説明

床または壁用の巻き上げ式暖房装置

【課題】絶縁層と、発熱素子と、被覆とを備える巻き上げ式床暖房装置を提供すること。
【解決手段】絶縁層は、床の上に敷くためのものであり、発熱素子は被覆と絶縁層との間を延びる。被覆は、床材を支持するためのものであり、絶縁層に分配するように被覆上に加わる力を分散するための力分配層を備える。発熱素子(の一部)が加えられる力の場所または近くに位置している限り、力が分散して伝えられるために、その上に加えられる負荷は、元の負荷より小さくなる。そのため、発熱素子が損傷を受ける危険が少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床または壁用の巻き上げ式暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2004年9月16日出願のオランダ特許出願第1,027,053号および2004年10月7日出願の米国仮特許出願第60/616,409号の優先権を主張する。これらの特許出願は、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0003】
図11の米国特許第3,539,767号は、多数の層からなる巻き上げ式床暖房装置を開示している。電気が流れることができる金属箔は、発熱素子として機能する。この金属箔は、ポリ塩化ビニル接着剤により下の層と薄い紙の被覆層との間に接着される。このタイプの床暖房装置は、製造中または製造後に丸く巻いて部屋に運び、そこで広げた場合に床暖房装置として機能することができる。
【0004】
周知の巻き上げ式床暖房装置は、すべてのタイプの床材の下に直接簡単に使用するのには適していないという欠点がある。何故なら、床材上に加わり、この床材を介して床暖房装置に伝わる力により発熱素子が損傷を受ける恐れがあるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、少なくとも上記欠点を部分的に除去し、または少なくとも使用することができる代替物を提供することである。
【0006】
より詳細には、本発明の1つの目的は、その上にいくつかのタイプの床材を置くことができ、発熱素子に損傷を与える各床材上に掛かる負荷の危険が少ない床または壁用暖房装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
床または壁用の巻き上げ式暖房装置は、絶縁層と、発熱素子と、被覆とを備える。絶縁層は、床の上に敷くためのものであり、発熱素子は被覆と絶縁層との間を延びる。被覆は、床材を支持するためのものであり、絶縁層に分配するように被覆上に加わる力を分散するための力分配層を備える。
【0008】
発熱素子(の一部)が加えられる力の場所または近くに位置している限り、力が分散して伝えられるために、その上に加わる負荷は、元の負荷より小さくなる。そのため、発熱素子が損傷を受ける危険が少なくなる。
【0009】
従属請求項が、本発明の好ましい実施形態について記載している。
【0010】
一実施形態の場合には、力分配層は、
絶縁層に面する部分と、その反対側の部分とを有し、絶縁層に面する部分がその反対側の部分よりも小さい弾性係数を有し、より詳細には、反対側の部分の側面の弾性係数のせいぜい67%である。より詳細には、力分配層は第1および第2のサブ層を備える。第2のサブ層は絶縁層に面している。第1のサブ層は、第2のサブ層より大きな弾性係数を有する。弾性係数の違いのために、力分配層上の点負荷の圧力は、絶縁層、特に第1のサブ層から遠い部分上で大きくなる。この圧力はほぼ力分配層の平面内に位置していて、力分配層の頂面の比較的広い表面領域が沈むことになる。このようにして、このタイプの点負荷は、比較的広い表面領域上で吸収され、弾性係数のこのような違いがない等しい厚さの力分配層と比較した場合、沈む面積が小さくなる。
【0011】
都合のよいことに、力分配層の厚さは少なくとも2mmである。そのため、ある種のタイプの床を敷いた場合、問題を起こす恐れがある被覆の頂面の厄介な膨らみを作らないで、発熱素子の少なくとも一部を力分配層内に組み込むことができる。さらに、厚さが非常に薄いので力を分散して伝えることができる。
【0012】
一実施形態の場合には、絶縁層は発泡プラスチックを含む。このような発泡プラスチックは、優れた絶縁特性を有し、また発熱素子の少なくとも一部を収容することができる。
【0013】
