説明

床材用積層体

【課題】本発明は、耐キャスター性、耐衝撃性、および耐水性に優れた床材用積層体を提供すること。
【解決手段】木質基材上に、合成樹脂層と、化粧層とを順に積層してなる床材用積層体であって、前記合成樹脂層が、降伏点荷重が9kgf以上であり、引張り弾性率が50kgf/mm以上であり、降伏伸び率が3〜8%であり、前記床材用積層体における化粧層側の表面に行われる耐キャスター試験の結果、前記表面の凹み深さが100μm以下のものであり、前記耐キャスター試験が、回転可能のキャスター固定材と、前記キャスター固定材に取り付けられた3個のキャスターと、前記キャスター固定台と接続してなる加重部と、試料固定台とを備えてなる耐キャスター試験装置を用いて行われるものである、床材用積層体により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐キャスター性、耐衝撃性、および耐水性に優れた床材用積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、床材としては、合板に木質化粧単板を貼り合わせて塗装したもの、または合板と中密度繊維板(MDF)を積層させ、さらにMDFに木質化粧単板を貼り合わせて塗装したものが広く知られている。また、木質化粧単板側から合板およびMDFに達する深さの溝加工および面取り加工を施して溝部や面取り部を設けて意匠性を向上させたものが広く知られている。
【0003】
しかしながら、木質化粧単板は、無垢の自然木材を薄くスライスしたものであり、木材資源の枯渇問題、世界的な資源保護運動の高まりから木材価格が高騰すると共に材質も低下し、従来のような良質な木材が入手困難になってきた。
このため、木質化粧単板に代わるものとして、木目柄等の美麗な意匠を印刷した化粧シートが用いられるようになってきた。この代表的なものとしては、合板に化粧シートを貼着したもの、合板と中密度繊維板(MDF)を積層した積層体の前記中密度繊維板面に化粧シートを貼着したもの、が挙げられる。しかしながら、前者は、木質化粧単板を用いたときと同様に耐キャスター性および耐衝撃性に劣ること、木質化粧単板に溝部および面取り部を設けた場合に毛羽立ちおよびササクレ等を発生し靴下およびストッキングの繊維にこれが引掛り伝線することとがしばしば見受けられた。また、後者は、木質化粧単板を用いたときと同様にMDFが耐水性に劣るため、水の浸入によりMDFが膨らみ、意匠性を損なうことがしばしば見受けられた。
【0004】
これに対して、特開2003−239517号(特許文献1)では、合板と合成樹脂層と化粧層とを積層させてなり、この合成樹脂層を特定の物性値とすることに耐キャスター性、耐衝撃性、耐水性等に優れた床材用積層体とすることができるとの提案がなされている。
しかしながら、床材用積層体が暖房手段の熱の影響を受けると、合板または合成樹脂層が熱収縮または熱膨張を起こし、床材用積層体にそりが発生すること、および床材用積層体の化粧層表面に施された意匠に合板の表層の繊維方向に沿って凹凸形状が発生することなどの影響が生じることがしばしば見受けられた。また、合成樹脂層と化粧層との接着性を更に改善させることも要求されている。
従って、温度変化による寸法変化が少なく、かつ、より安価な建材としての床材用積層体の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−239517号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明者等は、今般、木質基材上に、特定の物性値を有する合成樹脂層と、化粧層とを順に積層することにより、耐キャスター性、耐衝撃性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐汚染性等の諸物性を備えると共に、温度変化による寸法変化が少なく、かつ、合成樹脂層と化粧層との接着性を更に改善し床材用積層体を得ることができるとの知見を得た。よって、本発明はかかる知見によるものである。
【0007】
本発明の第1の態様
本発明の第一の態様によれば、木質材からなる基材上に、合成樹脂層と、化粧層とを順に積層してなる床材用積層体が提供することができ、この床材用積層体は、
前記合成樹脂層が、降伏点荷重が9kgf以上であり、引張り弾性率が50kgf/mm以上であり、降伏伸び率が3〜8%であり、
前記床材用積層体における化粧層側の表面に行われる耐キャスター試験の結果、前記表面の凹み深さが100μm以下であり、
前記耐キャスター試験が、回転可能のキャスター固定材と、前記キャスター固定材に取り付けられた3個のキャスターと、前記キャスター固定台と接続してなる可動型加重部と、試料固定台とを備えてなる耐キャスター試験装置を用いて、
前記床材用積層体を前記試料固定台に固定し、
前記3個のキャスターを前記床材用積層体における化粧層側の表面に前記可動型加重部により加重して接触させ、
前記キャスター固定材を稼働し前記床材用積層体における化粧層側の表面の上に前記3個のキャスターを回転させた後に、
前記表面に発生した凹みの深さを測定することにより行われるものであり、
前記キャスターが、平均直径75mm、厚さ25mmのものであり、
前記床材用積層体における化粧層側の表面に付与される加重が、70kgであり、
前記3個のキャスターが、20rpmの速度で5分間毎に反回転させて1000回転させて行うものである。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、耐キャスター性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐汚染性等の諸物性を備えると共に、温度変化による寸法変化が少ない床材用積層体を提供することが可能となる。
【0009】
本発明の第2の態様
本発明の第2の態様によれば、木質基材上に、合成樹脂層と、化粧層とを順に積層してなる床材用積層体を提供することができ、それは、
前記合成樹脂層が、針入温度が75℃以上であり、降伏点荷重が10kgf以上であり、引張り弾性率が100kgf/mm以上であり、降伏伸び率が4〜8%であるものである。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、耐キャスター性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐汚染性、耐衝撃性、耐水性に優れ、とりわけ、耐熱性に優れた、目痩せ現象の発生を有効に抑制した床材用化粧材を提供することが可能となる。
【0011】
本発明の第3の態様
本発明の第3の態様によれば、合成樹脂層と、その上に形成されてなる化粧層とにより構成されてなる床材用シートであって、
前記合成樹脂層が単層または2層以上の層構造を有してなり、
前記合成樹脂層が単層の場合には前記単層が、または前記合成樹脂層が2層以上の場合にはそのうちの少なくとも一層が、非晶性ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート共重合体とにより形成されてなり、
前記ポリエチレンテレフタレート共重合体が、エチレングリコールの一部を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換されたものであるが提供される。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、合成樹脂層と化粧層との接着性を改善した床材用シートおよびそれを用いた床材用積層体を提供することが可能となる。
【0013】
本発明の第4の態様
本発明の第4の態様によれば、木質基材上に、合成樹脂層と、化粧層とを順に積層してなる床材用積層体であって、前記合成樹脂層が、2以上の独立した区画に区分されて構成されてなるものが提供される。
【0014】
本発明の第4の態様によれば、合成樹脂層が2以上の独立した区画に区分されているので、木質基材と合成樹脂層との熱膨張差を効果的に吸収することができ、その結果、熱膨張差に起因するそりの発生を有効に抑制ないしは防止することが可能となる。また、本発明の第4の態様によれば、合成樹脂層と化粧層との接着性を改善した床材用シートおよびそれを用いた床材用積層体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる床材用積層体の基本的層構成を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる床材用積層体を構成する化粧層の具体的な第1実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明にかかる床材用積層体を構成する化粧層の具体的な第2実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明にかかる床材用積層体を構成する化粧層の具体的な第3実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明にかかる床材用積層体を構成する化粧層の具体的な第4実施形態を示す断面図である。
【図6】各種試験体Bの凹み深さと降伏点荷重との関係を示す図である。
【図7】各種試験体Bの降伏点荷重と引張り弾性率との関係を示す図である。
【図8】各種試験体Bの降伏点荷重と降伏伸び率との関係を示す図である。
【図9】耐キャスター試験装置の断面図を示す図である。
【図10】本発明の第3の態様である床材用シートの基本的層構成を示す断面図である。
【図11】本発明の第3の態様である床材用シートを構成する実施形態を示す断面図である。
【図12】本発明の第4の態様である床材用積層体の合成樹脂層の区分辺の配置例を示す図である。
【図13】本発明の第4の態様である床材用積層体に溝部を形成した場合の断面構造を示す模式図である。
【図14】本発明の第4の態様である床材用積層体に溝部を形成した場合の断面構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の態様
本発明の第1の態様について、添付図面用いて説明する。
図1は本発明にかかる床材用積層体の基本的層構成を示す断面図であって、床材用積層体1は、木質基材2上に合成樹脂層3を接着剤層を介して設け、前記合成樹脂層3上に化粧層4を設けたものである。前記合成樹脂層3が上記数値を満すことにより、耐キャスター性、耐衝撃性、耐水性等をみたすことができる。また、本発明による床材用積層体はその化粧層側の表面に行われる耐キャスター試験の結果、前記表面に割れが生じないことが要求される。また、本発明の好ましい態様によれば、前記耐キャスター試験の結果、前記床材用積層体における化粧層側の表面の凹み深さが100μm以下、好ましくは80μm以下であることが好ましい。
【0017】
耐キャスター試験
本発明における耐キャスター試験は、耐キャスター試験装置を用いて行うことができる。耐キャスター試験装置の一態様の断面図を表した図9を用いて説明する。耐キャスター試験装置1000は、軽重可能な重り1001を持つ加重部1002と、調節ハンドル1003と、回転可能のキャスター固定台1010と、前記キャスター固定材に取り付けられた3個のキャスター1011と、試料固定台1013とを備えてなるものである。
【0018】
耐キャスター試験の一例を下記する。
試験する床材用積層体1012を試料固定台1013に固定し、
加重部1002に70kgの重り1001を乗せて、調節ハンドル1003により、床材用積層体1020における化粧層側の表面に、回転可能なキャスター固定台1010に固定された3個のキャスター1011を接触させ、
キャスター固定台1010を稼働し床材用積層体1012における化粧層側の表面の上に前記3個のキャスター1011を、20rpmの速度で5分間毎に反回転させて1000回転させ、その後に、前記表面に発生した割れの有無を評価することにより行われる。
【0019】
耐キャスター試験装置は、例えば耐キャスター試験装置L6−04(浅野機械製作株式会社)から入手可能である。また、使用するキャスターは、平均直径75mm、厚さ25mmのものである。このキャスターは、例えばHANMMER CASTER社より420SA−N(車輪:ナイロン製)として入手可能である。
【0020】
合成樹脂層
合成樹脂層は、単層であっても複層であってもよいが、その物理的特定性として、降伏点荷重が9kgf以上、好ましくは12kgf以上であり、引張り弾性率が50kgf/mm以上であり、降伏伸び率が3〜8%、3〜5%であることが要求される。合成樹脂層の厚さは、下限として200μm以上、好ましくは250μm以上であり、上限としては800μm以下であり、500μm以下であることが好ましい。合成樹脂層を構成する樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(好ましくは二軸延伸ポリエチレンテレフタレート)、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレート(例えば、エチレングリコールの一部を1,4−シクロヘキサンジメタノール等で置換したポリエチレンテレフタレート:商品名PET−G(イーストマンケミカルカンパニー社製))、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単一物または混合物であってもよい。
【0021】
化粧層
化粧層を構成する基材の具体例としては、薄紙、上質紙、クラフト紙、和紙、チタン紙、樹脂含浸紙、紙間強化紙等の紙、木質繊維、ガラス繊維、石綿、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維等の繊維からなる織布や不織布、または、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン等の合成樹脂製シートなどの1種または2種以上の積層体を用いることができる。これら基材の厚さとしては20〜300μmが適当である。また、化粧層に用いる基材は必要に応じて必要な層に顔料等を添加して着色してもよいし、必要な面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施してもよい。
