説明

床材用化粧シート、及びそれを用いた床材

【課題】樹脂再生材等で表面色がばらつくバッカーシートでも、意匠色が悪影響されない床材用化粧シートと、それを用いた床材とする。
【解決手段】床材用化粧シート10は、LLDPEとHDPEとからなり着色剤添加で隠蔽性とした着色基材シート1上に印刷模様層2を形成した印刷シート3を接着剤層4を介してアイオノマー樹脂シート5と積層した構成とする。更に着色基材シート1は、表側層1a及び裏側層1bが無着色透明なLLDPEの層、中間着色層1cがLLDPEとHDPEとで着色剤を含有する隠蔽性の層の3層構造が良い。床材20はこの床材用化粧シートを、樹脂再生材を含み着色しているバッカーシート6と、トップシート7との間に挟み熱融着し積層する。トップシートはアイオノマー樹脂、バッカーシートの表層はLLDPEが良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッカーシートとトップシート間に積層して床材とするための床材用化粧シートと、それを用いた床材に関する。特に、バッカーシートに樹脂再生材を使用する等してバッカーシート表面の色がばらついても、床材意匠の色を安定させることができる床材用化粧シートとそれを用いた床材に関する。
【背景技術】
【0002】
任意の絵柄意匠を設けた床材用化粧シートを、バッカーシートとトップシートとの間に挟んで積層して床材とすることができる。例えば、特許文献1では、表面側に印刷模様層を形成した印刷シートの該印刷模様層面に接着剤層を介してラミネート用オレフィンシートをドライラミネートした積層体を、床材用化粧シートとして用いて、この床材用化粧シートをバッカーシートとトップシートとの間にその印刷シートをバッカーシート側にして挟み、熱ラミネートした床材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−3191号公報(図10等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の様な構成の床材用化粧シートでは、印刷シートの基材シートが着色材を含まず透明であると、バッカーシートの表面色によって、印刷シートで表現する意匠色が影響を受ける。それも、バッカーシートの表面色が一定であれば問題は少ないが、特に、資源有効利用促進及び低コスト化などの観点から、バッカーシートに樹脂再生材を用いたときには、それによって表面色の色合いがばらつくので、意匠色が予期したとおりに再現されず一定しないという問題が生じる。
【0005】
すなわち、本発明の課題は、表面色がばらつくバッカーシートであっても、意匠色が悪影響されないように出来る床材用化粧シートと、それを用いた床材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明では、以下の構成とした。
(1)バッカーシートと透明なトップシートとの間に積層して床材とするための床材用化粧シートであって、
基材シート上に印刷模様層を形成した印刷シートの該印刷模様層側の面に、接着剤層を介して透明なアイオノマー樹脂シートが積層されて成り、且つ該基材シートは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)とからなる隠蔽性の着色基材シートから成る、床材用化粧シート。
(2)上記着色基材シートが、少なくとも表側層と中間層と裏側層とを有する3層構造からなり、表側層と裏側層とが着色剤を含有しない直鎖状低密度ポリエチレンからなる無着色透明な層であり、中間層が着色剤を含有し直鎖状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとからなる隠蔽性の着色中間層である、上記(1)の床材用化粧シート。
【0007】
(3)上記(1)又は(2)の床材用化粧シートが、その着色基材シート側を、着色しているバッカーシート側に向けて、該バッカーシートと、アイオノマー樹脂からなる透明なトップシートとの間に積層されている床材。
(4)上記バッカーシートが、樹脂再生材を含み着色しているバッカーシートである上記(3)の床材。
(5)上記バッカーシートが、樹脂再生材を含み着色している表層と、本体層とを有する少なくとも2層構造から成るバッカーシートである上記(3)の床材。
(6)上記バッカーシートが、直鎖状低密度ポリエチレンを含んでいるバッカーシートである上記(3)〜(5)のいずれかの床材。
【発明の効果】
【0008】