ある特定の形態の場合には、熱拡散層が被覆と絶縁層との間に位置する。このような熱拡散層により異なる距離のところで発熱素子を使用することができ、熱拡散層は、これらの素子が発生した熱を確実に被覆と絶縁層との間で拡散し、もっと均一に環境に放出することができる。
【0014】
都合のよいことに、発熱素子は、電気抵抗ケーブルを備える。このような抵抗ケーブルは、それ自身、例えば、抵抗シートより丈夫であるが、床または壁用の巻き上げ式暖房装置で使用した場合、非常に強く圧縮される恐れがある。力分配層により、この圧縮の恐れは比較的少ない。
【0015】
より詳細には、電気抵抗ケーブルは、せいぜいほぼ6cmのループ間の中間距離の曲がりくねった経路を通る。比較的短い間隔を有する曲がりくねった経路を形成しているループを配置することにより、熱は均一に分散される。
【0016】
一実施形態の場合には、力分配層の厚さは、電気抵抗ケーブルの直径の少なくとも半分、より詳細には少なくとも全直径、さらにより詳細には直径の少なくとも2倍に等しい。これにより、電気抵抗ケーブルの少なくとも一部を力分配層に収容させることができる。さらに、厚さが非常に薄いので力を分散して伝えることができる。
【0017】
都合のよいことに、電気抵抗ケーブルの少なくとも一部がその中に収容されるように力分配層を圧縮することができる。これにより、力分配層が少ししか圧縮できない場合と比較すると、抵抗ケーブルを介しての力分配層上の負荷が小さくなる。
【0018】
ある有利な実施形態の場合には、電気抵抗ケーブルは、第1の抵抗線と、この第1の抵抗線の周囲を延びる電気絶縁スリーブと、この絶縁スリーブの周囲を延びるアース外装とを備える。アース外装は、導体箔、より詳細にはアルミニウム箔を備える。このタイプの箔からできている外装は、編組銅線からできているアース外装より安いコストで製造することができる。
【0019】
より詳細には、導体箔は、絶縁スリーブにほぼ平行に延びていて、その周囲を囲んでいる。そのため、アース外装を簡単に製造することもできる。
【0020】
ある変形例の場合には、導体箔は、ストリップ状の絶縁スリーブの周囲に螺旋状に巻かれている。これにより、アース外装を簡単に製造することができる。
【0021】
ある特定の形態の場合には、アース外装は、さらに抵抗ケーブルにほぼ平行に延びる少なくとも1つのアース線を備える。このようなアース線は、アルミニウム箔と接触し、抵抗線の一方の端部のところで、アース外装を外部アース手段に接続できるようにする。
【0022】
添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態について以下により詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、全体を参照番号1で示す、本発明によるロールアウト式床暖房装置の略図である。図1の場合には、ロールアウト式床暖房装置1の一部は、依然として巻かれているが、一部はこの場合はコンクリート床2である床の上に広げられている。巻き上げ式床暖房装置1は、絶縁層10と、発熱素子11と、被覆12とを備える。この例示としての実施形態の場合には、被覆12全体も力分配層13として機能する。床材は、この場合は木製または寄せ木張りの床15からなる力分配層13上に位置する。木製床15は、接着剤層16により、力分配層13に固定状態で接続している。仕上げ層17は、例えば、ラッカー・コーティングであり、木製床15上に位置する。アルミニウム箔18は、絶縁層10と力分配層13との間を延びる。被覆12の上には硬い中間層は存在しない。木製床15は被覆12により直接支持され、力分配層13は木製床15上に加わる力に対して発熱素子11を保護する。
【0024】
力分配層13は、第1および第2のサブ層を備える。第1のサブ層20は、第2のサブ層21より大きな弾性係数および密度を有する。第2のサブ層21は、第1のサブ層20より大きく圧縮することができる。
【0025】
力分配層13は、不織材料またはフェルトを含む。この材料は、熱的結合または機械的結合により相互に接着している不織繊維を含む。本発明と一緒に使用するために、天然および合成繊維の両方を選択することができる。好適には、力分配層13にもラテックスを使用することが好ましい。第1のサブ層20内には好ましくは天然或いは合成ゴムが存在する。ゴムの密度は第1のサブ層20の外側すなわち使用時における力分配層13の上側の方が第2のサブ層21に面する第1のサブ層20の内側よりも高い。
【0026】
