説明

床置用RFIDタグおよびRFID検知装置

【課題】本発明は、床などに置いて用いるのに適した床置用RFIDタグおよびRFID検知装置に関するものであり、靴や車のタイヤなどで踏まれても破損しにくくすることを目的とする。
【解決手段】床置用RFIDタグ1は、タグICチップ7とタグアンテナ8とを有するものであって、タグアンテナ8は、可撓性を有する第1の導電板9と、第1の導電板9の上にそれぞれの間に間隙をあけて並べられた複数個の誘電体製の小片10と、複数個の小片10の上に重ねられた可撓性を有する第2の導電板11と、少なくとも第2の導電板11の上面を保護する保護部材12とを有する。また、この床置用RFIDタグ1を床面に設置して、高所に設けたリーダライタ装置から電波で床置用RFIDタグ1との交信を行うことで床置用RFIDタグ1の上の人や車などの物体の検知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床などに置いて用いるのに適した床置用RFIDタグおよびRFID検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人や物体の検知を効率化するために、RFID(Radio Frequency IDentification)タグが利用されている。例えば、RFIDタグが床に設置され、人の位置情報の検知に利用されていた。
【0003】
このような床に設置される床置用RFIDタグは、人や車によって踏まれたり、商品搬入用のキャリアによって踏まれたりするため、その重量がかかって折れたり切断されたりして破損するおそれがあった。
【0004】
このため、従来の床置用RFIDタグとしては、踏みつけられた場合にもタグICチップやタグアンテナの導電体が破損しないように、タグICチップやタグアンテナの導電体の近くにそれらよりも厚さが厚く屈曲しにくい補強材を配置して保護し、PETシートとゴムシートなどで挟み込んだものが提案されていた(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2005−100114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の床置用RFIDタグでは、靴、特にハイヒールの踵で踏まれるなどして小面積に大きい圧力がかけられたときに、補強材でタグアンテナの導電板などを十分に保護できず、割れて破損してしまうという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、例えばハイヒールの踵で踏まれるなどして小面積に大きい圧力がかけられた場合であっても破損しにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の床置用RFIDタグは、タグICチップと、このタグICチップと接続されたタグアンテナとを有する床置用RFIDタグであって、タグアンテナは、可撓性を有する第1の導電板と、第1の導電板の上にそれぞれの間に間隙をあけて並べられた複数個の誘電体製の小片と、複数個の小片の上に重ねられた可撓性を有する第2の導電板と、少なくとも第2の導電板の上面を保護する可撓性を有する保護部材とを備えていることを特徴とする。このような構成により、所期の目的を達成するものである。
【0008】
また、本発明のRFID検知装置は、上記の床置用RFIDタグと、床置用RFIDタグと交信するためのリーダライタ装置とを備え、床置用RFIDタグが床に設置され、リーダライタ装置のアンテナが床置用RFIDタグを俯瞰する位置に設けられていることを特徴とする。このような構成により、所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明は、可撓性を有する第1の導電板の上に相互間に間隙をあけて誘電体製の複数個の小片を並べ、これらの小片の上に可撓性を有する第2の導電板を重ね、少なくとも第2の導電板を可撓性を有する保護部材で保護するので、例えばハイヒールの踵で踏まれるなどして小面積に大きい圧力がかけられた場合であってもそれぞれの小片が個々に移動することによって応力を分散させ、小片が破損することをなくすため、床置用RFIDタグを破損しにくくすることができる。
