説明

広角度ベーン形揺動アクチュエータ

【課題】ベーンにより仕切られたシリンダ室への作動流体の供給、排出により出力シャフトを揺動作動するベーン形揺動アクチュエータにおいて、市場でよく使用される揺動角度180°をベーン形搖動アクチュエータの特徴であるコンパクト性を生かし、歯車を介して角度を広げる方式ではなく、搖動角度を広くしたコンパクト、高トルクであって、摩擦抵抗の小さい、耐久性に優れた広角度ベーン形搖動アクチュエータを提供する。
【解決手段】シャフト5に嵌合固定されたベーン6の溝にはシリンダ室を仕切るシール材として一体成形されたシールパッキン61が装着され、ベーン61の長辺側にはシールパッキン61のコの字部61bがベーン6の溝6bに装着され、ベーン6の短辺側にはシールパッキン61のサークル形状部61cから2つに分岐したコの字部61aが溝6aに装着されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーン形揺動アクチュエータに係り、特に、シール性に優れたコンパクトで、摩擦抵抗の小さい広角度ベーン形揺動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、コンパクト性に優れたベーン形揺動アクチュエータとしては下記特許文献1の出力軸に一体形成されたベーンにシールパッキンを皮膜形成した扇形状のベーン形搖動アクチュエータにおいて、扇支点側搖動部にも複数の縦突条が皮膜形成され、広い搖動角度が得られるというベーン形揺動アクチュエータが記載され、また、特許文献2のベーン形揺動アクチュエータについては成形したシールパッキンをベーンに取付けることにより、漏れを大幅に減少したベーン形搖動アクチュエータが記載されている。
【特許文献1】特開平11−93907号公報
【特許文献2】特開2009−243672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1のベーン形搖動アクチュエータについては出力軸にベーンを一体形成し、更に、一体形成された出力軸とベーンにシール用の合成ゴムを皮膜形成し、ケーシング内の出力軸の軸摺動部には出力軸の軸線方向に多数の縦突条を皮膜形成しているため、広角な搖動が可能となっている。しかし、出力軸とベーンを一体形成し、更に、合成ゴムを皮膜形成するため、形成のための複雑な専用の型が必要となり、出力軸の形状、外形等の変化に対応できなく非常に高価なものとなる。更に、シールがベーンに一体形成されているため、アクチュエータ駆動時の圧力変動、偏荷重、搖動速度等によるシール部への荷重の変動に対して順応性が少ないため、摩擦抵抗が高く、耐久性も短くなり、合成ゴムでできた摺動部の摩耗に対して、交換するときは一体形成された出力軸とベーン共々交換するという無駄が発生する。更に、ケーシング内の出力軸の軸摺動部には出力軸の軸線方向に多数の縦突条を皮膜形成しているため複数の縦突条がシール状態となり摺動部の抵抗が更に高くなって、低圧駆動ができないという問題があった。また、特許文献2のベーン形搖動アクチュエータでは成形したシールパッキンをベーンに装着することによりシール性が大幅に良くなり、漏れがほとんど無く、摩擦抵抗が低く、耐久性にも優れ、更に、シールパッキンの摩耗時にはシールパッキンのみを交換し、再利用できるが搖動角度に限界があり、市場でよく使用される搖動角度180°の場合には歯車を介した搖動アクチュエータとなるため、出力トルクが歯車の比率分減少し、また、形状も大きくなり、コストも高くなるという問題があった。
そこで、耐久性が長く、摩擦抵抗の小さなコンパクトで薄形の搖動角度の大きな広角度ベーン形搖動アクチュエータが要望されていた。
【0004】
