説明

床版剥離機および床版の剥離方法

【課題】床版を剥離させるための簡単な構造の床版剥離機および床版の剥離方法を提供すること。
【解決手段】 鋼桁上に固定された床版を床版ブロック毎に剥離させる床版剥離機において、剥離すべき床版ブロック2の両側の床版5にそれぞれ載置される昇降可能なリンク機構式持ち上げ装置10に、橋軸方向に走行可能な走行車体9における本体により構成される支承梁8が昇降可能に設けられ、前記のリンク機構式持ち上げ装置10を備えた支承梁8が間隔をおいて平行に配置され、その各支承梁8に渡って床版ブロック支持梁34が架設され、前記各床版ブロック支持梁34に、剥離すべき床版ブロック2を支承する吊棒37が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼桁等の桁上の床版を剥離させるための床版剥離機および床版の剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路橋における鋼桁用の床版(特に、コンクリート製床版)が、1960年代に多く作られたが、近年、コンクリート製床版の損傷が増加し、取替えが必要となっている。しかし、多くのコンクリート製床版は供用中で、通行を止めにより架け替える等大掛かりな工事が出来ないのが現状である。そこで、片側規制で夜間の短い時間内で部分的に取り替えている。
【0003】
そのため、既設床版を撤去できる床版剥離機が要求され、様々な床版剥離機が考案されて来た(例えば、特許文献1〜4参照)。
特に、夜間の短い時間内で部分的に取り替えている現状においては、少しでも、短時間で撤去できると、撤去コストを著しく低減することができる。しいては、より早く新設のプレキャスト床版を設置する事ができ、床版撤去・床版新設を含めた全体の更新施工コストを低減することができる。
【特許文献1】特公平6−43682号公報
【特許文献2】特公平7−26371号公報
【特許文献3】特公平7−26369号公報
【特許文献4】特許第2671199号公報
【特許文献5】特許第2671201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
床版撤去・床版新設施工をする場合、床版の剥離および設置の夜間作業を終えた後、床版剥離機等の設備をすばやく片付け、明け方には一般の自動車を通さなければならず、床版および床版剥離機をクレーン等により持ち運びが簡単なユニット方式が求められる。また、既設コンクリート製床版(以下、既設床版ともいう)に孔を明け吊り上げる吊棒(ボルト)を通さなければならないが、実際には既設床版には、鉄筋など孔明けの障害となるもの(鋼材)が埋め込まれており、計画通りの位置に孔を明けられないのが現状で、孔の位置に対応できる装置が求められる。
【0005】
そして、最大の問題は、鋼桁と床版の接合で、接合方式により、(1)非合成桁(スラブ止めにより床版を止める場合で、床版は鋼桁に荷重を伝達するのみで、全ての荷重負担を鋼桁により負担する形式)と、(2)合成桁とがある。
【0006】
前記(1)の非合成桁は、鋼桁とコンクリート製床版とが、比較的接合強度の小さいスラブ止めにより接合されているため、比較的小さい力で床版を鋼桁から剥離することが出来るが、前記(2)の合成桁は鋼桁とコンクリート床版が剛性の大きいジベルで一体化された構造であり、このような合成桁は、付着強度の大きいものでは、鋼桁の上に強固に溶接により固定されたスタッドジベルが、床版コンクリートに埋め込まれており、スタッドジベルとコンクリート床版の付着を切る必要があり大きな力が必要となる。
【0007】
また、スタッドジベルは、支間中央ではピッチを粗く、支点近傍ではピッチを密とされ、配置ピッチが違っている。そのため、いずれの場所においても対応できるようにするために、大きなジャッキを用意しておかなければならない。しかし、あまり大きなジャッキで支間中央のスタッドジベルのピッチの粗い(スタッドジベルの本数の少ない)ところで、床版を鋼桁から剥離するために、大きな力をかけると鋼桁自身を損傷させる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記の課題を有利に解決することができ、簡単な構造の床版剥離機およびその床版剥離機を使用するした床版の剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するため次のように構成した。
