説明

床暖房用温水パネルにおける導管ガイド装置

【技術課題】 床暖房用温水パネルにおいて、最小面積の導管ガイドピースを用いて導管取出口から温水ヘッダーのところまで導管を配管できる省資源的な導管ガイド装置を提供する。
【解決手段】温水パネル1に温水ヘッダー3を組み付け、この温水ヘッダー3の前方であって、温水パネル1の下縁1Aのところにヘッダー開口部7を形成し、温水パネル1のコーナー部分にコーナー開口部8を形成する。
導管ガイドパネル10の90°円弧ガイドのピース部11、13と直線ガイドピース部15、16及び溝無しピース部18〜19をスリット溝22でカットし、ヘッダー開口部7とコーナー開口部8において、導管の配管方向にガイド溝を合わせて各ピース部を組み付ける。
これにより、導管を温水パネル1の外から温水ヘッダー3のところまで、任意にガイドし、配管を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床暖房用温水パネルを部屋に施工するときに、この床暖房用温水パネルに組み付けられた温水ヘッダーの位置と熱源機間を往復で結ぶ導管の当該部屋における取出口との位置関係に応じて、最短で前記取出口と温水ヘッダー間に導管を配管するときに用いられる導管ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
床暖房用の温水パネルを部屋に施工しようとしたときに、屋外の熱源機から延長された導管の取出口の位置は、建物の構造や熱源機の位置等から現場ごとに違うことが多い。
【0003】
一方、温水パネルの温水ヘッダーは、部屋の壁に近い位置となるように、パネルの周縁に近い部分に組み付けられている。
【0004】
このため、取出口と温水ヘッダーとはその位置が一致しないことが多く、このような場合には、取出口と温水ヘッダー間に導管をむき出しにして配管することはできないため、この間に導管ガイド用パネルを敷き込むようにしている。
【0005】
この例として、特開2002−228168号公報には、熱媒制御部とヘッダーとの間を連絡管で繋ぐ際に、多数の部材を準備することなく連絡管を種々の態様に対応させて配置することができる、連絡管ガイド用パネル、および、この連絡管ガイド用パネルを装備した床暖房用パネルとして、熱媒制御部に接続された連絡管をヘッダーへと導くための連絡管ガイド用パネルにおいて、この連絡管ガイド用パネルの表面には、連絡管埋設用の溝が、異なる複数の方向からヘッダーの連絡管接続部に集められて連絡可能に刻設された内容のものが紹介されている。
【0006】
しかし、この発明の場合は、1枚のガイド用パネルに複数方向の溝が形成されていて、導管を一つの溝に埋設し、残った溝にはすべて埋め込み材を埋め込んで平らにすることが必要となり、手間がかかる。
【0007】
また、温水パネルには、複数の方向から1ヶ所に集まるガイド溝を形成するため、パネルは必然的に大きくなり、省資源の観点からは問題がある。
【0008】
次に、特開2006−098032号公報には、方向の違う複数の溝を加工した1枚の
パネルを2枚に割って使う内容のものが紹介されている。
【0009】
しかし、この発明の場合も、1枚のパネルに対して複数方向の溝を形成しているため、1枚のパネルは大きくなり、また使用しなくなった残りのパネルは通常廃棄してしまうため、省資源の観点からは問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−228168号公報
【特許文献2】特開2006−098032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、斯る点に鑑みて提供されるものであって、その目的は、床暖房用温水パネルにおいて、最小面積のパネル板を用いて導管をガイドすることができると共に施工が簡単な省資源に配慮した導管ガイド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記した課題を解決するため、請求項1に記載の発明においては、床暖房用温水パネルにおける導管ガイド装置において、
a.平面視四角形の温水パネル1において、温水ヘッダー3は、前記温水パネル1の周縁の一つのコーナーに近い位置に組み付けられていると共にこの温水ヘッダー3の導管接続口6、6Aの前方であって、下縁1Aには四角形に切り欠いたヘッダー開口部7が形成されていること、
b.更に、前記温水パネル1において、前記温水ヘッダー3が組み付けられたコーナーの左縁1Bには、縦長四角形に切り欠いたコーナー開口部8が形成されていると共にこのコーナー開口部8と前記ヘッダー開口部7間には導管ガイド溝9、9Aが形成されていること、
