい。それらは、対流圏の屈折影響に、より敏感だからである。
【0047】
前述されたような方法300、350、400及び450は、GPS擬似距離測定値とキャリア位相測定値を供給する基準局を備えたWADGPSシステムのメインコンピュータシステム200によって実施されてよい。代わりに、平滑化された屈折補正済みのコード測定値及び残余は、基準局にあるGPS受信機に結合されるコンピュータシステム124によって個々の基準局のそれぞれで計算されてよい。計算結果は、次に本発明の実施形態による更なる処理のために、メインコンピュータシステム200に送信される。
【0048】
このようにして、本発明は、WADGPSネットワークのためのGPS衛星クロック補正値を生成するための簡略且つ有効な方法を提供する。電離層屈折影響は二周波数測定値を使用することにより取り除かれるため、計算された衛星クロック補正値はそれらによって影響を受けない。衛星軌道誤差ははるかにゆっくりと変化するため、WADGPSがグローバルDGPSネットワークであるときには別個の計算プロセスで取り除くことができるか、あるいはWADGPSネットワークが大陸サイズの地域用であるときには単に無視できるかのどちらかである。対流圏屈折影響は大部分がモデル化によって取り除くことができ、所望される場合にはクロック補正値計算とともに含まれる小さな確率論的な調整を使用することによって改善できる。マルチパス影響は、対応するキャリア−位相測定値を用いて平滑化することによってコード測定値から取り除かれる。これらの誤差要因を取り除いた後に、本方法は、大陸サイズのネットワークまたはグローバルGPSネットワークのどちらかについて、簡略であるが、非常に正確な衛星クロック補正値の計算を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態によるWADGPSネットワークのブロック図である。
【図2A】本発明の一実施形態によるWADGPSネットワーク内のメインコンピュータシステムの例としての役割を果たすコンピュータシステムのブロック図である。
【図2B】本発明の一実施形態によるWADGPSネットワーク内の基準局におけるコンピュータシステムのブロック図である。
【図3A】本発明の一実施形態による平滑化された屈折補正済みコード測定値を形成するための方法を描くフローチャートである。
【図3B】本発明の一実施形態による屈折補正済みのコード測定値を平滑化するための方法を描くフローチャートである。
【図3C】本発明の代替実施形態による屈折補正済みのコード測定値を平滑化するための方法を描くフローチャートである。
【図4A】本発明の一実施形態によるWADGPSネットワークのための衛星クロック補正値を計算するための方法を描くフローチャートである。
【図4B】本発明の代替実施形態によるWADGPSネットワークのための衛星クロック補正値を計算するための方法を描くフローチャートである。
【図4C】本発明の別の代替実施形態によるWADGPSネットワークのための衛星クロック補正値を計算するための方法を描くフローチャートである。
【図4D】本発明のさらに別の代替実施形態によるWADGPSネットワークのための衛星クロック補正値を計算するための方法を描くフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の衛星から二周波数擬似距離コード測定値及びキャリア−位相測定値を求めるステップと、
前記複数の衛星のそれぞれについて、前記衛星からの前記二周波数擬似距離コード測定値及びキャリア−位相測定値に基づいて平滑化された屈折補正済みコード測定値を形成するステップと、
前記平滑化された屈折補正済みコード測定値に基づいて前記複数の衛星のクロック補正値を計算するステップとを含む、GPS衛星クロック補正値を生成するための方法。
【請求項2】
衛星ごとに前記平滑化された屈折補正済みコード測定値を形成するステップが、
現在の測定エポックの前の、及び現在の測定エポックを含む一連の測定エポックのそれぞれについて、前記衛星からの前記二周波数擬似距離コード測定値に基づく屈折補正済みコード測定値及び前記衛星からの前記二周波数キャリア−位相測定値に基づく屈折補正済みキャリア−位相測定値を形成するステップと、
前記屈折補正済みキャリア−位相測定値を用いて前記屈折補正済みコード測定値を平滑化し、前記現在の測定エポックにおいて平滑化された屈折補正済みコード測定値を求めるステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記屈折補正済みコード測定値を平滑化するステップが、
前記屈折補正済みコード測定値と前記屈折補正済みキャリア−位相測定値の間の平滑化されたオフセットを計算するステップと、
前記平滑化されたオフセットに前記現在の測定エポックでの前記屈折補正済みキャリア−位相測定値を加算することによって前記平滑化された屈折補正済みコード測定値を形成するステップとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記屈折補正済みコード測定値を平滑化するステップが、
2つの連続測定エポックの間の前記キャリア−位相測定値の変化を使用して前記平滑化された屈折補正済みコード測定値の予測を形成するステップと、
