説明

広帯域フェルミアンテナの設計方法及び設計プログラム

【課題】広帯域のフェルミアンテナを用いた円形指向性を持つ放射パターンの任意のビーム幅を得るための設計方法を提供すること。
【解決手段】ミリ波の受信画像化に必要な広帯域で円形指向性を有するコルゲート付フェルミアンテナの設計方法であって、まず、第1ステップとして、フェルミアンテナのテーパ関数であるフェルミディラック関数の変曲点を変化させて、H面のビーム幅を目標の指向性を有するビーム幅に設定する。H面のビーム幅が目標値に設定されると、次に、フェルミアンテナの開口幅を変化させて、E面のビーム幅を目標の指向性を有するビーム幅に設定する。このようにH面とE面のビーム幅を独立して調整し、目標値と一致させることに、広帯域かつ円形指向性を有するフェルミアンテナを短時間に設計することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーパスロトアンテナTSAの一つである広帯域フェルミアンテナの設計方法及びその設計プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波を用いてリアルタイムで映像を受信するパッシブイメージングは、天候に左右されることなく、建物や人体を含むすべての対象物のイメージを得ることができるため、その実用化が期待されている。ミリ波とは波長が10mmから1mm程度の電磁波をさし、周波数としては30GHz帯から300GHz帯がそれに該当する。このミリ波帯の電磁波はマイクロ波帯と比較した場合、a)小型軽量のシステムが実現できる、b)鋭い指向性が得られるため、干渉や混信が起こりにくい、c)周波数帯が広いため、大容量の情報を扱うことができる、d)センシングに用いた場合に高分解能が得られる、などの特徴を有し、また、可視あるいは赤外領域と比較した場合、e)霧や降雨による減衰が極めて少ない、f)塵・ほこりなどに対する透過性もよく、耐環境性に優れている、といった特徴が挙げられる。
【0003】
ミリ波を用いたイメージングの方式には、大きく分けてアクティブイメージングとパッシブイメージングの二つの方式がある。アクティブイメージングは、発信器から放射されるコヒーレントなミリ波を物体に照射し、その反射波または透過波を受信検波して、受信強度あるいは位相に応じた画像を得るものである。この方式はレーダやプラズマ電子密度計測などに用いられている。
【0004】
また、パッシブイメージングは、あらゆる物体がその絶対温度に比例して放射している熱雑音の、ミリ波帯の部分を広帯域にわたって受信し、これを検波・増幅して画像を得る方式である。発信器を必要としないこと、また、インコヒーレントな波を受信するため干渉の影響がなく信号処理が容易である等の利点があるが、受信信号が熱雑音という非常に微弱なものであるだけに低雑音・高感度の受信機が要求される。この方式は大気中のオゾンや一酸化炭素などを計測するラジオメータや電波天文学の分野などに利用されている。
【0005】
このミリ波を用いたリアルタイムなパッシブイメージングは、図21に示すように、人や物などの対象物100から発生するサーマルノイズ(熱雑音)を円形の指向性を有するレンズアンテナ101を介して、レンズアンテナ101の焦点の位置に配置されたイメージング用受光素子102で受信することによって行われる。このため、レンズアンテナ101と整合性の取れたイメージング受光素子(アンテナ)の開発が極めて重要なものとなっている。通常は、レンズアンテナ101の直径(D)はその焦点距離(f)と等しく設計され、f/D=1のとき最も良い状態のパッシブイメージングが行われるとされている。
【0006】
リアルタイムなイメージング方法には機械的な走査を行ってやる方法があるが、この方法では走査のための複雑な機構が必要であり、また計測に多くの時間がかかるためリアルタイムの画像を得ることが困難である。これに対して、数多くの受信素子を2次元配列して像を得るイメージングアレイ方式は、走査機構が不要であり、短時間で計測することができるのでリアルタイムの画像化が可能である。図21では、1個のイメージング受光素子102が描かれているが、実際には複数のイメージング受光素子(アンテナ)がアレイ状に並んでいる。
【0007】
また、このイメージング用受光素子102に適したアンテナとしては、レンズアンテナ101が円形の指向性を有することから、このレンズアンテナ101との整合性のためにE面指向性とH面指向性とがほぼ等しいことが要求されている。ここでE面(xz平面)は電界の共振面であり、H面(xy平面)はE面に垂直な面である。一般的には、E面に対しては強く共振して対象物からの映像が受信できたとしても、H面の指向性がない場合が多く、それによって変換効率が落ち、利得も低くなってしまうという問題がある。
また、更に要求される特性としては、広帯域でかつ集積化やアレイ化に適したものであるほかに、アレイ素子の数がイメージングの画素を決定するので、所定の面積にできるだけ多くのアンテナを配列できることなどが挙げられている。さらに、受信した信号を検波器のノイズレベルまで増幅する必要があるが、アンテナとしては増幅器までの損失を少なくする意味でも高利得であることが要求されている。
【0008】
これらの要求を満足する有力なアンテナとして、近年テーパスロトアンテナTSA(Tapered Slot Antenna)の研究が盛んに行われている。このTSAは、広帯域、軽量、薄型であって、かつフォトリソグラフィ技術によって簡単に製作が可能であり、集積化も容易であるため、マイクロ波からミリ波の周波数帯まで通信用、計測用とさまざまな用途に利用されている。このTSAの基本的な動作原理は、進行波アンテナとして説明される。すなわち、ダイポールアンテナのような反射型のアンテナとは異なり、発生した電波が、振動することなくそのまま進行方向に伝播するアンテナとして解釈されている。そして、TSAのテーパ形状としては、線形のLTSA(Linear TSA)、ラッパ型の指数関数のテーパ形状をしたVivaldi TSAがよく用いられている。
