説明

床用仕上げ剤組成物

【課題】水で希釈して使用することにより、塗れ性が良く、乾燥し易く汚れが再付着しにくい床用仕上げ剤組成物の提供。
【解決手段】(a)第4級アンモニウム基又は第3級アミノ基を有する特定のモノマー単位を構成単位として有する重合体と、(b)陰イオン性界面活性剤とを含有する床用仕上げ剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床用仕上げ剤組成物とそれを用いた床水拭き用水、前記床水拭き用水を用いた床の仕上げ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に床の清掃は、掃除機ないし履き掃除の除去の他に、水拭きが行われる。旧来の日本家屋では雑巾掛けが行われてきた。近年の一般家庭では、床を水拭くこと自体が減りつつあるが、学校をはじめとする公共施設の他、ホテルや劇場のエントランスやロビーでは、美しく装飾された床を保つために、現在でも水拭きが行われる。またインドネシアを初めとする東南アジアの一般家庭では、水拭きによる掃除が日常的に行われている。床用仕上げ剤組成物としては、洗浄力や殺菌を目的とするものが知られている。
【0003】
特許文献1は、非イオン性界面活性剤と陽イオン性界面活性剤を含有するフロア用液体洗浄剤組成物に関する発明であり、非イオン性界面活性剤としてHLBが9以上、好ましくは11〜13のものを用いている。
【0004】
特許文献2は、非イオン性界面活性剤と陽イオン性界面活性剤を含有する床用仕上げ剤組成物が開示されており、段落0031には、床清掃専用機器を用いた洗浄作業後、吸水バキューマー等を用いて洗浄汚水を回収した後、水を含ませたモップを用いて床面に残った残留物を拭き取る(水拭き作業)方法が記載されている。
【0005】
特許文献3は、アルキルポリグリコシド等の非イオン性界面活性剤を含有する硬質表面用洗浄剤組成物が開示されており、段落〔0034〕には、床洗浄用機器(床用パッドまたは床用ブラシを装着したポリッシャー等)や自動床洗浄機を用いて洗浄作業を実施すること、洗浄作業後は、吸水バキューマー等を用いて洗浄汚水を回収した後、水を含ませたモップを用いて床面に残った残留物を拭き取る(水拭き作業)ことが記載されている。
【特許文献1】特開平3−182597号公報
【特許文献2】特開2001−311093号公報
【特許文献3】特開2006−111714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
床を水拭きにより仕上げ処理する際には、塗布後のべたつきが無く、良好な仕上がりを得ることが期待される。また床掃除にかかる労力は大きく、日に何度も行うには負担の大きい家事である。しかしながら市販されている床用処理剤を含有する水を用いた場合、床表面への濡れ性が悪い為、処理後の表面は斑(まだら)に液が残りやすい。斑に残った面は乾きが悪く、配合成分が局在化して乾燥することからこの部分には汚れが再付着しやすくなり、掃除をしたのにまたすぐに汚れが目立つといった悪循環に陥りやすい。
【0007】
また東南アジアの一般家庭においては、殺菌用に陽イオン性界面活性剤を含有する市販品を使用しているため、水だけで処理した場合に比べて、更に撥水化して濡れ性が悪くなる。こちらも、処理後の表面は斑(まだら)に残って汚れが再付着し易くなり、掃除をしたのにまたすぐに汚れが目立つといった悪循環に見舞われる。また日常の使用では、水拭き中、泡立つことは望ましくなく、リンシング(すすぎ洗い)ないし二度拭きを行わないことから、配合成分及び配合濃度は制限される。
【0008】
本発明は、床面に対する濡れ性が良く、更に水拭き後の乾燥性が良く、後拭きが不要になる、また、汚れが再付着しにくい床用水拭き用水、前記床用水拭き用水を用いた床の仕上げ処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記(a)成分及び(b)成分を含有する床用仕上げ剤組成物に関する。
(a)成分:下記一般式(1)で表される化合物及び/又は一般式(2)で表される化合物に由来するモノマー単位を構成単位として有する重合体
(b)成分:陽イオン性界面活性剤
【0010】
【化4】

