説明

庇装置

【課題】 採光性を備えつつ、簡素な構造で容易に組み立てることができる庇装置を提供すること。
【解決手段】 躯体への取付用のフランジを有するベース部材11と、このベース部材11の両端11c、11dにそれぞれ基端12aを連ねて延出する一対のサイドアーム12とを備え、これらサイドアーム12のそれぞれに形成されている溝16に、採光可能な屋根部材15をサイドアーム12の先端12b側からスライドさせて挿入し、サイドアーム12の先端12bに、これらサイドアーム12同士を接続し、屋根部材を支持するフロントアーム14を設けて構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の庇装置、特に採光性を備える庇装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、庇装置は、窓に差し込む日光を遮る機能を持つものであるが、近年、本来の建物の庇装置とは異なり、採光性が有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種の庇装置では、庇本体の一部、あるいは全部に太陽光線を透過する採光部が設けられ、この採光部の上または下に近接してルーバが付設されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−144456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のものでは、採光部の上または下に近接してルーバを個別に取り付ける構成としているため、庇装置の構造が複雑になり、したがって、組み立て作業が煩雑になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、採光性を備えつつ、簡素な構造で容易に組み立てることができる庇装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、躯体への取付用のフランジを有するベース部材と、このベース部材の両端にそれぞれ基端を連ねて延出する一対のサイドアームとを備え、これらサイドアームのそれぞれに形成されている溝に、採光可能な屋根部材をサイドアームの先端側からスライドさせて挿入し、サイドアームの先端に、これらサイドアーム同士を接続し、屋根部材を支持するフロントアームを設けて構成したことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、一対のサイドアームの溝に、採光可能な屋根部材をスライドさせて挿入し、これらサイドアームの先端側同士をフロントアームで連結するだけで、当該庇装置を簡単に組み立てることができる。
また、フロントアームを取り外せば、一対のサイドアームから、採光可能な屋根部材を簡単に取り外すことができ、したがって、採光可能な屋根部材を複数種類準備しておけば、例えば、季節に応じて、任意に組み合わせた庇装置が可能になり、デザイン性に優れた庇装置が創出される。
【0008】
この場合において、屋根部材は、複数の羽根部材と、これら羽根部材の両端に配置され、当該羽根部材を連結する一対の連結部材とを備え、この連結部材は、羽根部材を所定の傾斜角に固定する構成としても良い。
また、屋根部材は、複数の貫通孔を有する板材と、この板材の両端に配置され、当該板材を支持する一対の支持部材とを備え、この支持部材がサイドアームの溝に嵌合する構成としても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ベース部材と、このベース部材の両端にそれぞれ基端を連ねて延出する一対のサイドアームとを備え、これらサイドアームのそれぞれに形成されている溝に、採光可能な屋根部材をサイドアームの先端側からスライドさせて挿入し、サイドアームの先端に、これらサイドアーム同士を接続し、屋根部材を支持するフロントアームを設けて構成したから、採光性を有する庇装置の構造が簡素化され、従来のものに比べて、容易に組み立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態である庇装置を示す縦断面図である。この図1において、符号1は、躯体に形成された窓開口部である。この窓開口部1には上枠2a、下枠2b及びこれら上枠2aと下枠2bとを接続する縦枠(不図示)を備える枠体2が配置され、この枠体2には、引き違い式の内サッシ3、外サッシ4及び網戸5がそれぞれ開閉自在に取り付けられている。また、枠体2の上枠2aの上部には、躯体の外壁6から室外側に張り出して庇(庇装置)7が取り付けられている。この庇7は、採光性と遮光性とを兼ね備えるものであり、例えば日射の強い夏季には遮光し、日射の弱い冬季には採光するように構成されている。