【0010】
第1の発明の床版剥離機は、鋼桁上に固定された床版を床版ブロック毎に剥離させる床版剥離機において、剥離すべき床版ブロックの両側の床版にそれぞれ載置される昇降可能なリンク機構式持ち上げ装置に、支承梁が設置されて昇降可能とされると共に、前記支承梁に交差するように床版ブロック支持梁が架設され、前記床版ブロック支持梁に、剥離すべき床版ブロックを支承する吊棒が設けられていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明の床版剥離機は、鋼桁上に固定された床版を床版ブロック毎に剥離させる床版剥離機において、
剥離すべき床版ブロックの両側の床版にそれぞれ載置される昇降可能なリンク機構式持ち上げ装置に、橋軸方向に走行可能な走行車体における本体により構成される支承梁が設置されて昇降可能とされ、前記のリンク機構式持ち上げ装置を備えた支承梁が間隔をおいて平行に配置され、その各支承梁に渡って床版ブロック支持梁が架設され、前記各床版ブロック支持梁に、剥離すべき床版ブロックを支承する吊棒が設けられていることを特徴とする。
【0012】
第3発明では、第1発明または第2発明の床版剥離機において、前記リンク機構式持ち上げ装置に、着脱可能にジャッキが取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
第4発明の床版の剥離方法では、桁上に固定された床版を床版ブロック毎に剥離させる床版の剥離方法において、請求項1〜3のいずれかの床版剥離機を、剥離すべき床版ブロックを挟んで両側の床版に載置し、床版ブロック支持梁と剥離すべき床版ブロックとを、床版ブロックに設けた縦孔に挿通した連結ボルトにより連結し、リンク機構式持ち上げ装置に着脱可能に取り付けられたジャッキにより、前記リンク機構式持上げ装置を作動させ、床版ブロックを鋼桁から剥離することを特徴とする。
【0014】
第5発明の床版の剥離方法では、第4発明の床版の剥離方法において、リンク機構式持ち上げ装置におけるリンクを縦向きに急傾斜状態にして持ち上げ分力を高めた状態で床版ブロックを鋼桁から剥離し、次いで前記リンクを横向きの緩傾斜状態とすると共に、さらに床版ブロックを上昇させて、床版ブロックを鋼桁から剥離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、剥離すべき床版ブロックの両側の床版にそれぞれ載置される昇降可能なリンク機構式持ち上げ装置に、支承梁が設置されて昇降可能とされると共に、前記支承梁に交差するように床版ブロック支持梁が架設され、前記床版ブロック支持梁に、剥離すべき床版ブロックを支承する吊棒が設けられているので、床版ブロックを吊下げるための孔の位置にあわせて、支承梁および床版ブロック支持梁を交差するように構成することで、吊棒の設置作業を迅速に行うことができ、床版ブロックの剥離施工の容易で簡単な構造の床版剥離機とすることができる。
また、横向き配置のセンターホールジャッキが着脱自在に配置されているので、センターホールジャッキを適宜取り替えて、鋼桁のスタッドジベルと床版の接合状態に合わせて剥離力を設定することができ、剥離性能の自由度の高い床版剥離機になる。
また、走行車体を兼ねた支承梁と、床版ブロック支持梁と持ち上げ装置等が組合わされた構成の床版剥離機はユニット化されているので、作業開始準備時間および終了準備時間を短縮することができる。
また、本発明の床版の剥離方法では、床版剥離機を使用して、容易に鋼桁から床版ブロックを強制的に容易に剥離することができ、また、剥離荷重に対応して、ジャッキを取り替えることができ、さらに、単にリンクを急傾斜状態の縦向きにすることにより、小型のジャッキであっても持ち上げ力を最大近くに高めた状態で、床版ブロックを鋼桁から剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
【0017】
図1〜図6は本発明の床版剥離機1の一実施形態を示し、図7〜図11は前記の床版剥離機を使用して、既設床版を剥離すべき単位ユニットの床版ブロック2に切断して、これを剥離し撤去する工程を示す側面図である。図12は、鋼桁3に設けられたスタッドジベル4とコンクリート床版5または床版ブロック2との関係を示す一部縦断正面図であり、(A)は床版ブロック2とスタッドジベル4とが付着している状態を示す一部縦断正面図、(B)は床版ブロック2とスタッドジベル4との付着が切れて床版ブロック2を搬送撤去可能なレベルまで上昇させた状態を示す一部縦断正面図である。
