説明

広帯域アンテナ

【課題】 電気的特性を改善した広帯域アンテナを提供する。
【解決手段】 無給電素子11の外径φが約80mm〜約110mmとされ、これにより2GHz近辺の利得が改善される。外径φを小さくすることにより悪化するVSWRは、無給電素子11をベース13に短絡する短絡ピン11cをメアンダ状に形成することにより改善されるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域を利用した高速無線通信システム等に用いる広帯域アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
広帯域を利用した高速通信システムとしてUWB(Ultra.Wide.Band)が存在する。UWBは3.1GHz〜10.6GHzの帯域幅を利用し、データを広い周波数帯に拡散して送受信している。このシステムは、消費電力が少ない、妨害電波に強い、高速通信が可能等の特徴を有しており、各分野において注目されている。また、2GHz近辺を使用する通信システムとしては、携帯電話、VICS(Vehicle Information and Communication System)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)などがある。
【0003】
従来、UWB等の通信システムで使用される図36に示す広帯域のアンテナが知られている。
図36に示す従来の広帯域アンテナ100は、金属製のベース113と、ベース113上に所定の距離を隔てて配置されたリング状の無給電素子111と、ベース113上のほぼ中央に配置された円錐状の給電素子110から構成されている。給電素子110と無給電素子111は固定用部材112により固着されている。給電素子110は、ベース113から無給電素子111に向かって次第に外径が拡大する対数曲線の回転体の構造を有している。給電素子110は下端が給電点とされ、給電点にはベース113の裏側から給電されている。固定用部材112の中央に形成されている挿通孔内に、給電素子110が嵌挿されて固着されている。また、固定用部材112は放射状に形成された複数の放射状部を有しており、この放射状部の上面にほぼ円形の無給電素子111が載置されて固着されている。この無給電素子111の外縁から延伸して等間隔に配置された4つの短絡ピン111cが形成されており、短絡ピン111cは外縁において直角に折曲されて、その下端がベース113の上面に短絡されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−183348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の広帯域アンテナ100の無給電素子111の直径は約120mmとされている。従来の広帯域アンテナ100の利得の周波数特性が、図10に[従来サイズφ120mm]として示されており、この利得の周波数特性を参照すると2GHz近辺において利得が劣化していることが分かる。また、従来の広帯域アンテナ100のVSWR(電圧定在波比)の周波数特性が、図11に[従来形状φ120mm]として示されており、この周波数特性を参照すると2.3GHz近辺および約3.5〜約4.3GHzにおいてVSWRが劣化していることが分かる。このため、従来の広帯域アンテナ100は、2GHz帯を使用する通信システムのアンテナとして使用することが困難になるという問題点があった。
そこで、本発明は電気的特性を改善した広帯域アンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の広帯域アンテナは、導電性のベース上に設けられた上方に向かって外径が大きくなる円錐状の給電素子と、前記ベース上に所定間隔をもって配置され、前記給電素子の上部を取り囲むリング状の無給電素子と、前記無給電素子の外縁を前記ベースに短絡する複数の短絡ピンとを備え、前記短絡ピンがメアンダ状の形状に形成されていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の広帯域アンテナでは、短絡ピンをメアンダ状の形状に形成したことから、2GHz近辺や4GHz近辺のVSWR特性を改善することができる。これにより、本発明の広帯域アンテナは、2GHz帯を使用する通信システムのアンテナとして使用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例にかかる広帯域アンテナの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例にかかる広帯域アンテナの構成を示す分解組立図である。
【図3】本発明にかかる広帯域アンテナの無給電素子の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明にかかる広帯域アンテナの短絡ピンの構成を示す正面図である。
【図5】本発明にかかる広帯域アンテナの固定用部材の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明にかかる広帯域アンテナの給電素子の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明にかかる広帯域アンテナのベースの構成を示す斜視図である。
【図8】本発明にかかる広帯域アンテナのコネクタの構成を示す斜視図である。
【図9】本発明にかかる広帯域アンテナの無給電素子外径サイズに対する利得特性を従来の広帯域アンテナと対比して示す図である。
