説明

床暖房構造

【目的】安価な床暖房構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る床暖房構造10Aは、電気炉酸化スラグを含有した床板11aの下側にアンテナ線39を配置し、該アンテナ線39に電磁波出力装置50を接続した。係る構成にあって、電磁波出力装置50が駆動してアンテナ線39から電磁波が照射されると、前記床板11aの電気炉酸化スラグが電磁波を熱エネルギーに変換する。そうすると、当該床板11aが発熱して床面Xが暖まり、床暖房として機能することとなる。なお、前記床板11aの上面に金網27からなる電磁波遮蔽層29を設けることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を照射して加熱することができる床暖房構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、床暖房構造としては、いくつかの構成が既に提案されている。最も一般的な三つの方式は、熱媒式、直熱式、及び空気式である。ここで、熱媒式は、ボイラで暖めた温水(主として不凍液)を床下に配設したパイプに流し、それによって床を暖めるものである。また、直熱式は、床材の下に埋め込まれた放熱体に電気を流し、そして床材、もしくは蓄熱材を暖めるものである。さらに、空気式は、床下に暖かい空気を送り込んでその空気で床を暖める構成である。また、その他の床暖房構造も種々提案されている(特許文献1から特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2007−163093号公報
【特許文献2】特開2004−13069号公報
【特許文献3】特開平11−93390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記熱媒式の床暖房構造は、パイプから漏水する危険性があるという欠点がある。また、上記直熱式にあっては、例えば蓄熱材が温まるのに非常に時間がかかり、多大なエネルギーが消費されてランニングコストが高騰するという欠点がある。また、空気式にあっては、建物の構造によっては設置できない場合もあり、設置箇所に制限があるという欠点がある。
【0004】
さらに、いずれの床暖房構造においても、電気毛布等の他の方式の暖房手段に比して、イニシャルコストが高いという欠点がある。
【0005】
そこで、本発明は、従来に比して安価であり、ランニングコストが格段に向上する床暖房構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電気炉酸化スラグを含有した床板の下側に電磁波照射手段を配置したことを特徴とする床暖房構造である。ここで、電気炉酸化スラグは、電磁波が照射されると発熱する材料であり、非常に安価である。さらに詳述すると、電気炉酸化スラグの粒状物または破砕物は、他のフェライト系無機質に比べて非常に安価であり、かつ耐化学性があり殆ど変質しないので実用性が高い。そして電磁波を及ぼせば該電気炉酸化スラグは該電磁波を吸収して熱エネルギーに変換する。このため、係る電気炉酸化スラグを含有する床板を電磁波照射手段の上側に配置するという簡易構造で安価な床暖房構造を構成することができる。また、電気炉酸化スラグは、上記性質があるために非接触加熱が可能であり、発熱源を加熱するための配線、結線等が不要である。
【0007】
また、前記電気炉酸化スラグを含有した床板の上部又は上側には電磁波遮蔽層が配置されている構成が望ましい。かかる電磁波遮蔽層は、電磁波を吸収及び/又は下向きに反射して室内に漏洩することを防止する。なお、床板の上部とは当該床板の上面部を構成する部位であり、一方、床板の上側とは、当該床板の上方であって当該床板から離間した位置を含む。
【0008】
また、本発明は、床板の上面及び/又は下面に電気炉酸化スラグ塗布層を形成し、該床板の下側には電磁波照射手段を配置したことを特徴とする床暖房構造に関するものである。かかる構成とすることにより、例えば既設の床板に対して電気炉酸化スラグ入りの塗料を塗工して床暖房構造とすることができる。また、本発明も上記発明と同様に、配線、結線等が不要である。
【0009】
また、前記電気炉酸化スラグ塗布層の上部又は上側には、電磁波遮蔽層が配置されている構成が望ましい。かかる電磁波遮蔽層は、上記発明と同様に、電磁波を吸収及び/又は反射して室内に漏洩することを防止する。なお、電気炉酸化スラグ塗布層の上部とは当該電気炉酸化スラグ塗布層の上面部を構成する部位であり、一方、電気炉酸化スラグ塗布層の上側とは、当該電気炉酸化スラグ塗布層の上方であって当該電気炉酸化スラグ塗布層から離間した位置を含む。
【0010】
また、本発明は、床板の上側及び/又は下側に電気炉酸化スラグを含有した樹脂シートあるいはセラミック層を配置し、該床板の下側には電磁波照射手段を配置したことを特徴とする床暖房構造である。かかる構成とすることにより、例えば既設の床板に対して前記樹脂シートあるいはセラミックス層を積層するだけで床暖房構造とすることができる。また、施工時に前記樹脂シートあるいはセラミックス層を敷くだけで良く、塗装作業等が不要であるため、施工が容易である。さらに、本発明も上記発明と同様に、配線、結線等が不要である。なお、該セラミック層を配することにより、室内に遠赤外線が放射されることとなって、暖房効果が向上することとなる。
【0011】
また、前記電気炉酸化スラグを含有した樹脂シートあるいはセラミックス層の上部又は上側には、電磁波遮蔽層が配置されている構成が望ましい。かかる電磁波遮蔽層は、上記発明と同様に、電磁波を吸収及び/又は反射して室内に漏洩することを防止する。なお、前記樹脂シートあるいはセラミックス層の上部とは当該樹脂シートあるいはセラミックス層の上面部を構成する部位であり、一方、樹脂シートあるいはセラミックス層の上側とは、当該樹脂シートあるいはセラミックス層の上方であって当該樹脂シートあるいはセラミックス層から離間した位置を含む。
【0012】
さらに、本発明は、電気炉酸化スラグを含有するコンクリート床の下側に電磁波照射手段を配置したことを特徴とする床暖房構造である。かかる構成とすることにより、コンクリート床にあっても簡便で安価な床暖房構造を提供することができる。また、本発明も上記発明と同様に、配線、結線等が不要である。