(1)本発明によれば、基材シートを隠蔽性の着色基材シートとしてあるので、床材としたときにその下方に位置するバッカーシートが、表面色がばらつくバッカーシートであっても、バッカーシートの表面色の影響を受けづらくなる為、床材用化粧シートに基づく意匠色が悪影響されない。従って、床材としたときに、床材用化粧シートによる意匠色の色調が安定する。また、着色基材シートによって、バッカーシートにまで到達する紫外線量を減らすこともできるので、床材での耐光性向上も期待できる。
また、バッカーシート側となる着色基材シートを、LLDPEとHDPEとから構成することで、表層にポリエチレンを含むバッカーシートに対して密着性が良く、トップシート側をアイオノマー樹脂シートとすることで、アイオノマー樹脂からなるトップシートとの密着性も良くなる。
【0009】
(2)また、着色基材シートを、着色して隠蔽性とする層は着色中間層のみとして、他層との密着性が必要となる表側層及び裏側層は無着色透明な層とした3層構造とすることで、他層との密着性に影響のない様にして中間層のみに着色剤を添加して隠蔽性の着色中間層とすることができる。
また、表側層及び裏側層はポリエチレンの中でも融点が低く熱融着させ易いLLDPEを用いて、着色中間層のみにLLDPEとHDPEとを用いることによって、熱融着時の密着性を確保しつつ、着色基材シートの機械的強度を向上させることができ、印刷シートの基材として、多色見当合わせ印刷による高意匠の印刷模様層の印刷形成に適した着色基材シートとすることができる。
(3)また、バッカーシートの表層等に着色している樹脂再生材を使用できるので、資源有効利用を促進でき低コスト化を図れる。また、LLDPEを含むバッカーシートとすることで、LLDPEを含む着色基材シートの密着性も良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による床材用化粧シートの一形態を例示する断面図(a)と、床材の一形態を例示する断面図(b)。
【図2】本発明による床材の別の一形態を例示する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
《概要》
先ず、図1(a)は、本発明による床材用化粧シートの1形態を例示する断面図であり、同図に示す床材用化粧シート10は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)とからなる隠蔽性の着色基材シート1上に、印刷模様層2を形成した印刷シート3に対して、その該印刷模様層2側の面に接着剤層4を介して、透明なアイオノマー樹脂シート5が積層された構成である。
また、同図に例示する床材用化粧シート10に於ける着色基材シート1は3層構造をしており、具体的には、表側層1aと裏側層1bとの間に着色中間層1cを有し、表側層1aと裏側層1bとは無着色透明である。
【0013】
そして、本発明による床材は、図1(b)の断面図で例示する床材20の様に、図1(a)で例示した様な構成の床材用化粧シート10を、表面色がばらついているバッカーシート6と、アイオノマー樹脂からなるトップシート7との間に挟んで積層した構成のものである。図2の断面図で例示する本発明による床材20は、バッカーシート6を表層6aと本体層6bとの2層構造としたもので、少なくとも表層6aに樹脂再生材が使用され、且つ該表層の樹脂分としてLLDPEを含んでいる。
【0014】
この様な構成の床材とすることで、床材用化粧シートの印刷模様層による意匠色がバッカーシートの色のばらつきに悪影響されず、安定した意匠色を表現できる様になる。
【0015】
以下、各層毎に更に詳述する。
【0016】
《床材用化粧シート》
床材用化粧シート10は、少なくとも、着色基材シート1の表側面に印刷模様層2を形成して成る印刷シート3、接着剤層4、アイオノマー樹脂シート5を有する。
【0017】
[印刷シート]
印刷シート3は、着色基材シート1の表側とする面に印刷模様層2を印刷形成した、所謂表刷り仕様の印刷シートである。
【0018】
(着色基材シート)
本発明では、床材用化粧シート10の基材シートとして、着色して隠蔽性にした着色基材シート1を用いる。この着色基材シート1には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、或いはPE−LLDとも呼ばれており、本明細書では「LLDPE」とも言う)と、高密度ポリエチレン(HDPE、或いはPE−HDとも呼ばれており、本明細書では「HDPE」とも言う)とからなる隠蔽性の着色した樹脂シートを用いる。基材シートとして、隠蔽性の着色基材シート1を用いることで、バッカーシート6の色調が製品ロット毎、一枚毎或いは一枚の面内で、ばらついていても、床材用化粧シート10の印刷模様層2で表現する意匠色が悪影響されない様にできる。また、バッカーシート6に樹脂再生材を使用することでバッカーシート6の表面色の色合いがばらついたとしても、床材用化粧シート10の印刷模様層2で表現する意匠色が悪影響されない様にでき、かつ樹脂再生材を使用することによる資源有効利用を促進でき低コスト化を図ることができる。
