説明

床材の製造方法

【課題】合板の厚さのバラツキによらず、合板を表出させずにその上の塗装膜のみを研磨し平滑化して樹脂化粧シートとの密着力を高めることができ、さらにワックス掛けによる膨れも防止できる床材の製造方法を提供する。
【解決手段】合板1表面に樹脂塗料を塗装して下塗り層2を塗設する工程と、下塗り層2の表面に減摩剤を含有する樹脂塗料を塗装して、減摩剤を含有する中塗り層3を塗設する工程と、中塗り層3の表面に樹脂塗料を塗装して上塗り層4を塗設する工程と、下塗り層2、中塗り層3、および上塗り層4からなる塗装膜5を配設した塗装膜付き合板6の塗装膜5の表面を研磨処理する工程と、研磨処理した塗装膜付き合板6の塗装膜5の表面に樹脂化粧シート9を貼着する工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床材などの製造において基材の合板に樹脂化粧シートを貼着する場合(特許文献1、2参照)、合板の木目やバリなどが樹脂化粧シート表面に写りこれらの凹凸が表出することを防止するために、通常は厚い樹脂化粧シートが用いられている。
【0003】
一方、薄い樹脂化粧シートを貼着する場合には、合板の木目やバリなどの凹凸が樹脂化粧シート表面に表出しないように合板表面を繰り返し研磨して平滑化する必要があるが、このように繰り返し研磨を行っても合板表面の繊維と樹脂化粧シートとの接着は点接触または線接触による接着となっているため、剥離強度が低く、また切削の際には樹脂化粧シートの合板表面の繊維と接着していない部分の切れが悪くなる。
【0004】
また、合板表面に樹脂化粧シートを貼着する場合、図5(a)に示すように、樹脂化粧シート9を合板1の表面に接着するポリウレタン系接着剤などの接着剤8が合板1の表面における導管などの凹部1aの深部まで浸入せず、凹部1aの深部には隙間100が残る。
【0005】
この場合、施工後において床材にワックス掛けをすると、ワックスが床材の合わせ部分から樹脂化粧シート9と合板1との間に滲み込み、合板1と接着剤8との隙間100に、図5(b)に示すようにワックス101が浸入して膨張し、樹脂化粧シート9の表面にワックス膨れ102が発生する。そしてワックス膨れ102が発生すると、樹脂化粧シート9と合板1との密着が不安定になる。
【0006】
このようなワックス膨れ102を防止する手段としては、合板1の表面に予め樹脂塗料を塗装して塗装膜を配設することにより合板1の表面の凹部1aに隙間無く樹脂塗料を埋め込むことが考えられる。
【特許文献1】特開2007−90534号公報
【特許文献2】特開2003−175505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このように樹脂塗料による塗装膜を配設した場合、樹脂化粧シートとの密着力を確保するために塗装膜の表面をサンディングなどにより研磨して平滑化することが必要になるが、実際に塗装膜の研磨を行う場合には複数の塗装膜付き合板を1枚ずつ連続的に研磨装置に搬入して研磨処理を行うことになる。
【0008】
ところが、合板の厚さにはバラツキがあるため、薄い合板の塗装膜付き合板を研磨できるようにするためにこれを基準として研磨装置と塗装膜付き合板との高さ合わせをすると、厚い合板の塗装膜付き合板が搬入されたときに塗装膜が深く削られて合板が表出してしまい、バリが発生する。すると、その上に貼着した樹脂化粧シートの密着力が低下し、また発生したバリや合板の木目などの凹凸が樹脂化粧シート表面に表出してしまうという問題点があった。
【0009】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、合板の厚さのバラツキによらず、合板を表出させずにその上の塗装膜のみを研磨し平滑化して樹脂化粧シートとの密着力を高めることができ、さらにワックス掛けによる膨れも防止できる床材の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0011】