【0013】
また、前記電気炉酸化スラグを含有するコンクリート床の上部又は上側には電磁波遮蔽層が配置されている構成が望ましい。かかる電磁波遮蔽層は、上記発明と同様に、電磁波を吸収及び/又は反射して室内に漏洩することを防止する。なお、前記コンクリート床の上部とは当該コンクリート床の上面部を構成する部位であり、一方、コンクリート床の上側とは、当該コンクリート床の上方であって当該コンクリート床から離間した位置を含む。
【0014】
ところで、上記電気炉酸化スラグは、電気炉酸化スラグ溶融物に電磁波加熱性を向上させるための添加物を添加した上で空気または酸素を吹き込んで強制酸化処理を施し、その後急冷固化することによって得られる改質電気炉酸化スラグであることが好ましい。かかる構成とすることにより、電磁波加熱性が更に向上し、小さな電力で高温度の加熱が可能となる。また、電気炉酸化スラグを含有する材料には、上記電気炉スラグが15〜30質量%の範囲で含有されていることが好ましい。上記の各材料中のスラグ含有量が15質量%に満たない場合には、発熱量が不足して充分な床暖房効果が期待できず、スラグ含有量が30質量%を超えると、該材料の重量が大となるし、これ以上スラグ含有量を増やしても該材料の発熱量はあまり増大しない。
【0015】
ところで、本発明の床板及びコンクリート床は、その上面が室内に露出する場合もあるし、露出しない場合もある。例えば、本発明の床板は、木質系床仕上げ材、畳、カーペット等の床仕上げ材も含むし、下地材、構造用合板等も含む。また、本発明の床板及びコンクリート床の上面は、水平面である必要は無く、人、台車、車両等が通行可能な傾斜面であっても勿論良い。また、本発明に係る電磁波照射手段は電磁波出力装置と、前記電磁波出力装置に接続されたアンテナ線とからなる構成が好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の床暖房構造は、従来は産業廃棄物とされていた電気炉酸化スラグを用いる構成であるから、安価な床暖房構造とすることができる優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を以下に詳細に説明する。
〔電気炉酸化スラグ〕
本発明で使用する電気炉酸化スラグは、通常CaO:10〜26質量%、SiO:8〜22質量%、MnO:4〜7質量%、MgO:2〜8質量%、FeO:13〜32質量%、Fe:9〜45質量%、Al:4〜16質量%、Cr:1〜4質量%程度含み、更に微量成分としてBaO:0.05〜0.20質量%、TiO:0.25〜0.70質量%、P:0.15〜0.50質量%、S:0.005〜0.085質量%程度含み、安定な鉱物組成を得るためのFeを20〜45質量%程度含むものであり、天然骨材成分に含まれる粘土、有機不純物、塩分を全く含まず、不安定な遊離石灰、遊離マグネシアあるいは鉱物も殆ど含まない。該電気炉酸化スラグは粒状物または破砕物として提供される。
【0018】
〔電気炉酸化スラグ粒化法〕
上記電気炉酸化スラグを粒化して粒状物を製造するには、該電気炉酸化スラグの溶融物を高速回転する羽根付きドラムに注入し、該溶融物を該羽根付きドラムによって破砕粒状化し、粒状化した該溶融物を水ミスト雰囲気中で急冷処理する方法が採られる。該羽根付きドラムは複数個配置して複数段の破砕粒状化を行なってもよい。
このようにして得られる電気炉酸化スラグの粒状物は、再酸化が促進されるので、Fe系の鉱物を多く含み、かつ急冷により、極微細な粒状物になるため、電磁波加熱性が非常に良好なものとなる。また通常5mm以下の粒径を有し、粒径2.5mm以下のものは略球状であり、比重は3.3〜4.1の範囲にあり、表面にはひび割れ等の欠陥はなく、微細な凹凸を有し、中空構造のものからなるか、または中空構造のものを含んでいる。
【0019】
〔電気炉酸化スラグ破砕法〕
上記電気炉酸化スラグ破砕物を製造するには、上記電気炉酸化スラグを溶融状態で耐熱容器中に所定の厚みに流し出し、上から水をかけることによって急冷改質処理が施される。この場合、耐熱容器中のスラグ溶融物の厚さが小さすぎると、水をかける前に自然冷却(徐冷)によって硬化し易くなり、所望の硬度が得られなくなるおそれがあり、また厚さが大きくなり過ぎると、水をかけた場合に水が急激に水蒸気となり、水蒸気爆発の危険がある。望ましいスラグ溶融物の厚さは80mm〜120mmである。
【0020】
水をかける場合には耐熱容器中のスラグ溶融物の表面に水が溜まらないようにすることが望ましく、水をかける量が多過ぎてスラグ溶融物の表面に水が溜まって水の蒸発潜熱による急冷効果が期待出来なくなる。
上記水をかける量は、スラグ溶融物1トン当たり毎秒200〜400リットル程度が望ましい。
上記急冷によってスラグ溶融物は急速に硬化するが、この際自己破砕によって容器中のスラグ溶融物の厚さ程度の径を有するスラグ原塊が得られる。
【0021】
該スラグ原塊は粗砕機で粗砕され、更に細砕機で細砕される。上記粉砕によって、スラグ塊はスラグ成分のマトリクスと鉱物相との境界で破断し、表面に微細な凹凸が形成される。所望なれば上記破砕物は粗篩機等によって粗分級され、更に細砕機等によって細分級して5〜25mm望ましくは5〜20mmの粗骨材、粒径5〜13mm望ましくは5〜10mmの粗骨材、および5mm以下の細骨材に分ける。
【0022】
上記粗砕および細砕はスラグ原塊が水で濡れたままで行ってもよいし、またスラグ原塊を乾燥して粗砕以後の工程を行ってもよいし、あるいはスラグ原塊を粗砕した後に乾燥して細砕以後の工程を行ってもよい。また上記分級工程において、篩を通過しない残分は破砕工程に戻されることが望ましい。
このようにして得られる破砕物は徐冷スラグに較べ、再酸化が促進されるので、Fe系の鉱物を多く含み、かつ急冷により、微細な粒状物になるため、電磁波加熱性が非常に良好なものとなり、その比重は水砕品と同様3.3〜4.1の範囲にある。
【0023】
〔改質電気炉酸化スラグ〕
本発明において使用可能な改質電気炉酸化スラグには電磁波加熱性を向上させるための添加物を添加する。
上記電磁波加熱性を向上させるための添加物としては、Fe、Ba、Co、Ni、Cr、Cu、Mn、Sr、Zn等の金属あるいはこれら金属を含む合金あるいはこれらの金属の酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩等の加熱により酸化物を与える化合物である。望ましい添加物としては鉄スクラップ、スケール、BaO屑、硫酸バリウムを含む重晶石等がある。