【0011】
この庇7は、図2に示すように、躯体に取り付けられる霧除け(ベース部材)11と、この霧除け11の両端11a、11bにそれぞれ基端12aを連ねて延出する一対のサイドアーム12と、これらサイドアーム12に平行に配置され、霧除け11の略中央に、その基端13aを連ねて延出するセンタアーム13と、これらサイドアーム12及びセンタアーム13の先端12b、13b同士を接続するフロントアーム14とを備え、これら霧除け11、サイドアーム12、センタアーム13及びフロントアーム14間に配置される採光可能な屋根部材15とを備えて構成される。
【0012】
霧除け11は、躯体の外壁6に沿って垂れた雨露が窓開口部1に浸入するのを防止するものであり、図1に示すように、躯体に取り付けるためのフランジ部11cと、屋根部材15の一端が挿入され、この屋根部材15を支持する支持部11dとを備え、また、フロントアーム14には、屋根部材15の他端が挿入され、この屋根部材15を支持する支持部14aが備えられている。
【0013】
サイドアーム12及びセンタアーム13には、図2に示すように、これらサイドアーム12とセンタアーム13とが対向する面に、それぞれ溝16、17が形成されている。この溝16、17は、屋根部材15をサイドアーム12及びセンタアーム13の先端12b、13b側からスライドさせて挿入するためのものであり、サイドアーム12及びセンタアーム13の長手方向に沿って形成されている。
【0014】
サイドアーム12は、図3に示すように、略コ字状をしたサイドアーム本体12cと、このサイドアーム本体12cの上端及び下端の近傍から水平方向に延出する一対のリブ部材12dと、これらリブ部材12dの対向面に形成され、屋根部材15を案内する案内レール12eとを備える。
本構成では、サイドアーム本体12c及び一対のリブ部材12dによって形成された空間が溝16として機能する。
センタアーム13は、図3に示すように、矩形状のセンタアーム本体13cと、このセンタアーム本体13cの上端及び下端からそれぞれ水平方向に延出する各一対のリブ部材13dと、これらリブ部材13dの対向面に形成され、屋根部材15を案内する案内レール13eとを備える。
本構成では、センタアーム本体13c及び一対のリブ部材13dによって形成された空間が溝17として機能する。
【0015】
屋根部材15は、図2に示すように、角パイプからなる複数本のルーバ(羽根部材)21と、このルーバ21の両端に配置され、当該ルーバ21を一体的に連結する一対の連結部材22とを備える。この連結部材22は、4本のルーバ21を一体的に連結可能に構成されており、本構成では、庇7は、3本のルーバ21が一対の連結部材22で連結される屋根部材15aと、4本のルーバ21が一対の連結部材22で連結される屋根部材15bとを備える。ルーバ21は、図1に示すように、霧除け11側が下がるように傾斜して配置されている。この傾斜角は、冬季における低い太陽高度(例えば、31度〜38度)では、日射を通し、夏季における高い太陽高度(例えば、55度〜78度)では、日射を遮るような角度に設定されている。連結部材22は、ルーバ21を上記の傾斜角に固定し、当該ルーバ21を連結するように形成されている。
【0016】
連結部材22は、図4に示すように、板状の基部22aと、この基部22aに連なりルーバ21を接続した際に、このルーバ21の端面が当接する当て部22bと、この当て部22bに連なり、ルーバ21の開口内に挿入される凸部22cとを備える。この凸部22cは、ルーバ21を上記の傾斜角に固定するように形成され、この凸部22cの周囲には、当該凸部22cをルーバ21の開口内に挿入した際に、このルーバ21の内壁に当接して、ルーバ21と連結部材22とを係止する係止片22dが形成されている。また、本構成では、1つの連結部材22に形成された4つの凸部22cのうち、中央の2つの凸部22cには、サイドアーム12と連結部材とを固定する際にねじ止めされるねじ孔22eが形成されている。
【0017】