第1に、本発明の床材の製造方法は、合板表面に樹脂塗料を塗装して下塗り層を塗設する工程と、下塗り層の表面に減摩剤を含有する樹脂塗料を塗装して、減摩剤を含有する中塗り層を塗設する工程と、中塗り層の表面に樹脂塗料を塗装して上塗り層を塗設する工程と、下塗り層、中塗り層、および上塗り層からなる塗装膜を配設した塗装膜付き合板の塗装膜表面を研磨処理する工程と、研磨処理した塗装膜付き合板の塗装膜表面に樹脂化粧シートを貼着する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
第2に、本発明の床材の製造方法は、合板表面に減摩剤を含有する樹脂塗料を塗装して、減摩剤を含有する下塗り層を塗設する工程と、下塗り層の表面に樹脂塗料を塗装して上塗り層を塗設する工程と、下塗り層および上塗り層からなる塗装膜を配設した塗装膜付き合板の塗装膜表面を研磨処理する工程と、研磨処理した塗装膜付き合板の塗装膜表面に樹脂化粧シートを貼着する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記第1の発明によれば、塗装膜を下塗り層、中塗り層、および上塗り層から構成し、中塗り層に減摩剤を含有させるようにしたので、研磨処理時において研磨装置に搬入される合板の厚さにバラツキがあっても、厚い合板が搬入された際に研磨によって上塗り層を切削し中塗り層まで達しても減摩剤によりそれ以上の研磨が抑制され、合板の厚さによらず研磨される部分は上塗り層から中塗り層の表面近傍までの範囲に限定される。
【0014】
従って、合板の厚さのバラツキによらず常に、合板を表出させずにその上の塗装膜のみを研磨し平滑化することができ、樹脂化粧シートとの密着力を高めることができると共に、安定した品質が確保できる。また、樹脂化粧シートと合板との隙間が無くなるため、樹脂化粧シート貼着後の加工の際に、加工面を滑らかに仕上げることが可能である。
【0015】
さらに、合板表面に塗設した下塗り層が合板表面における導管などの凹部の深部まで浸入して隙間無く埋め込まれ、施工後に床材にワックス掛けをしても当該凹部にワックスが浸入することが防止されるため、ワックスによる樹脂化粧シートの表面の膨れを防止できる。
【0016】
上記第2の発明によれば、塗装膜を下塗り層および上塗り層から構成し、下塗り層に減摩剤を含有させるようにしたので、研磨処理時において研磨装置に搬入される合板の厚さにバラツキがあっても、厚い合板が搬入された際に研磨によって上塗り層を切削し下塗り層まで達しても減摩剤によりそれ以上の研磨が抑制され、合板の厚さによらず研磨される部分は上塗り層から下塗り層の表面近傍までの範囲に限定される。
【0017】
従って、合板の厚さのバラツキによらず常に、合板を表出させずにその上の塗装膜のみを研磨し平滑化することができ、樹脂化粧シートとの密着力を高めることができると共に、安定した品質が確保できる。また、樹脂化粧シートと合板との隙間が無くなるため、樹脂化粧シート貼着後の加工の際に、加工面を滑らかに仕上げることが可能である。
【0018】
さらに、合板表面に塗設した下塗り層が合板表面における導管などの凹部の深部まで浸入して隙間無く埋め込まれ、施工後に床材にワックス掛けをしても当該凹部にワックスが浸入することが防止されるため、ワックスによる樹脂化粧シートの表面の膨れを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の床材の製造方法の第1の実施形態を工程順に示す断面図である。
【0021】
本実施形態では、最初に図1(a)に示すように、合板1の表面に樹脂塗料を塗装して、下塗り層2、中塗り層3、および上塗り層4を順に塗設することにより、これらの下塗り層2、中塗り層3、および上塗り層4からなる塗装膜5を塗設する。
【0022】
下塗り層2の樹脂塗料としては、例えば、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂等のアクリル系紫外線硬化型樹脂、ポリエステル系紫外線硬化型樹脂、エポキシ系紫外線硬化型樹脂などを用いることができる。
【0023】
下塗り層2は、合板1の表面の導管などによる凹部1aを隙間無く埋めると共に、合板の木目やバリなどによる合板1の表面の凹凸も吸収して合板1の表面を平滑化する。下塗り層2の厚さは、例えば20〜60μmである。
【0024】