第1のサブ層20は、第2のサブ層21より高い材料密度および弾性係数を有する不織膜である。第1のサブ層20は、例えば、針による穿孔または2つのローラ間を通すことにより、第2のサブ層21に接続される。第1のサブ層20が高い密度を有しているので、引っ張り力をよく吸収できるばかりでなく、多かれ少なかれ連続的な表面を形成することができ、このことは床材を接着する場合に接着剤を塗布する際に有利である。力分配層13は、被覆12上に接着されている木製床材15の収縮および膨張を吸収できる程度の弾力を有する。
【0027】
力分配層13の厚さはほぼ6mmであるが、好適には、少なくとも2mm、より詳細には少なくとも3mm、さらにより詳細には少なくとも4mm、さらにより詳細には少なくとも5mmであることが好ましい。第1のサブ層20の厚さは力分配層13の厚さ全体の半分にせいぜいほぼ等しい。
【0028】
このような厚さ、圧縮性、より詳細には第2のサブ層21の厚さおよび圧縮性を有する力分配層13は、被覆12が従来技術と比較した場合、頂面においてもっと平らになるように発熱素子11の一部を収容する。その結果、巻き上げ式床暖房装置1は、種々のタイプの床にもっとよく適している。絶縁層10は、また圧縮することができるので、発熱素子11の一部も絶縁層10に収容されている。
【0029】
点負荷が力分配層13上に加わると、主として第2のサブ層21および絶縁層10が圧縮する。その弾性係数が大きいので、引っ張り応力が第1のサブ層20、実質的には力分配層13の面内に発生する。これにより、弾性係数が低い場合と比較すると、第1のサブ層20は、大きな面の領域が沈み、そのため点負荷がもっと広い面領域上に分配される。
【0030】
絶縁層10は、熱伝導率がほぼ0.2W/(m.K)の発泡プラスチックからできている。さらに、絶縁層は、優れた吸音特性を有する。より詳細には、絶縁層は、少なくとも10dB雑音を低減する。絶縁層10は、また等化機能も有していて、そのため床2の小さな凹凸が絶縁層10により吸収される。さらに、絶縁層10は、若干弾性を有し、そのためより快適になる。絶縁層10の厚さは、好適には少なくとも2mm、より詳細には少なくとも3mm、さらにより詳細には少なくとも4mm、さらにより詳細には少なくとも5mm、およびさらにより詳細には少なくとも6mmであることが好ましい。
【0031】
絶縁層10の絶縁作用により、発熱素子11が発生する熱が床2に散逸するのが防止される。この目的のために、絶縁層10の絶縁指数は力分配層13の絶縁指数より高い。
【0032】
絶縁層10は、接着剤層(図示せず)により、床2に接続することができる。このような接着剤層は使用してもよいし、使用しなくてもよい。使用する接着剤層は、巻き上げ式床暖房装置の製造中に取り付けることができる両面テープまたはガーゼであっても、保護膜を含む永久接着剤層または非永久接着剤層であってもよい。非永久接着剤層の利点は、ある時間経過後に、巻き上げ式床暖房装置を除去することができることである。
【0033】
アルミニウム皮膜18は、発熱素子11が発生した熱を確実に絶縁層10と力分配層13との間で拡散する。さらに、アルミニウム箔18は、上からの放射熱を上に反射させ、そのため熱がさらに下方に伝わらないようにし、または少なくともこのような熱の伝導を低減する。これが発熱素子11が箔18上に位置する理由である。さらに、アルミニウム箔18は湿気バリヤとしても機能する。力分配層13、絶縁層10およびアルミニウム箔18は、このような厚さおよび弾性を有しているので、巻き上げ式床暖房装置1全体は、十分柔軟であり巻き上げることができる。より詳細には、巻き上げ式床暖房装置1全体は、手で巻き上げて内径が15cm以下のロールにすることができる。好適には、この内径はほぼ10cmであることが好ましい。本発明による床または壁用巻き上げ式暖房装置を含むロールは同じ面積のフラットタイプ暖房装置に比べ、より便利に運搬し、保管し、販売することができる。
【0034】
図2の例示としての実施形態の場合には、木製床15は、接着剤層16により巻き上げ式床暖房装置1に接着されている。巻き上げ式床暖房装置1への床材のこのような接着方法は、また、床タイル、リノリウムまたはカーペットと一緒に使用することができる。さらに、また、積層またはプラスチック・シート床のような緩やかに敷いた床材を使用することもできるし、または巻き上げ式床暖房装置を壁暖房として使用するために壁に取り付けることもできる。この場合、絶縁層が熱が隣室に伝わるのを防止すると有利である。一方、力分配層は、関連する壁部上の水平方向の負荷から暖房装置を保護する。床タイルを使用する場合には、重要なことは、床タイルおよび床タイル間のジョイントが、使用中相互にあまり動かない程度に巻き上げ式床暖房装置1を圧縮することができることである。
