説明

床用保護シート及びその施工方法

【課題】 床面に強固に接着する一方で施工及び交換を容易に行なうことが可能な床用保護シート及びその施工方法を提供する。
【解決手段】 建物の床面に貼着する床用保護シートSであって、ベース層1と、ベース層1の裏面に設けられて床面に接着する接着層3とを備える。接着層3はベース層1の裏面に設けられた熱溶着接着層31と、熱溶着接着層31の表面の少なくとも一部に設けられた微粘着接着層32とを含む。床用保護シートSを施工する際に、微粘着接着層32を利用して床用保護シートSを床面に仮止めすることで、床面に対する床用保護シートの位置決めができ、床用保護シートの一部を加熱して熱溶着接着層31を溶融して床面に対して強固に接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物等の床面に貼着する床用保護シートとその貼着及び保守管理を含めた施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
公共の建物のように多数の人が出入りする建物では、通常コンクリート等の床面に塩化ビニールシートやポリオレフィンタイル等の床材(以下、これらの床材を床用保護シートと称する)を貼着する床構造がとられている。これらの床用保護シートは表面にワックスがコーティングされているが、経時的な使用で表面が汚染ないし磨耗される等して劣化されたときには、ワックスコーティングを行って外観上の見栄えを改善している。ワックスコーティングは人の出入りが無いとき、あるいは人の通行を止めた状態で行う必要があり、またワックスをコーティングするための前処理や後処理が必要であり、作業に時間がかかる。そのため、多数の作業者により短時間で作業を完了させることが要求され、人件費等を含めてコスト型になるという問題がある。また、表面が劣化して見栄えが低下した床面はワックスコーティングを行っても初期の外観上の品質を保持することが難しいという問題がある。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1では、合成樹脂フィルム等の基材の表面に紫外線硬化樹脂皮膜を設け、裏面に微粘着性接着剤層を設けた床用保護シートが提案されている。この床用保護シートは、裏面の微粘着性接着剤によって建物の床面に貼着することで施工でき、また表面の紫外線硬化樹脂皮膜を紫外線照射によって硬化させることにより光沢性が得られるので床面の外観上の見栄えが向上できる。また、既に床面に貼着されている床用保護シートについて、表面が劣化されて外観上の見栄えが低下した領域の床用保護シートを剥離した後、新たな床用保護シートに貼り替えることで当該領域の見栄えを改善することが可能になる。そのため、ワックスコーティングによる保守管理に比較して作業時間を短縮でき、かつコストを低減する上で有効になる。
【特許文献1】特開2005−68687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の床用保護シートは、床面に貼着するために基材の裏面に微粘着性接着剤層を設けた構成となっている。この微粘着性接着剤層は、特許文献1の記載によれば、「バキューム・掃除機などの吸引によるはがれ現象や、ポリッシャー等の清掃機器による皺の発生や派陸現象が見られない程度の接着力を有し、しかも床材の保護のために貼着した保護シートが、磨耗して交換を要するような場合には、容易に剥離してその作業の妨げにならない程度の再剥離性が必須の要件となり」のように、接着し易くかつはがれ易いという相反する機能を有するものが提案されている。具体的には、溶媒希釈タイプのアクリル系共重合体を主成分とし、希釈剤としては酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、水等が選択される。
【0005】
そのため、特許文献1の床用保護シートは、その接着力と剥離性のバランスが問題になり、接着力を高めると保護シートの剥離が困難になって床用保護シートの交換が困難になる。また、床用保護シートを新規に施工する際に、複数の床用保護シートを並べて位置決めを行う際に、床面上に床用保護シートを置いただけで床面に接着してしまうため位置決めが困難になり、施工が困難になる。一方、剥離性を高めると通常の使用によって床用保護シートが動いてしまったり、剥離してしまう等の重要な問題となる。したがって、床用保護シートを貼着する床面の材質が例えばコンクリート床、木床のように異なる材質の場合には、適切な接着力や剥離性を得ることが困難になるという問題が生じる。また、特許文献1のように、単に床用保護シートの裏面に接着剤層を設けただけでは、複数の床用保護シートを並んで貼着したときに、隣接する床用保護シートのつなぎ目に隙間が生じてしまい、この隙間を通して水分が床用保護シートの裏面にまで浸透し、接着剤の接着効果を低下させてしまうという問題も生じる。また、隙間に人の足や清掃機器等が引っ掛かって床用保護シートが剥離してしまうという問題も生じる。