【0018】
図1および図12(A)に示すように、鋼製道路橋6では、H形断面あるいは箱形断面の鋼桁3の上部には、橋軸方向間隔をおいて多数のスタッドジベル4等のズレ止め部材が設けられて、前記スタッドジベル4等のズレ止め部材を介して、鋼桁3とコンクリート床版5が一体化されている。
【0019】
前記のようなコンクリート床版5を、コンクリートカッター等により平面的に所定の切断線に沿ってコンクリート床版5を貫通する切込み43を入れ、より小さい単位の平面矩形状の床版ブロック2に切断する。切断された状態の床版ブロック2でも、床版ブロック2は鋼桁3にスタッドジベル4を介して付着し、結合一体化している。
【0020】
図1〜図6には、前記のような状態の床版ブロック2を、強制的に持ち上げて、床版ブロック2とスタッドジベル4との付着状態を切って床版ブロック2を剥離し、撤去可能にするための本発明の一形態の床版剥離機1が示されている。
【0021】
次に、図1〜図6を参照して本発明の床版剥離機1の構成を主に説明すると、間隔をおいて鋼桁3が橋脚または橋台上に架設され、その各鋼桁3上に渡って設置されている既設床版5上に、それぞれ鋼桁3上に対応した位置となるように走行用レール7が着脱可能に敷設される。前記の走行用レール7は、所定区間撤去した後、再度敷設することを考慮すると、剥離される床版ブロック2の橋軸方向の単位長さ程度の寸法のレールを直列に敷設しておくと、撤去および再度の敷設する場合に短い距離のレールでよくなるので、施工が容易である。
【0022】
床版ブロック2の撤去後に、新設プレキャスト床版ブロック2aを設置し、走行用レールを敷設すると、前記の床版剥離機1は、橋軸方向に走行可能になる。
【0023】
床版剥離機1は、図5に拡大して示すように、これを構成する橋軸方向に延長する支承梁8を兼ねた各走行車体9の下面に、橋軸方向に間隔をおいて複数(図示の場合は、2つ)のリンク機構式持ち上げ装置10を備えており、各リンク機構式持ち上げ装置10における鋼製の支持部材11の上部をボルト等の固定手段(図示を省略)により前記走行車体9に固定している。
【0024】
前記のリンク機構式持ち上げ装置10は、液圧式の持ち上げ用ジャッキ12により鋼製ブロックからなるシュウ13と支持部材11とが相互に上下方向に接近または離反移動されるように構成され、左右対称に配置された各上部リンク14,15の上端部がそれぞれピン16により支持部材11に回動可能に連結され、左右対称に配置された各下部リンク17,18の下端部が前記シュウ13にそれぞれピン16により回動可能に連結され、左右方向の一側部の上部リンク14の下端部と下部リンク17の上端部が従動側の横軸19により回動可能に連結され、また、左右方向の他側部の上部リンク15の下端部と下部リンク18の上端部が駆動側の横軸20により回動可能に連結されている。
【0025】
前記各従動側および駆動側の横軸19,20には、その軸方向中央部に横貫通孔21が設けられ、その各横軸19,20の横貫通孔21に渡って、駆動ねじ棒22が挿通配置され、その駆動ねじ棒22の一端側には、従動側の横軸19の外側において、支承部材23がその横軸19に当接されると共にその支承部材23の外側において、これを支承するナットからなる雌ねじ部材24が駆動ねじ棒22にねじ込み固定されている。なお、前記雌ねじ部材24の外側にロックナットを設けても良い。
【0026】
前記駆動ねじ棒22の他端側には、駆動側の横軸20の外側において、支承部材23aが挿通配置されると共に横軸20に当接され、前記支承部材23aの外側において、断面L字状の鋼製のジャッキ支承部材46における縦部分28が駆動ねじ棒22に挿通配置され、前記ジャッキ支承部材46の縦部分28または横部分29にセンターホ−ルジャッキ12aからなる持ち上げ用ジャッキ12におけるシリンダ30がボルト(図示を省略)により着脱自在に取付けられ、駆動ねじ棒22の他端部は、中空ピストン31の外側においてナットからなる雌ねじ部材25が駆動ねじ棒22にねじ込み固定されている。なお、前記の支承部材23aとジャッキ支承部材46を一体としてもよい。前記の駆動ねじ棒22に、支承部材23aとジャッキ支承部材46が支承され、ジャッキ支承部材46を介してセンターホールジャッキ12aが支承されている。