また、いくつかの異なる関数形が接続されたCWSA(Constant Width Slot Antenna)や、LTSAが折れ曲がって接続されたテーパ形状を持つBLTSA(Broken Linearly TSA)も提案されている。
【0009】
また、最近フェルミアンテナと呼ばれるテーパスロトアンテナTSAも提案されているが、このフェルミアンテナ10の構造は、図22に示されるように、テーパ形状がフェルミディラック関数(以下、「フェルミ関数」という。)で表され、かつ誘電体基板11の外側に櫛歯状のコルゲート構造12を持っている。このフェルミアンテナ10は、基板幅Dが狭くてもE面及びH面の指向性がほぼ等しく、また比較的サイドローブレベルが低いことが実験的に見出されているため、ミリ波イメージング用受信アンテナとして適していると考えられている。
【0010】
図22は、フェルミアンテナ10の基本構造を示したものであり、このアンテナの特徴は、上述のようにフェルミディラック関数で表されるテーパ形状と、誘電体基板11外側がコルゲート構造12をもつことである。このフェルミアンテナは、誘電体基板11にフォトリソグラフィ技術を用いて容易に製作することができ、誘電体基板11の片面のみにアンテナと給電回路を構成することができる点で有利である。フェルミ関数は量子力学において電子のエネルギー順位を表す関数として知られているものであり、図22の構造と座標系を考慮すると、一般に[数1]で示される式で与えられる関数となる。
【0011】
【数1】

ここで、a、b、cはテーパの形状を表すパラメータである。aはχ→∞における関数の漸近値を表し、cは関数の変曲点である。また、f’(c)=ab/4より、bは変曲点における接線の傾きを決めるパラメータとなっている。ここでf(c)=a/2の関係があり、また、b(Lーc)≫1の関係がアレイば、開口付近はχ=Lとして、f(L)=aとなるから、開口幅Wは、W=2aで与えられる。なお、フェルミアンテナの設計パラメータとしては、誘電体基板の比誘電率εr,基板の厚さh,アンテナ長L、 コルゲート構造の幅w、ピッチp、コルゲート長l、テーパ形状を決めるフェルミ関数のパラメータa、b、cと極めて多く、これらの値をどのように選択すると小形で所望のビーム幅BWdesignの円形指向性をもつアンテナが設計できるかが重要な課題となっている。
【0012】
このフェルミアンテナに関しては、周波数60GHzにおいてLTSA,Vivaldi,CWSA,BLTSAと、フェルミ関数テーパを用いたTSAとを対比し、幅の広い基板を用いた場合にフェルミ関数テーパTSAのH面のサイドローブが最も低減されることを示した論文が提案されている(例えば、非特許文献1を参照。)。この非特許文献1では、フェルミアンテナの基板幅を狭くするとE面とH面の指向性が異なってくるが、これにコルゲート構造を設けることにより指向性をほぼ等しくできることが示されている。
【0013】
また、本発明者らは、フェルミアンテナのテーパ形状(すなわちフェルミ関数のパラメータa、b、c)、アンテナ長L、誘電体厚h、開口幅W、基板幅Dなどを変化させたときの放射指向性をFDTD(Finite Difference Time Domain)法により求め、フェルミアンテナの構造に関係する諸パラメータとアンテナ特性の関係を明らかにするとともに、イメージング用受信素子に適したフェルミアンテナの最適な構造を提案した(非特許文献2を参照。)。図23は、ここで提案された典型的なフェルミアンテナの寸法の一例を示したものである。この非特許文献2によれば、基板幅D=0.58λ、開口幅W=0.32λのフェルミアンテナにおいて、動作利得が13.2dBi(ここで、“i”は“isotropic”の意味)、E面とH面のサイドローブレベルがそれぞれ−18.4dB、−14.3dBで、かつ良好な軸対象を有し、実験とよく一致する結果が得られたことを報告した。この例では、35GHzで設計した典型的なフェルミアンテナの寸法を示しており、ここでは、c=2λ=17.14mm、a=W/2=3.9mm、b=0.28mm−1としている。
【非特許文献1】S. Sugawara etc. “A m-m wave tapered slot antenna with improved radiation pattern,” IEEE MTT-S International Microwave Symposium Digest, pp.959-962, Denver, USA, 1997
【非特許文献2】電子情報通信学会論文誌B. Vol.J80-B, No. 9(2003.9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、フェルミアンテナを含むTSAは、テーパ形状を決める関数、アンテナ長、開口幅、有限の基板幅、厚さ、比誘電率など多数の構造パラメータを有し、これらの変化に応じてその放射特性が大きく変化するという特性を持っている。このため、フェルミアンテナを設計する場合には、実験による経験的な方法や、近似的な計算による方法に終始していた。つまり、現状では、TSAを作製して偶然に特性のいいものができたとしても、作るたびに特性が変化ししてしまい、確固とした設計理論は確立されていないという状態であった。このように、フェルミアンテナに要求される放射指向性を実現できる設計指針を得ることは容易なことではないという現実があり、上記非特許文献1及び非特許文献2に記載の提案においても、円形指向性をもつTSAの設計方法を提示するものではなかった。