前記一連の測定エポックでの予測と前記屈折補正済みコード測定値の間の差異の拡大する平均を計算するステップとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の衛星のそれぞれからの前記二周波数擬似距離コード測定値及びキャリア−位相測定値が、2つのキャリア信号周波数のそれぞれに対応する、一連の測定エポックでの擬似距離コード測定値とキャリア−位相測定値を含み、
衛星ごとに前記平滑化された屈折補正済みコード測定値を形成するステップが、
前記一連の測定エポックのそれぞれについて、及び各キャリア信号周波数について、前記キャリア−位相測定値の一次結合が、前記衛星からの前記キャリア信号周波数の前記擬似コード測定値に対する電離層屈折エフェクトと適合するように、前記衛星からの前記2つのキャリア信号周波数に対応する前記キャリア−位相測定値の一次結合を形成するステップと、
前記キャリア信号周波数の前記擬似距離コード測定値を前記二周波数キャリア−位相測定値の適合する一次結合で平滑化することによって、キャリア信号周波数ごとに平滑化されたコード測定値を形成するステップと、
前記2つのキャリア信号周波数の平滑化されたコード測定値に基づいて前記平滑化された屈折補正済みコード測定値を計算するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記二周波数擬似コード測定値及びキャリア−位相測定値が、既知の場所を有する基準GPS受信機で求められ、
前記クロック補正値を計算するステップが、
前記基準GPS受信機と前記衛星の間の理論上の距離を、前記衛星のための前記平滑化された屈折補正済みコード測定値から差し引くことにより、前記複数の衛星のそれぞれの残余を計算するステップと、
前記複数の衛星についての前記残余の一次結合として平均受信機クロック誤差を形成するステップと、
前記衛星について計算された前記残余から前記平均受信機クロック誤差を差し引くことによって、前記複数の衛星のそれぞれについてクロック補正を計算するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記理論上の距離が対流圏影響のための調整を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記理論上の距離が衛星軌道誤差のための調整を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記一次結合の前記残余が、前記基準GPS受信機によって観測される前記複数の衛星の仰角に従って加重される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
マスタ基準局と複数のローカル基準局を含む複数の基準局を有する広域GPSネットワークにおいて複数の衛星の間の中の第1の衛星のための衛星クロック補正値を生成するための方法であって、
前記複数の基準局のいくつかまたはすべてにおいて取得されるGPS測定値に対応する平滑化された屈折補正済みコード測定値を求めるステップと、
前記マスタ基準局で可視の衛星のグループのそれぞれについて、前記マスタ基準局で取得されるGPS測定値に対応する前記平滑化された屈折補正済みコード測定値を使用して、前記マスタ基準局と関連付けられるクロック補正値を計算するステップと、
前記第1の衛星が可視であるローカル基準局のグループのそれぞれについて、前記ローカル基準局で取得されるGPS測定値に対応する前記平滑化された屈折補正済みコード測定値と、前記マスタ基準局と前記ローカル基準局の両方で可視の衛星について前記マスタ基準局と関連付けられる前記クロック補正値とを使用して、前記第1の衛星についての前記ローカル基準局と関連付けられるクロック補正値を計算するステップとと、
前記第1の衛星のために前記クロック補正値の一次結合を形成するステップであって、前記一次結合の前記クロック補正値が、前記第1の衛星が可視である異なる基準局と関連付けられているステップと、を含む方法。
【請求項11】
ローカル基準局の新しいグループを形成するために、ローカル基準局の前記グループに前記第1の衛星が可視であるローカル基準局を追加するステップと、
ローカル基準局の前記新しいグループのそれぞれについて、前記ローカル基準局で取得される前記GPS測定値に対応する前記平滑化された屈折補正済みコード測定値、及び前記一次結合を使用して、前記第1の衛星のための前記ローカル基準局と関連付けられるクロック補正値を計算するステップと、
前記第1の衛星のための前記クロック補正値の新しい一次結合を形成するステップであって、前記新しい一次結合が、前記第1の衛星が可視である異なる基準局と関連付けられているステップとをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記一次結合にある前記クロック補正値が、前記異なる基準局に前記衛星が可視である仰角に従って加重される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の基準局のいくつかまたはすべてで取得されるGPS測定値に対応する平滑化された屈折補正済みコード測定値を求めるステップが、