【0022】
化粧層の態様
図2は本発明による床材用積層体を構成する化粧層の具体的な一の実施形態を示す断面図であって、化粧層4’は透明なオレフィン系熱可塑性樹脂シート40の一方の面にエンボス加工を施して凹凸模様41を設け、その上からワイピング処理を施して前記凹凸模様41の凹部内にワイピングインキ42を充填した後に、表出面全面にプライマー層43を設け、該プライマー層43上に表面保護層44を形成すると共に前記オレフィン系熱可塑性樹脂シート40の他方の面にプライマー層45を介して絵柄層46、ベタ印刷層47を形成したものである。
【0023】
図3は本発明による床材用積層体を構成する化粧層の具体的な一の実施形態を示す断面図であって、化粧層4”は着色したオレフィン系熱可塑性樹脂シート40’の一方の面にプライマー層45を設け、該プライマー層45上にベタ印刷層47、絵柄層46を順に印刷形成し、さらに前記絵柄層46上に2液硬化型ウレタン樹脂等の周知のドライラミネーション用接着剤で形成した接着剤層48を介して透明なオレフィン系熱可塑性樹脂シート40ないし透明なオレフィン系熱可塑性樹脂層40”を周知のドライラミネーション法ないしTダイ押出し法で積層し、前記オレフィン系熱可塑性樹脂シート40ないし前記オレフィン系熱可塑性樹脂層40”の表出面全面にプライマー層43を設け、該プライマー層43上に表面保護層44を形成したものである。着色したオレフィン系熱可塑性樹脂シート40’の下方面(図3には図示しない)にプライマー層を要して合成樹脂層が形成されてなる。
【0024】
図4は本発明による床材用積層体を構成する化粧層の具体的な一の実施形態を示す断面図であって、化粧層4’’’は着色したオレフィン系熱可塑性樹脂シート40’の一方の面にプライマー層45を設け、該プライマー層45上にベタ印刷層47、絵柄層46を順に印刷形成し、さらに前記絵柄層46上に2液硬化型ウレタン樹脂等の周知のドライラミネーション用接着剤で形成した接着剤層48を介して透明なオレフィン系熱可塑性樹脂シート40ないし透明なオレフィン系熱可塑性樹脂層40”を周知のドライラミネーション法ないしTダイ押出し法で積層し、前記オレフィン系熱可塑性樹脂シート40ないし前記オレフィン系熱可塑性樹脂層40”の表面にエンボス加工を施して凹凸模様41を設け、その上からワイピング処理を施して前記凹凸模様41の凹部内にワイピングインキ42を充填した後に、表出面全面にプライマー層43を設け、該プライマー層43上に表面保護層44を形成したものである。着色したオレフィン系熱可塑性樹脂シート40’の下方面(図4には図示しない)にプライマー層を要して合成樹脂層が形成されてなる。
【0025】
今まで化粧用基材を用いた化粧層4について説明してきたが、化粧層4はこれに限ることはなく、たとえば、突板であってもよいものである。この場合、通常、突板表面に透明保護層としてUV(紫外線硬化型)樹脂を塗装したものや、さらには、図2や図3に示すような化粧層4’、4”を該化粧層4’、4”の前記表面保護層44が表出するように突板表面にウレタン系接着剤を介して貼着するなどの加工を施したものが使用されるものである。
【0026】
図2〜4に示した化粧層4’、4”、4’’’は、本発明における床材用積層体を構成する化粧層4の具体的な実施例を示したものであって、本発明の主旨を逸脱しない範囲であれば、これに限るものではない。例えば、薄紙の一方の面にベタ印刷層、絵柄層を順に印刷形成し、この絵柄層を形成した面全面に表面保護層を設けた構成からなる化粧層であってもよいものである。
【0027】
1)プライマー層
前記プライマー層43は前記オレフィン系熱可塑性樹脂シート40ないし前記オレフィン系熱可塑性樹脂層40”と前記表面保護層44との接着強度を向上させる目的で設けるものであり、前記プライマー層43を設ける方が接着強度面から望ましい。また、図2〜4に示した前記プライマー層45はオレフィン系熱可塑性樹脂シート40ないし40’と絵柄層46、ベタ印刷層47等の印刷層との接着性を向上させる目的で設けるものであり、前記プライマー層43と同様の樹脂を用いて同様に形成するのが前記プライマー層43と同様の意味で好ましい。
前記プライマー層43、45は、上記したようにオレフィン系熱可塑性樹脂シート40、40’、40”の表面の接着性を高めるためのものであり、これに用いる樹脂としてはエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース樹脂等を挙げることができ、これらの樹脂は単独ないし混合して塗料組成物、又は、インキ組成物とし、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて形成することができる。
【0028】
2)凹凸模様
凹凸模様41は加熱プレスやヘアライン加工などにより形成することができる。前記凹凸模様41としては、たとえば、導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等である。
【0029】
3)絵柄層およびベタ印刷層
前記絵柄層46および前記ベタ印刷層47は、一般的にはグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等の周知の印刷法でインキを用いて形成することができる。前記絵柄層46としては、たとえば、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様柄が挙げられる。前記ベタ印刷層47としては、隠蔽性を有する着色インキでベタ印刷したものである。また、図2〜4においては、前記絵柄層46および前記ベタ印刷層47の両方を設けた構成を示したが、いずれか一方の構成であっても構わない。
【0030】
前記絵柄層46および前記ベタ印刷層47に用いるインキ組成物としては、ビヒクルとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等を1種ないし2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えたものを用いることができる。しかしながら、環境問題や被印刷面との接着性等を考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合したものである。なお、ワイピングインキ42についても、上記で説明した絵柄層46およびベタ印刷層47に用いるインキと同じインキで形成することができる。
【0031】
4)表面保護層
化粧層4の表面に設ける表面保護層44について説明する。この表面保護層44は、床材用積層体(図1参照)に要求される耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性、耐汚染性等の表面物性を付与するために設けられるものであり、この表面保護層44を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂ないし電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂を用いて形成するのが適当である。より好ましくは表面硬度が硬く、生産性に優れるなどから電離放射線硬化型樹脂である。
【0032】
熱硬化型樹脂の具体例としては、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。上記樹脂には、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、または、重合促進剤を添加して用いる。たとえば、硬化剤としては、イソシアネートまたは、有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加され、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加され、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂に添加される。上記熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、たとえば、上記した熱硬化型樹脂を溶液化し、ロールコート法、グラビアコート法等の周知の塗布法で塗布し、乾燥すると共に硬化させることにより形成することができる。塗布量としては、固形分で概ね5〜30μmが適当であり、好ましくは15〜25μmである。
【0033】
電離放射線硬化型樹脂の具体例としては、電離放射線を照射することにより架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線は、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等がある。通常は紫外線や電子線が用いられる。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハラィドランプ灯の光源が使用できる。
紫外線の波長としては、190〜380nm程度の波長域を使用することができる。また、電子線源としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。用いる電子線としては、100〜1000keV程度、好ましくは100〜300keVのものが使用される。電子線の照射量は、通常2〜15Mrad程度である。
【0034】
電離放射線硬化型樹脂は、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、又はエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマー又はポリマー(以下、これらを総称して化合物と呼称する)からなる。これら単量体、プレポリマー、及びポリマーは、単体で用いるか、或いは複数種混合して用いる。なお、本明細書で(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートの意味で用いる。
【0035】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このプレポリマーは、通常、分子量が10000程度以下のものが用いられる。分子量がこの程度であることにより硬化した樹脂層の耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の表面物性を向上する。上記のアクリレートとメタアクリレートは共用し得るが、電離放射線での架橋硬化速度という点ではアクリレートの方が速い為、高速度、短時間で能率よく硬化させるという目的ではアクリレートの方が有利である。
【0036】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル化合物、スピロ化合物等のプレポリマーが挙げられる。
【0037】
ラジカル重合性不飽和基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N一ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジベンジルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンテレフタレート等が挙げられる。
【0038】
また、ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。カチオン重合性官能基を有する単量体は、上記カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの単量体を用いることができる。
【0039】
上記の電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等を単独又は混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独又は混合物として用いることができる。尚、これら光重合開始剤の添加量は一般に、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部程度である。また、この電離放射線硬化型樹脂で保護層を形成する方法としては、例えば、この電離放射線硬化型樹脂を溶液化し、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布することにより形成することができる。この場合の塗布量としては、固形分として概ね5〜30μmが適当であり、より好ましくは15〜25μmである。
【0040】
また、電離放射線硬化型樹脂から形成された表面保護層44に、より一層耐擦傷性、耐摩耗性を付与する場合には、粉末状の酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化棚素、ダイアモンド、金剛砂、ガラス繊維等の研磨材を加えることにより達成することができる。この研磨材の電離放射線硬化型樹脂100重量部に対する割合は1〜80重量部が適当である。
【0041】
なお、今までは表面保護層44を化粧層4の表面に設けることで説明してきたが、表面保護層44は化粧層4の表面に設けるのみならず、たとえば、図2に示した実施態様において、プライマー層43と表面保護層44を設けない図5に示すような構成の化粧層4””とし、この化粧層4””と合成樹脂層3と合板からなる基材2とを順に積層した積層体を作製し、その後に前記積層体の表面にプライマー層43と表面保護層44を設けるようにしてもよいものである。
【0042】
このように前記積層体の表面に前記プライマー層43と前記表面保護層44を設ける構成とすることにより、通常、床材用積層体には意匠性向上を目的として工程の最終段階において溝部や面取り部が切削加工により形成されるが、図2〜4に示した第1〜第3の実施態様では、溝部や面取り部に表面保護層44が存在しない構成となるが、上記したように前記積層体の表面に前記プライマー層43と前記表面保護層44を設ける構成とすることにより、化粧層4””側から溝部や面取り部(図示せず)を形成した後に溝部や面取り部(図示せず)を設けた表面全面にプライマー層43と表面保護層44を設けることになり、溝部や面取り部にも表面保護層を形成することができ、溝部や面取り部の耐擦傷性、耐磨性、耐汚染性、耐水性等の表面物性を向上させることができる。