【0035】
発熱素子11のある好ましい実施形態は、図4の断面図が示すように、電気抵抗ケーブル30により形成されている。電気抵抗ケーブル30の直径は、1〜2mmである。図5は、もう1つの電気抵抗ケーブル31を示す。
【0036】
電気抵抗ケーブル30は、1つまたは複数の銅線からできている1つの導電性内部コア40(図4)を備える。導電性コア40は、例えばポリエチレンのようなプラスチックからできている絶縁層41で囲まれている。絶縁層41は、この場合には、アルミニウム箔42である導体箔により囲まれている。この箔42は、ストリップの形をしている絶縁層41の周囲を囲んでいる。別の方法としては、箔42を絶縁層41の周囲に螺旋状に巻き付けることもできる。アルミニウム箔42は、電気抵抗ケーブル30に対してアース手段として機能し、また電磁放射線に対してスクリーンとして機能する。アルミニウム箔42の他に、抵抗ケーブル30の縦方向に延びる4本の錫メッキ銅線(ワイヤ)43が設置されている。ワイヤ43は、アルミニウム箔42と電気的接触を行う。ワイヤ43の1つの利点は、これらのワイヤを使用すれば外部アース手段と簡単に接続することができることである。
【0037】
電気抵抗ケーブル30の外面は、プラスチック被覆スリーブ44により形成されている。このプラスチック・スリーブは、LDPE(低密度ポリエチレン)でできている。
【0038】
上記のようなアルミニウム・アース外装42は、また、図1、図2および図3を参照しながら説明した巻き上げ式床暖房装置とは異なる種々のタイプの暖房システム用に使用する電気抵抗ケーブルで有利に使用することができる。
【0039】
図5は、二重導電性コア50、51を含むもう1つの電気抵抗ケーブル31である。電気抵抗ケーブル31の他の要素は、図4の1つの抵抗ケーブルに類似していて、そのため同じ参照番号がつけてある。単心電気抵抗ケーブルと比較した場合、電気抵抗ケーブル31は、単位長さ当たりもっと多くの熱を発生することができる。
【0040】
アルミニウム・アース外装42は巻き上げ式暖房装置1が別個の電気保護装置を備えている場合に信号回線として用いることができる。抵抗ケーブル30,31が損傷を受けると、アルミニウム・アース外装(信号回線)42内に電圧が生じる。従来の装置ではアース外装はこの電気を大地に導く。反対に別個の電気保護装置はこの信号回線内の電気を検出して巻き上げ式暖房装置1への電気の供給を切り替える。
【0041】
電気抵抗ケーブル30は、絶縁層10と力分配層13との間の曲がりくねった経路内に位置する。曲がりくねった経路の連続しているループ間の距離は、好適にはほぼ4cmであることが好ましい。この中間距離により、アルミニウム熱拡散層18と一緒に使用した場合、熱が均一に分散される。例えばほぼ6cmのように、中間距離をもっと長くすることもできる。例えば、もっと厚いアルミニウム箔を使用する等、熱伝導性がもっと高いアルミニウム熱拡散層18を使用した場合には熱が均一に分配される。
【0042】
力分配層13の厚さおよび熱伝達特性によっても熱を均一に分散することができる。この場合、力分配層がある程度の熱絶縁性を有していると有利であるが、この熱絶縁性は絶縁層10の熱絶縁性より低いものでなければならない。
【0043】
例えば、熱発生箔と比較した場合の電気抵抗ケーブル30の利点は、損傷を受けにくいことである。巻き上げ式床暖房装置が、局部的に大きく凹んでいたり、孔が開いている場合には、抵抗ケーブルの場合よりも箔の場合の方が損傷を起こし易い。
【0044】
本発明は、またソケット60(図6〜図12)に関連する。ソケット60は、床暖房システムを一緒に結合し、床暖房装置を主電源に結合するために、床暖房装置、より詳細には巻き上げ式床暖房装置1に内蔵するためのものである。この目的のために、ソケット60は、床暖房装置の縁部近く、好適にはコーナーの近くに設置することが好ましい。
【0045】
ソケット60は、プラスチック・ハウジング61と、蓋62と、複数の導電性接続片、より詳細には接続ストリップ65〜67とを備える。これらの接続ストリップ65〜67は、ほぼT字形をしていて、ストリップ67はその基部のところに追加の横断片を備える。第1の接続ストリップ65は、交流電圧のゼロ電位を電気的に接続するためのゼロ電位ストリップである。第2の接続ストリップ66は、位相を接続するためのものである。第3の接続ストリップ67は、電気的にアースに接続するためのものである。ちなみに、ゼロ電位および位相を逆にすることもできるし、ソケットは直流電圧にも適していて、その場合、接続ストリップ65および66はそれぞれ負極および正極のためのものである。
