説明

床支持吸振具、及び、床構造

【課題】床衝撃音の遮断性能が良好となると共に、低床に適用することの可能な床支持吸振具、及び、床構造を提供する。
【解決手段】動吸振器30は、梁部材32及び、質量体40を備えている。梁部材32は、長尺板状とされ、弾性変形可能とされている。梁部材32は、下地パネル14Aと距離δをもって、下地パネル14Aの下面に沿った方向に配置されている。距離δは、質量体40の上下変形量以上の寸法とされている。梁部材32の一端側の上面、及び他端側の上面には、スペーサー34が各々配置されている。スペーサー34により、下地パネル14Aと梁部材32との間の距離δが確保されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床の床材を支持する床支持吸振具、この床支持吸振具を用いた床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
床構造においては、床衝撃音の遮断性能を向上させるために、支持部材を介して床基盤上から所定の高さに床を設ける二重床構造とする場合がある。このような二重床構造では、例えば、特許文献1に記載のように、弾性体と質量体を用いて床からの振動を減衰させる技術が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の床構造によれば、床からの振動を効果的に減衰させることができる。しかしながら、特許文献1の床支持具は、第1弾性部材と第2弾性部材とが直列に配置されているため、床支持具の高さが高くなり、低床への対応には限界がある。
【特許文献1】特開2007−040093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮してなされたものであり、床衝撃音の遮断性能が良好になると共に、低床に適用することの可能な床支持吸振具、及び、床構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の床支持吸振具は、 床スラブ上に支持され、弾性変形可能であって振動を減衰させる第1弾性部材と、前記第1弾性部材上に支持され、前記床スラブとの間に間隔をもって配置される床材を支持する支持部材と、前記支持部材と離間した位置で、前記床材の下面側に前記床材に沿って前記床材と間隔をもって取り付けられた弾性変形可能な梁部材と、前記梁部材に取り付けられ、前記梁部材の弾性変形によって変位して振動を減衰させる質量体と、を備えている。
【0006】
請求項1に記載する床支持吸振具によれば、床材に振動が加わった場合、この振動は、梁部材へ伝わる。これによって、梁部材が弾性変形して質量体が振動を吸収するように上下動することで、床材の振動が減衰し、その結果床スラブへの振動を減衰する。減衰された振動は、さらに第1弾性部材によって減衰されて床スラブへ伝わるので、床衝撃音が良好に遮断される。
【0007】
また、梁部材が、支持部材と離間した位置で床材の下面に取り付けられているので、梁部材と第1弾性部材とを並列的に配置することができ、床支持吸振具の高さを低くすることができる。
【0008】
また、梁部材を用いているので、梁部材の厚さ、幅及び支持スパンなどを変えることにより、容易にバネ定数を調整することができる。
【0009】
請求項2に記載する床支持吸振具は、前記梁部材が一端側の第1支持部、及び、他端側の第2支持部で前記床材の下面側に支持され、前記梁部材の中間部に前記質量体が取り付けられていること、を特徴とする。
【0010】
上記構成とすることにより、簡易な構成で梁部材及び質量体を取り付けることができると共に、第1支持部と第2支持部との距離を変えることにより、容易にバネ定数を調整することができる。
【0011】
請求項3に記載する床支持吸振具は、前記質量体が前記梁部材の下側に取り付けられ、前記梁部材と前記床材との間に粘弾性変形可能な減衰部材が配置されていること、を特徴とする。
【0012】
このように、減衰部材を配置することにより、質量体の変位による梁部材の振動を早く減衰させることができると共に、共振ピークがなだらかになり床材の振動周波数の対象範囲を拡張することができる。
【0013】
請求項4に記載する床構造は、床スラブと、前記床スラブと間隔をもって配置される床材と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の床支持吸振具と、を備えている。
【0014】