本発明は,上記課題に鑑みてなされたものであり、フェルミアンテナを用いた円形指向性を持つ放射パターンの任意のビーム幅を得るための設計方法及びそのためのプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、ミリ波の受信画像化に必要な広帯域で円形指向性を有するコルゲート付フェルミアンテナの設計方法であって、フェルミアンテナのテーパ関数であるフェルミディラック関数の変曲点を変化させて、H面のビーム幅を目標の指向性を有するビーム幅に設定するとともに、このフェルミアンテナの開口幅を変化させて、E面のビーム幅を目標の指向性を有するビーム幅に設定することにより、広帯域かつ円形指向性を実現することを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項2に記載された発明は、ミリ波の受信画像化に必要な広帯域で円形指向性を有するコルゲート付フェルミアンテナの設計方法であって、広帯域周波数の中心周波数またはそれに対応する波長を与えるステップと、フェルミアンテナの誘電体基板の実効厚を決定するステップと、フェルミアンテナのアンテナ長を決定するステップと、フェルミアンテナのコルゲートの幅、ピッチ及び高さを決定するステップと、フェルミアンテナのテーパ形状を形成するフェルミディラック関数のパラメータを決定するステップと、フェルミアンテナから放射される電波のH面とE面のビーム幅の目標値を設定するステップと、フェルミ関数の変曲点を任意に設定した後に、H面のビーム幅を上記予め設定したH面のビーム幅の目標値と比較するH面ビーム幅比較ステップと、このH面ビーム幅比較ステップにおいて、上記予め設定したH面ビーム幅の目標値に一致しないときは、変曲点の位置を変化させた後、再びH面のビーム幅を上記予め設定したH面のビーム幅の目標値と比較するステップを繰り返すH面ビーム幅決定サイクルと、上記H面ビーム幅比較ステップにおいて、H面ビーム幅が予め設定したH面ビーム幅と一致したときに、次の段階としてフェルミアンテナの開口幅を設定するステップと、この設定した開口幅に基づいて放射される電波のE面のビーム幅と、予め設定したE面のビーム幅の目標値を比較するE面ビーム幅比較ステップと、このE面ビーム幅比較ステップにおいて、上記目標値に一致しないときは、フェルミアンテナの開口幅を変化させ、再びE面のビーム幅を上記予め設定したE面のビーム幅の目標値と比較するステップを繰り返すE面ビーム幅決定サイクルと、を含み、上記H面ビーム幅とE面ビーム幅の双方とも略等しい円形指向性を有するように設計することを特徴としている。
【0017】
また、請求項3に記載された発明は、ミリ波の受信画像化に必要な広帯域で円形指向性を有するコルゲート付フェルミアンテナを設計するためのプログラムであって、広帯域周波数の中心周波数またはそれに対応する波長を与える手順と、フェルミアンテナの誘電体基板の実効厚を決定する手順と、フェルミアンテナのアンテナ長を決定する手順と、フェルミアンテナのコルゲートの幅、ピッチ及び高さを決定する手順と、フェルミアンテナのテーパ形状を形成するフェルミディラック関数のパラメータを決定する手順と、フェルミアンテナから放射される電波のH面とE面のビーム幅の目標値を設定する手順と、フェルミ関数の変曲点を任意に設定した後に、上記H面のビーム幅を上記予め設定したH面のビーム幅の目標値と比較する手順と、このH面ビーム幅が上記H面のビーム幅の目標値に一致しないときは、テーパ形状をしたフェルミディラック関数の変曲点の位置を変化させた後、H面のビーム幅と予め設定したH面のビーム幅の目標値と比較する手順を繰り返し、上記H面ビーム幅を比較する手順において、H面ビーム幅が予め設定したH面ビーム幅と一致したときに、フェルミアンテナの開口幅を設定する手順と、この設定した開口幅に基づいて放射される電波のE面のビーム幅と、予め設定したE面のビーム幅の目標値を比較する手順と、このE面ビーム幅を比較する手順において、E面のビーム幅が上記予め設定したE面ビーム幅の目標値に一致しないときは、フェルミアンテナの開口幅を変化させてE面のビーム幅を上記予め設定したE面のビーム幅の目標値と比較する手順を繰り返すことにより、H面ビーム幅とE面ビーム幅の双方とも略等しい円形指向性を有するように設計するための手順を実行する広帯域フェルミアンテナの設計のためのプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の広帯域フェルミアンテナの設計方法及び設計プログラムによれば、E面とH面の放射パターンを比較的短時間で目標値に一致させることができるとともに、E面、H面とも所望のビーム幅を持たせ、かつサイドローブも低く設定することができるので、ミリ波イメージング用受講素子に適したフェルミアンテナが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の広帯域アンテナの代表的なものであるフェルミアンテナの設計方法の実施の形態について説明する。上述したように、フェルミアンテナの設計パラメータとしては、誘電体基板の比誘電率εr、基板の厚さh,アンテナ長L、コルゲート構造の幅w、ピッチp、コルゲート長lc、テーパ形状を決めるフェルミ関数のパラメータa、b、cと実に多く、これらの値をどのように選択すると小形で所望のビーム幅BWdesignの円形指向性をもつアンテナが設計できるかについて、図1に示す設計フローチャートを用いて周波数35GHzに対する設計例と共に説明することとする。