上記添加物は前記粒化法あるいは破砕法において、電気炉酸化スラグ溶融物に添加されるかあるいは電気炉酸化スラグに混合されて共に溶融される。上記溶融は通常電気溶解炉で行われるが、この時溶融物に空気または酸素を吹込み強制酸化処理を施す。上記強制酸化処理は特にFeO比率が高い破砕法によるスラグに対して有効であり、上記強制酸化処理によってFe比率を高めて電磁波加熱性を向上せしめることが出来る。
該改質電気炉酸化スラグも粒状物または破砕物として提供される。
【0024】
〔電気炉スラグ粒状物の製造〕
図2に本発明の電気炉スラグ粒状物(以下スラグ粒状物と略す)8を製造する装置を示す。
即ち1500℃前後の電気炉酸化スラグ溶融物1を電気溶解炉から取鍋2に移し、さらに該取鍋2からシューター3に移し、該シューター3から高速回転する羽根付きドラム4,5に注入する。ここで、スラグの注入速度は10t/hに設定している。そして、該製鋼スラグ溶融物1は該羽根付きドラム4,5によって細破砕されて粒状化される。ここで、羽根付きドラム4の周速は20.5m/sec(400rpm)に設定されている。また、ドラム本体サイズは、長さ1220mm、直径980mmに設定されている。さらに、羽根は高さ150mm、長さ930mmの三角羽根で、枚数を9枚に設定されている。これに対し、羽根付きドラム5の周速は26.5m/sec(513rpm)に設定されている。また、ドラム本体サイズは、長さ1220mm、直径980mmに設定されている。さらに、羽根は高さ150mm、長さ1220mmの三角羽根で、枚数を9枚に設定されている。そして、電気炉酸化スラグ溶融物の粒化物1Aは急冷チャンバー6内にスプレー装置7からスプレーされる水ミストによって急冷される。ここで、水ミストスプレー水量は70L/minに設定されている。また、急冷チャンバー6(ロータリーフード)は、直径2800mm、長さ5000mmで、回転数が4rpmに設定されている。そしてこのようにして得られたスラグ粒状物8は備蓄容器9内に備蓄される。
該スラグ粒状物8は略球状の中空体であり、表面にはひび割れ等の欠陥はなく、微細な凹凸が有り、高硬度(モース硬さでマトリックスが6程度、鉱物相が8程度であった。)を有し耐摩耗性に優れており、真比重は3.84、絶乾比重は3.52、耐火度は1100℃で、電磁波発熱性、透磁性、誘電性、耐酸性、耐アルカリ性等にも優れている。
該スラグ粒状物8の粒度分布を図3に示す。
【0025】
〔電気炉スラグ破砕物の製造〕
上述した電気溶解炉から取鍋2に移されたスラグの溶融物に鉄粉および酸化カルシウムと酸化ケイ素とを後添加して次の組成に調節する。
CaO 24.92重量%
SiO 15.24重量%
Al 6.72重量%
MnO 5.66重量%
MgO 4.25重量%
Cr 1.97重量%
TiO 0.42重量%
BaO 0.07重量%
総Fe 40.75重量%
CaO/SiO2 =1.64
上記スラグ溶融物は約1350℃に加熱されているが、取鍋2から耐熱容器(皿型鋼鉄製)に約100mmの厚さに流し出され、直ちにスラグ溶融物1トン当たり毎秒300リットル、スプレーにより散水する。
【0026】
このようにして約100mm径のスラグ原塊が得られ、該スラグ原塊のモース硬さはマトリクスで6、鉱物相で8であった。該スラグ原塊は粗砕機で粗砕され、乾燥機で乾燥後、細砕機で細砕される。細砕されたスラグ原塊は次いで粗篩機で粗分級され、更に細篩機で細分級されて、5〜20mm粒径の粗骨材または5〜13mm粒径の粗骨材、5mm以下の細骨材に分けられる。
【0027】
〔改質電気炉スラグ破砕物の製造〕
4.5トンの電気炉酸化スラグ1を図4に示す電気溶解炉Dに投入し、更に鉄スクラップとして1.5トンの銑ダライと125kgの重晶石を加えてランス管Rから酸素を吹精しつつ加熱溶融し、得られた溶融物1Aを図2に示す取鍋2に移し、以後、前記の電気炉スラグ破砕物の製造と同様にして改質電気炉酸化スラグ破砕物を得る。
上記改質電気炉酸化スラグ破砕物の化学組成の一例を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
〔床板〕
本発明の床板は、例えば合板、ハードボード、パーチクルボード、MDF等の木質板、又は木質セメント板等が例示される。そして、該床板には、通常、電気炉酸化スラグが15〜30質量%で添加される。また、該床板の厚みは、通常、2mm以上に設定される。なお、床板に電気炉酸化スラグを含有させる場合には、床板を構成するための接着剤に電気炉酸化スラグを混合し、又は原料に電気炉酸化スラグを混合して成形することができる。
【0030】
また、前記床板の上側には、電磁波遮蔽用の電磁波遮蔽層が配置されても良い。前記電磁波遮蔽層としては、例えば金属層を設ける構成が提案され、金属箔、金属網を用いることができる。さらに、前記金属箔や金属網に代え、あるいは該金属箔や金属網と共に前記電磁波遮蔽層として、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、若しくは銅粉末等の導電体粉末を含有した塗料により電磁波遮蔽用の塗膜層を設ける構成としても良い。前記電磁波遮蔽層を前記床板の上側に配置するには、例えば、前記床板の上面に接着剤を介して前記金属網や金属箔を接着する、あるいは前記木質板や木質セメント板等を成形する際に、型内に前記金属網や金属箔をインサートしておく方法が採用され得る。
【0031】
〔電気炉酸化スラグ塗布層〕
前記床板には、電気炉酸化スラグを添加する代わりに、その上面及び/又は下面に電気炉酸化スラグ塗布層を形成しても良い。前記電気炉酸化スラグ塗布層は、通常、前記床板の上面及び/又は下面に電気炉酸化スラグを混合した樹脂塗料を塗布することによって形成される。
【0032】