【図10】本発明にかかる広帯域アンテナの無給電素子サイズを変えた時の利得の周波数特性を従来の広帯域アンテナと対比して示す図である。
【図11】本発明にかかる広帯域アンテナの無給電素子サイズを変えた時のVSWRの周波数特性を従来の広帯域アンテナと対比して示す図である。
【図12】本発明にかかる広帯域アンテナの短絡ピンをメアンダ状にした時のVSWRの周波数特性を示す図である。
【図13】本発明にかかる広帯域アンテナの短絡ピンをメアンダ状にした時の利得の周波数特性を示す図である。
【図14】従来の広帯域アンテナにおいて、周波数が2170MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図15】従来の広帯域アンテナにおいて、周波数が2300MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図16】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を110mm、周波数が2170MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図17】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を110mm、周波数が2300MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図18】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を100mm、周波数が2170MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図19】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を100mm、周波数が2300MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図20】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を90mm、周波数が2170MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図21】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を90mm、周波数が2300MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図22】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が2170MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図23】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が2300MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図24】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が170MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図25】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が730MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図26】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が810MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図27】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が960MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図28】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が1710MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図29】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が2170MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図30】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が2300MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図31】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が2605MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図32】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が3500MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図33】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が4500MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図34】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が5770MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図35】本発明にかかる広帯域アンテナにおいて無給電素子の外径を80mm、周波数が5925MHzの時の水平面内の指向特性を示す図である。