【0010】
また、本発明はこのような床置用RFIDタグと、床置用RFIDタグと交信するためのリーダライタ装置とを備え、床置用RFIDタグが床に設置され、リーダライタ装置のアンテナが床置用RFIDタグを俯瞰する位置に設けられているので、アンテナと床置用RFIDタグとの間を遮る人や車などの物体の検知を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態)
まず、床置用RFIDタグが用いられるRFID検知装置の一例について図1および図2を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態における床置用RFIDタグ1を含むRFID検知装置2の構成を示す斜視図、図2は同RFID検知装置2の使用状態を示す説明図である。ここでは、床置用RFIDタグ1を用いたRFID検知装置2により駐車場などの駐車スペース3に駐車している車があるか否かを検知する場合を例として説明する。
【0013】
図1に示すように、RFID検知装置2はリーダライタ装置5と床置用RFIDタグ1とを備え、リーダライタ装置5は本体部5aとアンテナ4とを有している。
【0014】
床置用RFIDタグ1は、駐車場の各駐車スペース3の中央部床面に設置されている。床置用RFIDタグ1には、駐車スペース3ごとに異なったコードが割り当てられて、この割り当てられたコードが予め内蔵メモリに書き込まれている。そして、これらの床置用RFIDタグ1を俯瞰することができる位置、例えば駐車スペース3の近傍に設けられた柱などの高所にアンテナ4が設置されている。アンテナ4は、駐車場の管理を行う管理室などの屋内に設けられているリーダライタ装置5の本体部5aに接続されている。なお、床置用RFIDタグ1は、後述するように電源を必要としないため、駐車スペース3の床面でなく、予め床の内部に設置するようにしてもよい。
【0015】
リーダライタ装置5は本体部5aで質問信号を生成し、所定の周期でアンテナ4から各床置用RFIDタグ1に対して質問信号を送信する。このとき、図2(A)に示すように、駐車スペース3に車が駐車されていなければ、アンテナ4からの質問信号は障害なく床置用RFIDタグ1に届き、各床置用RFIDタグ1から所定の応答信号が返信される。リーダライタ装置5は所定の応答信号をアンテナ4で受信し、この所定の応答信号から各床置用RFIDタグ1が記憶保持している割り当てコードを検出する。リーダライタ装置5は、この割り当てコードに対応する駐車スペース3には「駐車なし」と判断して、管理室などに設置されている表示装置(図示せず)などに駐車情報を出力する。これにより、表示装置は、駐車情報に基づいて駐車場の空車状態を把握して画面に表示するとともに、駐車場入り口付近に設けられた電光掲示板に「空車」の表示を行うことができる。割り当てコードとして、例えばaの駐車スペース3には「A」、bの駐車スペース3には「B」などの各駐車スペース3を識別するための識別情報を割り当てる。
【0016】
一方、図2(B)に示すように、bの駐車スペース3に車6が駐車された場合、アンテナ4からの質問信号が車6によって遮られ床置用RFIDタグ1に届かない。このため、床置用RFIDタグ1からの所定の応答信号がアンテナ4で受信されなくなる。リーダライタ装置5は、所定の時間を待って所定の応答信号が得られないときに、識別情報に基づいて「駐車あり」と判断する。すなわち、リーダライタ装置5は、割り当てコードの照合により、コード「B」が検知されないときにはbの駐車スペース3に設置された床置用RFIDタグ1からの応答信号が得られていないことを検知することができ、このことからbの駐車スペース3「駐車あり」と判断する。そして、リーダライタ装置5は、bの駐車スペース3に車があることを表示装置に出力する。表示装置は、この駐車情報を画面に表示する。そして、すべての駐車スペース3に車が駐車された場合に、駐車場の入口に設置された電光掲示板に「満車」の表示を行う。
【0017】