中塗り層3は、減摩剤を含有する樹脂塗料を下塗り層2の表面に塗装することにより形成される。中塗り層3の樹脂塗料としては、例えば、下塗り層2の樹脂塗料として上記に例示したものを用いることができる。
【0025】
中塗り層3に含有させる減摩剤は、中塗り層3の樹脂成分よりも高硬度の材質からなる粒子であり、その具体例としては、アルミナ、炭化珪素、シリカ、ガラス、ジルコニア、ゼオライト、珪藻土等の無機粒子などが挙げられる。減摩剤の粒子径は、例えば10〜60μmであり、中塗り層3の樹脂塗料への減摩剤の配合量は樹脂固形分100質量部当たり例えば40〜60質量部である。
【0026】
中塗り層3の厚さは、例えば20〜30μmである。
【0027】
上塗り層4は、樹脂塗料を中塗り層3の表面に塗装することにより形成される。上塗り層4の樹脂塗料としては、例えば、下塗り層2の樹脂塗料として上記に例示したものを用いることができる。
【0028】
上塗り層4の厚さは、例えば10〜20μmである。
【0029】
なお、塗装膜5を配設する前に、予め合板1の表面に溝加工、面取り加工などの一次加工を施しておくようにしてもよい。
【0030】
このようにして合板1の表面に塗装膜5を塗設した後、図1(b)に示すように、塗装膜付き合板6の塗装膜表面を研磨処理する。研磨処理は、例えばロールサンダー7を備えた研磨装置により行うことができる。具体的には、合板1の厚さのバラツキを考慮して、薄い合板1の塗装膜付き合板6を研磨することができるようにロールサンダー7の研磨面と塗装膜付き合板6との高さ調整を行った後、複数の塗装膜付き合板6を順に研磨装置に搬入して1枚ずつ研磨処理を行う。
【0031】
このとき、薄い合板1の塗装膜付き合板6が研磨装置に搬入された場合には、塗装膜付き合板6の塗装膜5における上塗り層4の一部が切削除去され、塗装膜5は平滑に研磨される。
【0032】
一方、厚い合板1の塗装膜付き合板6が研磨装置に搬入された場合には、薄い合板1の塗装膜付き合板6に比べて上塗り層4が深く切削されることになるが、このとき上塗り層4の下端面に達するまで切削されたとしても、中塗り層3の減摩剤によりそれ以上の切削が抑制されて中塗り層3の表面近傍で研磨の進行が止まる。
【0033】
従って、研磨装置に搬入される塗装膜付き合板6の合板1の厚さのバラツキによらずに常に安定して、合板1を表出させずにその上の塗装膜5のみを研磨し平滑化することができる。
【0034】
このようにして塗装膜付き合板6を研磨処理した後、図1(c)に示すように、樹脂化粧シート9を貼着する。例えば、裏面に接着剤8を塗布した樹脂化粧シート9をラミネータにより移送し、塗装膜付き合板6の塗装膜5上に接着剤8を塗布した樹脂化粧シート9の裏面を対向させ、必要に応じて加温したプレスロール10により圧接して貼着することができる。
【0035】
樹脂化粧シート9としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などを用いることができる。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物などが挙げられる。ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレートなどが挙げられる。
【0036】
樹脂化粧シート9の厚さは、例えば0.05〜0.40mmである。
【0037】
接着剤8としては、例えば、ポリウレタン系、フェノール系、メラミン系、エポキシ系、ポリエステル系等の熱硬化性接着剤、ホットメルト接着剤などを用いることができる。
【0038】
以上の工程を経て、床材が製造される。本実施形態により得られる床材は、中塗り層3の減摩剤の作用により、合板1の厚さのバラツキによらず常に安定して、合板1を表出させずに塗装膜5のみを研磨して平滑化することができる。従って、樹脂化粧シート9の密着力が高く、また合板1の木目やバリなどの凹凸が樹脂化粧シート9の表面に表出することがない。さらに、合板1の表面に塗設した下塗り層2が合板1の表面における導管などの凹部1aの深部まで浸入して隙間無く埋め込まれるため、施工後に床材にワックス掛けをしても凹部1aにワックスが浸入することが防止され、ワックスによる樹脂化粧シート9の表面の膨れを防止できる。
