説明

床パネル及びその補強方法

【課題】床パネルとして、上板や下板の薄板化を達成しつつ、耐久性を向上させる。
【解決手段】上板5及び下板7は、その外周側のフランジ部15,17相互を接合固定して一体化し、上板5と下板7との間の下板7側に形成してある凹部11内にモルタル9を充填して床パネル1を構成する。床パネル1は平面視でほぼ正方形状であり、その四隅の下板7側の角部7Aにおける側面部21と、フランジ部17との間の屈曲部23の内側の凸曲面23aに補強部材25を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の上板とこの上板に対向する側に凹部を備えた金属製の下板とを互いに重ね合わせてその周縁部同士を固定する構造の床パネル及びその補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力、電話、データの量の多量化に対応して2重床システムが採用されている。この2重床システムは、コンクリートスラブなどの床基材の上に多数の支柱を立設し、該支柱により床パネルの角部周辺を支持することにより、床パネルと床基材との間の隙間を配線用空間とし、この配線用空間に電力線、情報線等のケーブルを配線するようにしている。
【0003】
このような2重床システムに使用する床パネルとしては、平板形状の上板と、この上板側にモルタルなどの充填材を収容する凹部を備える下板とを備え、これら上板及び下板を互いに重ね合わせてその周縁部を接合固定している(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3222651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したような2重床システムに使用する床パネルのコスト削減については、材料費の多くを占める上板及び下板を構成する鋼板であることから、この鋼板の板厚を、強度を維持しつつ薄くすることが要求されている。
【0006】
一方、このような床パネルの使用時では、支柱により支持される角部周辺に荷重負荷が集中する傾向にあり、このため、上記したような鋼板の薄板化もあって、角部周辺の強度を充分確保して耐久性を高める必要が生じている。
【0007】
そこで、本発明は、床パネルとして、上板や下板の薄板化を達成しつつ、耐久性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、外周部に角部を備える金属製の上板と、この上板に対向する側に凹部を有して外周部に前記上板の角部に対応する角部を備える金属製の下板とを、それぞれの周縁部を互いに重ね合わせて接合固定し、前記下板の凹部は、前記上板に対向する底面部と、この底面部の外周端部から上板に向けて立ち上がり前記周縁部に連続する側面部とを有し、前記下板の角部における前記側面部と前記周縁部との間の屈曲部に補強部材を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、外周部に角部を備える金属製の上板と、この上板に対向する側に凹部を有して外周部に前記上板の角部に対応する角部を備える金属製の下板とを、それぞれの周縁部を互いに重ね合わせて接合固定し、前記下板の凹部は、前記上板に対向する底面部と、この底面部の外周端部から上板に向けて立ち上がり前記周縁部に連続する側面部とを有し、この側面部における前記角部に、前記底面部及び前記周縁部に対して両端部がそれぞれ屈曲形成されてこれら底面部及び周縁部相互間を繋ぐ傾斜面を設け、この傾斜面により、前記角部に作用する荷重を分散させることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、外周部に角部を備える金属製の上板と、この上板に対向する側に凹部を有して外周部に前記上板の角部に対応する角部を備える金属製の下板とを、それぞれの周縁部を互いに重ね合わせて接合固定し、前記下板の凹部を、前記上板に対向する底面部と、この底面部の外周端部から上板に向けて立ち上がり前記周縁部に連続する側面部とを有するものとして、前記下板の角部における前記側面部と前記周縁部との間の屈曲部に補強部材を設けて補強することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の床パネルの補強方法であって、前記下板を成形した後に、前記屈曲部に補強部材を設けて補強し、その後、この下板と前記上板とを、それぞれの周縁部を互いに重ね合わせて接合固定し、この接合固定した前記上板と下板との間の前記凹部に充填材を充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1または3の発明によれば、特に荷重負荷が集中する角部を補強することで、材料費削減のため上板や下板を薄板化したとしても、床パネルとしての耐久性を高めることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、特に荷重負荷が集中する角部の傾斜面によって、角部周辺での荷重負荷を分散することができ、材料費削減のため上板や下板を薄板化したとしても、床パネルとしての耐久性を高めることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、下板を成形した後に補強部材を設けることで、補強した角部の強度をより確実に維持でき、また充填材を充填することで、上板及び下板と充填材とで複合化した床パネルを構成して強度がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態を示す図3の床パネルのA-A断面図、(b)は(a)の床パネルを構成する下板の角部周辺を示す斜視図である。