周波数を35GHzに設定した理由は、35GHz付近に大気の窓といわれる、大気による電波の減衰が少ない周波数帯があること、そして、35GHzに対応する波長が8.57mmであり、その半波長が4.28mmなるので、2物点の像が分離される限界であるレーリー(Rayleigh)の分解能5mmぎりぎりの限界まで設計することができるからである。
【0020】
ここでレーリーの分解能について説明をしておく。一般に、光学系による点像は、光の回折現象により近軸像点を中心とした広がりのある分布を持つため、近接した二つの物体の像は部分的に重なり合っている。この重なりが増えていくと、それによって2物点の像であることを認識できなくなる最小の距離が考えられる。このような2物点間の最小距離を光学系の分解能といい、この2物点の像が分離される限界にレーリーの分解能が適用される。
【0021】
以下、図1〜図18に基づいて、本発明の実施の形態の例を説明する。まず、高精度な電磁界解析であるFDTD法を用いてフェルミアンテナの基本動作特性を検討し,イメージング用受信素子に用いるフェルミアンテナの設計例を説明する。
【0022】
FDTD法は、電界と磁界の時間及び空間の偏微分で与えられるマックスウェルの方程式を、時間と空間の差分で置き換えてこれを数値的に解く方法である。このFDTD法は、汎用性が高いという利点がある反面、空間を直方体のセルに分割するために、大規模なメモリと長い数値計算が必要になるという欠点もある。
【0023】
図1は、本発明の広帯域フェルミアンテナの設計方法の実施の形態を示すフローチャートであり、以下、このフローチャートにしたがって円形指向性を持つフェルミアンテナの設計例を説明する。図2〜図19は各パラメータを決める根拠となるデータを説明するための図である。
【0024】
まず、フェルミ関数の設計中心周波数または中心波長λを与える(ステップS1)。フェルミアンテナは一般に数オクターブの広帯域性をもち、中心周波数はその広帯域の中心の周波数を意味する。したがって、広帯域であるということは、中心周波数のまわりの比較的広い帯域を使用可能にすることをいう。例えば、35GHzを中心周波数に選んだ場合、30GHz程度から40GHz程度まで使用可能となるような設計とすることを意味している。
【0025】
続いて、誘電体基板の実効厚を決定する(ステップS2)。この実効厚は[数2式]に示されるように、誘電体基板の比誘電率εrの平方根から1を引いた値に、誘電体基板の厚さhを掛け算した値を、さらに中心周波数対応の波長λで割った値である。ステップS2においては、この値が数2式を満たすように設定される。図2は、誘電基板の厚さhを3段階(0.1mm、0.2mm、0.5mm)に変えるとともに、比誘電率εrを2段階(3.7、9.8)に変えて実効厚を変化させたときの動作利得をグラフにしたものである。このグラフから明らかなように、εr=3.7及びεr=9.8のいずれの場合も、実効厚が0.01付近で最高利得となっている。これは、実効厚が0.01付近において、コルゲート構造とテーパ内部の誘電体が共に遅波構造として働き、これらに沿う電磁波が同位相となる厚さとなって、実効開口面積が広げられることに起因している。すなわち、フェルミアンテナのスロット軸付近では最初から遅波構造になっているが、コルゲート構造とすることにより周辺部も遅波構造となって、開口幅全体にわたって電磁波が同位相となって発せられるのである。
【0026】
また、図2は、実効厚を増加すると利得はわずかに減少するが、減少はそれほど大きくないこと、そして、実効厚が比較的厚くても動作利得の劣化が小さいことを示している。したがって、実効厚が[数2式]を満たしていれば、設計上は満足できる動作利得が得られる。また、図3から分かるように、誘電体を設けた場合と誘電体がない場合とを比較すると、誘電体を設けた方がE面とH面の全方向にわたって電力が前方に集中し、高利得の特性が得られることが理解できる。なお、図2の実効厚における動作利得の解析に当たっては、アンテナの開口幅W=0.91λ、フェルミ関数のパラメータa=W/2、b=2.4/λ、c=2λとしている。
【0027】
【数2】

【0028】
次に、図1のフローチャートにおいて、アンテナ長(L)が決定される(ステップS3)。図4は、アンテナ長Lを決定するために、フェルミアンテナのテーパのスロット線路軸付近と周辺のコルゲート付近の電界強度分布を解析したものである。このように、アンテナ長Lは、スロット線路で励振された波がアンテナ先端部で十分減衰する長さをFDTD法による電磁界解析により求めることにより決定することができる。すなわち、図4によれば、テーパの中心軸(スロット軸)付近の電界強度は、給電点(L/λ=0)から遠ざかるに従って減衰し、L=4λ付近で飽和している。一方、コルゲート付近で解析した電界強度は、給電点(L/λ=0)から遠ざかるに従って増加し、同様にL=4λ付近で飽和する。
このことは、L=4λ付近になって、中心軸上の電界とコルゲート付近の電界の両方が安定することを意味しており、この結果、アンテナ長Lとしては4λ程度の長さとすることが有効であるので、ここでは、L=4λと決定することとした。このアンテナ長Lの値は必ずL=4λでなければならないということではなく、図4から見てL=3λとしてもよいことがわかる。
【0029】
次に、図1のフローチャートにおいて、コルゲート構造の寸法、すなわち、実効コルゲート長l、コルゲートのピッチp、コルゲートの幅wを決定する(ステップS4)。