前記樹脂塗料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレンターポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂や、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル樹脂、熱硬化型ポリアミド樹脂等の熱硬化性樹脂の有機溶剤溶液あるいは水性エマルジョンが用いられ、前記樹脂塗料には、通常、前記電気炉酸化スラグが15〜30%質量%の割合で添加される。さらに、前記樹脂塗料として低融点樹脂を使用した場合は、無溶剤型塗料としても良い。前記低融点樹脂としては、ポリエチレン、低融点ポリエステル、低融点ポリアミド等が例示される。
また、いわゆる床仕上げ材に塗工するワックスに電気炉酸化スラグを混合しても良い。前記ワックスには、表面塗布型と浸透型とがあり、さらに該表面塗布型の有機質系塗料(合成樹脂塗料)には無溶剤型、溶剤型、水性型とがある。また、該浸透型には、無機質型のものがある。無溶剤型は、主剤と硬化剤とを混合し化学反応を起こさせて塗膜を作るものであり、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、メタクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ビニルエステル樹脂系などがある。また、溶剤型は、有機溶剤を加えて粘度調整し、ローラーや刷毛などで施工するものであり、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系などがある。また、水性型は、水を希釈剤として粘度調整し、主にローラーや刷毛で施工するものであり、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系がある。
なお、前記電気炉酸化スラグ塗布層の厚みは、通常、2mm以上に設定される。
【0033】
また、前記床板の下面に前記電気炉酸化スラグ塗布層が形成された当該床板の上側には、電磁波遮蔽用の前記電磁波遮蔽層が配置されても良い。また、前記床板の上面に前記電気炉酸化スラグ塗布層が形成された当該床板の該電気炉酸化スラグ塗布層の上側、または、前記床板の上下面に前記電気炉酸化スラグ塗布層が形成された当該床板の上側の電気炉酸化スラグ塗布層の上側にも、電磁波遮蔽用の前記電磁波遮蔽層が配置されても良い。前記電磁波遮蔽層は、上述の構成と同様に、金属箔、金属網、導電体粉末等が例示され、該電磁波遮蔽層を配置するには、例えば、電気炉酸化スラグ塗布層の上面に金属網を乗載しても良いし、電気炉酸化スラグ塗布層の表面に接着剤を介して前記金属網を接着するようにしても良い。
【0034】
〔電気炉酸化スラグを含有した樹脂シート〕
電気炉酸化スラグが添加された樹脂シートに用いられる樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン(CPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルフォン、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)エラストマー、熱可塑性エラストマー(TPE)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、更にアイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)樹脂、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合(ASA)樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合(AS)樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合(ACS)樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合(EVOH)樹脂、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリブタジエン(BDR)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、酢酸繊維素(セルロースアセテート:CA)樹脂、ポリオキシメチレン(=ポリアセタール)(POM)、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、全芳香族ポリエステル(POB)等の熱可塑性樹脂あるいは熱可塑性エンジニアリングプラスチックが例示される。
また、熱硬化性樹脂としては、熱硬化型ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等が使用されるが、該合成樹脂を生成するウレタン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー(初期縮合体)、フェノール樹脂プレポリマー(初期縮合体)、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等の合成樹脂前駆体も使用される。また、樹脂としてホットメルト樹脂を使用しても良い。ホットメルト樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系樹脂(ポリオレフィン系樹脂の変性物を含む)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステル共重合体、ポリアミド、ポリアミド共重合体等の1種または2種以上の混合物等の低融点樹脂(好ましくは融点200℃以下)を材料とする。
【0035】
更に樹脂としてはゴムまたはエラストマーを使用してもよい。本発明で使用されるゴムまたはエラストマーとしては、例えばアクリルゴム、ブチルゴム、ケイ素ゴム、ウレタンゴム、フッ化物系ゴム、多硫化物系ゴム、グラフトゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリブテンゴム、イソブテン−イソプレンゴム、アクリレート−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ピリジン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、アクリロニトリル−クロロプレンゴム、スチレン−クロロプレンゴム等の合成ゴムや天然ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−水素添加ポリオレフィン−スチレン共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーやブタジエン−スチレンプロック共重合体、スチレン−ゴム中間ブロック−スチレン共重合体等のブロック共重合体等のエラストマーが例示される。