【0043】
また、溝部や面取り部に、たとえば、着色塗料や、必要に応じて耐水性を有する着色塗料を塗布することで、深みのある溝部や耐水性を有する深みのある溝部とすることができ、溝部の意匠性や耐水性を向上させることができる。なお、溝部や面取り部の形成方法は上記した切削加工に限ることはなく、たとえば、最表層側からエンボス加工を施すことにより溝部や面取り部を設けてもよい。
【0044】
木質基材
木質基材としては、特に限定されず、例えば杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材から作られた突板、木材単板、木材合板、パティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。床材への積層方法は限定的でなく、例えば接着剤により化粧シートを基材に貼着する方法等を採用することができる。接着剤は、基材の種類等に応じて公知の接着剤から適宜選択すれば良い。例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0045】
製造方法
本発明の第1の態様によれば、床材用積層体の製造方法が提案される。その製造方法は下記の通りである。
木質基材上に、合成樹脂層と、化粧層とを順に積層してなる床材用積層体の製造方法であって、
前記木質基材の上に、降伏点荷重が9kgf以上であり、引張り弾性率が50kgf/mm以上であり、降伏伸び率が3〜8%である、前記合成樹脂層を形成し、
前記合成樹脂層の上に、前記化粧層を形成してなることを含んでなり、
前記床材用積層体における化粧層側の表面に行われる耐キャスター試験の結果、前記表面の凹む深さが100μm以下であり、
前記耐キャスター試験が、回転可能のキャスター固定材と、前記キャスター固定材に取り付けられた3個のキャスターと、前記キャスター固定台と接続してなる加重部と、試料固定台とを備えてなる耐キャスター試験装置を用いて、
前記床材用積層体を前記試料固定台に固定し、
前記3個のキャスターを前記床材用積層体における化粧層側の表面に前記加重部により加重して接触させ、
前記キャスター固定材を稼働し前記床材用積層体における化粧層側の表面の上に前記3個のキャスターを回転させ、その後に、前記表面に発生した割れの有無を評価するものであり、
前記キャスターが、平均直径75mm、厚さ25mmのものであり、
前記床材用積層体における化粧層側の表面に付与される加重が、70kgであり、
前記3個のキャスターが、20rpmの速度で5分間毎に反回転させて1000回転させて行うものである、床材用積層体を製造する方法。
【0046】
用途
本発明による床材用積層体は、建築資材として、特に(化粧用)床材として利用することができる。
【0047】
本発明の第2の態様
本発明の第2の態様の具体的内容
合板上に、合成樹脂層、化粧層を順に積層した床材用積層体において、前記合成樹脂層が、
(1)針入温度が75℃以上であり、
(2)降伏点荷重が10kgf以上であり、
(3)引張り弾性率が100kgf/mm以上であり、
(4)降伏伸び率が4〜8%であるものである床材用積層体(好ましくは化粧用床材)を提供できる。
【0048】
上記の床材用積層体において、前記合成樹脂層が非晶性ポリエチレンテレフタレートを主成分とし、これに主成分より針入温度の高いポリエステルを副成分として添加した層であるものを提供することができる。
【0049】
別の態様によれば、上記の床材用積層体において、前記合成樹脂層が、非晶性ポリエチレンテレフタレートを芯層とし、該芯層の両面にこれより針入温度の高いポリエステル層を積層した3層構成からなるものを提供することができる。さらに、この床材用積層体において、前記ポリエステル層が非晶性ポリエチレンテレフタレートを主成分とし、これに主成分より針入温度の高いポリエステルを副成分として添加した層であるものを提供することができる。
【0050】
上記の床材用積層体において、前記合成樹脂層の少なくとも一つの層が着色樹脂層であるものが提供することができる。
【0051】
上記の床材用積層体において、前記化粧層側から溝部が形成されているものを提案することができ。この床材用積層体において、前記溝部がその底部を前記合成樹脂層に位置するように形成されているものが提案することができる。また、この床材用積層体において、前記溝部の底部が位置する前記合成樹脂層が着色樹脂層であるものを提案することができる。この床材用積層体において、前記溝部に塗料が塗布されているものを提案することができる。
【0052】
上記の床材用積層体において、前記化粧層の表面に表面保護層が形成されているものを提案することができる。
【0053】
また、上記の床材用積層体において、該床材用積層体の表面に表面保護層が形成されているものを提案することができる。
【0054】
本発明の第2の態様の内容
本発明の第2の態様によれば、木質基材上に、合成樹脂層と、化粧層とを順に積層してなる床材用積層体を提供することができ、それは、前記合成樹脂層が、針入温度が75℃以上であり、降伏点荷重が10kgf以上であり、引張り弾性率が100kgf/mm以上であり、降伏伸び率が4〜8%であるものである。
【0055】
床材用積層1は、合成樹脂層の針入温度が75℃以上であることにより、耐熱性に優れ、暖房用手段の熱の影響を受けて床材用積層体表面に目痩せが発生し意匠性を損なという点を有効に改善することができる。
【0056】
合成樹脂の針入温度の測定は、JIS K7196規定に準拠して行う。その内容は以下の通りである。
1.試験片表面に針状圧子(直径0.5mm、長さ1mm以上の円柱状)を垂直に置き、0.5Nの力を加える。
2.試験片の雰囲気温度を毎分5℃で上昇させ、試験片への圧子の侵入が完了するまで、温度と圧子の変位量を記録する。
3.横軸に温度、縦軸に圧子の変位量を取って描かれる曲線(TMA曲線)から針入温度を求める。
4.具体的には上記TMA曲線で、圧子が侵入し始めるよりも低温側に認められる直線部分を高温側に延長し、侵入速度が最大となる部分の接線の低温側への延長との交点を針入温度(Tl)とする。
本発明の第2の態様による床材用積層体の層構成は本発明の第1の態様で説明したのと同様であってよく、例えば図1〜図5で説明されたのと同様であってよい。
【0057】
合成樹脂層
合成樹脂層は、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂の単層または複層として形成してもよい。本発明の好ましい態様によれば、非晶性ポリエチレンテレフタレート、いわゆるA−PET〔三菱化学(株):ノバクリアー(商品名)〕を主成分とし、これより針入温度の高いポリエステル、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート等の少なくとも一つを副成分として添加した樹脂の単層として形成することができる。また、別の好ましい態様によれば、非晶性ポリエチレンテレフタレートを芯層とし、該芯層の両面にこれより針入温度の高いポリエステル、例えばポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、またはA−PET〔三菱化学(株):ノバクリアー(商品名)〕を主成分とし、これより針入温度の高いポリエステル、例えばポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート等の少なくとも一つを副成分として添加した樹脂等を積層した3層構造で形成したものがコストあるいは加工性等を考慮すると好ましい。なお、前記合成樹脂層を3層構成とする場合は、非晶性ポリエチレンテレフタレートからなる芯層の両面に設ける樹脂層は同一の樹脂、同一の厚さとするものがカールを防止する上で好ましい。
【0058】
その他の層構成
本発明の第2の態様による床材用積層体の合成樹脂層以外については本発明の第1の態様で説明したのと同様であってよい。
【0059】
本発明の第3の態様
本発明の第3の態様の具体的内容
本発明の第3の態様によれば、合成樹脂層及び化粧層が積層されてなる床材用化粧シートであって、(1)当該合成樹脂層が、単層又は2層以上の層構造を有し、(2)a)単層の場合は当該単層又はb)2層以上の場合は当該合成樹脂層のうち少なくとも最上層が、A−PET及びPETGを含む混合層であることを特徴とする床材用化粧シートが提案される。
【0060】
好ましくは、上記の床材用化粧シートにあって、(1)当該合成樹脂層が、3層以上の層構造を有し、(2)少なくとも最上層及び最下層が、A−PET及びPETGを含む混合層であるものが提案される。また、上記の床材用化粧シートにおいて、(1)当該合成樹脂層が、3層からなる層構造を有し、(2)最上層及び最下層が、A−PET及びPETGを含む混合層であり、かつ、芯層が、A−PETからなる層であるものが提案される。
【0061】
別の態様によれば、上記の床材用化粧シートにあって、合成樹脂層及び化粧層が、ウレタン系接着剤層及及び/又はウレタン系プライマー層を介して積層されているものが提案される。好ましくは、上記の床材用化粧シートにあって、混合層が実質的にA−PET及びPETGの2成分系からなり、両者の合計100重量%中PETGが20〜90重量%が含まれるものが提案される。
【0062】
また、上記の床材用化粧シートにおいて、合成樹脂層の厚みが200〜600μmであるものが提案される。
【0063】
さらに、上記の床材用化粧シートを木質材料に積層した床材用積層体が提案される。
【0064】
本発明の第3の態様の内容
層構成
本発明による床材用シートを図10により説明する。図10は本発明による床材用シートの基本的層構成を示す断面図である。図10によれば、合成樹脂層103及び化粧層104が積層されてなる床材用シート101が形成されていることが理解される。また、図10によれば、この床材シート101が木質基材102の上に積層されて、本発明による床材用積層体が形成されていることが理解される。
【0065】
本発明の床材用シートを図11によりさらに説明する。図11は、本発明の床材用シートを構成する実施形態を示す断面図である。この構成は、合成樹脂層103上に接着剤層104、プライマー層105、基材層106、絵柄層107、接着剤層108、透明性樹脂層109、プライマー層110及び表面保護層111が順に積層された構造を有する。表面保護層111側からエンボス加工133が施され、凹凸形状が付されている。また合成樹脂層103は最上層がA−PETとPETG(121)とにより構成されてなり、芯層がA−PET(122)により構成されてなり、最下層がA−PETとPETG(123)とにより構成されてなる。
【0066】
合成樹脂層
本発明シートは、特に合成樹脂層が、1層(単層)又は2層以上の層構造を有し、その最上層がA−PET及びPETGを含む混合層である。すなわち、単層の場合は当該単層、2層以上の場合は最も化粧層に近い層が上記混合層であることが必要である。この最上層は、接着剤層及び/又はプライマー層を介して化粧層に積層される。本発明では、その最上層を上記混合層とすることによって、化粧層との接着性をより高めることが可能となる。単層の場合は、当該単層が混合層となる。
【0067】
合成樹脂層は、前記のとおり、単層であっても良いし、2層以上からなる構成であっても良い。2層以上とする場合、その積層方法は、例えば押し出し法等の公知の方法によれば良い。
【0068】
また、本発明シートにおいて、3層以上の層構造を有する場合は、少なくとも最上層及び最下層が、A−PET及びPETGを含む混合層であることが望ましい。これにより、化粧層との接着性のみならず、合成樹脂層と床材との接着性も高めることができる。最上層は、前記と同様、化粧層に最も近い層である。最下層は、積層される木質材料に最も近い層(すなわち、本発明シートの裏面を構成する層)をいう。
【0069】
本発明の好ましい実施形態としては、例えば(1)当該合成樹脂層が、3層からなる層構造を有し、(2)最上層及び最下層が、A−PET及びPETGを含む混合層であり、かつ、芯層が、A−PETからなる層である床材用シートが挙げられる。
【0070】
本発明によるシートにおける混合層は、A−PET及びPETGを含む。これらは、公知のもの又は市販品を使用することができる。A−PETとしては、非晶性ポリエチレンテレフタレートであれば限定的でなく、例えば市販のA−PET〔三菱化学(株):ノパクリアー(商品名)〕等も好適に用いることができる。PETGは、エチレングリコールの一部を1,4一シクロヘキサンジメタノールで置換したポリエチレンテレフタレート共重合体であり、例えば市販品「PETG6763」(イーストマンケミカル製)等を使用することができる。
【0071】
混合層には、他の樹脂成分が含まれていても良い。例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂が挙げられる。本発明では、特にA−PET及びPETGからなる2成分系の混合層とすることが好ましい。2成分系の場合でも、ポリエステル樹脂以外の他の添加剤は含まれていても良い。
【0072】
混合層中におけるA−PET及びPETGの含有量は、各成分のグレード、本発明シートの使用条件等に応じて適宜設定することができる。本発明シートでは、上記2成分系において、A−PET及びPETGの合計100重量%中PETGが20〜90重量%、より好ましくは40〜60重量%とすることが望ましい。
【0073】
本発明シートの合成樹脂層の厚み(2層以上の場合は合計の厚み)は限定的ではないが、耐キャスター性、耐擦傷性等を考慮すれば、200μm以上、好ましくは200〜600μm程度とすれば良い。2層以上の場合の各層の厚みは、各層の成分等に応じて適宜決定することができる。
【0074】
本発明の好ましい態様によれば、合成樹脂層と、その上に形成されてなる化粧層とにより構成されてなる床材用シートであって、
前記合成樹脂層が単層または2層以上の層構造を有してなり、