このコルゲート構造は、ホーンアンテナなどによく用いられる遅波線路であり、従来のフェルミアンテナにおいては、ビーム幅を変化させるために用いられていた。本発明のコルゲート構造の寸法は、一旦決定されたら変化させることがない点で従来のものと異なっている。
最初に、コルゲートの幅wを決定する。このコルゲートの幅wは、波長λに対して十分狭く取ればよいことが知られており、アンテナ長を100分割した値、w=L/100=λ/25程度とすることが適当であるので、以下の解析ではw=λ/25としている。
【0030】
同様に、ステップS4において、コルゲートの長さlが決定される。実効コルゲート長lの決定を行うため、図5、図6に示すように、実効コルゲート長lに対する動作利得特性の解析を行った。図5はガラス基板(比誘電率3.7)、図6はアルミ基板(比誘電率9.8)でコルゲート長を変化させて動作利得をFDTD解析した結果を示すものである。 ここで、λは実行波長であり、真空時の中心波長λを比誘電率の平方根で割った値である。図5及び図6の解析結果に示されるように、実効コルゲート長l/λgが略0.1以上であれば、動作利得が概ねフラットな特性を持っていることが認められた。つまり、中心周波数または使用最低周波数に対する実効コルゲート長l/λgが0.1以上あれば、高利得特性が得られることが解析された。
【0031】
次に、同じく図1のフローチャートのステップS4において、コルゲートのピッチpが決定される。図7A〜Dは、コルゲートの幅wとピッチpの関係を模式的に示したものであり、それぞれ、p=2w、p=4w、p=8w、p=10wになっている。また、図7Eは、周波数を変化させたときの動作利得特性を示した図であり、p=2wとp=4wの場合は、略30GHzから50GHzまでの広帯域にわたって高利得で安定した動作利得が得られることが確認された。このことから、コルゲートのピッチはp=2wに決定すれば十分であることがわかる。
【0032】
次に、図1に示すフローチャートにおいて、フェルミ関数のパラメータである(a,b,c)が決定される(ステップS5)。このパラメータはフェルミ関数のテーパ形状を決定するものである。
このステップS5において、まず、パラメータaの初期値が設定される。パラメータaは、開口幅W(W=2a)に関係するパラメータであり、初期値としては開口幅Wを1波長程度(W=λ)、すなわちa=λ/2に設定する(図8を参照)。同様に、ステップS5において、パラメータcの初期値が設定される。このパラメータcは、フェルミアンテナの軸方向のフェルミ関数のテーパ形状の変曲点の位置を示すパラメータであり、このパラメータcによりH面のビーム幅が主として決定される。初期値としては、上述のようにアンテナ長Lの半分、a=L/2(2λ)に設定される。
【0033】
続いて、ステップS5において、パラメータbが決定される。パラメータbは変曲点における接線の傾きを決める値であり、傾きf′(c)が決まればb=4f′(c)/aにより求められる。例えば、図8に示すように、変曲点をアンテナの中心(c=L/2=2λ)に置き、f′(c)=W/2L(b=1/λ)に選定すると、テーパ形状が概ね直線(LTSA)となる。そこで、さらにH面のサイドローブレベルを低くするため、パラメータbを2.4/λ0に選定してサイドローブレベルの周波数変化を解析した。なお、ここではa=0.455λとしている。図9から明らかなように、b=1/λ0、b=2.4/λ0、b=4.8/λ0の中で、b=2.4/λ0の時が広い周波数範囲にわたってH面のサイドロープレベルが低いことがわかる。H面のサイドローブが低いことは、実質的に高利得になると考えられており、このサイドローブが広帯域の範囲で低いことがフェルミアンテナを設計する上で重要となる。したがって、ここでは、パラメータbとしてb=2.4/λに決定している。
【0034】
次に、図1のフローチャートにおいて、H面及びE面の設計すべきビーム幅の目標値BWdesignが設定される(ステップS6)。ここでは、設計周波数を35GHzとし、放射指向性が10dBビーム幅の目標値BWdesign=52°となる構造に目標値を決定する。
ここで、FDTD法のセルサイズとしては、誘電体としてガラス素材を用いた場合(ε=3.7の場合)は、Δx=0.1714mm、Δy=0.1mm、Δz=0.05mmであり、誘電体としてアルミナを用いた場合(ε=9.8の場合)は、Δx=0.1714mm、Δy=0.05mm、Δz=0.05mm としている。誘電体の違いによって変更されるのはy方向のセルサイズのみである。
【0035】
次に、図1のフローチャートにおいて、フェルミ関数の変曲点cの値が仮設定される(ステップS7)。ここでは、ステップS5で初期値として設定されたアンテナ長Lの半分の値c=L/2として、次の判断ステップS8に進む。判断ステップS8では、H面のビーム幅がステップS6で設定したビーム幅の目標値BWdesign=52°に等しいか否かが判断される。H面のビーム幅が目標値52°に等しい場合は、次のE面のビーム幅を決めるステップに進むが、判断ステップS6において、H面のビーム幅が目標値52°に一致しないと判断された場合は、フェルミ関数の変曲点cを変化させた後(ステップS9)、ステップS7、ステップS8を繰り返す。
【0036】
この変曲点cを変化させた場合の例を図10に示す。図10は変曲点cがアンテナ長の中心位置から、左方向へシフトしたときの図であり、この変曲点cの値がH面のビーム幅の変化に大きく寄与している。図11(A)は、開口幅をW=0・91λ0に固定して変曲点の位置を変化したときの10dBビーム幅を示す図である。変曲点cを2λ0からλ0まで小さくすると、H面の10dBビーム幅が70.4°から目標値52°まで変化する。しかし、このときのE面のビーム幅の変化はわずか7.5°となっている。したがって、この図11(A)から、E面のビーム幅に関しては、変曲点cの変化の寄与率は比較的少ないと見ることができる。なお、この実験では、a=W/2、b=2.4/λとしている。なお、後述するが、図11(B)は、変曲点cの位置は変えないで、開口幅Wを変化させた場合のデータをプロットしたものである。