本発明は上述の課題を解決するものであり、ベーン形搖動アクチュエータのコンパクト性に優れた特性を生かして、耐久性に優れた、摩擦の小さな薄形で、シールパッキンを交換することで再利用可能な広角度ベーン形搖動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために本発明の請求項1に記載の広角度ベーン形揺動アクチュエータは内側が扇形状した本体チューブの上下にカバーを取付けたシリンダ室内にシャフトの長手中央部近傍にシールパッキンが装着されたベーンが嵌合固定され、シャフトは上下カバーより突出している。シールパッキンが装着されたベーンはシリンダ室を左右の部屋に仕切り、仕切られたそれぞれのシリンダ室への作動流体の供給、排出によりシャフトを扇の支点軸としてベーンがシリンダ室内を搖動できる。この場合に、ベーンに装着されたシールパッキンは弾性体の成形でできており、形状がシャフトと上下のカバー間のシールがシャフトの外径より大きなサークル形状であり、本体チューブとベーン、及び、上下のカバーとのシール部形状がコの字形状で前記サークル形状に連続的に一体成形され、更に、扇支点側搖動部のシールパッキンがサークル形状部より2つのコの字形状に分岐し、搖動時には分岐したシール部の少なくとも片方がシール面に当接してシールしているため180°以上の広角度を搖動できる。
【0006】
請求項2に記載の発明は本体チューブの上下にカバーを取付けたシリンダ室内を左右に仕切るベーンにシールパッキンが装着され、そのシールパッキンの形状がシャフトとカバー間のシール部がサークル形状であり、シャフトに嵌合固定されたベーンの長辺側搖動部シール形状がコの字形状となっており、シャフトとカバー間のシール部であるサークル形状に連続的に一体のシール面を有して、ベーンに配設されたシールパッキンの断面幅より広い溝に装着されている。更に、シールパッキンの長辺側コの字形状部の直線シール部には直線シール部の略中央部にシールパッキン装着溝幅寸法とほぼ同一寸法のリブが形成されている。
【0007】
請求項3に記載の発明は請求項1に記載された本体チューブを上下に二分割し、本体チューブの片側端面に請求項1に記載のカバーが一体成形された成形品にそれぞれの加工を加えて、逆向きに組み合わせることにより内側にシャフトに固定されたベーンが搖動するシリンダ室が構成されている。
【発明の効果】
【0008】
上記のように請求項1の広角度ベーン形揺動アクチュエータによれば内径形状が扇形状の本体チューブの上下にカバーが取り付けられたシリンダ室にはシャフトにシールパッキンが装着されたベーンが嵌合固定されシリンダ室を仕切っている。シャフトの長手中央部近傍に固定されたベーンに装着されたシールパッキンの形状はシャフトと上下カバー間のシール部がサークル形状であり、シャフトに直角方向に伸びたベーンの長辺側扇形状先端搖動部とベーンの短辺側扇支点側搖動部のシールパッキンがコの字形状になってサークル形状と連続的にシール面を有した装着シールパッキンとなっているためシリンダ室内の仕切り部分、及び、シャフト外部への作動流体の漏れがほとんど発生することなく、また、シールパッキンがベーンに配設された溝内で変形、微動可能に溝幅より小さい断面形状で装着されているため、負荷によるシャフトへの偏荷重や搖動の繰り返し、流体圧変動、及び、搖動速度変化によるシールパッキンへの荷重の変動に対して、弾性ゴムの溝内での変形、微動により順応でき、摩擦抵抗力も小さく、耐久性にも優れると共に、シールパッキンの摺動部に摩耗が発生した時にはシールパッキンのみを交換できるため、非常に安価で、再利用が可能となった。更に、シールパッキンのベーンの短辺側のコの字シール部はサークル形状から2つに分岐しているため180°以上の搖動に対しても、扇支点側搖動部を少なくとも片方のシール部がチューブの摺動部に当接してシールできる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、シャフトに嵌合固定されたベーンに装着されているシールパッキンの長辺側コの字部の直線シール部の略中央部にシールパッキン溝幅寸法とほぼ同一寸法のリブが形成されているため、シールパッキンの長辺部溝内での流体圧力、摺動摩擦力によるシールパッキンの転がりやねじれ現象の発生を防ぐことができ、より安定したシールと耐久性のアップが可能となる。