c.導管を前記温水ヘッダー3まで導くためにカットして使用される導管ガイドパネル10は、平面視四角形のパネル板に対して90°円曲した90°円弧導管ガイド溝付の円弧ピース部11、13が下段において左右対称に配置されていると共にこの左右の円弧ガイドピース部11、13間には、左右の90°円弧導管ガイド溝12、12A、14、14Aを繋ぐ直線導管ガイド溝付の2枚の直線ガイドピース部15、16が形成され、更にこれらの円弧ガイドピース部11、13と直線ガイドピース部15、16の上段には各ピース部と同幅の溝無しピース部18、19、20、21が配置されていること、
d.前記導管ガイドパネル10の表面には、前記各ピース部を区画し、かつカットするためのスリット溝22が形成されていること、
e.上記導管ガイドパネル10は、導管のガイド方向に向けることができる導管ガイド溝を形成したピース部をカットし、このカットしたピース部を温水パネル1のヘッダー開口部7とコーナー開口部8に嵌合させて用いることにより、導管ガイド溝を部屋の導管取出口から前記温水ヘッダー3の導管接続口6、6Aのところまで導くことができること、
を特徴とするものである。
【0013】
この発明によると、温水ヘッダーの導管接続口の前方に形成されたヘッダー開口部とコーナー開口部に導管ガイドパネルを分割して得たピース部を組み付けることにより、導管の配管方向を温水パネルのコーナーにおいて左縁又は下縁方向に設定することができると共に温水パネルのコーナーの左縁又は下縁に沿った上下又は左右方向に配管方向を設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上に説明したとおり、床暖房用温水パネルにおいて、温水ヘッダーの前方に形成したヘッダー開口部とコーナー開口部に導管ガイドパネルをカットして導管ガイド溝を配管方向に合わせるピース部を選択し、これを組み付けるだけで導管を温水ヘッダーの導管接続口に向けて簡単に配管することができる。
【0015】
この結果、あらゆる配管方向に対応することができるため、施工が簡単であると共に必要最小面積のパネル板を用いるだけのため、省資源の観点からも有効であり、構造が簡単なために低コストにより製作できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】温水パネルにおける温水ヘッダー部分(コーナー部分)の平面図である。
【図2】導管ガイドピースの説明図である。
【図3】A−A´線断面図である。
【図4】(A)〜(F)導管の配管パターンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る温水パネルは、温水マットとも称されるもので、合成樹脂発泡パネル板の表面に通常は断面U字状の配管溝を複数、通常は2〜4系統蛇行するように形成し、この配管溝内に樹脂製の温水パイプを配管したものである。
【0018】
そして、この温水パネルには、前記温水パイプ内に系統ごとに約60℃の温水を供給し、かつ一巡して還って来たものを集合させて熱源機例に還す温水ヘッダーが組み付けられている。
【0019】
また、温水パネルには、床板を支持するための木製の小根太を称される支持材が組み付けられているものと、この支持材のない、所謂ネダレスタイプと称されるタイプのものがあり、本発明は、この双方に適用が可能である。
【0020】
導管ガイドパネルとは、床暖房用温水パネルの施工対象となる部屋の導管取出口と温水パネルに組み付けられた温水ヘッダー間において、導管をむき出しにするのではなく、この導管を保護し、かつ無理なく誘導配管するために用いられるもので、材質は通常温水パネルと同質であり、これに形成される導管ガイド溝も温水パネルの配管溝と同様に断面U字状を呈している。但し、溝の大きさは、導管の径の方が温水パネル側の温水パイプの径より大径のため、温水パネル側の溝より大きく形成されている。
【0021】
導管は、通常屋外に設置された熱源機と温水パネルの温水ヘッダー間を結ぶ樹脂管であって、往きと還りの2本構成である。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の一実施例を添付した図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、温水パネルにおいて、この温水パネルの左下コーナー部分を示すものである。
【0023】
この図1において、温水パネル1は、平面視四角形から成り、その表面には温水パイプ2が蛇行配管されている。
【0024】
3は温水パネル1に組み付けられた温水ヘッダーであって、この温水ヘッダー3には
4系統の温水パイプ2が接続された往き口(ソケット)4と還り口(ソケット)5が形成されていると共に、導管接続口6、6aが形成されている。
【0025】
そして、温水ヘッダー3の導管接続口6、6aは、温水パネル1の下縁1A側に向けて組みつけられている。
【0026】
7は温水パネル1において、前記温水ヘッダー3の導管接続口6、6Aの前方下縁1Aを切り欠いて形成された四角形のヘッダー開口部である。