【0019】
なお、着色の第1の目的は隠蔽性にすることであり、有彩色の他に無彩色(白、灰色、黒)でもよい。また、着色の第2の目的として印刷模様層と共に意匠色を担うこともある。
【0020】
また、バッカーシート側となる着色基材シートの樹脂を、LLDPEとHDPEとから構成することで、バッカーシートと積層して床材とするときに、LLDPEなどのポリエチレンを表層など少なくとも表面側に含むバッカーシートに対して、密着性良く、熱融着で積層できる。
【0021】
なお、着色基材シートの厚みは特に制限はないが、例えば20〜300μm、好ましくは50〜180μmとする。薄すぎると、印刷適性や、アイオノマー樹脂シートとドライラミネートによって積層時に皺が入る等のドライラミネート適性が低下し、また逆に厚過ぎるとコスト高となる。
【0022】
着色基材シートは、単層でも良いが、図1に例示の様に多層構造としてもよい。なかでも、次の様な3層構造は好ましい多層構造の一種である。すなわち、着色剤を含有しないLLDPEからなる無着色透明な表側層1a及び裏側層1bの間に、LLDPEとHDPEとからなり着色剤を含有させて隠蔽性とした着色中間層1cを有する3層構造である。
この様に、着色基材シート1を、着色剤により着色して隠蔽性とする層は着色中間層のみとして、他層との密着性が必要となる表側層及び裏側層は無着色透明な層の3層構造とすることで、他層との密着性に影響のない様に中間層のみに着色剤を添加して着色中間層とすることで、着色基材シート全体として着色隠蔽性のシートとすることができる。
【0023】
なお、表側層及び裏側層と着色中間層は同じポリエチレンに属する樹脂を含むため、3層を共時押出し法により製膜することで、これら3層は互いに密着性よく積層できる。
【0024】
また、表側層及び裏側層は熱融着させ易いLLDPEを用いて、着色中間層のみにLLDPEに更にHDPEを用いることによって、着色基材シートとしての機械的強度を向上させることができる。この為、床材用途としての機械的強度を向上させることができる他、着色基材シートを被印刷物として、多色見当合わせ印刷による高意匠の印刷模様層の印刷形成に適した印刷基材とすることができる。
なお、LLDPEとHDPEとの比率は質量比で、要求物性に応じて、LLDPE:HDPE=9:1〜1:9とし、好ましくは、5:5〜1:9とする。HDPEが少な過ぎると機械的強度の向上効果が得られず、逆に多過ぎると、HDPEはLLDPEよりも弾性率が高いことから床材としたときにカール(反り)が発生し易くなる。
【0025】
表側層、着色中間層、及び裏側層の厚み比率は、着色中間層の厚みを、隠蔽性を担う観点から着色基材シートの(総)厚みに対して少なくとも5割以上するのが良い。また、表側層と裏側層とは、対カールの観点から表裏共同じ厚みとするのが良い。従って、表側層と着色中間層と裏側層との厚み比率は、例えば、表側層/着色中間層/裏側層=0.5/9/0.5〜2.5/5/2.5の範囲とすると良い。
【0026】
なお、以上の様な着色基材シートを隠蔽性の着色されたものとするには、用いる樹脂中に公知の着色剤を含有させると良い。例えば、無機顔料、有機顔料などの公知の着色剤を含有させる。例えば、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、カドミウムレッド、黄鉛、チタンイエロー、コバルトブルー、群青等の無機顔料、アニリンブラック、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の有機顔料、或いは、アルミニウムや真鍮等の金属の鱗片状箔片、二酸化チタン被覆雲母や塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片等の光輝性顔料、真珠光沢顔料等を用いることができる。
【0027】
なかでも、隠蔽性の強い着色剤として、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、鉄黒等の無機顔料、或いは、鱗片状箔片からなる光輝性顔料や真珠光沢顔料は好ましい。