このような構成により、RFID検知装置2は床置用RFIDタグ1を用いて車の駐車のありなしを検知することができる。なお、同様に部屋の床面などに床置用RFIDタグ1を設置し、床置用RFIDタグ1とアンテナ4との間を遮る人物を検知することにより、人物の通過やその位置を検知することもできる。
【0018】
また、床置用RFIDタグ1は、駐車場や部屋の床面に設置されて用いられるため、靴の踵や車のタイヤなどによって常に踏まれて強い圧力が加えられる。このため、そのような圧力によっても容易に破損しない信頼性の高いものでなければならない。
【0019】
そこで本実施の形態における床置用RFIDタグ1は、上記した用途に用いられた場合であっても、破損しにくくしている。
【0020】
次に、図3を参照しながら、このような床置用RFIDタグ1の構成について説明する。図3は、本発明の実施の形態における床置用RFIDタグ1の構造を示しており、図3(A)は床置用RFIDタグ1の正面断面図、図3(B)は図3(A)の一部を破砕して示した破砕斜視図である。
【0021】
床置用RFIDタグ1は、図3に示すように、全体が薄い直方体形状に構成され、中央部にタグICチップ7が取り付けられ、周辺にタグアンテナ8が形成されている。床置用RFIDタグ1は、可撓性を有する第1の導電板9と、第1の導電板9の上に、それぞれの間に間隙をあけて並べられた複数個の誘電体製の小片10と、この小片10の上に重ねられた可撓性を有する第2の導電板11と、少なくとも第2の導電板11の上面を保護するように設けられた保護部材12とを備えている。
【0022】
第1の導電板9は、タグアンテナ8のグランド板となるもので、銅やアルミニウムなどの金属シートで形成される。
【0023】
第2の導電板11は、タグアンテナ8の放射板となるもので、保護部材12の下面に銅やアルミニウムなどの金属シートが印刷、化学めっき、あるいは接着などによって形成されている。
【0024】
複数個の小片10としては、高誘電率で、かつ絶縁できるものを用いる。小片10は、例えば誘電体であるセラミックなどの焼成物や、ブチルゴムなどの樹脂にセラミックなどの誘電体粒を混成した混合物、または、樹脂のみで形成されている。これらの小片10は、両面接着テープや接着剤などの接着部材13、14を用いて第1の導電板9、第2の導電板11に固定される。小片10は空気などに比べて誘電率が高いため、第1の導電板9、第2の導電板11の間隔を狭くしても、第1の導電板9と第2の導電板11とで構成されるタグアンテナ8の電気的特性を交信用の電波の周波数に整合させることができる。すなわち、小片10では、入射してきた電波を屈折させて電波路としての距離を長くすることができるため、低誘電率な空気と比較して、その厚みを薄くすることができる。これにより、床置用RFIDタグ1を薄く製造することができる。その誘電率や大きさ、用いる個数などは用途に合わせて設計すればよい。なお、小片10は第1の導電板9または第2の導電板11のいずれかに固定されてもよい。あるいは、第1の導電板9または第2の導電板11のいずれかに小片10の形状に沿った凹部を設け、小片10をこの凹部に嵌め合わせて位置決めするようにしてもよい。なお、小片10の中央部に凹部を設け、第1の導電板9または第2の導電板11のいずれかに小片10の凹部に嵌め合わせる凸部を設けるようにしてもよい。
【0025】
保護部材12は、可撓性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されている。なお、少なくとも第1の導電板9と第2の導電板11とを保護するように両側から保護部材12で挟み込むようにしてもよい。これにより、さらに破損しにくくなる。さらに、少なくとも第1の導電板9と第2の導電板11とを保護するように両側から保護部材12で挟み、密閉してもよい。これにより、破損しにくくするとともに、防水にもなり、雨などの環境においても電気的な特性の劣化を抑えることができる。
【0026】
タグICチップ7は、保護部材12の中央部に接着されて取り付けられ、第2の導電板11に電気的に接続されている。
【0027】
床置用RFIDタグ1は、第1の導電板9側を下にして、駐車場や部屋の床面の上に設置されて用いられる。
【0028】