【0006】
本発明の目的は、床面に対する接着力を高める一方で施工及び交換等の保守管理を容易に行なうことができ、さらに保護シートのつなぎ目における防水性を高める等して、高品質で高信頼度の床を構築することが可能な床用保護シート及びその施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、建物の床面に貼着する床用保護シートであって、基材としてのベース層と、ベース層の裏面に設けられて床面に接着する接着層とを備え、接着層はベース層の裏面に形成された熱溶着接着層と、熱溶着接着層の表面の少なくとも一部に形成された微粘着接着層とで構成される。また、本発明の床用保護シートは、ベース層の表面にUV(紫外線)硬化型樹脂やEB(電子線)硬化型樹脂からなる表面保護層を備えることが好ましい。
【0008】
本発明の床用保護シートの施工方法は、ベース層の裏面に熱溶着接着層と微粘着接着層を二層に設けた接着層を備える床用保護シートを床面に貼着するに際し、床用保護シートを床面上に載置し、微粘着接着層を利用して床面に微粘着力状態で接着して床用保護シートを仮止めする工程と、仮止め工程の後に床用保護シートの一部を加熱し、熱溶着接着層を溶融して床面に接着する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、床用保護シートを施工する際に、微粘着接着層を利用して床用保護シートを床面に仮止めすることで、床面に対する床用保護シートの位置決めを行うことができ、その後に床用保護シートの一部を加熱して熱溶着接着層を溶融することで、床面に対して強固に接着することができる。これにより、床面に対する接着力を高める一方で床用保護シートの施工を容易に行うことができる。また、既に施工されている床用保護シートの一部を加熱することで熱溶着接着層による接着を解消することができるので床用保護シートの交換も容易である。また、施工された床用保護シートはつなぎ目の部分に溶融された熱溶着接着層が充填されるので、つなぎ目における防水性や接着性を高めて信頼性の高い施工が可能になる。
【実施例1】
【0010】
次に、本発明の実施例1を図面を参照して説明する。図1は本発明の床用保護シートSの断面図であり、ベース層1と、このベース層1の表面に設けられた表面保護層としてのUV層2と、ベース層1の裏面に設けられた接着層3とで構成されている。ベース層1は基材として60〜100μm程度の厚さの合成樹脂フィルムで構成される。例えば、塩化ビニルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等の合成樹脂フィルムで構成される。また、合成樹脂フィルムを床面に施工したときの床面の装飾用としてベース層の表面は任意の色に着色され、あるいは各種の模様が描かれていてもよい。
【0011】
表面保護層としてのUV層2は、UV(紫外線)硬化樹脂層で構成される。或いは本発明における表面保護層としてはEB(電子ビーム)硬化樹脂層で構成されてもよい。UV硬化樹脂層は、ベース層の表面にUV硬化樹脂を塗布し、UVを照射して硬化させて形成される。EB硬化樹脂層は同様にベース層の表面にEV硬化樹脂を塗布し、EBを照射して硬化させる。これらの樹脂としては、UV硬化型及びEB硬化型モノマー並びにオリゴマーのうち少なくとも1種がアクリル系樹脂、シロキサン系樹脂で構成される。UV層は紫外線をカットすることでベース層が紫外線により劣化することを防止し、かつベース層1の表面に施した着色や模様が劣化することを防止する。また、UV層2を構成する樹脂として透明でかつ光沢性のあるものを採用することで、ベース層1の表面に光沢性を生じさせて外観上の見栄えを向上する。UV層2は数μm〜10μm程度の厚さに形成される。
【0012】