また、隠蔽性がこれらよりも弱くても、印刷模様層の意匠色に対する基本色を与える為、或いはこれらの着色剤が呈する色とは異なる色のものとする為に、これら以外の例えば前記した様な着色剤を併用しても良い。或いは、アゾ系染料、インジゴイド系染料、ニトロソ系染料、インジゴ等の染料を併用しても良い。
【0028】
なお、着色基材シート中には、必要に応じて、公知の各種添加剤を添加することができる。例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、充填剤等である。
また、着色基材シートは、その表面(表面、裏面、表裏面のいずれか)に対して、公知の易接着処理が施されていても良い。例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理、プライマー層形成などである。なお、プライマー層には、2液硬化型ウレタン樹脂など公知のプライマー剤を用いることができる。
【0029】
(印刷模様層)
印刷模様層2は、着色基材シート1の表側に設けられる。印刷模様層としては、公知のものを適宜採用できる。印刷模様層は、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェットプリント等の従来公知の印刷法で形成することができる。表現する絵柄は、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、梨地模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮絞模様、文字、幾何学模様、全面ベタ、或いはこれら二種以上の組み合わせである。組み合わせで代表的なのは、パターン状に形成される模様層と、該模様層の着色基材シート側に形成する全面ベタ層の組み合わせである。全面ベタ層の場合は、ロールコート、グラビアコート等の公知の塗工法で形成することもできるが、この場合も含めて印刷模様層と本発明では呼ぶことにする。
【0030】
なお、全面が着色するという点では、全面ベタ層も着色基材シートも同じではあるが、着色基材シートの方が全面ベタ層に比べて厚く形成し易いので、隠蔽性を付与する観点からは、全面ベタ層を仮に印刷模様層の一つとして設けたとしても、基材シートを着色基材シートとする方が隠蔽性を出し易い。
【0031】
印刷模様層2の形成に用いるインキ(或いは塗液)は、バインダー等からなるビヒクル、顔料や染料等の着色剤、これに適宜加える各種添加剤からなる。バインダーの樹脂には、例えば、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の単体又はこれらを含む混合物を用いる。着色剤としては、前記着色基材シートで列記した様な各種着色剤を用いることができる。また、印刷模様層としては、パターン状に設ける金属蒸着層もあり得る。
【0032】
[接着剤層]
接着剤層4としては、基本的には公知の接着剤を適宜採用し得る。例えば、接着剤層の樹脂としては、ポリウレタン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂等である。なかでも、ポリウレタン樹脂として熱硬化性ウレタン樹脂である、ポリオールとイソシアネートとからなる2液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。ポリオールとしては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオールなどがあるが、これらの中でも、ポリエステルポリオールは密着性、耐候性等の点で好ましい1種である。つまり、ポリエステル系2液硬化型ウレタン樹脂乃至はポリエステル系熱硬化性ウレタン樹脂は好ましい樹脂の一種である。当該樹脂により、着色基材シート及び印刷模様層とアイオノマー樹脂シートとの密着性を良くできる。
また、イソシアネートとしては、公知の各種多価イソシアネートを使用できるが、なかでも耐候性の点で、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の様な、脂肪族乃至は脂環式イソシアネートが好ましい。
なお、接着剤層の厚みは特に限定はないが、通常1〜20μm程度である。また、接着剤層は、グラビア塗工など公知の塗工法、或いはグラビア印刷等の公知の印刷法で形成することができる。
【0033】
[アイオノマー樹脂シート]