以上のように床置用RFIDタグ1は、複数に分割して小片とした高誘電率の小片10を第1の導電板9と第2の導電板11との間に隙間をあけて並べ、少なくとも第2の導電板11を可撓性を有する保護部材12で保護するようにしたことにより、床置用RFIDタグ1が靴や車によって踏まれて局所的に大きい圧力が加えられた場合でも、それぞれの小片10が少しずつずれることにより応力を分散させることができる。これにより、小片10や第1の導電板9、第2の導電板11が切損したり割れたりするおそれを少なくすることができる。したがって、床置用RFIDタグ1は、全体として衝撃などによっても破損しにくくなり、床置として好適なものができる。
【0029】
次に、このような床置用RFIDタグ1と、床置用RFIDタグ1と交信するリーダライタ装置5とを備えているRFID検知装置2の電気的な回路構成および動作について説明する。
【0030】
まず、図4を参照しながら、RFID検知装置2の回路構成について説明する。図4は、本発明の実施の形態における床置用RFIDタグ1を含むRFID検知装置2の回路ブロック図である。
【0031】
RFID検知装置2は、床置用RFIDタグ1と、床置用RFIDタグ1と交信するリーダライタ装置5とを備えている。
【0032】
床置用RFIDタグ1は、割り当てコードなどのタグ情報を記憶保持するタグICチップ7と、タグICチップ7に接続された信号送受信用のタグアンテナ8とを有する。タグICチップ7は、受信信号からタグアンテナ8で生成された電力を整流するダイオード15、整流された電力を蓄積するコンデンサ17、インピーダンスを整合させるコンデンサ16、各部を制御するための制御部18、受信信号を復調する復調部19、応答信号を変調する変調部20およびスイッチ21、タグ情報を記憶しているメモリ22を有する。
【0033】
リーダライタ装置5は、各部の動作や通信を制御する制御部23、床置用RFIDタグ1に向けて送信する質問信号を変調する変調部24および送信部25、床置用RFIDタグ1からの応答信号を信号処理し復調する受信部26および復調部27、これらの各部にクロック信号を供給するクロック部28、送受信信号を分離する分離部29および各部に電源を供給する電源部30を有する。そして、このリーダライタ装置5は送受信用のアンテナ4に接続されている。
【0034】
次に、図1および図4を参照しながら、RFID検知装置2の動作について説明する。
【0035】
リーダライタ装置5は、電源部30の電力により各部が起動される。そして、床置用RFIDタグ1と交信を開始する。まず、リーダライタ装置5は、制御部23により、それぞれの床置用RFIDタグ1用の質問コードを作成し、変調部24で所定の周波数の搬送波をその質問コードに従って変調する。所定の周波数として、UHF帯(例えば952MHz〜955MHz)やマイクロ波帯(例えば2.45GHz)などの周波数を利用することができる。これを送信部25で増幅した後、分離部29を介して、アンテナ4から床置用RFIDタグ1のタグICチップ7に向けて質問信号を送信する。そして、リーダライタ装置5は、タグICチップ7からの応答信号をアンテナ4で受信し、後述するように、復調してタグ情報を読み取る。
【0036】
まず、リーダライタ装置5は、タグICチップ7に、例えば「割り当てコードはAか?」という問い合わせが行われる。
【0037】
次に、この問い合わせは、変調部24により、送信部25、分離部29、アンテナ4を介して、床置用RFIDタグ1のタグICチップ7に向けて出力される。なお、各部にクロック部28からクロックが供給され、同期などのタイミング調整がなされる。
【0038】
床置用RFIDタグ1は、タグアンテナ8で質問信号を受信するとともに、受信した質問信号(無線信号)から生成した電力をダイオード15で整流し、直流電圧(以下、「DC電圧」と記す)を生成する。このDC電圧をコンデンサ17に充電するとともに、このDC電圧をタグICチップ7に供給し、起動する。これによって、タグICチップ7の制御部18、復調部19、変調部20、メモリ22が起動する。このように床置用RFIDタグ1は、電池などの電源を搭載していなくてもタグICチップ7を動作させることができる。なお、タグICチップ7はタグアンテナ8で生成した電力を利用するので、その電源容量は小さい。このため、タグICチップ7では、各部の消費電力を極力抑えている。