【0037】
このように、図1のフローチャートにおいて、ステップS9でフェルミ関数の変曲点cを変化させて、再び、ステップS8の判断を行い、H面のビーム幅が目標値BWdesign=52°に一致するまで繰り返す。このループの繰り返しにより、やがてH面のビーム幅が目標値に一致し、次のステップS10に進む。
【0038】
ステップS10では、フェルミアンテナの開口幅Wが仮に設定される。誘電体基板の基板幅Dは、開口幅Wにコルゲートの高さlを2倍したものを加えた値、D=W+2lに設定する。ここで、まず、基板幅Dと開口幅Wの関係について、図12に基づいて説明する。図12の(A)は、基板幅D>W+2lcの場合(d>l)のフェルミアンテナのテーパ形状を示したものであり、(B)は、基板幅D=W+2lc(d=l)の場合のフェルミアンテナのテーパ形状を示したものである。また、図12(C)は、開口幅W=0.91λ0、a=W/2、b=2.4/λ0、c=2λ0として、基板幅と開口幅の差(D−W=2d)を変化させて解析した動作利得特性である。図12(C)から、最高利得となるdの値は、d=lであることが分かる。したがって、ステップS10における基板幅Dの決定に際しては、D=W+2lcとすることとする。また、開口幅Wとしては初期値として0.91λに設定する。
【0039】
続いて、E面のビーム幅がステップS6で設定した目標値BWdesign=52°に一致しているか否かが判断される(ステップS11)。この判断ステップS11でE面のビーム幅が目標値BWdesign=52°に一致していると判断された場合は、H面、E面ともビーム幅が目標値になったことになるので、終了する(ステップS13)。判断ステップS11でE面のビーム幅が目標値BWdesign=52°に等しくなっていないと判断された場合には、アンテナの開口幅Wを変化させる(ステップS12)。
【0040】
図13は、フェルミ関数のパラメータb=2.4/λ0、c=λ0とした状態で、開口幅W(2a)を変えた場合のフェルミアンテナのテーパ形状を示したものである。また、図11(B)は、このようにパラメータbとcを一定値に設定した状態で、開口幅Wを変化させたときの、H面とE面の10dBビーム幅をプロットしたものである。開口幅Wを0.91λから0.32λまで小さくすることにより、E面のビーム幅が目標値BWdesign=52°まで変化している。しかしながら、このときのH面のビーム幅の変化はわずかに1.2°であり、開口幅の変化に依存しないで略一定に保たれていることがわかる。
【0041】
以上説明したように、図11(A)は、変曲点cの変化がH面のビーム幅の変化に大きく影響し、E面のビーム幅に与える影響が少ないことを示しており、図11(B)は、開口幅Wの変化がE面のビーム幅に大きく影響し、H面のビーム幅への影響が小さいことを示している。この結果から、H面とE面のビーム幅は、変曲点cの位置と開口幅Wの値をそれぞれ独立に変化させて調整することができるといえる。したがって、本発明の設計方法では、この性質を利用して、H面とE面のビーム幅を独立させて目標値BWdesign=52°に一致させるようにしている。
【0042】
図14(A)は、フェルミ関数の変曲点cの位置を変化させたときの動作利得を示すグラフであり、図14(B)は、フェルミアンテナの開口幅を変化させたときの動作利得を示すグラフである。この図14(A)からわかるように、開口幅を変えずに変曲点cの位置を左方に移動すれば、つまりcを小さくすれば高利得化することができる。また、図14(B)から、開口幅Wを0.91λ0から0.32λまで小さくしても、低下する利得は1dB程度と少ないことがわかる。
【0043】
図15は、上記の方法で設計したフェルミアンテナを用いて対象物から発せられる熱雑音を測定したときの測定値(○)とFDTD法によって解析した解析値(実線)の動作利得パターンをプロットしたものである。図15(A)はH面の動作利得パターン、図15(B)はE面の動作利得パターンを示し、図15(C)は10dBビーム幅の周波数特性を示している。この図から見て、H面のビーム幅の方がE面のビーム幅より広角になっていることがわかる。また、図15(C)からわかるように、測定値とFDTD解析値は35GHz付近を境にして、周波数が高くなると一致度が増し、周波数が低くなると差が大きくなっているといえる。
【0044】
図16は、開口幅Wを0.32λとして設計したフェルミアンテナを用いて熱雑音を測定したときの測定値(○印)と同じくFDTD法によって解析した解析値(実線)の動作パターンをプロットしたものである。この図から明らかなように、開口幅Wを0.32λとしたことによって、E面(図16A)、H面(図16B)ともに指向性のパターンの一致度が高くなっており、円形の指向性が実現されていることがわかる。また、実験による測定値と解析値は極めてよく一致していることもわかる。
【0045】
また、図17は、2種類の誘電体基板を用いてそれらの実効厚を同じにして、石英(h=200μm)を用いた場合の測定値(実線)とアルミナ(h=100μm)を用いた場合の測定値(点線)の動作パターンをプロットしたものである。E面(図17A)、H面(図17B)とも、放射指向性が極めよく一致していることがわかった。この実験結果から明らかなように、誘電基板の材質が変わっても、実効厚を等しくすることによって、極めて近い動作利得パターンが得られることを確認することができた。