【0011】
〔式中、R1、R2、R3、R7、R8、R9は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。X、Yは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキレン基、−COOR12−、−CONHR12−、−OCOR12−、−R13−OCO−R12−から選ばれる基である。ここでR12、R13は、それぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキレン基である。R4は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR12C=C(R3)−X−である。R5は炭素数1〜3のアルキル基、又はヒドロキシアルキル基であり、R6は炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基であり、Z-は陰イオンを示す。R10は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR78C=C(R9)−Y−である。R11は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕
【0012】
また、本発明は、上記本発明の床用仕上げ剤組成物と水を含有しており、(a)成分を40〜1000ppm、及び(b)成分を25〜500ppmの濃度で含有する、床水拭き用水に関する。
【0013】
また、本発明は、上記本発明の床用仕上げ剤組成物を水で希釈して、床水拭き用水を調製する工程(i)、床水拭き用水を用いて床拭きする工程(ii)、床を乾燥させる工程(iii)、を有する床の仕上げ処理方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の床用仕上げ剤組成物は、水で希釈して床水拭き用水として使用したとき、床に対する濡れ性が良いので、容易に床面に対して押し広げることができる。そして、拭いた後はそのまま放置するだけで速やかに乾燥させることができ、後拭きも不要である。また、処理後の床には汚れが再付着しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<床用仕上げ剤組成物>
〔(a)成分〕
本発明の床用仕上げ剤組成物は、(a)成分として、下記一般式(1)で表される化合物及び/又は一般式(2)で表される化合物に由来するモノマー単位を構成単位として有する重合体を含有する。
【0016】
【化5】

【0017】
〔式中、R1、R2、R3、R7、R8、R9は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。X、Yは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキレン基、−COOR12−、−CONHR12−、−OCOR12−、−R13−OCO−R12−から選ばれる基である。ここでR12、R13は、それぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキレン基である。R4は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR12C=C(R3)−X−である。R5は炭素数1〜3のアルキル基、又はヒドロキシアルキル基であり、R6は炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基であり、Z-は陰イオンを示す。R10は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR78C=C(R9)−Y−である。R11は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕
【0018】
上記一般式(1)で表される4級アンモニウム基を有するモノマー単位としては、下記一般式(3)のモノマー構成単位が好適である。
【0019】
【化6】