【0027】
前記持ち上げ用ジャッキ12を伸長(または短縮)するように駆動すると、従動側の横軸19と駆動側の横軸20が相互に接近(離反)移動し、上下に対向配置されているシュウ13と支持部材11が相互に離反または接近移動可能にされる。したがって、床版剥離機1における各シュウ13の下面を既設(または新設)の床版5に載置した状態で、センターホ−ルジャッキ12aを伸長すると、床版剥離機1を上昇させるように持ち上げることができ、上昇する側(走行車体9)に連結された床版ブロック2を剥離させるために上昇移動させることができる。
【0028】
また、前記センターホ−ルジャッキ12aがボルト等により着脱自在にジャッキ支承部材46に取り付けられているため、持ち上げ性能の高いセンターホ−ルジャッキ12aに置き換えることにより、持ち上げ性能の高い(換言すると、床版ブロック2の剥離性能の高い)床版剥離機1とすることができる。前記のようにセンターホ−ルジャッキ12aの交換を考慮して、前記リンク14,15,17,18、ピン16あるいは横軸19,20等は、剛性の高い部材としておくと、多様な性能に対応することができる。
【0029】
さらに前記シュウ13には、縦ねじ棒32の下端部が連結されている。図示の形態では、シュウ13に縦孔が設けられ、縦ねじ棒32の下部が挿通され、その下端部にねじ込み固定されたナット47がシュウ13の凹部に収容配置されている。前記縦ねじ棒32の上部は、支持部材11の縦孔および走行車体9の縦孔に挿通され、走行車体9の上部に縦向きに配置された縦センターホールジャッキ33を貫通するように配置され、その縦センターホールジャッキ33の中空ピストン45から離れた位置で、前記縦ねじ棒32の上部にはナットからなる雌ねじ部材26がねじ込み配置されている。
前記の縦ねじ棒32および縦センターホールジャッキ33は、床版ブロック2の剥離時に、シュウ13が既設床版5等に密着して、シュウ13の既設床版5等からの分離に機械力が必要となった場合に、前記縦ねじ棒32上部の雌ねじ部材26を縦センターホールジャッキ33における中空ピストン45に係合するように下降移動して当接し、その状態で縦センターホールジャッキ33を伸長すると、シュウ13を既設床版5から分離することができる。なお、縦センターホールジャッキ33を作動するときは、走行車体9の車輪38を走行用レール7に載置して反力を床版5または鋼桁3に受持たせるようにされ、また、センターホールジャッキ12a側を短縮し、中空ピストン31と雌ねじ部材25との間に間隙を設けた状態にする。
【0030】
また、前記の縦センターホールジャッキ33は、持ち上げ装置10における横向きのセンターホ−ルジャッキ12aにより急傾斜状態とされたリンク14,15,17,18(図8参照)を緩傾斜状態(図7参照)にする場合に、縦センターホールジャッキ33を伸長させながら前記横向きのセンターホ−ルジャッキ12aを短縮するように制御すると、床版剥離機1を安定した状態で降下させることが可能で、リンク14,15,17,18を横向きの緩傾斜状態にするときにも使用することができる。なお、横向きのセンターホ−ルジャッキ12aのみにより、リンク14,15,17,18を横向きの緩傾斜状態にしてもよい。
【0031】
橋軸直角方向に間隔をおいて平行に配置された支承梁8(走行車体9)には、橋軸方向に間隔をおいて配置された持ち上げ装置10の間において、各支承梁8の橋軸方向の前後両側に渡って床版ブロック支持梁34が架設されている。前記各床版ブロック支持梁34は、一対の溝形鋼からなる断面溝形部材35のウエブ相互が近接した間隔をおいて平行に配置されて、前記支承梁8に載置されて、ボルト(図示を省略)により着脱可能に取り付けられている。
前記の床版ブロック支持梁34における一対の断面溝形部材35が近接した間隔をおいて配置されることにより、橋軸直角方向に連続した隙間36が形成され、その隙間36に、橋軸直角方向に間隔をおいて縦向きに複数の連結ボルトからなる吊棒37が配置され、その各吊棒37の上部が、それぞれ床版ブロック支持梁34を構成する断面溝形部材35の上面に渡って載置された上部支圧板40に挿通されると共に、その上面に配置されたナットからなる雌ねじ部材27にねじ込まれている。また、吊棒37の下端部は、剥離すべき床版ブロック2に設けられた縦孔41に挿通配置されると共に、床版ブロック2の下面に配置の下部支圧板42に挿通され、その支圧板42の下面に配置のナットからなる雌ねじ部材27にねじ込まれている。