上記ゴムおよび/またはエラストマーは二種以上混合使用されてもよい。
【0036】
樹脂シートは通常前記電気炉酸化スラグを前記樹脂に混合した混合物をカレンダー法、押出成形法、プレス成形法等によってシート状に成型することによって製造される。
なお、前記電気炉酸化スラグを含有した前記樹脂のシートの厚みは、通常、2mm以上に設定される。
【0037】
樹脂シートの具体例を下記に示す。
〔具体例1〕
下記の処方の混合物を調製した。
電気炉酸化スラグ(5mm以下) 100質量部
クロロプレンゴム 60 〃
酸化亜鉛 0.6 〃
硫黄 0.3 〃
上記混合物は加熱溶融混練され、Tダイを介して厚さ5mmのシートに押出された。
【0038】
〔具体例2〕
下記の処方の混合物を調製した。
電気炉酸化スラグ(5mm以下) 110質量部
電気炉酸化スラグ(5〜10mm) 100質量部
アスファルト 80 〃
スチレン−ブタジエン−ゴム、 4 〃
上記混合物は100℃に加熱溶融混練され、型枠に流し込んで厚さ10mmの樹脂シートを成形した。
【0039】
〔具体例3〕
下記の処方の混合物を調製した。
電気炉酸化スラグ5mm以下) 100質量部
ポリカーボネート 40 〃
上記混合物は押出成形によって厚さ10mmのシート状試料を成形した。
【0040】
また、前記床板の下面に前記樹脂シートが形成された当該床板の上側には、電磁波遮蔽用の前記電磁波遮蔽層が配置されても良い。また、前記床板の上面に前記樹脂シートが形成された当該床板の該樹脂シートの上側、または、前記床板の上下面に前記樹脂シートが形成された当該床板の上側の樹脂シートの上側にも、電磁波遮蔽用の前記電磁波遮蔽層が配置されても良い。前記電磁波遮蔽層は、上述の構成と同様に、金属箔、金属網、導電体粉末等が例示され、該電磁波遮蔽層を配置するには、例えば、樹脂シートの上面に金属網を乗載するようにしても良いし、前記樹脂シートの表面に接着剤を介して前記金属網を接着する方法としても良い。
【0041】
〔コンクリート床〕
本発明に係る前記電気炉酸化スラグを含有したコンクリート床は、例えばポルトランドセメント、ジェットセメント、高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等の一種または二種以上の混合物等のセメントと、骨材との混合物の硬化物を主体とするものである。前記コンクリート床には、鉄筋が埋設されていても良い。なお、前記コンクリート床には、前記電気炉酸化スラグが通常15〜30質量%の量で添加される。この電気炉酸化スラグは、骨材として用いても良い。
前記コンクリート床の厚みは、通常、強度上の要請から20mm以上に設定される。該厚みが20mm未満であると、必要強度が不十分になる。
【0042】
コンクリート床の具体例を下記に示す。
〔具体例1〕
下記の処方の混合物を調製した。
電気炉酸化スラグ(5mm以下) 100質量部
ポルトランドセメント 16 〃
AE減水剤 0.04 〃
上記混合物に水6質量部を加え、ミキサーで3分間混練し、該混練物を型枠中に流し込み、コテによって表面を平坦にして常温で1日養生し、水和反応により硬化させた後脱型し、更に27日常温で水和反応させ、厚さ10mmのコンクリート床を成形した。
【0043】
〔具体例2〕
下記の処方の混合物を調製した。
電気炉酸化スラグ(5〜10mm) 100質量部
電気炉酸化スラグ(5mm以下) 100質量部
ポルトランドセメント 25 〃
高性能AE減水剤 0.25 〃
メチルセルロース(増粘剤) 0.13 〃
上記混合物に水12質量部を加え、ミキサーで3分間混練した。該混練物を型枠中に流し込み、コテによって表面を平坦にして常温で3日養生し、水和反応により硬化させた後脱型し、更に25日常温で水和反応させ、厚さ10mmのコンクリート床を成形した。
【0044】
〔セラミックス層〕
本発明に係る前記電気炉酸化スラグを含有するセラミックス層の原料としては、カオリン、蛙目粘土、木節粘土、ロウ石質粘土、セッ器粘土、ベントナイト等の可塑性原料、ケイ石、ロウ石、素地粉等の非可塑性原料、長石、陶石、絹雲母、滑石等の窯業原料等、その他アルミナ、マグネシア、ジルコニア、チタニア、ベリリア、トリア、スピネル、セルシャン等のセラミック原料が例示される。
【0045】
前記電気炉酸化スラグは上記セラミックス層に通常30〜90質量%の量で添加される。
上記セラミックス層を形成するには、上記原料に前記電気炉酸化スラグを添加し、更に水を加えてスラリーあるいは混練物とし、該スラリーあるいは混練物を前記床板の上面及び/又は下面に塗布し乾燥硬化したり、該スラリーあるいは混練物を注型成形、押出し成形、あるいはプレス成形によって板状に成形し、該板状成形物を焼成する方法が採用される。
【0046】
セラミックス層の具体例を下記に示す。
下記の処方の混練物を調製した。
電気炉酸化スラグ(5mm以下) 100質量部
セラミックス原料* 20 〃
水 10 〃
*セラミックス原料組成
天草陶石 35質量%
カオリン 27 〃
長石 22 〃
蛙目粘土 15 〃
滑石 1 〃
上記混練物は型内で油圧プレスにより30MPaに加圧し、厚さ10mmの板状生試料を成形した。上記生試料は乾燥後800〜900℃、12時間、素焼きガマで熱処理され、次いで1100〜1200℃、12時間本焼きガマで焼成されセラミックス層が作成された。
【0047】
また、前記コンクリート床あるいはセラミックス層の上側には、電磁波遮蔽用の前記電磁波遮蔽層が配置されても良い。前記電磁波遮蔽層は、上述の構成と同様に、金属箔、金属網、導電体粉末等が例示され、該電磁波遮蔽層を配置するには、例えば、コンクリート床あるいはセラミックス層形成の際に、型枠に金属網をインサートする方法が例示される。
【0048】
〔床暖房構造〕