【0020】
〔式中、R1bは炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、m及びnはそれぞれ0又は1の数であり、m+n=1である。Q-は陰イオン基である。〕
【0021】
一般式(3)においてR1bはメチル基が好ましく、Q-はハロゲンイオン、硫酸イオン、燐酸イオン、炭素数1〜12の脂肪酸イオン、炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンが好適であり、特に塩素イオンが好ましい。nは0が好適である。
【0022】
本発明の(a)成分は、(a)成分を構成するモノマー構成単位に対応する単量体を通常の重合反応を行って製造することができる。あるいは、高分子化合物に後処理を施すことにより、最終的に(a)成分を得ても良い。例えば、4級アンモニウム基を有する高分子化合物の場合は、当初の単量体中に4級アンモニウム基を有する単量体を重合反応により得る方法の他に、アミノ基を有する単量体を用いて重合反応を行った物に4級化処理を施すことによって(a)成分を得てもよい。
【0023】
一般式(1)で表される単量体としては、アクリロイル(又はメタクリロイル)アミノアルキル(炭素数1〜5)−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシアルキル(炭素数1〜5)−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、N−(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、N,N−ジ(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩が等が挙げられ、これらにより一般式(3)のモノマー単位が構成される。また、一般式(2)で表される単量体としては、アクリロイル(又はメタクリロイル)アミノアルキル(炭素数1〜5)−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシアルキル(炭素数1〜5)−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、N−(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、N,N−ジ(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N−アルキル(炭素数1〜3)アミン、アリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルアミン等が挙げられる。
【0024】
一般式(2)の単量体を重合させたモノマー構成単位に、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどの4級化剤を用いてアルキル化することで(a)成分を製造することもできる。なお、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを用いる場合にはQH(Qは上記陰イオンQ-に対応する基)で示される酸でアミノ基を中和して反応させる必要がある。
【0025】
本発明では4級アンモニウム基を有するモノマー構成単位として、特にN,N−ジアリル−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩を重合して得られるモノマー構成単位、またはN,N−ジアリル−N−アルキル(炭素数1〜3)アミンを重合させたモノマー構成単位をメチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどの4級化剤を用いてアルキル化したモノマー構成単位が好ましい。
【0026】
本発明では、下記一般式(1)で表される化合物及び/又は一般式(2)で表される化合物に由来するモノマー単位を構成単位、好ましくは上記一般式(3)で表されるモノマー単位(3)以外に、本発明の効果を損なわない程度にこれらと共重合可能な単量体を共重合させて得られるモノマー構成単位を含んでいてもよい。具体的にはアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアクリル(又はメタクリル)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリル酸(又はメタクリル酸)アルキル(炭素数1〜5)、アクリル酸(又はメタクリル酸)2−ヒドロキシエチル、アクリル酸(又はメタクリル酸)−N,N−ジメチルアミノアルキル(炭素数1〜5)、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、N−ブチレン、イソブチレン、N−ペンテン、イソプレン、2−メチル−1−ブテン、N−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ブテン、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、二酸化硫黄を挙げることができる。
【0027】
本発明では特に二酸化硫黄を(a)成分中に1〜15モル%共重合させた化合物が最も好ましい。
【0028】
本発明の(a)成分はいかなる重合法によって得てもよいが、ラジカル重合法が特に好ましく、塊状、溶液、又は乳化系にてこれを行うことができる。ラジカル重合は加熱によりこれを開始してもよいが、開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(N,N−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、などのアゾ系開始剤、過酸化水素及び、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、過安息香酸などの有機過酸化物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素−Fe3+などのレドックス開始剤、など既存のラジカル開始剤を用いてもよいし、光増感剤の存在/又は非存在下での光照射や、放射線照射により重合を開始させてもよい。
【0029】
本発明の(a)成分は、重量平均分子量が好ましくは1,000〜6,000,000、より好ましくは5,000〜3,000,000、さらに好ましくは10,000〜2,000,000である。この重量平均分子量はアセトニトリルと水の混合溶媒(リン酸緩衝液)を展開溶媒とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリエチレングリコールを標準物質として求めたものである。
【0030】
<(b)成分)>
本発明の床用仕上げ剤組成物は、(b)成分として、陽イオン性界面活性剤を含有するものであり、好ましくは、第4級アンモニウム型陽イオン性界面活性剤を含有するものである。(b)成分の第4級アンモニウム型陽イオン性界面活性剤は、炭素数が6〜18、更に6〜12のアルキル基を1つ有するものが好ましく、又対アニオンは塩素イオンが好ましい。より好ましくは下記一般式(4)で表されるものである。
【0031】
【化7】