【0027】
8は下縁1Aと左縁1Bが交わるコーナー部分に形成したコーナー開口部であって、このコーナー開口部8は縦長の四角形を呈し、このコーナー開口部8とヘッダー開口部7間には導管ガイド溝9、9Aが形成されている。
【0028】
10は導管ガイドパネルであって、この導管ガイドパネル10は、平面視四角形から成り、下段左右に90°円弧のガイド溝12、12A及び14、14Aを形成した四角形の円弧ガイドピース部11、13を配置し、この円弧ガイドピース部11、13間に前記導管ガイド溝12、12A及び14、14Aを直線で繋ぐ直線導管ガイド溝16、16A及び17、17Aを形成した2枚の直線ガイドピース部15、16を配し、更にこれら円弧ガイドピース部12、12A及び直線ガイドピース部15、16の上段にそれぞれ同幅の溝無しピース部18、19、20、21を配置すると共に各ピース部間には図3に示すようなスリット溝22を形成し、それぞれのピース部ごとにカットすることができる。
【0029】
以上に説明した温水パネル1及び導管ガイドパネル10は、本実施例では硬質ポリウレタンを発泡させた材料で製作されているが、これ以外にポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等を用いることができる。
【0030】
また、その厚さはすべて9mmに設定されているが、実施形態の規格品としてはこれ以外の寸法もある。
【0031】
また、温水パイプ2及び導管には架橋ポリエチレン管が用いられているが、これ以外に例えばポリプロピレン管等を用いることができる。
【0032】
導管ガイドパネル10に形成したスリット溝22は、裏側に折り曲げると簡単に割ることができる程度の深さに設定されている。
【0033】
次に、上記構成の導管ガイド装置を用いて行う配管パターンを図4(A)〜(F)に基づいて説明する。
【0034】
1.パターン1(導管を温水パネル1の下縁1A方向へ又は下縁1A方向から温水ヘッダー3側へ配管する例)
【0035】
この場合は、図4(A)(a)(b)に示すように、ヘッダー開口部7において、導管ガイドパネル10の直線ガイドピース部15、16及び溝無しピース部18又は19をカットし、直線ガイドピース部15、16を横にして温水ヘッダー3の導管接続口6、6aに直線導管ガイド溝16、16A及び17、17Aを合わせ、空いた左側の空間には溝無しピース部18又は19を縦にして組み付ける。
【0036】
また、コーナー開口部8には溝無しピース部18、20(又は19、21)を組み付け、導管ガイド溝9、9Aには充填材を充填する。
【0037】
なお、上記において、導管ガイドパネル10において、使用するピース部を(a)に、このピース部をヘッダー開口部7とコーナー開口部8に組み付けた状態を(b)に示 し、使用したピース部が判るように対応するA、B、Cの符号を(a),(b)の双方 に記入した。以下パターン2〜6においても同じ。
【0038】
熱源機(図示せず)から部屋の導管取出口(図示せず)を経由して導入された温水循 環用の往路と復路の導管(図示せず)は、温水パネル1の下縁1Aのところまでは別に 用意された導管ガイドパネル部材を用いて配管されたのち、下縁1Aから直線導管ガイ ド溝16、16A及び17、17Aを経由して温水ヘッダー3の導管接続口6、6Aの ところまで導かれ、それぞれ接続口4、5に挿し込まれ、抜け止めバンド(図示せず) で固定される。
なお、この配管例の説明は、往路側を中心に説明したが復路側も同じ配管例となる。
【0039】
2.パターン2(導管を温水パネル1の下方向の右側へ又は右側方向から温水ヘッダー3側へ配管する例)
【0040】
この場合は、図4(B)(a)(b)に示すように、ヘッダー開口部7内に直線ガイドピース部15と90°円弧ガイドピース部11を組み付けてガイド溝16、16Aと90°円弧ガイド溝12、12A内に配管を行うことにより、温水パネル1の下縁1Aに対して右方向からの導管を温水ヘッダー3へと配管を行うことができる。コーナー開口部8に溝無しピース部18、20を組み付ける。
【0041】
3.パターン3(導管を温水パネル1の下方から左方向へ又は左方向から温水ヘッダー3側へ配管する場合)
【0042】
この場合は、図4(C)(a)(b)に示すように、溝無しピース19、21と90°円弧ガイドピース部13及び直線ピース部16及び溝無しピース部21をヘッダー開口部7内に組み付けると共にコーナー開口部8に溝無しピース部18、20を組み付ける。
【0043】
導管は、90°円弧ガイド溝14、14A及び直線ガイド溝17、17Aを経由して温水ヘッダー3へ導かれる。
【0044】
4.パターン4(導管を温水パネル1の左方向へ又は左方向から温水ヘッダー3側へ配管する場合)
【0045】