次に、本発明に係る床暖房構造10A〜10Fを、添付図面に従って説明する。この床暖房構造10A〜10Fは、一般的な家屋に設けられる場合もあるし、オフィス等のビル施設に設けられる場合もあり、木造、鉄骨造などの構造、又は一階、二階等の設置階は、特に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
実施例1の床暖房構造10Aを、図1及び図5〜7に従って説明する。
図5に示すように、一般的な木造家屋の地階床部にあっては、束(図示省略)によって支持される大引13が並行して複数架け渡されていると共に、さらに該大引13上には該大引13と交差するようにして複数の根太12が並行して差し渡されている。また、大引13と大引13との間隙には、公知の固定手段により断熱材14が固定されている。また、前記の根太12上には、図1に示すような薄板状の床板11(床仕上げ材)が複数並設され、床面Xが形成されている。これにより、地階床部が構成されることとなり、前記床板11の床面Xが家屋の室内に臨むこととなる。なお、このような床部の構造は、公知技術が好適に採用される。
【0050】
なお、上記断熱材14は、ポリスチレン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、半硬質ポリウレタン発泡体、フェノール樹脂発泡体、メラミン樹脂発泡体等のプラスチック発泡体や、特に半硬質発泡体やフェノール樹脂発泡体の上下両面にプラスチックフィルムが貼着されている複合発泡体、更にポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維等の合成繊維やガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、ロックウール等の無機繊維を合成樹脂によって結着した繊維板等の板状多孔質体からなる。
【0051】
ところで、本実施例1に係る床板11は、上述の電気炉酸化スラグが含有されてなる電気炉酸化スラグ入り床板11aとされていることを特徴としている。ここで、床板基材が例えば木質系の合板を積層してなる積層材である場合は、各層間に電気炉酸化スラグを散在させて全体として電気炉酸化スラグ入り床板11aとすることができる。また、床板基材が例えば木質系の粉末材料を接着剤で接着させて一体の成形物としてなる構成の場合は(例えば中密度繊維板)、当該成形物の製造過程において電気炉酸化スラグを所定タイミングで添加し、電気炉酸化スラグ入り床板11aとすることができる。また、浸透性の塗料に電気炉酸化スラグを添加し、該塗料を床板基材に塗工して電気炉酸化スラグ入り床板11aとすることもできる。
【0052】
また、図5,7に示すように、上記床暖房構造10Aの断熱材14の上面には、所定深さの凹溝で構成されるアンテナ線収納凹溝14aが設けられている。そして、このアンテナ線収納凹溝14aには、縦断面がほぼ真円状のアンテナ線39(電磁波照射手段)が収納される。なお、アンテナ線収納凹溝14aの内周面の曲率は、アンテナ線39の外形に合わせて設計されている。
【0053】
ここで、前記アンテナ線39は、図7に示すように、導電線39aの外周面に電気絶縁層39bを介して金属メッシュからなる電磁波遮蔽層39cが被覆され、更に該電磁波遮蔽層39cの外周に電磁波吸収磁性層39dが被覆されており、該電磁波遮蔽層39cと該電磁波吸収磁性層39dとは電磁波射出角度及び電磁波の周波数に対応した長さと巾とで切り欠かれている。さらに電磁波遮蔽層39cの外周には、ケース39e,39fが順に配設されている。
【0054】
そして、図6に示すように、断熱材14の上面において、アンテナ線収納凹溝14aが平面視コ字形に形成され、該アンテナ線収納凹溝14aにアンテナ線39が収納されることにより、当該アンテナ線39が床板11aの下側に配置される。
【0055】
さらに、各アンテナ線39には、電磁波出力装置50(電磁波照射手段)が接続されている。この電磁波出力装置50は、電磁波発振装置51と、制御装置52とからなり、該制御装置52にはスイッチ53と熱電対等で構成される床板温度センサー54とが付設されている。なお、この床板温度センサー54は、前記の電気炉酸化スラグ入り床板11aの下面に装着され、当該床板11aの表面温度を測定可能としている。
【0056】
また、上記電磁波発振装置51は、上記スイッチ53をONするか、あるいは上記床板温度センサー54によって床板11aの表面温度が設定温度以下になった場合にはその信号に基づいて作動し、これにより上記アンテナ線39からは、1GHz〜10GHzの高周波数帯で、出力100〜1000W程度の電磁波が出力される。
【0057】
次に、本床暖房構造10Aの発熱機構について説明する。
上記床暖房構造10Aにあって、電磁波発振装置51が駆動して、電磁波が照射されると、該電磁波が上方にある床板11aに到達し、当該床板11aに含有された電気炉酸化スラグが電磁波を熱エネルギーに変換する。そうすると、当該床板11aが発熱し、床暖房として機能することとなる。
【0058】
ところで、通常、床板11aは20〜30℃の範囲で加熱され、例えば30℃になった時は、上記床板温度センサー54によって上記電磁波発振装置51の作動が停止するように設定されている。このようにして床板11aが加熱されることにより暖房器具としての床暖房構造10Aが機能し、快適な室内環境が形成されることとなる。
【0059】
なお、電気炉酸化スラグを含有する床板11aには、上記電気炉スラグが15〜30質量%の範囲で含有されていることが好ましい。該床板11aのスラグ含有量が当該床板11aに対して15質量%に満たない場合には、発熱量が不足して充分な床暖房効果が期待できない。なお、上記電磁波発振装置51は、束が配置されるいわゆる床裏(床下)空間に適宜設置可能である。また、床板11aとアンテナ線39との間には、電磁波の伝達を阻害しない層であれば適宜設けられても良い。
【0060】
なお、変形例として、図8に示すような床暖房構造10Bとしても良い。かかる構成は、電気炉酸化スラグが含有した床板(下地材)11bの上面に、電磁波遮蔽層29を設けた構成である。さらに詳述すると、断熱材14の上面に床板11bを配置し、さらに該床板11bの上面に、金属線材28で構成された金網27が該床板11bを被覆するように配置されている(図9参照)。この金網27は、孔眼サイズ5mm角以下で線直径0.2mm以上のものが好適である。さらに、該金網27上には、床仕上げ材11cが積層され、床面Xが構成される。係る構成にあっては、前記床板11bが発熱し、床面Xが暖められると共に、前記電磁波遮蔽層29により電磁波が下方に反射されて、該電磁波が室内に漏洩することが防止される。なお、金属線材28は、鉄、銅、アルミニウム、ステンレススチール等が使用される。