接着層3は、熱溶着接着層31と微粘着接着層32とで二層に構成されている。すなわち、ベース層1の裏面の全面に熱溶着接着層31が形成され、さらにこの熱溶着接着層31の表面の少なくとも一部に微粘着接着層32が形成されている。ここでは全面に微粘着接着層32が形成されている。熱溶着接着層31は、加熱されたときに溶融してコンクリート等の床面に対して接着することが可能な接着剤であり、10〜50μm程度の厚さに形成される。この熱溶着接着層31は、例えば熱可塑性エストラマーをベースにしたシチレン系合成ゴム等で形成され、コンクリート等の床面に対する接着には比較的に大きな接着力を得ることができる。また、微粘着接着層32はホットメルト微粘着型のポリエステル系極性基共重合体の接着剤で構成され、床面に対して接着したときに、床面の平面に沿った方向には粘着力を有するが、床面から垂直方向の粘着力は極めて小さい接着剤で形成され、数〜10μm程度の厚さに形成される。すなわち、床用保護シートSを床面上に載置したときに、床用保護シートを床面上の任意の位置に仮止め状態に接着することが可能であるが、その一方で床用保護シートSを床面から剥がして床面に対して任意に位置決めすることが可能になる。この微粘着接着層32は、実施例1では熱溶着接着層の全面に形成しているが、熱溶着接着層31の表面の一部、ここでは図2(a)のように格子状の領域、あるいは図2(b)のように島状の領域にのみそれぞれ形成してもよい。
【0013】
以上の構成の床用保護シートSを床面に貼着して施工する方法について説明する。図3(a)のように、床面Fを清浄した後、所要のサイズにカットした1枚ないし複数枚の床用保護シートSを床面F上に載置する。このとき、載置された床用保護シートSは微粘着接着層32が床面Fに接触されるため、床用保護シートSを表面側から床面に若干の力で押圧することで微粘着接着層32によって微粘着力で床面Fに接着される。この微粘着力は前述のように床面F上で床用保護シートSが動くことはないが床用保護シートSの一部を持ち上げるだけで簡単に床面Fから剥離することが可能な粘着力である。したがって、床面F上で各床用保護シートSを若干持ち上げて移動させることは容易であり、これにより複数の床用保護シートSをそれぞれ最適な位置に位置決めして床面F上に隙間なく配置することが可能になる。このとき、図2に示したように微粘着接着層32を熱溶着接着層31の全面あるいは一部にのみ形成しておくことで、微粘着力を調整することが可能である。
【0014】
次いで、図3(b)のように、載置した床用保護シートSの周縁部ないし隣接する床用保護シートSのつなぎ目部分を加熱する。このとき床用保護シートSを床面Fに対して若干の力を加えることが好ましい。この加熱により熱溶着接着層31が溶融されて床面Fに溶着し、床用保護シートSはこの熱溶着接着層31によって床面に接着される。このとき、微粘着接着層32は熱溶着接着層31と同時に溶融されて一体化されるので、熱溶着接着層31が表面に露呈した状態となり床面Fに接触して接着することが可能になる。これにより、床用保護シートSは周縁部やつなぎ目の領域においてのみ熱溶着接着層31によって床面Fに大きな接着力で接着されることになる。床用保護シートSの周縁部やつなぎ目以外の領域は熱溶着接着層31が溶融されることがないので依然として微粘着接着層32によって微粘着力の状態で接着された状態である。
【0015】
このようにして床用保護シートSを床面Fに接着することで床用保護シートSの新規な施工が完了する。施工された床用保護シートSは、周辺部やつなぎ目の部分において熱溶着接着層31によって床面に大きな接着力で接着されるので、通常の使用状態、すなわち床用保護シートSの上を人が歩行したり、掃除機による吸引やポリッシング等の清掃によっても床面Fから剥離されることはなく、また床面F上で移動されることもない。また、隣接する床用保護シートSとのつなぎ目では、図3(b)に示したように、溶融した熱溶着接着層31の一部がベース層1ないしUV層Sと同一面に達する程度まで流動されて床用保護シートSのつなぎ目の隙間に充填されることになり、この充填によって熱溶着接着層31がシール層として機能するようになる。これにより、床用保護シートSの周縁部が露呈していたときのようにつなぎ目の隙間から水が裏面にまで浸透することが防止され、耐水性が高められ、接着力が保持される。また、床用保護シートSの周縁部に人の足や清掃機器等が引っ掛かることもなく、引っ掛かった場合の力によって床用保護シートSが剥離されることもない。
【0016】