前記合成樹脂層が単層の場合には前記単層が、または前記合成樹脂層が2層以上の場合にはそのうちの少なくとも一層が、非晶性ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート共重合体とにより形成されてなり、
前記ポリエチレンテレフタレート共重合体が、エチレングリコールの一部を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換されたものである、床材用シートが提案される。
【0075】
本発明の別の態様によれば、前記合成樹脂層が、3層以上の層構造を有してなり、
前記3層以上の層構造の最上層と最下層とが、非晶性ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート共重合体とにより形成されてなり、
前記ポリエチレンテレフタレート共重合体が、エチレングリコールの一部を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換されたものである、上記の床材用シートが提案される。
【0076】
さらに、前記最上層と前記最下層とに挟まれる芯層が、非晶性ポリエチレンテレフタレートにより形成されてなるものである、上記の床材用シートが提案される。
【0077】
また、前記ポリエチレンテレフタレート共重合体が、前記非晶性ポリエチレンテレフタレートと前記ポリエチレンテレフタレート共重合体との総重量に対して20〜90重量%の量で含んでなる、上記の床材用シートが提案される。
【0078】
化粧層
本発明のシートの化粧層は、公知の化粧層と同様の構成にすれば良く、例えば、下記に説明する構成を好ましく採用することができる。また、必要に応じて、本発明の第1の態様で説明したのと同様の構成にしてもよい。
【0079】
接着層
接着剤層は、公知又は市販の接着剤の中から、絵柄層又は第二透明性樹脂層を構成する成分等に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂のほか、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0080】
この中でも、本発明では、耐熱性等をより高めることができるという点でウレタン系樹脂接着剤が好ましい。ウレタン系樹脂接着剤は、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とする2液硬化型ウレタン樹脂が挙げられる。
【0081】
上記ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものである。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が用いられる。
【0082】
また、上記イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環族)イソシアネートが用いられる。また、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体を用いることもできる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネートの3量体等が挙げられる。
【0083】
なお、必要に応じ、接着面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を施すこともできる。
【0084】
接着方法としては、用いる接着剤の種類等に応じて公知の方法に従って実施すれば良い。例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を用い、溶融押出(エクストルージョンコート法)で絵柄層上に塗工する方法、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂にイソシアネート、アミン等の架橋剤、メチルエチルケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、アザビスイソブチロニトリル等の重合開始剤、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリン等の重合促進剤等を必要により添加した接着剤を塗工し、ドライラミネートする方法を採用することができる。また、本発明では、熱圧着できる接着剤を使用し、熱圧着によって絵柄層と透明性樹脂層とを積層することもできる。
【0085】
なお、本発明では、必要に応じ、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を接着面に施すこともできる。
【0086】
接着剤層の厚さは、透明性保護層、使用する接着剤の種類等に応じて異なるが、通常は0.1〜30μm程度とすれば良い。
【0087】
プライマー層
プライマー層は、基材層又は透明性樹脂層の表面の接着性を高めるためのものである。これに用いる樹脂としてはエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース樹脂等を挙げることができ、これらの樹脂は単独ないし混合して塗料組成物、又は、インキ組成物とし、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて形成することができる。
【0088】
基材層
基材層は、薄紙,上質紙,クラフト紙,和紙,チタン紙,樹脂含浸紙,紙間強化紙等の紙、木質繊維,ガラス繊維,石綿,ポリエステル繊維,ビニロン繊維,レーヨン繊維等の繊維からなる織布や不織布、あるいは、ポリオレフィン,ポリエステル,ポリアクリル,ポリアミド,ポリウレタン,ポリスチレン等の合成樹脂製シートなどの1種ないし2種以上の積層体を用いることができ、その厚さとしては概ね20〜300μmが適当である。また、上記した化粧層に用いる前記化粧用基材は必要に応じて必要な層に顔料等を添加して着色してもよいし、必要な面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施しても良い。
【0089】
絵柄層
絵柄層は、柄インキ層及びベタインキ層から構成される。これらは、一般的にはグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等の周知の印刷法でインキを用いて形成することができる。柄インキ層としては、例えば木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様柄であり、ベタインキ層としては、隠蔽性を有する着色インキでベタ印刷したものである。この実施形態では、柄インキ層及びベタインキ層の両方が設けられるが、いずれか一方の構成であっても良い。
【0090】
絵柄層に用いるインキとしては、ビヒクルとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等を1種ないし2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることができる。本発明では、環境問題や被印刷面との接着性等を考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合したものである。なお、ワイピングインキについても、上記で説明した絵柄層に用いるインキと同じインキで形成することができる。
【0091】
透明樹脂層
透明性樹脂層は、透明性のものであれば限定されない。透明性樹脂層としては、例えば熱可塑性樹脂により形成されたものを好適に使用することができる。
具体的には、軟質、半硬質又は硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等を挙げることができる。これらの中でも、本発明では、特に第二透明性樹脂層として、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0092】
透明性樹脂層は、必要に応じて着色されていても良い.この場合は、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、前記の着色半透明層で挙げられた顔料又は染料を使用することができる。これらは、1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すれば良い。
【0093】
透明性樹脂層には、必要に応じて充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0094】
表面保護層
表面保護層は、床材用シートに要求される耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性、耐汚染性等の表面物性を付与するために設けられる。この表面保護層を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂ないし電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂を用いて形成するのが適当である。特に、表面硬度が硬く、生産性に優れるという点で電離放射線硬化型樹脂を用いることがより好ましい。
【0095】
熱硬化型樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0096】
上記樹脂には、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤を添加することができる。例えば、硬化剤としてはイソシアネート、有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加され、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加され、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂に添加される。
【0097】
上記熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、例えば上記した熱硬化型樹脂を溶液とし、この溶液をロールコート法、グラビアコート法等の周知の塗布法で塗布し、乾燥し、硬化させる方法が挙げられる。上記溶液の塗布量としては、固形分で概ね5〜30μmが適当であり、好ましくは15〜25μmとすれば良い。
【0098】
電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線を照射することにより架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂であれば限定されない。電離放射線は、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、例えば可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等があるが、特に紫外線、電子線等を用いることが望ましい。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190〜380nm程度の波長域を使用することができる。また、電子線源としては、例えばコッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。用いる電子線としては、一般には100〜1000keV程度、好ましくは100〜300keVのものを使用することができる。電子線の照射量は、通常2〜15Mrad程度とすれば良い。
【0099】
電離放射線硬化型樹脂は、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、又はエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマー又はポリマー(以下、これらを総称して化合物と呼称する)からなる。これら単量体、プレポリマー、及びポリマーは、単体で用いるか、複数種混合して用いることができる。なお、本明細書で(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートの意味で用いる。
【0100】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このプレポリマーは、通常、分子量が10000程度以下のものが用いられる。分子量が10000を超えると硬化した樹脂層の耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の表面物性が不足する。上記のアクリレートとメタアクリレートは共用し得るが、電離放射線での架橋硬化速度という点ではアクリレートの方が速い為、高速度、短時間で効率良く硬化させるという目的ではアクリレートの方が有利である。
【0101】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル化合物、スピロ化合物等のプレポリマーが挙げられる。
【0102】
ラジカル重含性不飽和基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N,N一ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N一ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N一ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N一ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N一ジペンジルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンテレフタレート等が挙げられる。
【0103】