【図36】従来の広帯域アンテナの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例にかかる広帯域アンテナ1の構成を図1および図2に示す。ただし、図1は本発明にかかる広帯域アンテナ1の構成を示す斜視図であり、図2は本発明にかかる広帯域アンテナ1の構成を示す分解組立図である。
これらの図に示す本発明の実施例の広帯域アンテナ1は、円形の金属製のベース13と、ベース13上に所定の距離を隔てて配置された円形のリング状の金属製とされた無給電素子11と、ベース13上のほぼ中央に立設するよう配置された円錐状の金属製とされた給電素子10とから構成されている。給電素子10は合成樹脂製の固定用部材12のほぼ中央に形成されている円形の挿通孔12a内に嵌挿されて固着されており、無給電素子11は固定用部材12に放射状に形成されている複数の放射状部12dの上に載置されて、ベース13から高さhの所定間隔を持って固定されている。例えば、高さhは約26.5mmとされており、広帯域アンテナ1は低姿勢のアンテナとされている。また、無給電素子の外径φは約80mm〜約110mmとされている。
【0010】
ここで、図3に無給電素子11の構成を示す斜視図を示す。
図3に示すように、無給電素子11は円形のリング状の本体部11aと、本体部11aの外縁の4ヶ所に等間隔(約90°間隔)で形成された4つの短絡ピン11cを備えている。リング状の本体部11aのほぼ中央には貫通孔11bが形成されている。貫通孔11bの径は、後述する固定用部材12のほぼ中央に形成されている第1環状部12bの外径より若干大きく形成されて、貫通孔11bの内周は給電素子10の上端の外周と所定の間隙を持って対向している。短絡ピン11cは、本体部11aの面に対してほぼ直角に折曲されており、繰り返し逆方向に屈曲されているメアンダ状に形成されている。図4に短絡ピン11cの詳細構成を拡大して示している。図4に示すように、メアンダ状に形成されている短絡ピン11cの横幅はWとされ、メアンダ状ラインの幅と間隔とはほぼ等しいDの寸法とされている。以降の説明では、Dを屈曲幅Dとして示す。例えば、短絡ピン11cの横幅Wは約8mmとされ、屈曲幅Dは約1.5mmとされている。
【0011】
次に、図5に固定用部材12の構成を示す斜視図を示す。
図5に示す固定用部材12は合成樹脂の成型品とされ、ほぼ中央に形成されている径の小さい第1環状部12bと、第1環状部12bと同心円として形成されている径の大きい第2環状部12cとを備えている。第1環状部12bの外周面から外側に8枚の矩形状の放射状部12dが第2環状部12cを越えて放射状に形成されている。放射状部12dの高さはhとされてベース13と無給電素子11との間隔とされている。放射状部12dと第2環状部12cとが交差する8つの部位の1つおきに円柱部12gが形成されている。この円柱部12gのほぼ中心にネジ孔が形成されており、円柱部12g下端は放射状部12dより若干下方へ突出している。8枚の放射状部12dの1つおきに先端の上部から突出する突起12eが形成されている。無給電素子11が放射状部12d上に載置された際に、この突起12eの内側に嵌挿されて無給電素子11が位置決めされる。また、8枚の放射状部12dにおける第1環状部12cの近傍に段部12fが形成されて中央部が一段高くされている。この段部12fにより一段高くされた中央部に、無給電素子11が放射状部12d上に載置された際に、無給電素子11に形成されている貫通孔11bが嵌挿されて位置決めされ、貫通孔11bの内周が給電素子10の上端の外周に所定の間隙を持って対向できるようになる。
【0012】
次に、図6に給電素子10の構成を示す斜視図を示す。
図6に示す給電素子10は金属製とされており、X−Z面のP点(x1,0,z1)とQ点(0,0,z2)の間を、
x=−x0exp[−t(z−z1)]+x0+x1
t=[ln(1+x1/x0)]/[z1−z2
で表される指数曲線とし、当該曲線をZ軸を中心に回転して得られる回転体の形状とされている。x0、x1、z1およびz2を変更することにより円錐状の給電素子10の形状が変わり、その電気的特性を調整することが可能である。
【0013】
次に、図7にベース13の構成を示す斜視図を示す。
図7に示すベース13は円形の金属製とされた円盤状の円盤部13aからなり、円盤部13aのほぼ中心に径の小さい中心孔13bが形成され、外周縁よりやや内側に4つの細長い矩形状の矩形溝13dが形成されている。この4つの矩形溝13dには、無給電素子11における4つの短絡ピン11cがそれぞれ挿入されて、メアンダ状の短絡ピン11cの先端がハンダ付け等されることにより電気的に接続される。これにより、無給電素子11は、短絡ピン11cによりベース13に短絡されると共にベース13上に所定間隔hで固着されるようになる。また、矩形溝13dの内側に中心孔13bを取り囲むように4つの挿通孔13cが形成されている。この挿通孔13cは、固定用部材12の円柱部12gの位置に対応する位置に形成されており、挿通孔13cのベース13の上面側の径は、固定用部材12の円柱部12gが嵌挿できる大きさとされている。そして、ベース13上に固定用部材12を載置した際に、円柱部12gの下部が挿通孔13cの上部に嵌挿される。次いで、ベース13の裏側からネジを挿通孔13cに挿通して円柱部12gのネジ孔に螺着することにより、ベース13上に固定用部材12を固着することができる。