【0061】
この電磁波遮蔽層29は、金網27に代えて金属箔を用いても良い。かかる金属箔は、100μm以上の厚さが望ましい。100μm未満であると、該金属箔が破損し易い。なお、3mm角の電磁波遮蔽層29を設けることにより、電磁波遮蔽層29を設けない場合に比して電磁波が約60db低下する。
【0062】
(実施例2)
実施例2に係る床暖房構造10Bは、図10に示すように、床板11bの下面に電気炉酸化スラグ塗布層20を形成した構成である。なお、大引13、根太12、断熱材14、アンテナ線39、及び電磁波出力装置50の構成については、実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0063】
本実施例に係る床板11bは、市販されている公知の床材料が採用され、実施例1と異なり電気炉酸化スラグは含有されていない。その代わりに床板11bの下面には、当該床板11bの下面に予め塗工されてなる電気炉酸化スラグ塗布層20が配設されている。ここで、この電気炉酸化スラグ塗布層20を構成する塗工材料は、床板11bに容易に塗工できる前記樹脂バインダーに上記電気炉酸化スラグを適量含有せしめて製造される。なお、本実施例では、床面Xを構成する各床板11bにそれぞれ電気炉酸化スラグ塗布層20が設けられており、床板11bが複数並べられた状態となると、各電気炉酸化スラグ塗布層20が左右方向で連続することとなる。
【0064】
係る構成の床暖房構造10Bにあって、電磁波発振装置51が駆動して、電磁波が照射されると、該電磁波が上方にある電気炉酸化スラグ塗布層20に到達し、この電気炉酸化スラグ塗布層20に含有された電気炉酸化スラグが電磁波を熱エネルギーに変換する。これにより当該電気炉酸化スラグ塗布層20が発熱し、この電気炉酸化スラグ塗布層20を介して該塗布層20に隣接する床板11bが加熱されることとなる。なお、図10に示す床板温度センサー54は、前記電気炉酸化スラグ塗布層20の下面に装着したものであるが、その他の位置に適宜変更しても勿論良い。
【0065】
なお、実施例2の変形例として、図11に示すような床暖房構造10Cとしても良い。かかる構成は、電気炉酸化スラグ塗布層20を、床板11bの上面に予め塗工してなる構成である。かかる構成にあっては、照射された電磁波が最上位置にある電気炉酸化スラグ塗布層20に到達すると当該電気炉酸化スラグ塗布層20が発熱する。これにより、床板11bが暖められ、床暖房としての機能が発揮されることとなる。なお、図11に示す床暖房構造10Cは、床板温度センサー54を床板11bに埋設しているが、その他の位置に配置しても勿論良い。
【0066】
また、床暖房構造10Cにあって、図11に示す電気炉酸化スラグ塗布層20は、予め各床板11bごとに塗工されているものであるが、未塗工の床板11bが室内で施工された後に、該床面Xに広範囲で電気炉酸化スラグ入りの塗工材料が塗工されて、複数の床板11bに亘って電気炉酸化スラグ塗布層20が形成されるようにしても良い。なお、電気炉酸化スラグ塗布層20とアンテナ線39との間には、電磁波の伝達を阻害しない層であれば適宜設けられても良い。
【0067】
さらに変形例として、図12に示すような床暖房構造10Dが提案される。すなわち、床板(下地材)11bの上下面に電気炉酸化スラグ塗布層20を形成し、かつ上側の電気炉酸化スラグ塗布層20の上側に金網27からなる前記電磁波遮蔽層29を配置し、該電磁波遮蔽層29上に床仕上げ材11cを設ける構成である。係る構成とすることにより、前記床板11bが発熱し、床面Xが暖められると共に、前記電磁波遮蔽層29により電磁波が下方に反射されて、該電磁波が室内に漏洩することが防止される。
なお、図10に示す床暖房構造10Bに係る床板11bの上側、図11に示す床暖房構造10Cに係る電気炉酸化スラグ塗布層20の上側に、それぞれ電磁波遮蔽層29を配置しても勿論良い。ここで、該電磁波遮蔽層29の上には、床仕上げ材を配置することが望ましい。
【0068】
(実施例3)
実施例3に係る床暖房構造10Eは、図13に示すように、床板11bの上面(上側)に電気炉酸化スラグを含有した樹脂シート25を配置したことを特徴としている。なお、大引13、根太12、断熱材14、アンテナ線39、及び電磁波出力装置50の構成については、上述の実施例1,2と同様であるため説明を省略する。
【0069】
本実施例に係る床板11bは、市販されている公知材料が採用され、実施例1と異なり電気炉酸化スラグは含有されていない。
【0070】
係る構成の床暖房構造10Eにあって、電磁波発振装置51が駆動して、電磁波が照射されると、該電磁波がその上方にある前記樹脂シート25に到達し、該樹脂シート25に含有された電気炉酸化スラグが電磁波を熱エネルギーに変換する。これにより当該樹脂シート25が発熱し、この樹脂シート25を介して床面Xが暖められることとなる。なお、床板温度センサー54は、図13に示される位置に限定されず、適宜位置を変更できる。
【0071】
なお、実施例3の変形例として、図14に示すような床暖房構造10Fとしても良い。かかる構成は、電気炉酸化スラグが含有した樹脂シート25を、床板11bの下側に配置すると共に、該樹脂シート25の上面に前記した電磁波遮蔽層29を設けた構成である。このように樹脂シート25の上側に電磁波遮蔽層29を配設することにより、電磁波を反射して室内に電磁波が漏洩する効果が期待できる。
【0072】
なお、前記電気炉酸化スラグが含有した樹脂シート25は、床板11bの上側又は下側に熱伝達可能な距離で配設されれば良く、床板11bの上面又は下面に配設されることに限定されない。また、前記樹脂シート25は、床板11bの両側(当然両面を含む)に配設されても良い。さらに、電磁波遮蔽層29は、床板11bの上側のみ前記樹脂シート25が配された場合は、該樹脂シートの上側に配置され、床板11bの下側のみ前記樹脂シート25が配された場合は、該床板11bの上側に配置され、床板11bの両側に前記樹脂シート25が配された場合は、上側の樹脂シート25の上側に配置される。