また、ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9一ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。カチオン重合性官能基を有する単量体は、上記カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの単量体を用いることができる。
【0104】
上記の電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾィンメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等を単独又は混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、例えば芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独又は混合物として用いることができる。
【0105】
光重合開始剤の添加量は特に限定されないが、一般には電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部程度とすれば良い。
【0106】
電離放射線硬化型樹脂で保護層を形成する方法としては、例えば電離放射線硬化型樹脂を溶液とし、この溶液をグラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布すれば良い。この場合の溶液の塗布量としては、固形分として概ね5〜30μmとすれば良く、より好ましくは15〜25μmとすれば良い。
【0107】
また、電離放射線硬化型樹脂から形成された表面保護層11に、より一層耐擦傷性、耐摩耗性を付与する場合には、必要に応じて無機充填材を配合することができる。例えば、粉末状の酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムバイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化棚素、ダイアモンド、金剛砂、ガラス繊維等を挙げることができる。
【0108】
無機充填材の使用量は限定的ではないが、通常は電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して1〜80重量部程度とすれば良い。
【0109】
各層の積層方法
本発明によるシートの各層の積層方法は限定的でなく、接着剤等による接着、ラミネート等の各種の方法を採用できる。特に、合成樹脂層と化粧層とは、ウレタン系接着剤層及び/又はウレタン系プライマー層を介して積層されていることが望ましい。各層の積層は、通常の手順で実施すれば良い。例えば、図11を用いて説明すると、着色した基材層106の一方の面に絵柄層107を順に印刷により形成し、さらに前記絵柄層107上に2液硬化型ウレタン樹脂等の公知のドライラミネーション用接着剤で形成した接着剤層108を介して透明性樹脂層109を公知のドライラミネーション法、Tダイ押出し法等で積層し、透明性樹脂層109の全面にプライマー層110を設け、その上に表面保護層111を形成すれば良い。
【0110】
そして、必要に応じて表面保護層111側からエンボス加工を施すことにより凹凸模様を形成することができる。凹凸模様は、加熱プレスやヘアライン加工などにより形成することができる。前記凹凸模様としては、例えば導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
【0111】
床材用積層体
本発明よる床材用積層体は、本発明による床材用シートを木質基材に積層したものである。具体的には、図10に示すように、本発明シートの合成樹脂層側に木質材料が積層される。木質基材としては、特に限定されず、例えば杉、檜、樺、松、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材から作られた突板、木材単板、木材合板、パティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。
【0112】
床材への積層方法は限定的でなく、例えば接着剤により化粧シートを基材に貼着する方法等を採用することができる。接着剤は、基材の種類等に応じて公知の接着剤から適宜選択すれば良い。例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0113】
その他
本発明の第3の態様による床材用シートおよびそれを用いた床材用積層体は、上記した内容以外は本発明の第1の態様で説明したのと同様であってよい。
【0114】
本発明の第4の態様
本発明の第4の態様の具体的内容
本発明の第4の態様によれば、合成樹脂層及び化粧層からなる床材用積層体の当該合成樹脂層側に木質材料が積層されてなる床材であって、少なくとも当該合成樹脂層が、2以上の独立した区画に区分されていることを特徴とする床材用積層体が提案される。
【0115】
上記の床材用積層体にあって、化粧層側から木質材料に達する溝を設けることにより当該合成樹脂層及び化粧層が2以上の独立した区画に区分されているものが提案される。上記の床材用積層体にあって、合成樹脂層の厚みが200μm以上であるものが提案される。
【0116】
また、(1)当該合成樹脂層が、単層又は2層以上の層構造を有し、(2)a)単層の場合は当該単層又はb)2層以上の場合は当該合成樹脂層のうち少なくとも最上層が、A−PETとPETG又はPENとを含む混合層である、上記の床材用積層体が提案される。上記の床材用積層体にあって、(1)当該合成樹脂層が、3層以上の層構造を有し、(2)少なくとも最上層及び最下層が、A−PETとPETG又はPENとを含む混合層であるものが提案される。
【0117】
上記の床材用積層体であって、当該合成樹脂層が、3層からなる層構造を有し、(2)最上層及び最下層が、A−PETとPETG又はPENとを含む混合層であり、かつ、芯層が、A−PETからなる層であるものが提案される。
【0118】
さらに、上記の床材用積層体であって、合成樹脂層及び化粧層が、ウレタン系接着剤層及び/又はウレタン系プライマー層を介して積層されているものが提案される。
【0119】
最後に、上記の床材用積層体であって、混合層が実質的にA−PETとPETG又はPENとの2成分系からなり、両者の合計100重量%中PETG又はPENが20〜80重量%が含まれるものが提案される。
【0120】
本発明の第4の態様の内容
層構成
本発明による床材用シートは、合成樹脂層が2以上の独立した区画に区分されている。換言すれば、合成樹脂層は、複数の合成樹脂製区画片(以下、単に「区画片」という。)から構成されている。本発明による床材用シートの一態様を図12により説明する。図12は、本発明による床材用シートの合成樹脂層の配置例(平面図)を示す。合成樹脂層201は、3つの区画片202、203及び204から構成されている。区画片同士は、互いに接触していても良いが、特に区画片間は一定の間隙205があることが望ましい。この場合の間隙の厚さ(区画片間の距離)は2mm以下、好ましくは1mm以下の範囲で適宜設定することができる。間隙を設けることによって、より大きな膨張差を吸収することができる。
【0121】
図12では、3つの区画片に区分されているが、2つの区画片、3つ以上の区画片等のいずれであっても良い。この区分は図12のように縦縞状に区分するほか、格子状、横縞状等のいずれの態様であっても良い。
【0122】
区画片の合成樹脂層の形成
区画片による合成樹脂層を形成する方法は特に限定されない。例えば、予め用意した複数の区画片を木質材料(基材)又は化粧シートの化粧層に積層する方法、通常の方法により合成樹脂層を化粧層全面に積層した後、合成樹脂層が区画片ごとに区分されるように合成樹脂層を切断する方法等が挙げられる。その様な区画片を形成する一態様を図13を用いて説明する。図13は本発明による床材用積層体の断面図を示すものである。図13に示すように、通常の方法により合成樹脂層201の上に化粧層210を全面に積層して床材用シート211を作製し、これと木質基材212とを積層して床材用積層体213を構成した後、合成樹脂層が独立した区画片ごとに区分されるように、合成樹脂層に達する溝214を化粧層側から入れる方法を好ましく採用することができる。化粧層側から溝を入れる場合には、合成樹脂層と同様に化粧層も複数の区画片に区分される。溝を入れる方法自体は、公知の方法に従えば良く、例えばテノーナー等の公知の装置により加工すれば良い。溝を入れる場合、その断面の限定的でなく、V字状、凹状(正方形、長方形)等のいずれであっても良い。さらに、溝を形成した場合、木質材料の一部が露出するので、その露出部を保護するために必要な処理(防水処理、撥水処理等)を施しても良い。
【0123】
化粧層
本発明による化粧層は、例えば図14に示す本発明による床材用シート(床材用積層体)の具体的な層構成により理解される。図14によれば、本発明による床材用シートは、合成樹脂層223上に接着剤層224、プライマー層225、基材層226、ベタインキ層227、柄インキ層228、接着剤層229、透明性樹脂層230、プライマー層及び表面保護層(透明性保護層)231が順に積層された構造を有する。表面保護層側からエンボス加工が施され、凹状のエンボス部232が付されている。一方、合成樹脂層の裏面には、木質基材221が接着剤層222を介して積層されている。そして、この床材用積層体は、化粧層側より木質基材221に達し、木質材料中にその先端がある溝220が設けられ、これによって合成樹脂層が独立した区画片ごとに区分されている。
【0124】
合成樹脂層
合成樹脂層は以下の点以外、本発明の第3の態様において説明したのと同様であってよい。
【0125】
混合層中におけるA−PET及びPETGの含有量は、各成分のグレード、本発明シートの使用条件等に応じて適宜設定することができる。本発明シートでは、上記2成分系において、A−PET及びPETGの合計100重量%中PETGが20〜80重量%とすることが望ましい。
【0126】
本発明シートの合成樹脂層の厚み(2層以上の場合は合計の厚み)は限定的ではないが、耐キャスター性、耐擦傷性等を考慮すれば、200μm以上、好ましくは200〜500μm程度とすれば良い。2層以上の場合の各層の厚みは、各層の成分等に応じて適宜決定することができる。
【0127】
区画片の塗布
本発明の好ましい態様によれば、記合成樹脂層を2以上の独立した区画に区分することにより露出した前記区分箇所と、前記合成樹脂層と前記化粧層とをそれぞれ2以上の独立した区画に区分することにより露出したそれぞれの前記区分箇所とを、アクリルウレタン系樹脂を含んでなる水性組成物により塗布してなる、床材用シートまたは床材用積層体が提案される。これにより、木質基材の保護が十分に行われる。
【0128】
水性塗料
水性塗料は、樹脂成分としてアクリルウレタン系樹脂を含む。アクリルウレタン系樹脂としては、特に限定されず、公知のもの又は市販品を使用することもできる。例えば、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応生成物、官能基を有するアクリル樹脂と官能基を有するウレタン樹脂とを架橋させることにより複合化したもの等を挙げることができる。
【0129】
アクリルウレタン系樹脂が、ケト基含有アクリル樹脂とヒドラジド基含有ウレタン樹脂とを混合して得られたものであるが好まし。より優れた耐水性、耐薬品性、耐擦傷性等とともに合成樹脂層(とりわけオレフィン系樹脂)との高い密着性が得られるという利点を有するからである。
【0130】
アクリル樹脂とウレタン樹脂とがケト基及びヒドラジド基により架橋し、アクリル樹脂及びウレタン樹脂が複合化される。そして、この複合化された樹脂が水性中において水性エマルション(ウレタン/アクリル複合エマルジョン)の形態をなし、本発明では好ましい態様となる。この水性エマルジョンは、この樹脂の粒子が、粒子内部にアクリル樹脂成分、粒子外部にウレタン樹脂成分が存在する複合粒子として分散する。このような複合エマルジョンとしては、市販品を使用することもできる。例えば、製品名「ポンコートCG−5000」(大日本インキ化学工業製)等が好適には挙げられる。
【0131】
ウレタン/アクリル複合エマルジョン中のアクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分との割合は限定的ではないが、両者の合計100重量%中ウレタン樹脂成分が20〜40重量%とすることが好ましい。かかる範囲に設定することによって、合成樹脂層との接着性をより高めることができる。
【0132】
水性塗料中におけるアクリルウレタン系樹脂の含有量は、樹脂の種類等に応じて適宜設定することができるが、5〜60重量%程度、特に20〜40重量%とすることが望ましい。
【0133】
本発明では、アクリルウレタン樹脂に対して硬化剤を使用することが好ましく、その使用により架橋度を高めることができる。硬化剤の具体例としては、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、メラミン系硬化剤、アジリジン系硬化剤等が挙げられる。本発明では、特に低温架橋性能、耐候性、耐水性等をより高めることができるこという見地より、イソシアネート系硬化剤を用いることが好ましい。硬化剤の含有量は、使用する硬化剤の種類等にもよるが、通常はアクリルウレタン系樹脂100重量部に対して20〜70重量部程度とすれば良い。
【0134】
水性塗料は、シリコンを含有させることが望ましい。シリコンの添加によって、より優れた消泡効果、擾水効果等を得ることができる。シリコンの添加量は、本発明塗料中0.5〜5重量%として良い。
【0135】
本発明の水性塗料では、公知の水性塗料に含まれている添加剤を配合することもできる。例えば、着色材(顔料、染料)、粘度調整剤、その他のものを使用することができる。
【0136】
水性塗料における溶媒としては主として水を用いるが、必要に応じて水溶性有機溶剤を併用することもできる。例えば、イソプロピルアルコール等のアルコール類のほか、グリコール類、グリコールエーテル類等も使用することができる。
【0137】