【0014】
次に、図8にコネクタ14の構成を示す斜視図を示す。
図8に示すコネクタ14は金属製とされており、円筒状の本体部14aと、本体部14aの上端に設けられたほぼ矩形状の鍔部14cと、本体部14aおよび鍔部14cと絶縁されて針金状のピン部14bが鍔部14cから突出して設けられている。本体部14aには、下から同軸ケーブルが嵌入され、同軸ケーブルのアース線は本体部14aに接続され、同軸ケーブルの芯線はピン部14bに電気的に接続される。このコネクタ14は、ベース13の裏面に固着され、固着された際にピン部14bがベース13の中心孔13bに挿通されて、その先端が固定用部材12の挿通孔12a内に固着されている給電素子10の下端に接続される。これにより、同軸ケーブルからコネクタ14を介して給電素子10に給電できるようになる。
【0015】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1の無給電素子11の外径サイズに対する利得特性を従来の広帯域アンテナと対比して図9に示す。この場合、本発明にかかる広帯域アンテナ1の短絡ピン11cはメアンダ状とされておらず従来と同様に板状の短絡ピンとされている。
図9では、本発明の無給電素子11の外径φのサイズを80,90,100,110,120mmとした時の周波数ごとの利得特性を示している。周波数は、0.71,0.73,0.81,0.96,1.71,2.17,2.3,2.61,3.5,4.5,5.77,5.93GHzとされている。図9を参照すると、外径φが約80mmとされていると、低域から高域にわたり良好な利得特性を示している。また、外径φが90mm〜110mmに大きくなるにつれて高域と2GHz近辺の中域の利得が劣化していくが、低域では若干利得が向上する。さらに、外径φが約120mmのときが従来の広帯域アンテナ100の利得特性となり、高域の利得は向上しているが、低域の利得はかなり劣化し、低域の利得はほぼ変わらないようになる。このように、無給電素子11の外径φを約80mm〜110mmとすると低域から高域までの全体の周波数帯域における利得が良好になることがわかる。
【0016】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1の無給電素子11のサイズを変えた時の利得の周波数特性を従来の広帯域アンテナと対比して図10に示す。この場合、本発明にかかる広帯域アンテナ1の短絡ピン11cはメアンダ状とされておらず従来と同様に板状の短絡ピンとされている。
図10では、本発明の無給電素子11の外径φのサイズを80,90,100,110mmとした時と、従来の無給電素子111の外径φ’を120mmとした時の利得の周波数特性を示している。図10を参照すると、周波数を0.5GHzから6GHzまで変えていくと、外径φの大きさにかかわらず約1.8GHz〜約3GHzくらいの中域において利得が劣化する傾向を示している。この傾向は、外径φが大きくなるにつれて大きくなり、特に、外径φが120mmとされている場合は劣化する度合いが大きくなっている。外径φが約80mmとされているときに低域から高域にわたり良好な利得特性を示していることがわかる。また、周波数が3GHzを超えると外径φの大きさにかかわらず、利得が上昇していく傾向を示していることがわかる。このように、無給電素子11の外径φを約80mm〜110mmとすると低域から高域までの全体の周波数帯域における利得の変動が小さくなることがわかる。
【0017】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1の無給電素子11のサイズを変えた時のVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を従来の広帯域アンテナと対比して図11に示す。この場合、本発明にかかる広帯域アンテナ1の短絡ピン11cはメアンダ状とされておらず従来と同様に板状の短絡ピンとされている。
図11では、本発明の無給電素子11の外径φのサイズを80,90,100,110mmとした時と、従来の無給電素子111の外径φ’を120mmとした時のVSWRの周波数特性を示している。図11を参照すると、周波数を0.5GHzから5.9GHzまで変えていくと、外径φの大きさにかかわらず約2GHz前後においてVSWRが良好になり、3GHz前後においてVSWRが劣化する傾向を示している。この傾向は、外径φが大きくなるにつれて低域側に移動するようになっている。この場合、VSWRが約2.5以下を目標とすると、外径φが120mmの場合は約3.5GHzないし4.3GHzにおいて目標を満たさないようになり、外径φが約110mmの場合は約3.9GHzないし約4.5GHzにおいて目標を満たさないようになる。さらに、外径φが小さいほど低域側において目標を満たさないようになることがわかる。
【0018】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1の短絡ピン11cをメアンダ状とした時のVSWRの周波数特性を従来の広帯域アンテナと対比して図12に示す。この場合、[通常短絡ピン]とは短絡ピン形状が板状とされてメアンダ状とはされていない。