【0032】
〔式中、R1cは炭素数6〜18、より好ましくは6〜12のアルキル基、R2c、R3cはそれぞれ独立してメチル又はエチル基、R4cは炭素数1〜3のアルキレン基である。M-はハロゲンイオン、又は、炭素数が1〜3であるアルキル硫酸イオン、又は、炭素数が1〜3のアルキル基を置換基として有する、ベンゼンスルホン酸イオンである。〕
【0033】
本発明者等は、(b)成分は、殺菌剤としての効果を発揮するものの、床表面の濡れ性を著しく低下させる要因の一つとなると考えていた。しかし、本発明の(a)成分を含有する床用仕上げ剤組成物は、(b)成分、中でも一般式(4)で表される化合物を含有する場合でも、優れた濡れ性を発揮することを見出した。その結果、本発明の床用仕上げ剤組成物は、容易に床面に対して均一に押し広げることができ、また、そのままの状態で素早く乾燥するため、処理後の床は汚れが再付着しにくいものとなる。
【0034】
<その他の成分>
その他、床用仕上げ剤組成物には、(c)増粘剤、(d)香料から選ばれる1種以上を更に配合することができる。(c)成分の増粘剤は、床用仕上げ剤組成物の粘性を高めることで、使用者に濃厚なイメージを与え、更に使用時における計量を容易にする。また(d)成分の香料は、使用時、使用後の清潔感、爽快感などを与える。
【0035】
(c)成分の増粘剤は、セルロース系化合物が好ましく、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、それらの塩等を挙げることができ、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。ヒドロキシアルキルセルロースは、25℃、1%濃度の水溶液が約100〜5000mPa・sの粘度を有し、アルキル置換度(DS)が0.8〜1.5の範囲にあるものが好適に用いられる。
【0036】
(d)成分の香料は、単独の香料成分を用いてもよく、複数の香料成分を特定の比率で含有する香料組成物として用いてもよい。香料成分としては、「香料の化学」(赤星亮一著、日本化学会編 産業化学シリーズ,昭和58年9月16日発行)、「合成香料 化学と商品知識」(印藤 元一著、化学工業日報社、1996年3月6日発行)、「香料と調香の基礎知識」(中島 基貴著、産業図書(株)、1995年6月21日発行)に記載のものを用いることができる。
【0037】
具体的には炭化水素系香料、アルコール系香料、エーテル系香料、アルデヒド系香料、ケトン系香料、エステル系香料、ラクトン系香料、環状ケトン系香料、含窒素系香料を挙げることができる。
【0038】
その他の成分としては、エチレンジアミン四酢酸塩等のキレート剤、低級アルコール等のハイドロトロープ、アルカノールアミン等のアルカリ剤、(b)成分以外の殺菌剤、色素、及び水等を配合することができる。なお、床への適用後、そのまま乾燥させるという使用形態を考慮すると、本発明の床用仕上げ剤組成物は、(b)成分以外の界面活性剤を含まないことが好ましい。
【0039】
本発明の床用仕上げ剤組成物中、上記した(a)及び(b)成分、他の成分の含有量は、水に希釈して使用するとき(即ち、床水拭き用水としたとき)に適正濃度になる範囲で調整する。従って、床水拭き用水に希釈する前の床用仕上げ剤組成物としての水の量は任意であるが、前記したように(b)成分は、(a)成分の効果を濡れ性を低下させる傾向にあるため、(b)/(a)は質量比で、1.0以下が好ましく、より好ましくは0.05〜0.8、更に好ましくは0.1〜0.6である。この質量比において、有効な殺菌性を発揮させるために(b)成分が0.05以上の配合が望まれる。なお(c)成分及び(d)成分は、本効果を妨げない程度に(c)成分及び(d)成分の配合により意図される作用を達成するように調整される。
【0040】
本発明の床用仕上げ剤組成物の使い勝ってのよい構成は次の通りである。本発明では、これを濃縮液型と言う。
【0041】
床用仕上げ剤組成物中、(a)成分の含有量は0.1〜5.0質量%が好ましく、0.5〜4質量%がより好ましく、1〜3質量%が更に好ましい。また、(b)成分の含有量は、0.05〜2.5質量%が好ましく、0.25〜2.0質量%がより好ましく、0.5〜1.5質量%が更に好ましい。更に、(b)/(a)質量比が前記範囲にあることが好ましい。
【0042】
本発明の床用仕上げ剤組成物に(c)成分の増粘剤を含有するときの量は、2.0質量%以下が好ましく、0.1〜1.5質量%がより好ましく、0.1〜0.6質量%が更に好ましい。
【0043】
本発明の床用仕上げ剤組成物が(d)成分の香料を含有するときの量は、2.0質量%以下が好ましく0.1〜1.0質量%がより好ましく、0.1〜0.6質量%が更に好ましい。
【0044】
前記濃縮液型としての床用仕上げ剤組成物に、(a)〜(d)成分の以外の成分を含有するときの量は、固形分量として1.0質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
【0045】
床用仕上げ剤組成物のpH(25℃)は、素手による使用で、皮膚に対するpHの影響が懸念される理由から、3〜10が好ましく、より好ましくは6〜9である。
【0046】
水を加えて濃縮液型にした床用仕上げ剤組成物は、相分離せず、安定性に優れる以外に、床用仕上げ剤組成物を水道などの生活用水に希釈して使用する際に、増量剤の役割をして容器のキャップなどで計量し易いこと、或いは水に溶け易いことなどから、製品として好ましい剤型である。水を含む濃縮液型にする場合には、貯蔵安定性に影響を与えないようにイオン交換水を用いることが好ましい。
【0047】
<床水拭き用水>
本発明の床水拭き用水は、上記した床用仕上げ剤組成物と水を含有するものである。或いは床用仕上げ剤組成物を生活用水で希釈した使用時のものを指す。本発明の床水拭き用水中の(a)成分の含有量は40〜1000ppm、好ましくは40〜500ppm、より好ましくは50〜300ppmである。
【0048】
本発明の床水拭き用水中の(b)成分の含有量は、25〜1000ppm、好ましくは25〜500ppm、より好ましくは40〜500ppm、更に好ましくは25〜150ppmである。なお、(b)/(a)の質量比率は、床用仕上げ剤組成物の比率と同様である。
【0049】
本発明の床水拭き用水が(c)成分の増粘剤を含有するときの量は、100ppm以下が好ましく、10〜80ppmがより好ましく、10〜50ppmが更に好ましい。
【0050】
本発明の床水拭き用水が(d)成分の香料を含有するときの量は、100ppm以下が好ましく、10〜80ppmがより好ましく、10〜50ppmが更に好ましい。
【0051】
本発明の床水拭き用水が、(a)〜(d)成分及び水以外の成分を含有するときの量は、固形分量として50ppm以下が好ましく、40ppm以下がより好ましく、30ppm以下が最も好ましい。
【0052】
床用仕上げ剤組成物と水を含有する床水拭き用水のpH(25℃)は、3〜10が好ましく、より好ましくは6〜9である。
【0053】
<床の仕上げ処理方法>
本発明の床の仕上げ処理方法は、上記した床水拭き用水(床水拭き用水)を用い、通常のモップ、雑巾等で人為的に、或いは床洗浄用機器(床用パッドまたは床用ブラシを装着したポリッシャー等)や自動床洗浄機を用いて機械的に床拭きした後、そのまま乾燥させる方法である。乾燥は、室温または加温した空気を強制的に吹き付けることで達成してもよいが、本発明では床拭きした後、室温で放置するだけで、床に対して十分に速い乾燥が得られる。
【0054】
本発明の床の仕上げ処理方法においては、床水拭き用水の床面に対する塗れ性が良いため、モップ等で床を拭いたとき、床面に対して床水拭き用水が均一に拡がっていく。よって、拭いた後は乾燥性が良く、後拭きも不要である。
【0055】
本発明では、本発明の床用仕上げ剤組成物を水で希釈して、床水拭き用水を調製する工程(i)、床水拭き用水を用いて床拭きする工程(ii)、床を乾燥させる工程(iii)、を有する床の仕上げ処理方法が提供される。工程(i)では、(a)成分の濃度が40〜1000ppmとなるように床用仕上げ剤組成物を水で希釈して、床水拭き用水を調製することが好ましい。また、工程(ii)の後、床水拭き用水を濯ぐことなく工程(iii)を行うことができる。
【実施例】
【0056】
表1に示す各成分を混合して、本発明の床用仕上げ剤組成物(濃縮液型)を得た。実施例と比較例について、下記の各試験を行った。結果を表1に示す。
【0057】
1.汚れの再付着性評価方法
表面が清浄な半磁器タイル(INAX社製SP−100、10×10cm)に対し、各床用仕上げ剤組成物を水で1%になるように希釈した床水拭き用水〔(a)成分を含むものについては(a)成分の濃度は200ppm〕を0.7ml/100cm2の割合で滴下し、脱脂綿で全面に塗布しそのまま3分間乾燥した後、タイル全面に、ふるい(目開き500μm)を通して、モデル汚れとして砂*10gを撒いて、再付着の有無を評価した。
*砂:ペット(猫)のトイレ用砂(販売元:ホームセンターコーナン商事)を使用
【0058】
(汚れの再付着性))
◎=タイルに全く砂が付かない。
〇=ごく僅かに砂が付着するもののほとんど付かない。
△=タイルの約5%程度の面積に砂が付着する。
×=タイル全体にまだらに砂が付着する。
【0059】
2.pH
床用仕上げ剤組成物のpHは、水酸化ナトリウム及び塩酸により調整した。またpHの測定は、JIS Z 8802の7.2(測定方法)の手順により、測定温度は25℃で行った。
【0060】
【表1】