前記のように橋軸直角方向に連続桁した隙間36が設けられているので、床版ブロック2に設ける縦孔41が橋軸直角方向に多少位置がずれても、吊棒37を橋軸方向に位置調整して容易に設置することができる。
なお、各支承梁8(走行車体)にその部材長手方向に間隔をおいて、雌ねじ孔あるいはボルト挿通孔等の取り付け部を設けておくと、各床版ブロック支持梁34の位置調整して取付けて、剥離すべき床版ブロック2の大きさの自由度を高め、これに容易に対応することができる。
【0032】
連結ボルトからなる前記の吊棒37としては、両ねじの普通鋼棒またはPC鋼棒を使用することができるが、各種の剥離荷重に対応するためには、PC鋼棒を使用するのが望ましい。
【0033】
なお、前記走行車体9の前後方向の両端部に設けられた走行用車輪38は、走行車体9本体に対して、車輪支持フレーム39をジャッキ等により昇降自在(レベル調整自在)としてもよい。前記走行車体9および走行用車輪38並びに車体相互を連結する床版ブロック支持梁34等により走行台車が構成され、これに持ち上げ装置10等が付属して床版剥離機1が構成されている。
【0034】
次に、前記の床版剥離機1を使用して、既設床版5に切込み43を入れて床版ブロック2とし、これを剥離する場合の方法について説明する。
【0035】
図1に示すように、床版剥離機1を剥離すべき床版ブロック2の位置と想定される既設床版5の位置に配置する。前記床版剥離機1のレール7上への配置には、クレーン等を使用して吊上げ設置することができる。そのために、床版剥離機1の走行車体等には、クレーン等の吊り用のフックに係止する吊り金具(図示を省略した)を付属させておくとよい。
【0036】
次いで、図7に示すように、持ち上げ装置10におけるセンターホールジャッキ12aを若干伸長して、シュウ13を既設床版5に着座させる。
【0037】
次いで、図8に示すように、少なくとも剥離すべき床版ブロック2上となっているレール7を撤去し、橋軸方向に間隔をおくと共に、床版下面まで橋軸直角方向に連続した一対の縦切込み43をコンクリートカッター等により設け、剥離すべき区間の床版ブロック2を設定する。
【0038】
床版ブロック2に、橋軸方向に間隔をおくと共に橋軸直角方向に間隔をおいて、複数(図示の場合は4つ)の吊棒37を挿通させるための複数の貫通した縦孔41を設け、前記各縦孔41に断面溝形部材35間に挿通した吊棒としての前記吊棒37の下部を通し、床版ブロック2の下面側で、支圧板42およびナットからなる雌ねじ部材27をそれぞれ吊棒37に装着する。
【0039】
吊棒37に装着されている雌ねじ部材27は、リンク機構式持ち上げ装置10におけるリンク14,15,17,18を縦向きの急傾斜状態にするために、雌ねじ部材27を吊棒37の上端部に位置するようにしておく。
【0040】
持ち上げ装置におけるリンク14,15,17,18が横向きの緩傾斜状態では、垂直方向の持ち上げ力が小さいので、前記持ち上げ装置10におけるセンターホ−ルジャッキ12aを伸長して、各リンク14,15,17,18を急傾斜状態の縦向きにし、縦方向の持ち上げ分力を最大近くに高めた状態にし、その状態で、前記吊棒37の上部の雌ねじ部材27を、上部支圧板40を介して床版ブロック支持梁34上面に支承されるように、また下部の雌ねじ部材27を下部支圧板42を介して床版ブロック2下面を支承するようにする。
【0041】
次いで、前記のセンターホ−ルジャッキ12aをさらに伸長して、床版ブロック2を吊棒37を介して持ち上げて、例えば、図12(B)に示すように、スタッドジベル4と床版ブロック2との付着を切り(スタッドジベル4と床版ブロック2とを分離し)、床版ブロック2を鋼桁3から分離させる。
【0042】
前記の急傾斜状態のリンク14,15,17,18では、持ち上げ距離が小さいので、前記センターホ−ルジャッキ12aを短縮し、図9または図1に示すように台車9を降下させ、一度床版ブロック2を鋼桁3上に載置し、吊棒37における上部の雌ねじ部材27を下降移動するように回転して床版ブロック支持梁34上の支圧板40に係合させ、再度、前記センターホ−ルジャッキ12aを伸長して、床版ブロック2を上昇させて鋼桁3から完全に剥離させ、分離させる。