本発明の床構造によれば、床スラブと床材との間の距離が短い場合であっても、床支持吸振具によって、床衝撃音を良好に遮断することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の床支持吸振具、及び、床構造によれば、床衝撃音の遮断性能が良好となると共に、低床に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1実施形態]
【0017】
本発明における床支持吸振具、及び、この床支持吸振具が適用される床構造の実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印UPは床構造における上方向を示す。
【0018】
図1に示される床構造10は、主に集合住宅に用いられる二重床(乾式遮音二重床)の構造であり、上階で発せられて階下に伝播する床衝撃音(歩行音、物の落下音、子供の飛び跳ね等)を低減させるための構造である。
【0019】
(床構造及び床支持吸振具の構成)
【0020】
図1に示されるように、床構造10は、躯体床となるコンクリート製の床スラブ12と上床材14との間に、所定の間隔で複数本並べられた床支持具16、及び、動吸振器30を介在させており、床支持具16、及び、動吸振器30で構成される床支持動吸振器28の介在によって床スラブ12と上床材14との間に空間を形成して遮音効果を得る状態としている。
【0021】
なお、本実施形態の上床材14は、下地パネル14Aを備えると共に、下地パネル14A上に捨張材14Bを設け、その上にさらに仕上げ材14Cを設けた積層構造となっている。ここで、仕上げ材14Cを除いた上床材14(下地パネル14A及び捨張材14B)、及び、床支持具16、動吸振器30が床下地材である。
なお、捨張材14Bは、必ずしも必要ではなく、捨張材14Bを除いた構成とすることもできる。
【0022】
図2には、下地パネル14Aと、床支持具16及び動吸振器30の配置図が示されている。下地パネル14Aは、各々、所定間隔の隙間(以下「目地Mという」)が構成されるように敷設されている。目地Mは、下地パネル14A同士の接触による軋み音などを防止するために、10mm〜20mm程度の間隔が設けられている。床支持具16は、目地Mを跨ぐようにして配置されている。動吸振器30は、図2(A)に示すように、下地パネル14Aの短手方向の中央部で床支持具16の中間部に所定間隔で配置してもよいし、図2(B)に示すように、短手方向の両端部で床支持具16の近傍に所定間隔で配置してもよい。
【0023】
図3に示されるように、床支持具16は、第1弾性部材としてのクッションゴム18、支持部材としての支持ボルト22、及び、支持パネル15を備えている。
【0024】
クッションゴム18は、床スラブ12上に配置されている。クッションゴム18は、円筒状とされており、上床材14からの振動を減衰させるために、床スラブ12上に支持されるものであり、弾性変形可能とされる。
【0025】
クッションゴム18上には、中間受け部としての中間受け部材20を介して支持ボルト22が直立状態で支持されている。中間受け部材20は、円筒状とされて中間部にフランジ部20Aを備え、円筒部の一方側がクッションゴム18の筒内側に挿入されると共にフランジ部20Aの下面(クッションゴム18側へ向けられた面)がクッションゴム18の上面(床スラブ12側の面と反対側の面)に固着されている。中間受け部材20の円筒部内周面には、雌ネジ部20Bが形成され、この雌ネジ部20Bには、支持ボルト22の軸部に形成された雄ネジ部22Aが螺合される。これにより、中間受け部材20が支持ボルト22に一体化される。
【0026】
下地パネル14Aの下側には、下地パネル14Aを支持するように、所定間隔で目地Mを跨いで支持パネル15が配置されている。支持パネル15は正方形板状とされ、中央部に調整孔15Aが構成されている。
【0027】
支持ボルト22は、クッションゴム18と反対側、すなわち、床スラブ12と反対方向へ延びて、上端部が支持パネル15の調整孔15Aに取り付けられている。支持ボルト22は、支持パネル15を介して上床材14を支持するようになっている。パネル受け部材24は、円筒状の円筒部24Bと、円筒部24Bの一方の開口部から外側へ向けて突き出した鍔部24Aを備える。パネル受け部材24の円筒部24Bは、支持パネル15の調整孔15A内に挿入されて固着され、鍔部24Aの上面(上床材14側へ向けられた面)が支持パネル15の下面(床スラブ12と対向する側の面)に固着される。パネル受け部材24の円筒部内周面には、雌ネジ部24Cが形成され、この雌ネジ部24Cには、支持ボルト22の軸部に形成された雄ネジ部22Bが螺合される。これらにより、上床材14は、床スラブ12との間に間隔をもって配置される。