【図2】図3の二重床システムに使用する床パネルの半分を断面で示す側面図である。
【図3】図1,図2の床パネルを使用する二重床システムの一部を分解して示す斜視図である。
【図4】(a)は本発明の第2の実施形態を示す床パネルの図1(a)に対応する断面図、(b)は(a)の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図3に示すように、床パネル1は、互いに隣接するもの同士の角部周辺を支柱3により支持して、該支柱3を設置してあるコンクリートスラブなどの床基材とで二重床システムを構成する。
【0018】
このような床パネル1は、図2に示すように、上板5と、下板7と、これら上板5及び下板7相互間の空隙に充填する充填材としてのモルタル9とを備えている。上板5及び下板7は鋼板からなる金属製であり、下板7は、上板5に対向する側に凹部11を備えるとともに、上板5と反対側の裏面には、凹曲面で構成される複数の窪み部となるディンプル13を備えている。
【0019】
これらの上板5及び下板7は、図3に示すように、いずれも平面視でほぼ正方形状としてあり、したがって、四隅に角部5A及び7Aをそれぞれ備えることになる。
【0020】
上記した上板5及び下板7は、外周部に形成してあるフランジ部15及び17を、溶接などによって互いに接合固定するとともに、下板7のディンプル13の先端(底部)と上板5との接触部も溶接によって接合固定している。そして、上板5と下板7との間の空隙を構成する凹部11内に前記したモルタル9を充填している。
【0021】
ここで、本実施形態の下板7は、プレス形成によって製造してあり、その凹部11は、上板5に対向する底面部19と、この底面部19の外周端部から上板5に向けて立ち上がり前記したフランジ部17に連続する側面部21とを有している。
【0022】
そして、図1に示すように、下板7の角部7Aにおける側面部21とフランジ部17との間には、プレス成形によって内側のモルタル9側が凸曲面となる屈曲部23を形成している。この屈曲部23はプレスによる絞り成形する際に、引っ張られて最も薄くなる部位であることから、強度が低くなりやすい。
【0023】
また、上記したような屈曲部23とする屈曲形状は、角部7Aだけでなく辺部も含む全周にわたりプレス成形により形成してあるが、角部7A周辺は、支柱3により支持されて荷重負荷が集中しやくなっている。
【0024】
このため、本実施形態では、下板7の四隅の角部7Aにおける屈曲部23のモルタル9側の裏面の応力集中部位に、補強部材25を取り付けている。補強部材25は、屈曲部23の屈曲形状に対応する曲面形状を呈しており、その凹曲面25aを屈曲部23の凸曲面23aに密着するようにして接着剤により貼り付けている。
【0025】
すなわち、本実施形態では、図1(b)に示すように、下板7をプレス成形した後に屈曲部23に補強部材25を設けて補強している。その後、この下板7と上板5とを、それぞれのフランジ部15,17を互いに重ね合わせて接合固定し、この接合固定した上板5と下板7との間の凹部11に、下板7の適宜部位に設けた注入孔から充填材としてモルタル9を充填する。
【0026】
なお、補強部材25は、発泡硬化樹脂とガラスクロスとからなる2層構造のシート状部材を、発泡硬化樹脂側に設けた接着剤を介して屈曲部23に貼り付けている。補強部材25を貼り付けた後に、上板5と下板7とを接合固定し、その後塗装工程での加温により発泡硬化樹脂が発泡硬化することで、補強効果がより高まる。モルタル9は、塗装工程の後に充填する。
【0027】
補強部材25を屈曲部23に貼り付ける前には、発泡硬化樹脂側の接着剤層に剥離紙を貼付しておき、貼り付け作業を行う際には、この剥離紙を剥して使用する。
【0028】
以上のように本実施形態の床パネル1は、下板7に対する絞り成形により薄くなって強度が低くなりやすく、かつ、支柱3により支持されて荷重負荷が集中しやすくなっている角部7Aの屈曲部23を、補強部材25により補強している。このため、材料費削減のため上板5や下板7を薄板化したとしても、二重床システムとして使用する床パネル1の耐久性を高めることができる。
また、角部7Aの屈曲部23を補強することで、角部7A周辺の変形を抑えることができ、支柱3により支持する角部7A周辺のガタツキを抑えて高品質な二重床システムとすることができる。
【0029】
また、本実施形態では、下板7をプレス成形した後に補強部材25を設けることで、補強した角部7Aの強度をより確実に維持でき、またその後にモルタル9を充填することで、上板5及び下板7とモルタル9とで複合化した床パネル1となって強度がより向上する。
【0030】
このように、本実施形態では、荷重負荷が集中する角部7Aの強度が向上するので、材料費削減のため上板5や下板7の薄板化を進めたとしても、床パネル1の耐久性を確保することができる。
【0031】