【0046】
図18は、上述した設計手順によって得られるフェルミアンテナの変曲点cの位置と、開口幅Wの変化に対する動作利得パターンの変化を示すものである。この図18と既に説明した図11から明らかなように、35GHz帯において、変曲点cの位置を小さくすることにより、H面のビーム幅が縮小し、開口幅を小さくすることによって、E面のビーム幅が大きくなるので、H面のビーム幅とE面のビーム幅が極めて近い動作利得パターンとなることわかる。
【0047】
また、図19は、以上のような設計手順によって設計したフェルミアンテナの周波数と10dBビーム幅の関係をプロットしたグラフである。この図からわかるように、32.5GHzから40GHz程度までの広い周波数帯で、H面とE面のビーム幅は略等しくなっている。このように、本発明の設計方法により設計したフェルミアンテナの10dBビーム幅は広帯域性を持っており、動作利得が14.8dBi、E面とH面のサイドローブレベルがそれぞれ−20.1dB,−16.8dBの軸対称な放射指向性が得られている。
【0048】
次に、本発明のフェルミアンテナの設計方法の他の実施の形態の例を図20に基づいて説明する。図1のフローチャートと同じ部分は同一のステップ符号を付している。図1に示す実施の形態と異なるところは、ステップS6でH面とE面のビーム幅の目標値BWdesignを設定した後に、ステップS10において、開口幅(W、D)の設定を行っている部分である。そして、ステップS11においてE面のビーム幅がBWdesignに等しくないと判断された場合に、アンテナの開口幅を変化させ(ステップS12)、再び、ステップS10に戻している。この設計方法では、E面のビーム幅の決定プロセスループの中に、H面ビーム幅の決定プロセスのループが入るので、常にE面のビーム幅(開口幅)に依存してH面のビーム幅が左右される可能性を有する。しかし、図11(B)からわかるように、開口幅Wが変化しても、H面のビーム幅は略一定を維持しているので、上記のような方法でも図1のフローチャートと同様にE面とH面の放射指向性が等しいフェルミアンテナを設計することができる。
【0049】
以上説明したように、本発明におけるフェルミアンテナの設計方法及び設計プログラムを利用することにより、E面とH面の放射パターンを一定の手順によって、比較的短時間に同じパターンとすることが可能である。また、E面、H面とも高い利得のアンテナと刷ることができると共に、所望のビーム幅を持たせ、かつサイドローブも低く設定することができるので、ミリ波イメージング用受講素子に適したフェルミアンテナを実現することができる。
【0050】
なお、本発明のフェルミアンテナの設計方法及び設計プログラムは、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限りにおいて、適宜変更して利用することができることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態のフェルミアンテナの設計方法及びプログラムを示すフローチャートである。
【図2】本発明のフェルミアンテナに用いられる誘電体基板の実効厚と利得の関係を示すグラフである。
【図3】フェルミアンテナの誘電体の有無に対するH面及びE面の動作パターンを示す図である。(A)は誘電体無しの場合、(B)は誘電体有りの場合である。
【図4】フェルミアンテナのテーパ内外の電界強度を示すグラフである。
【図5】フェルミアンテナの誘電体基板としてガラスを用いた場合の実効コルゲート長に対する動作利得を示したグラフである。
【図6】フェルミアンテナの誘電体基板としてアルミナを用いた場合の実効コルゲート長に対する動作利得を示したグラフである。
【図7】フェルミアンテナのコルゲートの幅とピッチの関係に対する周波数−利得特性を示した図である。(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれp=2wc、4wc、8wc、10wcのときのコルゲート構造を示し、(E)は各コルゲート構造のフェルミアンテナの周波数−利得特性を示すグラフである。
【図8】フェルミアンテナのテーパ形状の変曲点がアンテナ長の中心にある場合の変曲点における接線の傾きを示す図である。
【図9】フェルミアンテナのパラメータbを変化させたときのテーパ形状(A)と、H面のサイドローブレベルの周波数特性(B)を示す図である。
【図10】フェルミアンテナのテーパ形状の変曲点の位置をアンテナ長の1/4付近に移動させた場合の変曲点における接線の傾きを示す図である。
【図11】フェルミアンテナのフェルミ関数の変曲点位置の変化に対するH面とE面の10dBビーム幅(A)と、フェルミアンテナの開口幅の変化に対するH面とE面の10dBビーム幅(B)を示す図である。
【図12】フェルミアンテナの基板幅Dと開口幅Wの差dを変化させたときの動作利得を示す図である。
【図13】フェルミアンテナのテーパ形状の変曲点の位置をアンテナ長の1/4付近に移動させ、更に開口幅を狭くした場合のフェルミアンテナの構造を示す図である。
【図14】フェルミアンテナのフェルミ関数の変曲点位置の変化に対する利得特性(A)と、フェルミアンテナの開口幅の変化に対する利得特性(B)を示す図である。
【図15】本発明の設計方法において設計したフェルミアンテナのH面の指向性(A)とE面の指向性(B)のFDTD法による解析値と測定値、及び10dBビーム幅の周波数特性(C)を示した図である。