図12では、本発明の無給電素子11の外径φのサイズを約80mmとして、メアンダの屈曲幅Dを0.4,0.8,1.0,1.2,1.5mmとした時のVSWRの周波数特性を示している。図12を参照すると、周波数を0.5GHzから6GHzまで変えていくと、メアンダの屈曲幅Dが約0.4mmから約1.5mmに向かって広くするにつれて、VSWRが2.5以下となる周波数帯域が広がるようになる。特に、屈曲幅Dが約1.5mmの場合は0.7GHz〜6GHzにわたりVSWRが2.5以下を示すようになる。このように、短絡ピンを板状からメアンダ状とすることによりVSWRを広帯域にわたり良好にできることがわかる。これに対して、無給電素子の外径φが120mmで短絡ピンが板状とされている場合は、約3.5GHzないし4.3GHzにおいてVSWRが目標の2.5を超えるようになる。また、無給電素子の外径φが約80mmで短絡ピンが板状とされている場合は、約1.5GHz以下の周波数帯域においてVSWRが目標の2.5を超えるようになることがわかる。
【0019】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1の短絡ピン11cをメアンダ状とした時の利得の周波数特性を従来の広帯域アンテナと対比して図13に示す。この場合、[通常短絡ピン]とは短絡ピン形状が板状とされてメアンダ状とはされていない。
図13では、本発明の無給電素子11の外径φのサイズを約80mmとして、メアンダの屈曲幅Dを0.4,0.8,1.0,1.2,1.5mmとした時の利得の周波数特性を示している。図13を参照すると、周波数を0.5GHzから6GHzまで変えていくと、短絡ピン11cのメアンダの屈曲幅Dが約0.4mm〜約1.5mmとされている場合は、0.7GHz〜6GHzの周波数帯域においてほぼ同様の利得特性を示しており、低域から中域の利得はほぼ一定となり、高域になるにつれて利得は向上していく。そして、短絡ピン11cのメアンダの屈曲幅Dが約0.4mm〜約1.5mmとされている場合は、−2.2dBi以上の良好な利得特性となることがわかる。これに対して、無給電素子の外径φが120mmで短絡ピンが板状とされている場合は、中域の利得が急激に約−5dBiまで劣化するようになる。また、無給電素子の外径φが約80mmで短絡ピンが板状とされている場合は、短絡ピン11cがメアンダ状とされている時とほぼ同様の利得特性を示すが、利得はやや劣化していることがわかる。
【0020】
次に、従来の広帯域アンテナ100において、周波数が2170MHzと2300MHzの時の水平面内指向特性を図14および図15に示す。
これらの図を参照すると、周波数が2170MHzと2300MHzの時は同様の指向特性を示しており、±約45°方向および±約135°方向を中心する前後の角度において利得が減少している。周波数が2170MHzの時の最大利得は−3.2dBi、最小利得は−7.2dBiで利得は低く、リップルが4.0dBと劣化しており、平均利得が−4.9dBとなっている。また、周波数が2300MHzの時の最大利得は−3.1dBi、最小利得は−5.9dBiで、リップルが3.8dBと劣化しており、平均利得が−4.8dBiとなっている。
【0021】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1において、無給電素子11の外径φが約110mmとされた場合の周波数が2170MHzと2300MHzの時の水平面内指向特性を図16および図17に示す。この場合、短絡ピン形状は板状とされてメアンダ状とはされていない。
これらの図を参照すると、周波数が2170MHzと2300MHzの時は同様の指向特性を示しており、±約45°方向および±約135°方向を中心する前後の角度において利得が減少している。周波数が2170MHzの時の最大利得は−2.4dBi、最小利得は−5.9dBiと従来の広帯域アンテナより向上しており、リップルが3.5dB、平均利得が−3.9dBiと従来の広帯域アンテナより向上している。また、周波数が2300MHzの時の最大利得は−2.4dBi、最小利得は−6.4dBiで、リップルが4.0dB、平均利得−4.1dBiが得られている。
【0022】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1において、無給電素子11の外径φが約100mmとされた場合の周波数が2170MHzと2300MHzの時の水平面内指向特性を図18および図19に示す。この場合、短絡ピン形状は板状とされてメアンダ状とはされていない。
これらの図を参照すると、周波数が2170MHzと2300MHzの時は同様の指向特性を示しており、±約45°方向および±約135°方向を中心する前後の角度において利得が若干減少している。周波数が2170MHzの時の最大利得は−2.0dBi、最小利得は−4.6dBiと従来の広帯域アンテナよりさらに向上しており、リップルが2.6dB、平均利得が−3.1dBiと従来の広帯域アンテナよりさらに向上している。また、周波数が2300MHzの時の最大利得は−1.7dBi、最小利得は−5.1dBiと従来の広帯域アンテナより向上しており、リップルが3.4dB、平均利得が−3.2dBiと従来の広帯域アンテナより向上している。
【0023】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1において、無給電素子11の外径φが約90mmとされた場合の周波数が2170MHzと2300MHzの時の水平面内指向特性を図20および図21に示す。この場合、短絡ピン形状は板状とされてメアンダ状とはされていない。