【0039】
なお、図1(b)、(c)では厚い合板1の塗装膜付き合板6が研磨装置に搬入されて上塗り層4が深く切削され中塗り層3が表出した場合を示しているが、薄い合板1の塗装膜付き合板6が研磨装置に搬入された場合には、図2(a)、(b)に示すように、塗装膜付き合板6の塗装膜5における上塗り層4の一部が切削除去されるものの塗装膜5には上塗り層4が残存し、この残存した上塗り層4が平滑面となる。この場合においても合板1の表出は防止されることになる。
【0040】
また、本実施形態では減摩剤を配合しない下塗り層2を合板1の表面に塗設しているので、樹脂塗料に減摩剤を配合することによる粘性増加に伴う合板1の表面の凹部1aへの樹脂塗料の浸入性の低下を惹起するおそれがある場合に、該樹脂塗料の浸入性の低下を防止することができ、また合板1と塗装膜5との密着性を高めることができる。
【0041】
図3は、本発明の床材の製造方法の第2の実施形態を工程順に示す断面図である。
【0042】
本実施形態では、最初に図3(a)に示すように、合板1の表面に樹脂塗料を塗装して、下塗り層2および上塗り層4を順に塗設することにより、これらの下塗り層2および上塗り層4からなる塗装膜5を塗設する。
【0043】
下塗り層2は、減摩剤を含有する樹脂塗料を合板1の表面に塗装することにより形成される。下塗り層2の樹脂塗料としては、例えば、第1の実施形態において例示したものを用いることができる。また、下塗り層2に含有させる減摩剤は、下塗り層2の樹脂成分よりも高硬度の材質からなる粒子であり、その具体例としては、第1の実施形態において例示したものが挙げられる。
【0044】
下塗り層2は、合板1の表面の導管などによる凹部1aを隙間無く埋めると共に、合板の木目やバリなどによる合板1の表面の凹凸も吸収して合板1の表面を平滑化する。下塗り層2の厚さは、例えば20〜60μmである。
【0045】
上塗り層4は、樹脂塗料を下塗り層2の表面に塗装することにより形成される。上塗り層4の樹脂塗料としては、例えば、第1の実施形態において例示したものを用いることができる。
【0046】
上塗り層4の厚さは、例えば10〜20μmである。
【0047】
なお、塗装膜5を配設する前に、予め合板1の表面に溝加工、面取り加工などの一次加工を施しておくようにしてもよい。
【0048】
このようにして合板1の表面に塗装膜5を塗設した後、図3(b)に示すように、塗装膜付き合板6の塗装膜表面を研磨処理する。研磨処理は、例えばロールサンダー7を備えた研磨装置により行うことができる。具体的には、合板1の厚さのバラツキを考慮して、薄い合板1の塗装膜付き合板6を研磨することができるようにロールサンダー7の研磨面と塗装膜付き合板6との高さ調整を行った後、複数の塗装膜付き合板6を順に研磨装置に搬入して1枚ずつ研磨処理を行う。
【0049】
このとき、薄い合板1の塗装膜付き合板6が研磨装置に搬入された場合には、塗装膜付き合板6の塗装膜5における上塗り層4の一部が切削除去され、塗装膜5は平滑に研磨される。
【0050】
一方、厚い合板1の塗装膜付き合板6が研磨装置に搬入された場合には、薄い合板1の塗装膜付き合板6に比べて上塗り層4が深く切削されることになるが、このとき上塗り層4の下端面に達するまで切削されたとしても、下塗り層2の減摩剤によりそれ以上の切削が抑制されて下塗り層2の表面近傍で研磨の進行が止まる。
【0051】
従って、研磨装置に搬入される塗装膜付き合板6の合板1の厚さのバラツキによらずに常に安定して、合板1を表出させずにその上の塗装膜5のみを研磨し平滑化することができる。
【0052】
このようにして塗装膜付き合板6を研磨処理した後、図3(c)に示すように、樹脂化粧シート9を貼着する。例えば、裏面に接着剤8を塗布した樹脂化粧シート9をラミネータにより移送し、塗装膜付き合板6の塗装膜5上に接着剤8を塗布した樹脂化粧シート9の裏面を対向させ、必要に応じて加温したプレスロール10により圧接して貼着することができる。
【0053】
樹脂化粧シート9および接着剤8としては、第1の実施形態において例示したものを用いることができる。