アイオノマー樹脂シート5は、アイオノマー樹脂からなる透明な樹脂シートである。床材用化粧シートの表側の最外層として、アイオノマー樹脂シートを用いることによって、床材用化粧シートを、バッカーシートと透明なトップシートとの間に積層して床材とするときに、透明なトップシートにアイオノマー樹脂からなる樹脂シートを用いる場合に、熱融着によって容易に密着性良く積層できる様にすることが出来る。
【0034】
上記アイオノマー樹脂としては、公知のもの例えば、「ハイミラン」(登録商標、三井・デュポンポリケミカル株式会社製)、「サーリン」(登録商標、米国デュポン社製)、等を用いることができる。
なお、アイオノマー樹脂は、例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体及び/又はエチレン−アクリル酸共重合体のカルボキシル基部分を、ナトリウム、亜鉛などの金属のイオンで架橋した熱可塑性樹脂である。すなわち、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、或いはエチレン−メタクリル酸共重合体とエチレン−アクリル酸共重合体との混合樹脂に対して、イオン架橋した樹脂である。アイオノマー樹脂の具体例を挙げれば、エチレン−メタクリル酸共重合体をナトリウムの金属のイオンで架橋した樹脂が挙げられる。
【0035】
なお、アイオノマー樹脂シートは、更に添加剤を含むことができる。該添加剤としては公知の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、充填剤等である。また、アイオノマー樹脂シートの厚みは、特に制限はないが、例えば50〜300μmである。
【0036】
そして、アイオノマー樹脂シート5と、印刷シート3の印刷模様層2の形成面側とを、間に接着剤層4を介して、ドライラミネーション等の公知の積層法で積層すれば、隠蔽性を有する床材用化粧シート10が得られる。
【0037】
《床材》
本発明による床材は、例えば、図1(b)や図2で例示した床材20の様に、表面が着色しておりLLDPEを表層など少なくともバッカーシートの表面に含むバッカーシート6と、アイオノマー樹脂からなる透明なトップシート7との間に、上記した床材用化粧シート10を挟んで積層した構成のものである。なお、図1(b)の床材20は、バッカーシート6が単層(表層6aのみであるとも言える)の例である。図2の床材20は、バッカーシート6が、樹脂再生材を含み表面が着色しておりLLDPEを含むことで表層6aと本体層6bとからなる例である。
【0038】
[バッカーシート]
バッカーシート6としては、バッカーシート用の樹脂として公知の各種樹脂を用いることができ、またこれらの樹脂の着色の有無または濃淡を気にすることなく使用できる。樹脂としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、アイオノマー樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等である。また、これら樹脂は単独使用又は混合使用することができる。
【0039】
またバッカーシート6としては樹脂再生材を含む樹脂シートを用いることが出来る。樹脂再生材はバッカーシートの全厚みにわたって含んでいても良いが、バッカーシート表面を含む厚み方向での一部が含んでいるものを用いることができる。この際、樹脂再生材は、バッカーシート表面となる表層に含んでいても良いし、バッカーシート表面となる表層は除外した部分に含んでいても良い。ただ、本発明では樹脂再生材が、たとえバッカーシート表面となる表層に含んでいる構成でも、それによる表面色の悪影響を防ぐことができる。なお、厚み方向の一部に樹脂再生材を含んでいるシートの場合は、それ以外の厚み部分の樹脂は、新しい樹脂、つまり新品の樹脂のみとしても良い。
【0040】
図2で例示した床材20でのバッカーシート6は、後者の厚み方向の一部で含んでいる例であり、バッカーシートの表側となる表層6aとその裏側となる本体層6bとの2層構造である。表層6aが樹脂再生材を含み、本体層6bは樹脂分として樹脂再生材は含まず新しい新品の樹脂のみを含む構成の例である。この様な2層構造とすることで、本体部6bで床材として必要な性能を樹脂再生材に影響されずに設定できる、しかも表層6aで樹脂再生材の使用で低コスト化や資源有効利用促進を図れる。
この様に図2の場合では使用するバッカーシートは、床材用化粧シート側にする面である表面は樹脂再生材を含む層の面となったシートである。また、バッカーシートは、図2に例示の2層構造を含めて3層構造など、多層構造でも良い。
【0041】