【0046】
これらの接続ストリップは、端部の近くにケーブル・クリップ68を備える。さらに、アース・ストリップ67は2つの外装クリップ69を備える。
【0047】
ハウジング61は、さらに、この場合には第1、第2および第3の収容用溝である第1、第2および第3の凹部71、72および73を備える。収容用溝71〜73は、ゴム製密封ストリップ74、75および76を収容するためのものである。
【0048】
第1および第2のゴム製密封ストリップ74、75は同じ寸法であり、両方とも第1および第2の収容用溝71、72内に収容することができる。第1の密封ストリップは、少なくとも1つ、この場合は丸い電力ケーブルの外装を密封状態で収容するための3つの丸い開口部を備える。第2の密封ストリップは、以下にさらに詳細に説明する電気結合片を密封状態で貫通するための細長い開口部を備える。第3の密封ストリップ76は、電気抵抗ケーブルの2つの端部、より詳細には抵抗ケーブル30の2つの端部を貫通するための2つのほぼ丸い開口部を備える。それ故、ゴム製密封ストリップ74、75および76は、電気的接続に対して水および蒸気を通さない貫通型(lead-through)になる。
【0049】
さらに、ソケット60は、例えば、プラスチックのような絶縁材料からできている第1および第2の絶縁ストリップ80、81を備える。
【0050】
ソケット60は、少なくとも2つの電気床暖房システムを電気的に結合するために、第2のソケットに結合することができる。ハウジング61は、相補の第1および第2の結合手段85、86を備える。第1の結合手段85は、好適には返しを備えることが好ましい少なくとも1つ、好適には2つの突起を備える。第2の結合手段86は、ハウジング61内の凹部により形成され、少なくとも1つの返しを含む突起と相互にロックするように設計されている。相補結合手段85および86は、隣接する巻き上げ式床暖房装置1の内側に位置するソケット60と結合するためのものである。図示されているように凹部71、72の一方の側に結合手段85、86を含んでいる場合のほか、凹部71、72の両方の側に結合手段を含んでいると有利である。この場合、これらの凹部は、2つのソケット60を一緒に結合した場合、もっと釣り合いのとれた状態で一緒に押し合うことになる。
【0051】
2つのソケット60を結合するために、本発明は、この場合には多重電気結合片であり、より詳細には三方向電気結合片である電気結合片90を提供する。三方向電気結合片90は、この場合には面取りをしたコーナーを含む金属ストリップにより形成されている3つの通電素子91を備える。通電素子は、絶縁接続ブリッジ92により相互に機械的に接続している。接続ブリッジ92は、ゴムまたは柔軟なプラスチックのような密封材料からできていて、また、水および蒸気を漏らさないように、第2の密封ストリップ75と一緒にソケット60を密封するためのシールとして機能する。
【0052】
ソケット60は、さらに結合および位置決めピン87を備える。この場合、ピン87は、ハウジング上に設置されていて、一方、蓋62は貫通開口部の形をしている相補空間88を備える。蓋62は、さらに空間88の位置に圧力素子89を備える。接続ストリップ65〜67およびケーブル・クリップ68の両方は、ピン87に対して相補である開口部を備える。
【0053】
図12に最もはっきり示すように、ソケット60は、対応するピン87上でその開口部を含む第1の接続ストリップ65をスライドすることにより組立てられる。絶縁ストリップ80は、頂部上に位置していて、その後で第2のストリップ66が対応するピン87上をスライドし、その後で絶縁ストリップ81が続く。次に、第3の接続ストリップ67が続き、同様にピン87上に押される。最後に、この場合は8つであるいくつかのケーブル・クリップ68がピン87上に設置され、その後で密封ストリップ74および/または75が収容用溝71および72内に設置され、密封ストリップ76が収容用溝73内に設置される。丸い開口部を含む密封ストリップ74を使用することにより、ソケット60の関連する側面が、1つの貫通ケーブル(図示せず)を使用するのに適したものになる。これらの貫通ケーブル(図示せず)は、加熱マットを貫通することができ、ソケット60を好適には同じ第2のソケット60であることが好ましい第2のソケットに接続することができる。細長い開口部を含む密封ストリップ75を使用することにより、三方向電気結合片90を使用して、ソケット60の関連する側面を直接隣接する床暖房マット内のソケットに結合することができる。