本発明塗料の固形分含有量は、通常は5〜80重量%の範囲内において、用いる成分の種類等に応じて適宜決定すれば良い。本発明塗料は、溶液、エマルジョン等のいずれの形態であっても良いが、特にエマルジョンの形態であることが望ましい。
【0138】
その他の層構成
床材用シートの合成樹脂層以外については本発明の第3の態様で説明したのと同様であってよい。
【実施例】
【0139】
実施例A
本発明の内容を下記実施例Aにより説明する。
床材用積層体の調製
下記の層構成からなる床材用積層体を調製した。
実施例A1
化粧シートとA−PET(0.4mm厚)層とラワン合板(12mm厚)
実施例A2
化粧シートと2軸延伸PET(0.25mm厚)とワラン合板(12mm厚)
例A1
突板とラワン合板(一般カラーフロア)
例A2
突板+MDF(3mm厚)とラワン合板(9mm厚)(耐キャスター性付与カラーフロア)
例A3
化粧シートとラワン合板(12mm厚)
例A4
化粧シートとA−PET(0.2mm厚)とラワン合板(12mm厚)
上記調製例において、化粧シートとは、図3の構成である化粧層、
A−PETは非晶性ポリエチレンテレフタレート、
2軸延伸PETは2軸延伸ポリエチレンテレフタレート、
突板は無垢の自然木材を薄くスライスした単板を意味する。
【0140】
評価試験
下記の評価試験を行い、その結果を下記表Aに記載した。
試験A1:耐キャスター試験
上記で調製した実施例A1〜例A4の床材用積層体を下記耐キャスター試験装置に設置し、下記条件に従って試験を行った。試験後、床材用積層体を目視し、その表目の割れ目の有無を判断した。また、床材用積層体の凹部の深さをデプスメータで測定した。
【0141】
耐キャスター試験装置
耐キャスター試験装置L6−04(浅野機械製作株式会社)を使用した。この装置の仕様は下記の通りである。
試料固定台:Φ80cm、厚み8mmのアクリル製
3個のキャスター:ハンマーキャスター製420SA−N75(Φ75mmx25mm、車輪ナイロン製)
キャスター固定台の回転速度:0〜60rpm(変速モータ駆動式)
荷重部:40〜210kgに調節可能
調節ハンドル:ウェイト台のハンドルを廻すことによりキャスターが上下する
回転方向反転間隔:1〜12分(タイマーにより設定可能)
プリセットカウンター:回転数の設定及び累積回転数を表示
デジタルタコメーター:キャスター回転速度を表示
試料大きさ:30cm×30cm
【0142】
試験条件
上記耐キャスター試験装置において、試験対象である床材用積層体を試料固定台に固定した。この床材積層体の表面に3個のキャスターが接しないように調節ハンドルによりキャスター固定台を上げた後に、重さ70kgとなるように荷重台に重りを載せた。
回転速度20rpmの速度、5分間毎に反回転、1000回転とセットし、調節ハンドルを回してキャスター固定台を試験対象である床材用積層体の表面上に降ろした。
キャスター固定台の回転駆動装置の始動スイッチを入れ試験を開始した。試験終了後、調整ハンドルを回してキャスター固定台を浮かせて試験対象である床材用積層体を取り出し評価した。
【0143】
試験A2:耐デュポン衝撃試験
上記で調製した実施例A1〜例A4の床材用積層体をJIS K5600デュポン衝撃試験に準拠して試験した。具体的には、r=6.3mmの打ち型を上記床材用積層体の表面に置き、500gの重りを300mmの高さから先の打ち型の上に落下させた。試験後、床材用積層体を目視し、その表目の割れ目の有無を判断した。また、床材用積層体の凹部の深さをデプスメータで測定した。
表A
評価試験/試料 実施例A1 実施例A2 例A1 例A2 例A3 例A4
評価試験A1
表面の割れ目の有無 無 無 無 無 無 無
凹の深さ(μm) 70 60 160 60 150 190
評価試験A2
表面の割れ目の有無 無 無 有 有 有 有
凹の深さ(μm) 260 300 800 270 580 390
【0144】
実施例B
本発明の第1の態様について下記の実施例Bを用いて説明する。
床材用積層体の調製
表層材Bの調整
両面コロナ放電処理した60μ厚さの着色ポリプロピレンフィルムの一方の面に2μm厚さのウレタン系プライマー層を設けると共に他方の面に2液硬化型ウレタン系印刷インキで木目模様の印刷層を形成した。次に、前記印刷層上にウレタン系接着剤を介して透明なプロピレン系樹脂をTダイ押出機で厚さが80μmとなるように押出して中間積層体を作製した。その後、前記中間積層体の前記透明なプロピレン系樹脂面に2μm厚さのウレタン系プライマー層を形成し、該ウレタン系プライマー層上に電離放射線硬化型樹脂をグラビアリバースコート法で乾燥後に15μm厚さとなるように塗布・乾燥して未硬化の電子放射線硬化型樹脂層を形成し、該未硬化の電子放射線硬化型樹脂層に酸素濃度200PPM以下の環境下で電子線(加速電圧175KeV、照射量5Mrad)を照射して硬化させて電子放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を形成すると共に、該表面保護層側から版深50μmの木目導管状エンボス版でエンボス加工を施して木目導管状凹凸模様を形成した化粧シートを作製して表層材Bとした。
【0145】
次に、試験に供する床材用積層体を下記するような合成樹脂層に用いる樹脂種と厚さを変えたもので24種類用意し、前記表層材Bと貼り合せることにより試験体B1〜24を得た。
【0146】
試験体B1
前記表層材Bの前記着色ポリプロピレンフィルムの一方の面に設けた2μm厚さのウレタン系プライマー層面にウレタン系接着剤を介して300μm厚さのエステル系樹脂(三菱化学製:NOVAPEX GM700)層を設けると共に該エステル系樹脂層面にウレタン系接着剤を介して12mm厚さのラワン合板を貼合し、さらに前記表面保護層面に木目模様の流れ方向と平行に75mmピッチで巾3.0mm、深さ0.3mmのV溝を切削加工により形成して試験に供する床材用積層体を作製した。
【0147】
試験体B2−0
試験体B1のエステル系樹脂層を400μm厚とした以外は試験体B1と同じである。
【0148】
試験体B3
試験体B1のエステル系樹脂層を188μm厚の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製:A4300)とした以外は試験体B1と同じである。
【0149】
試験体B4
試験体B1のエステル系樹脂層を125μm厚の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製:A4300)とした以外は試験体B1と同じである。
【0150】
試験体B5
試験体B1のエステル系樹脂層を100μm厚の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製:A4300)とした以外は試験体B1と同じである。
【0151】
試験体B6
試験体B1のエステル系樹脂層を75μm厚の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製:A4300)とした以外は試験体B1と同じである。
【0152】
試験体B7
試験体B1のエステル系樹脂層を50μm厚の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製:A4300)とした以外は試験体B1と同じである。
【0153】
試験体B8
試験体B1のエステル系樹脂層を400μm厚の非晶性ポリエステル(イーストマンケミカルカンパニー製:EasterPETG6763)とした以外は試験体B1と同じである。
【0154】
試験体B9
試験体B1のエステル系樹脂層を300μm厚の非晶性ポリエステル(イーストマンケミカルカンパニー製:EasterPETG6763)とした以外は試験体B1と同じである。
【0155】
試験体B10
試験体B1のエステル系樹脂層を300μm厚のABS(テクノポリマー製:TECNO ABS810)とした以外は試験体B1と同じである。
【0156】
試験体B11
試験体B1のエステル系樹脂層を200μm厚のABS(テクノポリマー製:TECNO ABS810)とした以外は試験体B1と同じである。
試験体B12
試験体B1のエステル系樹脂層を100μm厚のABS(テクノポリマー製:TECNO ABS810)とした以外は試験体B1と同じである。
試験体B13
試験体B1のエステル系樹脂層を160μm厚のポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス製:ユーピロンS2000)とした以外は試験体B1と同じである。
【0157】
試験体B14
試験体B1のエステル系樹脂層を135μm厚のポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス製:ユーピロンS2000)とした以外は試験体B1と同じである。
【0158】
試験体B15
試験体B1のエステル系樹脂層を85μm厚のポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス製:ユーピロンS2000)とした以外は試験体B1と同じである。
【0159】
試験体B16
試験体B1のエステル系樹脂層を330μm厚のポリプロピレン(日本ポリケム製:ノバテックPPFY3)とした以外は試験体B1と同じである。
【0160】
試験体B17
試験体B1のエステル系樹脂層を200μm厚のポリプロピレン(日本ポリケム製:ノバテックPPFY3)とした以外は試験体B1と同じである。
【0161】
試験体B18
試験体B1のエステル系樹脂層を350μm厚のポリプロピレン(日本ポリケム製:TX1950)とした以外は試験体B1と同じである。
【0162】
試験体B19
試験体B1のエステル系樹脂層を60μm厚のポリプロピレン(日本ポリケム製:TX1950)とした以外は試験体B1と同じである。
【0163】
試験体B20
試験体B1のエステル系樹脂層を380μm厚のポリプロピレン(出光石油化学製:F3900)とした以外は試験体B1と同じである。
【0164】
試験体B21
試験体B1のエステル系樹脂層を200μm厚のポリプロピレン(出光石油化学製:F3900)とした以外は試験体B1と同じである。
【0165】
試験体B22
試験体B1のエステル系樹脂層を60μm厚のポリプロピレン(出光石油化学製:F3900)とした以外は試験体B1と同じである。
試験体B23
試験体B1のエステル系樹脂層を330μm厚のポリスチレン(A&Mポリスチレン製:HF77)とした以外は試験体B1と同じである。
【0166】
試験体B24
試験体B1のエステル系樹脂層を60μm厚のポリスチレン(A&Mポリスチレン製:HF77)とした以外は試験体B1と同じである。
【0167】
評価試験B
試験B1:耐デュポン衝撃試験
調整した24種類の試験体について、表層材B側からデュポン式衝撃試験を行い、その時の各試験体の凹み深さ(単位:μm)を測定し、凹み深さと合成樹脂層の物性の関係を調査した。デュポン式衝撃試験は評価試験A1と同様にして行った。
その結果、各試験体Bの凹み深さと降伏点荷重との間に図6に示す関係を見出した。
すなわち、凹みが目立ち難い凹み深さは450μm以下であり、このときの合成樹脂層はその降伏点荷重が9kgf以上の樹脂種と厚さのものであった。
図7に示す降伏点荷重と引張り弾性率の関係を示す図表より引張り弾性率が50kgf/mm以上のものであった。
【0168】
図8に示す降伏点荷重と降伏伸び率の関係を示す図表より降伏伸び率が3〜8%のものであることを見出すと共に、さらに、凹みが目立ち難くて化粧層の割れ難いより好ましいものとしては、降伏点荷重が12kgf以上であって、降伏伸び率が3〜5%の樹脂種と厚さからなる合成樹脂層であることを見出して本発明を完成させたものである。なお、図6〜8に記載した数字は試験体Bナンバーである。なお、図中の●印は床材用積層体として最も好適なものを示し、▲印は床材用積層体として実用上問題のないものを示し、×印は床材用積層体として使用に不向きなものを示す。
【0169】
試験体B2−1〜B2−6の調整
合成樹脂層として上記試験を行った中で結果が良好であった試験体B2−0に用いた400μm厚さのエステル系樹脂(三菱化学製:NOVAPEX GM700)層に絞り、化粧層としての表層材Bを他の表層材に代えて別途6種類の表層材を前記樹脂層とそれぞれ貼り合わせることにより試験体B2−1〜2−6を得た。
【0170】
試験体B2−1
両面コロナ放電処理した80μ厚さの着色ポリプロピレンフィルムの一方の面に2μm厚さのウレタン系プライマー層を設けると共に他方の面に2液硬化型ウレタン系印刷インキで木目模様の印刷層を形成した。その後に、前記ウレタン系プライマー層上に電離放射線硬化型樹脂をグラビアリバースコート法で乾燥後に15μm厚さとなるように塗布・乾燥して未硬化の電子放射線硬化型樹脂層を形成し、該未硬化の電子放射線硬化型樹脂層に酸素濃度200PPM以下の環境下で電子線(加速電圧175KeV、照射量5Mrad)を照射して硬化させて電子放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を形成すると共に、該表面保護層側から版深50μmの木目導管状エンボス版でエンボス加工を施して木目導管状凹凸模様を形成した表層材を作製し、該表層材の印刷層面にウレタン系接着剤を介して400μm厚さのエステル系樹脂(三菱化学製:NOVAPEX GM700)層を設けると共に該エステル系樹脂層面に水溶性ウレタンエマルジョン接着剤(中央理化工業製BA−10L)を介して12mm厚さのラワン合板を貼合し、さらに前記表面保護層面に木目模様の流れ方向と平行に75mmピッチで巾3.0mm、
深さ0.3mmのV溝を切削加工により形成して試験に供する床材用積層体を作製した。
【0171】
試験体B2−2