【0039】
次に、制御部18からの指示で復調部19は、受信した質問信号から「割り当てコードはAか?」という問い合わせを復調する。
【0040】
また、制御部18は、復調部19への指示と同時にメモリ22に記憶保持しているタグ情報を読み出す。
【0041】
メモリ22に記憶保持されたタグ情報が「A」であった場合、制御部18は、その問い合わせに対して割り当てコード「A」が存在することを、変調部20を介してスイッチ21をON、OFFさせて応答する。
【0042】
すなわち、スイッチ21がONすれば、タグアンテナ8の放射板(第2の導電板11)の端子とグランド板(第1の導電板9)端子とが短絡され、スイッチ21がOFFされれば、タグアンテナ8の放射板の端子とグランド板の端子とが開放される。これによって、リーダライタ装置5から送信された電波を反射するか否かをコード情報(タグ情報)に応じて制御し、そのタグ情報の内容を伝達することができる。すなわち、タグ情報の「1」と「0」に対応させてスイッチ21をONまたはOFFさせ、このスイッチ21のON、OFFの繰り返しパターンにより、タグアンテナ8からリーダライタ装置5に固有の応答信号が返信され、割り当てコード「A」が存在することが報告される。例えば、コード「A」はASCII文字コードの2進表記で「01000001」であり、このコード情報が「1」のときはスイッチ21をONにし、コード情報が「0」のときはスイッチ21をOFFにする。なお、タグICチップ7はタグアンテナ8の放射板の端子とグランド板の端子とを開放させたときに、反射が起きないように、インピーダンスをマッチングさせるコンデンサ16を有している。
【0043】
リーダライタ装置5は、アンテナ4、分離部29を介して受信部26で応答信号を受信し、復調部27に伝達する。そして、制御部23は復調した信号により、割り当てコード「A」の存在を確認する。これにより、リーダライタ装置5は、例えば図1のaの駐車スペース3に車がないことを検知する。
【0044】
一方、リーダライタ装置5は、応答信号を得ることができず、割り当てコード「A」の存在を確認することができなかった場合、このことからaの駐車スペース3に車があることを検知する。同様に、割り当てコードの存在の確認によって他の駐車スペース3でも車のありなしを検知することができる。
【0045】
以上のように本実施の形態のRFID検知装置2によれば、床置用RFIDタグ1は、複数個の誘電体製の小片10を第1の導電板9と第2の導電板11との間に隙間をあけて並べ、少なくとも第2の導電板11を保護する可撓性を有する保護部材12を設けたことにより、床置用RFIDタグ1が靴や車によって踏まれて局所的に大きい圧力が加えられた場合でも、それぞれの小片10が少しずつずれることにより応力を分散させることができる。これにより、小片10や第1の導電板9、第2の導電板11が切損されたり、小片10が割れたりするおそれを少なくすることができる。したがって、床置用RFIDタグ1は、全体として衝撃などによっても破損しにくくなり、床置として好適なものができる。
【0046】
この床置用RFIDタグ1を、駐車場や部屋の床面に設置して用いても、靴の踵や車のタイヤ、商品搬入用のキャリアなどによって常に踏まれて強い圧力が加えられても、そのような圧力によっても容易に破損しない信頼性の高いものである。
【0047】
また、RFID検知装置2は、床置用RFIDタグ1と、床置用RFIDタグ1と交信するためのリーダライタ装置5とを備え、床置用RFIDタグ1を床に設置し、リーダライタ装置5のアンテナ4が床置用RFIDタグ1を俯瞰する位置に設けている。これにより、アンテナ4と床置用RFIDタグ1との間を遮る人や車などの物体の検知を行うことができる。本実施の形態では、駐車スペース3の近傍に設けられた柱の高所にアンテナ4を設け、車6のありなしを検知することにより、駐車の空き状態を検知することができるRFID検知装置2を実現することができる。床置用RFIDタグ1は駐車場の床面に設置され、靴の踵や車のタイヤなどによって常に踏まれて強い圧力が加えられても、そのような圧力によっても容易に破損しない信頼性の高いものであるため、故障の少ない信頼性の高い駐車場の管理システムを構築することが可能となる。