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、シールパッキンが装着されたベーンがシャフトに固定され、作動流体の供給、排出によりベーンが内部で搖動作動するシリンダ室が本体チューブの二分割分とカバーが一体成形された部品を逆向きに組み付けて構成されているため、部品も少なく、成形品が共通化されるため安価にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の断面図、図2は左側面図を示し、図3は図2の右方向搖動時本体チューブI−I、本体チューブ以外II−II断面図を示し、図4は図2の左方向搖動時本体チューブI−I、本体チューブ以外II−II断面図を示し、図5は要部分解斜視図を示している。本発明は本体チューブ3の上下両端には第1のカバー2と第2のカバー4がボルト(図示せず)により固定されており、本体チューブ3の内部にはシャフト5の略中央部にシールパッキン61が装着されたベーン6が嵌合固定され本体チューブ3の内側シリンダ室33を揺動可能に挿入されている。更に、シャフト5の両端はベーン6の本体チューブ3内での揺動軸として第1のカバー2と第2のカバー4に配設された孔21,41の内径部に圧入された軸受22,42を挿通して、第1のカバー2の下面、及び、と第2のカバー4の上面に出力シャフト5b、5aとして突出している。
【0012】
更に、図3、図4、図5に示すようにベーン6にはシリンダ室33を仕切るために一体成形されたシールパッキン61が装着できる溝6a、6b、6cが配設されており、ベーン6の溝としてはシャフト5と第1のカバー2、及び、第2のカバー4とをシールするシールパッキン61のサークル形状部61cが装着できるように溝6cが配設され、また、ベーンの長辺側にはコの字形状部61bが装着できるように溝6bが配設され、ベーンの短辺側にはシールパッキン61のサークル形状部61cから2つに分岐したコの字形状部61aが装着できるように溝6cから2つに分岐した溝6aが配設されている。
【0013】
次に、動作を説明すると、広角度ベーン形揺動アクチュエータ1の本体チューブ3に配設されたポート31に加圧流体を供給し、ポート32からは加圧流体を排出すると加圧流体は通路31aを通ってベーン6によって仕切られたシリンダ室33の右側に加圧され、シリンダ室33の左側からは通路32aを通ってポート32より加圧流体が排出されるためシャフト5と嵌合固定されたベーン6はシャフト5を揺動軸として図3の左方向(反時計回り方向)に揺動する。逆に、ポート32に加圧流体を供給し、ポート31からは加圧流体を排出すると加圧流体は通路32aを通ってベーン6によって仕切られたシリンダ室33の左側に加圧され、シリンダ室33の右側からは通路31aを通ってポート31より加圧流体が排出されるためシャフト5と嵌合固定されたベーンは図3の右方向(時計回り方向)に揺動する。この場合にベーンの短辺側にはシールパッキン61のサークル形状部61cから2つに分岐したコの字形状部61aが成形されているため180°以上の搖動角度が可能となる。更に、分岐したことにより、摩擦抵抗の高い作動スタート時には図3、図4に示すように、搖動作動の両端においては短辺側コの字形状部シール61aの片方のみが抵抗になるため、摩擦力は低く抑えられる。
【0014】
また、請求項2の内容のように図5にはシールパッキン61の長辺コの字形状の直線シール部には直線シール部の略中央部に溝幅寸法とほぼ同一のリブ61dが形成されているため、直線シール部の中央付近の溝61b内での転がり、ねじれを防止できる。
【0015】
図6、図7は第二実施形態の広角度ベーン形搖動アクチュエータを示している。第一実施形態に示したと同じ広角度ベーン形揺動アクチュエータの本体チューブの二分割とカバーとを一体成形し、その成形品にチューブカバーA及びチューブカバーBの加工を施し、逆向きに組み合わせてシリンダ室の中には第一実施形態と同じ様に、シールパッキンを装着したベーンが一体固定されたシャフトがチューブカバーAの上部とチューブカバーBの下部より突出し、シャフトを搖動軸として搖動できる。
【実施例】
【0016】