これらの図を参照すると、周波数が2170MHzと2300MHzの時は同様の指向特性を示しており、±約45°方向および±約135°方向を中心する前後の角度において利得がやや減少しているものの、ほぼ無指向性となっている。周波数が2170MHzの時の最大利得は−2.0dBi、最小利得は−4.6dBiと従来の広帯域アンテナよりさらに向上しており、リップルが2.6dB、平均利得が−3.1dBiと従来の広帯域アンテナよりさらに向上している。また、周波数が2300MHzの時の最大利得は−1.4dBi、最小利得は−3.8dBiと従来の広帯域アンテナよりさらに向上しており、リップルが2.4dB、平均利得が−2.5dBiと従来の広帯域アンテナよりさらに向上している。
【0024】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1において、無給電素子11の外径φが約80mmとされた場合の周波数が2170MHzと2300MHzの時の水平面内指向特性を図22および図23に示す。この場合、短絡ピン形状は板状とされてメアンダ状とはされていない。
これらの図を参照すると、周波数が2170MHzと2300MHzの時は同様の指向特性を示しており、ほぼ無指向性の指向特性を示している。周波数が2170MHzの時の最大利得は−1.4dBi、最小利得は−2.7dBiと従来の広帯域アンテナよりさらに向上しており、リップルが1.3dB、平均利得が−2.0dBiと従来の広帯域アンテナよりさらに向上している。また、周波数が2300MHzの時の最大利得は−1.1dBi、最小利得は−2.9dBiと従来の広帯域アンテナよりさらに向上しており、リップルが1.8dB、平均利得が−2.5dBiと従来の広帯域アンテナよりさらに向上している。
【0025】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1において、無給電素子11の外径φが約80mmとされた場合の周波数が710MHzと730MHzの時の水平面内指向特性を図24および図25に示す。この場合、短絡ピン形状はメアンダ状とされて屈曲幅Dは1.5mmとされている。
これらの図を参照すると、周波数が710MHzと730MHzの時は同様の指向特性を示しており、リップルが約0.1dBとされた完全に近い無指向性の指向特性を示している。周波数が710MHzの時の最大利得は−0.8dBi、最小利得は−0.9dBiと非常に良好な利得特性が得られており、リップルが0.1dB、平均利得が−0.9dBiと非常に良好な電気的特性が得られている。また、周波数が730MHzの時の最大利得は−0.9dBi、最小利得は−1.0dBiと非常に良好な利得特性が得られており、リップルが0.1dB、平均利得が−1.0dBiと非常に良好な電気的特性が得られている。このように、本発明にかかる広帯域アンテナ1は、700MHz帯において非常に良好な電気的特性が得られている。
【0026】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1において、無給電素子11の外径φが約80mmとされた場合の周波数が810MHzと960MHzの時の水平面内指向特性を図26および図27に示す。この場合、短絡ピン形状はメアンダ状とされて屈曲幅Dは1.5mmとされている。
これらの図を参照すると、周波数が810MHzと960MHzの時は同様の指向特性を示しており、リップルが0dB、約0.1dBとされた完全に近い無指向性の指向特性を示している。周波数が810MHzの時の最大利得は−1.3dBi、最小利得は−1.4dBiと非常に良好な利得特性が得られており、リップルが0.1dB、平均利得が−1.3dBiと非常に良好な電気的特性が得られている。また、周波数が960MHzの時の最大利得は−2.2dBi、最小利得は−2.2dBiと良好な利得特性が得られており、リップルが0dB、平均利得が−2.2dBiと良好な電気的特性が得られている。このように、本発明にかかる広帯域アンテナ1は、800MHz帯において非常に良好な電気的特性が得られている。
【0027】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1において、無給電素子11の外径φが約80mmとされた場合の周波数が1710MHzと2170MHzの時の水平面内指向特性を図28および図29に示す。この場合、短絡ピン形状はメアンダ状とされて屈曲幅Dは1.5mmとされている。
これらの図を参照すると、周波数が1710MHzと2170MHzの時は同様の指向特性を示しており、ほぼ無指向性の指向特性を示している。周波数が1710MHzの時の最大利得は−1.5dBi、最小利得は−1.7dBiと非常に良好な利得特性が得られており、リップルが0.2dB、平均利得が−1.6dBiと非常に良好な電気的特性が得られている。また、周波数が2170MHzの時の最大利得は−1.5dBi、最小利得は−2.3dBiと従来の広帯域アンテナより大幅に向上しており、リップルが0.8dB、平均利得が−1.9dBiと従来の広帯域アンテナより大幅に向上している。このように、本発明にかかる広帯域アンテナ1は、2GHz近辺において従来の広帯域アンテナより電気的特性が大幅に向上している。
【0028】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1において、無給電素子11の外径φが約80mmとされた場合の周波数が2300MHzと2605MHzの時の水平面内指向特性を図30および図31に示す。この場合、短絡ピン形状はメアンダ状とされて屈曲幅Dは1.5mmとされている。