【0048】
なお、床置用RFIDタグ1をさらに破損しにくくすることができる。このようにした床置用RFIDタグについて説明する。図5は、本発明の実施の形態における床置用RFIDタグ31の正面断面図である。
【0049】
床置用RFIDタグ31は、図5に示すように、衝撃吸収部材32を備え、この衝撃吸収部材32の内部に床置用RFIDタグ1を収納している。すなわち、床置用RFIDタグ1の外周全体を衝撃吸収部材32で覆っている。衝撃吸収部材32としては、シリコンゴム、ABS系樹脂やエラストマなどを用いることができる。
【0050】
このように床置用RFIDタグ1の外周全体を衝撃吸収部材32で覆うことにより、さらに破損しにくいものとすることができる。
【0051】
また、衝撃吸収部材32として耐水性や耐候性に優れたものを用いれば、屋外での使用に適したものにすることができる。さらに、衝撃吸収部材32の内部に床置用RFIDタグ1を収納して密封することで、破損するのを防止するとともに雨水などの水から回路を守ることができる。
【0052】
次に、図6および図7を参照しながら、床置用RFIDタグ31の他の例について説明する。図6は本発明の実施の形態における床置用RFIDタグ33の正面断面図、図7は同床置用RFIDタグ33の一部を破断して示した破断斜視図である。
【0053】
床置用RFIDタグ33は、複数個の小片10を中央部に隙間をあけて並べて敷き詰めている。そして、平板状の衝撃吸収部材32の間に挟み込む。なお、衝撃吸収部材32の表面にカーペット用の植毛を施し、床置きカーペットと兼用した床置用RFIDタグ33を提供するようにしてもよい。
【0054】
第1の導電板9は、例えばUHF帯(952MHz〜955MHz)であればλ/2がほぼ15cmとなるため縦横の一辺の長さを15cmにする。なお、第1の導電板9の近傍または内部に誘電体の固まりを有する場合は共振する波長は15cmよりも短くなるため、第1の導電板9における一辺の長さは0cmより長く、15cmより短く設定される。このように、第1の導電板9の一辺の長さを周波数、構造、材料に合わせて設定する。
【0055】
小片10としては、例えば縦横3mm、厚さ2mm〜3mmもしくは適度な厚みのものを使用し、第1の導電板9の中央部に縦横にそれぞれ9個配列され、総数81個が並べて敷き詰められている。
【0056】
このような構成により大型化した床置用RFIDタグ33は、受信感度が高いため、広い駐車場などで、アンテナ4から離れた位置に設置するような場合に好適である。
【0057】
また、本実施の形態のRFID検知装置2は、室内への侵入した人物を検知するのに応用することもできる。
【0058】
図8は本発明の実施の形態における床置用RFIDタグ1を含むRFID検知装置2の他の例を示す斜視図である。この例では、室内の床面34に多数の床置用RFIDタグ1が所定の間隔の配列で並べて設置され、それぞれの床置用RFIDタグ1に固有の識別情報であるコードが割り当てられていて、内蔵メモリに書き込まれている。そして、床置用RFIDタグ1を俯瞰する位置で、かつ、室内の複数の箇所、例えば天井の四隅にアンテナ4としてアンテナ4a、4b、4c、4dが設置され、管理室などに設けられたリーダライタ装置5の本体部5a(図示しない)に接続されている。
【0059】
このように構成されることで、RFID検知装置2は、リーダライタ装置5により、所定の周期でアンテナ4a〜4dからそれぞれ床置用RFIDタグ1に質問信号を送信する。
【0060】
このとき室内に誰も侵入していなければ、アンテナ4a〜4dからの質問信号は障害なくすべての床置用RFIDタグ1に届き、すべての床置用RFIDタグ1から所定の応答信号が返信される。これらの応答信号をアンテナ4a〜4dで受信し、リーダライタ装置5で応答信号を比較照合することで、「侵入者」がいないことを検知して、表示装置などに表示することができる。
【0061】