【0028】
支持ボルト22の先端部には、マイナスドライバを差し込むための凹部(図示省略)が形成されており、上床材14の下地パネル14Aに捨張材14B、仕上げ材14Cが敷設される前の状態において、マイナスドライバを支持ボルト22の凹部(図示省略)に差し込んで支持ボルト22を回転させることによって、床スラブ12からの下地パネル14Aの高さを調節することができるようになっている。
【0029】
図3及び図4に示すように、動吸振器30は、梁部材32及び、質量体40を備えている。梁部材32は、長尺板状とされ、弾性変形可能とされている。梁部材32は、FRP、鋼材、金属、木材、樹脂、セラミック、などの材料で構成することができる。梁部材32は、下地パネル14Aと距離δをもって、下地パネル14Aの下面に沿った方向に配置されている。距離δは、質量体40の上下変形量以上の寸法とされている。梁部材32の一端側の上面、及び他端側の上面には、スペーサー34が各々配置されている。スペーサー34により、下地パネル14Aと梁部材32との間の距離δが確保されている。
【0030】
スペーサー34の配置された位置に対応する梁部材32の下側から、ねじ37が下地パネル14Aまでねじ込まれることにより、梁部材32が下地パネル14Aに取り付けられている。一端側の取付部分を第1支持部36、他端側の取付部分を第2支持部38とする。第1支持部36と第2支持部38との距離Lは、動吸振器30が上床材14の固有振動周波数に対応するように設定されている。すなわち、梁部材32のヤング率、幅、厚み、質量体40の質量、及び、距離Lに依存する設計固有値により決定される。
【0031】
梁部材32の中間部下面には、質量体40が配置されている。質量体40は、直方体状とされ、梁部材32の上側からねじ42をねじ込まれることにより梁部材32に取り付けられている。質量体40としては、比重の高い材料を用いると、質量体40をコンパクトに構成することができる。質量体40は、鋼材、金属、水、砂、セラミック、樹脂などの材料で構成することができる。質量体40は、梁部材32からの振動を吸収するように上下動することで、上床材14から床スラブへの振動を減衰する。動吸振器30と床スラブ12との間には、所定のクリアランスCが構成され、これにより、質量体40が上下に振動する場合でも、その下端が床スラブ12と接触しないようになっている。
【0032】
(作用)
【0033】
次に、上記の実施形態の作用を説明する。
【0034】
上階で発せられた床衝撃音(例えば、歩行音等)の振動は、上床材14から、支持パネル15、支持ボルト22、中間受け部材20を介してクッションゴム18へ伝わり、クッションゴム18で減衰されながら床スラブ12へ伝わる。このとき、動吸振器30の質量体40が、梁部材32を介して上床材14の振動を打ち消すように上下方向に振動する(図4参照)。これにより、クッションゴム18へ伝わる振動が減衰され、上床材14から床スラブ12へ伝わる振動を低減させることができる。
【0035】
本実施形態では、動吸振器30が床支持具16と分離して配置されているので、動吸振器30が床支持具16と直列的に配置されている場合と比較して、床支持動吸振器28の高さを低くすることができる。したがって、上床材14の下面と床スラブ12との間の距離が短い低床にも設置することができる。
【0036】
また、本実施形態の梁部材32は、梁部材32のヤング率、厚み、幅を変えることにより、また、第1支持部36と第2支持部38との間の距離Lを変えることにより、バネ定数を容易に変えることができる。したがって、動吸振器30を、上床材14への衝撃に対する効果的な反力に調整することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、質量体40を梁部材32の下側に配置したが、質量体40は梁部材32の上側に配置してもよい。
【0038】
[第2実施形態]
【0039】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0040】
本実施形態の床構造60では、動吸振器が減衰部材50を備えていること以外については第1実施形態と同様である。
【0041】
本実施形態の床構造60は、床支持具16及び動吸振器70を備えている。
【0042】