【0054】
最後に、蓋62が取り付けられ、その手順中にピン87が開口部88内に落下し、それにより圧力素子89がケーブル・クリップ68上に押しつけられ、これらが導電状態で対応する接続ストリップ65〜67と接触する。蓋62は、熱密封および/または接着によりハウジング61の隆起縁部およびピン87に密封状態で接続される。
【0055】
好適には電気抵抗ケーブル30であることが好ましい加熱ケーブルの始めの部分および終わりの部分の両方は、開口部を通して密封ストリップ76内に押し込まれる。この場合、アース外装42は、導電状態で外装クリップ69に接触する。1つまたは複数の心線40は、電気抵抗ケーブル30の絶縁層41から突き出ていて、対応するケーブル・クリップ68により固定状態に収容される。
【0056】
ハウジング61は非常に平らなので、ハウジングは、巻き上げ式床暖房装置1内に収容することができる。より詳細には、ハウジング61は、例えば、絶縁層10内に局部的に凹部を形成することにより絶縁層10内に収容することができる。
【0057】
図示した上記好ましい実施形態の他に、本発明の範囲から逸脱することなしに、多くの他の変形例を実行することができる。それ故、絶縁層は、発泡ポリマーおよび他のプラスチック、コルク、圧縮したまたは接着した繊維、および厚紙のような種々の等級の紙のような種々の異なる材料から作ることができる。都合のよいことに、絶縁層は、重量を軽くして、絶縁指数を増大するために空気チャンバを備えることもできる。これに関連して、床自身がすでに十分絶縁されている場合で、もっと小さな絶縁指数を使用することができる場合には、この絶縁指数はカバーの絶縁指数より高い。通常、ほぼ0.2W(m.K)の熱伝導係数で十分である。さらに、非常に重要なことは、絶縁層の材料が床または壁部用の巻き上げ式暖房装置が巻き上げることができるように十分柔軟なことである。カーペット、積層体、寄せ木、タイル、リノリウム等のような仕上げ材を使用する場合には、重要なことは、絶縁層内に膨張および収縮のような力が加わらないようにすることである。
【0058】
特に抵抗ケーブルのループの間隔が狭い場合、または電気抵抗ケーブルの代わりに熱発生箔を使用する場合には、熱拡散層を省略することができる。このような場合でも、例えば、上向きに発生した熱を反射し、湿気バリヤとして機能するために熱拡散箔を使用すると有利である。優れた熱伝導特性を有する材料は、アルミニウム箔の代替品として適している。例えば、加熱または圧縮、または絶縁層の頂部上に分離閉鎖層を生成して、絶縁層の頂部を圧縮することにより熱拡散層を生成することもできる。それ故、これらの場合、熱拡散層は絶縁層の一部を形成する。
【0059】
電気抵抗ケーブルは、例えば4cmより長いまたは短い中間距離を有する経路のような別の経路に沿って設置することができる。4cmより短い距離を使用する場合の利点は、アルミニウム熱拡散層を使用しないですむことである。対照的に、中間距離をもっと長くすると、コストが安くなるが熱の発生がもっと不均一になる。
【0060】
例えば、電気抵抗ケーブルの代わりに、炭素または(金属)合金をベースとする熱箔を使用することができる。
【0061】
抵抗ケーブルを使用した場合、導電性プラスチックまたは金属箔のような別の導体箔をアース外装として使用することができる。編組アース・スクリーンを備える従来の抵抗ケーブルも使用することができる。
【0062】
ポリエチレンの代わりに、テフロン(登録商標)FEP(フッ素処理したエチレン・プロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、またはPET(ポリエチレン)を抵抗ケーブルのコア用の絶縁体として使用することもできる。抵抗ケーブルのコアは、銅の代わりにクロム・ニッケルおよび種々の他の抵抗合金から作ることができる。
【0063】
力分配層としては種々の代替物を使用することができる。それ故、第1および第2のサブ層は、密度ばかりでなく組成の点でも相互に異なる。サブ層は、また、境界がはっきり見えないように徐々に結合することができる。サブ層、より詳細には比較的厚い力分配層をまったく使用しないですませることもできる。力分配層用の他の材料としては、硫化ゴムおよび粒状ゴムの両方、ポリマーまたはポリウレタンのような種々のプラスチック、種々の品質および生物分解性タイプの圧縮紙がある。
【0064】