また、上記した上板5や下板7の薄板化による材料使用量削減により、二酸化炭素の削減にも寄与することができるとともに、軽量化による輸送コストの削減効果及び、輸送する際の二酸化炭素の削減効果も期待できる。
【0032】
なお、補強部材25は、屈曲部23の凹曲面となっている外側に設けてもよく、また内側と外側の両方に設けてもよい。
【0033】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図4に示すように、第1の実施形態の補強部材25を設ける構成に代えて、下板7の角部7Aにおける凹部11の側面部21を傾斜面27としている。この傾斜面27は、下板7の凹部11の底面部19及びフランジ部17に対して両端部27a,27bがそれぞれR形状に屈曲形成されて、これら底面部19及びフランジ部17相互間を繋いでいる。そして、この傾斜面27と底面部19とのなす角度θを約120度程度としている。
【0034】
このような傾斜面27は、図4(b)に示すように、凹部11の側面部21における角部7Aに対応しているが、側面部21における角部7A以外の互いに隣接する辺部21aに対して角部7Aの先端側に向けて突出するような形状としている。
【0035】
このように本実施形態の床パネル1は、下板7に対する絞り成形により薄くなって強度が低くなりやすく、かつ、支柱3により支持されて荷重負荷が集中しやすくなっている角部7Aに、底面部19とのなす角度θを約120度とした傾斜面27を設けている。
【0036】
角部7Aにおける側面部21を、底面部19とのなす角度θが約120度程度の傾斜面27とすることで、辺部21aにおける側面部21のように底面部19に対してほぼ直角となっている場合に比較して、絞り成形による薄板化を抑えることができるとともに、側面部21を形成する面積が増大するので、この増大した面積部分に荷重を分散することができる。その結果、角部7A周辺の強度が高まることになり、したがって第1の実施形態と同様に、材料費削減のため上板5や下板7を薄板化したとしても、床パネル1としての耐久性を高めることができる。
【0037】
なお、上記した実施形態では、傾斜面27の底面部19とのなす角度θを約120としているが、この角度θは、角部7Aにおける荷重負荷を分散できるのであれば特に限定されるものではない。
【0038】
また、本実施形態では、充填するモルタル9が、傾斜面27を設けた角部7Aにおけるフランジ部17のより外周側まで入り込むことになり、上板5及び下板7とモルタル9とで複合化した床パネル1の傾斜面27での応力分散効果をより一層高めることができる。
【符号の説明】
【0039】
5 上板
7 下板
5A 上板の角部
7A 下板の角部
9 モルタル(充填材)
11 下板の凹部
15 上板のフランジ部(周縁部)
17 下板のフランジ部(周縁部)
19 凹部の底面部
21 凹部の側面部
23 下板の角部の屈曲部
25 補強部材
27 底面部とフランジ部とを繋ぐ傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に角部を備える金属製の上板と、この上板に対向する側に凹部を有して外周部に前記上板の角部に対応する角部を備える金属製の下板とを、それぞれの周縁部を互いに重ね合わせて接合固定し、前記下板の凹部は、前記上板に対向する底面部と、この底面部の外周端部から上板に向けて立ち上がり前記周縁部に連続する側面部とを有し、前記下板の角部における前記側面部と前記周縁部との間の屈曲部に補強部材を設けたことを特徴とする床パネル。
【請求項2】
外周部に角部を備える金属製の上板と、この上板に対向する側に凹部を有して外周部に前記上板の角部に対応する角部を備える金属製の下板とを、それぞれの周縁部を互いに重ね合わせて接合固定し、前記下板の凹部は、前記上板に対向する底面部と、この底面部の外周端部から上板に向けて立ち上がり前記周縁部に連続する側面部とを有し、この側面部における前記角部に、前記底面部及び前記周縁部に対して両端部がそれぞれ屈曲形成されてこれら底面部及び周縁部相互間を繋ぐ傾斜面を設け、この傾斜面により、前記角部に作用する荷重を分散させることを特徴とする床パネル。
【請求項3】
外周部に角部を備える金属製の上板と、この上板に対向する側に凹部を有して外周部に前記上板の角部に対応する角部を備える金属製の下板とを、それぞれの周縁部を互いに重ね合わせて接合固定し、前記下板の凹部を、前記上板に対向する底面部と、この底面部の外周端部から上板に向けて立ち上がり前記周縁部に連続する側面部とを有するものとして、前記下板の角部における前記側面部と前記周縁部との間の屈曲部に補強部材を設けて補強することを特徴とする床パネルの補強方法。
【請求項4】
前記下板を成形した後に、前記屈曲部に補強部材を設けて補強し、その後、この下板と前記上板とを、それぞれの周縁部を互いに重ね合わせて接合固定し、この接合固定した前記上板と下板との間の前記凹部に充填材を充填することを特徴とする請求項3に記載の床パネルの補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−265600(P2010−265600A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115555(P2009−115555)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】