【0054】
以上の工程を経て、床材が製造される。本実施形態により得られる床材は、下塗り層2の減摩剤の作用により、合板1の厚さのバラツキによらず常に安定して、合板1を表出させずに塗装膜5のみを研磨して平滑化することができる。従って、樹脂化粧シート9の密着力が高く、また合板1の木目やバリなどの凹凸が樹脂化粧シート9の表面に表出することがない。さらに、合板1の表面に塗設した下塗り層2が合板1の表面における導管などの凹部1aの深部まで浸入して隙間無く埋め込まれるため、施工後に床材にワックス掛けをしても凹部1aにワックスが浸入することが防止され、ワックスによる樹脂化粧シート9の表面の膨れを防止できる。
【0055】
なお、図3(b)、(c)では厚い合板1の塗装膜付き合板6が研磨装置に搬入されて上塗り層4が深く切削され下塗り層2が表出した場合を示しているが、薄い合板1の塗装膜付き合板6が研磨装置に搬入された場合には、図4(a)、(b)に示すように、塗装膜付き合板6の塗装膜5における上塗り層4の一部が切削除去されるものの塗装膜5には上塗り層4が残存し、この残存した上塗り層4が平滑面となる。この場合においても合板1の表出は防止されることになる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
平面寸法300mm×1820mm、厚さ8.5mmの合板を基材として、合板表面にナチュラル回転のスポンジロールにて下塗り用、中塗り用、および上塗り用の樹脂塗料を塗装し、下塗り層、中塗り層、および上塗り層からなる塗装膜を配設した。下塗り用の樹脂塗料にはアクリル系紫外線硬化型樹脂、中塗り用の樹脂塗料にはアクリル系紫外線硬化型樹脂、上塗り用の樹脂塗料にはアクリル系紫外線硬化型樹脂を用い、中塗り用の樹脂塗料には減摩剤として粒子径10〜60μmの酸化アルミニウムを樹脂固形分100質量部当たり50質量部配合した。また、硬化後の塗布量が下塗り層は25〜29g/m2、中塗り層は22〜24g/m2、上塗り層は10〜12g/m2になるように塗装した。
【0057】
紫外線照射機により紫外線を照射して塗装膜を乾燥、硬化させた後、サンダー番手♯150〜180を用いた研磨装置により塗装膜付き合板の表面を研磨して平滑に仕上げた。研磨装置のサンディング面を一定の高さ位置に調整した後、複数の塗装膜付き合板を順に研磨装置に搬入して研磨処理を行ったところ、全ての塗装膜付き合板について塗装膜のみ平滑に研磨されており、過剰な切削による合板の表出は見られなかった。
【0058】
次に、ラミネータを用いて、研磨処理後の塗装膜付き合板の塗装膜表面に、裏面にポリウレタン系接着剤を塗布した厚さ0.15mmのオレフィン樹脂化粧シートを貼着し、床材を作製した。
【0059】
この床材の樹脂化粧シートの剥離強度を180度ピーリングにより測定したところ、64Nであった。
【0060】
また、市販のワックスを用いてこの床材の合わせ部分を含む全面にワックス掛けを施して1日間放置した後、床材表面を観察したところ、樹脂化粧シートにはワックスによる膨れは一切見られなかった。
<実施例2>
平面寸法300mm×1820mm、厚さ8.5mmの合板を基材として、合板表面にナチュラル回転のスポンジロールにて下塗り用および上塗り用の樹脂塗料を塗装し、下塗り層および上塗り層からなる塗装膜を配設した。下塗り用の樹脂塗料にはアクリル系紫外線硬化型樹脂、上塗り用の樹脂塗料にはアクリル系紫外線硬化型樹脂を用い、下塗り用の樹脂塗料には減摩剤として粒子径10〜60μmの酸化アルミニウムを樹脂固形分100質量部当たり50質量部配合した。また、硬化後の塗布量が下塗り層は29〜36g/m2、上塗り層は10〜12g/m2になるように塗装した。
【0061】
紫外線照射機により紫外線を照射して塗装膜を乾燥、硬化させた後、サンダー番手♯150〜180を用いた研磨装置により塗装膜付き合板の表面を研磨して平滑に仕上げた。研磨装置のサンディング面を一定の高さ位置に調整した後、複数の塗装膜付き合板を順に研磨装置に搬入して研磨処理を行ったところ、全ての塗装膜付き合板について塗装膜のみ平滑に研磨されており、過剰な切削による合板の表出は見られなかった。
【0062】