絶縁層および力分配層は、接着剤のような接続手段により接続することができるが、必ずしも接続する必要はない。接着剤を使用する場合には、ポリマー接着剤または溶融接着剤を使用することができる。別の方法としては、接着剤の代わりに、熱溶接を使用することができる。絶縁層および力分配層を、例えば、その密度が変化し、発熱素子を収容するための凹部を設けることができる発泡プラスチックの形をしている1つの部材として作ることもできる。
【0065】
また図のいくつかの構成要素を1つの部材として作ることにより、ソケットの部品数を少なくすることもできる。金属のようなプラスチック以外の材料を使用することができる。通電素子の断面は長方形でなくてもよく、例えば円形にすることもできる。通電素子は、またソケットに固定状態に接続することもできるし、そうしたい場合には、取り外すことができるように接続することができ、または例えば、結合ケーブルの形をしている柔軟な通電素子を設置することもできる。
【0066】
それ故、本発明は、使用材料が柔軟であるために丸めることができ、そのため製造および輸送およびその後の床または壁へ暖房装置を設置するのが簡単な、床または壁用の巻き上げ式暖房装置を提供する。力分配層により、種々のタイプの被覆床を使用することができ、力分配層と絶縁層との間に電気抵抗ケーブルを使用することができ、抵抗ケーブルに損傷を与える危険が少なくなる。本発明による電気抵抗ケーブルは、アルミニウム箔をアース外装として使用することにより、簡単に安いコストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】一部が巻かれていて、一部が広げられている、本発明による巻き上げ式床暖房装置である。
【図2】木製床材を含む広げた形の巻き上げ式床暖房装置の一部である。
【図3】力分配層の詳細図である。
【図4】電気抵抗ケーブルの詳細断面図である。
【図5】巻き上げ式抵抗ケーブルの変形例である。
【図6】ソケットの平面図である。
【図7】図6のソケットの側面図である。
【図8】図6のソケットの底面図である。
【図9】図6のソケットの斜視図である。
【図10】図6のソケットの第2の側面図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿って切断した断面図である。
【図12】図6のソケットの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1 巻き上げ式床暖房装置
2 コンクリート床
10 絶縁層
11 発熱素子
12 被覆
13 力分配層
15 木製床
16 接着剤層
17 仕上げ層
18 アルミニウム箔
20 第1のサブ層
21 第2のサブ層
30,31 電気抵抗ケーブル
40 導電性内部コア
41 絶縁層
42 アルミニウム箔
43 ワイヤ
44 プラスチック被覆スリーブ
50,51 二重導電性コア
60 ソケット
61 プラスチック・ハウジング
62 蓋
65〜67 接続ストリップ
68 ケーブル・クリップ
69 外装クリップ
71〜73 収容用溝
74,75,76 ゴム製密封ストリップ
80,81 絶縁ストリップ
85,86 結合手段
87 位置決めピン
88 相補空間
89 圧力素子
90 電気結合片
91 通電素子
92 接続ブリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、発熱素子と、被覆とを備える床または壁用巻き上げ式暖房装置であって、
前記絶縁層が床の上に敷くためのものであり、前記発熱素子が前記被覆と前記絶縁層との間を延び、
前記被覆が、床材を支持するためのものであり、分配するような方法で前記被覆に加わる力を前記絶縁層に分散するための力分配層を備える床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項2】
前記力分配層が、前記絶縁層に面する部分と、その反対側の部分とを有し、前記絶縁層に面する部分がその反対側の部分よりも小さい弾性係数を有する、請求項1に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項3】
前記力分配層が、第1および第2のサブ層を備え、前記第1のサブ層の弾性係数が前記第2のサブ層の弾性係数より大きく、前記第2のサブ層が前記絶縁層に面している、請求項2に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項4】
前記力分配層の厚さが少なくとも2mmである、請求項1に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項5】