前記複数の基準局の前記いくつかまたはすべて中の各基準局について、及び前記基準局で可視の各衛星について、
一連の測定エポックで前記基準局で前記衛星から受信される信号に基づいて、それぞれ二周波数GPS擬似距離測定値及びキャリア−位相測定値を使用して屈折補正済みコード測定値及び屈折補正済みキャリア−位相測定値を形成するステップと、
平滑化された屈折補正済みのコード測定値を形成するために前記屈折補正済みのキャリア−位相測定値で前記屈折補正済みコード測定値を平滑化するステップとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の基準局のいくつかまたはすべてで取得されるGPS測定値に対応する平滑化された屈折補正済みコード測定値を求めるステップが、
前記複数の基準局の前記いくつかまたはすべて中の間の各基準局について、及び前記基準局で可視の各衛星について、
一連の測定エポックのそれぞれで、及び各キャリア信号周波数について、一次結合が対応擬似距離コード測定値に対する電離層屈折エフェクトと適合するように、二周波数キャリア−位相測定値の前記一次結合を形成するステップと、
前記二周波数キャリア−位相測定値の前記対応する一次結合で、前記キャリア信号周波数の前記擬似距離コード測定値を平滑化することによって、各キャリア信号周波数について平滑化されたコード測定値を計算するステップと、
平滑化された屈折補正済みコード測定値を形成するために前記平滑化されたコード測定値を結合するステップとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記マスタ基準局で可視の衛星について前記マスタ基準局と関連付けられる前記クロック補正値を計算するステップが、
前記マスタ基準局で可視の各衛星についてマスタ残余を求めるステップであって、前記マスタ残余が、前記マスタ基準局で取得されるGPS測定値に対応する平滑化された屈折補正済みコード測定値と、前記衛星と前記マスタ基準局の間の理論上の距離との間の差異を表す、ステップと、
前記マスタ残余に基づいてマスタ平均受信機クロック誤差を計算するステップと、
前記マスタ残余から前記マスタ平均受信機クロック誤差を差し引くステップとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記マスタ平均受信機クロック誤差を計算するステップが、前記基準局で可視の前記衛星に関して前記マスタ残余の平均を形成するステップとを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記マスタ平均受信機クロック誤差を計算するステップが、前記マスタ基準局によって観測される前記衛星の仰角によって加重される前記マスタ残余の一次結合を形成するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ローカル基準局と関連付けられる前記クロック補正値を計算するステップが、
前記マスタ基準局と前記ローカル基準局で可視である各衛星について、前記ローカル基準局で取得されるGPS測定値に対応する平滑化された屈折補正済みコード測定値と、前記衛星と前記ローカル基準局の間の理論上の距離との間の差異を表すローカル残余を求めるステップと、
前記ローカル残余と前記マスタ残余に基づいてローカル平均受信機クロック誤差を計算するステップと、
前記ローカル残余から前記ローカル平均受信機クロック誤差を差し引くステップとを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
基準局と、前記基準局に可視の衛星との間の前記理論上の距離が、前記衛星について前記基準局で得られたGPS測定値に対する前記対流圏屈折エフェクトのための調整を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
基準局と、前記基準局に可視の衛星との間の前記理論上の距離が、前記衛星について前記基準局で得られたGPS測定値の前記衛星軌道誤差のための調整を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ローカル平均受信機クロック誤差を計算するステップが、
前記ローカル基準局と前記マスタ基準局に共通な各衛星について、前記マスタ残余からの前記ローカル残余のオフセットを計算するステップと、
前記ローカル基準局と前記マスタ基準局に共通な前記衛星について前記オフセットの一次結合を形成するステップとを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記一次結合の前記オフセットが、前記ローカル基準局によって観察される前記衛星の仰角で加重される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
GPS受信機によって衛星から取得される二周波数GPS擬似距離測定値及びキャリア−位相測定値に基づいて平滑化された屈折補正済みコード測定値を形成するための方法であって、