本発明の実施例としては広角度ベーン形揺動アクチュエータのベーンの高さが26.5mmで出力シャフトの軸心からの長辺側ベーン幅が39mm、短辺側ベーン幅が13mmで、シールパッキンは線径が3.5mm、サークル形状部は中心径10.6mmで短辺側のサークル形状部から100°で2つのコの字形状部に分岐した搖動角度180°の広角度ベーン形搖動アクチュエータを試作した。その結果、搖動角度180°で両端の各40°については片方のシールが機能し、搖動角度中央の100°については2つのシール部が機能しているが、両端からの作動は0.05MPa以下の低圧で作動し、中央100°においても、スティックスリップすることなく、スムースに作動し、耐久試験においても500万回後も漏れも少なく、スムースな作動が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態を示す広角度ベーン形揺動アクチュエータの断面図である。
【図2】図1の実施形態の左側面図である。
【図3】図2の右方向搖動時本体チューブI−I、本体チューブ以外II−II断面図である。
【図4】図2の左方向搖動時本体チューブI−I、本体チューブ以外II−II断面図である。
【図5】本発明の広角度ベーン形揺動アクチュエータの要部分解斜視図である。
【図6】本発明の第二実施形態を示す広角度ベーン形揺動アクチュエータの断面図である。
【図7】図6の実施形態の左側面図である。
【符号の説明】
【0018】
1−広角度ベーン形揺動アクチュエータ
2−第1のカバー
3−本体チューブ
4−第2のカバー
5−シャフト
6−ベーン
6a,6b,6c−溝
7−チューブカバーA
8−チューブカバーB
21,41,71,81−孔
22,42,72,82−軸受
31,32−ポート
33−シリンダ室
61−シールパッキン
61a−シールパッキンの短辺側コの字形状部
61b−シールパッキンの長辺側コの字形状部
61c−シールパッキンのサークル形状部
61d−リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側形状が扇形状の本体チューブの上下にカバーを取付け、該本体チューブの内部にシャフトに固定されたベーンが該本体チューブ内を往復搖動自在に挿入され、該ベーンにより該本体チューブ内を搖動方向に仕切られた各々のシリンダ室への作動流体の供給、排出の切換えにより、該シャフトを軸として搖動作動を行うベーン形搖動アクチュエータにおいて、該シリンダ室を仕切る該ベーンの溝に装着されたシールパッキン形状が、該シャフトと上下の該カバー間のシール部がシャフト径より大きなサークル形状であり、該シャフトに直角方向の該ベーンの長辺側搖動部と該ベーンの短辺側搖動部のシールパッキン形状がコの字形状になって該サークル形状と連続的に一体のシール面を有して成形され、更に、短辺側搖動部の該シールパッキンが該サークル形状部より2つに分岐し、少なくとも分岐した片方のシール部が該本体チューブの円弧状のシール面に当接してシールしていることを特徴とする広角度ベーン形揺動アクチュエータ。
【請求項2】
広角度ベーン形搖動アクチュエータのシリンダ室を仕切るベーンに装着されたシールパッキンの該ベーンの長辺側搖動部の溝に装着されているコの字形状をした直線シール部の略中央部に該シールパッキン装着溝幅寸法とほぼ同寸法のリブを少なくとも1ヶ所形成したことを特徴とする請求項1に記載の広角度ベーン形揺動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1、請求項2に記載の広角度ベーン形搖動アクチュエータにおいた、本体チューブが上下に2分割され、上側チューブの上面と下側チューブの下面にカバーが一体成形加工されたことを特徴とする広角度ベーン形搖動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−185431(P2011−185431A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73531(P2010−73531)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(594120674)株式会社パボット技研 (21)
【Fターム(参考)】