ルーバ21の開口内に連結部材22の凸部22cを挿入すると、ルーバ21の高さ方向の端面21aは連結部材22の当て部22bに当接する。この場合、連結部材22の当て部22bは、ルーバ21の幅方向の端面21bが当接する位置には設けられていないため、図3に示すように、ルーバ21の幅方向の端面21bと連結部材22の基部22aとの間に係合溝23が形成される。この係合溝23は、屋根部材15をサイドアーム12及びセンタアーム13の溝16、17にスライドさせる場合に、上記案内レール12e、13eと係合するように構成されている。
【0018】
次に、図2を参照して、庇7の組み立て手順を説明する。
まず、霧除け11の両端11c、11dに、それぞれ固定用アングル31をねじ止めして取り付け、この固定用アングル31にサイドアーム12をねじ止めして取り付ける。次に、霧除け11の略中央に固定用アングル32をねじ止めして取り付け、この固定用アングル32にセンタアーム13をねじ止めして取り付ける。
【0019】
続いて、屋根部材15を組み立てる。具体的には、連結部材22の凸部22cをルーバ21の両端の開口に挿入する。この場合、連結部材22の当て部22bがルーバ21の高さ方向の端面21aに当接するまで挿入する。この作業を繰り返し、3本のルーバ21を連結部材22で連結した屋根部材15aと、4本のルーバ21を連結部材22で連結した屋根部材15bとを組み立てる。
【0020】
センタアーム13側の溝17に位置固定用のブッシュ25を配置し、この状態で、まず3本のルーバ21を有する屋根部材15aを、サイドアーム12及びセンタアーム13に形成された溝16、17に当該サイドアーム12及びセンタアーム13の先端12a、13a側から挿入する。この場合、屋根部材15aは、この屋根部材の一端が霧除け11の支持部11dによって支持される位置まで挿入される。次に、4本のルーバ21を有する屋根部材15bを、上記屋根部材15aと同様に溝16、17に挿入し、センタアーム13側の溝17に位置固定用のブッシュ25を配置する。このように、屋根部材15の前後にブッシュ25を配置することにより、当該屋根部材15が溝17内でガタつきが生じることを防止できる。次に、サイドアーム12側から、このサイドアーム12と、各連結部材22のねじ孔22eとを、ねじ34でねじ止めすることによって、屋根部材15をサイドアームに固定する。
【0021】
続いて、各サイドアーム12の先端12bに固定部材33及びコーナキャップ35をねじ止めして取り付ける。そして、サイドアーム12間にフロントアーム14を掛け渡し、このフロントアーム14と上記固定部材33とをねじ止めして取り付ける。また、センタアーム13とフロントアーム14とをねじ止めして固定する。最後に、サイドアームの基端12aにサイドキャップ36をはめ込み、サイドアーム12及びフロントアーム14にアームカバー37、38が取り付けるとともに、霧除け11のフランジ部11cにフランジカバー39を取り付けて組み立て作業を終了する。
【0022】
本実施形態では、躯体へ取り付けられる霧除け11の両端11c、11dに、それぞれ基端12aを連ねて延出する一対のサイドアーム12と、このサイドアーム12に平行に配置され、霧除け11の略中央に、その基端13aを連ねて延出するセンタアーム13とを設け、これらサイドアーム12及びセンタアーム13のそれぞれに形成される溝16、17に、採光可能な屋根部材15をスライドさせて挿入可能に構成したことにより、従来に比べて、採光性を有する庇7の構造を簡素化し、容易に組み立てることができる。
特に、本構成では、フロントアーム14を取り外し、サイドアーム12と屋根部材15とを固定しているねじ34を外すと、屋根部材15をスライドさせて取り外すことができるため、庇7を躯体に取り付けた場合でも、霧除け11、サイドアーム12及びセンタアーム13を残したままの状態で屋根部材15の取り外し、もしくは、取り付け作業ができるため、作業性の向上を図ることができる。また、例えば、屋根部材を採光性のあるものから遮光性のあるものに変更する場合であっても、屋根部材15以外の部材は、そのまま転用が可能であるため、屋根部材15の交換作業が容易になるとともに、施工費用の低減を図ることができる。
【0023】