現在の測定エポックの前の及び現在の測定エポックを含む一連の測定エポックのそれぞれについて、前記衛星からの前記二周波数擬似距離コード測定値に基づいた屈折補正済みコード測定値と、前記衛星からの前記二周波数キャリア−位相測定値に基づいた屈折補正済みキャリア−位相測定値とを形成するステップと、
前記現在の測定エポックにおける平滑化された屈折補正済みコード測定値を求めるために、前記屈折補正済みキャリア−位相測定値で前記屈折補正済みコード測定値を平滑化するステップと、を含む方法。
【請求項24】
前記屈折補正済みコード測定値を平滑化するステップが、
前記屈折補正済みコード測定値と前記屈折補正済みキャリア−位相測定値との間の平滑化されたオフセットを計算するステップと、
前記現在の測定エポックのための前記屈折補正済みキャリア−位相測定値を前記平滑化されたオフセットに加算することによって、前記平滑化された屈折補正済みコード測定値を形成するステップとを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記屈折補正済みコード測定値を平滑化するステップが、
2つの連続測定エポックの間のキャリア−位相測定値の変化を使用して前記平滑化された屈折補正済みコード測定値の予測を形成するステップと、
一連の測定エポックで前記予測と前記屈折補正済みコード測定値の差異の拡大する平均を計算するステップとを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
GPS受信機で衛星から取得される二周波数GPS擬似距離測定値及びキャリア−位相測定値に基づいて平滑化された屈折補正済みコード測定値を形成するための方法であって、
一連の測定エポックで、及び各キャリア信号周波数について、前記対応する擬似距離コード測定値に前記電離層屈折エフェクトを適合させるために前記二周波数キャリア−位相測定値の一次結合を形成するステップと、
前記二周波数キャリア−位相測定値の前記適合する一次結合で、前記擬似距離コード測定値を平滑化することによって、各キャリア信号周波数について平滑化されたコード測定値を形成するステップと、
前記平滑化された屈折補正済みコード測定値を形成するために前記平滑化されたコード測定値を結合するステップと、を含む方法。
【請求項27】
実行時にデジタル処理システムにGPS衛星クロック補正値の生成のための方法を実行させるコンピュータ実行可能プログラム命令を備えるコンピュータ読み取り可能媒体であって、前記方法が、
複数の衛星から二周波数擬似距離コード測定値及びキャリア−位相測定値を求めるステップと、
複数の衛星のそれぞれついて、前記衛星からの前記二周波数擬似距離コード測定値及びキャリア−位相測定値に基づく平滑化された屈折補正済みコードを形成するステップと、
前記平滑化された屈折補正済みコード測定値に基づいて前記複数の衛星についてクロック補正値を計算するステップと、を含むコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項28】
マスタ基準局、及び複数のローカル基準局を含む複数の基準局を有する広域GPSネットワーク内の複数の衛星の中の第1の衛星の衛星クロック補正値の生成のための方法をデジタル処理システムに実行させるコンピュータ実行可能プログラム命令を備える、コンピュータ読み取り可能媒体であって、前記方法が、
前記複数の基準局のいくつかまたはすべてで取得されるGPS測定値に対応する平滑化された屈折補正済みコード測定値を求めるステップと、
前記マスタ基準局で可視の衛星のグループのそれぞれについて、前記マスタ基準局で取得されるGPS測定値に対応する前記平滑化された屈折補正済みコード測定値を使用して、前記マスタ基準局と関連付けられるクロック補正値を計算するステップと、
前記第1の衛星が可視であるローカル基準局のグループのそれぞれについて、前記ローカル基準局で取得されるGPS測定値に対応する前記平滑化された屈折補正済みコード測定値と、前記マスタ基準局と前記ローカル基準局の両方で可視の衛星について前記マスタ基準局と関連付けられる前記クロック補正値とを使用して、前記第1の衛星のための前記ローカル基準局と関連付けられるクロック補正値を計算するステップと、
前記第1の衛星について前記クロック補正値の一次結合を形成するステップであって、前記一次結合にある前記クロック補正値が前記第1の衛星が可視である異なる基準局と関連付けられる、ステップと、を含むコンピュータ読み取り可能媒体。


【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate


【公表番号】特表2007−500845(P2007−500845A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521909(P2006−521909)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/023461
【国際公開番号】WO2005/043186
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
2.WINDOWS
【出願人】(504278123)ナヴコム テクノロジー インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】