図5に示すように、動吸振器70は、梁部材32、質量体40、及び、減衰部材50を備えている。減衰部材50は、梁部材32と下地パネル14Aとの間に配置され、一面が下地パネル14Aに接着され、他面が梁部材32に接着されている。減衰部材50としては、粘弾性変形するものであれば、あらゆる部材を用いることができるが、例えば、上面からみて、図6(A)に示すような中空形状のゴム部材や、図6(B)に示すようなソリッド状のゴム部材や、図6(C)に示すような密実な円形断面の発泡体や、図6(D)に示すような矩形断面の発泡体を用いることができる。
【0043】
また、減衰部材としては、図7に示すように、側方から見て中空Rの構成された形状の減衰部材51を用いることもできる。この場合には、ねじ42は質量体40の下側からねじ込む。
【0044】
(作用)
【0045】
次に、上記の実施形態の作用を説明する。
【0046】
上階で発せられた床衝撃音(例えば、歩行音等)の振動は、上床材14から、支持パネル15、支持ボルト22、中間受け部材20を介してクッションゴム18へ伝わり、クッションゴム18で減衰されながら床スラブ12へ伝わる。このとき、動吸振器30の質量体40が、梁部材32を介して上床材14の振動を打ち消すように上下方向に振動する。このとき、減衰部材50が配置されているので、対象周波数範囲を拡大することができる。すなわち、図8に示すように、上床材14の固有振動周波数特性がグラフ中のF0で表されるとした場合、この固有振動周波数特性に対応した梁部材32及び質量体40(減衰部材なし)を設置すると、グラフ中のF1のように周波数ピークが分散する。そして、さらに減衰部材50を設けることにより、グラフ中のF2に示すように、F1のピークが削られる特性となり、効果的に振動を減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態に係る床構造及び床支持具の縦断面を示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係る床構造の下地パネル及び床支持動吸振器の配置を示す平面図である。
【図3】第1実施形態に係る床支持具及び動吸振器の断面図である。
【図4】第1実施形態に係る動吸振器の動作説明図である。
【図5】第2実施形態に係る動吸振器の断面図である。
【図6】第2実施形態に係る動吸振器の減衰部材の例を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る動吸振器の変形例の断面図である。
【図8】床材の固有振動周波数特性と動吸振器を設置した場合の振動周波数特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
10 床構造
12 床スラブ
14A 下地パネル
14 上床材
16 床支持具
18 クッションゴム
22 支持ボルト
28 床支持動吸振器
30 動吸振器
32 梁部材
36 第1支持部
38 第2支持部
40 質量体
50 減衰部材
51 減衰部材
60 床構造
70 動吸振器
L 距離
δ 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブ上に支持され、弾性変形可能であって振動を減衰させる第1弾性部材と、
前記第1弾性部材上に支持され、前記床スラブとの間に間隔をもって配置される床材を支持する支持部材と、
前記支持部材と離間した位置で、前記床材の下面側に前記床材に沿って前記床材と間隔をあけて取り付けられた弾性変形可能な梁部材と、
前記梁部材に取り付けられ、前記梁部材の弾性変形によって変位して振動を減衰させる質量体と、
を備えた床支持吸振具。
【請求項2】
前記梁部材は一端側の第1支持部、及び、他端側の第2支持部で前記床材の下面側に支持され、前記梁部材の中間部に前記質量体が取り付けられていること、を特徴とする請求項1に記載の床支持吸振具。
【請求項3】
前記質量体は前記梁部材の下側に取り付けられ、前記梁部材と前記床材との間に粘弾性変形可能な減衰部材が配置されていること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の床支持吸振具。
【請求項4】
床スラブと、
前記床スラブと間隔をもって配置される床材と、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の床支持吸振具と、
を備えた床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−174159(P2009−174159A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12536(P2008−12536)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】