一方、図8に示すように室内に人35が侵入していれば、アンテナ4a〜4dからの質問信号が人35によって遮られてハッチングした一部の床置用RFIDタグ1に届かず、したがって、それらの床置用RFIDタグ1からの所定の応答信号がアンテナ4a〜4dで受信されないため、リーダライタ装置5で「侵入者」がいることを検知し、表示装置などで表示することができる。このように、RFID検知装置2は、床面34に設置された床置用RFIDタグ1の上にいる人物を検知することができる。
【0062】
そして、互いに異なる場所に設置された床置用RFIDタグ1には、それぞれに異なったコードを予め割り当てて内蔵メモリに書き込んでいる。さらに、複数のアンテナ4a〜4dごとに検知する方向が異なっているので、人35によって遮られて応答信号が返信されてこない床置用RFIDタグ1はアンテナ4a〜4dごとに異なる。このため、リーダライタ装置5で、どのアンテナ4a〜4dでどの床置用RFIDタグ1からの応答信号が返信されていないかを分析することにより、侵入した人35がどの位置にいるかまで特定して検知することができる。また、検知された位置を履歴情報として順次に記憶すれば、後で移動経路を把握することができ、人の経路誘導や位置情報の予測に利用することができる。
【0063】
なお、アンテナ4は1個だけであっても、やはり、リーダライタ装置5でどの床置用RFIDタグ1からの応答信号が返信されていないかを分析することにより、侵入した人35が現在どの位置にいるかをほぼ特定して検知することができる。
【0064】
このように、床置用RFIDタグ1とリーダライタ装置5とを組み合わせて用いることにより、人や物体などの移動経路や位置検知用に活用することができる。なお、床置用RFIDタグ1に代えて、床置用RFIDタグ31または床置用RFIDタグ33としても同様である。
【0065】
なお、本実施の形態の床置用RFIDタグ1を水平な床面に置いて用いる場合について説明したが、この床置用RFIDタグ1をエレベータの箱内の側壁など、横から力が加えられる場所に設置することもできる。この場合には、側壁を床面とみなせば同様の効果が得られる。また、床置用RFIDタグ1に代えて、床置用RFIDタグ31または床置用RFIDタグ33としても同様である。
【0066】
また、第1の導電板9、第2の導電板11、保護部材12、小片10および衝撃吸収部材32の大きさや材料は本実施の形態に限定されるものでない。床置用RFIDタグ1、31、33の用途に応じて適宜選択、設計すればよい。
【0067】
また、床置用RFIDタグ1、床置用RFIDタグ31または床置用RFIDタグ33は、第1の導電板、複数個の小片、第2の導電板および保護部材に可撓性を有するため、使用しないときにはロール上に巻き取って保存するようにしてもよい。これにより、大型であっても搬送作業が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように本発明によれば、可撓性を有する第1の導電板の上に、相互間に間隙をあけて複数個の誘電体製の小片を並べ、これらの複数個の小片の上に可撓性を有する第2の導電板を重ね、第1の導電板、複数個の小片および第2の導電板を可撓性を有する保護部材で保護したので、靴などで踏まれた場合であっても、導電板間に配置された複数の小片が個々に移動することによって応力を分散させることができる。したがって、RFIDタグのタグアンテナを破損しにくくすることができるので、床置用RFIDタグ、床置用RFIDタグを用いたRFID検知装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態における床置用RFIDタグを含むRFID検知装置の構成を示す斜視図
【図2】同RFID検知装置の使用状態を示す説明図
【図3】(A)は本発明の実施の形態における床置用RFIDタグの正面断面図、(B)は同(A)の一部を破砕して示した破砕斜視図
【図4】本発明の実施の形態における床置用RFIDタグを含むRFID検知装置の回路ブロック図
【図5】本発明の実施の形態における床置用RFIDタグの他の例を示す正面断面図
【図6】同床置用RFIDタグのさらに他の例を示す正面断面図
【図7】同床置用RFIDタグの一部を破断して示した破断斜視図
【図8】本発明の実施の形態における床置用RFIDタグを含むRFID検知装置の他の例を示す斜視図
【符号の説明】
【0070】