樹脂再生材の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等である。また、これら樹脂は単独使用又は混合使用することができる。これらの樹脂のなかでも、前記した床材用化粧シートの着色基材シートがポリエチレンからなる樹脂シートとの関係で、同じポリエチレンは熱融着等による密着性の点で好ましい。更に、該着色基材シートのバッカーシート側をLLDPEからなる裏側層とする床材用化粧シートの構成との関係では、バッカーシート側の樹脂再生材も同様にLLDPEの樹脂再生材が、熱融着等による密着性の点で好ましい。
【0042】
また、バッカーシートが含む樹脂再生材は色が付いており、しかもその色は着色させた新品樹脂の様に一定していない。この為、この樹脂再生材を、少なくとも表面を構成する層に含むバッカーシートは、その表面色が一定しない。
なお、新品樹脂を少なくとも表面を構成する層に含むバッカーシートで、その表面色が一定しないものも使用でき、この様なバッカーシートでも、床材意匠の色を安定させることができる。
【0043】
なお、表層など樹脂再生材を含む層は、その樹脂分が樹脂再生材のみであっても良いし、樹脂再生材と新品樹脂との両方であっても良い。
また、バッカーシートの樹脂中には、機械的物性を調整する等の為に必要に応じて各種添加剤を含ませても良い。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、水酸化アルミニウム、木粉、着色剤などである。
なお、バッカーシートとする樹脂シートは、カレンダー法、押出し法(含む共押出し)等の公知の成形法で成膜することができる。
また、バッカーシートの厚みは、特に限定されないが、例えば100μm〜4mm、より好ましくは500μm〜2mmである。
【0044】
[トップシート]
トップシート7は、床材用化粧シート上に位置し該床材用化粧シートを保護する透明な樹脂シートである。トップシートの樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、アイオノマー樹脂等が挙げられる。なかでも、床材用化粧シートのトップシート側の層がアイオノマー樹脂シートである関係から、トップシートも同じアイオノマー樹脂とすることが、トップシートと床材用化粧シートとの熱融着等による密着性の点で好ましい。また、アイオノマー樹脂を用いることで、優れた耐擦傷性等の表面強度も得られる。
なお、トップシートの厚みは、特に限定されないが、例えば100〜1000μm、好ましくは400〜800μm程度である。
【0045】
そして、このトップシート7と、上記バッカーシート5との間に、前記床材用化粧シート10を挟んで重ねて、熱融着等の公知の積層によって積層すれば、図1(b)の様な床材20が得られる。
なお、必要に応じて、これらシートの層間密着性を良くする為に、前記した易接着処理等を施しても良い。
【実施例】
【0046】
次に、本発明を実施例及び比較例により、更に詳細に説明する。
【0047】
[実施例1]
図1(a)の様な床材用化粧シート10を次の様にして作製した。先ず、着色基材シート1として、樹脂分がLLDPEとHDPEからなる3層構造の樹脂シートを3層共押出し法で製膜して用意した。この着色基材シートは、表側層1aと裏側層1bとが、共に着色剤を含有しないLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)からなる無着色透明な層であり、着色中間層1cが、着色剤としてチタン白を含有する、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)とHDPE(高密度ポリエチレン)とからなる隠蔽性で着色した層である。なお、着色中間層に於けるLLDPEとHDPEとの比率は質量比でLLDPE:HDPE=2:8とした。また、この着色基材シートの厚みは80μmで、各層の厚みは、比率で表側層1a/着色中間層1c/裏側層1b=1/8/1とした。
次に、印刷模様層2を、上記着色基材シートの片面に、ポリウレタン樹脂とアクリルポリオール樹脂との混合樹脂を含む着色インキをグラビア印刷して形成して、印刷シートを作製した。
【0048】
次に、厚み80μmで透明なアイオノマー樹脂シート5を、接着剤(層)にポリエステルポリオールとイソシアネートとからなる2液硬化型熱硬化性ウレタン樹脂を用いて、上記印刷シートの印刷模様層の面にドライラミネートして積層し、床材用化粧シート10を作製した。
【0049】