前記絶縁層が発泡プラスチックを含む、請求項1に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項6】
熱拡散層が前記被覆と前記絶縁層との間に位置する、請求項1に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項7】
前記発熱素子が、第1の抵抗線を有する電気抵抗ケーブルを有する、請求項1に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項8】
前記電気抵抗ケーブルが、ほぼ6cm以下のループ間の中間距離を含む曲がりくねった経路内に位置する、請求項7に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項9】
前記力分配層の厚さが、前記電気抵抗ケーブルの直径の少なくとも半分、より詳細には少なくとも全直径、さらにより詳細には少なくとも直径の2倍に等しい、請求項7に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項10】
前記力分配層が、前記電気抵抗ケーブルの少なくとも一部がその中に収容されるように圧縮することができる、請求項7に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項11】
絶縁層と、発熱素子と、被覆とを備える床または壁用巻き上げ式暖房装置であって、
前記絶縁層が床の上に敷くためのものであり、前記発熱素子が前記被覆と前記絶縁層との間を延び、
前記被覆が床材を支持するためのものであり、
前記発熱素子が第1の抵抗線を有する電気抵抗ケーブルを有し、
前記電気抵抗ケーブルが、前記第1の抵抗線の周囲を延びる電気絶縁スリーブと、前記絶縁スリーブの周囲を延びるアース外装とをさらに備え、
前記アース外装が、導体箔、より詳細にはアルミニウム箔を備える床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項12】
前記導体箔が、前記絶縁スリーブにほぼ平行に延び、その周囲に折り畳まれている、請求項11に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項13】
前記導体箔が、ストリップ状の前記絶縁スリーブの周囲に螺旋状に巻かれている、請求項11に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項14】
前記アース外装が、前記電気抵抗ケーブルにほぼ平行に延びる少なくとも1つのアース線をさらに備える、請求項11に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項15】
前記第1の抵抗線から電気的に絶縁されている第2の抵抗線を備える、請求項7に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項16】
前記絶縁層が、少なくとも10dB雑音を低減する吸音材を含む、請求項1に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項17】
前記巻き上げ式床暖房装置の圧縮性が、その上に床タイルを使用することができるほどに小さい、請求項1に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項18】
前記力分配層が、前記被覆に接着されている木製床材の収縮および膨張を吸収することができるだけの弾性を有する、請求項1に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。
【請求項19】
前記床または壁用巻き上げ式暖房装置の複数のストリップを相互に接続するための、および/または前記床または壁用巻き上げ式暖房装置を電源に接続するためのソケットを備える、請求項1に記載の床または壁用巻き上げ式暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−84172(P2006−84172A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268262(P2005−268262)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(505348441)
【Fターム(参考)】