【0061】
(a)成分
重合体a−1:塩化ジアリルジメチルアンモニウム・マレイン酸とSO2(モル比70/25/5)の共重合体(重量平均分子量 1万5千、有効分25質量%の水溶液として使用、表中は純分を示した。)
重合体a−2:塩化ジアリルジメチルアンモニウム・アクリル酸共重合体(モル比64/36)、マーコート280(重量平均分子量 170万、Calgon社製、有効分40質量%の水溶液として使用、表中は純分を示した。)
【0062】
(b)成分
陽イオン性界面活性剤:塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩(アルキル基の炭素数が12〜16のもの)
【0063】
(その他の成分)
(c)成分
セルロース型増粘剤:ヒドロキシエチルセルロースエーテル(商品名 HEC−SE850K、ダイセル化学工業(株)製)
【0064】
(d)成分
下記成分からなる香料
ヘキシルシンナミックアルデヒド(Hexyl Cinnamic Aldehyde)8.0質量%、p−t−ブチルシクロヘキシルアセテート(p-t-p-t-Butylcyclohexyl acetate)6.0質量%、2-フェノキシエチルブチレート(Phenoxy Ethyl Butyrate) 6.0質量%、サリチル酸ベンジル(Benzyl Salicylate)3.0質量%、シトロネロール(Citronellol)3.0質量%、テトラヒドロリナロール(Tetrahydro linalool)3.0質量%、アセチルセドレン(Acetyl Cedrene)3.0質量%、ジプロピレングリコール(溶剤)合計を100質量%とするための残部
【0065】
非イオン性界面活性剤1:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン基の平均付加モル数が12)
陰イオン性界面活性剤1:アルキル基の炭素数が12の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
両性界面活性剤1:ラウリルジメチルアミオキシド
両性界面活性剤2:ラウリン酸アミドプロピルスルホベタイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分及び(b)成分を含有する床用仕上げ剤組成物。
(a)成分:下記一般式(1)で表される化合物及び/又は一般式(2)で表される化合物に由来するモノマー単位を構成単位として有する重合体
(b)成分:陽イオン性界面活性剤
【化1】