【0043】
次いで、適宜の床版架設機(図示を省略した)により、図11および図13に示すように、新設のプレキャスト床版48を鋼桁3に渡って橋軸直角方向から鋼桁3上に配置し、新設のプレキャスト床版48における貫通孔49にスタッドジベル4を配置し、無収縮モルタル50等を充填して一体化し、既設レール7に接続するように、新設のプレキャスト床版48に渡ってレール7aを敷設する。
【0044】
前記の床版ブロック2の剥離において、走行車体9における車輪38がレールに載置された状態において、剥離した床版ブロック2の下面レベルが敷設レール7(7a)の上面よりも高くなると、床版剥離機1を、床版ブロック2を支持した状態で、橋軸方向に走行させることにより、床版ブロック2を搬送撤去することができる。
【0045】
次いで、前記床版剥離機1を、次に剥離撤去すべき位置に走行移動した後、前記と同様な工程を橋軸方向に順次繰り返して、順次、剥離した床版ブロック2を新設のプレキャスト床版5に置き換え設置していく。
【0046】
前記のように、リンク機構式持ち上げ装置10におけるリンク14,15,17,18を、初期に急傾斜の縦向き状態にして、床版ブロック2を持ち上げ、剥離が終了した後、再度、前記リンク14,15,17,18を緩傾斜状態にして、床版ブロック2を持ち上げるため、小さい能力のセンターホ−ルジャッキ12aで、床版ブロック2を剥離することが可能となる。
【0047】
前記のように、パンタグラフ形式のようなリンク機構式持ち上げ装置10を用いて床版ブロック2を剥離する場合、初期に横向き緩傾斜のリンクを水平にセンターホールジャッキ12aにより押す力は、鉛直力としては、小さい力しか得られない。それに比べ、リンクを縦向きの急傾斜状態時は、センターホールジャッキ12aの同じ力で水平に押した場合、鉛直力は大きな力に代わる。床版ブロック2を剥離する場合、初めにジベル4の付着を切る必要があるため最大の力を必要とする。そこで、本発明では、リンクを縦向きの急傾斜状態で一旦ジベル4の付着を切り、それからリンクを横向き等の緩傾斜状態(初期等の状態)に戻し、再度、床版ブロック2を上昇させて剥難している。
【0048】
前記のように、本発明では、支承梁8間の間隔および床版ブロック支持梁34間の間隔は、剥離すべき床版ブロック2に設けられる吊棒37用の孔41の位置にあわせて、予め井桁状に構成することにより、吊棒37の設置作業を迅速に行うことができる。
【0049】
前記センターホ−ルジャッキ12aを各種性能のジャッキに取り替えることが出来ることで、鋼桁3のスタッドジベル4と床版ブロック2の接合状態に合わせて剥離力を設定できる。
【0050】
本発明の床版剥離機1は、その全体がユニットされているので、床版剥離機1の搬送設置してから作業開始するまでの作業開始時間、作業終了後から床版剥離機1の搬送撤去するまでの終了時間を、効率よく短縮できる。
【0051】
前記実施形態では、一対の断面溝形部材により床版ブロック支持梁34を構成するようにしているが、本発明を実施する場合、一対の形鋼等により床版ブロック支持梁34を構成してもよく、あるいは一対の形鋼の長手方向端部間にスペーサを介在させて溶接等により一体化した隙間付き床版ブロック支持梁(図示を省略)に置き換えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の床版剥離機を剥離すべき床版ブロックの位置に配置した状態を示す一部縦断側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の一部を拡大して示す一部縦断側面図である。
【図4】図2の一部を拡大して示す平面図である。
【図5】本発明における床版剥離機における押し上げ装置付近を拡大して示す一部縦断側面図である。
【図6】床版剥離機における床版ブロック支持梁によりボルトを介して床版ブロックを支持している状態を示す一部縦断側面図である。
【図7】本発明の床版剥離機により床版ブロックを剥離する工程を示す一部縦断側面図である。
【図8】本発明の床版剥離機により床版ブロックを剥離する工程を示す一部縦断側面図である。
【図9】本発明の床版剥離機により床版ブロックを剥離する工程を示す一部縦断側面図である。