【図16】本発明の設計方法において、開口幅W=0.32λとして設計したフェルミアンテナのE面の指向性(A)とH面の指向性(B)のFDTD法による解析値と測定値を示した図である。
【図17】本発明の設計方法において、誘電基板の材質と厚さを変えて実効厚を同じにしたときのフェルミアンテナのE面の指向性(A)とHの指向性(B)のFDTD法による解析値と測定値を示した図である。
【図18】本発明の設計方法において、変曲点位置を変化させてH面ビーム幅を変更し、開口幅を変化させてE面ビーム幅を変更することを説明するための動作利得パターンを示す図である。
【図19】本発明の設計方法により設計されたフェルミアンテナの10dBビーム幅の周波数特性と動作利得パターンを示す図である。
【図20】本発明の他の実施の形態のフェルミアンテナの設計方法及びプログラムを示すフローチャートである。
【図21】ミリ波パッシブイメージングの原理を模式的に示した図である。
【図22】フェルミアンテナの構造と原理を示す図である。
【図23】典型的なフェルミアンテナの寸法の例を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
100・・・対象物、101・・・レンズアンテナ、10、102・・・フェルミアンテナ、11・・・誘電体基板、12・・・コルゲート構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波の受信画像化に必要な広帯域で円形指向性を有するコルゲート付フェルミアンテナの設計方法であって、前記フェルミアンテナのテーパ関数であるフェルミディラック関数の変曲点を変化させて、H面のビーム幅を目標の指向性を有するビーム幅に設定するとともに、
前記フェルミアンテナの開口幅を変化させて、E面のビーム幅を前記目標の指向性を有するビーム幅に設定することにより、広帯域かつ円形指向性を実現することを特徴とするフェルミアンテナの設計方法。
【請求項2】
ミリ波の受信画像化に必要な広帯域で円形指向性を有するコルゲート付フェルミアンテナの設計方法であって、
広帯域周波数の中心周波数またはそれに対応する波長を与えるステップと、
前記フェルミアンテナの誘電体基板の実効厚を決定するステップと、
前記フェルミアンテナのアンテナ長を決定するステップと、
前記フェルミアンテナの前記コルゲートの幅、ピッチ及び高さを決定するステップと、
前記フェルミアンテナのテーパ形状を形成するフェルミディラック関数のパラメータを決定するステップと、
前記フェルミアンテナから放射される電波のH面とE面のビーム幅の目標値を設定するステップと、
前記フェルミ関数の変曲点を任意に設定した後に、前記H面のビーム幅を前記予め設定したH面のビーム幅の目標値と比較するH面ビーム幅比較ステップと、
前記H面ビーム幅比較ステップにおいて、前記目標値に一致しないときは、変曲点の位置を変化させた後、再び前記H面のビーム幅を前記予め設定したH面のビーム幅の目標値と比較するステップを繰り返すH面ビーム幅決定サイクルと、
前記H面ビーム幅比較ステップにおいて、H面ビーム幅が予め設定したH面ビーム幅と一致したときに、前記フェルミアンテナの開口幅を設定するステップと、
前記設定した開口幅に基づいて放射される電波のE面のビーム幅と、前記予め設定したE面のビーム幅の目標値を比較するE面ビーム幅比較ステップと、
前記E面ビーム幅比較ステップにおいて、前記目標値に一致しないときは、前記開口幅を変化させ、再び前記E面のビーム幅を前記予め設定したE面のビーム幅の目標値と比較するステップを繰り返すE面ビーム幅決定サイクルと、
を含み、前記H面ビーム幅と前記E面ビーム幅の双方とも略等しい円形指向性を有するように設計することを特徴とする広帯域フェルミアンテナの設計方法。
【請求項3】
ミリ波の受信画像化に必要な広帯域で円形指向性を有するコルゲート付フェルミアンテナを設計するためのプログラムであって、
広帯域周波数の中心周波数またはそれに対応する波長を与える手順と、
前記フェルミアンテナの誘電体基板の実効厚を決定する手順と、
前記フェルミアンテナのアンテナ長を決定する手順と、
前記フェルミアンテナの前記コルゲートの幅、ピッチ及び高さを決定する手順と、
前記フェルミアンテナのテーパ形状を形成するフェルミディラック関数のパラメータを決定する手順と、
前記フェルミアンテナから放射される電波のH面とE面のビーム幅の目標値を設定する手順と、
前記フェルミ関数の変曲点を任意に設定した後に、前記H面のビーム幅を前記予め設定したH面のビーム幅の目標値と比較する手順と、
前記H面ビーム幅が前記目標値に一致しないときは、前記変曲点の位置を変化させた後、前記H面のビーム幅と前記H面のビーム幅の目標値と比較する手順を繰り返し、前記前記H面ビーム幅を比較する手順において、H面ビーム幅が予め設定したH面ビーム幅と一致したときに、前記フェルミアンテナの開口幅を設定する手順と、
前記設定した開口幅に基づいて放射される電波のE面のビーム幅と、前記予め設定したE面のビーム幅の目標値を比較する手順と、
前記E面ビーム幅を比較する手順において、前記E面のビーム幅が前記E面ビーム幅の目標値に一致しないときは、前記開口幅を変化させて前記E面のビーム幅を前記予め設定したE面のビーム幅の目標値と比較する手順を繰り返すことにより、
前記H面ビーム幅と前記E面ビーム幅の双方とも略等しい円形指向性を有するように設計するための手順を実行する広帯域フェルミアンテナの設計のためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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