〔式中、R1、R2、R3、R7、R8、R9は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。X、Yは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキレン基、−COOR12−、−CONHR12−、−OCOR12−、−R13−OCO−R12−から選ばれる基である。ここでR12、R13は、それぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキレン基である。R4は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR12C=C(R3)−X−である。R5は炭素数1〜3のアルキル基、又はヒドロキシアルキル基であり、R6は炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基であり、Z-は陰イオンを示す。R10は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR78C=C(R9)−Y−である。R11は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕
【請求項2】
(a)成分が、下記一般式(3)の構成単位を有する請求項1に記載の床用仕上げ剤組成物。
【化2】


〔式中、R1bは炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、m及びnはそれぞれ0又は1の数であり、m+n=1である。Q-は陰イオン基である。〕
【請求項3】
(b)成分が、下記一般式(4)で示される第4級アンモニウム型陽イオン性界面活性剤である請求項1又は2に記載の床用仕上げ剤組成物。
【化3】


〔式中、R1cは炭素数6〜18のアルキル基、R2c、R3cはそれぞれ独立してメチル又はエチル基、R4cは炭素数1〜3のアルキレン基である。M-はハロゲンイオン、又は、炭素数が1〜3であるアルキル硫酸イオン、又は、炭素数が1〜3のアルキル基を置換基として有する、ベンゼンスルホン酸イオンである。〕
【請求項4】
(a)成分の含有量が0.1〜5質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の床用仕上げ剤組成物。
【請求項5】
(b)/(a)の質量比が、1.0以下である請求項1〜4のいずれかに記載の床用仕上げ剤組成物。
【請求項6】
床への適用後そのまま乾燥させることができる、請求項1〜5のいずれかに記載の床用仕上げ剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の床用仕上げ剤組成物と水を含有しており、(a)成分を40〜1000ppm、及び(b)成分を25〜1000ppmの濃度で含有する、床水拭き用水。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の床用仕上げ剤組成物を水で希釈して、床水拭き用水を調製する工程(i)、床水拭き用水を用いて床拭きする工程(ii)、床を乾燥させる工程(iii)、を有する床の仕上げ処理方法。
【請求項9】
工程(i)において、(a)成分の濃度が40〜1000ppmとなるように床用仕上げ剤組成物を水で希釈して、床水拭き用水を調製する、請求項8に記載の床の仕上げ処理方法。
【請求項10】
工程(ii)の後、床水拭き用水を濯ぐことなく工程(iii)を行う、請求項9又は10に記載の床の仕上げ処理方法。

【公開番号】特開2009−275075(P2009−275075A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125632(P2008−125632)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】