次に、ラミネータを用いて、研磨処理後の塗装膜付き合板の塗装膜表面に、裏面にポリウレタン系接着剤を塗布した厚さ0.15mmのオレフィン樹脂化粧シートを貼着し、床材を作製した。
【0063】
この床材の樹脂化粧シートの剥離強度を180度ピーリングにより測定したところ、68Nであった。
【0064】
また、市販のワックスを用いてこの床材の合わせ部分を含む全面にワックス掛けを施して1日間放置した後、床材表面を観察したところ、樹脂化粧シートにはワックスによる膨れは一切見られなかった。
<比較例1>
平面寸法300mm×1820mm、厚さ8.5mmの合板を基材として、合板表面にナチュラル回転のスポンジロールにて樹脂塗料を塗装し、減摩剤を含有しない単一の樹脂層からなる塗装膜を配設した。樹脂塗料にはアクリル系紫外線硬化型樹脂を用い、塗装膜の厚さが実施例1の塗装膜と同程度となるように塗装した。
【0065】
紫外線照射機により紫外線を照射して塗装膜を乾燥、硬化させた後、サンダー番手♯150〜180を用いた研磨装置により塗装膜付き合板の表面を研磨して平滑に仕上げた。研磨装置のサンディング面を一定の高さ位置に調整した後、複数の塗装膜付き合板を順に研磨装置に搬入して研磨処理を行ったところ、一部の塗装膜付き合板では塗装膜が削り取られて合板表面が表出した。
【0066】
すなわち、合板の厚さバラツキは±300μm程度であるため、100μm程度の厚さの塗装膜を形成しても、減摩剤を含有しない場合には合板の厚さバラツキが大きいために塗装膜を全て削り取ってしまったものと考えられる。
【0067】
これに対して実施例1、2では、塗装膜の一部(下塗り層または中塗り層)に減摩剤を含有させたことにより、厚い合板が搬入されて塗装膜が研磨装置のサンディング面に強く当たっても減摩剤を含有させた層(下塗り層または中塗り層)より先までは削れにくくなり、合板を表出させずに塗装膜を残して安定に切削することが可能となったと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の床材の製造方法の第1の実施形態を工程順に示す断面図である。
【図2】薄い合板の塗装膜付き合板における研磨状態を示す図1(b)、(c)に対応する断面図である。
【図3】本発明の床材の製造方法の第2の実施形態を工程順に示す断面図である。
【図4】薄い合板の塗装膜付き合板における研磨状態を示す図3(b)、(c)に対応する断面図である。
【図5】合板表面に直接に樹脂化粧シートを貼着した場合の接着部分の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 合板
2 下塗り層
3 中塗り層
4 上塗り層
5 塗装膜
6 塗装膜付き合板
9 樹脂化粧シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合板表面に樹脂塗料を塗装して下塗り層を塗設する工程と、下塗り層の表面に減摩剤を含有する樹脂塗料を塗装して、減摩剤を含有する中塗り層を塗設する工程と、中塗り層の表面に樹脂塗料を塗装して上塗り層を塗設する工程と、下塗り層、中塗り層、および上塗り層からなる塗装膜を配設した塗装膜付き合板の塗装膜表面を研磨処理する工程と、研磨処理した塗装膜付き合板の塗装膜表面に樹脂化粧シートを貼着する工程とを含むことを特徴とする床材の製造方法。
【請求項2】
合板表面に減摩剤を含有する樹脂塗料を塗装して、減摩剤を含有する下塗り層を塗設する工程と、下塗り層の表面に樹脂塗料を塗装して上塗り層を塗設する工程と、下塗り層および上塗り層からなる塗装膜を配設した塗装膜付き合板の塗装膜表面を研磨処理する工程と、研磨処理した塗装膜付き合板の塗装膜表面に樹脂化粧シートを貼着する工程とを含むことを特徴とする床材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−29775(P2010−29775A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193893(P2008−193893)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】