【0073】
(実施例4)
実施例4に係る床暖房構造10Gは、図15に示すように、電気炉酸化スラグを含有するコンクリート床30の直下(下側)にアンテナ線39を配置したことを特徴とする。さらに詳述すると、本実施例に係る床暖房構造10Gの最下層には、コンクリートスラブ31が形成され、このコンクリートスラブ31上に、断熱材14が配置されている。
【0074】
ここで、該断熱材14の上面には、アンテナ線39の外形と同じ深さのアンテナ線収納凹溝14bが設けられており、アンテナ線39がアンテナ線収納凹溝14b内に収納された状態にあっては、断熱材14の上面とアンテナ線39の上端とがほぼ面一となるように前記アンテナ線収納凹溝14bの溝深さが定められている。
【0075】
さらに、前記断熱材14の上面には、電気炉酸化スラグが含有したコンクリート床30が打設される。ここで、該コンクリート床30は、例えばその打設過程の所定タイミングで電気炉酸化スラグを添加することにより製造される。
【0076】
係る構成の床暖房構造10Gにあって、電磁波発振装置51が駆動して、電磁波が照射されると、該電磁波が上方にある前記コンクリート床30に到達し、該コンクリート床30に含有された電気炉酸化スラグが電磁波を熱エネルギーに変換する。これにより当該コンクリート床30が発熱し、床面Xが暖かくなる。なお、床板温度センサー54は、図15に示される位置に限定されず、適宜位置を変更できる。ところで、前記コンクリート床30とアンテナ線39との間には、電磁波の伝達を阻害しない層であれば、適宜設けることができる。
【0077】
なお、実施例4の変形例として、図16に示すような床暖房構造10Hとしても良い。かかる構成は、電気炉酸化スラグが含有したコンクリート床30の上面に前記した電磁波遮蔽層29を設けた構成である。このようにコンクリート床30の上側に電磁波遮蔽層29を配設することにより、電磁波を反射して室内に電磁波が漏洩する効果が期待できる。なお、該電磁波遮蔽層29の上面には、床仕上げ材11cを配置することが望ましい。
【0078】
(実施例5)
実施例5に係る床暖房構造は、実施例3で使用した電気炉酸化スラグを含有した樹脂シート25に代えて、電気炉酸化スラグを含有したセラミックス層を配置したことを特徴としている。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明にあっては、床暖房構造が極めて安価に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】床板11の外観斜視図である。
【図2】電気炉スラグ粒状物製造装置の説明図である。
【図3】電気炉スラグ粒状物の粒度分布を示すグラフである。
【図4】電気溶解炉の説明図である。
【図5】実施例1に係る床暖房構造10Aを示す縦断側面図である。
【図6】図5のA-A線断面図である。
【図7】アンテナ線39とアンテナ線収納凹溝14aとを示す外観斜視図である。
【図8】実施例1の変形例に係る床暖房構造10Bを示す縦断側面図である。
【図9】図8のB-B線断面図である。
【図10】実施例2に係る床暖房構造10Bを示す縦断側面図である。
【図11】実施例2の変形例に係る床暖房構造10Cを示す縦断側面図である。
【図12】実施例2の変形例に係る床暖房構造10Dを示す縦断側面図である。
【図13】実施例3に係る床暖房構造10Eを示す縦断側面図である。
【図14】実施例3の変形例に係る床暖房構造10Fを示す縦断側面図である。
【図15】実施例4に係る床暖房構造10Gを示す縦断側面図である。
【図16】実施例4の変形例に係る床暖房構造10Hを示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0081】
10A〜10H 床暖房構造
11(11a,11b) 床板
20 電気炉酸化スラグ塗布層
25 樹脂シート
29 電磁波遮蔽層
30 コンクリート床
39 アンテナ線(電磁波照射手段)
50 電磁波出力装置(電磁波照射手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気炉酸化スラグを含有した床板の下側に電磁波照射手段を配置したことを特徴とする床暖房構造。
【請求項2】
前記電気炉酸化スラグを含有した床板の上部又は上側には電磁波遮蔽層が配置されていることを特徴とする請求項1記載の床暖房構造。
【請求項3】
床板の上面及び/又は下面に電気炉酸化スラグ塗布層を形成し、該床板の下側には電磁波照射手段を配置したことを特徴とする床暖房構造。
【請求項4】
前記電気炉酸化スラグ塗布層の上部又は上側には、電磁波遮蔽層が配置されていることを特徴とする請求項3記載の床暖房構造。
【請求項5】
床板の上側及び/又は下側に電気炉酸化スラグを含有した樹脂シートを配置し、該床板の下側には電磁波照射手段を配置したことを特徴とする床暖房構造。
【請求項6】
前記電気炉酸化スラグを含有した樹脂シートの上部又は上側には、電磁波遮蔽層が配置されていることを特徴とする請求項5記載の床暖房構造。
【請求項7】
電気炉酸化スラグを含有するコンクリート床の下側に電磁波照射手段を配置したことを特徴とする床暖房構造。
【請求項8】
前記電気炉酸化スラグを含有するコンクリート床の上部又は上側には電磁波遮蔽層が配置されていることを特徴とする請求項7記載の床暖房構造。
【請求項9】
床板の上側及び/又は下側に電気炉酸化スラグを含有したセラミックス層を配置し、該床板の下側には電磁波照射手段を配置したことを特徴とする床暖房構造。
【請求項10】
前記電気炉酸化スラグを含有したセラミックス層の上部又は上側には電磁波遮蔽層が配置されている請求項9記載の床暖房構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−52875(P2009−52875A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134338(P2008−134338)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(394026079)株式会社星野産商 (12)
【Fターム(参考)】