1,31,33 床置用RFIDタグ
2 RFID検知装置
3 駐車スペース
4,4a,4b,4c,4d アンテナ
5 リーダライタ装置
5a 本体部
6 車
7 タグICチップ
8 タグアンテナ
9 第1の導電板
10 小片
11 第2の導電板
12 保護部材
13,14 接着部材
15 ダイオード
16,17 コンデンサ
18,23 制御部
19,27 復調部
20,24 変調部
21 スイッチ
22 メモリ
25 送信部
26 受信部
28 クロック部
29 分離部
30 電源部
32 衝撃吸収部材
34 床面
35 人

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タグICチップと、このタグICチップと接続されたタグアンテナとを有する床置用RFIDタグであって、
前記タグアンテナは、
可撓性を有する第1の導電板と、
前記第1の導電板の上にそれぞれの間に間隙をあけて並べられた誘電体製の複数個の小片と、
前記複数個の小片の上に重ねられた可撓性を有する第2の導電板と、
少なくとも前記第2の導電板の上面を保護する可撓性を有する保護部材とを備えていることを特徴とする床置用RFIDタグ。
【請求項2】
前記第1の導電板は前記タグアンテナのグランド板であり、
前記第2の導電板は前記タグアンテナの放射板であることを特徴とする請求項1に記載の床置用RFIDタグ。
【請求項3】
前記複数個の小片は、セラミックの焼成物で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の床置用RFIDタグ。
【請求項4】
前記複数個の小片は、樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の床置用RFIDタグ。
【請求項5】
前記複数個の小片は、セラミックと樹脂の混合物で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の床置用RFIDタグ。
【請求項6】
衝撃吸収部材を備え、この衝撃吸収部材の内部に前記タグICチップと前記タグアンテナとを収納していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の床置用RFIDタグ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の床置用RFIDタグと、
前記床置用RFIDタグと交信するためのリーダライタ装置とを備え、
前記床置用RFIDタグが床に設置され、前記リーダライタ装置のアンテナが前記床置用RFIDタグを俯瞰する位置に設けられていることを特徴とするRFID検知装置。
【請求項8】
前記リーダライタ装置は、前記床置用RFIDタグと前記アンテナとの間の交信用電波が物体により遮られたことを検知して前記物体を検知することを特徴とする請求項7に記載のRFID検知装置。
【請求項9】
前記床置用RFIDタグが駐車場の床に設置され、
前記リーダライタ装置は、前記床置用RFIDタグの上の車を検知することを特徴とする請求項8に記載のRFID検知装置。
【請求項10】
前記床置用RFIDタグが室内の床に設置され、
前記リーダライタ装置は、前記床置用RFIDタグの上の人物を検知することを特徴とする請求項8に記載のRFID検知装置。
【請求項11】
前記床置用RFIDタグが室内の床に複数個設置され、
前記リーダライタ装置は、前記複数個の床置用RFIDタグのいずれかとの交信用電波が遮られたかを検出して前記人物の位置を検知することを特徴とする請求項10に記載のRFID検知装置。
【請求項12】
前記リーダライタ装置のアンテナが複数個設けられていることを特徴とする請求項11に記載のRFID検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−289099(P2009−289099A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141938(P2008−141938)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】