【図10】本発明の床版剥離機により床版ブロックを剥離する工程を示す一部縦断側面図である。
【図11】床版ブロックを剥離した後、新設のプレキャスト床版ブロックおよびその上にレールを敷設することを説明するための一部縦断側面図である。
【図12】(A)は鋼桁とコンクリート床版がスタッドジベルにより一体化されている状態の縦断正面図、(B)は鋼桁のスタッドジベルから床版ブロックを剥離した状態を示す縦断正面図である。
【図13】新設のプレキャスト床版ブロックと鋼桁とを無収縮モルタルにより一体化する場合の一部縦断正面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 床版剥離機
2 床版ブロック
3 鋼桁
4 スタッドジベル
5 床版
6 道路橋
7 走行用レール
7a 走行用レール
8 支承梁
9 走行車体
10 持ち上げ装置
11 支持部材
12 持ち上げ用ジャッキ
13 シュウ
14 上部リンク
15 上部リンク
16 ピン
17 下部リンク
18 下部リンク
19 従動側の横軸
20 駆動側の横軸
21 横貫通孔
22 駆動ねじ棒
23 支承部材
23a 支承部材
24 雌ねじ部材
25 雌ねじ部材
26 雌ねじ部材
27 雌ねじ部材
28 縦部分
29 横部分
30 シリンダ
31 中空ピストン
32 縦ねじ棒
33 縦センターホールジャッキ
34 床版ブロック支持梁
35 断面溝形部材
36 隙間
37 吊棒
38 走行用車輪
39 フレーム
40 上部支圧板
41 縦孔
42 下部支圧板
43 切込み
45 中空ピストン
46 ジャッキ支承部材
47 ナット
48 新設のプレキャスト床版
49 貫通孔
50 無収縮モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼桁上に固定された床版を床版ブロック毎に剥離させる床版剥離機において、
剥離すべき床版ブロックの両側の床版にそれぞれ載置される昇降可能なリンク機構式持ち上げ装置に、支承梁が設置されて昇降可能とされると共に、前記支承梁に交差するように床版ブロック支持梁が架設され、前記床版ブロック支持梁に、剥離すべき床版ブロックを支承する吊棒が設けられていることを特徴とする床版剥離機。
【請求項2】
鋼桁上に固定された床版を床版ブロック毎に剥離させる床版剥離機において、
剥離すべき床版ブロックの両側の床版にそれぞれ載置される昇降可能なリンク機構式持ち上げ装置に、橋軸方向に走行可能な走行車体における本体により構成される支承梁が設置されて昇降可能とされ、前記のリンク機構式持ち上げ装置を備えた支承梁が間隔をおいて平行に配置され、その各支承梁に渡って床版ブロック支持梁が架設され、前記各床版ブロック支持梁に、剥離すべき床版ブロックを支承する吊棒が設けられていることを特徴とする床版剥離機。
【請求項3】
前記リンク機構式持ち上げ装置に、着脱可能にジャッキが取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の床版剥離機。
【請求項4】
桁上に固定された床版を床版ブロック毎に剥離させる床版の剥離方法において、請求項1〜3のずれかの床版剥離機を、剥離すべき床版ブロックを挟んで両側の床版に載置し、床版ブロック支持梁と剥離すべき床版ブロックとを、床版ブロックに設けた縦孔に挿通した連結ボルトにより連結し、リンク機構式持ち上げ装置に着脱可能に取り付けられたジャッキにより、前記リンク機構式持上げ装置を作動させ、床版ブロックを鋼桁から剥離することを特徴とする床版の剥離方法。
【請求項5】
リンク機構式持ち上げ装置におけるリンクを縦向きに急傾斜状態にして持ち上げ分力を高めた状態で床版ブロックを鋼桁から剥離し、次いで前記リンクを横向きの緩傾斜状態とすると共に、さらに床版ブロックを上昇させて、床版ブロックを鋼桁から剥離することを特徴とする請求項4に記載の床版の剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−328645(P2006−328645A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149391(P2005−149391)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【Fターム(参考)】