そして、上記床材用化粧シートを、バッカーシート6とトップシート7との間に挟んで熱融着して、図1(b)の様な床材20を作製した。厚み1600μmのバッカーシート6には、厚み800μmの表層6aにLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)が用いられている結果、着色しており、一枚のシート毎に色がばらつく可能性があり均一な着色が保障されていないものであった。なお、バッカーシートの本体層6bは厚み800μmで樹脂としてLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)を含む。また、トップシート7としては、アイオノマー樹脂からなる厚み600μmの樹脂シートを用いた。
得られた床材は、表面色が一定しないバッカーシートではあったが、バッカーシートの表面色が床材用化粧シートの印刷模様層による意匠色に悪影響を与えることはなかった。
【0050】
[比較例1]
実施例1に於いて、用いた着色基材シートの代わりに、厚み90μmで無着色透明なHDPE(高密度ポリエチレン)からなる単層の樹脂シートを用いた他は、実施例1と同様にして、床材用化粧シートの作製を試みた。
しかし、先ず、基材シートの表面がLLDPEではなく、それよりも融点が高いHDPEであった為に、熱融着性に劣り、床材用化粧シートとトップシート及びバッカーシートと間の密着性が悪かった。
そして、床材としては、基材シートが無着色透明であった為に、バッカーシートの表面色が透け気味で、床材用化粧シートの印刷模様層による意匠色に悪影響を与えた。
【0051】
また、比較例1では、実施例1では発生していなかったカールが発生した。これは、(着色)基材シートの層構成及び構成樹脂の弾性率の差によるものである。すなわち、比較例1では樹脂がHDPEで、実施例1の樹脂LLDPEよりも弾性率が高く、実施例1の着色基材シートの弾性率400MPaに対して700MPaと高いことが、カール発生の原因である。
なお、カールは、縦横300mmの正方形のタイルとした床材を、120℃に加熱後、平に伸ばして室温まで冷却後の状態で評価した。
【符号の説明】
【0052】
1 着色基材シート
1a 表側層
1b 裏側層
1c 着色中間層
2 印刷模様層
3 印刷シート
4 接着剤層
5 アイオノマー樹脂シート
6 バッカーシート
6a 表層
6b 本体層
7 トップシート
10 床材用化粧シート
20 床材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッカーシートと透明なトップシートとの間に積層して床材とするための床材用化粧シートであって、
基材シート上に印刷模様層を形成した印刷シートの該印刷模様層側の面に、接着剤層を介して透明なアイオノマー樹脂シートが積層されて成り、且つ該基材シートは直鎖状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとからなる隠蔽性の着色基材シートから成る、床材用化粧シート。
【請求項2】
上記着色基材シートが、少なくとも表側層と中間層と裏側層とを有する3層構造からなり、表側層と裏側層とが着色剤を含有しない直鎖状低密度ポリエチレンからなる無着色透明な層であり、中間層が着色剤を含有し直鎖状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとからなる隠蔽性の着色中間層である、請求項1に記載の床材用化粧シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の床材用化粧シートが、その着色基材シート側を、着色しているバッカーシート側に向けて、該バッカーシートと、アイオノマー樹脂からなる透明なトップシートとの間に積層されている床材。
【請求項4】
上記バッカーシートが、樹脂再生材を含み着色しているバッカーシートである請求項3に記載の床材。
【請求項5】
上記バッカーシートが、樹脂再生材を含み着色している表層と、本体層とを有する少なくとも2層構造から成るバッカーシートである請求項3に記載の床材。
【請求項6】
上記バッカーシートが、直鎖状低密度ポリエチレンを含んでいるバッカーシートである請求項3〜5のいずれかに記載の床材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−66505(P2012−66505A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213811(P2010−213811)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】