一般薄葉紙(30g/m)の一方の面にウレタン系インキにて着色ベタ柄層、絵柄印刷層、ウレタン系プライマー層を順に形成した表層材を作製し、該表層材の非印刷面にウレタン系接着剤を介して400μm厚さのエステル系樹脂(三菱化学製:NOVAPEX GM700)層を設けると共に該エステル系樹脂層面に水溶性ウレタンエマルジョン接着剤(中央理化工業製BA−10L)を介して12mm厚さのラワン合板を貼合し、さらに前記ウレタン系プライマー層面に木目模様の流れ方向と平行に75mmピッチで巾3.0mm、深さ0.3mmのV溝を切削加工により形成し、その後に切削加工を施した面全面にポリメディックSKS−087(2)〔大日本インキ化学工業(株)製〕を乾燥後に2.0g/900cmとなるように塗布すると共に紫外線を照射して硬化させて下塗り層を形成し、該下塗り層上にポリメディックSKS−327Y〔大日本インキ化学工業(株)製〕を乾燥後に2.5g/900cmとなるように塗布すると共に紫外線を照射して硬化させて中塗り層を形成し、次に前記中塗り層面をワイドサンダー(#400)で研磨し、この研磨した面にポリメディックSK164−40A〔大日本インキ化学工業(株)製〕を乾燥後に1.2g/900cm2となるように塗布すると共に紫外線を照射して硬化させて上塗り層を形成して試験に供する床材用積層体を作製した。
【0172】
試験体B2−3
表層材Bの着色ポリプロピレンフィルムの厚さを100μmとし、透明なプロピレン系樹脂の押出し膜厚を100μmとした以外は表層材Bと同様の表層材を作製し、該表層材の前記着色ポリプロピレンフィルムの一方の面に設けた2μm厚さのウレタン系プライマー層面にウレタン系接着剤を介して400μm厚さのエステル系樹脂(三菱化学製:NOVAPEX GM700)層を設けると共に該エステル系樹脂層面に水溶性ウレタンエマルジョン接着剤(中央理化工業製BA−10L)を介して12mm厚さのラワン合板を貼合し、さらに前記表面保護層面に木目模様の流れ方向と平行に75mmピッチで巾3.0mm、深さ0.3mmのV溝を切削加工により形成して試験に供する床材用積層体を作製した。
【0173】
試験体B2−4
表層材Bの着色ポリプロピレンフィルムの厚さを150μmとし、透明なプロピレン系樹脂の押出し膜厚を150μmとした以外は表層材Bと同様の表層材を作製し、該表層材の前記着色ポリプロピレンフィルムの一方の面に設けた2μm厚さのウレタン系プライマー層面にウレタン系接着剤を介して400μm厚さのエステル系樹脂(三菱化学製:NOVAPEX GM700)層を設けると共に該エステル系樹脂層面に水溶性ウレタンエマルジョン接着剤(中央理化工業製BA−10L)を介して12mm厚さのラワン合板を貼合し、さらに前記表面保護層面に木目模様の流れ方向と平行に75mmピッチで巾3.0mm、深さ0.3mmのV溝を切削加工により形成して試験に供する床材用積層体を作製した。
【0174】
試験体B2−5
0.2mm厚さの突板に塗布量5g/mの水溶性ウレタンエマルジョン接着剤(中央理化工業製BA−10L)を介して400μm厚のエステル系樹脂(三菱化学製:NOVAPEX GM700)層を設けると共に該エステル系樹脂層面に水溶性ウレタンエマルジョン接着剤(中央理化工業製BA−10L)を介して12mm厚さのラワン合板を貼合し、さらに木目模様の流れ方向と平行に75mmピッチで巾3.0mm、深さ0.3mmのV溝を切削加工により形成した後、前記突板表面にポリメディックSKS−088〔大日本インキ化学工業(株)製〕を乾燥後に0.4g/900cmとなるように塗布すると共に紫外線を照射して硬化させて目止め層を形成し、次に該目止め層上にミラゾールカラー〔大日本インキ化学工業(株)製〕を乾燥後に1.3g/900cmとなるように塗布すると共に紫外線を照射して硬化させて着色層を形成し、該着色層上にポリメディックSKS−087(2)〔大日本インキ化学工業(株)製〕を乾燥後に2.0g/900cmとなるように塗布すると共に紫外線を照射して硬化させて下塗り層を形成し、該下塗り層上にポリメディックSKS一327Y〔大日本インキ化学工業(株)製〕を乾燥後に2.5g/900cmとなるように塗布すると共に紫外線を照射して硬化させて中塗り層を形成し、次に前記中塗り層面をワイドサンダー(#400)で研磨し、この研磨した面にポリメディックSK164−40A〔大目本インキ化学工業(株)製〕を乾燥後に1.29/900cmとなるように塗布すると共に紫外線を照射して硬化させて上塗り層を形成して試験に供する床材用積層体を作製した。
【0175】
試験体B2−6
0.2mm厚さの突板に塗布量5g/mの水溶性ウレタンエマルジョン接着剤(中央理化工業製BA−10L)を介して400μm厚のエステル系樹脂(三菱化学製:NOVAPEX GM700)層を設けると共に該エステル系樹脂層面に水溶性ウレタンエマルジョン接着剤(中央理化工業製BA−10L)を介して12mm厚さのラワン合板を貼合し、さらに木目模様の流れ方向と平行に75mmピッチで巾3.0mm、深さ0.3mmのV溝を切削加工により形成した後、前記突板表面に別途用意した、両面コロナ放電処理した80μ厚さの透明ポリプロピレンフィルムの一方の面に2μm厚さのウレタン系プライマー層を設けると共に他方の面に2液硬化型ウレタン系印刷インキで木目模様の印刷層を形成して後に、前記ウレタン系プライマー層上に電離放射線硬化型樹脂をグラビアリバースコート法で乾燥後に15μm厚さとなるように塗布・乾燥して未硬化の電子放射線硬化型樹脂層を形成し、該未硬化の電子放射線硬化型樹脂層に酸素濃度200PPM以下の環境下で電子線(加速電圧175KeV、照射量5Mrad)を照射して硬化させて電子放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を形成すると共に、該表面保護層側から版深50μmの木目導管状ニンボス版でエンボス加工を施して木目導管状凹凸模様を形成したシートを該シートの印刷層が前記突板側に位置するようにウレタン系接着剤を介して貼合して試験に供する床材用積層体を作製した。
【0176】
上記で作製した6種類の試験体B2−1〜2−6について、化粧層側からからデュポン式衝撃試験(重り:500g、落下高さ:300mm、打ち径R:6.3mm)を行い、その時の各試験体Bの凹み深さ(単位:μm)を測定すると共に化粧層の割れを目視で評価し、その結果を表Bに纏めて示すと共に図6にプロットした。
【0177】
表B
試験体B 凹み深さ(μm) 化粧層の割れ
2−1 303 なし
2−2 331 なし
2−3 278 なし
2−4 294 なし
2−5 302 なし
2−6 270 なし
【0178】
実施例C
本発明の第2の態様について、下記実施例Cを用いて説明する。
化粧シートの調整
両面コロナ放電処理した60μ厚さの着色ポリプロピレンフィルムの一方の面に2μm厚さのウレタン系プライマー層を設けると共に他方の面に2液硬化型ウレタン系印刷インキで木目模様の印刷層を形成した。次に、前記印刷層上にウレタン系接着剤を介して透明なプロピレン系樹脂をTダイ押出機で厚さが80μmとなるように押出して中間積層体を作製した。その後、前記中間積層体の前記透明なプロピレン系樹脂面に2μm厚さのウレタン系プライマー層を形成し、該ウレタン系プライマー層上に電離放射線硬化型樹脂をグラビアリバースコート法で乾燥後に15μm厚さとなるように塗布・乾燥して未硬化の電子放射線硬化型樹脂層を形成し、該未硬化の電子放射線硬化型樹脂層に酸素濃度200PPM以下の環境下で電子線(加速電圧175KeV、照射量5Mrad)を照射して硬化させて電子放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を形成すると共に、該表面保護層側から版深50μmの木目導管状エンボス版でエンボス加工を施して木目導管状凹凸模様を形成した化粧シートを作製した。
【0179】
床材用積層体の調整
実施例C1
非晶性ポリエチレンテレフタレート(以下、非晶性PETと呼称する)を芯層とし、該芯層の両面に非晶性PET/ポリアリレート=50/50(質量部)の混合樹脂を厚み比が1/8/1となるようにTダイ押出機で共押出して0.4mm厚さの合成樹脂層に供する合成樹脂製シートを作製した。次に、前記合成樹脂製シートと上記で作製した化粧シートをポリエステルウレタン系接着剤に用いてドライラミネーション法で積層して積層体を作製し、該積層体の前記合成樹脂製シート面と12mm厚さのラワン合板とを水溶性ウレタン系エマルジョン接着剤を介して積層して本発明の床材用積層体を作製した。
【0180】
実施例C2
非晶性PETの両面に非晶性PET/ポリエチレンナフタレート=60/40(質量部)の混合樹脂を厚み比が1/14/1となるようにTダイ押出機で共押出して0.4mm厚さの合成樹脂製シートを用いた以外は実施例1と同様にして本発明の床材用積層体を作製した。
【0181】
実施例C3
0.4mm厚さのポリブチレンテレフタレートの合成樹脂製シートを用いた以外は実施例1と同様にして本発明の床材用積層体を作製した。
【0182】
例C1
0.4mm厚さの非晶性PETの合成樹脂製シートを用いた以外は実施例1と同様にして比較例とする床材用積層体を作製した。
【0183】
例C2
上記で作製した化粧シートを該化粧シートの表面保護層が表出するように12mm厚さのラワン合板と水溶性ウレタン系エマルジョン接着剤を介して積層して比較例とする床材用積層体を作製した。
【0184】
評価試験C
下記評価試験を行い、その結果を表Cに記載した。
試験C1:耐目痩せ現象評価
実施例1〜比較例2の床材用積層体について、(A)60℃と(B)80℃の恒温槽中に24時間保管して、化粧層表面の目痩せ現象の有無を目視評価した。
【0185】
評価基準は下記の通りである。
評価A:目痩せ現象無し
評価B:若干の目痩せ現象が有る
評価C:目痩せ現象有り
【0186】
試験C2:耐キャスター性およびデュポン耐衝撃性試験
実施例1〜比較例2の床材用積層体について、耐キャスター試験および耐衝撃性試験を行った。試験方法は実施例Aに記載されたのと同様にして行った。両試験の評価は床材用積層体の凹深さ(μm)を測定した。
【0187】
試験C3:物性測定試験
実施例1〜比較例2の床材用積層体に用いた合成樹脂製シートないし化粧シートの各種物性値、具体的には針入温度(単位:℃)、降伏点荷重(単位:kgf)、引張り弾性率(単位:kgf/mm)、降伏伸び率(単位:%)を測定した。
【0188】
表C
試験/ 実施例C1 実施例C2 実施例C3 例C1 例C2
試験C1
保管条件
(A) A A A B C
(B) A A A C C
試験C2
耐キャスター性 90 80 90 110 220
耐衝撃性 270 220 210 250 560
試験C3
針入温度 90 100 210 70 測定不能
降伏点荷重 24 24 22 23 3.5
引張り弾性率 160 160 156 160 93
降伏伸び率 4.8 5.0 5.5 5.0 10
【0189】
実施例D
本発明の第3の態様について、下記の実施例Dを用いて説明する。
実施例D1
(1)化粧層の作製
両面コロナ放電処理した60μ厚さの着色ポリプロピレンフィルム(基材)の一方の面に2μm厚さのウレタン系プライマー層を設け、他方の面に2液硬化型ウレタン系印刷インキで木目模様の絵柄層を形成した。次に、絵柄層上にウレタン系接着剤層を介してプロピレン系樹脂からなる透明性樹脂層をTダイ押出機により厚さが80μmとなるように押出して中聞積層体を作製した、その後、前記中間積層体の透明性樹脂層面に2μm厚さのウレタン系プライマー層を形成し、該ウレタン系プライマー層上に電離放射線硬化型樹脂をグラビアリバースコート法で乾燥後に15μm厚さとなるように塗布・乾燥して未硬化の電子放射線硬化型樹脂層を形成し、該未硬化の電子放射線硬化型樹脂層に酸素濃度200ppm以下の環境下で電子線(加速電圧175KeV、照射量5Mrad)を照射して硬化させて電子放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を形成した。次いで、表面保護層側から版深50μmの木目導管状エンボス版でエンボス加工を施して木目導管状凹凸模様を形成した化粧シート(化粧層)を作製した。
【0190】
(2)合成樹脂層の作製
非晶性ポリエチレンテレフタレート(以下、非晶性PETと呼称する)を芯層とし、該芯層の両面に非晶性PET/PETG=60/40の混合層によって挟んだ構造(混合層/芯層/混合層の厚み比=1/8/1)となるようにTダイ押出機で共押出して0.4mm厚さの合成樹脂シート(合成樹脂層)を作製した。
【0191】
(3)合成樹脂層と化粧層の積層
前記(1)の化粧シートの裏面(ウレタン系プライマー層)にウレタン系接着剤を用いてドライラミネーション法で積層することにより、床材用化粧シートを得た。
【0192】
(4)床材の作製
前記(3)で得られたシートを用い、このシートの合成樹脂シート面とラワン合板(厚み12mm)とを水溶性ウレタン系エマルジョン接着剤を介して積層して本発明の床材を作製した。
【0193】
例D1
合成樹脂層としてA−PET単層としたほかは、実施例1と同様にして化粧シート及び床材を作製した。
【0194】
例D2
合成樹脂層としてPETG単層としたほかは、実施例1と同様にして化粧シート及び床材を作製した。
【0195】
評価試験D
上記で作成した実施例E1〜例2の構成をもつ化粧シートについて、合成樹脂層と化粧層との問での剥離強度を調べた。試験方法は、以下の手順に従って行い、その結果を表Eに示した。
(1)前処理
各合成樹脂層を−10℃、8℃、25℃、40℃、60℃、70℃及び80℃の条件下に静置し、48時間又は7日間経過したものを常温環境下に移動させる。
(2)化粧層との積層
化粧層の一方の面に厚さ2μmのウレタン系プライマー層を形成した後、さらにウレタン系接着剤を用い、各合成樹脂層とドライラミネート法(70℃)により積層する。ドライラミネート後、常温下で5日間養生したものを試験体とする。
(3)剥離試験
各試験体を剥離試験機(製品名「RTC1210−A」オリエンテック製)により合成樹脂層と化粧層とを剥離させ、その剥離強度を測定した。
【0196】
表D
温度(℃) 実施例D1 例D1 例D2
48時問
−10 67.0 55.7 58.3
8 64.3 63.0 58.1
25 72.2 68.1 61.7
40 64.4 57.0★ 55.2
60 65.2 63.9★ 57.0
70 65.9 41.9★ 57.7
7日間
−10 70.0 65.1 55.8
8 71.5 55.1 62.6
25 72.2 68.1 61.7
40 69.0 63.8★ 64.5