また、本実施形態によれば、屋根部材15は、複数のルーバ21と、これらルーバ21を連結する一対の連結部材22とを備え、この連結部材22は、ルーバ21を所定の傾斜角に固定するため、従来のように、ルーバの傾斜角を1つ1つ合わせて固定する必要がなくなり作業性の向上を図ることができる。
また、本実施形態によれば、ルーバ21の傾斜角は、冬季の低い太陽高度では日射を通し、夏季の高い太陽高度では日射を遮るような角度に設定されているため、冬季には、窓開口1を通じて日射が居室内に入ることにより、居室内を暖めることができる。
【0024】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更等が可能である。例えば、図5に示すように、庇7の屋根部材15上に採光性を有する透明な板材50(例えば、ポリカーボネート板やガラス板)を配置する構成としても良い。この構成では、上記板材50をサイドアーム12及びセンタアーム13にねじ止めしている。この構成によれば、上述のように、採光性を有する庇7の構造を簡素化し、容易に組み立てることができることに加えて、雨除けが可能となる。
【0025】
また、本実施形態では、屋根部材15は、複数のルーバ21と連結部材22との連結により構成されていたが、これに限るものではなく、例えば、複数の貫通孔42を有する板材(パンチングパネル)41と、この板材41の両端に配置され、当該板材41を支持する一対の支持部材40とを有する屋根部材51を配置する構成としても良い。この構成において、支持部材40には、上記連結部材22と同様に、サイドアーム12及びセンタアーム13の案内レール12e、13eに係合する係合溝23が形成されている。また、支持部材40は、板材40を挟持する挟持溝40aを備え、この挟持溝40aの入口には、突起40bが形成されている。この構成によれば、採光性を有する庇の構造を簡素化し、容易に組み立てることができるとともに、十分な雨よけが可能となる。さらに、板材41に形成された貫通孔42を通じて光が採り入れられるため、従来のものに比べて、柔らかな光を採り入れた空間を演出することができる。
また、この貫通孔42の大きさや数を変更することにより、ユーザの嗜好に合わせた採光を演出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態である庇装置の縦断面図である。
【図2】庇の分解斜視図である。
【図3】庇の横断面図である。
【図4】屋根部材の構成を説明するための図である。
【図5】本実施形態の変形例である庇の横断面図である。
【図6】別の変形例である庇の横断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 窓開口部
7 庇(庇装置)
11 霧除け(ベース部材)
12 サイドアーム
13 センタアーム
14 フロントアーム
15 屋根部材
16 溝
17 溝
21 ルーバ(羽根部材)
22 連結部材
23 係合溝
40 支持部材
41 板材
42 貫通孔
51 屋根部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体への取付用のフランジを有するベース部材と、このベース部材の両端にそれぞれ基端を連ねて延出する一対のサイドアームとを備え、これらサイドアームのそれぞれに形成されている溝に、採光可能な屋根部材を前記サイドアームの先端側からスライドさせて挿入し、前記サイドアームの先端に、これらサイドアーム同士を接続し、前記屋根部材を支持するフロントアームを設けて構成したことを特徴とする庇装置。
【請求項2】
前記屋根部材は、複数の羽根部材と、これら羽根部材の両端に配置され、当該羽根部材を連結する一対の連結部材とを備え、この連結部材は、前記羽根部材を所定の傾斜角に固定することを特徴とする請求項1に記載の庇装置。
【請求項3】
前記屋根部材は、複数の貫通孔を有する板材と、この板材の両端に配置され、当該板材を支持する一対の支持部材とを備え、この支持部材が前記サイドアームの溝に嵌合することを特徴とする請求項1に記載の庇装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−183345(P2006−183345A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378884(P2004−378884)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】