一方、床面Fに既に施工してある床用保護シートSが磨耗されあるいは劣化した場合には、劣化した床用保護シートSのみを交換することが可能である。この場合には、図3(c)のように、交換しようとする床用保護シートSの周縁部やつなぎ目の部分を加熱する。この加熱によってこれらの部分における熱溶着接着層31を再度溶融する。この溶融により、床用保護シートSは周縁部やつなぎ目の領域での接着力が無くなり、またその他の領域は微粘着接着層32による接着のみであるため、図3(d)のように、当該床用保護シートSを床面Fから簡単に剥離することができる。図示は省略するが、床用保護シートSを剥離した上でこれと同じ寸法に形成した新たな床用保護シートを床面に載置する。このとき、微粘着接着剤での微接着力により新規の施工時と同様に床用保護シートの位置決め、並びに寸法合わせを容易に行うことができる。床用保護シートの位置決めが完了した後は、図3(b)に示したと同様に、当該床用保護シートの周縁部やつなぎ目の領域を加熱して熱溶着接着剤層31を溶融して接着を行ない、床用保護シートを床面に接着する。この接着状態では、新規の施工時と同様に熱溶着接着層31による大きな接着力での接着が可能であり、また溶融された熱溶着接着層31がつなぎ目に充填されることで防水効果が得られることも同じである。
【0017】
ここで実施例1では予め所定の寸法に加工されている床用保護シートを前提に説明したが、図4のように床用保護シートをロール状シートRSに形成しておき、施工現場において任意の寸法に切断して利用する場合や、図示は省略するが大型のシートを同様に施工現場において任意の寸法、形状に切断して利用する場合にでも同様に適用することが可能である。
【0018】
本発明の床用保護シートは必ずしも表面保護層としてUV層を備えるものではなく、例えばベース層の表面を防水加工やはっ水加工する等してUV層以外の表面処理を施した床用保護シートや、ベース層の表面に特に表面処理を施していない廉価な床用保護シートについても本発明を適用することが可能である。すなわち、本発明はベース層の表面の形態にかかわらず、ベース層の裏面の接着層を熱溶着接着層と微粘着接着層の2層構造とすることで実施例1と同様な施工に有利な作用効果を期待することができる。また、本発明における熱溶着接着層と微粘着接着層は名称の如何にかかわらず、それぞれ加熱により溶融して接着性が得られる接着剤と、接触させたときに小さな接着性が得られる接着剤であれば同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の床用保護シートの断面図である。
【図2】床用保護シートの裏面の平面図である。
【図3】床用保護シートの施工方法を説明する断面図である。
【図4】床用保護シートの変形例の斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
S 床用保護シート
F 床面
1 ベース層
2 UV層(表面保護層)
3 接着層
31 熱溶着接着層
32 微粘着接着層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床面に貼着する床用保護シートであって、基材としてのベース層と、前記ベース層の裏面に設けられて前記床面に接着する接着層とを備え、前記接着層は前記ベース層の裏面に形成された熱溶着接着層と、前記熱溶着接着層の表面の少なくとも一部に形成された微粘着接着層とで構成されることを特徴とする床用保護シート。
【請求項2】
前記ベース層の表面にUV(紫外線)硬化型樹脂やEB(電子線)硬化型樹脂からなる表面保護層を備えることを特徴とする請求項1に記載の床用保護シート。
【請求項3】
ベース層の裏面に熱溶着接着層と微粘着接着層を二層に設けた接着層を備える床用保護シートを床面に貼着するに際し、前記床用保護シートを床面上に載置し、前記微粘着接着層を利用して床面に微粘着力状態で接着して床用保護シートを仮止めする工程と、仮止め工程の後に前記床用保護シートの一部を加熱し、前記熱溶着接着層を溶融して床面に接着する工程とを含むことを特徴とする床用保護シートの施工方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−85114(P2007−85114A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276974(P2005−276974)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(505360937)株式会社エスウェル (5)
【Fターム(参考)】