60 69.6 61.3★ 59.0
70 68.2 24.8★ 60.6
単位はN/25m皿幅
(★)は、層間剥離が認められたものを意味する。
【0197】
実施例E1
本発明の第4の態様について、下記の実施例Eを用いて説明する。
化粧シートの調製
両面コロナ放電処理した60μ厚さの着色ポリプロピレンフィルムの一方の面にウレタンセルロース系樹脂(ウレタン及び硝化綿の混合物100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加したもの)をグラビア塗工法により固形分2g/mとなるように塗工し、裏面プライマー層を形成した。他方の面にはアクリルウレタン系樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加したもの)をグラビア塗工法により固形分2g/mとなるように塗工し、印刷用プライマー層を形成した。
次いで、アクリルウレタン系樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加したもの)をバインダーとする印刷インキを用いてグラビア印刷によりベタインキ層及び柄インキ層を順次形成し、木目及び抽象模様の絵柄層を形成した。
次に、ウレタン系接着剤を絵柄層上に塗工した後、その上からプロピレン系樹脂を厚さ80μmとなるようにTダイ押し出し機で加熱溶融押し出しして透明性樹脂層を形成した。
上記透明性樹脂層にコロナ放電処理を施し、その処理面にアクリルウレタン系樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加したもの)をグラビア塗工法により塗工して表面保護層用プライマー層を形成した。
表面保護層用プライマー層上にウレタンアクリレート系電子線硬化型樹脂をロールコート法で固形分15g/mとなるように塗工し、乾燥した後、未硬化の電子放射線硬化型樹脂層に酸素濃度200ppm以下の環境下で電子線(加速電圧175KeV、照射量5Mrad)を照射して硬化させて電子放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を形成した。
続いて、表面保護層側から版深50μmの木目導管状エンボス版又は木肌・抽象調エンボス版でエンボス加工を施して木目導管状又は木肌・抽象調の凹凸模様を形成した化粧層を得た。
【0198】
合成樹脂層の調製
非晶性ポリエチレンテレフタレート(A−PET)を芯層とし、その両面にA−PET60重量%及びポリエチレンナフタレート40重量%の混合樹脂層が混合樹脂層/芯層/混合樹脂層=1/14/1の厚み比となるように、Tダイ押し出し機にて共押し出し法により厚さ0.4mmの合成樹脂シート(合成樹脂層)を得た。
【0199】
合成樹脂層と化粧層との積層
化粧層の裏面プライマー層にさらにウレタン系接着剤層を介在させて合成樹脂層をドライラミネート法により積層することにより、床材用化粧シートを作製した。
【0200】
床材用積層体の調製
前記(3)の床材用化粧シートの合成樹脂層の面にラワン合板(厚み12mm)を水溶性エマルション系接着剤により積層し、所定の寸法(300mm×1800mm)に裁断した後、テノーナーを用いて四辺の実加工を行い、さらに化粧層側からラワン合板に達する深さのV字型溝(条溝部)を床材平面からみた長尺方向及び短尺方向に形成した。また、床材平面からみた長尺方向の側面部に面取り部を形成した。形成されたV字型溝と面取り部の全面に水系2液硬化型ウレタン系着色塗料を塗布するとともにワイピング処理することにより条溝部及び面取り部に塗布層を形成した。このようにして所定の床材を作製した。
【0201】
例E1
条溝部として、ラワン合板に達せず、合成樹脂層の途中までの深さの条溝部を形成したほかは、実施例1と同様にして床材を作製した。
【0202】
評価試験E
試験E1:耐そり性試験
実施例E1及び例E1で作製された床材について、その「そり量」を測定した。測定方法は、各床材を温度35℃・湿度60%RHの条件下で7目間放置した後、さらに温度0℃・湿度30%RHの条件下で7日間放置した後のそりを試験前の状態と比較して最大のそり長さを測定し、その結果を下記の表Eに記載した。
【0203】
表E
評価1 実施例E1 例E1
そり長さ 2mm 5mm
【0204】
実施例F
本発明の第4の態様の別の好ましい態様について下記実施例Fを用いて説明する。
製造例F1
水性塗料の調製
アクリルウレタン系樹脂(製品名「ポンコートCG−5000」大日本インキ化学工業、ウレタン/アクリル複合エマルジョン)約31重量%(固形分)、体質顔料(シリカ)約7重量%、シリコン2重量%、イソプロピルアルコール5重量%及び水54重量%となるように各成分を配合し、混合した。一方、硬化剤としてイソシアヌレート系ポリイソシアネートを水と1:1(重量比)で混合し、これを前記混合物100重量部に対して20重量部混合した。これによって水性エマルジョンからなる水性塗料を得た。
【0205】
製造例F2
床材の作製
最初に、化粧層に用いる化粧シートを作製した。
(1)化粧シートの作製
両面コロナ放電処理した60μ厚さの着色ポリプロピレンフィルムの一方の面にウレタンセルロース系樹脂(ウレタン及び硝化綿の混合物100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加したもの)をグラビア塗工法により固形分2g/mとなるように塗工し、裏面プライマー層を形成した。他方の面にはアクリルウレタン系樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加したもの)をグラビア塗工法により固形分2g/mとなるように塗工し、印刷用プライマー層を形成した。
次いで、アクリルウレタン系樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加したもの〉をバインダーとする印刷インキを用いてグラビア印刷によりベタインキ層及び柄インキ層を順次形成し、木目及び抽象模様の絵柄層を形成した。
次に、ウレタン系接着剤を絵柄層上に塗工した後、その上からプロピレン系樹脂を厚さ80μmとなるようにTダイ押し出し機で加熱溶融押し出しして透明性樹脂層を形成した。
上記透明性樹脂層にコロナ放電処理を施し、その処理面にアクリルウレタン系樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加したもの)をグラビア塗工法により塗工して表面保護層用プライマー層を形成した。
表面保護層用プライマー層上にウレタンアクリレート系電子線硬化型樹脂をロールコート法で固形分15g/mとなるように塗工し、乾燥した後、未硬化の電子放射線硬化型樹脂層に酸素濃度200ppm以下の環境下で電子線(加速電圧175KeV、照射量5Mrad)を照射して硬化させて電子放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を形成した。
続いて、表面保護層側から版深50μmの木目導管状エンボス版又は木肌・抽象調エンボス版でエンボス加工を施して木目導管状又は木肌・抽象調の凹凸模様を形成した化粧層を得た。
【0206】
(2)合成樹脂層の作製
非晶性ポリエチレンテレフタレート(A−PET)を芯層とし、その両面にA−PET60重量%及びポリエチレンナフタレート40重量%の混合樹脂層が混合樹脂層/芯層/混合樹脂層=1/14/1の厚み比となるように、Tダイ押し出し機にて共押し出し法により厚さ0.4mmの合成樹脂シート(合成樹脂層)を得た。
【0207】
(3)合成樹脂層と化粧層との積層
化粧層の裏面プライマー層にさらにウレタン系接着剤層を介在させて合成樹脂層をドライラミネート法により積層することにより、床材用化粧シートを作製した。
【0208】
(4)床材の作製
前記(3)の床材用化粧シートの合成樹脂層の面にラワン合板(厚み12mm)を水溶性エマルション系接着剤により積層し、所定の寸法(300mm×1800mm)に裁断した後、テノーナーを用いて四辺の実加工を行い、さらに化粧層側からラワン合板に達する深さのV字型溝(条溝部)を床材平面からみた長尺方向及び短尺方向に形成した。また、床材平面からみた長尺方向の側面部に面取り部を形成した。
【0209】
実施例F1
製造例1で得られた水性塗料を用い、製造例2の床材のV字型溝と面取り部の全面に塗布するとともにワイピング処理することにより条溝部及び面取り部に塗布層を形成した。
【0210】
例F1
水性塗料として市販の水性ウレタン塗料を使用したほかは、実施例1と同様に塗布層の形成を行った。
【0211】
評価試験F
実施例F1及び例F1で形成された塗布層について、1)耐水性、2)耐湿熱性、3)耐シンナー性、4)耐酸性、5)耐アルカリ性、6)セロテープ(商標名)の密着性試験、7)耐候性についてそれぞれ調べた。
【0212】
各試験方法は、次のようにして実施した。
1)耐水性試験:
カップ透水試験を行った。試験体に144時間水滴を接触させ、水滴除去後に試験体の外観変化の有無を確認した。外観変化の認められないものを合格とした。
2)耐湿熱性試験:
JAS湿熱試験を実施した。試験体を水平に固定した後、試験体表面に沸騰水を滴下し、その上に0、5Lの沸騰水を入れた1L容量のアルミニウム容器を20分間放置した後、乾燥した布で摩擦し、そのまま24時間放置した。24時間経過後の外観変化の有無を確認した。外観変化が認められないものを合格とした。
3)耐シンナー性試験:
試験体の溝部表面にシンナーを滴下した後4時間放置後の外観変化の有無を確認した。
外観変化が認められないものを合格とした。
4)耐酸性試験:
試験体の溝部表面に10%塩酸水溶液を滴下した後4時間放置後の外観変化の有無を確認した。外観変化が認められないものを合格とした。
5)耐アルカリ性試験:
試験体の溝部表面に10%水酸化ナトリウム水溶液を滴下した後4時間放置後の外観変化の有無を確認した。外観変化が認められないものを合格とした。
6)セロテープ(商標名)の密着性試験:
セロテープ(ニチバン製)を塗膜に圧着し、垂直方向に剥がし、ほとんど剥がれないものを合格とした。
7)耐候性試験:
サンシャインフェードメーター500時間照射した後、外観変化の有無を観察した。外観変化が認められないものを合格とした。
【0213】
評価試験結果
実施例F1はすべての項目において合格したのに対し、例F1ではすべての項目において不合格であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材上に、合成樹脂層と、化粧層とを順に積層してなる床材用積層体であって、
前記合成樹脂層が、針入温度が75℃以上であり、降伏点荷重が10kgf以上であり、引張り弾性率が100kgf/mm以上であり、降伏伸び率が4〜8%である、床材用積層体。
【請求項2】
前記床材用積層体における化粧層側の表面に行われる耐キャスター試験の結果、前記表面の凹み深さが100μm以下であり、
前記耐キャスター試験が、回転可能のキャスター固定材と、前記キャスター固定材に取り付けられた3個のキャスターと、前記キャスター固定台と接続してなる加重部と、試料固定台とを備えてなる耐キャスター試験装置を用いて、
前記床材用積層体を前記試料固定台に固定し、
前記3個のキャスターを前記床材用積層体における化粧層側の表面に前記加重部により加重して接触させ、
前記キャスター固定材を稼働し前記床材用積層体における化粧層側の表面の上に前記3個のキャスターを回転させた後に、
前記表面に発生した凹みの深さを測定することにより行われるものであり、
前記キャスターが、平均直径75mm、厚さ25mmのものであり、
前記床材用積層体における化粧層側の表面に付与される加重が、70kgであり、
前記3個のキャスターが、20rpmの速度で5分間毎に反回転させて1000回転させて行うものである、請求項1に記載の床材用積層体。
【請求項3】
前記合成樹脂層の厚さが、200μm以上である、請求項1または2に記載の床材用積層体。
【請求項4】
前記化粧層側の表面から溝部が形成されてなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の床材用積層体。
【請求項5】
前記溝部の底部が前記合成樹脂層に位置するように形成されてなる、請求項4に記載の床材用積層体。
【請求項6】
前記溝部に塗料が塗布されてなる、請求項5に記載の床材用積層体。
【請求項7】
前記合成樹脂層が、着色樹脂層である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の床材用積層体。
【請求項8】
前記合成樹脂層が主成分としての非晶性ポリエチレンテレフタレートと、これより針入温度の高いポリエステルとにより構成されてなるものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の床材用積層体。
【請求項9】
前記合成樹脂層が、非晶性ポリエチレンテレフタレート層を芯層とし、該芯層の両面にこれより針入温度の高いポリエステル層を積層したものから構成されてなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の床材用積層体。
【請求項10】
前記ポリエステル層が主成分としての非晶性ポリエチレンテレフタレートと、これより針入温度の高いポリエステルとにより構成されてなるものである、請求項9に記載の床材用積層体。
【請求項11】
前記合成樹脂層を構成する層の少なくとも一層が着色樹脂層であるものである、請求項9に記載の床材用積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−32866(P2011−32866A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259205(P2010−259205)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【分割の表示】特願2004−67510(P2004−67510)の分割
【原出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】