これらの図を参照すると、周波数が2300MHzの時は、ほぼ無指向性の指向特性を示している。周波数が2300MHzの時の最大利得は−1.4dBi、最小利得は−2.2dBiと従来の広帯域アンテナより大幅に向上しており、リップルが0.8dB、平均利得が−1.8dBiと従来の広帯域アンテナより大幅に向上している。また、周波数が2605MHzの時は、無指向性に近い指向特性を示している。周波数が2605MHzの時の最大利得は−1.7dBi、最小利得は−3.0dBiと良好な利得特性が得られており、リップルが1.3dB、平均利得が−2.3dBiと良好な電気的特性が得られている。このように、本発明にかかる広帯域アンテナ1は、2.5GHz近辺において良好な電気的特性が得られている。
【0029】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1において、無給電素子11の外径φが約80mmとされた場合の周波数が3500MHzと4505MHzの時の水平面内指向特性を図32および図33に示す。この場合、短絡ピン形状はメアンダ状とされて屈曲幅Dは1.5mmとされている。
これらの図を参照すると、周波数が3500MHzの時は、無指向性に近い指向特性を示している。周波数が3500MHzの時の最大利得は−0.7dBi、最小利得は−3.0dBiと良好な利得特性が得られており、リップルが2.3dB、平均利得が−1.8dBiと良好な電気的特性が得られている。また、周波数が3500MHzの時は、無指向性に近い指向特性を示している。周波数が3605MHzの時の最大利得は0.9dBi、最小利得は−0.8dBiと非常に良好な利得特性が得られており、リップルが1.7dB、平均利得が−0.1dBiと良好な電気的特性が得られている。このように、本発明にかかる広帯域アンテナ1は、4GHz近辺において良好な電気的特性が得られている。
【0030】
次に、本発明にかかる広帯域アンテナ1において、無給電素子11の外径φが約80mmとされた場合の周波数が5770MHzと5925MHzの時の水平面内指向特性を図34および図35に示す。この場合、短絡ピン形状はメアンダ状とされて屈曲幅Dは1.5mmとされている。
これらの図を参照すると、周波数が5770MHzと5925MHzの時は同様の指向特性を示しており、±約45°方向および±約135°方向を中心する前後の角度において利得が増大する指向特性を示している。周波数が5770MHzの時の最大利得は−3.4dBi、最小利得は−0.1dBiと非常に良好な利得特性が得られており、リップルが3.5dBと劣化しており、平均利得が1.7dBiとやや良好な電気的特性が得られている。また、周波数が5925MHzの時の最大利得は3.1dBi、最小利得は0.1dBiと非常に良好な利得特性が得られており、リップルが3.0dBと劣化しているが、平均利得が1.7dBiと良好な電気的特性が得られている。このように、本発明にかかる広帯域アンテナ1は、6GHz近辺において指向特性は劣化しているが良好な利得特性が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明した本発明にかかる広帯域アンテナは、無給電素子の外径φが約80mm〜約110mmで高さが約26.5mmとされていることから、無給電素子や固定用部材、給電素子を内蔵するアンテナカバーをベースに被せる構成としても、小型で低姿勢の広帯域アンテナとすることができる
また、無給電素子の外径φが約80mm〜約110mmとされ、これにより2GHz近辺の利得が改善される。無給電素子の外径φを小さくすることにより悪化するVSWRは、無給電素子11をベースに短絡する短絡ピンをメアンダ状に形成することにより改善されるようになる。従って、本発明にかかる広帯域アンテナを、良好な広帯域特性を示すアンテナが必要とされるUWBに用いることができるようになる。さらに、2GHz近辺を使用するメディアはTEL、VICS、WiMAX等、複数あり、本発明にかかる広帯域アンテナは、これらを含む多くのメディアをカバーできる様になる。
【符号の説明】
【0032】
1 広帯域アンテナ、10 給電素子、11 無給電素子、11a 本体部、11b 貫通孔、11c 短絡ピン、12 固定用部材、12a 挿通孔、12b 第1環状部、12c 第2環状部、12d 放射状部、12e 突起、12f 段部、12g 円柱部、13 ベース、13a 円盤部、13b 中心孔、13c 挿通孔、13d 矩形溝、14 コネクタ、14a 本体部、14b ピン部、14c 鍔部、100 広帯域アンテナ、110 給電素子、111 無給電素子、111c 短絡ピン、112 固定用部材、113 ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性のベース上に設けられた上方に向かって外径が大きくなる円錐状の給電素子と、
前記ベース上に所定間隔をもって配置され、前記給電素子の上部を取り囲むリング状の無給電素子と、
前記無給電素子の外縁を前記ベースに短絡する複数の短絡ピンとを備え、
前記短絡ピンがメアンダ状の形状に形成されていることを特徴とする広帯域アンテナ。
【請求項2】
前記無給電素子の外径が約80mm〜約110mmとされていることを特徴とする請求項1記載の広帯域アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2012−227689(P2012−227689A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92943(P2011−92943)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000165848)原田工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】