この場合は、図4(D)(a)(b)に示すように、90°円弧ピース部13と溝無しピース部19をヘッダー開口部8内に組み付け、コーナー開口部8に水平ガイドピース部16と溝無しピース部21を組み付ける。
【0046】
導管は水平ガイド溝17、17Aと導管ガイド溝9、9A及び円弧ガイド溝14、14Aを経由して温水ヘッダー3へと導かれる。
【0047】
5.パターン5(導管を温水パネル1の左方向の上側へ又は上側から温水ヘッダー3側へ配管する場合)
【0048】
この場合は、図4(E)(a)(b)に示すように90度円弧ガイドピース部11、溝無しピース部18をヘッダー開口部7内に組み付け、コーナー開口部8に90°円弧ガイドピース部13と溝無しピース部19を組み付ける。
【0049】
導管は、90°円弧ガイド溝14、14A及び導管ガイド溝9、9A、90°円弧ガイド溝12、12Aを経由して温水ヘッダー3へと導かれる。
【0050】
6.パターン6(導管を温水パネル1の左方向の下方へ又は下方から温水ヘッダー3側へ配管する場合)
【0051】
この場合は、図4(F)(a)(b)に示すように、90°円弧ガイドピース部13と溝無しピース部19をヘッダー開口部7内に組み付け、コーナー開口部8に90°円弧ガイドピース部11と溝無しピース部18を組み付ける。
【0052】
導管は、90°円弧ガイド溝12、12A及び導管ガイド溝9、9A及び90°円弧 ガイド溝14、14Aを経由して温水ヘッダー3へと導かれる。
【0053】
以上に説明したパターン1〜6は、温水ヘッダー3が温水パネル1において左下隅に 近い位置に組みつけられている例であるが、右下隅の場合も同じように、右コーナー部分にコーナー開口部が形成され、各ピース部は以上に説明したパターン1〜6と左右対称となるように組み付けられる。
【0054】
また、温水パネル1の上左隅又は右隅に温水ヘッダー3が組み付けられた場合は、上記パターン1〜6と上下対称となる。
【符号の説明】
【0055】
1 温水パネル
2 温水パイプ
3 温水ヘッダー
6、6A 導管接続口
7 ヘッダー開口部
8 コーナー開口部
10 導管ガイドパネル
11、13 90°円弧ガイドピース部
15、16 直線ガイドピース部
18乃至21 溝無しピース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.平面視四角形の温水パネル1において、温水ヘッダー3は、前記温水パネル1の周縁の一つのコーナーに近い位置に組み付けられていると共にこの温水ヘッダー3の導管接続口6、6Aの前方であって、下縁1Aには四角形に切り欠いたヘッダー開口部7が形成されていること、
b.更に、前記温水パネル1において、前記温水ヘッダー3が組み付けられたコーナーの左縁1Bには、縦長四角形に切り欠いたコーナー開口部8が形成されていると共にこのコーナー開口部8と前記ヘッダー開口部7間には導管ガイド溝9、9Aが形成されていること、
c.導管を前記温水ヘッダー3まで導くためにカットして使用される導管ガイドパネル10は、平面視四角形のパネル板に対して90°円曲した90°円弧導管ガイド溝付の円弧ピース部11、13が下段において左右対称に配置されていると共にこの左右の円弧ガイドピース部11、13間には、左右の90°円弧導管ガイド溝12、12A、14、14Aを繋ぐ直線導管ガイド溝付の2枚の直線ガイドピース部15、16が形成され、更にこれらの円弧ガイドピース部11、13と直線ガイドピース部15、16の上段には各ピース部と同幅の溝無しピース部18、19、20、21が配置されていること、
d.前記導管ガイドパネル10の表面には、前記各ピース部を区画し、かつカットするためのスリット溝22が形成されていること、
e.上記導管ガイドパネル10は、導管のガイド方向に向けることができる導管ガイド溝を形成したピース部をカットし、このカットしたピース部を温水パネル1のヘッダー開口部7とコーナー開口部8に嵌合させて用いることにより、導管ガイド溝を部屋の導管取出口から前記温水ヘッダー3の導管接続口6、6Aのところまで導くことができること、
f.を特徴とする床暖房用温水パネルにおける導管ガイド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の導管ガイド装置を左下又は右下又は左上又は右上のコーナー部分に設けて成る床暖房用温水パネルにおける導管ガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−17501(P2011−17501A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163083(P2009−163083)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000183071)住商メタレックス株式会社 (27)
【Fターム(参考)】